(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-119065(P2017-119065A)
(43)【公開日】2017年7月6日
(54)【発明の名称】立方体型スロットマシン
(51)【国際特許分類】
A63F 5/04 20060101AFI20170609BHJP
【FI】
A63F5/04 511D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-257896(P2015-257896)
(22)【出願日】2015年12月28日
(71)【出願人】
【識別番号】315019470
【氏名又は名称】篠崎 章久
(74)【代理人】
【識別番号】315019469
【氏名又は名称】篠崎 翼子
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 章久
【テーマコード(参考)】
2C082
【Fターム(参考)】
2C082AA05
2C082CD12
2C082CD23
(57)【要約】
【課題】 スロットマシンのビデオ画面で、ブラーやぼかしを施さないで、絵柄が変化する様子を一部始終提示したい。絵柄が描かれた物体の回転が物理的に実現可能な、現実味のあるものが望ましい。更に、その物理回転の時間と速さは初めと終わりの絵柄の差異に依存しないようにしたい。
【解決手段】 立方体のサイコロでは、6種類の90度回転2回の操作で六面のどの面へも移動可能、という幾何学的性質を利用する。2回の回転操作の時間と速さは、明らかに面の移動の性質と無関係である。また、2や3の目のように、上下(又は左右)非対称なシンボルのみを利用すれば、12通りの乱数表現が可能になる。回転を3回に限っても同様の効果は得られるが、出る絵柄が1ゲームごとに左右90度横転してしまう。1回から3回までは可とすれば、24通りの乱数表現ができるが、当初の課題は完全には解決されない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
六面体を、一つの側面と垂直な軸の回りに90度単位で回転させる六種類の方法のうち任意の方法で数回回転させ、その六面体の側面に描かれた、又は、描かれたように見える、図、絵柄や記号の中から選ばれたものを提示させる動画や実物を利用した娯楽目的の製品(ゲーム機、玩具、くじ等)、装飾、広告、サービス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発見は、六面体の物理的な回転に関する幾何学的性質を乱数を発生させたゲーム機器の動画画面に適用させたものである。
【背景技術】
【0002】
スロットマシンというと機械仕掛けやコンピュータ画像のリールを回転させてシンボル表示を行い、シンボルの組み合わせでスコアなどが決定するというのが最も古典的で定評となっている形態である。
【0003】
リールの絵は、物理的に表面に描かれたものである場合、特に、次に表示される絵柄との間には相関があり、次の表示までのリールの回転数や速さ、回転に費やす時間を変化させなければならない。最終的には乱数発生でスコアが決定するが、乱数発生は独立事象であり、本来リールの状態など時の状態とは無関係である。また、前回の回転終了の状態から、次の回転前に、常にリールがリセットされたとしても、次に出す絵柄まで到達するには、その絵柄の場所まで回転させなければならず、与える回転スピードや回転時間がやはり、次の絵柄によって異なることになる。すなわち、乱数発生の独立性という観点からすると、ゲーム機に物理的状態依存性が存在し、矛盾が内在していることになる。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平3−60681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在市場に出回るビデオスロットマシンのビデオ画面にて、リールなどに描かれたいくつかの絵柄がその回転に従って変化する様子をアニメーションで表現したい。ただし、その表現は以下に掲げる4つの条件を同時に満たすようにする。
1)動画表現される回転は物理的に可能で現実味がある。
2)回転の角速度の大きさは最初と最後の絵柄の違いに無関係。
3)費やす時間は一定で数秒間とする。
4)終始その様子は鮮明で曖昧にしない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
