特開2017-12172(P2017-12172A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-12172温度応答性細胞培養用ビーズ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-12172(P2017-12172A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】温度応答性細胞培養用ビーズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20161222BHJP
   C12N 5/02 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
   C12M3/00 A
   C12N5/02
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-139774(P2016-139774)
(22)【出願日】2016年7月14日
(62)【分割の表示】特願2012-531947(P2012-531947)の分割
【原出願日】2011年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2010-208505(P2010-208505)
(32)【優先日】2010年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501345220
【氏名又は名称】株式会社セルシード
(71)【出願人】
【識別番号】591173198
【氏名又は名称】学校法人東京女子医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 純
(72)【発明者】
【氏名】大和 雅之
(72)【発明者】
【氏名】岡野 光夫
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029CC03
4B029DG08
4B065AA90X
4B065BC41
4B065BD50
4B065CA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】温度応答性細胞培養用ビーズ及びその製造方法の提供。
【解決手段】比重が1.2以下の材質からなる粒体表面に、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを固定化した温度応答性細胞培養用ビーズ。このビーズを使用すると温度変化により細胞を剥離させることができる。電荷を有するポリマーがポリアルキルアクリルアミドの共重合物であり、ビーズポリスチレン製微粒子又はポリスチレン製細片でありイソプロピルアルコールを溶媒として、ビーズ表面の原子移動ラジカル重合開始から重合触媒下でビーズ上で成長反応させた、温度応答性細胞培養ビーズ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が1.2以下の材質からなる粒体表面に、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーが固定化されていることを特徴とする温度応答性細胞培養用ビーズ。
【請求項2】
電荷を有するポリマーが、ポリアルキルアクリルアミドの共重合物である、請求項1記載の温度応答性細胞培養用ビーズ。
【請求項3】
ポリアルキルアクリルアミドが、ポリ−(N−イソプロピルアクリルアミド)、及び/またはポリ−(N,N−ジエチルアクリルアミド)である、請求項1、2のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズ。
【請求項4】
電荷がカチオンである、請求項1〜3のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズ。
【請求項5】
ビーズがポリスチレン製粒子、ポリスチレン製細片である、請求項1〜4のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズ。
【請求項6】
イソプロピルアルコールを溶媒として、ビーズ表面の原子移動ラジカル重合開始剤から重合触媒下で原子移動ラジカル法により、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを成長反応させることを特徴とする温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法。
【請求項7】
原子移動ラジカル重合開始剤が、ビーズ表面に存在するクロロメチル基である、請求項6記載の温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法。
【請求項8】
原子移動ラジカル重合開始剤が0.08分子鎖/nm以上の割合で高密度に固定化されていることを特徴とする請求項6、7のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法。
【請求項9】
重合触媒が、ハロゲン化銅として塩化銅、リガンド錯体としてトリス(2−(ジメチルアミノ)エチル)アミンである、請求項6〜8のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法。
【請求項10】
