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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-119243(P2017-119243A)
(43)【公開日】2017年7月6日
(54)【発明の名称】溶液撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 11/00 20060101AFI20170609BHJP
   B01F 3/08 20060101ALI20170609BHJP
   H02K 33/18 20060101ALI20170609BHJP
【FI】
   B01F11/00 C
   B01F3/08 Z
   H02K33/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-256825(P2015-256825)
(22)【出願日】2015年12月28日
(71)【出願人】
【識別番号】509185251
【氏名又は名称】株式会社コンソナルバイオテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】315010167
【氏名又は名称】ケーディークロート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100174953
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 豪
(72)【発明者】
【氏名】田代 英夫
(72)【発明者】
【氏名】野田 紘憙
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 武利
【テーマコード(参考)】
4G035
4G036
5H633
【Fターム(参考)】
4G035AB36
4G035AE02
4G035AE15
4G035AE19
4G036AB12
5H633BB09
5H633BB10
5H633GG03
5H633GG06
5H633GG09
5H633GG17
5H633HH02
5H633HH07
5H633HH08
(57)【要約】
【課題】200μL以下の量の被撹拌液を1.5mm以下の深さを有する収容部において撹拌すること。
【解決手段】
200μL以下の量の被撹拌液(L)が収容され且つ1.5mm以下の深さ(h)を有する収容部(16)を有する被振動部(11)と、電流の流れるコイルが磁界によって受ける力で上下方向に沿って振動して、被撹拌液を撹拌する振動を付与するボイスコイルモータ(2)と、ボイスコイルモータ(2)に支持され、且つ、被振動部(11)に点接触可能に構成されて、ボイスコイルモータ(2)の振動を収容部(16)に伝達する振動伝達部(3)と、ボイスコイルモータ(2)を振動させる制御手段(C1)であって、被振動部(11)の共振周波数に基づき且つ予め設定された周波数範囲(A)で変動させながら、ボイスコイルモータ(2)を振動させる制御手段(C1)と、を備えた溶液撹拌装置(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
200μL以下の量の被撹拌液が収容され且つ1.5mm以下の深さを有する収容部を有する被振動部と、
電流の流れるコイルが磁界によって受ける力を動作原理として、上下方向に沿って振動して、被撹拌液を撹拌する振動を付与するボイスコイルモータと、
前記ボイスコイルモータに支持され、且つ、前記被振動部に対して点接触可能に構成されて、前記ボイスコイルモータの振動を前記収容部に伝達する振動伝達部と、
前記ボイスコイルモータを振動させる制御手段であって、前記被振動部の共振周波数に基づき且つ予め設定された周波数範囲で変動させながら、前記ボイスコイルモータを振動させる前記制御手段と、
を備えたことを特徴とする溶液撹拌装置。
【請求項2】
前記被振動部の低次の共振周波数に基づいた前記周波数範囲で変動させながら、前記ボイスコイルモータを振動させる前記制御手段、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の溶液撹拌装置。
【請求項3】
被撹拌液を撹拌する場合に、予め設定された第1の振幅の振動を付与すると共に、前記ボイスコイルモータを起動する場合に、前記第1の振幅よりも振幅の小さい第2の振幅まで第1の立上り時間で上昇させた後、前記第2の振幅から前記第1の振幅まで前記第1の立上り時間よりも短時間の第2の立上り時間で上昇させる前記制御手段、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の溶液撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬や検体液などの被撹拌液を撹拌する溶液撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、実験や分析などが行なわれる実験室において試薬などを撹拌する装置としては、ボルテックスミキサーやマグネチックスターラーが知られている。ボルテックスミキサーは、回転する回転部を有しており、例えば、被撹拌液が収容された試験管の底部が、前記回転部に押し当てられることで、試験管が揺さ振られ試験管内の被撹拌液が撹拌される。また、マグネチックスターラーでは、例えばビーカーに対して、被撹拌液と共に棒状の撹拌子を収容させ、ビーカーの底部から、磁力で、遠隔的に撹拌子を回転させることで、被撹拌液を撹拌する。すなわち、従来のボルテクスミキサーやマグネチックスターラーでは、回転する部材の回転力を利用して、被撹拌液を撹拌している。
