【解決手段】熱可塑性樹脂組成物は、ウレタン化合物と共重合性モノマーの共重合により得られた分岐共重合体を含み、ウレタン化合物は、水酸基を含む(メタ)アクリレート化合物とトリイソシアネート化合物との反応にから得られる。
前記水酸基を含む(メタ)アクリレート化合物が、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、およびカプロラクトンアクリレートからなる群より選択された少なくとも1つである請求項1〜2のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記共重合性モノマーの量100重量部に対し、前記ウレタン化合物の量が、0.005重量部〜0.8重量部である請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記共重合性モノマーが、スチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、および(メタ)アクリレート系モノマーからなる群より選択された少なくとも1つである請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、成形品に高い溶融張力を持たせ、薄片化処理の補助と生産安定性の向上を図ることのできる分岐共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0007】
本発明は、上述した熱可塑性樹脂組成物により形成された成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ウレタン化合物と共重合性モノマーとの共重合により得られた分岐共重合体を含み、ウレタン化合物は、水酸基を含む(メタ)アクリレート化合物とトリイソシアネート化合物との反応により得られる生成物である。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、トリイソシアネート化合物は、式(1)で表される。
【0010】
【化1】
式(1)
【0011】
式(1)において、R
a、R
b、R
cは、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、nは、2〜12の整数である。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、水酸基を含む(メタ)アクリレート化合物は、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、およびカプロラクトンアクリレートからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、ウレタン化合物は、式(2)で表される。
【0014】
【化2】
式(2)
【0015】
式(2)において、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、nは、2〜12の整数であり、X
1、X
2、およびX
3は、それぞれ独立して、2−ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基から水素を除去することにより得られた残基、ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基から水素を除去することにより得られた残基、およびカプロラクトンアクリレートの水酸基から水素を除去することにより得られた残基からなる群より選択される。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、式(2)において、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、nは、2〜10の整数である。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、式(2)において、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、nは、4〜8の整数である。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、式(2)において、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、nは、6である。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、共重合性モノマーの量100重量部に対し、ウレタン化合物の量は、0.005重量部〜0.8重量部である。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、共重合性モノマーの量100重量部に対し、ウレタン化合物の量は、0.01重量部〜0.4重量部である。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、分岐共重合体のモル質量が2×10
5g/モル〜3×10
6g/モルの範囲にある時、平均回転半径は、30nm〜50nmである。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、共重合性モノマーは、スチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、および(メタ)アクリレート系モノマーからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0023】
