【課題】 マイクロサイズの銅粒子を用いた場合であっても、空気等の簡便な雰囲気下でかつ従来より低温の乾燥条件下において、付加的な分散媒を配合せずとも、十分な導電性を有する導電性部材を得ることが可能となる導電性インク組成物を提供すること。
前記(B)アミド化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−N−エチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ミリスチン酸アミド及びラウリン酸アミドからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の導電性インク組成物。
前記(A)オキシカルボン酸が炭素数2〜14のオキシカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性インク組成物。
前記導電性インク組成物の質量100質量%を基準に、前記(A)オキシカルボン酸の含有量が0.1〜30質量%の範囲内、前記(B)アミド化合物の含有量が1〜99質量%の範囲内、前記(C)銅粒子の含有量が0.8〜98.9質量%の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の導電性インク組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、マイクロサイズの銅粒子を用いた場合であっても、空気等の簡便な雰囲気下でかつ従来より低温の乾燥条件下において、付加的な分散媒を配合せずとも、十分な導電性を有する導電性部材を得ることが可能となる導電性インク組成物、並びにそれを用いて製造された導電性部材及びそれを用いた導電性部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、銅粒子を用いる導電性インク組成物において、オキシカルボン酸と特定のアミド化合物とを組み合わせて含有することにより、前記目的を達成することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の導電性インク組成物は、(A)オキシカルボン酸、(B)下記一般式(1):
【0010】
【化1】
【0011】
[一般式(1)中、R
1は水素原子、又は炭素数1〜18の直鎖でも分岐でもよくかつ飽和でも不飽和でもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を表す。]
で表されるアミド化合物、及び(C)銅粒子を含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の導電性インク組成物においては、前記(B)アミド化合物として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−N−エチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ミリスチン酸アミド及びラウリン酸アミドからなる群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0013】
また、本発明の導電性インク組成物においては、前記(A)オキシカルボン酸が炭素数2〜14のオキシカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の導電性インク組成物においては、前記(C)銅粒子の平均粒子径が0.01〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の導電性インク組成物においては、前記導電性インク組成物の質量100質量%を基準に、前記(A)オキシカルボン酸の含有量が0.1〜30質量%の範囲内、前記(B)アミド化合物の含有量が1〜99質量%の範囲内、前記(C)銅粒子の含有量が0.8〜98.9質量%の範囲内にあることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の導電性部材は、前記本発明の導電性インク組成物を基材に塗布し、乾燥処理して得られたものであることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の導電性部材の製造方法は、前記本発明の導電性インク組成物を基材に塗布し、乾燥処理して導電性部材を得ることを特徴とする方法である。
【0018】
本発明の導電性部材及びその製造方法においては、前記乾燥処理が、圧力を加えながら乾燥させる加圧乾燥処理又は減圧しながら乾燥させる減圧乾燥処理であることが好ましい。
【0019】
