【課題】使用時に芯部が折れて、清掃部が口腔内に残ってしまうという不具合を防止でき、しかも清掃部を折り曲げた状態に形状保持できるように構成することで、臼歯間以外の歯間は云うまでもなく、臼歯間への挿入性及び臼歯間の清掃性を向上可能な歯間清掃具及びその製造方法を提供する。
の一軸延伸高密度ポリオレフィン系樹脂からなる基材部10に、清掃部2の一部又は全部を構成する、延伸方向に細長い芯基材部12を設けた。前記ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン樹脂を用いた。
前記加工工程の後工程として、前記基材部のうちの少なくとも芯基材部の芯本体部に対して、エラストマ材料を被覆する被覆工程を備えた請求項6〜8のいずれか1項記載の歯間清掃具の製造方法。
【背景技術】
【0002】
歯間清掃具として、金属細線からなるワイヤー素線を二つ折りにしてその間にフィラメントを配置させ、このワイヤー素線を捻ってワイヤー素線に対してフィラメントを植毛し、その後フィラメントを所望長さにカットして円筒状や円錐台状に成形してなるブラシ本体と、手で把持可能な細長い合成樹脂製の棒状部材からなる歯間ブラシが広く普及している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、歯間清掃具として、ハンドル部と清掃部とを有し、ハンドル部とそれに連なる芯本体部を合成樹脂材料で構成し、清掃部を芯本体部と芯本体部を覆う弾性被覆樹脂とで構成した歯間清掃具が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
前記特許文献2には、歯間清掃具の製造方法として、合成樹脂材料を用いてハンドル部と芯本体部とを有する基材部を射出成形する一次成形工程と、前記芯本体部の中心軸と金型の中心軸とが重なるように前記芯本体部の自由端を保持しつつ前記芯本体部を覆って前記弾性被覆樹脂を成形する二次成形工程とを備えた製造方法が記載されている。
【0005】
また、歯間清掃具の他の製造方法として、合成樹脂材料の押出成形品からなる合成樹脂シートを正面視長方形に裁断して一次加工品を製作し、この一次加工品を打ち抜いて、短手方向の一側半部に棒状の芯基材部を成形するとともに、短手方向の他側半部に芯基材部に連なるハンドル部を形成し、芯基材部とハンドル部とからなる基材部を複数個併設してなる二次加工品を製作し、この二次加工品の芯基材部の先端側の芯本体部に熱可塑性エラストマからなる被覆部をオーバーモールドして、芯本体部と被覆部とからなる清掃部を有する歯間清掃具を複数個並列状に製作する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
一方、合成樹脂シートとして、折り曲げた形状に形状保持可能な延伸ポリオレフィン系樹脂シートからなる形状保持シートが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1記載の歯間ブラシでは、ワイヤーからなる芯線を手で折り曲げて、ハンドル部に対するブラシ部の角度を、清掃する歯間の位置に応じて所望の角度に調整できる。しかし、芯線を金属材料で構成しているので、歯間清掃時、芯線が歯や歯肉に接触したときに、どうしても歯や歯肉に対する当たりが強くなり、違和感が発生するという問題があった。
【0009】
一方、特許文献2、3記載の歯間清掃具では、特許文献1記載の歯間ブラシと比較して、清掃時における歯間や歯肉への当たりをソフトにできる。しかし、芯本体部を含む基材部を合成樹脂材料で構成していることから、芯本体部を細くすると、歯間に挿入可能な長さを十分に確保して清掃性を向上できるが、芯本体部が折れたり、清掃部が使用できなくなる程度まで大きく曲がりやすくなるという問題が発生し、一方、芯本体部を太くすると、芯本体部の折れを防止できるが、歯間へ挿入可能な清掃部の長さが短くなって、清掃性が低下するという問題があった。
【0010】