【0003】
一方、回転する部材を用いずに被撹拌液を撹拌する構成も知られており、以下の特許文献1、2に記載の技術が知られている。
特許文献1としての特開2001−327846号公報には、台座(3)の上部に、上下方向に振動するピエゾ素子で構成された振動部(2)が支持され、さらに、振動部(2)の上部に対して板状の支持部(1)が支持され、支持部(1)上の表面(10)に液滴(A)が支持される構成が記載されている。特許文献1では、ピエゾ素子の振動周波数を一方向に掃引して、液滴(A)を振動させており、液滴(A)に、表面張力波の共振を引き起こして、液滴(A)を撹拌することが記載されている。特許文献1において、液滴(A)は表面(10)に対して接触角が70°以上であり、液滴(A)は5μLの構成が記載されている。
【0004】
特許文献2としての特許第3879676号公報には、複数のウエル(7a)を有するマイクロタイタープレート(7)が載置テーブル(6)に支持され、下方の振動アクチュエータ(22)の振動が、板ばね部材(23)を介して載置テーブル(6)に伝達される構成が記載されている。特許文献2では、振動アクチュエータ(22)の振動周波数を徐々に上げてマイクロタイタープレート(7)等に共振を起こしており、マイクロタイタープレート(7)内の溶媒と化合物の溶解を促進している。なお、特許文献2では、振動アクチュエータ(22)の出力端(22a)は水平方向に延びており、出力端(22a)に対して上下方向に延びる板ばね部材(23)が支持され、板ばね部材(23)の上端が載置テーブル(6)に支持されている。よって、特許文献2では、振動アクチュエータが振動する場合に、出力端(22a)や、板バネ部材(23)、載置テーブル(6)は水平方向に振動する構成であり、マイクロタイタープレート(7)は振動の伝達される方向に対して横に振動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−327846号公報(「0012」、「0018」、「0019」、図1
【特許文献2】特許第3879676号公報(「0021」〜「0036」、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マグネチックスターラーでは、撹拌子を被撹拌液に入れて回転させる。したがって、容器が浅い場合には、撹拌子が回転した場合に液が飛び散り易い。また、容器が浅い場合には、そもそも撹拌子を容器内に配置できない場合もある。したがって、マグネチックスターラーは、浅い容器の液の撹拌には適さない。
また、ボルテックスミキサーでは、回転部が重力方向に延びる軸を中心として回転しており、回転部が接触する容器は水平方向に揺さ振られる。このとき、容器内では、被撹拌液が遠心力で外周側に偏ったり、側壁に当たったりし易い。よって、浅い容器を使用する場合、ボルテックスミキサーでは、被撹拌液が飛び散る恐れがある。
【0007】
さらに、特許文献2には、振動アクチュエータ(22)の振動により、マイクロタイタープレート(7)を振動させて液を撹拌する構成が記載されている。しかしながら、特許文献2のマイクロタイタープレート(7)は横に振動し、水平方向に振動する。よって、液も水平方向に振られ易く、マイクロタイタープレート(7)には深さがないと液が飛び散る恐れがある。
したがって、従来の回転力を利用した撹拌装置や、特許文献2に記載の構成では、浅い容器に収容された液を撹拌するのに適していない。
【0008】
一方、特許文献1には、ピエゾ素子を重力方向に振動させて、板部材上の液滴を撹拌する構成が記載されている。しかしながら、ピエゾ素子では、一般に生じる振幅が小さい。ここで、本願発明者らの実験によると振動の振幅が小さ過ぎる場合には、被撹拌液が流動し難いという問題が確認されている。そもそも、特許文献1では、接触角が70°以上の液滴が対象とされており、5μLの液滴が撹拌されている。よって、特許文献1の構成を、例えば100μLの液を撹拌する構成に単純に適用することは困難である。
【0009】
本発明は、200μL以下の量の被撹拌液を1.5mm以下の深さを有する収容部において撹拌することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の溶液撹拌装置は、
200μL以下の量の被撹拌液が収容され且つ1.5mm以下の深さを有する収容部を有する被振動部と、
電流の流れるコイルが磁界によって受ける力を動作原理として、上下方向に沿って振動して、被撹拌液を撹拌する振動を付与するボイスコイルモータと、
前記ボイスコイルモータに支持され、且つ、前記被振動部に対して点接触可能に構成されて、前記ボイスコイルモータの振動を前記収容部に伝達する振動伝達部と、
