【解決手段】転写装置30において、制御パターンFは、一の用紙P1が転写部Tを通過した後であって且つ次の用紙P2が転写部Tに入り込む前に、転写部Tに入り込む。転写部Tに入り込む制御パターンFと、次に転写部Tに入り込む用紙P2と、の間隔をL1、転写部Tから、転写ローラ33及びクリーニングローラ83の接点S1に向かって転写ローラ33の周方向に延びる曲線の長さをL2、としたときに、L1>L2、を満たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した画像形成装置では、転写部に制御パターンと転写材の両方が入り込む。また、転写バイアスは、転写部において付与され、クリーニングバイアスは、転写ローラとクリーニング部材との接点において付与される。ここで、転写部に制御パターンが入り込むタイミングと、転写部に転写材が入り込むタイミングとが調整されない場合、クリーニングバイアスによる制御パターンの除去と、転写バイアスによる転写材への転写と、が同時に行われてしまう可能性がある。これにより、クリーニングバイアスと転写バイアスとの干渉が生じる可能性があり、バイアスの干渉によって転写性能又はクリーニング性能が損なわれる懸念がある。
【0009】
本発明は、バイアスの干渉を回避すると共に、転写性能及びクリーニング性能を向上させることができる転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の転写装置は、中間転写ベルトと、順方向に回転することによって中間転写ベルトを移動させる駆動ローラと、駆動ローラに中間転写ベルトを介して接触すると共に駆動ローラに従動し、中間転写ベルトに担持された画像を転写バイアスによって転写材に転写する転写ローラと、転写ローラに接触すると共に転写ローラに従動し、転写ローラに付着した異物をクリーニングバイアスによって吸着するクリーニング部材と、クリーニング部材に接触してクリーニング部材から異物を掻き落とすクリーニングブレードと、を備える転写装置であって、転写装置では、中間転写ベルトと転写ローラとの接点に位置する転写部に転写材が所定の間隔で連続的に入り込むと共に、転写ローラによる転写が転写材に対して連続的に行われ、中間転写ベルト上に制御パターンが形成され、制御パターンは、一の転写材が転写部を通過した後であって且つ次の転写材が転写部に入り込む前に、転写部に入り込み、転写部に入り込む制御パターンと、次に転写部に入り込む転写材と、の間隔をL1、転写部から、転写ローラ及びクリーニング部材の接点に向かって周方向に延びる曲線の長さをL2、としたときに、L1>L2、を満たす。
【0011】
この転写装置では、中間転写ベルトと転写ローラとの間に位置する転写部に転写材が所定の間隔で連続的に入り込むと共に、転写材に対する転写が転写バイアスによって連続的に行われる。一方、中間転写ベルト上には制御パターンが形成され、この制御パターンも転写部に入り込む。制御パターンは、一の転写材が転写部を通過した後であって且つ次の転写材が転写部に入り込む前に、転写部に入り込む。このように、制御パターンが一の転写材と次の転写材との間のタイミングで転写部に入り込むことにより、制御パターンによる画像の補正を転写中に行うことができる。従って、転写効率の低下を抑制することができる。そして、画像の補正を行いながら転写を行うこともできるので、転写性能を向上させることができる。また、この転写装置では、転写部に入り込む制御パターンと次に転写部に入り込む転写材との間隔をL1、転写部から転写ローラ及びクリーニング部材の接点までの周方向の長さをL2、としたときにL1>L2を満たしている。すなわち、中間転写ベルト、転写ローラ及びクリーニング部材の接点間の距離より、制御パターンと転写材との間隔の方が長い。従って、クリーニングバイアスによる制御パターンのクリーニングは、転写バイアスによる次の転写材への転写よりも先に行われる。よって、クリーニングバイアスによる制御パターンの除去と、転写バイアスによる転写材への転写と、が同時に行われないようにすることができる。そして、クリーニングバイアスと転写バイアスとの干渉を回避することができるので、クリーニング性能及び転写性能を向上させることができる。更に、この転写装置では、前述したクリーニングブラシは不要であり、ブラシを回転させる駆動機構を設ける必要が無いため、駆動源の削減が可能となっている。従って、コストダウンにも寄与する。
【0012】
また、クリーニング部材は、その断面形状が円形状となるクリーニングローラであってもよい。駆動ローラの直径をφ1、転写ローラの直径をφ2、クリーニングローラの直径をφ3、としたときに、φ1>φ2>φ3、を満たしてもよい。この場合、駆動ローラの駆動力を効率よく転写ローラ及びクリーニングローラに伝達させることができる。従って、転写性能及びクリーニング性能をより向上させることができる。
【0013】
また、駆動ローラは、順方向の逆方向に回転可能となっており、駆動ローラが逆方向に所定長さだけ回転するときに、クリーニング部材は、逆方向に回転すると共に、転写ローラに付着した異物を吸着し、駆動ローラが回転する駆動ローラの周方向の長さをL3、転写ローラが回転する転写ローラの周方向の長さをL4、クリーニング部材が回転するクリーニング部材の周方向の長さをL5、転写ローラ及びクリーニング部材の接点からクリーニング部材及びクリーニングブレードの接点に向かってクリーニング部材の周方向に延びる曲線の長さをL6、としたときに、L3≧L4≧L5、0.99≦L4/L3≦1、0.99≦L5/L4≦1、且つ、L3<L6、を満たしてもよい。この場合、クリーニング部材から転写ローラに異物が逆行するのを確実に抑制することができる。
【0014】
