【解決手段】リードフレーム本体10とその表面の少なくとも一部を覆うめっき膜50とを備えるLED用リードフレーム100を提供する。めっき膜50は、リードフレーム本体10と接する下地めっき層20と、下地めっき層20の上に表面めっき層40と、を有し、下地めっき層20は粗化めっき皮膜で構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LED(半導体発光素子)が搭載されるリードフレームは、LEDの輝度向上のため、優れた光沢を有することが求められている。そこで、本発明では、十分に優れた光沢を有するめっき膜を備えるLED用リードフレーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、優れた光沢を実現するために、めっき膜の構造のみならず、リードフレーム本体の構造も併せて検討した。その結果、リードフレーム本体の表面には、圧延等の製造プロセスに起因する微細な疵が存在しており、この疵がリードフレームの最表面に線状痕として表出して、光沢の向上を妨げる要因となっていることを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、一つの側面において、リードフレーム本体とその表面の少なくとも一部を覆うめっき膜とを備えるLED用リードフレームであって、めっき膜は、リードフレーム本体と接する下地めっき層と、下地めっき層の上に表面めっき層と、を有し、下地めっき層は粗化めっき皮膜で構成されるLED用リードフレームを提供する。
【0008】
めっき皮膜としては、粗化めっき皮膜と、これよりも高い平滑性を有する平滑めっき皮膜とが知られている。粗化めっき皮膜は、通常、アンカー効果により封止樹脂との密着性を向上する目的で用いられており、従来のLED用リードフレームには、光沢度向上のため、従来から高い平滑性を有する平滑めっき皮膜が設けられていた。しかしながら、本発明のLED用リードフレームのめっき膜では、平滑めっき皮膜ではなく、粗化めっき皮膜で構成される下地めっき層を備える。これによって、リードフレーム本体の表面に存在する微細な疵の影響が低減され、リードフレームのめっき膜の光沢度を高くすることができる。
【0009】
このように、本発明は、粗化めっき皮膜の新たな作用を見出し、これを下地めっき層に採用したことを特徴の一つとする。光沢度向上の効果が得られる要因としては、粗化めっき皮膜の結晶粒が平滑めっき皮膜の結晶粒よりも小さいことが挙げられる。ただし、そのメカニズムは必ずしも明らかではなく、本発明者らは以下のとおり推察している。
【0010】
すなわち、粗化めっき皮膜を構成する結晶粒の方が、平滑めっき皮膜を構成する結晶粒よりも小さいため、リードフレーム本体の表面の疵に充填され易いと考えられる。このため、下地めっき層によって、リードフレーム本体の表面の疵が効果的に埋められて、表面めっき層に、リードフレーム本体の表面の疵の痕跡が表れ難くなると考えられる。
【0011】
また、下地めっき層上の表面めっき層は、エピタキシャル成長により形成される。下地めっき層の粒径が小さい方が、活性点(粒界)が多くなり、表面めっき層を構成する結晶粒も緻密で細かくなる。これによって、リードフレーム本体の表面の疵が表面めっき層の表面では目立たなくなると考えられる。ただし、光沢度向上のメカニズムは上述のものに限定されない。
【0012】
本発明は、別の側面において、リードフレーム本体とその表面上にめっき膜とを備えるLED用リードフレームであって、めっき膜は、リードフレーム本体と接する下地めっき層と、下地めっき層の上に表面めっき層と、を有し、下地めっき層の結晶粒の平均粒径が0.4μm以下であるLED用リードフレームを提供する。
【0013】
このようなリードフレームは、下地めっき層の結晶粒の平均粒径が十分に小さいことから、リードフレーム本体の表面に存在する微細な疵の影響が低減され、リードフレームのめっき膜の光沢度を高くすることができる。すなわち、下地めっき層の結晶粒の平均粒径が小さいことから、従来の結晶粒よりもリードフレーム本体の表面の疵に充填され易くなると考えられる。このため、下地めっき層によって、リードフレーム本体の表面の疵が効果的に埋められて、表面めっき層に、リードフレーム本体の表面の疵の痕跡が表れ難くなると考えられる。
【0014】
また、下地めっき層上の表面めっき層は、エピタキシャル成長により形成される。下地めっき層の結晶の平均粒径が小さいため、活性点(粒界)が多くなり、表面めっき層を構成する結晶粒も緻密で細かくなる。これによって、リードフレーム本体の表面の疵が表面めっき層の表面では目立たなくなると考えられる。ただし、この場合も光沢度向上のメカニズムは上述のものに限定されない。