なお、本発明の導電性インク組成物を用いることによって、マイクロサイズの銅粒子を用いた場合であっても、空気等の簡便な雰囲気下でかつ従来より低温の乾燥条件下において、付加的な分散媒を配合せずとも、十分な導電性を有する導電性部材を得ることが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の銅粒子を用いる導電性インク組成物においては、オキシカルボン酸と前記特定のアミド化合物とを組み合わせて含有することにより、前記特定のアミド化合物と銅粒子との反応により銅粒子の表面に銅アンモニウム塩が形成され、次に形成された銅アンモニウム塩はオキシカルボン酸によって銅に還元され、その際、隣同士の銅粒子が融着するものと本発明者らは推察する。さらに、本発明の導電性インク組成物においては、前記特定のアミド化合物がいわゆる分散媒としても機能するため、他の分散媒を付加的に配合する必要がなくなるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マイクロサイズの銅粒子を用いた場合であっても、空気等の簡便な雰囲気下でかつ従来より低温の乾燥条件下において、付加的な分散媒を配合せずとも、十分な導電性を有する導電性部材を得ることが可能となる導電性インク組成物、並びにそれを用いて製造された導電性部材及びそれを用いた導電性部材の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0022】
[導電性インク組成物]
先ず、本発明の導電性インク組成物について説明する。すなわち、本発明の導電性インク組成物は、(A)オキシカルボン酸、(B)下記一般式(1):
【0024】
[一般式(1)中、R
1は水素原子、又は炭素数1〜18の直鎖でも分岐でもよくかつ飽和でも不飽和でもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を表す。]
で表されるアミド化合物、及び(C)銅粒子を含有することを特徴とするものである。
【0025】
先ず、(A)オキシカルボン酸(以下、「(A)成分」という)について説明する。本発明において使用する(A)成分は、ヒドロキシル基とカルボキシル基とを有する化合物であり、例えば、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酪酸、クエン酸、イソクエン酸、サリチル酸、マンデル酸、ベンジル酸等の炭素数2〜20のオキシカルボン酸、及びこれらの酸無水物が挙げられる。本発明において使用する(A)成分としては、これらの中でも、銅粒子の融着促進の観点から、炭素数2〜14のオキシカルボン酸、及びこれらの酸無水物が好ましく、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及びこれらの酸無水物がより好ましく、乳酸、リンゴ酸、及びこれらの酸無水物が更により好ましい。(A)成分は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
(A)成分の含有量は、後述する(C)銅粒子の質量100質量部を基準に、0.1〜100質量部であることが好ましく、0.1〜75質量部であることがより好ましく、1〜60質量部であることが更により好ましい。また、(A)成分の含有量は、本発明の導電性インク組成物の質量100質量%を基準に、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。前記(A)成分の含有量が、前記下限未満では銅粒子の融着が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると安定性が低下する傾向にある。
【0027】
次に、(B)アミド化合物(以下、「(B)成分」という)について説明する。本発明においては、(B)成分として、下記一般式(1):
【0029】
[一般式(1)中、R
1は水素原子、又は炭素数1〜18の直鎖でも分岐でもよくかつ飽和でも不飽和でもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を表す。]
で表されるアミド化合物が用いられる。
【0030】
前記一般式(1)中のR
1としての「炭素数1〜18の直鎖でも分岐でもよくかつ飽和でも不飽和でもよい炭化水素基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、直鎖でも分岐でもよいブチル基、直鎖でも分岐でもよいペンチル基、直鎖でも分岐でもよいヘキシル基、直鎖でも分岐でもよいヘプチル基、直鎖でも分岐でもよいオクチル基、直鎖でも分岐でもよいノニル基、直鎖でも分岐でもよいデシル基、直鎖でも分岐でもよいウンデシル基、直鎖でも分岐でもよいドデシル基、直鎖でも分岐でもよいトリデシル基、直鎖でも分岐でもよいテトラデシル基、直鎖でも分岐でもよいペンタデシル基、直鎖でも分岐でもよいヘキサデシル基、直鎖でも分岐でもよいヘプタデシル基、直鎖でも分岐でもよいオクタデシル基、直鎖でも分岐でもよいウンデセン基、直鎖でも分岐でもよいトリデセン基、直鎖でも分岐でもよいペンタデセン基、直鎖でも分岐でもよいヘプタデセン基が挙げられ、中でも炭素数が1〜12のものが好ましい。
【0031】
本発明において使用する(B)アミド化合物としては、銅粒子の融着促進の観点から、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−N−エチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ミリスチン酸アミド及びラウリン酸アミドが好ましいものとして挙げられる。(B)成分は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
