【解決手段】本発明は、第1の方向と第1の方向に垂直な第2の方向を有する平板状のシートと、上記第2の方向に長く配置される複数の導電性パターンと、上記シートの中心部を横切るように上記第1の方向に長く配置されるずれ防止部と、を含む積層型電子部品用グリーンシートを提供する。
前記ずれ防止パターンの第1の方向の長さをaとし、第2の方向の長さをbとするとき、a/bは1.5から4.5である、請求項4又は5に記載の積層型電子部品用グリーンシート。
【背景技術】
【0002】
最近、電子製品の小型化の傾向に伴い、積層型電子部品も小型化し、大容量化することが求められている。これに伴い、誘電層と内部電極層の薄膜化、多層化が多様な方法で試みられており、最近では、誘電層の厚さが薄くなって積層数が増える積層型電子部品が製造されている。
【0003】
積層型電子部品は、誘電材料を利用して製作した平板状のシートに導電性ペーストなどを利用して内部電極又はコイルパターンなどを印刷してグリーンシートを製作し、その後、グリーンシートを積層、圧着、切断及び焼成して製造される。
【0004】
即ち、シートに形成された内部電極などは一定の厚さを有するようになる。このような厚さによって、グリーンシートを積層したとき、内部電極などが形成された部分と形成されていない部分に段差が発生するようになる。
【0005】
このような段差は、積層型電子部品の小型化及び薄型化の傾向が深化するにつれて相対的に次第に大きくなる。
【0006】
また、積層型電子部品の小型化及び薄型化によって段差が相対的に増加し、内部電極などが積層及び圧着時に圧力によってずれてしまい、初期設計とは異なる領域に配置されたり隣接する内部電極などと接するなどの問題が発生して積層型電子部品の性能及び信頼性を減少させる原因となる。
【0007】
したがって、このような積層型電子部品の性能及び信頼性の減少を防ぐことができる方案が必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0018】
本発明において、第1の方向は幅方向(W方向)、第2の方向は長さ方向(L方向)、第3の方向は厚さ方向(T方向)と定義されることができる。
【0019】
本発明は、キャパシタ、インダクタ、サーミスタなどの多様な積層型電子部品に利用されることができるが、説明の明確性を高めるために積層型キャパシタを例に挙げて説明する。
【0020】
図1は、従来の積層型電子部品用グリーンシート10の概略的な斜視図であり、
図2及び3は、積層型電子部品用グリーンシート10を積層した積層体の長さ方向及び幅方向の断面図である。
【0021】
従来の積層型電子部品用グリーンシート10は、シート11に導電性ペーストを利用して導電性パターン30を配置する。
【0022】
このように導電性パターン30が配置されたシート11を積層して積層体を形成するようになる。
【0023】
導電性パターン30がシート11の上部を全て覆っているわけではないため、積層型電子部品用グリーンシート10は導電性パターン30による段差を有するようになる。
【0024】
このような段差によって、積層体は、
図2及び3に示されるように、積層されたシート11の間に空いた空間が存在するようになる。このような空いた空間によって、積層及び圧着を行うと、空いた空間をシート11と導電性パターン30で埋めることによりシート11の変形が発生したり導電性パターン30がずれる現象が発生するようになる。
【0025】
特に、導電性パターン30を形成するために導電性ペーストを利用する場合、表面エネルギーを最小化するために導電性パターン30がドーム(dome)形状を有するようになる。
【0026】
導電性パターン30がドーム(dome)形状を有するため、積層体の製作時に導電性パターン30の整列がずれるという問題が発生するようになる。
【0027】
特に、最近、電子製品の小型化、薄型化の傾向が深化するにつれて導電性パターン30の整列を均一にすることが積層型電子部品の性能及び信頼性を向上させる主な原因となっている。
【0028】
図1を参照すると、積層体の圧着時に、A−A'矢印のように長さ方向の収縮が発生したり、B−B'矢印のように幅方向の収縮が発生するようになる。
【0029】
図2のT−L断面を見ると、導電性パターン30が、グリーンシート10が積層されることによりジグザグに配置されることが分かる。これに比べて、
図3のT−W断面を見ると、導電性パターン30が同じ位置に整列されて配置されることが分かる。
【0030】
したがって、積層体の圧着時、導電性パターン30の未形成領域による段差の総和は、L方向(第2の方向)に比べてW方向(第1の方向)がさらに大きくなることが分かる。
【0031】
即ち、
図1のA−A'方向の変形よりB−B'方向の変形が積層型電子部品の製造においてさらに大きな問題となる。
【0032】
図4から6は、本発明の一実施例による積層型電子部品用グリーンシートのうちずれ防止部の多様な実施形態による概略的な断面図である。
【0033】
図4を参照すると、本発明の一実施例による積層型電子部品用グリーンシート10は、シート11、導電性パターン30及びずれ防止部40を含む。