また、転写装置は、カバーを更に備え、カバーは、転写ローラ及びクリーニング部材を一体的に揺動自在に保持し、転写ローラは、クリーニング部材から転写ローラを着脱可能とするレバー部を有し、転写ローラがレバー部の揺動操作によってクリーニング部材に取り付けられ、転写ローラはカバーが閉じられたときに中間転写ベルトに加圧され、転写ローラは、カバーが開けられるときに、順方向に回転してもよい。この場合、レバー部によって転写ローラを着脱自在とすることができる。また、転写ローラがレバー部で装着されてカバーを閉鎖したときに、その閉鎖に連動して転写ローラを中間転写ベルトに加圧させることができる。一方、カバーが開放されたときには、転写ローラが順方向に回転することによってクリーニング部材が逆方向に回転し、これによりクリーニングブレードがクリーニング部材上の異物を掻き落とす。このように、カバーの開放に伴ってクリーニング部材上の異物を掻き落とすことができるので、クリーニング性能を一層向上させることができる。
【0015】
また、転写ローラがレバー部の揺動操作によってクリーニング部材から外されるときに、転写ローラが順方向に回転してもよい。この場合、転写ローラの取り外し時に、転写ローラが順方向に回転することによってクリーニング部材が逆方向に回転し、これによりクリーニングブレードがクリーニング部材上の異物を掻き落とす。従って、転写ローラの取り外しと連動して異物を掻き落とすことができるので、クリーニング性能を更に向上させることができる。
【0016】
また、転写ローラは、カバーが閉じられるときに、順方向の逆方向に回転してもよい。ところで、クリーニングブレードとクリーニング部材との間に異物が詰まり、この間の部分に隙間が形成されることがある。この事象が発生した場合、クリーニング部材を一方の方向のみに回転させても異物が外れないことがあるので、当該隙間から異物を除去できない場合が生じうる。しかしながら、前述のように、カバーが閉じられるときに転写ローラを逆方向に回転させる場合には、カバーの開放時とカバーの閉鎖時とで転写ローラの回転方向を互いに逆にすることができる。従って、カバーの開閉に伴ってクリーニング部材を双方向に回転させることもできる。よって、前述のように隙間に異物が詰まった場合でも、カバーの開閉と共に双方向にクリーニング部材を回転させることによって、当該異物を効率よく且つ確実に除去することができる。
【0017】
また、レバー部は、転写ローラと一体に設けられてクリーニング部材のギアと噛み合うギア部を有してもよい。このように転写ローラと一体となったギア部をレバー部が備える場合、レバー部の揺動操作と共にクリーニング部材のギアへの噛合を実現させることができる。従って、転写ローラと共に回転するギアを別途設ける必要がないため、駆動源の数を減らすことができ、部品点数及びコストを低減させることができる。
【0018】
また、転写ローラの回転方向のクリーニング部材の下流側に、転写ローラ上のトナーを除去する毛を備えたブラシ部材が設けられてもよい。この場合、ブラシ部材の毛が転写ローラに当接することにより、転写ローラ上に残存したトナーを物理的に除去することができる。従って、転写ローラに残存したトナーを確実に除去することができる。
【0019】
また、ブラシ部材は、毛を転写ローラの反対側で固定する基布部を有し、転写ローラに当接する毛の先端部分の密度は、基布部に固定された毛の基端部分の密度よりも高くてもよい。この場合、転写ローラに当接する毛の密度を高くすることができるので、ブラシ部材によってより確実にトナーを除去することができる。また、ブラシ部材の毛の先端部分の密度を高くすることにより、転写ローラに対して一定のニップを確保して、より均一に転写ローラの表面を加圧することができる。
【0020】
また、ブラシ部材は、バーブラシであってもよい。このように、ブラシ部材としてバーブラシを用いることができる。
【0021】
また、ブラシ部材は、転写ローラの湾曲した外周面に沿って配置されていてもよい。このように、ブラシ部材を転写ローラの湾曲した外周面に沿って配置することにより、転写ローラに対する毛の当接力を均一にすることができる。
【0022】
また、ブラシ部材は、転写ローラの長手方向に沿って連続的に配置されていてもよい。
【0023】
また、ブラシ部材は、転写ローラの長手方向に沿って間欠的に配置されていてもよい。
【0024】
また、ブラシ部材は、回転方向の上流側が下流側よりも毛の食い込み量が大きくなるように配置されていてもよい。この場合、回転方向の上流側で毛をより強く転写ローラに当接させることができる。従って、回転方向の上流側で残留したトナーをより確実に掻き取ることができるので、転写ローラのクリーニング性能を一層高めることができる。
【0025】
また、回転方向の下流側の毛の密度は、回転方向の上流側の毛の密度よりも高くてもよい。このように下流側の毛の密度を上流側よりも高くすることにより、下流側の毛にコシを持たせることができる。従って、下流側の毛を転写ローラの回転で倒れにくくすることができる。
【0026】
また、ブラシ部材は、絶縁ブラシであってもよい。
【0027】
また、ブラシ部材は、導電ブラシであり、転写ローラに対して電気的にフロートであってもよい。
【0028】
また、ブラシ部材は、毛の糸太さをD(dtex)、毛の植毛密度をwd(k本/inch)としたときに、300≦D×wd≦850を満たしてもよい。D×wdの値を300以上とすることにより、毛の太さ及び密度を高めることができるので、クリーニング性能を高めることができる。また、D×wdの値を850以下とすることにより、毛の力が強すぎて転写ローラが摺動しなくなる問題を回避することができる。
【0029】
また、毛の毛長をL、転写ローラに対する毛の食い込み量をnとすると、L/10≦n≦L/2を満たしてもよい。食い込み量を示すnの値をL/10以上とすることにより、転写ローラに対する毛の食い込み量を大きくすることができるので、クリーニング性能を高めることができる。また、nの値をL/2以下とすることにより、食い込み量が大きすぎて毛が折れたりコシがなくなったりする問題を回避することができる。
【0030】