(B)成分の含有量は、本発明の導電性インク組成物の質量100質量%を基準に、1〜99質量%であることが好ましく、5〜90質量%であることがより好ましい。前記(B)成分の含有量が、前記下限未満では銅粒子の融着が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると安定性が低下する傾向にある。
【0033】
次に、(C)銅粒子(以下、「(C)成分」という)について説明する。本発明において使用する(C)成分としては、少なくとも銅を主成分とする金属粒子であればよく、特に限定されず、銅単体であっても銅とその他金属との合金であってもよい。本発明において使用する(C)成分としては、銅の優れた特性を発現させるためには、銅の含有量が、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0034】
また、本発明の導電性インク組成物における「(C)成分」の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01〜100μmであることが好ましく、0.01〜50μmであることがより好ましい。前記平均粒子径が、前記下限未満では銅粒子がコスト高になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると薄膜形成が困難になる傾向にある。なお、本発明においては、平均粒子径が1〜100μmというマイクロサイズの銅粒子を用いた場合であっても、空気等の簡便な雰囲気下でかつ従来より低温の乾燥条件下において、十分な導電性を有する導電性部材を得ることが可能となる。
【0035】
本発明において、前述の銅粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察又は走査型電子顕微鏡(SEM)観察等により求め、任意の50個以上の銅粒子について各粒子の粒子径(直径)を測定し、それらを算術平均して求める。なお、観察写真(図)中、銅粒子の形状が真円状でない場合には、その粒子の断面の最大の外接円の直径を粒子径(直径)として測定する。
【0036】
また、「(C)成分」の形態としては、特に限定はなく、球状、角状、針状等が挙げられる。このような本発明に用いられる「(C)成分」としては、市販品により、又は公知技術による製造により入手可能なものである。
【0037】
(C)成分の含有量は、得られる導電性部材の導電性の観点から、本発明の導電性インク組成物の質量100質量%を基準に、0.8〜98.9質量%であることが好ましく、1〜90質量%であることがより好ましい。
【0038】
前述の通り、本発明の導電性インク組成物は、前記(A)オキシカルボン酸、前記(B)アミド化合物、及び前記(C)銅粒子を含有するものであるが、更に、以下に説明する(D)分散媒及び/又は(E)ポリアミンアルキレンオキサイド付加物が更に配合されていてもよい。
【0039】
このような(D)分散媒(以下、「(D)成分」という)としては、前述の(A)成分及び(B)成分と反応しないものであればよく、特に限定されず、従来導電性インク組成物に使用されている公知の分散媒であってもよい。このような(D)成分としては、液状又はペースト状のものであってもよく、例えば、水;ケトン類、エステル類、アルコール類、グリコールエーテル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、石油系炭化水素類、及びワックス類等の炭化水素系化合物が挙げられる。
【0040】
水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水が挙げられる。ケトン類としては、炭素数3〜20のケトン類が挙げられ、例えば、イソホロン、ジイソブチルケトンが挙げられる。エステル類としては、炭素数3〜20のエステル類が挙げられ、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。アルコール類としては、炭素数1〜22の直鎖又は分岐の飽和アルコール類、炭素数3〜22の直鎖又は分岐の不飽和アルコール類、炭素数6〜22の環状アルコール類が挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、セカンダリーブチルアルコール、オクタノール、ノナノール、デカノール、フェノール、テルピネオール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。グリコールエーテル類としては、炭素数3〜20のグリコールエーテル類が挙げられ、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。芳香族炭化水素類としては炭素数6〜20の芳香族炭化水素類が挙げられ、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレンが挙げられる。脂肪族炭化水素類としては、炭素数3〜18の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素類が挙げられ、例えば、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンが挙げられる。石油系炭化水素類としては、例えば、ミネラルスピリット、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油が挙げられる。ワックス類としては、例えば、植物系ワックス(ハゼ蝋、ウルシ蝋等)、動物系ワックス(ミツ蝋、鯨蝋等)、鉱物系ワックス(モンタンワックス等)、石油系ワックス(パラフィンワックス等)、合成ワックスが挙げられる。(D)成分は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
