Lは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜15のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜15のヘテロアリーレン基のいずれかである、請求項1または2に記載の重合体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1〜10に開示された重合体を正孔輸送層に含む有機EL素子は、発光寿命や発光効率等の素子特性が必ずしも十分でなかった。特に、ディスプレイや照明用途で、実用的な高輝度および高温の駆動を行うと、有機EL素子の寿命が極めて短くなるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、有機EL素子の発光効率および発光寿命を向上させることが可能な、新規かつ改良された重合体、該重合体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、および該重合体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、下記一般式(1)で表される繰り返し構造を少なくとも含む重合体が提供される。
【化1】
上記一般式(1)において、
R
1、R
2およびR
3は、互いに独立して、水素原子、重水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキルシリル基、炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリール基のいずれかであり、
Lは、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基のいずれかであり、
A
1およびA
2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基、酸素原子または硫黄原子のいずれかであり、
A
3は、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の3価アルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の3価アリール基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の3価ヘテロアリール基のいずれかであり、
A
4およびA
5は、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基、酸素原子または硫黄原子のいずれかであり、
mは、1〜3の整数である。
【0010】
この観点によれば、有機EL素子の発光効率および発光寿命を向上させることが可能である。
【0011】
前記重合体は、下記一般式(2)で表される繰り返し構造を少なくとも含んでもよい。
【化2】
上記一般式(2)において、
R
1、R
2およびR
3は、互いに独立して、水素原子、重水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキルシリル基、炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリール基のいずれかであり、
Lは、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基のいずれかであり、
A
1およびA
2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基、酸素原子または硫黄原子のいずれかであり、
W
1〜W
11は、互いに独立して、窒素原子またはCXのいずれかであり、
Xは、水素原子、重水素原子、炭素数1〜10のアルキルシリル基、炭素数6〜30のアリールシリル基、炭素数1〜10のアルキルアミン基、炭素数6〜30のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリール基のいずれかであり、
mは、1〜3の整数である。
【0012】
この観点によれば、有機EL素子の発光効率および発光寿命をさらに向上させることが可能である。
【0013】
前記重合体において、Lは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜15のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜15のヘテロアリーレン基のいずれかであってもよい。
【0014】
この観点によれば、有機EL素子の発光効率および発光寿命をさらに向上させることが可能である。
【0015】
前記重合体において、A
1およびA
2は、互いに独立して、単結合、酸素原子または硫黄原子のいずれかであってもよい。
【0016】
この観点によれば、有機EL素子の発光効率および発光寿命をさらに向上させることが可能である。
【0017】
前記重合体において、W
1〜W
11は、CXであり、Xは、互いに独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリールアミン基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜15のアリール基であってもよい。
【0018】
この観点によれば、有機EL素子の発光効率および発光寿命をさらに向上させることが可能である。
【0019】
前記重合体は、架橋基を有してもよい。
【0020】
この観点によれば、前記重合体を含む有機層上に、さらに他の層を積層することが容易になる。
【0021】
前記架橋基は、下記の架橋基群から選択された構造の少なくとも1つ以上であってもよい。
【化3】
上記の架橋基群において、R
4〜R
10は、水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、pは、1〜10の整数である。
【0022】
この観点によれば、前記重合体を含む有機層上に、さらに他の層を積層することがより容易になる。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、一対の電極と、前記一対の電極の間に配置された、少なくとも1層以上の有機層とを備え、前記有機層の少なくとも1層は、上記の重合体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0024】
この観点によれば、発光効率および発光寿命が向上した有機EL素子を提供することができる。
【0025】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記有機層が三重項励起子からの発光が可能な発光材料を含んでもよい。