また、基材部を構成する合成樹脂材料にガラス繊維などの繊維材を添加して、その強度を高めて、芯本体部を細くすることも考えられるが、繊維材を添加すると、強度は高くなるものの芯本体部の弾力性が低下することから、過剰な外力が芯本体部に作用すると、清掃部の長さ方向の途中部(芯本体部の部分)で折れ易くなり、清掃部が破断した場合には、折れた清掃部が口腔内に残ってしまうという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、使用時の芯本体部の折れや、清掃部が破断し、清掃部が口腔内に残ってしまうという不具合を防止するだけでなく、自由に芯基材部を折り曲げた状態に形状保持できるように構成することで、臼歯間以外の歯間は云うまでもなく、臼歯間への清掃部の挿入性及び臼歯間の清掃性を向上可能な歯間清掃具及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願人は、芯本体部の折れや破断した清掃部が口腔内に残ってしまうことを防止し得る構成について鋭意検討した結果、従来の歯間清掃具の設計のように、芯基材部が折れないように設計するのではなく、金属ワイヤーを有する歯間ブラシと同じように芯基材部を自由自在に形状変化させてから使用できることを前提として設計することで、本発明を完成するに至った。これにより、歯間部への清掃部の挿入性が高まり過剰な外力が芯基材部に作用しにくくなると共に、過剰な外力が芯基材部に作用した場合でも、芯基材部が折れ曲がることで、清掃部の破断を防止できる。
【0013】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)清掃部とハンドル部とを有する歯間清掃具であって、密度が0.968〜0.980g/cm
3の一軸延伸高密度ポリオレフィン系樹脂からなる基材部に、前記清掃部の一部又は全部を構成する、延伸方向に細長い芯基材部を設けた、ことを特徴とする歯間清掃具。
【0014】
この歯間清掃具では、芯基材部の長手方向が延伸方向となるように、一軸延伸高密度ポリオレフィン系樹脂を用いて基材部を構成しているので、芯基材部の長さ方向の途中部を折り曲げたときに、該折り曲げた形状に芯基材部が形状保持されることになり、歯間部への清掃部の挿入性が高まり、過剰な外力が芯基材部に作用しにくくなる。しかも、一軸延伸高密度ポリオレフィン系樹脂の密度を適正に設定することで、清掃部を歯間部へ挿入するときに、芯基材部、特に芯本体部が折れ曲がることを防止でき、しかも過剰な力が芯基材部に作用し芯基材部が折れ曲がった場合でも芯基材部が破断しないため、折れた清掃部が口腔内に残ってしまうことを防止できる。また、芯基材部を折り曲げた形状に形状保持できるので、例えば臼歯間の清掃時には、芯基材部を好みの角度に折り曲げ保持した状態で臼歯間を清掃することができるので、歯間清掃具の清掃部の臼歯間への挿入性及び臼歯間の清掃性を大幅に向上できる。
【0015】
(2)前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン樹脂である(1)記載の歯間清掃具。前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などを採用できるが、形状保持性に優れることから、ポリエチレン樹脂が好適である。
【0016】
(3)前記芯基材部の長手方向に対する基材部の引張弾性率が9000MPa〜16000MPaである(1)又は(2)記載の歯間清掃具。引張弾性率は、9000MPa未満の場合には、清掃部を歯間へ挿入するときに芯基材部が折れ曲がって、歯間への挿入性を十分に確保できず、16000MPaを超えるものは、硬くなり過ぎて芯基材部の形状を自在に変化させることが困難となることから、芯基材部12の長手方向に対する基材部の引張弾性率は、9000MPa〜16000MPaが好ましい。
【0017】
ここで、基材部の引張弾性率の測定方法について説明すると、先ず芯基材部のハンドル部側末端が固定端となり、芯基材部の先端側末端が自由端となるように、基材部を固定具に固定した上で、芯基材部が水平方向に保持されるように、固定具に対して基材部を位置調整する。次に、固定端から芯基材部の先端側に10mmの位置において鉛直下方方向の荷重を芯基材部に負荷し、さらに荷重を経時的に徐々に増加させることで荷重変位曲線を作成する。加えて、固定位置における芯基材部の断面積を測定する。試験片の断面積は固定位置と荷重位置の間においては固定位置断面積と略同一と仮定する、または、略同一部分を試験片より抽出する。これらの結果を用いて、荷重変異曲線から弾性率を求める。なお、直線領域は、実験結果に基づき各荷重変位曲線においての最大荷重値に対して20〜40%の荷重範囲と定めて抽出した。この測定は、圧縮試験又は片持ちの曲げ試験に相当するものであり、例えば、精密万能試験機((株)島津製作所製)を測定装置(圧縮試験機)として用い実施することが出来る。