また、ブラシ部材は、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくともいずれかを含む材料によって構成されていてもよい。この場合、ブラシ部材を適切な硬さにすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、バイアスの干渉を回避すると共に、転写性能及びクリーニング性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本発明に係る転写装置の実施形態について説明する。本発明に係る転写装置は、下記の実施形態の転写装置に限定されず適宜変更可能である。また、下記の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0034】
(第1実施形態)
はじめに、第1実施形態に係る画像形成装置1の構成について簡潔に説明する。画像形成装置1は、マゼンタ、イエロー、シアン及びブラックの各色を用いてカラー画像を形成する。
図1に示されるように、画像形成装置1は、転写材である用紙Pを搬送する記録媒体搬送ユニット10と、静電潜像を現像する現像ユニット20と、トナー像を用紙Pに転写する転写装置30と、静電潜像担持体である感光体ドラム40と、トナー像を用紙Pに定着させる定着装置50と、を備えている。
【0035】
記録媒体搬送ユニット10は、用紙Pを搬送経路R1上に搬送する。記録媒体搬送ユニット10は、用紙Pに転写されるトナー像が二次転写領域Aに到達するタイミングにおいて、搬送経路R1を介して用紙Pを二次転写領域Aに到達させる。
【0036】
現像ユニット20は、色ごとに4台設けられている。現像ユニット20は、トナーを感光体ドラム40に担持させる現像ローラ21を備えている。現像ユニット20は、トナーとキャリアとの混合撹拌及び帯電によって生成された現像剤を現像ローラ21に担持させる。現像ローラ21の回転により現像剤が感光体ドラム40と対向する領域まで搬送されると、現像ローラ21が担持した現像剤のトナーが感光体ドラム40の外周面に形成された静電潜像に移動し、静電潜像が現像される。
【0037】
転写装置30は、現像ユニット20が形成したトナー像を、用紙Pに転写を行う二次転写領域Aに搬送する。転写装置30は、像担持体である中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31を懸架する懸架ローラ31a,31b,31c及び駆動ローラ31dと、感光体ドラム40と共に中間転写ベルト31を挟持する一次転写ローラ32と、駆動ローラ31dと共に中間転写ベルト31を挟持する転写ローラ33と、を備えている。中間転写ベルト31は、懸架ローラ31a,31b,31c及び駆動ローラ31dの回転によって循環移動する無端状の像担持体である。中間転写ベルト31は、駆動ローラ31dが順方向に回転することによって移動経路R2上を移動する。
【0038】
ここで、本明細書において、「順方向」とは、例えば反時計回りの方向であり、印字時に駆動ローラ31dが回転する方向を示している。以下では、印字時に駆動ローラ31dが回転する方向を「順方向」、順方向の反対方向を「逆方向」として説明を行う。
【0039】
一次転写ローラ32は、中間転写ベルト31の内周側から感光体ドラム40を押圧する。転写ローラ33は、中間転写ベルト31の外周側から駆動ローラ31dを押圧する二次転写ローラである。転写ローラ33は、駆動ローラ31dに中間転写ベルト31を介して接触すると共に、駆動ローラ31dに従動する。転写ローラ33は、中間転写ベルト31に担持された画像を転写バイアスによって用紙Pに転写する。中間転写ベルト31と転写ローラ33との接点は、搬送経路R1に沿って搬送された用紙Pが所定の間隔で連続して入り込む転写部Tとなっている。この転写部Tでは、転写ローラ33による転写が用紙Pに対して連続的に行われる。
【0040】
また、画像形成装置1は、その内部に詰まった用紙Pを抜き取るために開閉自在となったカバーCを備えている。画像形成装置1では、カバーCを開けた状態で記録媒体搬送ユニット10等に詰まった用紙Pを取り出すことができる。画像形成装置1では、カバーCを閉鎖した状態で用紙Pへの印字を行うことが可能となっている。また、カバーCの開閉と共に転写ローラ33は揺動する。転写ローラ33は、カバーCを開放すると中間転写ベルト31から離間し、カバーCを閉鎖すると中間転写ベルト31に接触する。なお、転写装置30の構成については、後に詳細に説明する。
【0041】
感光体ドラム40は、色ごとに4体設けられている。各感光体ドラム40は、中間転写ベルト31の移動経路R2に沿った4箇所の位置に配置されている。感光体ドラム40の対向位置には、現像ユニット20と、帯電ローラ41と、露光ユニット42と、クリーニングユニット43と、が設けられている。
【0042】
帯電ローラ41は、感光体ドラム40の外周面を所定の電位に均一に帯電させる。露光ユニット42は、帯電ローラ41によって帯電された感光体ドラム40の外周面を、用紙Pに形成する画像に応じて露光する。これにより、感光体ドラム40の外周面のうち露光された部分の電位が変化し、静電潜像が形成される。感光体ドラム40の静電潜像は、トナータンクから供給されるトナーで現像ユニット20により現像される。クリーニングユニット43は、感光体ドラム40上に形成されたトナー像が中間転写ベルト31に一次転写された後、感光体ドラム40上に残存する廃トナーを回収する。
【0043】
定着装置50は、中間転写ベルト31から用紙Pへ二次転写されたトナー像を用紙Pに付着させて定着させる。定着装置50は、用紙Pを加熱する加熱ローラ51と、加熱ローラ51を加圧する加圧ローラ52と、を備えている。加熱ローラ51と加圧ローラ52との間には、接触領域であるニップ部が設けられ、このニップ部に用紙Pを通過させることにより、トナー像を用紙Pに溶融及び定着させる。定着装置50によってトナー像が定着された用紙Pは、2個の排出ローラ61,62を通って画像形成装置1の外部に排出される。
【0044】
次に、本実施形態に係る転写装置30の具体的な構成について説明する。
図2、
図3及び
