(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-120111(P2017-120111A)
(43)【公開日】2017年7月6日
(54)【発明の名称】吊下げ用索体、ダクトの固定構造
(51)【国際特許分類】
F16L 3/14 20060101AFI20170609BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20170609BHJP
【FI】
F16L3/14 Z
F24F13/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-257124(P2015-257124)
(22)【出願日】2015年12月28日
(71)【出願人】
【識別番号】501390965
【氏名又は名称】大阪コートロープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084630
【弁理士】
【氏名又は名称】澤 喜代治
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】加納川 快明
【テーマコード(参考)】
3H023
3L080
【Fターム(参考)】
3H023AA03
3H023AB05
3H023AC73
3H023AD08
3L080AC01
(57)【要約】
【課題】施工効率良く、簡単に取り付けることができる吊下げ用索体と、これを用いたダクトの固定構造とを提供する。
【解決手段】一端に戻り止め21が設けられ、他端に固定部22が設けられた線材2と、線材2が挿通可能な挿通孔30が形成された棒状の係止片3とを具備し、線材2に挿通された係止片3と、線材2の戻り止め21との間には、加締め部材4が設けられた吊下げ用索体1。天井面7に線材2の固定部22が固定され、この天井面7の下側のダクト6の外周に支持帯5が巻回され、支持帯5の係止孔50に、線材2の戻り止め21、加締め部材4および係止片3が挿通され、線材2によって、天井面7に対してダクト6を所定の高さ位置に吊下げた位置で係止片3が係止孔50に係止され、この係止状態が線材2に加締められた加締め部材4によって位置決めされているダクト6の固定構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面から所定の距離を隔てて配設されたダクトを天井面下に吊下げるための吊下げ用索体であって、
一端に戻り止めが設けられ、且つ、他端に天井面に固定するための固定部が設けられた線材と、
前記線材が挿通可能な挿通孔が中央部に形成された棒状の係止片と、
を具備してなり、
前記線材に挿通された前記係止片と前記線材の戻り止めとの間に、前記線材の所望の位置で加締め止めされることによって前記線材に挿通された係止片を戻り止め側へ動かないようにする第一の加締め部材が、前記線材に沿って移動可能な状態で設けられてなることを特徴とする吊下げ用索体。
【請求項2】
請求項1に記載の吊下げ用索体において、
前記固定部と前記係止片との間に、第二の加締め部材が前記線材に沿って移動可能な状態で設けられてなる吊下げ用索体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吊下げ用索体を用いたダクトの固定構造であって、
天井面に前記固定部が固定され、
前記天井面の下側に配設されたダクトの外周に前記支持帯が巻回され、
前記支持帯の係止孔に、前記線材の戻り止め、第一の加締め部材及び係止片が挿通され、
前記線材によって、前記ダクトを所定の高さ位置に吊下げた位置で前記係止片が前記係止孔に係止されるとともに、この係止状態が前記線材に加締められた第一の加締め部材によって位置決めされていることを特徴とするダクトの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井面から所定の距離を隔てて配設されたダクトを、天井面下に吊下げる際に使用する吊下げ用索体、及び、前記吊下げ用索体を用いたダクトの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空調装置の空気流通用のダクトは、天井面から所定の距離を隔てた位置に吊下げられる。
【0003】
従来、このようなダクトを吊下げる場合、ダクトの周囲に固定した支持金具を、天井から設けた吊りボルトに螺合させ、その螺合具合を調節することによって位置調整できるようになされていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−114045号公報
