【解決手段】到着時間予測装置は、ユーザの現在位置を計測する位置計測部と、地図上の分割された領域であるノード毎に通過に要する所要時間の情報を有する所要時間予測マップを受信し、前記ユーザの現在位置に対応するノードを判定し、所要時間予測マップを用いて、前記ユーザの現在位置に対応するノードから目的地までの所要時間を求め、前記目的地までの所要時間と現在時刻とから前記目的地への到着予測時間を求める演算部と、前記到着予測時間を表示する表示器とを有する。前記演算部は、ネットワークを介して前記所要時間予測マップを受信する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図面において同じ参照番号で示された構成要素は、同一の又は類似の構成要素である。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る到着時間予測システムの構成例を示すブロック図である。
図1の到着時間予測システム100は、到着時間予測装置10と、サーバ30とを有する。到着時間予測装置10は、送受信機12と、演算部14と、位置計測部16と、表示器18とを有する。サーバ30は、送受信機32と、制御部34と、予測マップ格納部36とを有する。到着時間予測装置10は、具体的には例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ナビゲーション装置等である。
【0012】
到着時間予測装置10の送受信機12は、携帯電話の基地局又は無線LAN(local area network)の基地局と無線によって通信し、インターネット等のネットワーク90を介して、サーバ30等との間でデータを送受信する。送受信機12は、演算部14からのデータをサーバ30等に送信し、サーバ30等から受信したデータを演算部14に出力する。演算部14は、ユーザの指示に従って到着時間予測装置10の各構成要素を制御する。位置計測部16は、例えばGPS受信機であり、複数のGPS衛星からの電波を受信して到着時間予測装置10の位置を検出し、その位置(つまりユーザの現在位置)を示す位置情報を演算部14に出力する。位置計測部16は、ネットワークから受信したデータをも用いるA−GPS(assisted GPS)によって位置を検出してもよい。位置計測部16は、無線LAN又は携帯電話の基地局と通信し、その基地局の位置情報を用いて到着時間予測装置10の位置を検出してもよいし、その基地局の位置を到着時間予測装置10の位置と見なすようにしてもよい。表示器18は、演算部14の指示に従って、到着時間予測装置10の操作に必要な情報、到着予測時間、サーバ30から送信された情報等を表示する。
【0013】
サーバ30の送受信機32は、インターネット等のネットワーク90を介して、到着時間予測装置10等との間でデータを送受信する。制御部34は、サーバ30の各構成要素を制御する。予測マップ格納部36は、予め作成された所要時間予測マップ(以下では単に予測マップとも称する)を格納する。予測マップについては後述する。制御部34は、必要に応じて予測マップ格納部36から予測マップを読み出し、到着時間予測装置10に送信する。
【0014】
図2は、目的地の周辺の地図の例である。
図2には、目的地52と、目的地周辺の一般道路54と、高速道路56と、河川58が示されている。
図2の目的地52に関する所要時間予測マップについて、以下に説明する。
【0015】
図3は、
図2の地図上の領域の分割についての説明図である。
図3には、目的地52を中心とする円R1,R2,R3,R4及びR5、並びに、目的地52を始点とする半直線S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S9及びS10が示されている。半直線S1とS2との間の領域を領域A、半直線S2とS3との間の領域を領域B、半直線S3とS4との間の領域を領域C、半直線S4とS5との間の領域を領域D、半直線S5とS6との間の領域を領域E、半直線S6とS7との間の領域を領域F、半直線S7とS8との間の領域を領域G、半直線S8とS9との間の領域を領域H、半直線S9とS10との間の領域を領域I、半直線S10とS1との間の領域を領域Jと称する。円R1の内部を領域01、円R1とR2との間の領域を領域02、円R2とR3との間の領域を領域03、円R3とR4との間の領域を領域04、円R4とR5との間の領域を領域05と称する。例えば、領域Hと領域05との両方に属する領域を、ノードH05又は領域H05と称する。