【0015】
上述のLED用リードフレームにおける表面めっき層の表面の粗度は、下地めっき層の表面めっき層側の面の粗度よりも小さい方が好ましい。これによって、めっき膜の表面の光沢度を十分に高くすることができる。上述のLED用リードフレームにおける下地めっき層の表面めっき層側の面の粗度は1.1〜2.0であってもよい。このような粗度を有する下地めっき層は、高い光沢度と製造の容易性とを高水準で両立することができる。
【0016】
下地めっき層はニッケルめっき皮膜又はニッケル合金めっき皮膜で構成され、表面めっき層は銀めっき皮膜又は銀合金めっき皮膜で構成されていてもよい。これによって製造コストを抑制しつつ十分に高い光沢度を有するめっき膜を形成することができる。
【0017】
上述のLED用リードフレームは、幾つかの実施形態において、下地めっき層と表面めっき層との間に、中間めっき層を備え、当該中間めっき層は、下地めっき層側から、パラジウムめっき皮膜又はパラジウム合金めっき皮膜、及び金めっき皮膜又は金合金めっき皮膜をこの順で有していてもよい。また、表面めっき層の表面の粗度は1〜1.1であってもよい。このような実施形態では、めっき膜の表面の光沢度を一層高くすることができる。
【0018】
本発明は、さらに別の側面において、リードフレーム本体の表面の少なくとも一部に第1めっき処理を施して、粗化めっき皮膜からなる下地めっき層を形成する工程と、下地めっき層の上に第2めっき処理を施して、表面めっき層を形成する工程と、を有する、LED用リードフレームの製造方法を提供する。
【0019】
上記製造方法では、第1めっき処理で、粗化めっき皮膜で構成される下地めっき層が形成され、第2めっき処理でその上に表面めっき層が形成される。これによって、リードフレーム本体の表面に存在する微細な疵の影響が低減され、リードフレームのめっき膜の光沢度を高くすることができる。
【0020】
本発明は、さらに別の側面において、リードフレーム本体の表面の少なくとも一部に第1めっき処理を施して、平均粒径が0.4μm以下である結晶粒で構成される下地めっき層を形成する工程と、下地めっき層の上に第2めっき処理を施して、表面めっき層を形成する工程と、を有する、LED用リードフレームの製造方法を提供する。
【0021】
上述の製造方法によって形成される下地めっき層は、十分に小さい結晶粒で構成される。このため、リードフレーム本体の表面に存在する微細な疵の影響が低減され、リードフレームのめっき膜の光沢度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、十分に優れた光沢を有するめっき膜を備えるLED用リードフレーム及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、場合により図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
本実施形態のLED用リードフレームは、リードフレーム本体とその表面の少なくとも一部を覆うめっき膜とを備える。
図1は、本実施形態のLED用リードフレームの断面のうち、めっき膜及びその周辺を拡大して示す模式断面図である。LED用リードフレーム100は、例えば銅で構成されるリードフレーム本体10と、リードフレーム本体10の表面の一部を覆うめっき膜50と、を備える。
【0026】
めっき膜50は、リードフレーム本体10側から、下地めっき層20、中間めっき層30及び表面めっき層40をこの順で備える。下地めっき層20は、粗化めっき皮膜で構成される。粗化めっき皮膜は、リードフレーム本体10側とは反対側、すなわち表面めっき層40側の表面が粗化されている。
【0027】
表面の粗化の度合いは、粗度で表すことができる。本明細書における粗度は、表面積率(Sratio)として、市販の原子間力顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製、装置名:走査型プローブ顕微鏡「ナノピクス」)を用いて測定される。具体的には、測定対象の表面において所定の領域の面積(=見掛け面積、10μm×10μm)を、均一間隔で256Line分スキャンし、上記領域における実際の表面積を測定する。測定した実際の表面積を、見掛け面積で割ることによって粗度が求められる。凹凸のない平滑なめっき皮膜の粗度は1となる。本明細書では、表面の粗度が1.1以上のめっき皮膜を粗化めっき皮膜といい、1.1未満のめっき皮膜を平滑めっき皮膜という。
【0028】