前記ボイスコイルモータを振動させる制御手段であって、前記被振動部の共振周波数に基づき且つ予め設定された周波数範囲で変動させながら、前記ボイスコイルモータを振動させる前記制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の溶液撹拌装置において、
前記被振動部の低次の共振周波数に基づいた前記周波数範囲で変動させながら、前記ボイスコイルモータを振動させる前記制御手段、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の溶液撹拌装置において、
被撹拌液を撹拌する場合に、予め設定された第1の振幅の振動を付与すると共に、前記ボイスコイルモータを起動する場合に、前記第1の振幅よりも振幅の小さい第2の振幅まで第1の立上り時間で上昇させた後、前記第2の振幅から前記第1の振幅まで前記第1の立上り時間よりも短時間の第2の立上り時間で上昇させる前記制御手段、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、200μL以下の量の被撹拌液を1.5mm以下の深さを有する収容部において短時間で撹拌することができる。
請求項2に記載の発明によれば、高次の共振の場合に比べて、ボイスコイルモータを振動させる周波数を低くし易く、被撹拌液を振動に追従させ易くすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、第1の振幅まで一気に上げる場合に比べて被撹拌液の飛び散りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の実施例1の溶液撹拌装置の説明図であり、図1Aは全体説明図、図1Bは上方から見た場合に対応しチップカセットを有する被振動部に振動伝達部が接触する位置の説明図である。
図2図2は本発明の実施例1の溶液撹拌装置に関して溶液撹拌装置のボイスコイルモータを振動させる周波数と溶液撹拌装置で振動モードが生じる共振周波数との説明図である。
図3図3は実験例1の説明図であり周波数と振幅の測定結果の説明図である。
図4図4は実験例2と実験例3の説明図であり、図4Aは実験例2のチップカセットの配置位置の説明図、図4Bは点接触でチップカセットを振動させた場合の説明図、図4Cは面接触でチップカセットを振動させた場合の比較の説明図、図4Dは実験例3のチップカセットの配置位置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例1の溶液撹拌装置の説明図であり、図1Aは全体説明図、図1Bは上方から見た場合に対応しチップカセットを有する被振動部に振動伝達部が接触する位置の説明図である。
図1において、実施例1の溶液撹拌装置1は、電流の流れるコイルが磁界によって受ける力を動作原理として、上下方向に沿って振動可能なボイスコイルモータ2を有する。実施例1のボイスコイルモータ2は上下に延びる円柱状に形成されており、円形の中心部に振動源本体が配置されている。実施例1のボイスコイルモータ2では、振動源本体が上下方向に移動可能に支持されている。振動源本体にはコイルが巻かれており、コイルは通電可能に構成されている。前記振動源本体は、水平方向に沿った向きを有する磁界中に配置されている。ここで、フレミング左手の法則により、電流の流れるコイル部分が、磁界によって受ける力の向きは、電流が流れる方向に直交し、且つ、磁界の方向に直交する向きとなる。よって、実施例1のボイスコイルモータ2では、コイルに電流が流れると、コイルには上下方向に沿った力が作用し、振動源本体が上下方向に振動することになる。
ボイスコイルモータ2の上部中央には、振動伝達部の一例として、上方に向かって延びる延長筒3が支持されている。延長筒3は、ボイスコイルモータ2に支持される下方の円筒部3aと、前記円筒部3aの上方に形成され且つ上方に行くに連れて径が小さくなる接触部3bと、を有する。
【0017】
延長筒3の上方には、前記ボイスコイルモータ2により振動が付与される被振動部11が配置されている。被振動部11は、被撹拌液Lが収容されるチップカセット12と、チップカセット12が着脱可能に支持されるホルダ13と、を有する。
容器の一例としてのチップカセット12は、被撹拌液Lが収容されるカセット本体14を有する。カセット本体14の下部には、正四角板状の底部15が形成されている。なお、実施例1では、底部15が正四角板状の構成を例示したが、これに限定されない。例えば、底部15は、円形板状、長方形板状など、任意の形の板状にすることが可能である。底部15の上面には、重心位置に対応して、収容部の一例としての撹拌部16が形成されている。実施例1の撹拌部16は、底部15上面に対して凹んだ円形形状に形成されている。撹拌部16は、底部15上面からの深さhが1.5[mm]以下に設定されている。撹拌部16の底面は親水性に処理されている。
【0018】
撹拌部16には、200[μL]以下の被撹拌液Lが収容可能に構成されている。特に、撹拌部16には、50[μL]〜150[μL]の被撹拌液Lが好適に収容可能である。撹拌部16には、被撹拌液Lとして、試薬と試薬の対象液や、検体液、洗浄液、抗体試薬、発光試薬等、任意の撹拌対象の液が収容可能である。