図4に示されるように、転写装置30は、転写ローラ33を揺動自在に保持すると共に画像形成装置1のカバーCに取り付けられた揺動機構70と、揺動機構70を構成するハウジング81と、転写ローラ33の外周面33aの斜め上方の部分に接触するクリーニングローラ83(クリーニング部材)と、外周面83aの斜め下側の部分に接触するクリーニングブレード85と、を備える。
【0045】
揺動機構70は、ハウジング81の内面に一端が固定されたバネ71と、バネ71の他端において揺動自在に配置されたアーム72と、を備えている。バネ71は、例えばコイルスプリングである。アーム72は、その上側に揺動支点72aを有しており、この揺動支点72aを中心としてハウジング81に揺動自在に支持されている。このアーム72に転写ローラ33が連結されており、転写ローラ33も揺動支点72aを中心に揺動自在となっている。
【0046】
クリーニングローラ83は、その断面形状が円形状となっているクリーニング部材である。クリーニングローラ83は、転写ローラ33に接触すると共に転写ローラ33に従動する。クリーニングローラ83は、転写ローラ33の外周面33aに付着した異物をクリーニングバイアスによって吸着する。このように、クリーニングローラ83は、外周面33aに位置する異物を吸着して外周面33aをクリーニングする。また、駆動ローラ31dの直径をφ1、転写ローラ33の直径をφ2、クリーニングローラ83の直径をφ3、としたときに、φ1>φ2>φ3を満たしている。
【0047】
クリーニングブレード85は、クリーニングローラ83の外周面83aに向かって直線状に斜め下方に延びている。クリーニングブレード85は、クリーニングローラ83に接触してクリーニングローラ83から異物を掻き落とす。クリーニングブレード85は、スクレイパーであってもよい。クリーニングブレード85の材料は、例えば、ゴム又は金属である。
【0048】
また、画像形成装置1は、転写装置30を構成する各部品の動作を制御するコントローラを備える。このコントローラは、マイクロコンピュータ等によって構成される。コントローラは、転写装置30の各部品の動作を規定するプログラムを格納したメモリを有し、当該プログラムを実行することによって転写装置30の各部品の動作を制御する。
【0049】
ここで、上記のコントローラにより、転写装置30は、用紙Pへの転写、及び転写ローラ33のクリーニングの制御を行う。転写装置30は、転写部Tで転写バイアスを付与して用紙Pへの転写を行うと共に、クリーニングローラ83と転写ローラ33の接点S1でクリーニングバイアスを付与して転写ローラ33のクリーニングを行う。
【0050】
また、前述のコントローラは、転写する画像の色の位置ずれを補正するための制御パターンFを中間転写ベルト31に形成する。制御パターンFは例えばトナーによって形成される。制御パターンFは、中間転写ベルト31上で中間転写ベルト31に沿って所定長さMだけ延びている。この所定長さMは、例えば数10mmであるが、特にこの値に限定されない。
【0051】
制御パターンFは、中間転写ベルト31上を移動経路R2に沿って移動すると共に、中間転写ベルト31の対向位置に配置されたセンサ31eによって検出される。センサ31eは、例えば、移動経路R2における転写部Tの上流側に配置される。センサ31eによる制御パターンFの検出タイミングを基に、コントローラは、印字する画像の位置を調整するフィードバック制御を行う。このコントローラのフィードバック制御により、画像の位置ずれが補正される。
【0052】
中間転写ベルト31に形成された制御パターンFは、転写部Tに入り込む。そして、制御パターンFは、転写ローラ33の外周面33aに沿って逆方向(時計回り)に移動した後に、接点S1でクリーニングバイアスによって除去される。一方、転写部Tには、前述したように、転写対象である用紙Pも入り込み、転写バイアスが付与されることによって用紙Pに画像の転写が行われる。
【0053】
以上のように転写部Tには、制御パターンFと用紙Pの両方が入り込む。ここで、本実施形態の転写装置30では、転写部Tに制御パターンFが入り込むタイミングと、転写部Tに用紙Pが入り込むタイミングと、が調整されている。以下では、先に転写部Tに入り込む用紙Pを用紙P1、次に転写部Tに入り込む用紙Pを用紙P2、として説明する。制御パターンFは、一の用紙P1が転写部Tを通過した後であって且つ次の用紙P2が転写部Tに入り込む前に、転写部Tに入り込む。
【0054】
ここで、転写部Tに入り込む制御パターンFと、次に転写部Tに入り込む用紙P2と、の間隔をL1とする。そして、転写部Tから、転写ローラ33及びクリーニングローラ83の接点S1に向かって逆方向(時計回り)に延びる曲線の長さをL2、としたときに、L1>L2、を満たしている。間隔L1は、具体的には、制御パターンFの移動経路R2の上流側端部F1から、用紙P2の搬送経路R1の下流側端部Xまで延びる曲線の長さである。
【0055】
次に、転写バイアス及びクリーニングバイアスの制御について説明する。
図2及び
図5に示されるように、まず、一の用紙P1が転写部Tに入り込む時刻t
0から用紙P1への転写が完了する時刻t
1までの間に転写バイアスの付与が行われ、これにより用紙P1への転写が行われる。この時刻t
0から時刻t
1までの間にはクリーニングバイアスの付与は行われない。クリーニングバイアスの付与は、時刻t
1よりも後に開始される。
【0056】
時刻t
1より後で転写バイアスの付与が停止され、その後にクリーニングバイアスの付与が開始される。そして、時刻t
1より後の時刻t
2では、制御パターンFの先端(移動経路R2の下流側端部)が転写部Tに入り込む。その後、制御パターンFの後端(移動経路R2の上流側端部F1)が転写部Tを通過する時刻t
3から、制御パターンFの後端がクリーニングローラ83との接点S1に到達する時刻t
4(具体的には時刻t
4より少し後)までの間は、継続してクリーニングバイアスの付与が行われる。これにより、制御パターンFは、クリーニングバイアスによって時刻t
