【実施例】
【0011】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例をブラシレスモータを例に説明する。以下の実施例の説明から本発明は交流形モータにも適用可能であることは当業者であれば直ちに理解できるであろう。
【0012】
図1、
図2は本発明の第1実施例の同心二軸モータ100を示す。同心二軸モータ100は、8極6スロットの3相駆動モータであり、内外に配置した第1、第2のモータ10、20を有する。内周側に位置する第1モータ10はインナーロータ形モータで構成されている。他方、外周側に位置する第2モータ20はアウターロータ形モータで構成されている。
【0013】
内周側に位置する第1モータ10(インナーロータ形モータ)は、同心二軸モータ100の第1出力軸102に固定された第1回転子2を有する。外周側に位置する第2モータ20(アウターロータ形モータ)は、第1出力軸102を中心とした円筒状の形状を有するアウター22を有し、アウター22の内周面に第2回転子24が位置決めされている。アウター22は、その軸線方向一端にスリーブ26を有し、スリーブ26の中を第1出力軸102が貫通している。スリーブ26は第1出力軸102と同心である。スリーブ26と第1出力軸102との間には第1軸受40が介装され、この第1軸受40によってスリーブ26と第1出力軸102とは互いに相対回転可能である。第2モータ20に含まれるスリーブ26は、同心二軸モータ100の第2出力軸104を構成する。
【0014】
第1出力軸102を中心として内外に位置する第1モータ10と第2モータ20との間の境界領域Bには、第1モータ10(インナーロータ形モータ)の第1固定子4と、第2モータ20(アウターロータ形モータ)の第2固定子28とが位置決めされている。
【0015】
図示の同心二軸モータ100は3相モータである。
図1を参照して、第1モータ10(インナーロータ形モータ)の第1回転子2は8個の永久磁石からなる第1の永久磁石群PM(1)で構成されている。第1の永久磁石群PM(1)は、第1出力軸102を中心とする第1円周上に等間隔に配置されている。第1の永久磁石群PM(1)を構成する各磁石はN極とS極とが交互に且つ互いに隣接して配置されている。
【0016】
第2モータ20(アウターロータ形モータ)の第2回転子24は、円筒状のアウター22に固定された8個の永久磁石からなる第2の永久磁石群PM(2)で構成されている。第2の永久磁石群PM(2)は、円筒状のアウター22の内周面に等間隔に配置されている。第2の永久磁石群PM(2)を構成する各磁石はN極とS極とが交互に且つ互いに隣接して配置されている。
【0017】
図1の左側に図示してあるのが第1モータ10の第1固定子4である。
図1の右側に図示してあるのが第2モータ20の第2固定子28である。第1固定子4と第2固定子28は実質的に同一円周上に配置されている。第1固定子4は第1の固定部材6に固定されている。第2固定子28は第2の固定部材30に固定されている。第1、第2の固定部材6、30は、第2、第3の軸受42、44を介して第1出力軸102に支持され、また、共通のブラケット106に固定されている。この共通のブラケット106を介して図外の機台に固定される。
【0018】
図3を参照して、第1固定子4と第2固定子28は、ヨーク本体50と、ヨーク本体50に組み込まれる分割コアユニット52つまりインナー駆動又はアウター駆動の磁気コアとで構成されている。
図3では、分割コアユニット52が1つしか描かれていないが、本来は3つの分割コアユニット52つまり3つのインナー駆動又は3つのアウター駆動の磁気コアがヨーク本体50に組み込まれる。分割コアユニット52は、
図4を参照して、ヨークのティース部を構成するコア本体54と、ステータカバー56と、コイル58とで構成されている。第1固定子4及び第2固定子28は、夫々、3つのスロットSを有する(
図1)。
図1において、第1モータ10のスロットSには(1)を付記し、第2モータ20のスロットSには(2)を付記してある。
【0019】
第1固定子4は、
図1から分かるように、第1モータ10の外周部に第1ヨーク本体50(1)が位置し、第1ヨーク本体50(1)から半径方向内方に向けて3つの第1分割コアユニット52(1)つまりインナー駆動磁気コアが延びている。第2固定子28は、
図1から分かるように、第2モータ20の内周部に第2ヨーク本体50(2)が位置し、第2のヨーク本体50(2)から半径方向外方に向けて3つの第2分割コアユニット52(2)つまりアウター駆動磁気コアが延びている。
【0020】
図3に図示のヨーク本体50は、円弧状に延びる帯形状を有し、その内周面及び外周面に円周方向に離間して3つの断面鳩尾状の溝60を有する。鳩尾状の溝60は帯状に延びるヨーク本体50を横断する方向に延びている。ヨーク本体50の内周面に位置する3つの溝60には(1)を付記してある。これを第1溝60(1)と呼ぶ。3つの第1溝60(1)は第1モータ10用であり、この第1溝60(1)に第1分割コアユニット52(1)つまりインナー駆動磁気コアが取り付けられる。ヨーク本体50の外周面に位置する3つの溝60には(2)を付記してある。第2溝60(2)と呼ぶ。第2溝60(2)は第2モータ20用であり、第2溝60(2)に第2分割コアユニット52(2)つまりアウター駆動磁気コアが取り付けられる。第1分割コアユニット52(1)と第2分割コアユニット52(2)は共通の部品で構成されている。上記の構成により、インナー駆動磁気コア及びアウター駆動磁気コアは共通の分割コアユニット52で構成され、また、3つのインナー駆動磁気コア及び3つのアウター駆動磁気コア部品は、夫々、共通のヨーク本体50によって連結されている。
【0021】