なお、実施例1では、撹拌部16は凹んだ構成を例示したが、これに限定されない。例えば、底部15上面に、円環状に疎水部を形成して、疎水部の内側を撹拌部とすることも可能である。すなわち、深さhを0[mm]とすることが可能であり、撹拌部16は、深さhを、0[mm]≦h≦1.5[mm]に設定可能である。なお、疎水部に関しては、例えば、特開2013−24605号公報等に記載の構成を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。なお、200[μL]は撹拌部の容量である。また、被撹拌液Lの表面張力や粘性などの液性によっては、150[μL]以上では溢れ易い場合があり、50[μL]以下では量が少な過ぎて撹拌され難い場合があった。
【0019】
底部15の上下左右には、上方に向かって延びる容器壁17が支持されている。底部15と、撹拌部16と、容器壁17とにより、実施例1のカセット本体14が構成されている。なお、実施例1では、容器壁17の上端には、カセット本体14の上方を覆うカバー18が支持されている。カバー18には、撹拌部16の上方に対応して、被撹拌液Lの供給口18aが形成されている。カセット本体14と、カバー18とにより、実施例1のチップカセット12が構成されている。なお、実施例1のチップカセット12の底部15とカバー18は透明部材で構成されており、被撹拌液Lの状態を外部から観察可能に構成されている。ここで、実施例1では、底部15とカバー18の両方ともが透明部材である構成を例示したが、これに限定されない。例えば、底部15を透明部材で構成し、カバー18は非透明の部材で構成するなど、片方のみを透明部材で構成することが可能である。また、外部から観察しない場合などには、底部15とカバー18の両方ともを非透明の部材で構成することも可能である。
【0020】
図1において、容器の保持部の一例としてのホルダ13は、チップカセット12の下面を支持する板状の温調部21と、チップカセット12の外周形状に対応して配置された側壁部22とを有する。よって、チップカセット12がホルダ13に装着された場合、チップカセット12は、温調部21と側壁部22とに接触した状態で保持される。温調部21は、例えば、高抵抗導電性ポリマーをポリイミドフィルムで挟んだサンドイッチ構造により構成することが可能であり、外部から電力が供給されて発熱可能に構成されている。すなわち、温調部21により、チップカセット12が予め設定された温度、例えば38度に保持され、内部の被撹拌液Lの反応を促進可能に構成されている。
【0021】
なお、温調部としては、例示した温調部21に限定されず、任意の温調の構成を使用可能である。例えば、アルミブロックの底面に発熱体を貼り付けて温調部21とし、チップカセット12がホルダ13に装着された場合に、チップカセット12の底面が当該発熱アルミブロックに接触することで、チップカセット12内の被撹拌液Lを加温する構成も可能である。なお、アルミブロックの熱容量に応じた余熱の効果を加温の補助に利用することも可能である。
【0022】
また、温調部21はホルダ13に固定支持された構成に限定されず、温調部21をホルダ13に対して接近離間可能にする構成も可能である。例えば、温調部21を発熱アルミブロックで構成し、ホルダ13の下部には温調部21に替えて開口を設ける。そして、加温時には当該発熱アルミブロックをホルダ13に接近させ開口を介してチップカセット12の底面に接触させると共に、加温しないときは当該発熱アルミブロックをチップカセット12の底面から離間させるような構成も想到できる。よって、アルミブロックなどを離間させることで、ホルダ13に支持させたままチップカセット12を下方から観察可能にすることも考えられる。
チップカセット12と、ホルダ13とにより、実施例1の被振動部11が構成されている。
【0023】
ここで、実施例1では、被振動部11と延長筒3とは接触した状態で保持される。このとき、接触部3bは上方に凸の形状であり、温調部21の下面は平面形状である。したがって、温調部21に対して延長筒3は点接触する。特に、実施例1では、図1Bに示すように、点接触の位置P1が、チップカセット12の撹拌部16の中心位置に対応して設定されている。よって、実施例1の被振動部11には、位置P1から振動が伝達される。
【0024】
溶液撹拌装置1は、ボイスコイルモータ2を制御する制御部Cを有する。
制御部Cは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oや、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリ、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリ、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置等を有する。したがって、実施例1の制御部Cは、情報処理装置、いわゆるコンピュータにより構成されている。よって、制御部Cは、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0025】
実施例1の制御部Cは、ボイスコイルモータ2を振動させる制御手段の一例としての撹拌手段C1を有する。