【特許文献2】実開平6−87793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吊り金具は、支持金具と吊りボルトとの螺合具合によって位置調整をする仕組みであったため、施工が煩わしいといった不都合を生じる。
【0006】
この点につき、前記特許文献1の従来技術に記載されているような被覆鉄線によってダクトを単純に吊下げ固定することも考えられるが、この場合もやはり、被覆鉄線が緩まないように巻き付けなければならないので、作業に熟練を要し、作業効率が悪くなる。
【0007】
本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであり、施工効率良く、簡単にダクトを取り付けることができる新規な吊下げ用索体、及び、この吊下げ用索体を用いたダクトの固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決する本発明の吊下げ用索体は、天井面から所定の距離を隔てて配設されたダクトを天井面下に吊下げるための吊下げ用索体であって、一端に戻り止めが設けられ、且つ、他端に天井面に固定するための固定部が設けられた線材と、前記線材が挿通可能な挿通孔が中央部に形成された棒状の係止片と、を具備してなり、前記線材に挿通された前記係止片と前記線材の戻り止めとの間に、前記線材の所望の位置で加締め止めされることによって前記線材に挿通された係止片を戻り止め側へ動かないようにする第一の加締め部材が、前記線材に沿って移動可能な状態で設けられてなることを特徴とする(以下、「本発明索体」と称する。)。
【0009】
本発明索体においては、前記固定部と前記係止片との間に、第二の加締め部材が前記線材に沿って移動可能な状態で設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0010】
前記技術的課題を解決する本発明のダクトの固定構造は、本発明索体を用いたダクトの固定構造であって、天井面に前記固定部が固定され、前記天井面の下側に配設されたダクトの外周に前記支持帯が巻回され、前記支持帯の係止孔に、前記線材の戻り止め、第一の加締め部材及び係止片が挿通され、前記線材によって、前記ダクトを所定の高さ位置に吊下げた位置で前記係止片が前記係止孔に係止されるとともに、この係止状態が前記線材に加締められた第一の加締め部材によって位置決めされていることを特徴とする(以下、「本発明構造」と称する。)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ダクトに巻回した支持帯の支持孔に、吊下げ用索体の線材、加締め部材および係止片を挿通した後、係止片を係止孔に係止させる。そして、線材に沿って移動可能となされた第一の加締め部材を所望の位置で線材に加締め止めすることで、係止片が戻り止め側へと動かないようにして係止孔に係止した状態で位置決めする。これによってダクトは、天井下に吊下げられた状態となり、施工効率良く、簡単に取り付けられることができる。
【0012】
また、地震などが発生しても、線材が揺れを吸収して天井の固定箇所を破壊したりしないので、優れた施工強度が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る本発明索体の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)〜(c)は、実施形態1に係る本発明索体を用いて本発明構造を構築するための施工工程(前段階)を示す工程図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、実施形態1に係る本発明索体を用いて本発明構造を構築するための施工工程(後段階)を示す工程図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る本発明索体の全体構成の概略を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)〜(d)は、実施形態2に係る本発明索体を用いて本発明構造を構築するための施工工程(後段階)を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<実施形態1>
‐本発明索体1‐
図1に、実施形態1に係る本発明索体1の全体構成の概略を示す。本発明索体1は、線材2と、係止片3と、を具備する。又、前記線材2の一端部に設けた戻り止め21と前記係止片3との間には、第一の加締め部材4が設けられている。