コア本体54の基端突起部54aは、鳩尾溝60と相補的な形状を有し、この基端突起部54aは鳩尾溝60にスライド嵌合可能である。鳩尾溝60と基端突起部54aとは相対的な関係であり、ヨーク本体50に突起部を形成し、コア本体54に鳩尾溝を形成してもよい。コア本体54の先端部において左右両方向に延びる突出部54bは先細りの形状を有するのが好ましい。この突出部54bの先端は、隣接するコア本体54の突出部54bの先端と互いに付き合わせた状態で位置決めされる。
図4及び
図5は、コイル58を巻回した分割コアユニット52を作り、この分割コアユニット52をヨーク本体50に装着するまでの過程を説明するための図である。
図5は一連の工程を説明するためのフローである。
【0022】
図4を参照して、分割コアユニット52は、前述したように、ステータカバー56を有する。ステータカバー56は、断面矩形のコア本体54の2つの互いに対抗する面に沿って延びる一対のリップ59を有し、このリップ59の両側に屈曲片部59aを有する。一対のリップ59は、各リップ59の両側の屈曲片部59aによって合計4つの屈曲片部59aを有する。この4つの屈曲片部59aはコア本体54の断面矩形の4つの角部に当接した状態でコア本体54の角部を覆うことでコイル58の損傷事故の発生を抑制することができる。なお、ステータカバー56とコア本体54との隙間が発生するのを回避するために、ステータカバー56にフィルム加工を施すのが好ましい。
【0023】
図5を参照して、図外のコイル巻線機にステータカバー56を装着する(S1)。巻線機を作動して、ステータカバー56にコイル58を巻回する(S2)。ステータカバー56にコイル58を巻回したら、これを巻線機から取り外す(S3)。巻線機から取り外したコイル58付きのステータカバー56を
図6に図示してある。そして、このコイル58付きステータカバー56をコア本体54に装着する(S4)。
図7は、組立後の分割コアユニット52を示す。
図7に図示のステータカバー56、コイル58を含む分割コアユニット52をヨーク本体50に取り付ける(
図5のS5、
図3)。
【0024】
上述した第1実施例の同心二軸モータ100は、第1モータ10の第1固定子4と、第2モータ20の第2固定子28が実質的に同一の円周上に配置されている。第1モータ10に含まれる第1ヨーク本体50(1)が、第2モータ20に含まれる第2回転子24に隣接して位置しているため、この第2回転子24の磁界が第1モータ10に影響するのを第1ヨーク本体50(1)によって阻止することができる。同様に、第2モータ20に含まれる第2ヨーク本体50(2)が、第1モータ10に含まれる第1回転子2に隣接して位置しているため、この第1回転子2の磁界が第2モータ20に影響するのを第2ヨーク本体50(2)によって阻止することができる。
【0025】
第1モータ10の第1回転子2及び/又は第2モータ20の第2回転子24は永久磁石に代えて電磁石で構成してもよい。しかし、第1、第2の回転子2、24として永久磁石を用いることにより、本発明の従う同心二軸モータの制御系を簡素化することができる。
【0026】
図8ないし
図18は他の実施例を示す。
図8は第2実施例の同心二軸モータ120を示す。第2実施例のモータ120は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。共用するヨーク本体50は、
図3を参照して説明したヨーク本体50で構成すればよい。
【0027】
第2実施例の同心二軸モータ120は2極3スロットの3相駆動モータである。この第2実施例に含まれる第1モータ10は2極3スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第2実施例に含まれる第2モータ20は2極3スロットのアウターロータ形モータで構成されている。
【0028】
図9は第3実施例の同心二軸モータ130を示す。第3実施例のモータ130は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。
【0029】
第3実施例の同心二軸モータ130は4極3スロットの3相駆動モータである。この第3実施例に含まれる第1モータ10は4極3スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第3実施例に含まれる第2モータ20は4極3スロットのアウターロータ形モータで構成されている。
【0030】
図10は第4実施例の同心二軸モータ140を示す。第4実施例のモータ140は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。
【0031】
第4実施例の同心二軸モータ140は4極6スロットの3相駆動モータである。この第4実施例に含まれる第1モータ10は4極6スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第4実施例に含まれる第2モータ20は4極6スロットのアウターロータ形モータで構成されている。
【0032】
図11は第5実施例の同心二軸モータ150を示す。第5実施例のモータ150は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。
【0033】
第5実施例の同心二軸モータ150は8極6スロットの3相駆動モータである。この第5実施例に含まれる第1モータ10は8極6スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第5実施例に含まれる第2モータ20は8極6スロットのアウターロータ形モータで構成されている。
【0034】
図12は第6実施例の同心二軸モータ160を示す。第6実施例のモータ160は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。