4までの間に転写ローラ33から除去される。
【0057】
時刻t
4の後にクリーニングバイアスの付与が停止され、その後、時刻t
5において再度転写バイアスの付与が開始され、時刻t
5の後の時刻t
6に次の用紙P2が転写部Tに入り込む。そして、用紙P2に対する転写が行われる。以上のように、本実施形態の転写装置30では、転写バイアスの付与のタイミングと、クリーニングバイアスの付与のタイミングと、が重ならないように転写及びクリーニングが制御される。
【0058】
また、
図3に示されるように、転写装置30では、駆動ローラ31dが逆方向(時計回り)に回転可能となっている。そして、駆動ローラ31dが逆方向に所定長さだけ回転するときに、クリーニングローラ83は、逆方向に回転すると共に転写ローラ33に付着した異物を吸着する。ここで、駆動ローラ31dが逆方向に回転する駆動ローラ31dの周方向の長さをL3、駆動ローラ31dの逆回転への回転に伴って転写ローラ33が回転する周方向の長さをL4、駆動ローラ31dの逆方向への回転に伴ってクリーニングローラ83が回転する周方向の長さをL5、とする。そして、転写ローラ33及びクリーニングローラ83の接点S1からクリーニングローラ83及びクリーニングブレード85の接点S2に向かって順方向(反時計回り)に延びる曲線の長さをL6、とすると、L3≧L4≧L5、0.99≦L4/L3≦1、0.99≦L5/L4≦1、且つ、L3<L6、を満たしている。ここで、L3に対するL4の比が0.99以上、且つL4に対するL5の比が0.99以上、としたのは、L4及びL5のスリップ量が最大1%であることによる。
【0059】
以上のように動作する転写装置30は、クリーニングローラ83に対して転写ローラ33を着脱自在となっている。以下では、転写ローラ33を着脱させるための構成について説明する。
【0060】
図6に示されるように、転写装置30において、転写ローラ33、揺動機構70及びハウジング81は一体化されており、転写ローラ33は長尺状となっている。この転写装置30は、前述した画像形成装置1のカバーCに取り付けられる。揺動機構70は、転写ローラ33の長手方向(軸線方向)の両端に一つずつ配置されている。
【0061】
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、転写ローラ33は、クリーニングローラ83から転写ローラ33を着脱可能とするレバー部91を備えている。レバー部91は、転写ローラ33の長手方向の両端に一つずつ配置されている。レバー部91は、C字状に形成された固定部91aと、固定部91aから上方に延びる把持部91bと、クリーニングローラ83を抱え込んで保持する保持部91cと、クリーニングローラ83のギア83b(
図8参照)に噛み合うギア部91dと、を備えている。
【0062】
レバー部91の固定部91aは、転写ローラ33の長手方向の両端部に固定されている。保持部91cは、クリーニングローラ83の外周に沿うようにU字状に湾曲している。ギア部91dは、把持部91bの下端に形成されている。ギア部91dは、把持部91bの周方向への揺動操作に伴ってクリーニングローラ83のギア83bと噛み合う。
【0063】
図8(a)及び
図8(b)に示されるように、クリーニングローラ83も長尺状となっており、このクリーニングローラ83は長尺状のハウジング95に収容されている。クリーニングローラ83の長手方向の一端には、クリーニングローラ83を回転させるギア83bが露出している。
【0064】
図9(a)及び
図9(b)に示されるように、転写ローラ33では、レバー部91を揺動操作して、U字状の保持部91cをクリーニングローラ83に引っ掛ける。このように、転写ローラ33の長手方向の両端に位置する各保持部91cをクリーニングローラ83に引っ掛けることによって、転写ローラ33はクリーニングローラ83に保持される。なお、転写ローラ33がクリーニングローラ83に取り付けられるときに、レバー部91のギア部91dはギア83bに噛み合うが、このときの動作については後に詳述する。
【0065】
図10(a)及び
図10(b)は、クリーニングローラ83に転写ローラ33が取り付けられた状態を示している。
図10(a)及び
図10(b)に示されるように、転写ローラ33が取り付けられた状態において、クリーニングローラ83のギア83bはクリーニングローラ83の長手方向の一端で露出した状態となっている。
【0066】
次に、クリーニングローラ83に取り付けられた転写ローラ33を外すときの動作について説明する。
【0067】
まず、
図11に示されるように、転写ローラ33がクリーニングローラ83に取り付けられた状態において、ギア部91dは、ギア83bと噛み合っていない。この状態で、
図12及び
図13に示されるように、把持部91bを順方向(反時計回り)に揺動させると、レバー部91及び転写ローラ33が順方向に回転し、これに伴い、ギア部91dがギア83bに噛み合う。そして、ギア83bが逆方向(時計回り)に回転し、クリーニングローラ83も逆方向に回転する。
【0068】
転写ローラ33、レバー部91及びクリーニングローラ83の動きについて更に説明する。
図14(a)及び
図14(b)は、クリーニングローラ83に転写ローラ33が取り付けられて画像形成装置1のカバーCが閉鎖された状態を示している。この状態でカバーCが開放されると、バネ71の付勢力によりアーム72が揺動支点72aを支点として転写ローラ33側に揺動し、これに伴い、
図15(a)及び
図15(b)に示されるように、レバー部91が順方向に揺動する。レバー部91が順方向に揺動すると、ギア部91dがギア83bに噛み合う。
【0069】
更にレバー部91が順方向に揺動すると、クリーニングローラ83が逆方向に回転する。クリーニングローラ83が逆方向に回転すると、クリーニングローラ83の外周面83aがクリーニングブレード85に対して逆方向に相対移動する。こうして、クリーニングブレード85が、移動する外周面83a上を相対的に摺動することになる。従って、クリーニングブレード85によって、逆方向に回転するクリーニングローラ83の外周面83aの異物を掻き落とすことが可能となる。