【0018】
(4)前記芯基材部の芯本体部にエラストマ材料からなる被覆部を設け、前記芯本体部と被覆部とで清掃部を構成した(1)〜(3)のいずれかに記載の歯間清掃具。清掃部は、芯基材部のみで構成することも可能であるが、本発明のように、芯基材部にエラストマ材料からなる被覆部を被覆形成すると、歯肉に対する当たりがソフトになることから好ましい。なお、芯本体部とは、芯基材部のうちのエラストマ材料からなる被覆部が設けられる部分であり、芯基材部の全体で芯本体部を構成することもできるし、芯基材部の先端側を含む一部のみで芯本体部を構成することもできる。
【0019】
(5)前記基材部に、前記芯基材部と、前記ハンドル部の一部又は全部を構成するハンドル基材部とを一体的に設けた(1)〜(4)のいずれかに記載の歯間清掃具。ただし、基材部を芯基材部のみで構成し、別部材からなるハンドル部材に芯基材部を着脱自在に固定して、歯間清掃具を構成することも可能である。また、ハンドル部は、ハンドル基材部のみで構成することも可能であるが、ハンドル基材部にエラストマ材料からなる滑り止め部を設けるなどして、ハンドル基材部と滑り止め部などでハンドル部を構成することも可能である。
【0020】
(6)清掃部を有する芯基材部とハンドル部とを有する歯間清掃具の製造方法であって、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂シートを、密度が0.968〜0.980g/cm
3となるように一軸方向に延伸させて延伸樹脂シートを製作する延伸工程と、前記延伸樹脂シートを用いて、前記清掃部の一部又は全部を構成する細長い芯基材部を有する基材部を、前記芯基材部の長手方向が延伸樹脂シートの延伸方向となるように加工する加工工程と、を備えたことを特徴とする歯間清掃具の製造方法。
【0021】
この製造方法では、密度が0.968〜0.980g/cm
3となるように一軸方向に延伸させた延伸樹脂シートを用いて基材部を製作するので、この製造方法を利用して、(1)〜(5)記載の歯間清掃具を容易に製作できる。
【0022】
(7)前記基材部が、前記芯基材部と、前記ハンドル部の一部又は全部を構成するハンドル基材部を備えた(6)記載の歯間清掃具の製造方法。
【0023】
(8)前記加工工程において、延伸樹脂シートに複数の基材部を、隣接する基材部の一部が連結されるように並列状に加工する(6)又は(7)記載の歯間清掃具の製造方法。この製造方法では、歯間清掃具を複数個同時に製作できるので、製作コストを低減できるとともに、個別に包装する場合と比較して包装コストが安くなるので好ましい。
【0024】
(9)前記加工工程の後工程として、前記基材部のうちの少なくとも芯基材部の芯本体部に対して、エラストマ材料を被覆する被覆工程を備えた(6)〜(8)のいずれかに記載の歯間清掃具の製造方法。この製造方法では、歯肉に対する当たりがソフトな歯間清掃具を製作できる。
【0025】
(10)前記加工工程と被覆工程間に、前記エラストマ材料により被覆する基材部の表面を粗面化する粗面化工程を備えた(9)記載の歯間清掃具の製造方法。この製造方法では、基材部の表面を粗面化することで、基材部とエラストマ材料との接合強度を向上できる。例えば、基材部の芯本体部の表面を粗面化することで、芯本体部とエラストマ材料からなる被覆部との接合強度を向上できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る歯間清掃具によれば、一軸延伸高密度ポリオレフィン系樹脂を用いて基材部を構成しかつ一軸延伸高密度ポリオレフィン系樹脂の密度を適正に設定することで、清掃部を歯間へ挿入するときに、芯基材部が折れ曲がることを防止でき、しかも過剰な力が作用した場合でも、芯基材部が折れ曲がるだけで破断しないため、破断した清掃部が口腔内に残ってしまうことを防止できる。また、芯基材部を折り曲げた形状に形状保持できるので、例えば臼歯間の清掃時には、芯基材部を好みの角度に折り曲げた状態で、臼歯間を清掃することができるので、歯間清掃具の清掃部の臼歯間への挿入性及び臼歯間の清掃性を大幅に向上できる。
【0027】
本発明に係る歯間清掃具の製造方法によれば、前記歯間清掃具を容易に製作することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1、