【0034】
シート11は、第1の方向と第1の方向に垂直な第2の方向を有する。
【0035】
シート11は、積層型電子部品がキャパシタの場合には誘電材料を、インダクタの場合には磁性材料を含むことができる。
【0036】
シート11の上部には導電性パターン30が形成される。
【0037】
導電性パターン30は導電性ペーストを利用して形成されることができるが、これに制限されるものではなく、蒸着などの方法を利用することも可能である。
【0038】
導電性パターン30は、第2の方向に長軸を有する長方形の形状を有することができる。
【0039】
積層型電子部品がキャパシタの場合、導電性パターン30は、
図4から6に示されるように、シート11の上部に、第2の方向には一列に整列されるように、第1の方向にはジグザグに配置されるように形成されることができる。
【0040】
このように導電性パターンをジグザグに配置することにより、積層型電子部品用グリーンシートを積層、圧着した後、切断した場合にジグザグに配置された導電性パターン30がそれぞれ積層体の両端面に交互に露出することができる。
【0041】
シート11の中心部には、シート11を第1の方向に横切るようにずれ防止部40が配置される。
【0042】
ずれ防止部40は、導電性パターン30と同じ方法で形成されることができるが、これに制限されるものではない。例えば、ずれ防止部40は、導電性パターン30より金属粒子の含量が高い導電性ペーストを利用して形成されることができる。
【0043】
したがって、ずれ防止部40は、導電性パターン30より相対的にさらに高い強度を有することができる。特に、ずれ防止部40は、導電性パターン30よりポアソン比(Poisson's ratio)が小さい材料を利用して形成されることができる。即ち、積層体の圧着時、同じ圧力下でも、ずれ防止部40は導電性パターン30より小さい変形率を有し、積層型電子部品用グリーンシート10の変形を防止することができる。
【0044】
ずれ防止部40は、積層型電子部品用グリーンシート10を積層及び圧着する場合に段差によって発生する第1の方向の変形を支持する役割を行うことができる。
【0045】
また、ずれ防止部40は、積層型電子部品用グリーンシート10を積層及び圧着する場合に圧力によって導電性パターン30がずれてしまい、設計とは異なる部位に配置されることを防止する役割を行うことができる。
【0046】
特に、導電性パターン30が積層及び圧着過程でずれてしまい、隣接する導電性パターン30と接する場合には短絡の問題が発生したり、積層体を切断した場合には望まない部分に導電性パターン30が露出し、伝導性異物などによって積層型電子部品が壊れる主な原因となる可能性がある。
【0047】
したがって、積層型電子部品用グリーンシート10にずれ防止部40を配置することにより、これを利用した積層型電子部品の性能及び信頼性を向上させることができる。
【0048】
図4から
図6は、ずれ防止部40の多様な実施形態を示したものである。
【0049】
ずれ防止部40は、
図4のように一つの長い帯状に配置されることができる。
図4のようにずれ防止部40が配置される場合、積層型電子部品用グリーンシート10の第1の方向の変形率を最小化させることができる。
【0050】
これとは異なり、ずれ防止部40は、
図5のように複数の長い帯状に配置されることができる。ずれ防止部40がただ一つの広い帯状の場合には、積層体の製作時にエアートラップ(air trap)が発生する可能性が高い。エアートラップとは、積層又は圧着過程でグリーンシート間が密着されず、空気が閉じ込められる現状をいう。これは、グリーンシートにおいて導電性パターンが印刷されていない空いた空間における段差によって主に発生する。
【0051】
したがって、複数の長い帯状にずれ防止部40を形成することにより、ずれ防止部40の間にマージンを位置させてエアートラップの発生を防止することができる。
【0052】
エアートラップの防止を極大化するために、ずれ防止部40は、
図6のように複数のずれ防止パターンを含むことができる。
【0053】
ずれ防止パターンは、導電性パターンよりもさらに大きい面積を有することができる。
【0054】
本発明の一実施例による積層型電子部品用グリーンシートが複数のずれ防止パターンを含む場合、複数のずれ防止パターンの間にはずれ防止パターンが形成されていないマージン部が配置されることができる。
【0055】
マージン部は、エアートラップが発生することを予防し、積層型電子部品の信頼性を向上させる役割を行うことができる。
【0056】
図7は、
図6のずれ防止パターンの拡大図である。
図7を参照すると、ずれ防止パターンの第1の方向の長さをa、第2の方向の長さをbとする。
【0057】
ずれ防止パターンは、導電性パターンがずれる現象及び積層型電子部品用グリーンシート10の変形率を最小化するためにaがbより大きければよい。
【0059】