本発明の1つの実施形態において、分岐共重合体の重量平均分子量は、100,000〜600,000である。
【0024】
本発明の成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物により形成される。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ウレタン化合物と共重合性モノマーとの共重合により得られた分岐共重合体を含み、ウレタン化合物は、高分子合成中に分岐剤の効果を有する。そのため、共重合性モノマーとの反応に使用して、モル質量が2×10
5g/モル〜3×10
6g/モルの範囲で、平均回転半径が30nm〜50nmの分岐共重合体を合成することができる。その結果、成形品は、高い溶融張力を有し、薄片化処理の補助と生産安定性の向上を図ることができる。
【0026】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を例として、本発明の実施形態を詳細に説明する。各図面および関連説明において、同一または類似する構成要素には、同一の参照番号を使用する。
【0029】
言及すべきこととして、本発明の明細書および特許請求の範囲において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを示す。
【0030】
本発明は、ウレタン(urethane)化合物と共重合性モノマーとの共重合により得られた分岐共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。ウレタン化合物は、水酸基を含む(メタ)アクリレート化合物とトリイソシアネート(triisocyanate)化合物との反応により得られる生成物である。以下、上述した成分について詳しく説明する。
<水酸基を含む(メタ)アクリレート化合物>
【0031】
本発明の水酸基を含む(メタ)アクリレート化合物は、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2-hydroxyethyl acrylate, HEA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate, PETIA)、およびカプロラクトンアクリレート(caprolactone acrylate)からなる群より選択された少なくとも1つである。
【0032】
2−ヒドロキシエチルアクリレートは、下記の式で表される。
【0034】
ペンタエリスリトールトリアクリレートは、下記の式で表される。
【0036】
カプロラクトンアクリレートの具体例は、下記の式で表される。
【0037】
【化5】
<トリイソシアネート化合物>
【0038】
本発明のトリイソシアネート化合物は、式(1)で表される。
【0040】
式(1)において、R
a、R
b、R
cは、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、nは、2〜12の整数である。
【0041】
さらに詳しく説明すると、式(1)において、R
a、R
b、R
cは、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、好ましくは、nは、2〜10の整数であり、より好ましくは、nは、4〜8の整数であり、さらに好ましくは、nは、6である。
【0042】
トリイソシアネート化合物の具体例は、下記の式で表される。
【0044】
本発明のウレタン化合物は、式(2)で表される。
【0046】
式(2)において、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、nは、2〜12の整数であり、X
1、X
2、およびX
3は、それぞれ独立して、2−ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基から水素を除去することにより得られた残基、ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基から水素を除去することにより得られた残基、およびカプロラクトンアクリレートの水酸基から水素を除去することにより得られた残基からなる群より選択される。
【0047】
さらに詳しく説明すると、式(2)において、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、好ましくは、nは、2〜10の整数であり、より好ましくは、nは、4〜8の整数であり、さらに好ましくは、nは、6である。
【0048】
本発明のウレタン化合物は、式(3)または式(4)で表される。
【0050】
式(3)および式(4)において、R
4、R
5、R
6、R
11、R
12、およびR
13は、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、nは、2〜12の整数であり、R
7、R
8、R
9、R
10、R
14、およびR
15は、−(CH
2)
5−である。
【0051】
さらに詳しく説明すると、式(3)および式(4)において、R
4、R
5、R
6、R