【0026】
この観点によれば、発光寿命がさらに向上した有機EL素子を提供することができる。
【0027】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の重合体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【0028】
この観点によれば、発光効率および発光寿命が向上した有機EL素子を提供することができる。
【0029】
上記の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、溶媒をさらに含んでもよい。
【0030】
この観点によれば、有機EL素子の提供がより容易となる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、有機EL素子の発光効率および発光寿命を向上させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0034】
<1.重合体>
まず、本発明の一実施形態に係る重合体について説明する。本実施形態に係る重合体は、有機EL素子の電極間に配置された有機層に含まれ、例えば溶液塗布法による成膜に適した有機EL素子用材料として有用である。
【0035】
一般的に、有機EL素子における有機層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法および溶液塗布法が知られている。このうち、溶液塗布法は、材料の利用効率が高く、容易に大面積を成膜することができ、かつ高価な真空装置が不必要であるため、より効率的な有機EL素子の製造方法として期待されている。
【0036】
溶液塗布法に用いられる有機EL素子用材料には、溶媒に対する溶解性が高く、塗布後の膜安定性が高いことが求められる。したがって、このような特性を備えつつ、かつ有機EL素子の発光特性を向上させることが可能な有機EL素子用材料が求められていた。特に、有機EL素子の発光効率および発光寿命を向上させることが可能な有機EL素子用材料が求められていた。
【0037】
本発明の発明者らは、従来の有機EL素子の発光効率が低い原因として、発光層から正孔輸送層等に励起子がもれ出す現象に着目し、有機EL素子の発光効率を向上させることが可能な有機EL素子用材料について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、ポリマー(polymer)の側鎖に特定の縮環構造を有する重合性単量体を少なくとも重合させた重合体を有機層(例えば、正孔輸送層)に含有させることにより、正孔輸送層の三重項励起状態(T
1)のエネルギー(energy)が高くなることを見出した。そこで、本発明者らは、このような重合体を用いることにより、発光層中の励起子が正孔輸送層へもれ出すことを抑え、発光層に励起子を閉じ込める効果(いわゆる、閉じ込め効果)が得られるという着想を得た。本発明は、上記の着想に基づいてなされたものであり、本発明は、有機EL素子の発光効率を向上させ、さらに発光寿命をも向上させるものである。
【0038】
本発明の一実施形態は、ポリマーの側鎖に特定の縮環構造を有する重合性単量体を少なくとも重合させた重合体である。このような重合体は、高い溶解性および塗布膜安定性を有し、かつ有機EL素子の発光効率および発光寿命を向上させることができる。
【0039】
具体的には、本実施形態に係る重合体は、重合性モノマー(monomer)を重合させることで形成されたポリマー化合物であり、下記一般式(1)で表される繰り返し構造を少なくとも含む。
【0041】
上記一般式(1)において、
R
1、R
2およびR
3は、互いに独立して、水素原子、重水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキルシリル(alkyl silyl)基、炭素数6〜30のアリールシリル(aryl silyl)基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル(alkyl)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール(aryl)基または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリール(heteroaryl)基のいずれかであり、
Lは、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン(alkylene)基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルキレン(cycloalkylene)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン(arylene)基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン(heteroarylene)基のいずれかであり、
A
1およびA
2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基、酸素原子または硫黄原子のいずれかであり、
A
3は、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の3価アルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の3価アリール基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の3価ヘテロアリール基のいずれかであり、
A
4およびA
5は、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基、酸素原子または硫黄原子のいずれかであり、
mは、1〜3の整数である。
【0042】
また、本実施形態に係る重合体は、下記一般式(2)で表される繰り返し構造を少なくとも含んでもよい。
【0044】
上記一般式(2)において、
R
1、R
2およびR
3は、互いに独立して、水素原子、重水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキルシリル基、炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリール基のいずれかであり、
Lは、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基のいずれかであり、
A
1およびA
2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数6〜30のヘテロアリーレン基、酸素原子または硫黄原子のいずれかであり、