図3の場合、ノード(領域)は、目的地から遠くなるに従って大きな面積を有するように分割されている。
【0016】
各円の半径dについては、例えば、
d[m] = d[m-1]+ (d[m-1]×α)
d[0] = 基準距離
α = f(m)
により求める。ここで、mは0以上の整数であり、f(m)は所定の関数又は定数である。
【0017】
円周方向の分割に関しては、目的地52から見た半直線の向きを示す角度を、例えば、
a[k] = a[k-1] + 360°/β
β = g(k)
a[k]:k番目の半直線の向き
a[0]:基準角度
により求める。ここで、kは0以上の整数であり、g(k)は所定の関数又は定数であり、角度は例えば北を0°とする。例えば、a[k] = k×45°としてもよい。
【0018】
目的地付近に駅や大規模な集客施設等の、到着時間に影響を及ぼす施設がある場合には、それらの施設のノードが生成されるように、円の半径、半直線の数や角度を変更してもよい。ノードの生成には、周辺の地形や交通事情等が考慮されてもよい。例えば、
・南北方向に細かく分割する
・混雑が予測される領域を細かく分割する
等の特徴を有するように、
図3のような地図上の領域を分割してもよい。
【0019】
高速道路、鉄道の駅、幹線道路、及び大型施設の有無、高速道路のインターチェンジ、鉄道の駅の列車数及び乗降人数、幹線道路の交通量及び交差点数、大型施設の入場者数及び駐車場収容台数等を考慮して分割してもよい。例えば、
・出勤時間帯に渋滞が発生する交差点
・週末に渋滞が発生する施設の駐車場
・イベント時に通行止めになる道路
・平日夕方の交通量が増える工場の出入り口
等が独立したノードになるように、分割してもよい。
【0020】
図4は、ノード毎の所要時間及び推薦経路を示すテーブルの例を示す図である。
図4には、ノード名、そのノードを通過するのに要する所要時間、次に経由すべきノードを示す情報である推薦経路等のデータが、
図3の各ノードについて記載されている。ここでは、例として、所要時間は自動車によって通過する場合に要する時間が分単位で示されている。基本的には、推薦経路としては、移動方法に応じて時間的に最短となる経路が示される。
【0021】
図3のような領域の分割についての図と、
図4のような所要時間を示すテーブルとを合わせて、所要時間予測マップと称する。所要時間予測マップは、基本的には目的地52としての施設(店舗、イベント会場、遊園地等)によって予め作成され、予測マップ格納部36に格納されている。
【0022】
図5は、
図2の地図と
図3の説明図とを重ねて示す説明図である。
図5には、出発点62と、推薦経路64とが示されている。演算部14は、表示器18に
図5のような表示をさせてもよい。
【0023】
図6は、
図1の到着時間予測システムにおける処理の例を示すフローチャートである。以上の図を参照して、
図1の到着時間予測システムにおける処理について説明する。
図6のブロックB12において、ユーザは、ユーザインタフェースを用いて、演算部14に対して目的地を設定する。ブロックB14において、演算部14は、目的地に関する情報を格納するサーバ30に、予測マップがあるか否か、すなわち、予測マップ格納部36に予測マップが格納されているかを問い合わせる。予測マップがある場合にはブロックB16に進み、予測マップがない場合にはブロックB18に進む。
【0024】
ブロックB16において、制御部34は、予測マップ格納部36から予測マップを読み出し、到着時間予測装置10に送信する。演算部14は、予測マップを受信する。このとき、演算部14は、予測マップとともに、目的地の位置情報(経度及び緯度)や、目的地に関する情報(例えば、営業時間や観光情報)を受信してもよい。予測マップがない場合には、ブロックB18において、演算部14は、予測マップを作成する。なお、予測マップがない場合には、演算部14は、予測マップを作成するようにサーバ30の制御部34に要求してもよい。この場合、制御部34又は目的地52の施設の管理者が予測マップを作成し、予測マップ格納部36に格納させる。ブロックB16と同様に、制御部34は、予測マップ格納部36から予測マップを読み出して到着時間予測装置10に送信し、演算部14は、予測マップを受信する。