撹拌手段C1は、振幅の制御手段C1aと、周波数の制御手段C1bとを有する。撹拌手段C1は、被振動部11の共振周波数に基づき且つ予め設定された周波数範囲Aで変動させながら、ボイスコイルモータ2を振動させる。実施例1の撹拌手段C1は、正弦波を出力するファンクションジェネレータやアンプ等を含む図示しない駆動回路を介して、ボイスコイルモータ2を振動させる。
振幅の制御手段C1aは、ボイスコイルモータ2の振動の振幅を制御する。実施例1の振幅の制御手段C1aでは、振幅を、撹拌開始(0[Vpp])から10[Vpp]まで、立上り時間Tr=10[秒]で上昇させ、10[Vpp]から20[Vpp]まで、立上り時間Tr=2[秒]で上昇させる。以降の撹拌中は振幅を20[Vpp]で保持する。
【0026】
図2は本発明の実施例1の溶液撹拌装置に関して溶液撹拌装置のボイスコイルモータを振動させる周波数と溶液撹拌装置で振動モードが生じる共振周波数との説明図である。
図2に関し、理論的には、振動系に振動モードを生じさせる共振周波数は、振動系の質量の増加に伴って低くなる。
すなわち、ボイスコイルモータ2により振動する振動系において、チップカセット12がセットされていない場合に、1次モードの共振周波数がf1であり、2次モードの共振周波数がf2であるとする。このとき、ボイスコイルモータ2にチップカセット12がセットされて振動系の質量が増加すると、各振動モードの共振周波数f1,f2は周波数が低くなる方向に原則シフトする。すなわち、図2において、チップカセット12がセットされる前の実線に対応する共振周波数f1,f2から、チップカセット12がセットされた後の一点鎖線で示される共振周波数f1′,f2′に原則シフトする。
【0027】
ここで、周波数の制御手段C1bは、ボイスコイルモータ2の振動の周波数を制御する。すなわち、周波数の制御手段C1bは、周波数範囲Aで振動の周波数を変動させる。前記周波数範囲Aは、被振動部11の共振周波数に基づいて設定される。実施例1の周波数範囲Aは、被振動部11の低次の共振周波数に基づいて設定される。
【0028】
具体的には、実施例1では、被振動部11に2次の振動モード、いわゆる、2次モードを生じさせる共振周波数f2′を含む周波数範囲Aに設定される。周波数範囲Aは、実験により設定される。実施例1では、周波数範囲Aとして、2次モードの共振周波数52[Hz]を中心として、上下に5[Hz]広がった周波数の範囲が設定されている。周波数の制御手段C1bは、周波数を、52[Hz]を中心として、上限1秒、下限2秒の間隔で、±5[Hz]の範囲で変調させる。すなわち、実施例1の周波数の制御手段C1bは、周波数を47〜57[Hz]の範囲で変調させる際に、1秒〜2秒の周期で変調させる。
【0029】
なお、実施例1で設定された中心周波数52[Hz]と変調範囲±5[Hz]といった具体的な数値は、例示した値に限定されない。したがって、形状や材質などの構成が異なるチップカセットであれば、中心周波数、変調範囲などは変更可能である。すなわち、実施例1の周波数の制御手段C1bでは、使用される設定値がチップカセットの重量と形状によって最適値に補正できるように、図示しないソフトウェアを実行することで簡単に変更可能に構成されている。
【0030】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の溶液撹拌装置1では、溶液の一例としての200[μL]以下の被撹拌液Lが、撹拌部16に収容された状態で、チップカセット12がホルダ13に装着される。ここで、チップカセット12の撹拌部16の深さhは1.5[mm]以下に設定されている。また、被撹拌液Lが接する撹拌部16の底面は親水性に処理しているので、被撹拌液Lは、深さ方向の厚みが1.5[mm]以下程度になり易く、いわば、薄層状の液形態で撹拌部16に支持されている。よって、実施例1の溶液撹拌装置1には、薄層状の被撹拌液Lがセットされる。そして、溶液撹拌装置1では、撹拌開始の入力があると、撹拌手段C1がボイスコイルモータ2を制御してボイスコイルモータ2を上下方向に振動させる。
【0031】
このとき、上方の被振動部11には、延長筒3を介して、上下方向に沿った振動が伝達される。よって、上下方向の振動に基づいて被振動部11が振動する。この際に、ボイスコイルモータ2の周波数は、予め設定された前記周波数範囲Aで周期的に変調される。ここで、実施例1のチップカセット12は略板状の扁平な構成である。よって、チップカセット12が振動する場合には曲げの振動だけではなく捻りの振動も含む振動が生じ易い。したがって、捻り方向にも振動する振動モードの作用により、チップカセット12内の薄層状の被撹拌液Lが撹拌される。
【0032】
ここで、実施例1の溶液撹拌装置1では周波数が変調されている。よって、被振動部11は、振動モードが生じたり解消されたりしながら振動する。本願発明者らの実験によれば、ボイスコイルモータ2を共振周波数のみで制御すると、被撹拌液Lの撹拌が進み難い場合が確認された。これは、共振周波数により生じる振動モードでは、いわゆる腹の位置では液が大きく振動するが、節の位置では液が振動し難いからではないかと考えられる。よって、共振周波数に固定した制御では、腹と節の位置が固定され、いわゆる定常波(定在波)が生じ、液の流動する範囲が制限され易い。これに対して、周波数が変調される実施例1では、定常波の腹や節の位置が変化して行き、変調されない場合に比べて被撹拌液Lが混ざり易くなっているものと考えられる。