W
1〜W
11は、互いに独立して、窒素原子またはCX(すなわち、置換基Xを有する炭素原子)のいずれかであり、
Xは、水素原子、重水素原子、炭素数1〜10のアルキルシリル基、炭素数6〜30のアリールシリル基、炭素数1〜10のアルキルアミン基、炭素数6〜30のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリール基のいずれかであり、
mは、1〜3の整数である。
【0045】
本実施形態に係る重合体において、一般式(1)で表される構造の一態様が一般式(2)で表される構造であってもよく、一般式(1)で表される構造とは別に、一般式(2)で表される構造を含んでもよい。
【0046】
一般式(1)または一般式(2)において、具体的には、Lは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜15のアリーレン基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜15のヘテロアリーレン基のいずれかであってもよい。例えば、Lは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ビフェニルイレン基、ターフェニレン基、フルオレニレン基などであってもよい。
【0047】
また、A
1およびA
2は、互いに独立して、単結合、酸素原子または硫黄原子のいずれかであってもよい。
【0048】
また、W
1〜W
11は、CX(すなわち、置換基Xを有する炭素原子)であってもよく、Xは、互いに独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリールアミン基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜15のアリール基であってもよい。例えば、Xは、水素原子、アリールアミン基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニルイル基、ターフェニル基、フルオレニル基などであってもよい。
【0049】
具体的には、一般式(1)または一般式(2)で表される構造において、Lを介して重合体の側鎖に結合する窒素含有の縮環構造としては、以下で示す構造を例示することができる。なお、窒素含有の縮環構造と重合体の主鎖との結合部位は、任意であり、いずれの置換位置にて結合していてもよい。ただし、本発明は、これらの構造に限定されない。
【0051】
また、Lを介して重合体の側鎖に結合する窒素含有の縮環構造は、複数連結されていてもよい。例えば、以下で示す構造は、窒素含有の縮環構造が2つ連結された場合(すなわち、一般式(1)または一般式(2)において、m=2の場合)の例示構造である。ただし、本発明は、これらの例示構造に限定されない。
【0053】
また、上述した窒素含有の縮環構造は、置換基を少なくとも1つ以上有していてもよい。より具体的には、一般式(1)または一般式(2)で表される構造は、以下の構造であってもよい。ただし、本発明は、これらの構造に限定されない。
【0057】
また、本実施形態に係る重合体は、置換基として少なくとも1つ以上の架橋基を有していてもよい。具体的には、架橋基は、下記の架橋基群から選択されたいずれかの構造であってもよい。ただし、本発明は、これらの構造に限定されない。
【0058】
【化11】
上記の架橋基群において、R
4〜R
10は、水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、pは、1〜10の整数である。
【0059】
具体的には、上記の架橋基を有し、一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する重合性モノマーとしては、以下で構造を示す重合性モノマーを例示することができる。ただし、本実施形態に係る重合体を構成する重合性モノマーは、これらの重合性モノマーに限定されない。
【0061】
ここで、本実施形態に係る重合体は、一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する重合性モノマーを単独で重合した重合体であってもよく、一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する重合性モノマーと、他の重合性モノマーとを共重合した共重合体であってもよい。すなわち、本実施形態に係る重合体は、一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し構造が少なくとも含まれていればよい。
【0062】
上述したように、本実施形態に係る重合体は、ポリマーの側鎖部分に特定の縮合構造を有する。このような特定の縮合構造を有する重合体は、三重項励起状態(T
1)のエネルギーが高いため、例えば、正孔輸送層に用いることにより、発光層中の励起子が正孔輸送層へもれ出すことを抑え、励起子を発光層に閉じ込めることができる(いわゆる、閉じ込め効果)。このような閉じ込め効果により、本実施形態に係る重合体は、有機EL素子の発光効率を向上させ、さらに発光寿命をも向上させることができる。
【0063】
なお、本実施形態に係る重合体の数平均分子量は、例えば、10000以上100000以下であってもよい。また、本実施形態に係る重合体の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、例えば、1.5以上2.5以下であってもよい。
【0064】
以上にて説明したように、本実施形態に係る重合体は、溶液塗布法によって成膜可能であり、かつ有機EL素子の発光効率および発光寿命を向上させることが可能である。また、本実施形態に係る重合体は、架橋基を有する場合、塗布後の架橋によって塗布膜安定性を向上させることができるため、有機EL素子を積層構造にて形成した場合の発光特性および安定性を向上させることができる。
【0065】
本実施形態に係る重合体は、公知の有機合成方法を用いることで合成することが可能である。本実施形態に係る重合体の具体的な合成方法は、後述する実施例を参照した当業者であれば、容易に理解することが可能である。
【0066】
なお、上記にてアルキル基とは、例えば、メチル(methyl)基、エチル(ethyl)基、プロピル(propyl)基、イソプロピル(isopropyl)基、n−ブチル(n−butyl)基、s−ブチル(s−butyl)基、イソブチル(isobutyl)基、t−ブチル(t−butyl)基、n−ペンチル(n−pentyl)基、n−ヘキシル(n−hexyl)基、n−ヘプチル(n−heptyl)基、n−オクチル(n−octyl)基を表す。
【0067】