粗化めっき皮膜で構成される下地めっき層20の表面めっき層40側の粗度は1.1以上であり、好ましくは1.1〜2.0である。上記粗度が2.0を超えると、製造が難しくなる傾向にある。下地めっき層20の粗度は、粗化めっき膜を形成する際のめっき浴の種類、又は粗化めっき処理の条件を変えることによって調整することができる。
【0029】
粗化めっき皮膜は、平滑めっき皮膜よりも結晶粒の粒径が小さい。下地めっき層20の結晶粒の粒径は、例えば1μm以下である。当該結晶粒の平均粒径は、0.4μm以下であり、好ましくは0.05〜0.25μmである。
【0030】
本明細書における下地めっき層20の結晶粒の平均粒径は、以下の手順で求めることができる。下地めっき層20の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡で50,000倍に拡大した観察画像の写真を撮影する。この写真において、下地めっき層20の中央部付近を横断するように厚さ方向に垂直に延在する直線を描く。この直線が10個の結晶粒を横切る線分の長さから、結晶粒1個当たりの粒径を算出する。このようにして求められる粒径を、平均粒径とする。
【0031】
上述と同様の方法で求められる、リードフレーム本体10の結晶粒の平均粒径は、例えば2〜10μmである。このように、下地めっき層20の結晶粒の平均粒径は、リードフレーム本体10の結晶粒の平均粒径よりも小さい。このような下地めっき層20は、リードフレーム本体10の結晶粒の粒界等に起因する凹凸及び疵10aを十分に平坦化することができる。
【0032】
下地めっき層20の厚みは、例えば、0.5〜5μmである。この厚みは、疵10aの大きさ、及び、他のめっき皮膜の厚みに応じて適宜調整してもよい。下地めっき層20は、例えば、ニッケルめっき皮膜又はニッケル合金めっき皮膜で構成される。ニッケル合金めっきとしては、亜鉛ニッケル合金めっき、錫ニッケル合金めっき、及び、ニッケルコバルト合金めっき等が挙げられる。
【0033】
リードフレーム本体10は、通常圧延にて製造された帯状材を用いて形成される。このため、リードフレーム本体10の表面には、圧延疵など製造プロセスに由来する疵10aを有する。疵10aの大きさは、
図1に示すような断面でみたときに、例えば、幅10μm以下、及び、深さ20μm以下である。
【0034】
本実施形態のLED用リードフレーム100は、粒径が小さい結晶粒で構成される下地めっき層20を備える。このため、リードフレーム本体10が疵10aを有していても、
図1に示すように、疵10aを下地めっき層20の結晶粒によって容易に埋めることができる。これによって、疵10aに由来してめっき膜50の表面に線状痕が表出することを抑制することができる。
【0035】
一方、
図2に示すように、従来の下地めっき層21は、平滑めっき皮膜で構成されることから、下地めっき層21の結晶粒が、粗化めっき膜で構成される
図1の下地めっき層20の結晶粒よりも大きい。また、下地めっき層21が平滑性に優れるが故に、疵10aに沿って下地めっき層21が形成され易い。これらの要因によって、疵10aが下地めっき層21の結晶粒で埋められ難い傾向にある。その結果、下地めっき層21の上に形成される、第1中間めっき層33及び第2中間めっき層35を有する中間めっき層31、並びに、表面めっき層41にも、疵10aの形状が反映され、疵10aに由来する線状痕41aがめっき膜51の表面に表出し易くなる。このため、
図2のLED用リードフレーム110は、
図1のLED用リードフレーム100よりも平滑性に劣り、光沢度が低くなる傾向にある。
【0036】
中間めっき層30は、下地めっき層20と、表面めっき層40との間に設けられる。中間めっき層30の厚みは、下地めっき層20及び表面めっき層40よりも小さく、例えば、6〜300nm程度である。中間めっき層30は、下地めっき層20側から、第1中間めっき層32及び第2中間めっき層34を備える。
【0037】
第1中間めっき層32は、例えば、パラジウムめっき皮膜又はパラジウム合金めっき皮膜で構成される。第2中間めっき層34は、金めっき皮膜又は金合金めっき皮膜で構成される。第1中間めっき層32の厚みは、例えば、5〜200nmである。第2中間めっき層34の厚みは、例えば、1〜100nmである。
【0038】
中間めっき層30の表面めっき層40側の面の粗度は、下地めっき層30の表面めっき層40側の面の粗度と同等である。中間めっき層30は、エピタキシャル成長によって形成される。下地めっき層20が粒径の小さい結晶粒で形成されていることから、中間めっき層30も、下地めっき層20と同様に粒径の小さい結晶粒で形成されることとなる。
【0039】
表面めっき層40は、めっき膜50の最外層を構成する層である。表面めっき層40は、十分に高い平滑性と優れた光沢を高水準で両立する観点から、銀めっき皮膜又は銀合金めっき皮膜で構成されることが好ましい。銀合金めっき皮膜としては、銀−錫合金めっき皮膜、及び、銀−パラジウム合金めっき皮膜等が挙げられる。
