【解決手段】成分1と成分2とを含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維であって、成分1は融解開始温度が34℃以上、融解ピーク温度が50℃以下の範囲であり、成分2は結晶化開始温度が30℃未満、結晶化ピーク温度が5℃以上の範囲であることを特徴とする合成繊維である。中でも、成分1の融解熱量ΔHmが10〜150J/g、成分2の結晶化熱量ΔHcが10〜150J/gであり、50℃以下に観測される合成繊維の融解熱量ΔHmが1〜5J/g、50℃以下に観測される結晶化熱量ΔHcが1〜5J/gである合成繊維が好ましい。
成分1と成分2とを含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維であって、成分1は融解開始温度が34℃以上、融解ピーク温度が50℃以下の範囲であり、成分2は結晶化開始温度が30℃未満、結晶化ピーク温度が5℃以上の範囲であることを特徴とする合成繊維。
成分1の融解熱量ΔHmが10〜150J/g、成分2の結晶化熱量ΔHcが10〜150J/gであり、50℃以下に観測される合成繊維の融解熱量ΔHmが1〜5J/g、50℃以下に観測される合成繊維の結晶化熱量ΔHcが1〜5J/gである請求項1記載の合成繊維。
成分1は、側鎖炭素鎖がC18、C20、C22の少なくとも1つ以上からなる結晶性ポリα−オレフィンであり、成分2は、側鎖炭素鎖がC12、C14、C16の少なくとも1つ以上からなる結晶性ポリα−オレフィンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の合成繊維。
融解開始温度が34℃以上、融解ピーク温度が50℃以下の範囲である成分1を含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維と、結晶化開始温度が30℃未満、結晶化ピーク温度が5℃以上の範囲である成分2を含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維とを合糸せしめたことを特徴とする複合糸。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、成分1と成分2とを含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維である。
本発明の成分1、成分2は、融点、凝固点は、衣服内温度の前後に設定する。通常、衣服内温度は31〜32℃であり、この温度を境にして昇温時は、固体から溶融体への相転移がもたらす融解熱による吸熱効果、降温時は、溶融体から固体への相転移がもたらす凝固熱による発熱効果を発揮し、昇温時も降温時も、良好な温度調節機能を発揮する構成とする。
以下、成分1および成分2について、詳細に説明する。
【0009】
まず、成分1について説明する。成分1は融解開始温度が34℃以上、融解ピーク温度が50℃以下の範囲である。中でも、融解開始温度が34℃以上、融解ピーク温度が45℃以下の範囲にあることが好ましい。
肌と衣服との間の温度は、通常31〜32℃程度となる。このとき、成分1は、固体で存在し、外気温が上昇したときに、固体から溶融体への相転移が生じ、吸熱効果により、衣服内部の急激な温度上昇を抑制できる。
【0010】
成分1としては、アクリル酸またはメタクリル酸、それらの誘導体エステルと、ワックスとの重合体、側鎖結晶性ポリマー等が好適に挙げられる。
より具体的には、例えば、アクリル酸としては、ポリエイコシルアクリレート、ポリノナデシルアクリレート、ポリヘプタデシルアクリレート、ポリパルミチルアクリレート、ポリペンタデシルアクリレート、ポリステアリルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリミリスチルアクリレート等、またはこれらのアクリル酸の誘導体が挙げられる。
メタクリル酸としては、ポリドコシルメタクリレート、ポリヘンエイコシルメタクリレート、ポリミリスチルメタクリレート、ポリペンタデシルメタクリレート、ポリパルミチルメタクリレート、ポリヘプタデシルメタクリレート、ポリノナデシルメタクリレート、ポリエイコシルメタクリレート、ポリヘステアリルメタクリレート、ポリ(パルミチル/ステアリル)メタクリレート等、またはこれらのメタクリル酸のエステルが挙げられる。