上記にてシクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル(cyclopropyl)基、シクロブチル(cyclobutyl)基、シクロペンチル(cyclopentyl)基、シクロヘキシル(cyclohexyl)基、アダマンチル(adamantyl)基、ノルボルニル(1−norbornyl)基を表す。
【0068】
上記にてアリール基とは、例えば、フェニル(phenyl)基、ナフチル(naphthyl)基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル(phenantyryl)基、ナフタセニル(naphthacenyl)基、ピレニル(pyrenyl)基、ビフェニルイル(biphenylyl)基、ターフェニル(terphenyl)基、トリル(tolyl)基、フルオランテニル(fluoranrhenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基を表す。
【0069】
上記にてヘテロアリール基とは、例えば、ピロリル(pyrrolyl)基、ピラジニル(pyrazinyl)基、ピリジニル(pyridinyl)基、インドリル(indolyl)基、イソインドリル(isoindolyl)基、フリル(furyl)基、ベンゾフラニル(benzofuranyl)基、イソベンゾフラニル(isobenzofuranyl)基、キノリル(quinolyl)基、イソキノリル(isoquinolyl)基、キノキサリニル(quinoxalinyl)基、カルバゾリル(carbazolyl)基、フェナンスリジニル(phenanthridinyl)基、アクリジニル(acridinyl)基、フェナジニル(phenazinyl)基、フェノチアジニル(phenothiazzinyl)基、フェノキサジニル(phenoxazinyl)基、オキサゾリル(oxazolyl)基、オキサジアゾリル(oxadiazolyl)基、フラザニル(furazanyl)基、チエニル(thienyl)基を表す。
【0070】
また、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、およびヘテロアリーレン基とは、上記で例示したアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基のそれぞれから水素を1つ除去した2価の置換基を表す。
【0071】
また、アルキルシリル基とは、上記のいずれかのアルキル基によって置換された1価〜3価のケイ素(Si)原子を表し、アリールシリル基とは、上記のいずれかのアリール基によって置換された1価〜3価のケイ素(Si)原子を表す。また、アルキルアミン基とは、上記のいずれかのアルキル基によって置換された1価〜3価の窒素(N)原子を表し、アリールアミン基とは、上記のいずれかのアリール基によって置換された1価〜3価の窒素(N)原子を表す。
【0072】
さらに、本明細書において、「置換された」とは、任意の置換基にて置換されていることを表すが、具体的には、上述したアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基にて置換されていることを表してもよい。
【0073】
<2.有機EL素子>
続いて、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る有機EL素子について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る有機EL素子の一例を示す模式図である。
【0074】
図1に示すように、本実施形態に係る有機EL素子100は、基板110と、基板110上に配置された第1電極120と、第1電極120上に配置された正孔注入層130と、正孔注入層130上に配置された正孔輸送層140と、正孔輸送層140上に配置された発光層150と、発光層150上に配置された電子輸送層160と、電子輸送層160上に配置された電子注入層170と、電子注入層170上に配置された第2電極180とを備える。
【0075】
ここで、本実施形態に係る重合体は、例えば、第1電極120と第2電極180との間に配置されたいずれかの有機層中に含まれる。具体的には、本実施形態に係る重合体は、正孔輸送材料として正孔輸送層140に含まれることが好ましい。また、本実施形態に係る重合体は、正孔輸送層140以外の有機層に含まれていてもよい。例えば、本実施形態に係る重合体は、発光層に含まれていてもよい。
【0076】
また、本実施形態に係る重合体を含む有機層は、例えば溶液塗布法によって形成される。具体的には、本実施形態に係る重合体を含む有機層は、スピンコート(spin coat)法、キャスティング(casting)法、マイクログラビアコート(micro gravure coat)法、グラビアコート(gravure coat)法、バーコート(bar coat)法、ロールコート(roll coat)法、ワイアーバーコード(wire bar coat)法、ディップコート(dip coat)法、スプレーコート(spry coat)法、スクリーン(screen)印刷法、フレキソ(flexographic)印刷法、オフセット(offset)印刷法、インクジェット(ink jet)印刷法等の溶液塗布法を用いて成膜される。
【0077】
上記溶液塗付法では、本実施形態に係る重合体を含む有機EL素子用材料を使用することができる。また、溶液塗付法で用いる場合、有機EL素子用材料はさらに溶媒を含んでもよい。このような溶媒を含む有機EL素子用材料としては、例えば、インクジェット印刷法等に使用するインク組成物、およびスピンコート法等に使用する成膜用組成液等が挙げられるが、本実施形態に係る有機EL素子用材料は、これらに限定されない。なお、溶液塗布法に使用する溶媒は、重合体を溶解することができるものであれば、どのような溶媒でも使用することができるが、例えば、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、エチルベンゼン(ethylbenzene)、ジエチルベンゼン(diethylbenzene)、メチシレン(mesithlene)、プロピルベンゼン(propylbenzene)、シクロヘキシルベンゼン(cyclohexylbenzene)、ジメトキシベンゼン(dimethoxybenzene)、アニソール(anisole)、エトキシトルエン(ethoxy toluene)、フェノキシトルエン(phenoxy toluene)、イソプロピルビフェニル(isopropyl biphenyl)、ジメチルアニソール(dimethyl anisole)、酢酸フェニル(phenyl acetate)、プロピオン酸フェニル(phenyl propionate)、安息香酸メチル(methyl benzoate)、安息香酸エチル(ethyl benzoate)等を例示することができる。