【0025】
位置計測部16は、例えば所定の時間間隔で、ユーザの現在の位置を計測している。ブロックB20において、演算部14は、位置計測部16で計測されたユーザの現在位置を、位置計測部16から取得する。
【0026】
ブロックB22において、演算部14は、予測マップを参照して、ユーザの現在位置に対応するノードを判定する。つまり、ユーザの現在位置及び目的地の緯度及び経度、並びに
図3に基づいて、演算部14は、現在位置が
図3のどのノードに対応するかを判定する。
図5の場合、現在位置はノードH05に対応する。
【0027】
ブロックB24において、演算部14は、予測マップを参照して、到着予測時間を計算する。より具体的には、演算部14は、
図4のテーブルにおける、ユーザの現在位置62に対応するノードH05の欄を参照する。演算部14は、この欄の所要時間5分という値を記憶し、推薦経路の欄のH05→H04という記載から、次に
図4のテーブルのノードH04の欄を参照する。演算部14は、この欄の所要時間3分という値を記憶し、推薦経路の欄のH04→H03という記載から、次に
図4のテーブルのノードH03の欄を参照する。演算部14は、このような処理を繰り返し、H05→H04→H03→I03→I02→J02→A02→A01という推薦経路64を辿る。演算部14は、目的地52が含まれるノードA01の欄の所要時間1分という値を記憶し、
図4のテーブルへの参照を終了する。
【0028】
演算部14は、記憶した各ノードの所要時間の合計を、ユーザの現在位置62に対応するノードH05から目的地52までの所要時間として求める。更に、演算部14は、求められた目的地52までの所要時間を現在時刻に加算して、目的地52への到着予測時間を求める。ブロックB26において、演算部14は、到着予測時間を表示器18に出力し、表示器18は到着予測時間を表示する。
【0029】
このように、
図1の到着時間予測装置10によると、受信された予測マップと現在位置の情報とから、到着時間を予測することができる。現在位置の情報を外部に送信することなく、到着時間予測装置10内で処理することができるので、ユーザは、重要な個人情報である自身の現在位置を他人に知られることがない。予測マップを使用することにより、通信されるデータの量が比較的少なく、必要な計算量も比較的少なくなるので、処理の高速化を図ることができる。目的地としての施設において予測マップを作成できるので、予測マップを更新することによって施設の周辺の交通状況の変化に柔軟に対応することができ、より正確な到着時間を予測することが可能となる。
【0030】
図7は、
図5において、休日に発生する渋滞を示す説明図である。
図8は、休日における、一部のノードの所要時間及び推薦経路を示すテーブルの例を示す図である。このように、所要時間予測マップは、所要時間の情報又は推薦経路として、日時に応じて異なる情報を有してもよい。ノードH05以外のノードについては、
図4に示されたデータが使用される。具体的には、休日においては、領域66の中の交差点等では渋滞が生じる。この場合、予測マップは、
図8のように、ノードの所要時間及び推薦経路を、平日と休日で異なるデータとして有していてもよい。
【0031】
この場合、演算部14は、H05→G05→G04→G03→F03→F02→E02→E01→C01という推薦経路68を辿る(
図4では、一部のデータが省略されている)。これにより、ユーザは、推薦経路68に従うことによって、領域66内の渋滞する交差点等を避けることができ、より正確な到着予測時間を求めることもできる。このように、曜日、時間帯、近隣でのイベント等に応じて、予測マップにおける所要時間や推薦経路を変更してもよい。例えば、目的地52の施設の管理者が、さまざまな状況に応じた予測マップをサーバ30の予測マップ格納部36に格納させておく。施設側で柔軟に対応することができるので、到着時間予測装置がより正確な到着予測時間を求めることが可能になる。
【0032】