ビーズ表面の電荷を有するポリマー固定化量が0.8〜10.0mg/mとなる、請求項6〜9のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズを利用した、細胞培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学、医学等の分野において有用な細胞培養基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、動物細胞培養技術が著しく進歩し、動物細胞を対象とした研究開発もさまざまな分野に広がって実施されるようになってきた。対象となる動物細胞の使われ方も、開発当初の細胞そのものを製品化したり、その産生物を製品化するだけでなく、今や細胞やその表層蛋白質を分析することで有用な医薬品を設計したり、患者本人の細胞を生体外で増殖させたり、或いはその細胞の機能を高めて生体内へ戻し治療することも実施されつつある。現在、動物細胞を培養する技術は、多くの研究者が注目している一分野である。
【0003】
ところで、ヒト細胞を含め動物細胞の多くは付着依存性のものである。すなわち、動物細胞を生体外で培養しようとするときは、それらを一度、どこかに付着させる必要性がある。そのような背景のもと、以前より多くの研究者らによって細胞にとってより好ましい器材表面の設計、考案がなされてきたが、これらの技術は何れも細胞培養時に関係するものばかりであった。付着依存性の培養細胞は何かに付着する際、自ら接着性蛋白質を産生する。従ってその細胞を剥離させるときには、従来技術ではその接着性蛋白質を破壊しなければならず、通常酵素処理が行われる。その際、細胞が培養中に産生した各種細胞固有の細胞表層蛋白も同時に破壊されてしまうという重大な課題であったにもかかわらず、現実には解決する手段が全くなく、特に検討されていなかった。この細胞回収時の課題の解決こそが、今後動物細胞を対象とした研究開発を飛躍的に発展させる上で強く求められるものと考えられる。
【0004】
このような背景のもと、特許文献1には、水に対する上限若しくは下限臨界溶解温度が0〜80℃であるポリマーで器材表面を被覆した細胞培養支持体上にて、細胞を上限臨界溶解温度以下または下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下にすることにより酵素処理なくして培養細胞を剥離させる新規な細胞培養法が記載されている。また、特許文献2には、この温度応答性細胞培養器材を利用して皮膚細胞を上限臨界溶解温度以下或いは下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上或いは下限臨界溶解温度以下にすることにより培養皮膚細胞を低損傷で剥離させることが記載されている。さらに、特許文献3には、この温度応答性細胞培養器材を用いて培養細胞の表層蛋白質の修復方法が記載されている。温度応答性細胞培養器材を利用することにより、従来の培養技術に対しさまざまな新規な展開をはかれるようになってきた。
【0005】
温度応答性細胞培養器材を利用することにより、従来の培養技術に対しさまざまな新規な展開をはかれるようになった。しかしながら、ここでの技術は、主にシャーレ状の基材を対象にした技術であり、細胞を大量に培養できるビーズ状の基材表面を設計する上ではさらなる改良が求められていた。
【0006】
そのような中、特許文献4では、原子移動ラジカル重合法を用いることでシリカゲル表面に温度応答性ポリマーを高密度に固定化し、そして、実際にそのビーズを用いたときの分離例も例示されている。しかしながら、何れの実施例においても、生理活性物質の分離方法として利用するにとどまっており、細胞培養技術に関する知見は示されていなかった。
【0007】
非特許文献1には、N−イソプロピルアクリルアミドの原子移動ラジカル重合をイソプロピルアルコール(IPA)をはじめとして様々な溶媒下で行う技術が記載されており、反応溶媒の違いによる反応速度の比較も記載されている。しかしながら、ここでの技術は溶液中での重合反応に関するものであり、固体の細胞培養用ビーズに温度応答性ポリマーを固定化する記載はなく、また、そのことを示唆するような記載もなかった。さらに、温度応答性ポリマーの原料となるモノマーと電荷を呈する官能基を持つモノマーとの共重合における原子移動ラジカル重合反応に用いた記載もなく、また、そのことを示唆するような記載もなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−211865号公報
【特許文献2】特開平05−192138号公報
【特許文献3】特開2008−220354号公報
【特許文献4】特開2007−69183号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Macromolecules,38,5937−5943(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような細胞培養用ビーズに関する従来技術の問題点を解決することを意図してなされたものである。さらに。その過程で判明した細胞培養中に発生する細胞培養用ビーズ同士の凝集を解決することを意図してなされたものである。すなわち、本発明は、従来技術と全く異なった発想からの新規な温度応答性細胞培養用ビーズを提供することを目的とする。また、本発明は、その温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行った。その結果、驚くべくことに、比重が1.2以下の材質からなる粒体表面に、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーが固定化されている温度応答性細胞培養用ビーズを利用すると効率良く細胞を培養させられ、しかも基材面の温度を変えるだけで効率良く剥離させられることを見出した。またその培養期間中、温度応答性細胞培養用ビーズ同士の凝集を抑えることができた。このものを細胞培養用基材とすれば、従来技術の細胞とは異なる低損傷な細胞を効率良く大量に培養できるものと大いに期待される。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、比重が1.2以下の材質からなる粒体表面に、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーが固定化された温度応答性細胞培養用ビーズを提供する。