側鎖結晶性ポリマーとしては、α−オレフィン系ポリマー(結晶性ポリα−オレフィン)、アルキルアクリレート系ポリマー、アルキルメタクリレート系ポリマー、アルキルエチレンオキシド系ポリマー、ポリシロキサン系ポリマーおよびアクリルアミド系ポリマー等の側鎖結晶性ポリマーが挙げられる。
これらの中でも、特に好ましくは、結晶性ポリα−オレフィンである。結晶性ポリα−オレフィンはホモポリマーでも、エチレン、プロピレン等のオレフィンとの共重合体でもよい。また側鎖の炭素鎖は、C18、C20、C22のいずれかであることが好ましい。
【0011】
成分1の融解熱量ΔHmは、10〜150J/gであることが好ましく、より好ましくは、60〜150J/gである。この範囲であると、良好な吸熱効果が得られやすい。
【0012】
示差走査熱量分析した際に得られる成分1の融解ピークの半値幅は、10℃以下であることが好ましい。より好ましくは、5℃以下である。この範囲であると、昇温時のDSCチャートの成分1の融解ピークがシャープであり、ピンポイントでの吸熱効果が優れることとなり、特に、昇温時の温度調節機能が優れたものとなる。
【0013】
次に、成分2について説明する。成分2は結晶化開始温度が30℃未満、結晶化ピーク温度が5℃以上の範囲である。
肌と衣服との間の温度は、通常31〜32℃程度となる。このとき成分2は、液体で存在し、外気温が降下した場合、溶融体から固体への相転移が生じ、発熱効果により、衣服内部の急激な温度降下を抑制できる。これら成分1と成分2を含有させることにより、昇温時も降温時も、温度調節機能を有することができる。
【0014】
成分2としては、上記記載の成分1と同種物質が好適に挙げられる。
すなわち、アクリル酸またはメタクリル酸、それらの誘導体エステルと、ワックスとの重合体、側鎖結晶性ポリマー等が好適に挙げられる。
より具体的には、例えば、アクリル酸としては、ポリエイコシルアクリレート、ポリノナデシルアクリレート、ポリヘプタデシルアクリレート、ポリパルミチルアクリレート、ポリペンタデシルアクリレート、ポリステアリルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリミリスチルアクリレート等、またはこれらのアクリル酸の誘導体が挙げられる。
メタクリル酸としては、ポリドコシルメタクリレート、ポリヘンエイコシルメタクリレート、ポリミリスチルメタクリレート、ポリペンタデシルメタクリレート、ポリパルミチルメタクリレート、ポリヘプタデシルメタクリレート、ポリノナデシルメタクリレート、ポリエイコシルメタクリレート、ポリヘステアリルメタクリレート、ポリ(パルミチル/ステアリル)メタクリレート等、またはこれらのメタクリル酸のエステルが挙げられる。
側鎖結晶性ポリマーとしては、α−オレフィン系ポリマー(結晶性ポリα−オレフィン)、アルキルアクリレート系ポリマー、アルキルメタクリレート系ポリマー、アルキルエチレンオキシド系ポリマー、ポリシロキサン系ポリマーおよびアクリルアミド系ポリマー等の側鎖結晶性ポリマーが挙げられる。
これらの中でも、特に好ましくは、結晶性ポリα−オレフィンである。結晶性ポリα−オレフィンはホモポリマーでも、エチレン、プロピレン等のオレフィンとの共重合体でもよい。また側鎖の炭素鎖は、C12、C14、C16のいずれかであることが好ましい。
【0015】
成分2としては、結晶化熱量ΔHcが10〜150J/gであることが好ましく、より好ましくは40〜150J/gである。この範囲であると、良好な発熱効果が得られやすい。
【0016】
示差走査熱量分析した際に得られる成分2の結晶化ピークの半値幅は、10℃以下であることが好ましい。より好ましくは、5℃以下である。この範囲であると、降温時のDSCチャートの成分2の結晶化ピークがシャープであり、ピンポイントでの発熱効果が優れることとなり、特に、降温時の温度調節機能が優れたものとなる。
【0017】
本発明の合成繊維において、種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。
具体的には、例えば、ポリアミド6(以下、PA6と呼ぶことがある)、ポリアミド66、ポリアミド12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、またはこれらを主成分とする重合体等が挙げられる。
