(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-119999(P2017-119999A)
(43)【公開日】2017年7月6日
(54)【発明の名称】解体装置
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20170609BHJP
【FI】
E04G23/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-257439(P2015-257439)
(22)【出願日】2015年12月28日
(71)【出願人】
【識別番号】591259045
【氏名又は名称】有限会社山王重機
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藁谷 輝幸
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176DD05
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により解体作業の効率を高めることができる解体装置の提供。
【解決手段】本発明の解体装置は、フレーム、切断刃、押付部材、進退移動機構を備えている。フレームは、第1の面とその背面側の第2の面とを備えた解体対象物を挿入するための開口部が形成されている。切断刃は、解体対象物を挿入した開口部の内側面における当該解体対象物の第1の面と対向する位置に設けられている。押付部材は、開口部に挿入された解体対象物の第2の面と対向する位置に配置されている。進退移動機構は、押付部材を切断刃側に前進させて解体対象物を切断する前進位置と押付部材を切断刃側から後退させる後退位置との間で、当該押付部材を進退移動させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面とその背面側の第2の面とを備えた解体対象物を挿入するための開口部が形成されたフレームと、
前記解体対象物を挿入した前記開口部の内側面における当該解体対象物の前記第1の面と対向する位置に設けられた切断刃と、
前記開口部に挿入された前記解体対象物の前記第2の面と対向する位置に配置された押付部材と、
前記押付部材を前記切断刃側に前進させて前記解体対象物を切断する前進位置と前記押付部材を前記切断刃側から後退させる後退位置との間で、当該押付部材を進退移動させる進退移動機構と、
を備える解体装置。
【請求項2】
前記フレームは、第3の面とその背面側の第4の面とを有し、
前記押付部材は、前記第3の面側に配置され、
前記進退移動機構は、前記第3の面に沿って前記押付部材を進退移動させる、
請求項1記載の解体装置。
【請求項3】
前記フレームは、前記第3及び第4の面がそれぞれ起立する姿勢で設置され、
前記進退移動機構は、前記押付部材を昇降移動させる、
請求項2記載の解体装置。
【請求項4】
前記進退移動機構は、ジャッキを含む、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の解体装置。
【請求項5】
前記解体対象物は、鉄筋コンクリート躯体である、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の解体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建造物を構築しているコンクリート躯体などを解体するための解体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化したビルディングなどのコンクリート建造物を建て替える場合には、コンクリート建造物を構築しているコンクリート躯体などを解体する必要がある。大規模な解体現場では、走行台車にジョークラッシャやインパクトクラッシャなどを搭載した移動式クラッシャが使用される場合がある。
【0003】
しかしながら、このような移動式クラッシャは、高価であり、解体現場の規模によっては採算が合わない可能性がある。このような場合、例えば破砕歯を取り付けたニブラーなどを用いて、コンクリート躯体の破砕処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−17850号公報
【特許文献2】特開2006−97306号公報
【特許文献3】特開平11−269909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、コンクリート躯体の解体にニブラーを活用する場合には、ニブラーを作動させるための作動シリンダに対する作動油の供給及び排出が必要となる。つまり、油圧配管を増設する必要があるので、コストの増大を招く。また、ニブラーは、一般には、その開閉操作がペダル操作であることから、操作が難しいことに加え、開閉速度も遅いため、破砕処理の効率の低下などが懸念される。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成により解体作業の効率を高めることができる解体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解体装置は、フレーム、切断刃、押付部材、進退移動機構を備えている。フレームは、第1の面とその背面側の第2の面とを備えた解体対象物を挿入するための開口部が形成されている。切断刃は、解体対象物を挿入した開口部の内側面における当該解体対象物の第1の面と対向する位置に設けられている。押付部材は、開口部に挿入された解体対象物の第2の面と対向する位置に配置されている。進退移動機構は、押付部材を切断刃側に前進させて解体対象物を切断する前進位置と押付部材を切断刃側から後退させる後退位置との間で、当該押付部材を進退移動させる。
【0008】
本発明の解体装置では、フレームの開口部に解体対象物を挿入(セット)した状態で、進退移動機構により押付部材を前進位置に移動させることで、解体対象物を切断刃により切断することが可能となる。つまり、本発明によれば、簡易な構成により解体作業の効率化を図ることができる。
【0009】