【0035】
第6実施例の同心二軸モータ160は10極9スロットの3相駆動モータである。この第6実施例に含まれる第1モータ10は10極9スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第6実施例に含まれる第2モータ20は10極9スロットのアウターロータ形モータで構成されている。第6実施例のように極数及びスロット数を多くすることにより、コギングを低減することができる。
【0036】
図13は第7実施例の同心二軸モータ170を示す。第7実施例のモータ170は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。
【0037】
第7実施例の同心二軸モータ170は12極9スロットの3相駆動モータである。この第7実施例に含まれる第1モータ10は12極9スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第7実施例に含まれる第2モータ20は12極9スロットのアウターロータ形モータで構成されている。第7実施例のように極数及びスロット数を多くすることにより、コギングを低減することができる。
【0038】
図14は第8実施例の同心二軸モータ180を示す。第8実施例のモータ180は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。
【0039】
第8実施例の同心二軸モータ180は2極4スロットの2相駆動モータである。この第8実施例に含まれる第1モータ10は2極4スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第8実施例に含まれる第2モータ20は2極4スロットのアウターロータ形モータで構成されている。
【0040】
図15は第9実施例の同心二軸モータ190を示す。第9実施例のモータ190は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。
【0041】
第9実施例の同心二軸モータ190は6極4スロットの2相駆動モータである。この第9実施例に含まれる第1モータ10は6極4スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第9実施例に含まれる第2モータ20は6極4スロットのアウターロータ形モータで構成されている。
【0042】
図16は第10実施例の同心二軸モータ200を示す。第10実施例のモータ200は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。
【0043】
第10実施例の同心二軸モータ200は8極4スロットの2相駆動モータである。この第10実施例に含まれる第1モータ10は8極4スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第10実施例に含まれる第2モータ20は8極4スロットのアウターロータ形モータで構成されている。
【0044】
図17は第11実施例の同心二軸モータ210を示す。第11実施例のモータ210は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。
【0045】
第11実施例の同心二軸モータ210は10極4スロットの2相駆動モータである。この第11実施例に含まれる第1モータ10は10極4スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第11実施例に含まれる第2モータ20は10極4スロットのアウターロータ形モータで構成されている。
【0046】
図18は第12実施例の同心二軸モータ220を示す。第12実施例のモータ220は、図面左側に図示の第1モータ10つまりインナーロータ形モータと、図面右側に図示の第2モータ20つまりアウターロータ形モータとの組み合わせで構成される。第1モータ10と第2モータ20の境界を構成するヨーク本体50は第1、第2のモータ10、20で共用するのがよい。
【0047】
第12実施例の同心二軸モータ220は12極8スロットの2相駆動モータである。この第12実施例に含まれる第1モータ10は12極8スロットのインナーロータ形モータで構成されている。この第12実施例に含まれる第2モータ20は12極8スロットのアウターロータ形モータで構成されている。
【0048】
図8以降の図面において「U」、「V」、「W」の文字は各相を示す。例えば
図13の第7実施例の同心二軸モータ170は12極9スロットの3相駆動モータであるが、
図13に示す「U1」〜「U3」は一本の連続するコイル58(
図4)が使われて一つの相を構成する。「V1」〜「V3」の組も一つの相を構成し、また、「W1」〜「W3」の組も一つの相を構成する。
【0049】
引き続き
図13の第7実施例を例に説明すれば、同心二軸モータ170は、第1モータ10のインナーロータ形モータ及び/又は第2モータ20のアウターロータ形モータの回転子の構成において、例えば「U1」〜「U3」の相の「U1」だけ、「V1」〜「V3」の相の「V1」だけ及び「W1」〜「W3」の相の「W1」だけを残して他を省いて構成してもよい。
【0050】
本発明に従う同心二軸モータは、2相のインナー及びアウターロータ形モータとして、2極4スロット、6極4スロット、8極4スロット、10極8スロットというように、2を含む2の倍数の極と4を含む4の倍数のスロットのモータを採用することができる。本発明に従う同心二軸モータは、3相のインナー及びアウターロータ形モータとして、2極3スロット、4極3スロット、4極6スロット、8極3スロット、8極6スロット、というように、2を含む2の倍数の極と3を含む3の倍数のスロットのモータを採用することができる。