【0070】
一方、転写ローラ33が外れた状態から転写ローラ33を取り付けてカバーCを閉鎖するときには、まず、
図16(a)及び
図16(b)の状態から、レバー部91を逆方向(時計回り)に揺動させ、
図15(a)及び
図15(b)に示されるように、ギア83bにギア部91dを噛み合わせる。そして、更にレバー部91を逆方向に揺動させて
図14(a)及び
図14(b)に示される状態にすると、クリーニングローラ83が順方向(反時計回り)に回転する。
【0071】
クリーニングローラ83が順方向に回転すると、クリーニングローラ83の外周面83aがクリーニングブレード85に対して順方向に相対移動する。こうして、クリーニングブレード85が、外周面83a上を相対的に、且つカバーCの開放時とは逆方向に、摺動する。従って、クリーニングブレード85によって、順方向に回転するクリーニングローラ83の外周面83aの異物を掻き落とすことが可能となる。また、カバーCが閉鎖されてクリーニングブレード85が外周面83aの異物を掻き落とすと共に、カバーCの閉鎖に連動して転写ローラ33が中間転写ベルト31に加圧される。
【0072】
次に、本実施形態の転写装置30の作用効果について詳細に説明する。
【0073】
転写装置30では、
図2に示されるように、中間転写ベルト31と転写ローラ33との間に位置する転写部Tに用紙Pが所定の間隔で連続的に入り込むと共に、用紙Pに対する転写が転写部Tで転写バイアスによって連続的に行われる。一方、中間転写ベルト31上には、中間転写ベルト31に沿って所定長さMだけ延びる制御パターンFが形成され、この制御パターンFも転写部Tに入り込む。制御パターンFは、一の用紙P1が転写部Tを通過した後であって且つ次の用紙P2が転写部Tに入り込む前に、転写部Tに入り込む。
【0074】
このように、制御パターンFが一の用紙P1と次の用紙P2との間のタイミングで転写部Tに入り込むことにより、制御パターンFによる画像の補正を転写中に行うことができる。従って、用紙P1と用紙P2との間に制御パターンFを通すことによって、転写効率の低下を抑制することができる。そして、画像の補正を行いながら転写を行うことができるので、転写性能を向上させることができる。
【0075】
また、転写装置30では、転写部Tに入り込む制御パターンFと次に転写部Tに入り込む用紙P2との間隔をL1、転写部Tから転写ローラ33とクリーニングローラ83との接点S1までの周方向の長さをL2、としたときにL1>L2を満たしている。すなわち、中間転写ベルト31、転写ローラ33及びクリーニングローラ83の接点間の距離であるL2より、制御パターンFと用紙P2との間隔L1の方が長い。従って、クリーニングバイアスによる制御パターンFのクリーニングは、転写バイアスによる次の用紙P2への転写よりも先に行われる。よって、クリーニングバイアスによる制御パターンFの除去と、転写バイアスによる用紙P2への転写と、が同時に行われないようにすることができる。
【0076】
そして、クリーニングバイアスと転写バイアスとの干渉を回避することができるので、クリーニング性能及び転写性能を向上させることができる。更に、転写装置30では、従来から用いられていたクリーニングブラシが不要な構成となっている。よって、ブラシを回転させる駆動機構を設ける必要が無いため、駆動源の削減が可能となっている。従って、コストダウンにも寄与する。
【0077】
また、本実施形態では、駆動ローラ31dの直径をφ1、転写ローラ33の直径をφ2、クリーニングローラ83の直径をφ3、としたときに、φ1>φ2>φ3、を満たしている。これにより、駆動ローラ31dの駆動力を効率よく転写ローラ33及びクリーニングローラ83に伝達させることができる。従って、転写性能及びクリーニング性能をより向上させることができる。
【0078】
また、駆動ローラ31dは、逆方向(時計回り)に回転可能となっている。そして、駆動ローラ31dが逆方向に所定長さだけ回転するときに、クリーニングローラ83は、逆方向に回転すると共に、転写ローラ33に付着した異物を吸着する。
【0079】
また、
図3に示されるように、駆動ローラ31dが逆方向に回転する周方向の長さをL3、駆動ローラ31dの逆方向への回転に伴って転写ローラ33が回転する周方向の長さをL4、駆動ローラ31dの逆方向への回転に伴ってクリーニングローラ83が回転する周方向の長さをL5、転写ローラ33及びクリーニングローラ83の接点S1からクリーニングローラ83及びクリーニングブレード85の接点S2に向かって順方向(反時計回り)に延びる曲線の長さをL6、としたときに、L3=L4=L5、且つ、L3<L6、を満たしている。このように曲線の長さL6をL3,L4及びL5よりも長くすることによって、駆動ローラ31dの逆方向への回転時に、クリーニングローラ83から転写ローラ33に異物が逆行するのを確実に抑えることができる。
【0080】
また、本実施形態では、
図1及び
図15に示されるように、転写ローラ33及びクリーニングローラ83を一体的に揺動自在に保持するカバーCを備えている。そして、転写ローラ33は、クリーニングローラ83から転写ローラ33を着脱可能とするレバー部91を有する。また、レバー部91の揺動操作によって転写ローラ33がクリーニングローラ83に取り付けられ、カバーCが閉じられたときに、転写ローラ33が中間転写ベルト31に加圧される。一方、カバーCが開けられるときには、転写ローラ33が順方向(反時計回り)に回転する。
【0081】