【0040】
表面めっき層40の表面の粗度は、例えば、1〜1.1である。このような小さい粗度を有する表面めっき層40は、十分に高い光沢度を有する。また、このような高い平滑性を有することによって、下地めっき層20の粗化面に由来する凹凸構造を十分に平滑化することができる。表面めっき層40の厚みは、めっき膜50の厚さを小さく維持しつつめっき膜50の表面を十分に平滑にする観点から、例えば1〜10μmである。
【0041】
LED用リードフレーム100は、高い光沢度を有するめっき膜50を備える。このため、LED用として好適に用いることができる。半導体発光装置に、LED用リードフレーム100を設け、LEDからの光の一部をめっき膜50の表面で反射するように構成すれば、高い反射率を得ることができる。
【0042】
次に、LED用リードフレーム100の製造方法の一例を説明する。本例の製造方法では、リードフレーム本体10の表面に第1めっき処理を施して、下地めっき層20を形成する工程と、下地めっき層20の上に中間めっき処理を施して、中間めっき層30を形成する工程と、中間めっき層30の上に第2めっき処理を施して、表面めっき層40を形成する工程と、を有する。
【0043】
まず、所定の形状を有するリードフレーム本体10を準備する。リードフレーム本体10は、銅板を圧延等によって加工して製造することができる。リードフレーム本体10の表面に第1めっき処理を施して、下地めっき層20を形成する。第1めっき処理としては、DC電源又はパルス電源等を用いた電解めっき処理が挙げられる。第1めっき処理で形成される下地めっき層20の構成及び特性については上述したとおりである。
【0044】
第1めっき処理では、疵10aを有するリードフレーム本体10の表面に、粗化めっき皮膜を形成することによって、疵10aの少なくとも一部を埋めるように下地めっき層20が形成される。第1めっき処理の電流値、処理時間、及び、めっき浴の組成等の条件を調整することによって、下地めっき層20の粗度、厚み及び結晶粒の粒径等を所望の範囲に調整することができる。
【0045】
ニッケルめっき皮膜又はニッケル合金めっき皮膜で構成される下地めっき層20を形成する場合、例えば、スルファミン酸ニッケル浴等を用いることができる。
【0046】
中間めっき処理としては、DC電源又はパルス電源等を用いた電解めっき処理、及び無電解めっき処理等が挙げられる。中間めっき処理を第1中間めっき処理と第2中間めっき処理の2つに分けることによって、互いに組成の異なる第1中間めっき層32及び第2中間めっき層34を形成することができる。
【0047】
第1中間めっき処理に用いるめっき浴としてはパラジウムめっき液が挙げられる。第2中間めっき処理に用いるめっき液としては、シアン化金めっき液又は酸性金めっき浴等を用いることができる。
【0048】
第2めっき処理としては、DC電源又はパルス電源等を用いた電解めっき処理が挙げられる。第2めっき処理で形成される表面めっき層40の構成及び特性については上述したとおりである。第2めっき処理の電流値、処理時間、及び、めっき浴の組成等の条件を調整することによって、表面めっき層40の粗度、厚み及び結晶粒の粒径等を所望の範囲に調整することができる。なお、表面めっき層40と中間めっき層30との密着性を考慮して、中間めっき層30にストライクめっき処理を施した後に、第2めっき処理を施してもよい。
【0049】
銀めっき皮膜又は銀合金めっき皮膜で構成される表面めっき層40を形成する場合、第2めっき処理に用いるめっき浴としては、例えば、シアン化銀めっき浴等が挙げられる。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、別の幾つかの実施形態では、中間めっき層30はなくてもよい。この場合、下地めっき層20と表面めっき層40とが直接接していてもよい。また、第1中間めっき層32及び第2中間めっき層34のどちらか一方のみであってもよい。あるいは、中間めっき層30は、第1中間めっき層32及び第2中間めっき層34に加えて、さらに別のめっき層を備えていてもよい。また、リードフレームの機能向上のために、表面めっき層40に被膜処理を施して、表面めっき層40の上に被膜を形成してもよい。
【実施例】
【0051】
実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
[下地めっき層の形成]