【0078】
なお、本実施形態に係る重合体を含む有機層以外の層の成膜方法については、特に限定されない。本実施形態に係る重合体を含む有機層以外の層は、例えば、真空蒸着法にて成膜されてもよく、溶液塗布法にて成膜されてもよい。
【0079】
基板110は、一般的な有機EL素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板110は、ガラス(glass)基板、シリコン(silicon)基板などの半導体基板、または透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
【0080】
基板110上には、第1電極120が形成される。第1電極120は、具体的には、陽極であり、金属、合金、または導電性化合物等のうち仕事関数が大きいものによって形成される。例えば、第1電極120は、透明性および導電性に優れる酸化インジウムスズ(In
2O
3−SnO
2:ITO)、酸化インジウム亜鉛(In
2O
3−ZnO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等によって透過型電極として形成されてもよい。また、第1電極120は、上記透明導電膜に対して、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などを積層することによって反射型電極として形成されてもよい。
【0081】
第1電極120上には、正孔注入層130が形成される。正孔注入層130は、第1電極120からの正孔の注入を容易にする層であり、具体的には、約10nm〜約1000nm、より具体的には、約10nm〜約100nmの厚さにて形成されてもよい。
【0082】
正孔注入層130は、公知の正孔注入材料にて形成することができる。正孔注入層130を形成する公知の正孔注入材料としては、例えば、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(poly(ether ketone)−containg triphenylamine:TPAPEK)、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(4−isopropyl−4’−methyldiphenyliodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate:PPBI)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−[4−(フェニル−m−トリル−アミノ)−フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン(N,N’−diphenyl−N,N’−bis−[4−(phenyl−m−tolyl−amino)−phenyl]−biphenyl−4,4’−diamine:DNTPD)、銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine:m−MTDATA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(N,N’−di(1−naphthyl)−N,N’−diphenylbenzidine:NPB)、4,4’,4”−トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(diphenylamino)triphenylamine:TDATA)、4,4’,4”−トリス(N,N−2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N,N−2−naphthylphenylamino)triphenylamine:2−TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(polyaniline/dodecylbenzenesulphonic acid)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/poly(4−styrenesulfonate))、およびポリアニリン/10−カンファースルホン酸(polyaniline/10−camphorsulfonic acid)等を挙げることができる。
【0083】
正孔注入層130上には、正孔輸送層140が形成される。正孔輸送層140は、正孔を輸送する機能を備えた層であり、例えば、約10nm〜約150nmの厚さにて形成されてもよい。正孔輸送層140は、本実施形態に係る重合体を用いて、溶液塗布法によって成膜されることが好ましい。溶液塗布方法によれば、有機EL素子100の発光寿命を向上させることが可能な重合体を効率的に大面積にて成膜することができる。
【0084】
ただし、有機EL素子100のいずれかの他の有機層が本実施形態に係る重合体を含む場合、正孔輸送層140は、公知の正孔輸送材料にて形成されてもよいことはいうまでもない。公知の正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(1,1−bis[(di−4−tolylamino)phenyl]cyclohexane:TAPC)、N−フェニルカルバゾール(N−phenylcarbazole)およびポリビニルカルバゾール(polyvinylcarbazole)などのカルバゾール(carbazole)誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(N,N’−bis(3−methylphenyl)−N,N’−diphenyl−[1,1−biphenyl]−4,4’−diamine:TPD)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N−carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、ならびにN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(N,N’−di(1−naphthyl)−N,N’−diphenylbenzidine:NPB)等を挙げることができる。
【0085】
正孔輸送層140上には、発光層150が形成される。発光層150は、蛍光、りん光等によって光を発する層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などを用いて形成される。発光層150は、例えば、約10nm〜約60nmの厚さにて形成されてもよい。発光層150の発光材料としては、公知の発光材料を用いることができる。