以上のように、レバー部91によって転写ローラ33を着脱自在とすることができる。また、レバー部91で転写ローラ33が装着されてカバーCが閉鎖されたときに、その閉鎖に連動して転写ローラ33を中間転写ベルト31に加圧させることができる。一方、カバーCが開放されたときには、転写ローラ33が順方向に回転することによってクリーニングローラ83が逆方向に回転し、これによりクリーニングブレード85がクリーニングローラ83上の異物を掻き落とす。このようにカバーCの開放に伴ってクリーニングローラ83上の異物を掻き落とすことができるので、クリーニング性能を一層向上させることができる。
【0082】
また、レバー部91によって転写ローラ33がクリーニングローラ83から外されるときにも、転写ローラ33は順方向に回転する。従って、転写ローラ33の取り外し時に、転写ローラ33が順方向に回転することによってクリーニングローラ83が逆方向に回転し、これによりクリーニングブレード85がクリーニングローラ83上の異物を掻き落とす。従って、転写ローラ33の取り外しと連動して異物を掻き落とすことができるので、クリーニング性能の更なる向上が可能となる。
【0083】
また、カバーCが閉じられるときに、転写ローラ33は逆方向に回転する。ところで、クリーニングブレード85とクリーニングローラ83との間には異物が詰まり、この間の部分に隙間が形成されることがある。この事象が発生した場合、クリーニングローラ83を一方の方向のみに回転させても異物が外れないことがあり、当該隙間から異物を除去できない場合が生じうる。
【0084】
しかしながら、前述のように、カバーCが閉じられるときに転写ローラ33を逆方向に回転させることにより、カバーCの開放時とカバーCの閉鎖時とで転写ローラ33の回転方向を互いに逆にすることができる。従って、カバーCの開閉に伴ってクリーニングローラ83を双方向に回転させることもできる。よって、前述のように異物が詰まった場合であっても、カバーCの開閉と共に双方向にクリーニングローラ83を回転させることによって、当該異物を効率よく且つ確実に除去することができる。
【0085】
また、レバー部91は、転写ローラ33と一体に設けられてクリーニングローラ83のギア83bと噛み合うギア部91dを有する。このように転写ローラ33と一体となったギア部91dを備えているので、レバー部91の揺動操作と共にギア83bへの噛合を実現させることができる。従って、転写ローラ33と共に回転するギアを別途設ける必要がないため、駆動源の数を減らすことができ、部品点数及びコストを低減させることができる。
【0086】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る転写装置100について
図17及び
図18を参照しながら説明する。以降では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
図17及び
図18に示されるように、転写装置100は、転写ローラ33の回転方向のクリーニングローラ83の下流側に、転写ローラ33上に残存したトナーを除去するブラシ部材110を備えている。
【0087】
ところで、画像形成装置において紙詰まり等の異常が発生したときには、転写ローラ33の外周面33aに種々のトナーが付着することがある。このように種々のトナーが外周面33aに付着した場合、クリーニングローラ83のクリーニングバイアスによってトナーを吸着するだけでは、外周面33a上のトナーを除去しきれないことが想定される。すなわち、異常発生時には、クリーニングローラ83のクリーニングだけでは不十分となることが想定される。そこで、第2実施形態では、前述したように転写ローラ33の回転方向の下流側にブラシ部材110を予備的に配置しており、このブラシ部材110で外周面33a上のトナーの掻き取り及び拡散を行うことにより、クリーニングローラ83で除去しきれなかったトナーを確実に除去している。
【0088】
ブラシ部材110は、例えば、バーブラシであり、転写ローラ33の湾曲した外周面33aに沿って配置されている。このように、ブラシ部材110としてバーブラシを用いることができる。また、ブラシ部材110を転写ローラ33の湾曲した外周面33aに沿って配置することにより、転写ローラ33に対する毛113の当接力を均一にすることができる。
【0089】
また、ブラシ部材110は、転写ローラ33の長手方向(軸線方向)に沿って連続的に配置されていてもよいし、転写ローラ33の長手方向に沿って間欠的に配置されていてもよい。このように、ブラシ部材110を部分的に配置することも可能である。また、ブラシ部材110の数は複数であってもよい。更に、ブラシ部材110は、絶縁ブラシであってもよいし、導電ブラシであってもよい。但し、ブラシ部材110は、導電ブラシである場合には、転写ローラ33に対して電気的にフロートである。
【0090】
ブラシ部材110は、転写装置100の内壁101に固定された固定部111と、固定部111に固定された基布部112と、基布部112に植毛されており基布部112から延びて転写ローラ33の外周面33aに当接する複数の毛113とを備えている。なお、
図17〜
図19では、外周面33aに対する毛の食い込み量を示すために毛の先端部分を破線で外周面33aに入り込むように模式的に示しているが、実際、毛は、外周面33aに沿うように外周面33aに当接する。
【0091】
固定部111は、内壁101に固定される平面111aと、平面111aの反対側で転写ローラ33の外周面33aに沿って延びる湾曲面111bとを有する。平面111aは、両面テープによって内壁101に固定されている。湾曲面111bには、複数の毛113を固定する基布部112が両面テープによって接着されている。なお、内壁101に対する平面111aの固定手段、及び、湾曲面111bに対する基布部112の固定手段は、両面テープに限られず、例えば、接着剤又はネジ止め等、種々の手段を採用することが可能である。
【0092】
基布部112は、転写ローラ33の外周面33aに沿って湾曲した板状とされている。複数の毛113は、基布部112の転写ローラ33側の面から転写ローラ33に向かって延びており、転写ローラ33の外周面33aに当接している。転写ローラ33に当接する毛113の先端部分113aの密度は、基布部112に固定される基端部分113bの毛113の密度よりも高い。すなわち、先端部分113aの毛113の間隔は、基端部分113bの毛113の間隔よりも狭く、先端部分113aの毛113は、より密集している。