【0033】
また、例えば、片持ちの梁などでは、捻りを有さない曲げのみの振動モードが生じることが知られているが、曲げのみの振動モードでは、捻りを有する振動モードに比べて、共振時の振動波形が単純になり易い。つまり、曲げの振動モードで被撹拌液Lを撹拌しようとしても、上下方向など、振幅方向が一つの方向に偏り易くて、撹拌に時間が掛かる恐れがある。これに対して、捻り方向にも振動する振動モードでは、上下方向に対して捻る方向の振動が加わり、被撹拌液Lを撹拌させる方向の力が作用し易くなる。よって、被振動部11に対して捻り方向にも振動する振動モードを含む実施例1では、曲げのみの振動モードに比べて、撹拌され易くなっている。
【0034】
また、実施例1の振動モードは低周波数の2次モードである。ここで、一般に、高次の振動モードになればなるほど、周波数が高くなって振動の変化が早くなる。また、高次になると、被振動部11では、腹や節などが増加して被振動部11の剛性が抵抗として作用し易く、振幅も小さくなる。したがって、被撹拌液Lが十分には追従し難く、かつ、被撹拌液Lを撹拌するに足るエネルギーがないため、被撹拌液Lの流動や撹拌が不十分となる恐れがある。よって、低次の振動モードの方が撹拌には望ましいと考えられる。すなわち、高次の振動モードに比べて、2次などの低次の振動モードの方が撹拌には望ましく、低次であるほどより好ましい。
【0035】
なお、後述する実験によると、実施例1の1次モードの共振周波数f1′では、撹拌が進み難いことが確認された。ここで、実験では、チップカセット12の取り付け前後の1次モードの共振周波数f1,f1′が、チップカセット12の取り付け前後で、ほとんどシフトしていない。よって、1次モードの共振周波数f1′は、振動モジュールのみの共振周波数f1に対応する共振周波数であり、大きく振動はしたが、被振動部11の共振周波数には基づいていないため撹拌が進みにくかったものと考えられる。
【0036】
また、実施例1では、上下方向の振動を伝達して被振動部1を振動させている。ここで、従来のボルテックスミキサーなどの撹拌装置では、回転力など、水平方向に沿った横方向の振動で液を撹拌している。しかしながら、薄層状の液では、粘性や表面張力の影響を受け易く、底面に沿った振動では流動し難くて撹拌され難い。したがって、薄層状の被撹拌液Lを流動させるには振動力を大きくする必要があって、従来の構成では、被撹拌液Lが遠心力で一方に偏り続けてしまって撹拌されなかったり、容器の壁に当たって液が飛び散ったりする問題があった。これに対して、上下方向に沿った振動が伝達される実施例1では、底面に沿った振動が作用する場合に比べて、液が撹拌部16から側方に出難くなっている。
【0037】
そのうえ、実施例1では、振幅は、撹拌開始の入力があった場合に、最初から目標値である20Vppに短時間(Tr=2秒)で上昇させるのではなく、10[Vpp]まで比較的ゆっくり(Tr=10秒)と上昇させる。実験の結果、短時間で、撹拌可能な目標値まで上昇させると、試薬等が飛び散ったりすることがあったが、比較的ゆっくり行うと、試薬の飛び散りが防止できた。
したがって、実施例1では、飛び散りが抑制された状態で撹拌され易くなっている。
【0038】
また、実施例1では、延長筒3がホルダ13の温調部21に点接触している。ここで、延長筒3を省略する場合には、ボイスコイルモータ2の上面が温調部21に面接触する構成となり易い。面接触では、ミクロに見ると面上の一点で接触すると考えられ、面の公差や振動時の傾斜のバラツキにより、ボイスコイルモータ2と被振動部11との接触位置はバラつき易い。よって、被振動部11の振動が安定せず、撹拌が不安定になる恐れがある。これに対して、実施例1では、延長筒3を介して点接触で振動が伝達される。したがって、被振動部11に対して、定まった位置で振動が伝達され易い。よって、実施例1では、被振動部11に安定して振動モードを生じさせ易くなっている。
【0039】
なお、実施例1では、ボイスコイルモータ2は、いわゆる、可聴音域の周波数で制御されている。ここで、超音波、すなわち、kHzやMHzオーダの高周波の振動源で実験を行ったが撹拌されなかった。これは、原因は不明であるが、波長が短か過ぎたり、振幅が小さ過ぎて、液が流動し難いためではないかと考えられる。
また、可聴音域の周波数の振動を、スピーカを用いて非接触、すなわち、気体や液体を介して伝達する場合には振動が被振動部に十分伝達できず撹拌ができなかった。
【0040】
(実験例1)
次に、実施例の効果を確認するための実験を行った。
実験例1では、ボイスコイルモータ2として、直径115φ[mm]、定格最大入力が20[W]の振動モジュールを使用した。なお、振動モジュールとは、スピーカと動作原理も構成、構造も基本的には同様に構成された振動機構であり、振動モジュールの中心部に配置したボイスコイルモータに、振動平板が固定された振動機構である。すなわち、スピーカでは、中心部に配置されたボイスコイルモータには、コーン紙が固定されるが、振動モジュールでは、コーン紙に替えて振動平板が固定されている。そして、実験例1では、前記振動モジュールを使用して、周波数[Hz]と振幅[mmP−P]との関係を測定した。また、振動モードが生じる周波数において撹拌実験を行なった。