【0086】
本実施形態に係る有機EL素子において、有機層は三重項励起子からの発光が可能な発光材料を含有することができる。特に、有機層のうち、発光層150に含まれる発光材料は、三重項励起子からの発光(すなわち、りん光による発光)が可能な発光材料であることが好ましい。このような場合、有機EL素子100の発光寿命をさらに向上させることができる。
【0087】
発光層150は、ホスト材料として、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(tris(8−quinolinato)aluminium:Alq
3)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(4,4’−bis(carbazol−9−yl)biphenyl:CBP)、ポリ(n−ビニルカルバゾール)(poly(n−vinyl carbazole):PVK)、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(9,10−di(naphthalene)anthracene:ADN)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N−carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(1,3,5−tris(N−phenyl−benzimidazol−2−yl)benzene:TPBI)、3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン(3−tert−butyl−9,10−di(naphth−2−yl)anthracene:TBADN)、ジスチリルアリーレン(distyrylarylene:DSA)、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(4,4’−bis(9−carbazole)2,2’−dimethyl−bipheny:dmCBP)などを含んでもよい。
【0088】
また、発光層150は、ドーパント材料として、例えば、ペリレン(perlene)およびその誘導体、ルブレン(rubrene)およびその誘導体、クマリン(coumarin)およびその誘導体、4−ジシアノメチレン−2−(p−ジメチルアミノスチリル)−6−メチル−4H−ピラン(4−dicyanomethylene−2−(p−dimethylaminostyryl)−6−methyl−4H−pyran:DCM)およびその誘導体、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジネート]ピコリネートイリジウム(III)(bis[2−(4,6−difluorophenyl)pyridinate]picolinate iridium(III):FIrpic)、ビス(1‐フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(bis(1−phenylisoquinoline)(acetylacetonate)iridium(III):Ir(piq)
2(acac))、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2−phenylpyridine)iridium(III):Ir(ppy)
3)などイリジウム(Ir)錯体、オスミウム(Os)錯体、白金錯体などを含んでもよい。
【0089】
発光層150上には、電子輸送層160が形成される。電子輸送層160は、電子を輸送する機能を備えた層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などを用いて形成される。電子輸送層160は、例えば、約15nm〜約50nmの厚さにて形成されてもよい。
【0090】
電子輸送層160は、公知の電子輸送材料にて形成されてもよい。公知の電子輸送材料としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(tris(8−quinolinato)aluminium:Alq
3)、および含窒素芳香環を有する化合物等を挙げることができる。含窒素芳香環を有する化合物の具体例としては、例えば、1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(1,3,5−tri[(3−pyridyl)−phen−3−yl]benzene)のようなピリジン(pyridine)環を含む化合物、2,4,6−トリス(3’−(ピリジン−3−イル)ビフェニル−3−イル)−1,3,5−トリアジン(2,4,6−tris(3’−(pyridin−3−yl)biphenyl−3−yl)−1,3,5−triazine)のようなトリアジン(triazine)環を含む化合物、2−(4−(N−フェニルベンゾイニダゾリル−1−イル−フェニル)−9,10−ジナフチルアントラセン(2−(4−(N−phenylbenzoimidazolyl−1−yl−phenyl)−9,10−dinaphthylanthracene)のようなイミダゾール(imidazole)環を含む化合物等を挙げることができる。
【0091】
電子輸送層160上には、電子注入層170が形成される。電子注入層170は、第2電極180からの電子の注入を容易にする機能を備えた層であり、真空蒸着法などを用いて形成される。電子注入層170は、約0.3nm〜約9nmの厚さにて形成されてもよい。電子注入層170は、電子注入層170を形成する材料として公知の材料ならば、いずれも使用することができる。例えば、電子注入層170は、(8−キノリノラト)リチウム((8−quinolinato)lithium:Liq)およびフッ化リチウム(LiF)等のリチウム(lithium)化合物、塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li
2O)、または酸化バリウム(BaO)等にて形成されてもよい。
【0092】
電子注入層170上には、第2電極180が形成される。第2電極180は、具体的には、陰極であり、金属、合金、または導電性化合物等のうち仕事関数が小さいものによって形成される。例えば、第2電極180は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)等の金属、またはアルミニウム−リチウム(Al−Li)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)等の合金で反射型電極として形成されてもよい。また、第2電極180は、上記金属材料の20nm以下の薄膜、酸化インジウムスズ(In