11、R
12、およびR
13は、それぞれ独立して、−(CH
2)
n−を示し、好ましくは、nは、2〜10の整数であり、より好ましくは、nは、4〜8の整数であり、さらに好ましくは、nは、6である。
【0052】
本発明のウレタン化合物の具体例は、式(A)、式(B)、および式(C)で表され、式(A)、式(B)、および式(C)で表されるウレタン化合物は、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよびペンタエリスリトールトリアクリレートとトリイソシアネート化合物を反応させることにより得られる。さらに詳しく説明すると、式(A)、式(B)、および式(C)で表されるウレタン化合物のCAS番号は、それぞれ107596−08−7、102404−91−1、および107596−14−5である。
【0054】
本発明のウレタン化合物の具体例は、式(D)、式(E)、および式(F)で表され、式(D)、式(E)、および式(F)で表されるウレタン化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびカプロラクトントリアクリレートとトリイソシアネート化合物を反応させることにより得られる。さらに詳しく説明すると、式(D)で表されるウレタン化合物のCAS番号は、1046440−95−2である。式(E)および式(F)で表されるウレタン化合物の合成プロセスは、後述の実験例において詳しく説明する。
【0056】
式(D)、式(E)、および式(F)において、Yは、カプロラクトンアクリレートの水酸基から水素を除去することにより得られた残基を示す。
【0057】
本発明のウレタン化合物を共重合体モノマーとの反応に使用して、分岐共重合体を得る。つまり、本発明のウレタン化合物は、分岐剤の効果を有するため、成形品は、高い溶融張力を有し、薄片化処理の補助と生産安定性の向上を図ることができる。
<共重合体モノマー>
【0058】
本発明の共重合性モノマーは、スチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、および(メタ)アクリレート系モノマーからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0059】
スチレン系モノマーの具体例は、スチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、またはブロモスチレンが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。好ましくは、スチレン系モノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、またはその組み合わせである。本発明において使用するスチレン系モノマーは、1つのモノマーとして使用しても、あるいは2つまたはそれ以上のモノマーを組み合わせて使用してもよい。
【0060】
アクリロニトリル系モノマーは、単独で使用しても、あるいは組み合わせて使用してもよい。アクリロニトリル系モノマーは、アクリロニトリルまたはα−メチルアクリロニトリルが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。好ましくは、アクリロニトリル系モノマーは、アクリロニトリルである。
【0061】
(メタ)アクリレート系モノマーの具体例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(polyethylene glycol diacrylate)、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、エチレンジメタクリレート(ethylene dimethacrylate)、またはネオペンチルジメタクリレート(neopentyl dimethacrylate)等が挙げられるが、本発明はこれに限定されない。好ましくは、(メタ)アクリレート系モノマーは、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、またはブチルメタクリレートである。
<分岐共重合体>
【0062】
本発明の分岐共重合体は、ウレタン化合物と上述した共重合性モノマーとの共重合により得られ、ウレタン化合物は、分岐剤の効果を有する。さらに詳しく説明すると、共重合性モノマーの量100重量部に対し、ウレタン化合物の量は、好ましくは、0.005重量部〜0.8重量部であり、より好ましくは、0.01重量部〜0.4重量部である。
【0063】
本発明の分岐共重合体の重量平均分子量は、好ましくは、100,000〜600,000であり、より好ましくは、150,000〜500,000であり、さらに好ましくは、200,000〜450,000である。
【0064】
本発明の分岐共重合体のモル質量が2×10
5g/モル〜3×10
6g/モルの範囲の時、平均回転半径は、好ましくは30nm〜50nmであり、優れた分岐効果が得られる。
【0065】
本発明は、上述した熱可塑性樹脂組成物により形成された成形品を提供する。成形品の製造方法は、特に限定されず、熱成形、真空成形、またはこれらのプロセスの組み合わせを使用してもよい。熱成形および真空成形においては、従来の方法を使用することができるため、ここでは繰り返し説明しない。
【0066】