図2に示すように、歯間清掃具1は、その機能で区別すると、歯間清掃用の清掃部2と、持ち手としてのハンドル部3とを備え、その素材で区別すると、一軸延伸高密度ポリオレフィン系樹脂からなる基材部10と、エラストマ材料からなる軟質部20とを備えている。この歯間清掃具1は、複数個の歯間清掃具1を切り離し可能に並列状に連結してなる歯間清掃具連結体5の形態に製作され、利用者は、例えば歯間清掃具連結体5の一側から順番に、歯間清掃具1を連結部13において切り離して、順次使用することになる。ただし、歯間清掃具連結体5を構成する歯間清掃具1の連結個数は任意に設定可能である。また、連結部13を省略して、複数の歯間清掃具1を連結しないで、個別に構成することも可能である。
【0030】
(基材部)
基材部10は、
図1〜
図5に示すように、ハンドル部3を構成する扁平な細長い板状のハンドル基材部11と、ハンドル基材部11の先端部に連設した細長い軸状の芯基材部12と、隣接するハンドル基材部11を切り離し可能に連結する連結部13とを備えている。この基材部10は、
図5(A)に示すように、複数個の基材部10を連結部13で並列状に連結してなる基材部連結体15の形態に製作される。ただし、基材部連結体15における基材部10の連結個数は、歯間清掃具連結体5の連結個数に応じて設定することになり、また歯間清掃具1を個別に構成する場合には、連結部13を省略して、基材部10を個別に構成することもできる。
【0031】
基材部10を構成する合成樹脂材料としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂を採用できるが、中でも一軸延伸処理し易いポリエチレンが好適であり、特に高密度ポリエチレン樹脂が好適である。
【0032】
基材部10は、後述するようにポリオレフィン系樹脂のシート材をその密度が0.968〜0.980g/cm
3となるように一軸延伸し、芯基材部12の長手方向が一軸延伸の延伸方向となるように製作されている。
【0033】
基材部10の密度が0.968g/cm
3未満の場合には、ポリオレフィン系樹脂の結晶を十分に延伸方向へ配向させることができず、芯基材部12の曲げに対する強度が低下する。このため清掃部2を歯間へ挿入するときに芯基材部12が折れ曲がり易くなり、歯間への清掃部の挿入性を十分に確保できない。一方、基材部10の密度が0.980g/cm
3を超える場合には、硬くなり過ぎて芯基材部の形状を自在に変化させることが困難となることから、基材部10の密度は0.968〜0.980g/cm
3の範囲に調整することが好ましい。
【0034】
延伸倍率は、折り曲げたときにおける形状保持性が得られる範囲で任意に設定可能であるが、小さいと形状保持性が向上せず、大きくなると長手方向に沿って裂けやすくなるので10〜40倍が好ましく、10〜30倍がより好ましい。
【0035】
芯基材部12の長手方向に対する基材部10の引張弾性率は、9000MPa〜16000MPaが好ましい。引張弾性率は、9000MPa未満の場合には、清掃部2を歯間へ挿入するときに芯基材部12が折れたり破断したりするため、歯間への挿入性を十分に確保できず、16000MPaを超える場合には、硬くなり過ぎて芯基材部の形状を自在に変化させることが困難となることから、芯基材部12の長手方向に対する基材部10の引張弾性率は、9000MPa〜16000MPaが好ましい。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、小さすぎると一軸延伸する前のシート材の加工が難しくなり、大きすぎると延伸し難くなるので10万〜50万が好ましい。メルトインデックス(MI)は、フィルム成形性を考慮して、0.1〜20(g/10分)が好ましく、0.2〜10(g/10分)がより好ましい。
【0037】
ハンドル基材部11は、細長い板状に構成したが、指で摘まんで歯間を清掃し易い構成であれば、正面視円形や楕円形など任意の形状の板状に構成できる。ハンドル基材部11の寸法は、任意に設定できるが、使用材料を極力少なくしつつ、指で摘まんで歯間を清掃できるように、例えば幅W1は3.0〜10mmが好ましく、厚さT1は0.2〜5.0mm、好ましくは0.2〜1.5mm、さらに好ましくは0.2〜1.0mm、最も好ましくは0.3〜0.8mmが好ましい。
【0038】
芯基材部12は、
図2〜