【0093】
ブラシ部材110は、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくともいずれかを含む材料によって構成されている。ブラシ部材110は、毛113の糸太さをD(dtex)、基布部112に対する毛113の植毛密度をwd(k本/inch)とすると、300≦D×wd≦850を満たしている。また、毛113の毛長をL、転写ローラ33の外周面33aに対する食い込み量(食い込み長さ)をnとすると、L/10≦n≦L/2を満たしている。
【0094】
以上、第2実施形態に係る転写装置100は、転写ローラ33の回転方向のクリーニングローラ83の下流側に、転写ローラ33上のトナーを除去するブラシ部材110が設けられている。よって、ブラシ部材110の毛113が転写ローラ33に当接することにより、転写ローラ33上に残存したトナーを物理的に除去することができる。従って、転写ローラ33に残存したトナーを確実に除去することができる。
【0095】
また、ブラシ部材110は、転写ローラ33に接する先端部分113aの毛113の密度が、基布部112に固定された基端部分113bの毛113の密度よりも高い。従って、転写ローラ33に当接する毛113の密度を高くして転写ローラ33に対する毛113の当接力を高めることができるので、毛113によってより確実にトナーを除去することができる。また、ブラシ部材110の先端部分113aの毛113の密度を高くすることにより、転写ローラ33に対して一定のニップを確保しつつ、より均一に転写ローラ33の表面を加圧することができる。
【0096】
また、ブラシ部材110は、毛113の糸太さをD(dtex)、毛113の植毛密度をwd(k本/inch)としたときに、300≦D×wd≦850を満たしている。従って、D×wdの値を300以上とすることにより、毛113の太さ及び密度を高めることができるので、毛113によるクリーニング性能を高めることができる。また、D×wdの値を850以下とすることにより、毛113の力が強すぎて転写ローラ33が摺動しなくなる問題を回避することができる。
【0097】
また、毛113の毛長をL、転写ローラ33に対する毛113の食い込み量をnとすると、L/10≦n≦L/2を満たしている。食い込み量を示すnの値をL/10以上とすることにより、転写ローラ33に対する毛113の食い込み量を大きくすることができるので、クリーニング性能を高めることができる。また、nの値をL/2以下とすることにより、食い込み量が大きすぎて毛113が折れたりコシがなくなったりする問題を回避することができる。
【0098】
また、ブラシ部材110は、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくともいずれかを含む材料によって構成されている。よって、ブラシ部材110を適切な硬さにすることができる。
【0099】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る転写装置のブラシ部材120について
図19(a)を参照しながら説明する。
図19(a)に示されるように、ブラシ部材120において、毛123は、回転方向の上流側が下流側よりも食い込み量が多くなるように配置されている。ブラシ部材120の基布部122は、外周面33aとは平行となっておらず、回転方向の上流側に向かうに従って外周面33aに接近するように配置されている。
【0100】
第3実施形態のブラシ部材120は、回転方向の上流側が下流側よりも食い込み量が大きくなるように配置されている。よって、回転方向の上流側で毛123をより強く転写ローラ33に当接させることができる。従って、回転方向の上流側で残留したトナーをより確実に掻き取ることができるので、転写ローラ33のクリーニング性能を一層高めることができる。
【0101】
(第4実施形態)
続いて、第4実施形態に係る転写ローラのブラシ部材130について
図19(b)を参照しながら説明する。
図19(b)に示されるように、ブラシ部材130では、転写ローラ33の回転方向の上流側と下流側とにおいて毛133の密度が異なっており、下流側の方が上流側よりも高い密度とされている。すなわち、下流側の毛133の方が上流側の毛133よりも、植毛本数が多く高密度に基布部112に植え込まれている。
【0102】
第4実施形態のブラシ部材130では、回転方向の下流側の毛133の密度は、回転方向の上流側の毛133の密度よりも高い。このように下流側の毛133の密度を上流側よりも高くすることにより、下流側の毛133にコシを持たせることができる。従って、転写ローラ33の回転によって下流側の毛133が倒れる問題を回避することができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
【0104】
例えば、前述の実施形態では、転写ローラ33をクリーニングするクリーニング部材として、断面形状が円形状となっているクリーニングローラ83を用いた例について説明した。しかしながら、クリーニング部材として、クリーニングローラ83以外のものを用いてもよい。例えば、断面形状が楕円状又は長円形状となっているクリーニングローラを用いることも可能であるし、環状となったクリーニングベルトを用いることも可能である。
【0105】
また、前述の実施形態では、転写する画像の位置ずれを補正するための制御パターンFが中間転写ベルト31に形成される例について説明した。しかしながら、例えば転写する画像の濃度を補正するための制御パターンを中間転写ベルト31に形成してもよく、制御パターンの目的は特に限定されない。また、制御パターンの形状又は長さについても特に限定されない。
【0106】
また、転写装置30を備える画像形成装置の構成についても適宜変更することが可能である。