2O
3−SnO
2)および酸化インジウム亜鉛(In
2O
3−ZnO)などの透明導電性膜によって透過型電極として形成されてもよい。
【0093】
以上、本実施形態に係る有機EL素子100の一例について説明した。本実施形態に係る有機EL素子100は、本実施形態に係る重合体を含む有機層を有することにより、発光効率および発光寿命をより向上させることができる。
【0094】
なお、本実施形態に係る有機EL素子100の積層構造は、上記例示に限定されない。本実施形態に係る有機EL素子100は、他の公知の積層構造にて形成されてもよい。例えば、有機EL素子100は、正孔注入層130、正孔輸送層140、電子輸送層160および電子注入層170のうちの1層以上が省略されてもよく、また、追加で他の層を備えていてもよい。また、有機EL素子100の各層は、それぞれ単層で形成されてもよく、複数層で形成されてもよい。
【0095】
例えば、有機EL素子100は、励起子または正孔が電子輸送層160に拡散することを防止するために、正孔輸送層140と発光層150との間に正孔阻止層をさらに備えていてもよい。なお、正孔阻止層は、例えば、オキサジアゾール(oxadiazole)誘導体、トリアゾール(triazole)誘導体、または、フェナントロリン(phenanthroline)誘導体等によって形成することができる。
【実施例】
【0096】
以下では、実施例および比較例を参照しながら、本実施形態に係る重合体、および該重合体を含む有機EL素子について具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも一例であって、本実施形態に係る重合体および有機EL素子が下記の例に限定されるものではない。
【0097】
<ポリマーAの合成>
本実施形態に係る重合体の合成方法について、以下のポリマーAの合成方法を例示して具体的に説明する。なお、以下に述べる合成方法はあくまでも一例であって、本実施形態に係る重合体の合成方法が下記の例に限定されるものではない。
【0098】
まず、以下の反応式1に従って、化合物3を合成した。
【0099】
【化13】
【0100】
アルゴン(argon)雰囲気下において、2L四つ口フラスコ(flask)に、2−ヨードアニソール(2−iodoanisole)(40.0g、192.3mmol)、4−ブロモ−2.6−ジフルオロアニリン(4−bromo−2,6−difluoroaniline)(100.0g、427.3mmol)、炭酸カリウム(K
2CO
3)(111.0g、803.2mmol)、銅(Cu)(15.6g、246.0mmol)、o−ジクロロベンゼン(o−dichlorobenzene)520mlを加え、180℃で80時間、混合物を撹拌した。反応終了後、混合物を室温まで放冷し、セライト(celite)(登録商標)を用いて不純物をろ別した。溶媒除去後、ヘキサン(hexane)300mlで3回洗浄することにより白色粉末の化合物1を得た(48.0g、114.2mmol、収率26.7%)。
【0101】
次に、アルゴン雰囲気下において、3L四つ口フラスコに、化合物1(47.00g、111.84mmol)、脱水ジクロロメタン(dichloromethane)1800mlを加え、−75℃で15分撹拌した。その後、1.0Mのトリブロモホウ酸ジクロロメタン溶液(tribromoboric acid dichloromethane solution)を230ml滴下し、ゆっくりと室温まで昇温させた後、5時間撹拌した。その後、反応溶液に1000mlの水に加え、ジクロロメタンで3回抽出を行った。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラム(column chromatogram)を用いて精製し、化合物2を得た(38.0g、96.9mmol、収率86.6%)。
【0102】
続いて、アルゴン雰囲気下において、2L四つ口フラスコに、化合物2(37.00g、94.35mmol)、炭酸カリウム(39.00g、283.00mmol)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)500mlを加え、110℃で10時間、混合物を撹拌した。混合物を室温まで放冷した後、1000mlの水を加えて白色固体を析出させ、ろ過した。得られた固体をクロロホルム(chloroform)およびヘキサンの混合溶媒を用いた再結晶により精製し、化合物3を得た(26.3g、74.7mmol、収率79.1%)。
【0103】
次に、下記の反応式2に従って、モノマーAを合成した。
【0104】
【化14】
【0105】
アルゴン雰囲気下において、100ml三口フラスコに、化合物3(2.00g、5.68mmol)、ビニルフェニルボロン酸(vinylphenyl boronic acid)(0.92g、6.25mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(tetrakis(triphenylphosphine)palladium)(0.20g、0.17mmol)、1,2−ジメトキシエタン(1,2−demethoxyethane)30ml、2M炭酸ナトリウム水溶液(Na
2CO
3aq)4.3mlを加え、80℃で7時間、混合物を撹拌した。混合物を室温まで放冷した後、トルエン/水系にて3回抽出し、有機層を濃縮した後、カラムクロマトグラムを用いて精製し、モノマーA(1.97g、収率92.6%)を得た。なお、モノマーAは、LC−MS(liquid chromatography−mass spectrometry)を用いて構造を同定した。
【0106】
続いて、アルゴン雰囲気下において、三口フラスコに、モノマーA(1.00g、2.66mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile:AIBN)(0.005g、0.0305mmol)、脱水トルエン10mlを加え、アルゴンフロー(argon flow)下、80℃で8時間、混合物を撹拌した。混合物を室温まで放冷した後、メタノール(methanol)を添加し、析出した析出物をろ過した。得られた個体をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran:THF)に溶解し、アセトン(acetone)を用いた再沈殿処理により精製し、以下で構造を示すポリマーA、0.5gを得た。なお、GPC(Gel Permission Chromatography)を用いて、ポリマーAの数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwを計測したところ、Mnは、21200であり、Mwは、48400であった。