【0016】
‐線材2‐
前記線材2は、なまし線であっても硬線であってもよい。また、複数本を撚りあわせた撚線としたものであってもよい。撚線の場合、なまし線と硬線とを複合した複合撚線としたものであってもよい。また、前記線材2の外表面は、樹脂材料で被覆コーティングしたものであってもよい。
【0017】
前記線材2の一端部には、戻り止め21が設けられる。この戻り止め21としては、特に限定されるものではなく、例えば、線材2の直径よりも大きな直径に形成された金属片を溶接一体化または加締め止めすることによって形成したものを使用することができる。
【0018】
前記線材2の他端部には、前記線材2の他端を固定するための固定部22が設けられる。本実施形態においては、前記固定部22として平板状の座金を用いた。この固定部22には、ビス孔22aが設けられており、このビス孔22を介してビス23を被固定部分(例えば、天井面)にねじ込めば、前記固定部22が被固定部分に固定される。この固定部22と線材2の他端部との固定は、前記固定部22から延設された固定孔24に線材2の他端部を挿通し、ループを描くようにして線材2の方向に戻した当該他端部を線材2に固定することによって一体化している。この他端部の固定は、前記固定部22と線材2の他端部とを固定する構成であれば、特にこの構成に限定されるものではなく、各種の固定構造であってもよい。
【0019】
‐係止片3‐
係止片3は、棒状(本実施形態においては平板状)に形成されており、その中央部に、前記線材2が挿通可能な挿通孔30が設けられている。前記係止片3は、前記挿通孔30に挿通された前記線材2に沿って移動できるようになされており、一端部に設けられた前記戻り止め21により、前記線材2から抜けないようになされている。また、前記戻り止め21と、前記係止片3との間には、第一の加締め部材4が設けられている。
【0020】
‐第一の加締め部材4‐
第一の加締め部材4は、前記線材2が挿通可能な中空円筒状に形成されており、前記線材2に沿って移動させることができるようになされている。この第一の加締め部材4は、前記線材2の所望の位置に移動させた後、外周の一部分を前記線材2に圧着するように加締めることで、前記線材2に固定することができる。前記第一の加締め部材4が加締められると、前記係止片3の移動が制限されることとなる。
【0021】
この第一の加締め部材4としては、ペンチなどの工具で加締められて線材2に固着することが可能な材料によって形成されたものであれば、特に限定されるものではない。前記第一の加締め部材4としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、銅などの各種金属材料によって形成されたものを用いることができる。
【0022】
‐本発明構造‐
次に、本実施形態に係る本発明索体1を用いた本発明構造について説明する。
前記本発明構造を構築するにあたっては、
図2(a)に示すように、まず、天井面7に本発明索体1における固定部22を固定する。
【0023】
次いで、天井面7下に配されたダクト6の周囲に支持帯5を巻回し、その両端部に設けられた係止孔50を重ね合わせ、重ね合わされた係止孔50に、本発明索体1の線材2と係止片3とを一直線状に一まとめにして挿通する(
図2(b)、(c)参照)。挿通後は、線材2と係止片3とを一まとめにした状態を解除する。
【0024】
この状態で、
図3(a)に示すように、係止片3及び第一の加締め部材4を線材2の一端部側から天井面7に近い他端部側へと移動させると、係止片3が支持帯5を持ち上げる。支持帯5がダクト6を支持する位置となるまで係止片3を移動させれば、ダクト6が支持帯5に支持されて線材2に吊下げられた状態となる。
【0025】
この状態下、第一の加締め部材4を加締めれば、
図3(b)に示すように、係止片3が固定されて本発明構造が構築される。
【0026】
このように、本発明索体1を用いた本発明構造によれば、天井面7に固定した線材2の一端部側を、ダクト6に巻回した支持帯5の係止孔50に挿通するだけで、あとは係止片3の位置を決めて第一の加締め部材4を加締めるだけの簡単な作業で施工完了させることができる。しかも、係止片3の位置は、線材2に沿って係止片3を移動させるだけで簡単に位置を決めることができ、第一の加締め部材4による加締め作業も、螺子の螺合作業に比べて簡単に行なうことができるので、施工効率良く、簡単に作業を行なうことができる。
【0027】