図9は、複数の交通手段を考慮した、ノード毎の所要時間及び推薦経路を示すテーブルの例を示す説明図である。
図5では、各ノードについて、自動車、鉄道、徒歩のそれぞれによる所要時間が示されている。利用不可能な交通手段については、所要時間が0で示されている。なお、
図9は一例であって、
図2の地図には対応していない。
【0033】
予測マップは、複数の交通手段を考慮した
図9のようなデータを有していてもよい。この場合、例えば、現在ノードB03にいるユーザは、B03→B02→A02→A01という推薦経路を辿ることができる。ユーザは、ノードB03からA02までは鉄道で、その後は徒歩で移動する。
【0034】
図10は、本発明の実施形態による到着時間予測装置を実現するコンピュータシステムの構成例を示すブロック図である。
図6のコンピュータシステム300は、プロセッサ81と、バス82と、GPS受信機83と、送受信機84と、格納部85と、ユーザインタフェース88とを有する。格納部85は、メモリ86と、ファイル格納部87とを有する。
【0035】
プロセッサ81は、バス82を経由して他の構成要素と通信する。GPS受信機83は、GPS衛星からの電波をアンテナ経由で受信し、位置の検出を行う。送受信機84は、例えば携帯電話の基地局や無線LANの基地局と無線で通信を行い、インターネット等のネットワーク90との間でデータを送受信する。送受信機84は、有線によってネットワーク90との間でデータを送受信してもよい。GPS受信機83は、ネットワークから受信したデータをも用いて、位置を検出し得る。GPS受信機83は、位置検出器として動作し得る。
【0036】
メモリ86は例えばRAM(random access memory)及びROM(read only memory)を含んでおり、データ及び命令を格納する。ファイル格納部87は、1以上の揮発性又は不揮発性の、非過渡的な、コンピュータ読み取り可能な格納媒体である。本発明の実施形態がソフトウェアで実現される場合には、例えば、マイクロコード、アセンブリ言語のコード、又はより高レベルの言語のコードが用いられ得る。これらのコードで記述され、本発明の実施形態の機能を実現する命令を含むプログラムを、ファイル格納部87は格納する。ファイル格納部87は、RAM、ROM、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)、及びフラッシュメモリ等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ等の磁気記録媒体、光記録媒体、これらの組み合わせ等を含み得る。
【0037】
ユーザインタフェース88は、入力デバイスとして、タッチスクリーン、キーボード、及びマウス等を含み得る。ユーザインタフェース66は、出力デバイスとして、液晶ディスプレイ、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイを含み得る。
【0038】
コンピュータシステム300は、例えば、
図1の到着時間予測装置10として動作する。送受信機84、プロセッサ81、GPS受信機83及びユーザインタフェース88は、送受信機12、演算部14、位置計測部16及び表示器18としてそれぞれ動作し得る。
【0039】
本明細書における各機能ブロックは、典型的にはハードウェアで実現され得る。代替としては各機能ブロックの一部又は全ては、ソフトウェアで実現され得る。例えばそのような機能ブロックは、プロセッサ及びプロセッサ上で実行されるプログラムによって実現され得る。換言すれば、本明細書で説明される各機能ブロックは、ハードウェアで実現されてもよいし、ソフトウェアで実現されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの任意の組合せで実現され得る。
【0040】
本発明の多くの特徴及び優位性は、記載された説明から明らかであり、よって添付の特許請求の範囲によって、本発明のそのような特徴及び優位性の全てをカバーすることが意図される。更に、多くの変更及び改変が当業者には容易に可能であるので、本発明は、図示され記載されたものと全く同じ構成及び動作に限定されるべきではない。したがって、全ての適切な改変物及び等価物は本発明の範囲に入るものとされる。