図5に示すように、横断面形状が略正方形の略直線状の細長い軸状に形成され、芯基材部12の先端側部分にはエラストマ材料が被覆される芯本体部12aが形成され、基端側部分には、外部に露出される芯露出部12bが形成されている。ただし、芯露出部12bの長さは任意に設定可能で、芯露出部12bを省略して、芯本体部12aのみで芯基材部12を構成することも可能である。
【0039】
芯基材部12の幅は先端側へ行くにしたがって幅狭となる緩やかなテーパ形状に形成され、芯基材部12のうちの歯間に挿入される先端部の幅W2は、歯間への挿入性を十分に確保するため0.30〜0.8mmが好ましい。
【0040】
芯基材部12の厚さT2は、ハンドル部3の厚さT1と同じ厚さに設定され、芯基材部12の全長にわたって一様な厚さに設定されている。ただし、製作コストは高くなるが、歯間への挿入性を考慮して、芯基材部12の厚さを先端側へ行くにしたがって段階的或いは連続的に薄くなるように構成することも好ましい。
【0041】
芯基材部12の横断面形状は、任意に設定可能であるが、後述する製造方法による加工性を考慮して、長方形や正方形などの方形状に構成することが好ましい。芯基材部12の先端側部分の清掃部の横断面寸法は、歯間に挿入可能な寸法に設定されている。
【0042】
図1、
図2に示すように、連結部13は、隣接するハンドル基材部11間においてハンドル基材部11に一体的に形成され、ハンドル基材部11の基端部側と先端部側とに長手方向に間隔をあけて1対設けられ、正面視において等脚台形状に形成されている。連結部13の個数は、任意に設定可能で、例えば1個だけ設けることも可能である。また、連結部13の厚さはハンドル基材部11と同じ厚さに設定することもできるし、切り離し易くするため、ハンドル基材部11よりも薄肉に構成したり、基材部10の長手方向に延びるV字状の溝部などを形成したりすることもできる。ただし、基材部10はその長手方向に延伸されており、延伸方向に沿って裂け易い構造なので、連結部13においてハンドル基材部11を比較的容易に切り離すことができる。
【0043】
(軟質部)
軟質部20は、
図1〜
図3に示すように、エラストマ材料を用いて基材部10に一体的に形成したもので、芯基材部12に被覆した清掃用軟質部21を備えている。
【0044】
軟質部20を構成するエラストマ材料としては、スチレン系、オレフィン系、ポリアミド系等の熱可塑性エラストマ材料や、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、合成ゴムなどの熱硬化性エラストマ材料などを採用できる。特に、基材部10を構成する合成樹脂材料との相溶性を有する材料が好ましく、例えば基材部10をポリエチレン樹脂で構成する場合で射出成形法を用いて軟質部20を形成する場合は、ポリオレフィン系エラストマ材料又はスチレン系エラストマ材料で構成することが好ましく、熱硬化性樹脂を用いて軟質部20を形成する場合には、安全性や使用時のやわらかさを付与するためにシリコンゴムなどのシリコン系材料で構成することが好ましい。
【0045】
清掃用軟質部21は、芯本体部12aに被覆した被覆部21aと、被覆部21aに長さ方向に間隔をあけて外方へ突出状に形成した複数の突起部21bとを有している。なお、被覆部21aの基端部に外方へ突出する環状の挿入規制突部を設けて、該挿入規制部により、歯間に対する清掃部2の最大挿入長さが規制されるように構成することも可能である。
【0046】
被覆部21aの肉厚は、厚すぎると被覆部21aの外形寸法が大きくなって歯間への挿入性が低下し、薄すぎると歯間清掃時に芯本体部12aから剥離し易くなるので、0.1mm〜0.3mmが好ましい。
【0047】
突起部21bは、被覆部21aの長さ方向に相互に間隔をあけて形成されるとともに、被覆部21aの周方向に間隔をあけて配置されている。突起部21bの基端部の横断面積や長さ、個数や配設ピッチは、任意に設定可能であるが、成形性及び清掃性を考慮して、突起部21bの基端部の横断面積は、0.03mm
2〜1.5mm
2程度が好ましく、突起部21bの長さは0.1mm〜2.0mm程度が好ましく、突起部21bの個数は20個〜100個が好ましく、突起部21bの配設ピッチは0.1mm〜1.5mmが好ましい。また、突起部21bとして、本実施の形態では棒状の円錐状のものを採用したが、これに何ら限定されず、断面形状も円形以外に楕円形や多角形などの任意の断面形状のものを採用できる。さらに、突起部21bは、棒状以外の任意の形状に構成したものを採用することも可能で、平坦な板状や波板状などの板状に構成することも可能で、軸方向に扁平な平板状の先細形状のものや、周方向に連続的に延びる半円形の板状のものなどを採用することもできる。