銅合金からなるリードフレーム本体を準備した。リードフレーム本体の脱脂、酸洗浄、化学研磨及び酸洗浄を行った後、市販のスルファミン酸ニッケル浴及びDC電源を用いた電解めっき処理によって、リードフレーム本体の表面上に、下地めっき層となる粗化ニッケルめっき皮膜を形成した。
【0053】
[下地めっき層の評価]
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、粗化ニッケルめっき皮膜の表面(粗化面)を観察した。
図3は、実施例1の粗化ニッケルめっき皮膜の表面を50,000倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。市販の原子間力顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製、装置名:走査型プローブ顕微鏡「ナノピクス」)を用いて、粗化ニッケルめっき皮膜の表面の粗度を求めた。測定結果は、表1に示すとおりであった。
【0054】
[中間めっき層の形成]
ニッケルめっき皮膜を形成したリードフレーム本体に、電解パラジウムめっき処理及び電解金めっき処理を行って、粗化ニッケルめっき皮膜の上に、パラジウムめっき皮膜及び金めっき皮膜を順次形成した。このようにして、下地めっき層の上に、パラジウムめっき皮膜及び金めっき皮膜からなる中間めっき層を形成した。
【0055】
[表面めっき層の形成]
下地めっき層及び中間めっき層を形成したリードフレーム本体の脱脂、及び酸洗を行った後、銀ストライクめっき処理及び電解銀めっき処理を行って、金めっき皮膜の上に銀めっき皮膜を形成した。これによって、中間めっき層の上に、銀めっき皮膜からなる表面めっき層を形成した。このようにして、リードフレーム本体とその表面を覆うめっき膜とを備える実施例1のリードフレームを得た。
【0056】
[めっき膜の評価]
下地めっき層と同様にして表面めっき層の表面の粗度を測定した。測定結果は表1に示すとおりであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、表面めっき層の表面を観察した。
図4は、表面めっき層の表面を50,000倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
【0057】
光学顕微鏡を用いて、表面めっき層の表面を観察した。また、市販の光沢度計(日本電色工業株式会社製、商品名:VSR 300A(微小面色彩計・反射率計))を用いて、表面めっき層の表面の光沢度を測定した。測定結果を表1に示す。
図5(A)は、銀めっき皮膜の表面を400倍に拡大して撮影した光学顕微鏡写真である。
図5(B)は、光沢度測定の際に撮影した光沢度計のモニタの写真である。当該モニタの画面において、表面めっき層の表面における線状痕の有無を評価した。評価結果は、表1に示すとおりであった。
【0058】
リードフレームを厚さ方向に沿って切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、切断面の一部を観察した。
図6(A)は、リードフレームの切断面の一部を10,000倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図6(B)は、リードフレームの切断面の一部を50,000倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図6(A)の写真に示されるように、リードフレーム本体10の上には、下地めっき層20、中間めっき層30及び表面めっき層40がこの順に積層されためっき膜50が形成されていた。なお、
図6(A)及び
図6(B)には示されていないが、中間めっき層30は、パラジウムめっき皮膜及び金めっき皮膜で構成されていた。
【0059】
図6(A)の写真を用いて、下地めっき層20及び表面めっき層40の厚みを求めた。具体的には、任意に異なる5箇所を選択し、それぞれの選択箇所における厚みを測定した。そして、その算術平均値を下地めっき層20及び表面めっき層40の厚みとして表1に示した。
【0060】
図6(B)の写真を用いて、下地めっき層20の結晶粒の平均粒径を次の手順で求めた。
図6(B)に示される下地めっき層20の中央部付近を横断するように水平方向に延在する直線を描いた。10個の結晶粒を横切る線分の長さから、結晶粒1個当たりの粒径を算出した。このようにして求めた粒径を、平均粒径として表1に示す。
【0061】
(実施例2)
下地めっき層を形成する際の電解めっき処理の時間を実施例1よりも長くして、リードフレーム本体の表面上に形成する粗化ニッケルめっき皮膜の厚みを表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリードフレームを作製した。そして、実施例1と同様にしてめっき膜の評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0062】