【0013】
また、本発明はその温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に記載される細胞培養用ビーズであれば、効率良く細胞を大量に培養させることができ、しかも基材面の温度を変えるだけで効率良く剥離させることができる。また、このような機能性表面を有した基材が本発明の製造方法によれば、簡便に作製できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1、2の温度応答性細胞培養用ビーズを調製する上での条件を示す表である。
図2】実施例1で得られた温度応答性細胞培養用ビーズを用いて細胞を培養した結果を示す図である。
図3】実施例2で得られた温度応答性細胞培養用ビーズを用いて細胞を培養した結果を示す図である。
図4】実施例1、2で得られた結果をまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、比重が1.2以下の材質からなる粒体表面に電荷を付与させれば、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーが固定化された温度応答性細胞培養用ビーズにおいてもビーズ同志で凝集することなく細胞を培養させられることを見出し本発明を完成した。本発明の目的は、特定の条件下で原子移動ラジカル法により、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを成長反応させることにより得られる温度応答性細胞培養用ビーズ、及びそのビーズの製造方法を提供するものである。
【0017】
本発明は、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを細胞培養用ビーズに固定化する方法を提供する。細胞培養用ビーズに温度応答性ポリマーを固定化する場合において、その固定化量を制御することは、そのビーズの細胞培養機能を左右することにつながるため、極めて重要な技術である。また、その固定化は、均一な分子量のポリマーが、ビーズ表面に均等に存在するように行われることが望ましい。本発明で使用するビーズの形状は特に限定されるものではなく、例えば、粒子状のもの(球状、楕円状、その他粒の形状であればどのような形状でも良い)、平板状のもの、平板状のものを細かく裁断したもの、管状のもの、管状のものを細かく裁断したもの等がある。なお、本明細書中において、粒子と粒子状のものは同じ意味を表し、平板状のものを細かく裁断したもの、管状のものを細かく裁断したもの並びにその他の形状のものを細かく裁断したものを総称して細片という。特に本発明のビーズを細胞培養用ビーズとして用いる場合、ビーズとしては比重が1.2以下の材質のものが良く、好ましくは1.05以下が良く、さらに好ましくは1.0以下が良い。比重が1.2より大きいと細胞培養中、細胞培養用ビーズが沈殿してしまい、それを培地中に分散させるには強い攪拌が必要となるので好ましくない。細胞培養用ビーズの材質としては、具体的にはプラスチックや多糖類製のものが良い。そのようなビーズとしては特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、セルロース、シクロデキストリン、或いはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。その際、細胞培養用ビーズが多孔質のものであっても良く、多孔質のものでなくても良い。細胞培養用ビーズが多孔質の場合、その細孔径は特に制約されるものではない。また、ビーズの粒子径は特に限定されるものではないが、ビーズの最も長い寸法が、好ましくは20〜300μmが良く、好ましくは50〜200μmが良く、さらに好ましくは80〜120μmが良い。20μmより小さいと細胞培養用ビーズとして培地中に分散させるビーズとして小さすぎて操作性が悪くなり好ましくなく、逆に300μmより大きいと操作性が悪くなり好ましくない。
【0018】