立方体のサイコロを2回90度回転させる様子を動画化する。回転ベクトルをサイコロの中心から伸び一つの側面と直交するように採れば、1回の回転方法は6通り存在する。回転を2回に制限することで、絵柄が左右90度回転した状態は動画の途中にしか現れないようにすることができる。サイコロの側面に描かれる6つの記号がすべて上下非対称の(180度の回転対称性が破れている)絵柄に限定し、上下逆様の絵柄を元の絵柄と異なるものと定めれば、提示できる記号は12通りになる。そのうちの任意の一つの記号から別の任意の記号に移るための回転順序が必ず存在し、6つの回転ベクトルから2つ選べる順列は、側面(わきの面)に移行する場合3通りで、同じ絵柄に戻る場合は反復運動となり、6通り存在するが、それ以外はすべて2通りある。このうち、どの回転順を実際に選ぶかは無作為で構わない。立方体の回転の速さと費やす時間は出る絵柄とは全く無関係なので、当初の目的は全て達成される。
【発明の効果】
【0007】
結果的には1から12までの自然数の乱数を一つのサイコロで表現可能で、本来の乱数の性質同様、時の状態に依存することなく、次に出る面を最も現実味のある形で提示可能となった。
【0008】
スロットマシンのように絵柄を3つ以上の組みなどにすると、たとえ最終的な絵柄の組が回転以前から決定されているとしても、絵柄の変化が大変興味深くなる。また、回転の仕方自体も乱数発生で選ばれるので、その組み合わせにメリットを与えるゲームも可能である。
【0009】
90度回転を2回だけでなく、1から3回まで、と制限を緩めれば、回転時間や回転の速さの固定という条件は満たされなくなるが、90度または270度回転した絵柄も登場してくる。こうした回転された絵柄をすべて別の記号であると定めれば、1つのサイコロで24通りの乱数表現が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】 立方体のサイコロを回転させる回転の種類とその標識を定義する図である。右手系の直交座標の原点を立方体の中心に選び、側面と座標軸が直交するようにする。立方体を90°左回転させる(右ネジの法則に従う)座標軸と平行な回転ベクトルは、x軸正負の方向、y軸正負の方向、z軸正負の方向の6種類存在する。(負の回転ベクトルは同正軸の90度左回転と同値。)
【
図2】 本発明実施のための立方体のサイコロの展開図である。二回の90°回転で側面の絵柄に順か逆様のどちらかしか現れないよう、隣り合う側面には左右90°回転させた絵柄を描くようにする。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
図2のように、立方体の展開図を厚紙などに作図し、側面に「A」「B」「C」「D」「E」「F」と書かれたサイコロを作成する。そして、A〜Fまでの記号に1〜6の乱数を、逆さのA〜Fに7〜12の乱数を対応させる。
図1の座標軸を空間(スロットマシン)に固定し、z軸を表示中の側面に突き出る向きにとる。x軸をスロットマシンに向かって右向きに選べば、y軸は上向きになる。ここでは簡略化を更にはかり、回転の符号に、1:x+、2:x−、3:y+、4:y−、5:z+、6:z−の番号を対応させる。
(5、1)、(1、4)の3通りの回転操作が存在することに気がつく。正面の目から次の目へ移行する全ての回転操作を表1と表2に記す。
コンピュータに表1の行列を覚えさせ、3次元コンピュータグラフィクス、2次元や3次元の動画ソフトウエア、又は、それらがライブラリとして利用可能なコンピュータ言語等の手段で回転をシミュレーションさせれば完成である。
【0012】
【表1】
【表2】
【実施例2】
【0013】
実施例1を拡張して、90度回転を2回だけでなく、1回や3回でもよいと制限を緩める。すると、表1に対応する表を24×24の行列でつくらなければならない。しかし、実は、初めの1行を完成させさえすれば、他の行は1行目の結果が利用できると分かる。
それ故、表3にはAから他の記号へ移行するために必要な回転のみを記載した。任意の正面の目(a)から次に出る目(p)の回転操作を表3を使って得るには、
1)「次に出る目」がaの行の回転操作をpに行い、出た目がqだとすれば、
2)「次に出る目」がqの行が求める回転操作である、
という手順を踏む。このためにはまず、
図1の六つの回転ベクトルによるサイコロの回転を次のように回転行列で表現する。
【数1】
慮した小さな値である。すると、他の目の「定位置」も全て、
【数2】
の式から求められる。表3では対応する回転変換が何通りもあるが、どれを利用しても構わない。
【数3】
が得られる。得られた全ての定位置の位置ベクトルを表4に列挙しておく。こうすることで、aがAの定位置へ移動すると、pがどの定位置に移動したのか同定できるようになる。pの移動先qを求めるには、ベクトル変換、
【数4】
を用いる。対応する表3の値はどの回転操作を選んでもよい。
【数5】
【0014】
【表3】
【符号の説明】
【0016】
表1から表3に記した1、2、3、4、5、6の番号はそれぞれ
図1の座標軸の回りに90度回転させる回転ベクトル、x+、x−、y+、y−、z+、z−に対応する。ただし、座標系自体は空間に固定させたままにする。
【0015】
【表4】