下記の実験例を用いて、本発明の熱可塑性樹脂組成物を説明する。しかしながら、下記の実験例は、本発明を限定する意図はない。
実験例
【0067】
下記の実験例を用いて、本発明の熱可塑性樹脂組成物が分岐共重合体を含み、高い溶融張力を有する成形品が得られることを証明する。
【0068】
また、下記の合成例1および合成例2を用いて、上述した式(E)および式(F)で表されるウレタン化合物の合成プロセスについて説明する。
ウレタン化合物の作製
合成例1
【0069】
合成例1のウレタン化合物は、下記の反応プロセス1を用いて作製される。
[反応プロセス1]
【0071】
Yは、SR495B(カプロラクトンアクリレート)の水酸基から水素を除去することによって得られた残基である。
【0072】
四つ口の反応フラスコに、1.9重量部のMEHQ(モノメチルエーテルヒドロキノン(monomethyl ether hydroquinone))、600重量部のバイエル(Bayer)社製のHDT(商品名:デスモデュール(Desmodur)N3300、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、以下、HDI)の3量体)、1361重量部のEB(エチレングリコールモノブチルエーテル(ethylene glycol monobutyl ether)、および1.9重量部のジブチルスズジラウレート(dibutyltin dilaurate, DBDTL)を添加した後、撹拌して混合液を形成した。そして、757重量部のサートマー(Sartomer)社製の商品名:SR495B(カプロラクトンアクリレート)を上述した混合液に室温で滴下した。その後、混合液を50℃に上げて、1時間反応させた。次に、514重量部の長興材料工業(Eternal Materials)社製のPETIA(商品名:EM235−1(ペンタエリスリトールトリアクリレート))を514重量部のEBに溶解し、反応に滴下した。反応混合物を75℃に上げて、5時間反応させた。反応が完了した後、温度を室温に下げ、反応物を沈殿させてフィルタリングし、式(E)で表されるウレタン化合物を得た。
【0073】
図1は、合成例1で得られたウレタン化合物の
1H−NMRスペクトルである。ブルカー(Bruker)社製のウルトラシールド(Ultrashield)400MHz核磁気共鳴スペクトルを用いて、
1H−NMR(水素のNMR)結果を決定した。
図1に示すように、SR495BのOH官能基からH(3.5ppm)の信号が消失し、HDTからH(3.2ppm)の信号がシフトしている。そのため、反応が確認される。
【0074】
図2は、合成例1で得られたウレタン化合物のGPCクロマトグラムである。示差屈折率検出器(ウォーターズRI−2414)および紫外可視光検出器(ウォーターズPDA−2996)を装備したウォーターズ(Waters)社製のゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography, GPC)を用いて分析を行った。分析条件は、以下の通りである:コラム:MZ-Gel Sdplus linear 5 μm 300×8.0 mm;移動相:THF(流速0.5ml/分)。
図2に示すように、低分子量ピークが消失し、高分子量ピークが出現している。そのため、反応が確認される。
合成例2
【0075】
合成例2のウレタン化合物は、下記の反応プロセス2を用いて作製される。
[反応プロセス2]
【0077】
Yは、SR495B(カプロラクトンアクリレート)の水酸基から水素を除去することによって得られた残基である。
【0078】
四つ口の反応フラスコに、2重量部のMEHQ(モノメチルエーテルヒドロキノン)、600重量部のバイエル社製のHDT(商品名:デスモデュールN3300)、1036.5重量部のEB(エチレングリコールモノブチルエーテル)、および2重量部のジブチルスズジラウレート(DBDTL)を添加した後、撹拌して混合液を形成した。そして、432.5重量部のサートマー社製の商品名:SR495B(カプロラクトンアクリレート)を上述した混合液に室温で滴下した。その後、混合液を50℃に上げて、1時間反応させた。次に、955重量部のPETIA(商品名:EM235−1(ペンタエリスリトールトリアクリレート))を955重量部のEBに溶解し、反応に滴下した。反応混合物を75℃に上げて、5時間反応させた。反応が完了した後、温度を室温に下げ、反応物を沈殿させてフィルタリングし、式(F)で表されるウレタン化合物を得た。
【0079】
図3は、合成例2で得られたウレタン化合物の
1H−NMRスペクトルである。
図3に示すように、SR495BのOH官能基からH(3.5ppm)の信号が消失し、HDTからH(3.2ppm)の信号がシフトしている。そのため、反応が確認される。
【0080】
図4は、合成例2で得られたウレタン化合物のGPCクロマトグラムである。
図4に示すように、低分子量ピークが消失し、高分子量ピークが出現している。そのため、反応が確認される。
【0081】
図3の
1H−NMRスペクトルと
図1の
1H−NMRスペクトルは、同じ方法で測定され、
図4のGPCクロマトグラム
図2のGPCクロマトグラムは、同じ方法で測定されたため、ここでは繰り返し説明しない。
分岐共重合体の合成
実験例1
【0082】