(D)成分を配合する場合、その含有量は、得られる導電性インク組成物の取り扱い性の観点から、本発明の導電性インク組成物の質量100質量%を基準に、0.7〜99質量%であることが好ましく、0.8〜99質量%であることがより好ましく、10〜99質量%であることが更により好ましい。
【0042】
また、(E)ポリアミンアルキレンオキサイド付加物(以下、「(E)成分」という)は、下記一般式(2):
【0044】
[一般式(2)中、X
1はポリアミンからアミノ基及び/又はイミノ基の活性水素(H
*)を除いた残基を表し、p+qは前記ポリアミンが有していた活性水素の数を表し、p+q=2〜16かつp=1〜16であり、AOはそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレンオキサイド基を表し、rはそれぞれ独立にAOで表されるアルキレンオキサイド基の付加モル数を表し、r=1〜25である。]
で表されるものである。
【0045】
一般式(2)において、X
1は、ポリアミンから1分子中に2個以上有するアミノ基及び/又はイミノ基の活性水素(H
*)を除いた残基であり、一般式(2)で表されるポリアミンアルキレンオキサイド付加物とは、ポリアミン分子中のアミノ基及び/又はイミノ基が有する活性水素にアルキレンオキサイドをポリアミン1モルに対して1モル以上付加した化合物である。なお、活性水素とは、アミノ基及び/又はイミノ基の窒素原子に結合した水素原子であり、アミノ基には2個、イミノ基には1個の活性水素が含まれる。
【0046】
X
1の炭素数は、特に限定されないが、流動性の観点から、2〜12であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。また、X
1が有するアミノ基及び/又はイミノ基の数(アミノ基及びイミノ基を両方有する場合はそれらの合計数)は、流動性の観点から、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜3が特に好ましい。
【0047】
さらに、一般式(2)において、p+qは前記ポリアミンが有していた活性水素の数を表し、p+q=2〜16かつp=1〜16であり、p+q=2〜12かつp=1〜12であることがより好ましい。
【0048】
X
1としては、例えば、エチレンジアミン残基、プロピレンジアミン残基、テトラメチレンジアミン残基、ヘキサメチレンジアミン残基、メチルアミノエチルアミン残基、エチルアミノエチルアミン残基、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン残基、トリメチルヘキサメチレンジアミン残基、1,3−プロパンジアミン残基、メチルアミノプロピルアミン残基、エチルアミノプロピルアミン残基、ジエチレントリアミン残基、ジプロピレントリアミン残基、メチルイミノビスプロピルアミン残基、ビス(へキサメチレン)トリアミン残基、トリエチレンテトラミン残基、テトラエチレンペンタミン残基、ペンタエチレンヘキサミン残基等の脂肪族ポリアミン残基;シクロヘキサンジアミン残基等の脂環式ジアミン残基が挙げられ、エチレンジアミン残基、プロピレンジアミン残基、テトラメチレンジアミン残基、ヘキサメチレンジアミン残基、メチルアミノエチルアミン残基、エチルアミノエチルアミン残基、1,3−プロパンジアミン残基、メチルアミノプロピルアミン残基、エチルアミノプロピルアミン残基、ジエチレントリアミン残基、ジプロピレントリアミン残基、トリエチレンテトラミン残基が好ましく、エチレンジアミン残基、プロピレンジアミン残基、テトラメチレンジアミン残基、ジエチレントリアミン残基がより好ましい。
【0049】
一般式(2)においてAOは、具体的には、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、1,2−ブチレンオキサイド基、2,3−ブチレンオキサイド基、1,3−ブチレンオキサイド基、1,4−ブチレンオキサイド基等が挙げられ、流動性の観点から、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基が好ましい。また、1分子中にAOが複数存在する場合、それらのAOは同一であっても異なっていてもよく、異なっている場合は、ブロック付加でもランダム付加でも交互付加でも構わない。さらに、pが2以上である場合、p個の(AO)
rは同一でも異なっていてもよい。
【0050】