【0041】
具体的には、振動モジュールの下方に3つの防振インシュレータを配置し、振動モジュールを3点支持した。また、振動モジュールの上面中央部に対向して上方の位置にレーザ変位計を配置し、レーザ変位計により、振動の変位、すなわち、振幅を測定した。測定は、チップカセット12を取り付けない場合と、チップカセット12を取り付けた場合とについて行った。なお、チップカセット12を取り付ける場合には、延長筒3に相当する棒状部材の一例としてのポールを振動モジュールの上面中央部に固定し、ポールの先端部にホルダおよびチップカセットを支持させた。
【0042】
図3は実験例1の説明図であり周波数と振幅の測定結果の説明図である。
図3の実線で示すように、チップカセット12を振動モジュールに取り付けない場合には、周波数が15[Hz]の場合に大きい振幅が生じて1次モードが確認された。また、周波数が60[Hz]の場合に大きい振幅が生じて2次モードが確認された。
一方、チップカセット12を振動モジュールに取り付けた場合には、図3の一点鎖線で示すように、周波数が15[Hz]の場合に大きい振幅が生じ、1次モードが確認された。また、周波数が52[Hz]の場合に大きい振幅が確認され、2次モードが確認された。したがって、チップカセット12が取り付けられ、振動系の質量が増加した場合に、低次の2次モードの共振周波数が、周波数が低くなる方向にシフトしたことが確認された。なお、1次モードの共振周波数15[Hz]は、チップカセット12の取り付け前後でほとんどシフトしていないことが確認された。よって、1次モードの共振周波数15[Hz]は、周波数がほとんどシフトしていないことから、チップカセット12ではなく振動モジュールの共振周波数に対応する共振周波数であると考えられる。
【0043】
次に、特定された振動モードの周波数に基づいて振動モジュールを制御して撹拌実験を行った。撹拌実験では、チップカセット12に100[μL]の純水を注入し、マーカとして絵の具を数滴垂らした。
2次モードの共振周波数52[Hz]に対応させて、47〜57[Hz]の範囲で変調しながら振動モジュールを制御したところ、10秒以下で撹拌された。また、純水の量を70[μL]にして同様の撹拌実験を行ったところ、10秒以下で撹拌された。このとき、捻り方向にも振動していた。しかしながら、1次モードの共振周波数15[Hz]に基づいた周波数範囲で撹拌実験を行ったところ、チップカセット内で液の流動が確認できず、撹拌には至らなかった。ここで、1次モードの共振周波数15[Hz]は、振動モジュールの共振周波数に対応する共振周波数であり、そのため、1次モードでは、振動モジュールの振動が支配的となり、チップカセット12が共振し難いため、液が撹拌には至らなかったものと考えられる。
【0044】
(実験例2)
図4は実験例2と実験例3の説明図であり、図4Aは実験例2のチップカセットの配置位置の説明図、図4Bは点接触でチップカセットを振動させた場合の説明図、図4Cは面接触でチップカセットを振動させた場合の比較の説明図、図4Dは実験例3のチップカセットの配置位置の説明図である。
図4A図4Bにおいて、実験例2では、実験例1と同様に、直径115φ[mm]、定格最大入力20[W]の振動モジュールを使用した。また、薄いアルミ板13′の上方にチップカセット12を固定し、振動モジュールからの振動を点接触でアルミ板13′の下面中央部に伝達する構成とした。実験例2では、オシロスコープを使用して、振動モジュールへの振幅入力を確認した。
【0045】
図4A図4Bにおいて、実験例2では、チップカセット12に100[μL]の純水L1を注入した。また、純水L1中には、マーカL2として絵の具を1〜2滴、垂らした。そして、振動モジュールを制御して振動させた。このとき、振幅は、撹拌開始(0[Vpp])から10[Vpp]まで、立上り時間Tr=10[秒]で上昇させ、且つ、10[Vpp]から20[Vpp]まで、立上り時間Tr=2[秒]で上昇させた。以降の撹拌中は、振幅を20[Vpp]で保持した。このとき、周波数は予め設定された周波数範囲47〜57[Hz]で変調させた。
【0046】
図4Bにおいて、振動モジュールの入力を開始してから、20秒から30秒後に、マーカL2が純水L1全体に広がり純水L1全体とマーカL2が撹拌されたことが確認された。ここで、振幅を、立上り時間Tr=10[秒]で、撹拌開始(0[Vpp])から、撹拌可能な目標値の振幅20[Vpp]まで一気に上昇させた場合には、純水L1の跳ね上がりや、飛び散りの問題が生じた。また、最大振幅を10[Vpp]とした場合には、撹拌されなかった。なお、振幅が20[Vpp]を超える出力は、VCM駆動回路の定格を超えるため確認していないが、問題なく撹拌されるものと推察される。
【0047】
なお、実験例2に対する比較の実験も行なった。比較の実験では、振動モジュールからの振動を面接触でアルミ板13′の下面に伝達させた点以外は実験例2と同様に行った。図4Cにおいて、面接触の場合には、マーカL2が純水L1全体には広がらず、マーカL2の混ざった一部分が固まり状にチップカセット内を移動する様子が観測された。すなわち、面接触では撹拌不良が生じることが確認された。