100重量部のスチレンモノマーおよび8重量部のエチルベンゼン中に、150ppmの1,1−ジ−tert−ブチルペロキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(TX−29A)、250ppmのn−ドデシルメルカプタン、110ppmのオクタデシル−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−’ヒドロキシフェニル)プロピオネート(octadecyl-3-(3’,5’-di-t-butyl-4’-hydroxyphenyl)propionate)(IX−1076、CIBA社製)、および220ppmのトリ−(2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)ホスフェート(tri-(2,4-di-t-butyl-phenyl)phosphate)(P−168)の存在下で、550ppmの式(A)で表されるウレタン化合物(CAS番号:107596−08−7)を分岐剤として添加して、反応を行った。反応条件は、以下の通りである:3つの円筒状流通反応器(それぞれ直列に接続され、110リットルの容量を有する)に毎時40リットルの流速でポンプ注入し、それぞれ115℃、130℃、および150℃の入口温度で反応を維持し、最終重合転化率が80重量%であり、260℃の加熱器で加熱した後、15torr真空度の脱揮発装置で未反応モノマーおよび不活性溶媒を除去し、装置から押出した後に共重合体を得る。
【0083】
実験例1で使用した分岐剤の種類、反応性官能基の使用量および数は、下記の表1に示した通りである。
実験例2〜実験例6
【0084】
合成方法は、実験例1と同じである。異なる点は、異なる種類および量のウレタン化合物を分岐剤として添加し、反応を行ったことである。ウレタン化合物の種類および量は、下記の表1に示した通りである。
【0085】
実験2〜実験6において、それぞれ式(B)、式(C)、式(D)、式(E)、および式(F)で表されるウレタン化合物を添加して、反応を行った。ここで、式(B)、式(C)、および式(D)で表されるウレタン化合物のCAS番号は、それぞれ102404−91−1、107596−14−5、および1046440−95−2である。式(E)および式(F)で表されるウレタン化合物は、上述した合成例1および合成例2により作製される。
実験例7
【0086】
69.5重量部のスチレンモノマー、30.5重量部のアクリロニトリルモノマー、および25重量部のエチルベンゼン中に、200ppmの1,1−ジ−tert−ブチルペロキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(TX−29A)および150ppmのt−ドデシルメルカプタン(t-dodecyl mercaptan)の存在下で、900ppmの式(F)で表されるウレタン化合物(合成例2で作製されたもの)を添加して、反応を行った。反応条件は、以下の通りである:2つの連続撹拌槽反応器および円筒状流通反応器(直列に接続され、それぞれ40リットルおよび110リットルの容量を有する)に毎時21kgの流速でポンプ注入し、それぞれ105℃および105℃の入口温度で反応を維持し、最終重合転化率は50重量%であり、260℃の加熱器で加熱した後、15torr真空度の脱揮発装置で未反応モノマーおよび不活性溶媒を除去し、装置から押出した後に共重合体を得る。
比較例1〜比較例2
【0087】
合成方法は、実験例1と同じである。異なる点は、異なる種類および量の分岐剤を添加して、反応を行ったことである。分岐剤の種類および量は、下記の表1に示した通りである。
【0088】
商品名EM231およびDR−M451の分岐剤は、いずれも長興材料工業社製であり、分岐剤EM231は、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate, TMPTA)を示し、DR−M451は、メラミンアクリレートを示す。分岐剤EM231およびDR−M451は、下記に示す化学構造を有する。
【0090】
合成例は、実験例1と同じであり、異なる点は、分岐剤を反応に添加しないことである。
比較例4
【0091】
合成例は、実験例7と同じであり、異なる点は、1100ppmのEM231を添加して、反応を行ったことである。
【0092】
【表1】
評価1:共重合体の重量平均分子量の測定
【0093】
下記の方法を用いて、実験例1〜実験例7および比較例1〜比較例4の重量平均分子量を測定した。示差屈折率検出器(ウォーターズRI−2414)および紫外可視光検出器(ウォーターズPDA−2996)を装備したウォーターズ社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて分析を行った。分析条件は、以下の通りである:コラム:MZ-Gel Sdplus linear 5 μm 300×8.0 mm;移動相:THF(流速0.5ml/分)。評価結果は、下記の表2および表3に示した通りである。
評価2:共重合体の平均回転半径の測定
【0094】
下記の方法を用いて、モル質量(molar mass)の範囲が2×10
5g/モル〜3×10