本発明では、上記ビーズに0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化する温度応答性ポリマーが固定化される。その固定化方法としては、基材表面に原子移動ラジカル重合開始点としてもクロロメチル基を有するビーズを利用し、その開始点から触媒の存在下で原子移動ラジカル法により温度応答性ポリマーを成長反応させる方法、或いは原子移動ラジカル重合開始剤を固定化し、その開始剤から触媒の存在下で原子移動ラジカル法により温度応答性ポリマーを成長反応させる方法等が挙げられる。その際に使用する開始剤としては特に限定されるものではないが、例えば、1−トリクロロシリル−2−(m−クロロメチルフェニル)エタン、1−トリクロロシリル−2−(p−クロロメチルフェニル)エタン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、(3−(2−ブロモイソブチリル)プロピル)ジメチルエトキシシランなどがあげられる。本発明では、この開始剤よりポリマー鎖を成長させる。その際の触媒としては特に限定されるものでないが、水和力が変わるポリマーとしてN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体を選んだ場合、ハロゲン化銅(CuIX)としてCuICl、CuIBr等があげられる。また、そのハロゲン化銅に対するリガンド錯体も特に限定されるものではないが、トリス(2−(ジメチルアミノ)エチル)アミン(MeTREN)、N,N,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン(HMTETA)、1,4,8,11−テトラメチル 1,4,8,11−アザシクロテトラデカン(MeCyclam)、ビピリジン等が挙げられる。
【0019】
本発明で重合時に使用する溶媒としては、イソプロピルアルコール(IPA)が好適である。本発明者らは種々の検討を行ったところ、まず、温度応答性ポリマーの原料としてN−イソプロピルアクリルアミドを選択し、原子移動ラジカル重合反応を室温で溶液中で行った場合では、反応溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)、水、IPAのいずれを選択しても同程度に反応速度が大きいことが分かった。しかしながら、本発明のような固体の細胞培養用ビーズ表面に対しN−イソプロピルアクリルアミドを固定化重合しようとする固相反応の場合では、反応溶媒をIPAとすると、他の2者を選んだときに比べ顕著に反応速度が遅くなることを見出した。また、上述のMacromolecules 38,5937−5943(2005)に示されるt−ブチルアルコールでは、室温で固化する場合があり、従って反応温度を室温以上にしなければならず、その結果、反応速度が上昇してしまうことが分かり、本発明には不適当であることが分かった。ここでの知見は、従来技術では全く知られていなかったことであり、本発明によれば、ビーズへの固定化重合は、反応溶媒としてIPAを選択するとポリマー鎖の分子量は徐々に増加し、ビーズ表面へのポリマー鎖の固定化量も徐々に増加することとなる。従って、本発明の方法に従えば、ビーズ表面へのポリマー鎖を均一に固定化させることができるようになる。さらに、所定の時間で反応を中止することで、反応を中止した時点の固定化状態を有するビーズを再現性良く製造できるようになる。
【0020】
本発明は、ビーズ表面の開始点から重合触媒下で原子移動ラジカル法により、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを成長反応させる方法であるが、その他の重合時の開始剤濃度、ハロゲン化銅濃度、リガンド錯体濃度、反応温度、反応時間等は特に限定されるものではなく、目的に応じて変更して良い。さらに反応液の状態は静置させても攪拌しても良いが、ビーズ表面に均一に固定化することを考えると後者の方が好ましい。
【0021】
本発明に用いる温度応答性ポリマーとは、下限臨界溶解温度(LCST)を有するポリマー、上限臨界溶解温度(UCST)を有するポリマーが挙げられるが、それらのホモポリマー、コポリマー、或いは混合物のいずれであってもよい。このようなポリマーとしては、例えば、特公平06−104061号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマーの単独重合または共重合によって得られる。使用し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体、ポリビニルアルコール部分酢化物が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上を使用することができる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。その際、分離される物質が生体物質であることから、分離が5℃〜50℃の範囲で行われるため、温度応答性ポリマーとしては、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(単独重合体の下限臨界溶解温度21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(同27℃)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(同32℃)、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミド(同43℃)、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド(同45℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(同約35℃)、ポリ−N−エトキシエチルメタクリルアミド(同約45℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(同約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(同約35℃)、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド(同56℃)、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(同32℃)などが挙げられる。