【0048】
この歯間清掃具1では、芯基材部12の長手方向が一軸延伸における延伸方向となるように、一軸延伸高密度ポリオレフィン系樹脂を用いて基材部10を構成しているので、
図6に仮想線で示すように、基材部10の長さ方向の途中部を折り曲げたときに、該折り曲げた形状に基材部10が形状保持されることになる。しかも、一軸延伸高密度ポリオレフィン系樹脂の密度を適正に設定しているので、清掃部2を歯間へ挿入するときに、芯基材部12が折れ曲がることを防止でき、しかも過剰な力が作用した場合には、芯基材部12が折れ曲がるだけで破断しないため、破断した清掃部2が口腔内に残ってしまうことを防止できる。また、
図6に実線で示すように、芯基材部12を直線状にした状態で、隣接する中切歯間や、中切歯と側切歯間を清掃できるので、歯間清掃具1の該歯間への挿入性及び清掃性を向上できる。更に、
図6に仮想線で示すように、芯基材部12を長さ方向の途中部の好みの位置で、好みの角度に折り曲げた状態で、臼歯間を清掃することができるので、歯間清掃具1の臼歯間への挿入性及び清掃性を向上できる。
【0049】
なお、本実施の形態では、
図7に示す歯間清掃具1Aのように、軟質部20として、清掃用軟質部21以外に、ハンドル基材部11に被覆した滑り止め部22を備えさせ、ハンドル基材部11と滑り止め部22とでハンドル部3Aを構成することも可能である。
【0050】
また、
図8に示す歯間清掃具1Bのように、突起部21bを省略して、被覆部21aのみからなる清掃用軟質部21Bを備えた清掃部2Bを設けることも可能である。この場合には、ディッピングや塗布などにより清掃用軟質部21Bを容易に形成することが可能となる。
【0051】
更に、清掃用軟質部21を省略して、基材部10のみから歯間清掃具を構成することも可能である。この場合には、芯基材部12の表面に凹凸部を形成して、清掃性を向上したり、芯基材部12の先端部を、隣接する歯の隣接面間を挿通し得る薄肉なヘラ状に構成して、デンタルフロスと同様に、芯基材部12の先端部で隣接面を清掃できるように構成したりすることもできる。
【0052】
更にまた、
図13に示す歯間清掃具1Dのように、基材部10における芯基材部12の構成を部分的に変更して、次のように構成することもできる。この歯間清掃具1Dの基材部10Dは、芯基材部12に代えて、芯本体部12aの長さ方向に間隔をあけて、芯本体部12aから側方へ突出する複数の突起部40を設けた芯基材部12Dを備えている。また、この歯間清掃具1Dの清掃部2Dは、複数の突起部40とともに芯本体部12aに対して、射出成形、ディッピング、吹付け又は塗布により清掃用軟質部21Dを被覆形成することで形成されている。清掃部2Dには、突起部40を清掃用軟質部21Dで被覆してなる複数の突起部41が形成され、これら複数の突起部41により歯間の清掃性が高められている。ただし、清掃用軟質部21Dを省略して、基材部10Dのみからなる歯間清掃具を構成することも可能である。なお、突起40の形状は、歯間清掃時に歯肉を傷付けない形状であれば、任意の形状に構成できる。
【0053】
また、
図9に示す歯間清掃具1Cのように、前記基材部10のうちのハンドル部3を省略した芯基材部12Cを設け、この芯基材部12Cと清掃用軟質部21とからなる清掃具本体30と、ハンドル部3としてのハンドル部材31とを別部材で構成して、ハンドル部材31の装着孔32に芯基材部12Cの基部12cを着脱可能に固定するように構成することも好ましい。この場合には、芯基材部12Cのみを一軸延伸高密度ポリオレフィン系樹脂で構成し、ハンドル部材31は任意の素材、任意の形状に構成できる。この歯間清掃具1Cでは、清掃具本体30のみを交換して、ハンドル部材31を繰り返し使用できるので、経済的であるとともに、使用後の廃棄物も少なくできる。
【0054】
<製造方法>
次に、歯間清掃具1の製造方法について説明する。
この製造方法は、押出工程と延伸工程と加工工程と表面処理工程と被覆工程とを備え、次のように構成されている。ただし、基材部10のみから歯間清掃具を構成する場合には、被覆工程は省略することになる。
【0055】
先ず、押出工程において、周知の押出機を用いて、ポリオレフィン系樹脂材料からなる樹脂シートを押出成形する。
【0056】