図6のずれ防止パターンを含む積層型電子部品用グリーンシートを利用して積層型電子部品を製作する間に、a/b値を調節して第1の方向の変形率及びエアートラップの発生の有無を測定した。
【0060】
第1の方向の変形率については、0.3%を超える場合には×、1.0〜0.3%の場合には○、1.0%未満の場合には◎で表示した。
【0061】
エアートラップの発生の有無については、発生した場合には×、発生しなかった場合には○で表示した。
【0062】
表1を参照すると、a/bは1.5から4.5であり得る。
【0063】
a/bが1.5未満の場合には第1の方向の変形率が1.5%を超えるという問題があり、a/bが4.5を超える場合にはエアートラップが発生するという問題がある。
【0064】
したがって、第1の方向の変形率を1.5%以下に維持し、エアートラップの発生を防止するためにa/bは1.5から4.5であり得る。
【0065】
図8は、ずれ防止部40を含まない場合(比較例1〜5)とずれ防止部40を含む場合(実施例6〜9)の長さ方向(第2の方向)及び幅方向(第1の方向)の収縮率のグラフである。
【0066】
図8を参照すると、ずれ防止部40を含まない場合(比較例1〜5)には収縮率が0.3%を超えることが分かる。
【0067】
しかしながら、ずれ防止部40を含む場合には収縮率が0.15%未満であることが分かる。
【0068】
即ち、ずれ防止部40が、積層型電子部品用グリーンシートの積層及び圧着時、第1の方向における変形を防止する支持台の役割を行い、積層型電子部品用グリーンシートの収縮率を比較例と比べて30%程度減少させる役割を行うことができる。
【0069】
図9は、本発明の他の実施例による積層型電子部品100の概略的な斜視図であり、
図10は、
図9のX−X'線に沿った概略的な断面図であり、
図11は、
図9のXI−XI'線に沿った概略的な断面図である。
【0070】
図9から
図11を参照して、本発明の積層型電子部品100の構造について説明する。
【0071】
図9から
図11を参照すると、本発明の他の実施例による積層型電子部品100は、誘電層111と第1及び第2の内部電極131、132が交互に積層されたセラミックボディ110を有する。セラミックボディ110の両端部には、セラミックボディ110の内部に交互に配置された第1及び第2の内部電極131、132とそれぞれ導通する第1及び第2の外部電極121、122が形成されている。
【0072】
セラミックボディ110の形状は、特に制限されないが、一般的に六面体状であり得る。また、その寸法も、特に制限されず、用途に応じて適切な寸法とし、例えば、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)であり得る。
【0073】
誘電層111の厚さはキャパシタの容量設計に合わせて任意に変更可能であり、本発明の一実施例において焼成後の誘電層の厚さは1層当たり好ましくは0.1μm以上である。
【0074】
薄すぎる厚さの誘電層は一層内に存在する結晶粒数が小さく信頼性に悪影響を及ぼすため、誘電層の厚さは0.1μm以上であればよい。
【0075】
第1及び第2の内部電極131、132は、各端面がセラミックボディ110の対向する両端部の表面に交互に露出するように積層されている。
【0076】
上記第1及び第2の外部電極121、122は、セラミックボディ110の両端部に形成され、交互に配置された第1及び第2の内部電極131、132の露出端面に電気的に連結されてキャパシタ回路を構成する。
【0077】
本発明の他の実施例による積層型電子部品100は、本発明の一実施例による積層型電子部品用グリーンシートを利用して製作されたものを意味する。
【0078】
即ち、本発明の他の実施例による積層型電子部品100は、本発明の一実施例による積層型電子部品用グリーンシートを利用して製作されるため、積層方向(第3の方向)に複数の層において第1及び第2の内部電極131、132がよりうまく整列されることができる。
【0079】
具体的には、本発明の一実施例による積層型電子部品用グリーンシートを利用して製作された本発明の他の実施例による積層型電子部品100は、幅方向(W方向)における第1の内部電極131及び第2の内部電極132の平面図上での一致率が99.9%以上である。
【0080】
即ち、第1の内部電極131及び第2の内部電極132が積層型電子部品100の上面からみて高い一致率を有するため、製造された積層型電子部品間の容量偏差が小さく、相対的に高い容量を有するようになる。
【0081】
これと同様に、第1の内部電極131は隣接する他の第1の内部電極131と重なる面積比が99.9%以上であり、第2の内部電極132は隣接する他の第1の内部電極131と重なる面積比が99.9%以上であり得る。
【0082】
したがって、本発明の他の実施例による積層型電子部品100は、内部電極の整列が従来の積層型電子部品より高いため、製造された積層型電子部品間の容量偏差が小さく、相対的に高い容量を有するようになる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。