上記成分1、成分2と相溶性に優れる点では、ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂が好ましい。このようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
【0018】
本発明の合成繊維は、芯部に、成分1と成分2とを含む熱可塑性樹脂、鞘部に、繊維形成性可能な熱可塑性樹脂を配した、芯鞘型複合繊維であることが好ましい。
この場合、芯部および鞘部の熱可塑性樹脂は、上記のような種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。
特に、好ましい熱可塑性樹脂の組合せは、芯部にポリオレフィン系の熱可塑性樹脂、鞘部にポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンから選択される熱可塑性樹脂を用いることである。
【0019】
本発明において、上記のような芯鞘型複合繊維とする場合、温度調節機能や取扱い性の点から、芯部が繊維表面に露出しない形状とすることが好ましい。
この場合、成分1、成分2および熱可塑性樹脂を溶融混練して得られるアロイ樹脂組成物を芯部の成分とし、鞘部の成分として、上記から選択される熱可塑性樹脂とした複合繊維であることが好ましい。
【0020】
芯鞘型複合繊維とする場合、温度調節機能および繊維形成の点から、芯鞘比率(体積比)は20:80〜80:20であることが好ましく、より好ましくは、30:70〜70:30である。
尚、芯鞘型複合繊維とする場合、単芯の芯鞘型としても多芯の多芯型(海島型)としてもよい。
【0021】
また、本発明において、成分1および成分2を熱可塑性樹脂に含有させる方法としては、熱可塑性樹脂に成分1および成分2を溶融混練して、混合して複合する方法が好ましい。
複合方法については、例えば、以下が考えられる。
(1)成分1および成分2、熱可塑性樹脂の3種類を混練する(樹脂組成物化)
(2)成分1と熱可塑性樹脂を混練して得られる樹脂組成物および成分2と熱可塑性樹脂を混練して得られる樹脂組成物の2種類を繊維化する際にブレンドする
(3)芯部の成分に(2)で得られた2種類のアロイを多島状に配して繊維化する
【0022】
成分1:成分2:熱可塑性樹脂の割合(質量比)は、温度調節機能・衣料素材としての快適さの点からは、5:5:90〜20:20:60であることが好ましく、10:10:80〜15:15:70であることがさらに好ましい。
芯鞘型複合繊維の場合、芯部に、成分1:成分2:熱可塑性樹脂を含有する際は、芯部が上記の割合となることが好ましい。
【0023】
本発明の合成繊維は、成分1および成分2を含む熱可塑性樹脂からなる単独繊維や複合繊維であってもよいし、上述した成分1および成分2を芯部に含む芯鞘型複合繊維であってもよい。
【0024】
本発明の合成繊維は、温度調節機能の点から、50℃以下に観測される合成繊維の融解熱量ΔHmが1〜5J/gであることが好ましく、50℃以下に観測される合成繊維の結晶化熱量ΔHcが1〜5J/gであることが好ましい。
【0025】
また、本発明は、上記成分1を含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維と、上記成分2を含む熱可塑性樹脂からなる合成繊維とを合糸せしめた複合糸でもある。本発明の複合糸に用いるそれぞれの合成繊維は、単独繊維であっても、複合繊維であってもよい。特に好ましい態様として、芯部に成分1を含む芯鞘型複合繊維と、芯部に成分2を含む芯鞘型複合繊維を合糸したものが挙げられる。
合糸の形態としては、(1)それぞれの合成繊維を引き揃える(2)それぞれの合成繊維をエア交絡等により混繊する(3)それぞれの合成繊維を合撚する等が好適に挙げられる。
【0026】
本発明の複合糸は、温度調節機能の点から、50℃以下に観測される複合糸の融解熱量ΔHmが1〜5J/gであることが好ましく、50℃以下に観測される複合糸の結晶化熱量ΔHcが1〜5J/gであることが好ましい。
【0027】
次に、本発明の合成繊維を製造する方法について例示する。