【0022】
この中で、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)は32℃に下限臨界温度を有するので、このポリマーで化学修飾したビーズ表面はこの臨界温度で親水性/疎水性の表面物性を大きく変化させるため、これを細胞培養用ビーズの表面に固定化して使用した場合、試料に対する保持力が温度によって変えられるようになる。その結果、培養した細胞を加水分解酵素等を使わずに培養温度にだけで剥離させることができるようになる。下限臨界温度を32℃以上にするためには、イソプロピルアクリルアミドよりも親水性のモノマーであるアクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド、ビニルピロリドンなどの親水性のモノマーをN−イソプロピルアクリルアミドと共重合させることによって調整することが可能である。また、下限臨界温度を32℃以下にしたいときは、疎水性モノマーであるスチレン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレートなどの疎水性のモノマーとの共重合によって調整することができる。
【0023】
また、ポリジエチルアクリルアミドの下限臨界温度は、約30℃〜32℃であり、この温度を境として親水性/疎水性に表面物性が変化し、前述のポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の場合と同様に、細胞の付着、剥離を温度によって調整することができる。本発明で利用される新規な細胞培養用ビーズは、化学修飾或いはポリマーの被覆によって作製される。
【0024】
本発明において、細胞培養用ビーズ表面に被覆されているポリマーは温度を変えることで水和、脱水和を起こすものであり、その温度域は0℃〜80℃、好ましくは10℃〜50℃、さらに好ましくは20℃〜45℃である。80℃を越えると細胞にとって好ましくない。また、0℃より低いと細胞が過度に冷却される虞れがあり好ましくない。
【0025】
また、本発明において、細胞培養用ビーズ表面に被覆されるポリマーは荷電されたものである。その電荷を与える方法は特に限定されないが、通常、ビーズ表面に被覆される温度応答性ポリマー鎖を合成する際、電荷を生じる官能基を持ったイオン性モノマーも含めて共重合する方法があげられる。そのイオン性モノマーとして、例えばアミノ基を有するポリマーの構成単位としてジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノスチレン、アミノアルキルスチレン、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、アルキルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩である3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、4級アミノ基を有するジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられ、また、カルボキシル基を有するポリマーの構成単位としてアクリル酸、メタクリル酸、スルホン酸を有するポリマーの構成単位として(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸等が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。一般に細胞がマイナスに荷電していることを考慮すると、ビーズ表面側はカチオンの方が好ましい。
【0026】
本発明においRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動(Reversible Addition-Fragmentation Chain Transfer))剤を開始剤として表面開始型ラジカル重合法を利用した場合、RAFT剤の構造の一部であるジチオエステル系官能基が生成したポリマーの末端に残存することになる。これはRAFT重合法に特徴的な現象であり、重合反応が終了した後、さらにその末端から重合反応を開始させることが可能となる。この特徴を利用することにより、既存の共重合体とは異なりブロック共重合体の表面を作製することも可能となる。その際、温度応答性ポリマーの末端に存在するジチオエステル系官能基は2−エタノールアミンなどを添加することにより、容易にチオール基に置換される。この反応は特別な条件下で行われる必要はなく、簡便でありまた短時間で進行する。その結果、反応性の高いチオール基を有するポリマー鎖を得ることができるため、マレイミド基、チオール基などの官能基を有する機能性分子を選択的、効率的にポリマー鎖末端に修飾できる。従って、温度応答性培養用ビーズ表面に新たな機能性を付与することが可能となる。その際、官能基の種類については特に限定されるものではないが、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、アルデヒド基、スルホン酸基等が挙げられる。また、そのポリマー鎖末端には細胞接着を促進させるようなペプチドや蛋白質が固定化されていても良い。そして、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドの下限臨界溶解温度(LCST)が末端官能基の親水性・疎水性に依存して変化することから、本発明のようなポリマー鎖末端への官能基導入は、ビーズ表面の温度応答性を別の観点から制御する新たな手法としても期待される。