一般式(2)において、rはそれぞれ独立にAOで表されるアルキレンオキサイド基の付加モル数を表し、r=1〜25である。rの数は、流動性の観点から、それぞれ独立に1〜20であることが好ましく、それぞれ独立に1〜15であることがより好ましい。また、一般式(2)において、p×rの数(この場合のrはアルキレンオキサイド基の平均付加モル数)が2〜100であることが好ましく、4〜70であることがより好ましい。
【0051】
また、X
1が有するアミノ基及び/又はイミノ基由来の活性水素の全てにアルキレンオキサイド基が付加していることが好ましい。例えば、ポリアミンがエチレンジアミンである場合、エチレンジアミンの4個の活性水素にアルキレンオキサイド基が付加していることが好ましい。
【0052】
このような(E)成分は、前記ポリアミンにアルキレンオキサイド基を付加することによって得ることができる。アルキレンオキサイド基の付加は、ポリアミンのようなアミン化合物にアルキレンオキサイド基を付加する通常の方法によって実施することができる。
【0053】
また、(E)成分は、市販品を使用することが可能であり、例えば、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド・エチレンオキサイドブロック付加物であるアデカプルロニック TR701、TR702等のアデカプルロニックTRシリーズ(ADEKA社製)、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物であるアデカポリエーテル EDP300、EDP450等のアデカポリエーテルEDPシリーズ等が挙げられる。
【0054】
(E)成分を配合する場合、その含有量は、前述の(C)銅粒子の質量100質量部を基準に、0.1〜100質量部であることが好ましく、0.1〜75質量部であることがより好ましく、1〜60質量部であることが更により好ましい。また、(E)成分の含有量は、本発明の導電性インク組成物の質量100質量%を基準に、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.1〜25質量%であることがより好ましい。前記(E)成分の含有量が、前記下限未満では流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えても流動性が低下する傾向にある。
【0055】
また、本発明においては、(A)成分と(E)成分とを兼ねる成分として、オキシカルボン酸とポリアミンアルキレンオキサイド付加物によるイオン液体を使用してもよい。
【0056】
さらに、本発明の導電性インク組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲で、乾燥防止剤、分散剤、酸化防止剤、濃度調整剤、表面張力調整剤、粘度調整剤等の公知の添加成分を添加することができる。
【0057】
次に、本発明の導電性インク組成物の製造方法について説明する。本発明の導電性インク組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、(B)成分((D)成分を更に添加する場合は、(B)成分及び(D)成分)に(A)成分((E)成分を更に添加する場合は、(A)成分及び(E)成分)を攪拌混合して溶解せしめた後、(C)成分を攪拌混合して分散せしめる方法が挙げられる。なお、(B)成分((D)成分を更に添加する場合は、(B)成分及び(D)成分)が室温にて固形状の場合は、加温して液体状に融解せしめた後、前述の製造方法により導電性インク組成物を得ることができる。攪拌混合の際に用いられる混合機は適宜選択して使用されるが、例えば、超音波分散機、ホモミキサー、ディスパー、アジテイター、プラネタリーミキサー、アジホモミキサー、ユニバーサルミキサー、アトライター等の混合機を使用することができる。これらは1種又は2種以上の方法を選択することができる。
【0058】
[導電性部材及びその製造方法]
次に、前述の本発明の導電性インク組成物を用いた本発明の導電性部材及びその製造方法について説明する。すなわち、本発明の導電性部材を製造するための方法は、前記本発明の導電性インク組成物を基材に塗布し、乾燥処理することによって導電性部材を得る方法である。
【0059】
前記基材としては、公知のものを用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂、紙、金属、ガラスが挙げられ、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂
、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート)、ポリアセタール樹脂、セルロース誘導体等の樹脂基材;非塗工印刷用紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙(アート紙、コート紙)、特殊印刷用紙、コピー用紙(PPC用紙)、未晒包装紙(重袋用両更クラフト紙、両更クラフト紙)、晒包装紙(晒クラフト紙、純白ロール紙)、コートボール、チップボール段ボール等の紙基材;銅板、鉄板、アルミ板等の金属基材;ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、シリカガラス、石英ガラス等のガラス基材;アルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウム、ITO(インジウム錫オキサイド)等の金属酸化物基材が挙げられる。