【0048】
(実験例3)
図4Dにおいて、実験例3では、直径20φ[mm]、定格入力20[W]のボイスコイルモータを使用した。そして、薄いアルミ板13″の上には、4つのチップカセット12を配置した。また、ボイスコイルモータからの振動を点接触でアルミ板13″の下面中央部に伝達する構成とした。
実験例3では、各チップカセット12には、100[μL]の純水L1を注入した。また、純水L1中には、マーカL2として絵の具を1〜2滴、垂らした。そして、ボイスコイルモータを制御して振動させた。このとき、振幅は、撹拌開始(0[Vpp])から5[Vpp]まで、立上り時間Tr=10[秒]で上昇させ、且つ、5[Vpp]から10[Vpp]まで、立上り時間Tr=2[秒]で上昇させた。以降の撹拌中は、振幅を10[Vpp]で保持した。これらの点以外は、実験例2と同様にして撹拌を行ったところ、各チップカセットにおいて純水L1全体とマーカL2とが撹拌されたことが確認された。よって、複数のチップカセットを同時に撹拌可能であることが確認された。
【0049】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H08)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、溶液撹拌装置1では、被撹拌液Lが撹拌される容器としてチップカセット12の構成を例示したが、これに限定されない。例えば、チップカセット12からカバー18が省略されたカセット本体14のみを使用して撹拌することも可能である。また、カセット本体14からさらに容器壁17が省略された、底部15と撹拌部16のみを使用して撹拌することも可能である。さらに、スライドガラスのような深さhが0の板状部材で被撹拌液Lを支持、収容して撹拌する構成も可能である。なお、例えば、スライドガラス上で被撹拌液Lが撹拌された場合には、撹拌後の液を移し替えることなく顕微鏡などで観察することが可能となる。
【0050】
(H02)前記実施例では、低次モードの一例としての2次モードの共振周波数を含む周波数範囲Aでボイスコイルモータを制御する構成を例示したが、これに限定されない。振動モードが被振動部11に生じる共振周波数を含む周波数範囲Aであれば、被振動部11の共振周波数に基づいた任意の周波数範囲Aでボイスコイルモータ2の周波数を変調させる構成が可能である。
(H03)前記実施例において、被振動部11では、ホルダ13に対してチップカセット12が一つ支持される構成を例示したが、これに限定されない。ホルダ13に対して複数のチップカセット12が支持される構成として、複数のチップカセット12を同時に撹拌する構成が可能である。
【0051】
(H04)前記実施例において、温調部21はホルダ13に支持されていたり、ホルダ13に固定された構成を例示したが、これに限定されない。チップカセット12の下面に発熱体を設けると共に、ホルダ13に発熱体に接触する電極を設け、ホルダ13から給電してチップカセット12を加温する構成も可能である。
(H05)前記実施例において、延長筒3の上部の接触部3bが、錐状に形成されて点接触する構成を例示したが、これに限定されず、凸の曲面状の構成など、上方に凸の任意の形状が可能である。
【0052】
(H06)前記実施例において、ボイスコイルモータ2とホルダ13とが一体的に組み付けられた溶液撹拌装置1の構成を例示したが、これに限定されない。例えば、溶液撹拌装置1は、自動分析装置に適用された構成も可能である。すなわち、ホルダ13は自動分析装置においてチップカセット12を保持して移送する構成とする。そして、ホルダ13がボイスコイルモータ2の配置位置に移動した場合に、ボイスコイルモータ2や延長筒3などをホルダ13に接近させて接触させ、ホルダ13に振動を伝達して被撹拌液Lを撹拌させる構成などが可能である。なお、撹拌後には、延長筒3等をホルダ13から退避させ、延長筒3等が離間したホルダ13で、撹拌後のチップカセットをさらに移送させることなどが可能となる。ここで、延長筒3は上方に凸に形成されており、ホルダ13に対して点接触可能である。したがって、例えば、取り付け誤差や接近移動時のがたつきなどで延長筒3が傾斜しても、面接触の場合に比べて接触位置がずれ難く、ホルダ13等に対して安定した位置で振動が伝達され易い。
【0053】
(H07)前記実施例において、例示した具体的な数値は、本願発明の作用、効果を奏する範囲内において、装置の構成やサイズ等の設計上、使用上の違いに応じて任意の数値に変更可能である。
(H08)前記実施例において、振動伝達部として延長筒3の構成を例示したが、これに限定されない。例えば、棒状の部材、いわゆる、ポールをボイスコイルモータの上部中心に固定し、ポールを介して、被振動部11に振動を伝達させる構成も可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…溶液撹拌装置、
2…ボイスコイルモータ、
3…振動伝達部、
11…被振動部、
16…収容部、
C1…制御手段、
L…被撹拌液。
図1
図2
図3
図4