芯部を形成する熱可塑性樹脂に成分1および成分2を、二軸混練機にて複合化させる。鞘部の熱可塑性樹脂を準備する。上記の2種の樹脂を各々、樹脂の融点以上、望ましくは融点より20℃以上の温度の押出機を用いて溶融する。溶融した樹脂を芯鞘形成する口金を通し、口金表面の孔より、所定の断面形状に樹脂を押出し、繊維化する。押出された繊維を冷風にて冷却して、油剤を付与し、巻き取る。巻き取った繊維に、熱を加えて延伸し、熱セットして、本発明の合成繊維を得る。尚、巻き取り速度は特に限定されないが、700m/min〜2000m/minであることが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例および具体例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0029】
<混練>
ベース樹脂:ポリプロピレン80質量%に、温調剤:1種または2種以上の結晶性ポリα−オレフィン(融点40℃タイプを成分1、融点29℃タイプを成分2として以下に記載する)20質量%の組成として、二軸混練機によりポリプロピレン8.0kg/hrを供給し、250℃にて溶融混練し、索状溶融物を水冷してペレタイザーによりペレット化してポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
<紡糸>
前記ポリプロピレン系樹脂組成物およびポリアミド6を主たる紡糸原料として溶融押出型複合紡糸機を用いて温度250℃で複合紡糸を行った。
紡糸に際しては、ポリプロピレン系樹脂組成物を芯部の成分、ポリアミド6が鞘部の成分となるように別々に溶融してから、芯鞘型紡糸用口金よりあわせて芯鞘の形態にして紡出し、冷却して、油剤を付与しつつ紡速800m/minにて捲き取った。その後50℃の熱ローラー上で3.0倍に延伸し、延伸ローラーにて140℃で熱セットした後、巻き上げ、84dtex/24fの合成繊維を得た。
<筒編み布帛の作製>
得られた合成繊維または複合糸を、筒編機(英光産業株式会社製CR−B、径3.5インチ、針数260本)にて筒編布帛を作製した。
<熱量分析:融解ピーク温度、結晶化ピーク温度、融解開始温度、結晶化開始温度>
示差走査熱量計(Diamond DSC:パーキンエルマージャパン社製)を用いて測定した。昇温、降温速度は10℃/minで統一した。温度条件は0℃〜60℃昇温、60℃で5分間保持、60℃〜0℃に降温、0℃で5分間保持しこれを1stスキャンとし、0℃〜60℃昇温、60℃で5分間保持、60℃〜0℃に降温、0℃で5分間保持したものを2ndスキャンとした。なお、融解ピーク温度、結晶化ピーク温度、融解開始温度、結晶化開始温度および融解熱量、結晶化熱量についてはJIS K 7121に準拠して算出した。
<温度調節機能評価>
10cm角の筒編布帛(試験品)を80℃に設定された熱風乾燥機内で1.0hr静置して、成分1および成分2を完全に溶融後、5℃で24hr静置し凝固させ成分1および成分2における熱履歴を統一した。熱電対型温度計を筒編布帛に包み、肌−衣服間温度である31℃にて1.0hr静置し、温度安定後、50℃に設定された乾燥機に移動した際の高温下、3℃以下に設定した断熱容器に移動した際の低温下での布帛内部の温度変化を確認した。
対照品としてポリアミド6の単独糸で作製した筒編布帛を用いて、試験品との温度差を求めた。得られたグラフから最大温度差の値および高温下に移動させてから20分後、低温下に移動させてから12分後までの温度差グラフから面積(
図3の温度差グラフ:斜線部分の面積で比較)を算出し、これを評価の指標とした。
尚、最大温度差は、絶対値が、大きいほど、温度調節機能は優れている。
また温度差面積が大きいほど、温度調節機能は優れている。
尚、温度調節機能(高温下、低温下)は、以下の要領で、を評価した。
○:最大温度差の絶対値が0.5℃以上の場合
△:最大温度差の絶対値が0.4℃を超えて、0.5℃未満の場合
×:最大温度差の絶対値が0.4℃以下の場合
【0030】
〔実施例1〕
成分2として融点29℃タイプの結晶性ポリα−オレフィン、成分1として融点40℃タイプの結晶性ポリα−オレフィンを準備し、ポリプロピレンに対し各10質量%の組成で同時添加し、前記方法にて混練してポリプロピレン系樹脂組成物を得た。次いで、前記紡糸方法にて、この樹脂組成物を芯部に配して芯鞘比率(体積比)が67:33の芯鞘型複合繊維を得て、前記方法にて筒編み布帛を作製した。