【0060】
また、導電性インク組成物を塗布する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スリットコーティング法、スピンコーティング法、ディスペンサーでの塗布法、インクジェットが挙げられる。導電性インク組成物を基材に塗布する塗布量としては、特に限定されるものではなく、所望する導電性部材の膜厚等に応じて適宜調整すればよい。なお、塗布する方法によっては導電性インク組成物は液体状でなければならないが、その場合、導電性インク組成物が固形状の場合は固体状の導電性インク組成物を加温等して液体状に融解して使用することができる。
【0061】
さらに、本発明の導電性部材の製造方法を実施する環境における雰囲気条件は、特に限定されるものではないが、例えば、空気雰囲気;窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気;水素ガス等の還元雰囲気が挙げられる。なお、本発明においては、マイクロサイズの銅粒子を用いた場合であっても、空気等の簡便な雰囲気下でかつ従来より低温の乾燥条件下において、十分な導電性を有する導電性部材を得ることが可能となることから、設備等の簡便さ等の観点から空気雰囲気が好ましい。
【0062】
本発明の導電性部材の製造方法における乾燥方法は、特に限定されるものではなく、例えば、室温乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、冷風乾燥、プラズマ乾燥が挙げられる。
【0063】
また、本発明の導電性部材の製造方法においては、設備汎用性の観点から、室温乾燥、又は加熱乾燥が好ましく、乾燥温度は得られる導電性部材の導電性が良くなる観点から、20〜300℃の範囲が好ましく、40〜250℃の範囲がより好ましい。前記乾燥温度が、前記下限未満では銅粒子の融着が困難になる傾向にあり、他方、上限を超えると基材等が熱による損傷、例えば、溶融、変形等を受けやすくなる傾向にある。なお、本発明においては、マイクロサイズの銅粒子を用いた場合であっても、空気等の簡便な雰囲気下でかつ従来より低温の乾燥条件下において、十分な導電性を有する導電性部材を得ることが可能となることから、前記乾燥温度として20〜150℃という低温を採用することが可能となる。
【0064】
また、本発明の導電性部材の製造方法における乾燥時間は、特に限定されるものではなく、所望する銅膜の導電性(抵抗値)、乾燥温度等を考慮して適宜選択すればよく、一般的には10秒間〜24時間が好ましい。なお、加熱乾燥せずに室温乾燥する場合、乾燥を促進するために乾燥剤を入れたデシケーター等の中で乾燥してもよい。
【0065】
本発明の導電性部材の製造方法においては、前記乾燥処理が、以下に説明する、
(i)圧力を加えながら乾燥させる加圧乾燥処理、又は、
(ii)減圧しながら乾燥させる減圧乾燥処理、
であることが好ましい。
【0066】
前記加圧乾燥処理では、前記基材上の導電性インク組成物に圧力を加えると同時に、前記導電性インク組成物を乾燥させる。圧力を加える方法としては、例えば、加圧装置(雰囲気ガス、温度及び圧力を制御可能な雰囲気制御加熱加圧装置等)を用いて加圧する方法、基材上の導電性インク組成物表面上に保護シートを積層して前記保護シートの上から加圧ローラーやプレス機によって加圧する方法等が挙げられる。
【0067】
このような加圧乾燥処理における加圧条件としては、圧力が0.1〜20MPaであることが好ましく、1〜10MPaであることがより好ましい。前記圧力が前記下限未満では、銅粒子の融着が不十分となって得られる導電性部材において導電性の向上効果が十分に奏されにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、加圧するための装置が大掛かりになってコストが増大する傾向にある。
【0068】
前記減圧乾燥処理では、前記基材上の導電性インク組成物に対して減圧すると同時に、前記導電性インク組成物を乾燥させる。減圧する方法としては、例えば、減圧装置(雰囲気ガス、温度及び圧力を制御可能な雰囲気制御加熱減圧装置等)を用いて減圧する方法が挙げられる。
【0069】
このような減圧乾燥処理における減圧条件としては、圧力が0.1〜1000Paであることが好ましく、1〜100Paであることがより好ましい。前記圧力が前記下限未満では、減圧するための装置が大掛かりになってコストが増大する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、銅粒子の融着が不十分となって得られる導電性部材において導電性の向上効果が十分に奏されにくくなる傾向にある。
【0070】