6g/モルにある時、実験例1〜実験例6および比較例1〜比較例3の共重合体の平均回転半径〔R(avg)〕を測定した。ウォーターズ社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)とワイアットテクノロジー(Wyatt Technology)社製のDAWN8+多角度光散乱(multi-angle laser light scattering, MALLS)およびViscoStar−IIの粘度計(viscometer)を用いて、分析を行った。分析条件は、以下の通りである:コラム:MZ-Gel Sdplus linear 5 μm 300×8.0 mm;移動相:THF(流速0.5ml/分)。評価結果は、下記の表2に示した通りである。
評価3:共重合体の伸長粘度の測定
【0095】
下記の方法を用いて、実験例1〜実験例6および比較例1〜比較例3の共重合体の伸長粘度(elongational viscosity)を測定した。ティー・エイ・インスツルメント(TA instrument)社製のレオメータ(Rheometer)ARES−G2を用いて、温度170度、ずり速度0.5/sで分析を行った。評価結果は、下記の表2に示した通りである。
評価4:共重合体のゲル化評価
【0096】
下記の方法を用いて、実験例1〜実験例7および比較例1〜比較例4の共重合体のゲル化評価を行った。厚さが20μmの膜を押出し、5×20cmの範囲を選択することによって、光表面欠陥解析装置(台湾長瀬社製)を使用して、70μmよりも大きいゲル化数を観察した。下記の基準を評価に使用し、評価結果は、下記の表2および表3に示した通りである。
○:ゲル化数<15
×:ゲル化数≧15
【0099】
反応性官能基の数については、表1からわかるように、共重合性モノマー100重量部に対し(単位はg)、合成された共重合体のメルトボリュームフローレイト(melt volume rate, MVR)(測定条件:200℃、5kg)が1.5cm
3/10分の時、実験例1〜実験例6に示したウレタン化合物の量および比較例1および比較例2に示した分岐剤の量をそれぞれ使用して、反応性官能基(ミリモル)の数に変換した。例えば、(メタ)アクリロイルの数を計算することができる。実験例1の場合、式(A)で表されるウレタン化合物の使用量、分子量、および1分子中の反応性官能基の数は、それぞれ500ppm、1035g/モルおよび5である。反応性官能基の数の計算方法は、使用量÷分子量×1分子中の反応性官能基の数である。つまり、100(g)×550(ppm)÷1035(g/モル)×5=0.00027モル=0.27ミリモルに等しい。実験例1〜実験例6は、本発明で使用したウレタン化合物であり、合成された共重合体のメルトボリュームフローレイトが1.5cm
3/10分に達した時、反応性官能基の数は、比較例1および比較例2で使用した分岐剤中の反応性官能基の数よりも低くなる。そのため、実験例1〜実験例6で使用したウレタン化合物が高い重合反応性を有することがわかる。
【0100】
平均回転半径に関しては、表2からわかるように、実験例1〜実験例6は、本発明のウレタン化合物を分岐剤として使用し、分岐共重合体を合成する。そのため、EM231を使用する比較例1および分岐剤を反応に添加しない比較例3と比較して、モル質量が2×10
5g/モル〜3×10
6g/モルの範囲にある時に実験例1〜実験例6で合成された分岐共重合体は、比較的大きな平均回転半径を有する(平均回転半径は、30nm〜50nm)。つまり、分岐効果が比較的優れている。
【0101】
伸長粘度に関しては、表2からわかるように、実験例1〜実験例6は、本発明のウレタン化合物を分岐剤として使用し、分岐共重合体を合成する。そのため、EM231を使用する比較例1および分岐剤を反応に添加しない比較例3と比較して、実験例1〜実験例6において合成された分岐共重合体は、比較的高い伸長粘度を有する。そのため、成形(特に、熱成形、真空成形)の間、優れた圧縮シート性および真空成形性を維持することができる。
【0102】
ゲル化に関しては、表2からわかるように、比較例2のDR−M451を分岐剤として使用して反応を行った時、比較的高い平均回転半径および比較的高い伸長粘度が得られるが、ゲル化の問題も存在する。比較すると、表2に示すように、実験例1〜実験例6は、本発明のウレタン化合物を分岐剤として使用し、分岐共重合体を合成する。そのため、比較的高い平均回転半径および比較的高い伸長粘度を有するが、ゲル化問題は観察されない。
【0103】
ゲル化に関しては、表3からわかるように、比較例4は、EM231を分岐剤として使用して反応を行っており、結果は、ゲル化問題を明らかにした。比較すると、実験例7は、式(F)で表されるウレタン化合物を使用する。そのため、ゲル化問題は観察されない。
【0104】
以上のように、本発明は、熱可塑性樹脂組成物を提供し、分岐共重合体は、ウレタン化合物と共重合性モノマーの共重合により得られる。さらに詳しく説明すると、ウレタン化合物は、高分子合成中に分岐剤の効果を有し、比較的高い重合反応性も有する。共重合性モノマーとの反応に使用して、モル質量が2×10
5g/モル〜3×10
6g/モルの範囲で、平均回転半径が30nm〜50nmの分岐共重合体を合成することができる。そのため、優れた分岐効果を有する。また、合成された分岐共重合体は、比較的高い伸長粘度を有する。そのため、成形(特に、熱成形、真空成形)の間、優れた圧縮シート特性および真空成形性を維持することができる。したがって、成形品は、高い溶融張力を有し、薄片化処理の補助と生産安定性の向上を図ることができる。
【0105】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。