また、従来の吊下げ用索体のようにリジッドに固定しないので、地震などが発生した場合にも、線材2が揺れを吸収して天井面7の固定箇所を破壊したりしないので、優れた施工強度が得られることとなる。
【0028】
なお、本実施の形態においては、固定部22及び係止片3につき、同形状の部材を用いているが、固定部22と、係止片3とは別形状となっていても良い。但し、
図1に示すように、固定部22と係止片3とを共通部品としてもよい。この場合、部品の共通化により、吊下げ用索体1の製造コストを低下させることができる。
【0029】
ところで、前述のごとく、本発明索体1を用いて本発明構造を構築するにあたっては、前記係止片3が、線材2とともに直線状となるように一まとめにした状態で、支持帯5の係止孔50に挿通される。そして、挿通後に一直線状にした状態を解除すれば、係止片3が係止孔50に係止される。これによって支持帯5を吊下げることができることとなる。
【0030】
したがって、本発明索体1における前記係止片3は、線材2とともに直線状となるように一まとめにした状態で、支持帯5の係止孔50に挿通可能な棒状に形成されたものでなければならない。また、挿通後に一まとめにした状態を解除した際に、係止孔50に係止されなければならない。そのため、係止片3は、挿通孔30からそれぞれ両側に係止孔50の半径以上の距離、好ましくは係止孔50の半径の倍以上の距離を有する長さの棒状に形成されたものであることが好ましい。さらに、係止状態で変形しないように十分な強度を有する鋼材によって構成されたものを用いることが好ましい。
【0031】
<実施形態2>
‐本発明索体1‐
図4に、実施形態2に係る本発明索体1の全体構成の概略を示す。実施形態2に係る本発明索体1は、固定部22と係止片50との間に、第二の加締め部材40が線材2に沿って移動可能な状態で設けられている点において前記実施形態1に係る本発明索体1と異なり、その余は前記実施形態1に係る本発明索体1と同じ構成となされている。
【0032】
‐第二の加締め部材40‐
第二の加締め部材40は、第一の加締め部材4と同じ部材を用いることができる。
【0033】
‐本発明構造‐
次に、実施形態2に係る本発明索体1を用いた本発明構造について説明する。
実施形態2に係る本発明索体1を用いて本発明構造を構築するにあたっては、前記実施形態1と同様にして、まず、ダクト6の直上の天井面7に本発明索体1における固定部22を固定する(
図2(a)参照)。
【0034】
次いで、天井面7下に配されたダクト6の周囲に支持帯5を巻回し、その両端部に設けられた係止孔50に、本発明索体1の線材2と係止片3とを一直線状に一まとめにして挿通する(
図2(b)、(c)参照)。
【0035】
即ち、実施形態2に係る本発明索体1を用いて本発明構造を構築するための施工工程の前段階は、前記実施形態1と同様にして行われる。
【0036】
この状態で、
図5(a)に示すように、係止片3を線材2の一端部側から天井面7に近い他端部側へと移動させると、第二の加締め部材40が前記係止片3に押されるようにして、線材2の他端部側に移動する。本実施形態においては、この工程によって前記係止片3の固定位置が決定された後、
図5(b)に示すように、第二の加締め部材40を加締めて線材2に圧着させる。これにより、前記係止片3は、第二の加締め部材40を加締めた位置より線材2の他端部側に移動することができなくなる。
【0037】
次いで、
図5(c)に示すように、第一の加締め部材4を線材2の一端部側から第二の加締め部材40に向かって移動させると、第一の加締め部材4と第二の加締め部材40によって挟まれた位置で、係止片3の移動が停止する。
【0038】
この状態下、
図5(d)に示すように、第一の加締め部材4を加締めて線材2に圧着させれば、本発明構造が構築される
【0039】
即ち、本実施形態に係る本発明索体1には、第一の加締め部材4に加えて、第二の加締め部材40が、固定部22と係止片50との間に、第二の加締め部材40が線材2に沿って移動可能な状態で設けられているから、この本発明索体1を用いた本発明構造の構築の際、係止片3の位置決めが的確且つ容易となる。
【0040】
その余は、前記実施形態1と同様の説明となるため、繰り返しを避けるべくここでは説明を省略する。
【0041】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明索体は、ダクトが天井面下に吊下げられた本発明構造を構築するために利用される。
【符号の説明】
【0043】
1 本発明索体(吊下げ用索体)
2 線材
21 戻り止め
3 係止片
4 第一の加締め部材
40 第二の加締め部材
5 支持帯
6 ダクト