また、本発明の解体装置では、前記フレームは、第3の面とその背面側の第4の面とを有し、前記押付部材は、前記第3の面側に配置される。さらに、前記進退移動機構は、前記第3の面に沿って前記押付部材を進退移動させる。したがって、本発明では、フレームの第3の面と押付部材との間における解体対象物上の部位(被切断部分)に、効果的にせん断力を生じさせることができるので、解体対象物に対する切断力を向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明の解体装置では、前記フレームは、例えば、前記第3及び第4の面がそれぞれ起立する姿勢で設置され、前記進退移動機構は、前記押付部材を昇降移動させる。この場合、進退移動機構は、ジャッキなどを含んで構成される。なお、上述した解体対象物としては、例えば鉄筋コンクリート躯体などが例示される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成により解体作業の効率を高めることが可能な解体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の解体装置において、圧力板が後退位置にある状態を概略的に示す正面図。
【
図2】
図1の解体装置において、圧力板が前進位置にある状態を概略的に示す正面図。
【
図3】
図1の解体装置における切断パネルの開口部に解体対象物がセットされた状態を概略的に示す正面図。
【
図4】
図3の解体装置における切断パネルの開口部に解体対象物がセットされた状態を概略的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、
図1〜
図3では、駆動力伝達機構27の図示を省略している。本実施形態に係る解体装置10は、
図1〜
図4に示すように、例えば建造物を構築している鉄筋コンクリート躯体などを解体するための装置である。
【0014】
つまり、この解体装置10は、フレームとしての切断パネル12、切断刃14、押付部材である圧力板19、補強カバー16、補強板22、底部プレート21、進退移動機構(昇降機構)17、駆動力伝達機構27などを備えている。
【0015】
図1〜
図4に示すように、切断パネル12は、例えば鋼材を用いて構成された矩形状のプレートである。切断パネル12には、解体対象物25を挿入(セット)するための開口部15が形成されている。開口部15は、コの字状の切欠きによって構成されている。切断パネル12の短辺の長さ(幅)は、例えば600mmである。開口部15の深さは、例えば300mmである。また、切断パネル12の厚さは、例えば30mm〜40mm程度である。
【0016】
解体対象物25は、建造物の天井、壁、床(スラブ)などを構築している例えば鉄筋コンクリート(RC)躯体である。解体対象物25は、
図3、
図4に示すように、第1の面25aとその背面側(裏側)に位置する第2の面25bとを少なくとも含む例えば矩形状(直方体状)の部材である。解体対象物25の厚さ(被切断方向の厚さ)は、例えば200mm〜300mm程度である。
【0017】
図4に示すように、上述した切断パネル12は、第3の面12aとその背面側に位置する第4の面12bとを少なくとも有する。切断パネル12は、第3の面12a及び第4の面12bがそれぞれ起立する姿勢で設置される。底部プレート21は、切断パネル12を起立した状態で支持するための支持台である。
【0018】
補強板22及び補強カバー16は、切断パネル12を補強する。補強板22は、切断パネル12の第4の面12bに接合されている。補強カバー16は、断面コの字状に形成されており、切断パネル12との間で進退移動機構17を部分的に包囲するようにして切断パネル12に接合されている。
【0019】
図1〜
図3に示すように、切断刃14は、解体対象物25を挿入した開口部15の内側面(内側端面)上における当該解体対象物25の第1の面25aと対向する位置(コの字状の切欠きの上側部分)に設けられている。圧力板19は、その上面が切断刃14と対向するようにして、切断パネル12の第3の面12a側に配置されている。
【0020】
進退移動機構17は、圧力板19を切断刃14側に前進(上昇)させて解体対象物25を切断する
図2に示す前進位置(上昇位置)と、圧力板19を切断刃14側から後退させる
図1に示す後退位置(下降位置)との間で、当該圧力板19を、切断パネル12の第3の面12aに沿って矢印H1−H2方向に進退移動(昇降移動)させる昇降機構である。
【0021】
具体的には、
図2に示すように、進退移動機構17は、例えば筒状にそれぞれ形成されたジャッキ(ジャッキ本体)18及びシリンダ23を有している。圧力板19は、ジャッキ18の一端部(上端部)に取り付けられている。
【0022】
また、ジャッキ18の側面(周面)には、アタッチメント取付部(係合部)20が設けられている。シリンダ23は、ジャッキ18に対して同軸的に配置されており、ジャッキ18の進退移動(昇降移動)を案内(ガイド)する。
【0023】
図4に示すように、駆動力伝達機構27は、ジャッキ18のアタッチメント取付部(係合部)20にアタッチメント27aを取り付けることによって、進退移動機構17と連結される。駆動力伝達機構27は、複数のギアなどを有しており、各ギアの回転力をジャッキ18を昇降移動させる動力に変換して、進退移動機構17側に伝達する。
【0024】
したがって、本実施形態の解体装置10を適用して、鉄筋コンクリート躯体などの解体対象物25を切断(解体)する場合には、まず、
図1に示すように、進退移動機構17を介して、圧力板19を後退位置(下降位置)に移動させる。
【0025】
次に、
図3、
図4に示すように、切断パネル12の開口部15に設けられた切断刃14と解体対象物25の第1の面25aとが対向するように、解体対象物25を開口部15内に挿入(セット)する。
【0026】
この後、進退移動機構17を介して、
図2〜
図4に示すように、切断パネル12の第3の面12aに沿って圧力板19を前進位置(上昇位置)に移動させることで、圧力板19により解体対象物25が切断刃14側に押し付けられ、これにより、解体対象物25が切断される。この際、切断パネル12の第3の面12aと圧力板19との間における解体対象物25上の部位(被切断部分)に、効果的にせん断力を生じさせることができるので、解体対象物25に対する切断力を向上させることができる。
【0027】
既述したように、本実施形態の解体装置10によれば、簡易な構成により解体作業の効率を高めることができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
10…解体装置、12…切断パネル、12a…第3の面、12b…第4の面、14…切断刃、15…開口部、16…補強カバー、17…進退移動機構、18…ジャッキ、19…圧力板、20…アタッチメント取付部、21…底部プレート、22…補強板、23…シリンダ、25…解体対象物、25a…第1の面、25b…第2の面、27…駆動力伝達機構、27a…アタッチメント。