次に、延伸工程において、押出機から押出された樹脂シートを、
図10に示すように、密度が0.968〜0.980g/cm
3となるように矢印Aで示す一軸方向(押出方向)に、10〜40倍、好ましくは10〜30倍の延伸倍率で延伸させて、延伸樹脂シート40を製作する。このとき、延伸樹脂シート40の幅W3及び厚さT3が、基材部連結体15の幅よりも多少幅広で、基材部10の厚さと同じ厚さになるように、樹脂シートの幅及び厚さを設定するとともに、延伸倍率を設定する。ただし、延伸樹脂シート40として幅広なものを製作し、延伸後に、基材部連結体15の幅よりも多少広幅となるように裁断してもよい。
【0057】
次に、加工工程において、延伸樹脂シート40を用いて、複数の基材部10を併設してなる基材部連結体15を、芯基材部12の長手方向が延伸樹脂シート40の延伸方向となるように加工する。具体的には、
図10に仮想線で示すように、延伸樹脂シート40をプレスにより打ち抜いたり、マシニングの刃物で切削したり、ワイヤーカットやレーザカットにより裁断したりして、
図11に示す基材部連結体15を製作する。
【0058】
次に、表面処理工程において、芯基材部12のうちの清掃用軟質部21で被覆される芯本体部12aに対してその表面を粗面化する表面処理を施し、エラストマ材料からなる清掃用軟質部21と芯本体部12aとの接合強度を向上する。具体的には、プライマー処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、フレーム処理、紫外線照射処理、ブラスト処理などの化学的や物理的な表面処理を施して、芯本体部12aの表面に微細な凹凸を形成する。なお、この表面処理工程に代えて或いは表面処理工程と併用して、前記加工工程において、芯本体部12aにエンボス加工などを施すことも好ましい。また、この表面処理は、基材部10と軟質部20との接合強度を高めるために行うもので、清掃用軟質部21以外に軟質部20を形成する場合には、それに対応する基材部10の表面に対しても同様の表面処理を行うことが好ましい。例えば、歯間清掃具1Aのように滑り止め部22を設ける場合には、ハンドル基材部11のうちの滑り止め部22に対応する部分に対して表面処理を施すことになる。また、基材部10の表面の必要部分にのみ表面処理を施すことも可能であるし、必要部分を含む所望の領域に表面処理を施すこともできるし、基材部10の全表面に表面処理を施すことも可能である。
【0059】
次に、被覆工程において、基材部連結体15を金型にセットして、インサート成形によりエラストマからなる清掃用軟質部21などの軟質部20を成形することになる。ただし、突起部21bを省略した、
図8に示す歯間清掃具1Bを製作する場合や、基材部10Dの芯本体部12aに突起部40を形成した、
図13に示す歯間清掃具1Dを製作する場合には、溶融させたエラストマ材料に芯本体部12aを浸漬するディッピング方法、溶融させたエラストマ材料を芯本体部12aに吹付ける方法、溶融させたエラストマ材料を回転ローラから浸みださせながら塗布する方法などにより、清掃用軟質部21B、21Dを形成することができる。
【0060】
なお、芯基材部12の厚さを先端側へ行くにしたがって連続的或いは段階的に薄肉に構成する場合には、延伸工程と表面処理工程間に、延伸樹脂シート40のうちの芯基材部12に対応する部分の表面又は芯基材部12の表面を、切削又は研磨するテーパ加工工程を設けることになる。
【0061】
また、前記製造方法では、歯間清掃具1を複数連設してなる歯間清掃具連結体5を製作するように構成したが、加工工程において基材部10を個別に製作し、個別に製作した基材部10の芯本体部12aに対して、表面処理を施してから、エラストマ材料を被覆することで、歯間清掃具1を個別に製作することもできる。
【0062】
更に、
図10に仮想線で示すように、延伸樹脂シート40から基材部連結体15を打ち抜きなどにより製作するときに、隣接する基材部連結体15が同じ向きになるように打ち抜くと、延伸樹脂シート40の歩留まりが悪くなるので、
図12に仮想線で示すように、隣接する基材部連結体15が逆向きで、隣接する一方の基材部連結体15の隣接するハンドル部3間に、隣接する他方の基材部連結体15の芯基材部12が配置されるように、延伸樹脂シート40から基材部連結体15を打ち抜きなどにより製作することも好ましい実施の形態である。
【0063】
次に、歯間清掃具の評価試験について説明する。
(実施例1)