また、このような加圧乾燥処理及び減圧乾燥処理における乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、室温乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、冷風乾燥、プラズマ乾燥が挙げられる。
【0071】
さらに、このような加圧乾燥処理及び減圧乾燥処理は、設備汎用性の観点から、室温又は加熱条件下で実施することが好ましい。このときの温度としては、得られる導電性部材の導電性がさらに向上する観点から、20〜300℃の範囲が好ましく、60〜250℃の範囲がより好ましい。前記温度が前記下限未満では、銅粒子の融着が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基材等が熱による損傷、例えば、溶融、変形等を受けやすくなる傾向にある。なお、本発明においては、マイクロサイズの銅粒子を用いた場合であっても、空気等の簡便な雰囲気下かつ従来より低温の乾燥条件下で優れた導電性を有する導電性部材を得ることが可能であることから、前記加圧乾燥処理及び前記減圧乾燥処理の温度として20〜150℃という低温を採用することが可能となる。
【0072】
また、このような加圧乾燥処理及び減圧乾燥処理における処理時間は、特に限定されるものではなく、所望する導電性部材の導電性(抵抗値)、処理温度等を考慮して適宜選択すればよく、一般的には前記圧力及び温度を維持する時間が10秒間〜24時間であることが好ましい。なお、このような加圧乾燥処理及び減圧乾燥処理としては、加熱せずに室温において実施する場合、乾燥を促進するために乾燥剤を入れたデシケーター等の中で実施してもよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1〜41及び比較例1〜9)
実施例1〜41及び比較例1〜9の導電性インク組成物は、それぞれ表1〜7に示す成分及び組成の通りとなるようにして以下の方法により製造した。すなわち、表1〜7に示す組成となるように、(B)成分((D)成分を更に添加する場合は、(B)成分及び(D)成分)に(A)成分を加えて混合して均一溶液とし、さらに(C)成分を添加混合し、次に超音波処理(超音波工業株式会社製、ULTRASONIC CLEANER 「SONOQUICK C10」を使用)を30分間施して均一分散液として各導電性インク組成物を得た。なお、実施例9及び10においては、(B)成分を加温して液体状に融解せしめた後、前述の製造方法により導電性インク組成物を得た。
【0075】
次いで、実施例1〜27及び比較例1〜3においては、得られた導電性インク組成物を、それぞれ空気雰囲気下、アプリケーターにてガラス基材上に縦3cm、横1cmの長方形のベタ印刷部となるように塗布し(ウエット膜厚;300μm)、それぞれ表1〜3及び表6に示す処理温度及び処理時間にて乾燥させて各導電性膜(導電性部材)を得た。なお、実施例9及び10においては、前述の方法により得られた導電性インク組成物を加温して液体状に融解せしめた後、前述の塗布方法により各導電性膜(導電性部材)を得た。
【0076】
また、実施例28〜34及び比較例4〜6においては、得られた導電性インク組成物を、それぞれ空気雰囲気下、アプリケーターにてガラス基材上に縦3cm、横1cmの長方形のベタ印刷部となるように塗布し(ウエット膜厚:300μm)、雰囲気制御加熱加圧装置を用いてそれぞれ表4及び表7に示す処理温度、処理時間、雰囲気及び加圧条件にて乾燥させて各導電性膜(導電性部材)を得た。
【0077】
さらに、実施例35〜41及び比較例7〜9においては、得られた導電性インク組成物を、それぞれ空気雰囲気下、アプリケーターにてガラス基材上に縦3cm、横1cmの長方形のベタ印刷部となるように塗布し(ウエット膜厚:300μm)、雰囲気制御加熱減圧装置を用いてそれぞれ表5及び表7に示す処理温度、処理時間、雰囲気及び減圧条件にて乾燥させて各導電性膜(導電性部材)を得た。
【0078】
得られた導電性膜(導電性部材)の体積抵抗率(Ω・cm)を、ロレスタ指針計(三菱化学株式会社製「MCP−T610」)を用いて測定した。結果を表1〜7に示す。なお、体積抵抗率は数値が低いほど電気を通しやすくなり、良好と判定する。
【0079】
なお、表1〜7中の空欄は0(ゼロ)を示す。また、表1〜7中の銅粒子としては以下のものを使用した。
銅粒子:IOX社製「サブマイクロ銅粉 IOXCu750」、平均粒子径750nm、銅含有量99質量%以上。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
表1〜7に示した結果から明らかなように、本発明の導電性インク組成物を用いた場合は、いずれの銅粒子を用いた場合であっても、空気という簡便な雰囲気下でかつ従来より低温の乾燥条件下であっても、十分な導電性を安定して有する導電性部材を形成することが可能なものであることが確認された。また、本発明の導電性インク組成物を用いて導電性部材を形成する際に、加圧乾燥又は減圧乾燥するようにすれば、得られる導電性部材の導電性がより向上する傾向にあることが確認された。さらに、本発明で用いる前記特定のアミド化合物がいわゆる分散媒としても機能するため、他の分散媒を付加的に配合せずとも十分な導電性を安定して有する導電性部材を形成することが可能であることが確認された。