(比較例1)
下地めっき層を形成する際の電解めっき処理に用いるめっき液としてワット浴を用いて、リードフレーム本体の表面上に、下地めっき層として平滑ニッケルめっき皮膜を形成した。実施例1と同様にして、下地めっき層の表面の粗度を求めた。測定結果は、表1に示すとおりであった。
【0063】
図7は、比較例1の表面めっき層の表面を50,000倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図3と
図7との対比結果から、実施例1の下地めっき層の方が、比較例1の下地めっき層よりも、結晶粒の粒径が小さいことが確認された。
【0064】
下地めっき層以外は、実施例1と同様にしてめっき膜を形成し、リードフレーム本体とその表面の一部を覆うめっき膜とを備える比較例1のリードフレームを得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0065】
図8(A)は、比較例1の表面めっき層の表面を400倍に拡大して撮影した光学顕微鏡写真である。
図8(B)は、光沢度測定の際に撮影した光沢度計のモニタの写真である。表1の結果のみならず、
図5(A)と
図8(A)との対比、及び
図5(B)と
図8(B)との対比からも、実施例1の方が比較例1よりも、表面めっき層の表面における凹凸が少なく、高い光沢度を有することがわかる。
【0066】
図9(A)は、比較例1のリードフレームの切断面の一部を10,000倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図9(B)は、比較例1のリードフレームの切断面の一部を50,000倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図9(A)の写真に示されるように、リードフレーム本体10の上には、下地めっき層21、中間めっき層31及び表面めっき層41がこの順に積層されためっき膜51が形成されていた。
【0067】
図9(B)に示すような写真を用い、実施例1と同様にして、下地めっき層21の結晶粒の平均粒径を求めた。また、実施例1と同様にして、下地めっき層21の厚みを求めた。これらの結果を表1に示す。
【0068】
図6(B)と
図9(B)との対比から、実施例1の方が比較例1よりも、下地めっき層の結晶粒の粒径が小さいことが確認された。実施例1のリードフレームは、下地めっき層として比較例1よりも小さい結晶粒で構成されるニッケルめっき皮膜を有することから、表面めっき層の光沢度を向上することができたものと考えられる。
【0069】
(比較例2)
下地めっき層を形成する際のニッケル電解めっき処理の際の電流密度を比較例1よりも低くしたこと以外は、比較例1と同様にしてリードフレームを作製した。そして、実施例1と同様にしてめっき膜の評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0070】
(比較例3)
平滑ニッケルめっき皮膜を形成する前に銅めっき皮膜を形成したこと以外は、比較例2と同様にしてリードフレームを作製した。銅めっき皮膜は、電解めっき処理によって形成した。銅めっき皮膜の厚みは約0.8μmであった。このリードフレームは、下地めっき層の下に銅めっき皮膜を有していた。実施例1と同様にしてめっき膜の評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0071】
(比較例4)
下地めっき層を形成する際のニッケル電解めっき処理の際の電流密度を比較例3よりも低くしたこと以外は、比較例3と同様にしてリードフレームを作製した。このリードフレームは、比較例3と同様に、下地めっき層の下に銅めっき皮膜を有していた。実施例1と同様にしてめっき膜の評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0072】
【表1】
【0073】
表1の結果から、下地めっき層として、粗化ニッケルめっき皮膜を備える実施例1,2のリードフレームの方が、比較例1〜4のリードフレームよりも、高い光沢度を有していた。また、比較例1〜4では線状痕が確認されたのに対し、実施例1,2では線状痕が確認されなかった。そして、粗化ニッケルめっき皮膜は、平滑ニッケルめっき皮膜よりも、平均粒径が小さい結晶粒で形成されていることが確認された。これらの結果から、結晶粒の平均粒径が小さい下地めっき層を備えることによって、光沢度を高くできることが確認された。