高密度ポリエチレン樹脂製の樹脂シートを、延伸方向に対する引張弾性率が15300MPa、厚さが0.2mm、密度が0.973g/cm
3となるように、一軸延伸してなる延伸樹脂シートを用いて、
図5に示すような形状の基材部を製作し、該基材部の芯本体部に、ポリオレフィン系エラストマ材料からなる清掃用軟質部をディッピングにより形成して、
図8に示すような実施例1の歯間清掃具を製作した。なお、密度は水−エタノールの混合液系の溶液を用いて、浮沈法により測定した。
【0064】
(実施例2)
延伸樹脂シートとして、延伸方向に対する引張弾性率が12400MPa、厚さが0.4mm、密度が0.970g/cm
3となるように、一軸延伸してなる延伸樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の歯間清掃具を製作した。
【0065】
(実施例3)
延伸樹脂シートとして、延伸方向に対する引張弾性率が10700MPa、厚さが0.8mm、密度が0.970g/cm
3となるように、一軸延伸してなる延伸樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の歯間清掃具を製作した。
【0066】
(実施例4)
延伸樹脂シートとして、延伸方向に対する引張弾性率が9240MPa、厚さが1.0mm、密度が0.968g/cm
3となるように、一軸延伸してなる延伸樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の歯間清掃具を製作した。
【0067】
(比較例1)
延伸樹脂シートに代えて、引張弾性率が20MPa、厚さが0.4mm、密度が0.920g/cm
3のポリエチレン樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の歯間清掃具を製作した。
【0068】
(比較例2)
延伸樹脂シートに代えて、引張弾性率が2236MPa、厚さが0.3mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の歯間清掃具を製作した。
【0069】
(比較例3)
延伸樹脂シートに代えて、引張弾性率が1900MPa、厚さが0.2mmのポリプロピレン樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の歯間清掃具を製作した。
【0070】
(比較例4)
ガラス繊維含有のポリプロピレン樹脂を射出成形してなる基材部を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4の歯間清掃具を製作した。
【0071】
前記実施例1〜4及び比較例1〜4の歯間清掃具を用いて、下記4種類の評価試験を行った。評価試験1〜3の試験結果を表1に示す。
【0072】
(評価試験1)
ニッシン社製の顎模型(D16D−500H)における第2大臼歯と第3大臼歯間に対して、屈曲することなく歯間清掃具の先端部を挿入できたか否かを検査し、挿入できた場合を「○」で表し、挿入できなかった場合を「×」で表した。
【0073】
(評価試験2)
芯基材部の途中部を90°折り曲げたときにおける、該芯基材部の破断の有無を検査し、折れなかった場合を「○」で表し、折れた場合を「×」で表した。
【0074】
(評価試験3)
芯基材部の途中部を90°折り曲げた後、手を放しても折り曲げた形状に芯基材部が維持されるか否かを検査し、形状が保持された場合を「○」で表し、元の形状に復帰した場合を「×」で表した。また、形状が保持されたば折曲部分が白化した場合を「△」で表し、65°まで復帰したものについては「×(65度)」と記載した。
【0075】
(評価試験4)
芯基材部を180°折り曲げて2つ折り状態にした第1状態と、元の直線状に復帰させた第2状態とに、繰り返して切換え操作した場合における、芯基材部の強度が低下する繰り返し回数を測定した。そして、10回以上繰り返しても強度が低下しない場合を「○」で表し、10回未満で強度が低下する場合を「×」で表した。また、10回未満で強度が低下するものについては、強度が低下した回数を記載した。なお、比較例1に関しては評価試験3において元の形状に復帰したので評価対象外とし、比較例4に関しては、芯基材部が破断するので、評価できなかった。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。