成分1および成分2の物性は以下の通りである。
【0031】
〔実施例2〕
芯鞘比率(体積比)を50:50と変更する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維を得て、筒編み布帛を作製した。
【0032】
〔実施例3〕
成分2として、融点29℃タイプの結晶性ポリα−オレフィンをポリプロピレンに対し20質量%の組成で前記方法にて混練して樹脂組成物を得た。得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、芯部に配する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維Aを得た。
次に、成分1として、融点40℃タイプの結晶性ポリα−オレフィンをポリプロピレンに対し20質量%の組成で前記方法にて混練して樹脂組成物を得た。得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、芯部に配する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維Bを得た。
得られた芯鞘型複合繊維Aと芯鞘型複合繊維Bを、引き揃えて合糸し複合糸を得て、前記方法にて筒編み布帛を作製した。
【0033】
〔比較例1〕
融点29℃タイプの結晶性ポリα−オレフィンのみを、ポリプロピレンに対し20質量%の組成で前記方法にて混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、芯部に配する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維を得て、筒編み布帛を作製した。
【0034】
〔比較例2〕
融点40℃タイプの結晶性ポリα−オレフィンのみを、ポリプロピレンに対し20質量%の組成で前記方法にて混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、芯部に配する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維を得て、筒編み布帛を作製した。
【0035】
〔比較例3〕
ポリプロピレンを芯部に配する以外は実施例1と同様に芯鞘型複合繊維を得て、筒編み布帛を作製した。
【0036】
〔比較例4〕
84dtex/24fのポリアミド単独繊維を準備し、前記方法で筒編み布帛を作製した。
【0037】
実施例および比較例から得られた繊維および複合糸の原料、物性、芯鞘比率、50℃以下に観測される相転移温度、相転移熱量、温度調節機能について、表1、表2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
図1は、温度調節機能評価において、試験品と対照品を、それぞれ、31℃にて1.0hr静置後、50℃に移動した際の時間経過による布帛内部の温度変化を採取し、試験品の温度変化と対照品の温度変化の差を示した図である。最大温度差の絶対値が大きい程、温度調節機能は優れる。また、温度差による面積が大きい程、温度調節機能は優れる。
【0041】
図2は、温度調節機能評価において、試験品と対照品を、それぞれ、31℃にて1.0hr静置後、3℃に移動した際移動した際の、時間経過による布帛内部の温度変化を採取し、試験品の温度変化と対照品の温度変化の差を示した図である。最大温度差の絶対値が大きい程、温度調節機能は優れる。また、温度差による面積が大きい程、温度調節機能は優れる。
【0042】
温度調節機能において、温度差面積値を
図4に示す。Y軸は、正の絶対値が大きいほど、昇温時の温度調整機能が高く、負の絶対値が大きいほど、降温時の温度調節機能が高いことを示す。
【0043】
以上のように、実施例1〜3から得られた合成繊維および複合糸は、昇温時、降温時とも優れた温度調節機能を有するものであった。比較例1から得られた合成繊維は、昇温時に十分な温度調節機能を有さず、降温時にのみ機能を有した。一方、比較例2から得られた合成繊維は、比較例1と逆の挙動を示した。また、温度調節材料を含まない比較例3から得られた合成繊維は昇温時、降温時とも温度調節機能を有さない結果を得た。