【0107】
【化15】
【0108】
<有機EL素子の製造>
次に、以下の工程によって、本実施形態に係るポリマーを含む有機EL素子を製造した。
【0109】
(実施例1)
陽極としてストライプ(stripe)状のITO(酸化インジウムスズ)を備えたガラス基板上に、PEDOT/PSS(poly(3,4−ethylene dioxythiophene)/poly(4−styrene sulfonate)(Sigma−Aldrich製)を乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法にて塗布し、正孔注入層を形成した。
【0110】
次に、上記で合成したポリマーAをキシレン(xylene)に1質量%にて溶解し、正孔輸送層塗布液を調製した。正孔注入層上に、正孔輸送層塗布液を乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法にて塗布し、230℃にて1時間加熱して、正孔輸送層を形成した。
【0111】
続いて、正孔輸送層上に、ホスト材料であるトリフェニルシリル−3,6−ビスカルバゾイルベンゼン(triphenylsilyl−3,6−biscarbazoylbenzene:SimCP)、および4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(4,4’−bis(carbazol−9−yl)biphenyl:CBP)と、ドーパント材料であるトリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)(tris(2−(3−p−xylyl)phenyl)pyridine iridium(III))とを真空蒸着装置にて共蒸着し、膜厚30nmの発光層を形成した。
【0112】
SimCPおよびCBPの割合は、質量比にてSimCP:CBP=7:3とし、トリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)のドープ量は、発光層の総質量に対して、10質量%とした。なお、トリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)は、三重項励起子からの発光(すなわち、りん光発光)が可能な発光材料である。
【0113】
次に、発光層上に、(8−ヒドロキシキノリノラト)リチウム(Liq)およびKLET−03(ケミプロ化成製)を真空蒸着装置にて共蒸着し、膜厚50nmの電子輸送層を形成した。また、電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着装置にて蒸着し、膜厚1nmの電子注入層を形成した。さらに、電子注入層上に、アルミニウム(Al)を真空蒸着装置にて蒸着し、膜厚100nmの第2電極(陰極)を形成した。以上の方法により実施例1に係る有機EL素子を製造した。
【0114】
(実施例2〜4)
正孔輸送層を形成するポリマーを下記で構造を示すポリマーB〜Dに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2〜4に係る有機EL素子を製造した。なお、ポリマーDは、2種類の繰り返し単位にからなる共重合体であり、重合比n:mは、9:1である。
【0115】
ポリマーB〜Dの合成方法は、実質的には、ポリマーAの合成方法と同様である。なお、ポリマーB〜Dの共通中間体である2‐ブロモ−[3,2,1−jk]インドロカルバゾール(2‐brom−[3,2,1−jk]indolocarbazole)は、公知の合成方法(例えば、特開2013−033804)によって容易に合成することができる。また、GPCを用いて、ポリマーB〜Dの数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwを計測した。結果は、下記の表1に示す。
【0116】
【化16】
【0117】
(比較例1)
正孔輸送層を形成するポリマーを下記で構造を示すポリマーaに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1に係る有機EL素子を製造した。なお、ポリマーaは、2種類の繰り返し単位にからなる共重合体であり、重合比n:mは、9:1である。
【0118】
【化17】
【0119】
<有機EL素子の評価>
上記で製造した有機EL素子の電流効率および発光寿命を以下の方法にて評価した。
【0120】
直流定電圧電源(KEYENCE製ソースメータ(source meter))を用いて、各有機EL素子に対して所定の電圧を加え、有機EL素子を発光させた。有機EL素子の発光を輝度測定装置(Topcom製SR−3)にて測定しつつ、徐々に電流を増加させ、輝度が6000cd/m
2になったところで電流を一定にし、放置した。
【0121】
ここで、有機EL素子の面積から単位面積あたりの電流値(電流密度)を計算し、輝度(cd/m
2)を電流密度(A/m
2)にて除算することで、「電流効率(cd/A)」を算出した。また、輝度測定装置で測定した輝度の値が徐々に低下し、初期輝度の80%になるまでの時間を「発光寿命」とした。
【0122】
評価結果を表1に示す。なお、表1では、電流効率および発光寿命は、比較例1における測定値を100としたときの相対値として示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1の結果を参照すると、本実施形態に係る重合体を正孔輸送層に用いた実施例1〜4は、比較例1に対して、電流効率が向上し、かつ発光寿命も向上していることがわかる。
【0125】
以上の結果からわかるように、本実施形態に係る重合体は、溶液塗布法により効率的に成膜することが可能であり、かつ有機EL素子の電流効率および発光寿命を向上させることが可能である。
【0126】
<まとめ>
本発明によれば、特定の縮環構造を有する重合性単量体を少なくとも繰り返し単位に有する重合体を提供することができる。このような重合体は、正孔注入輸送材料として有用であり、かつ溶液処理に適し、優れた溶解度、高い熱安定性、および優れたフィルム均一性を有する。本実施形態に係る重合体によれば、発光効率および発光寿命等の素子特性に優れ、かつ塗布による上層への積層が可能な塗布型の有機デバイス用材料を提供することができる。
【0127】
また、本発明の重合体は、ラジカル重合により合成することができるため、縮合系の有機EL素子用材料と比べて、より容易に製造することができる。なお、本発明の重合体の適用範囲は、有機EL素子の分野に限定されず、電荷輸送層として使用可能な広範囲の分野で使用することができる。
【0128】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。