【0027】
本発明では、上記ポリマーが高密度かつ均一に固定化されている。その固定化程度は、単位面積あたりの分子鎖数にして、0.08分子鎖/nm以上が良く、好ましくは0.10分子鎖/nm以上が良く、さらに好ましくは0.12分子鎖/nm以上が良く、最も好ましくは0.15分子鎖/nm以上が良い。基材表面へのポリマーの固定化程度が0.08分子鎖/nmより少ないと、従来法による基材表面へのポリマー固定化と同様に個々のポリマー鎖の特性が発現するだけで本発明のビーズとして好ましくない。固定化程度を示す数値の算出方法は特に限定されるものではないが、例えば同様な反応条件で基材表面に固定化されていないポリマーを作製し、そのポリマー鎖を分析することで求めた分子量とポリマーが固定化されたビーズの元素分析などから求めたポリマー固定化量から算出できる。
【0028】
被覆されるポリマーの分子量は0〜80℃の温度範囲内で水和力の変化が発現するに十分に大きな分子量であれば特に制約されるものではないが、ポリマー分子量は1000以上が良く、好ましくは2000以上、さらに好ましくは5000以上のものが良い。分子量が1000未満であると、分子量が低すぎるため、水和力の変化を発現できず好ましくない。但し、分子量が50000を超えると、今度はポリマーの分子量が高すぎるため、分子そのものが嵩高くなり温度応答性が減少してしまうこととなり好ましくない。
【0029】
また、本発明で示すところの基材上へのポリマーの固定化量は0.8〜10.0mg/mの範囲が良く、好ましくは0.9〜8.0mg/mの範囲、さらに好ましくは1.0〜6.0mg/mの範囲が良い。0.8mg/m未満であると温度応答性が認められなくなり、また10.0mg/mより高い値であってもポリマーの嵩高さのため温度応答性が減少してしまうこととなり好ましくない。固定化量の測定は常法に従えば良く、例えばFT-IR-ATR法、元素分析、ESCAを量などが挙げられるがいずれの方法を用いても良い。本発明で固定化されるポリマーの状態は特に限定されるものではなく、直鎖状のものでも良く、架橋状態のものでも良いが、温度に対する応答性を高めること、基材表面に高密度に固定化することを達成するには前者の直鎖状のものが好ましい。
【0030】
本発明で得られる温度応答性細胞培養用ビーズに対して、使用される細胞、その入手先、作製方法は特に限定されるものではない。本発明の温度応答性細胞培養用ビーズを用いて培養することができる細胞は、例えば、動物、昆虫、植物等の細胞、細菌類が挙げられる。特に、動物細胞の由来として、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、ヌードマウス、マウス、モルモット、ブタ、ヒツジ、チャイニーズハムスター、ウシ、マーモセット、アフリカミドリザル等が挙げられるが特に限定されるものではない。また、本発明で用いる培地は、特に限定されないが、例えば、動物細胞を培養する培地であれば、無血清培地、血清含有培地等が挙げられる。そのような培地は、さらにレチノイン酸、アスコルビン酸等の分化誘導物質を添加しても良い。基材表面への播種密度は当該技術分野における常法に従えば良く特に限定されるものではない。
【0031】
また、本発明の温度応答性細胞培養用ビーズであれば、培養基材の温度を培養基材上の被覆ポリマーの上限臨界溶解温度以上若しくは下限臨界溶解温度以下にすることによって培養細胞を酵素処理なく剥離させることができる。その際、培養液中において行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。細胞をより早く、より高効率に剥離、回収する目的で、基材を軽くたたいたり、ゆらしたりする方法、更にはピペットを用いて培地を撹拌する方法等を単独で、あるいは併用して用いても良い。
【0032】
本発明に記載される温度応答性細胞培養用ビーズを利用することで、各組織から得られた細胞を効率良く培養できるようになる。この培養方法を利用すれば、温度を変えるだけで損傷なく、効率良く剥離することができるようになる。従来、こうした作業には手間と作業者の技術を必要としていたが、本発明であればその必要がなくなり、細胞の大量処理ができるようになる。本発明では、このような培養基材表面をリビングラジカル重合法を利用することによって作製されることを明らかにしている。また、本発明であれば、培養基材表面を簡便に精密に設計でき、上述したように、続けて分子鎖末端に対して反応を続ければ簡便に官能基を入れられ、細胞培養に極めて有利である。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
[実施例1、2]
【0034】
(カチオン性温度応答性ポリマー修飾ビーズの調製)
カチオン性温度応答性ポリマー修飾ビーズを調製する際のモノマー、触媒等の仕込み量を図1にまとめる。モノマー(N−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm) / ブチルメタクリルアミド(BMA )/ 4級アミノ基化ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAAm-Q) = 89 / 5 / 6(IB5DQ6ビーズ、実施例1)、IPAAm / tBAAm / DMAPAAm-Q = 65 / 25 / 10(ItB25DQ10ビーズ、実施例2))をイソプロパノールに各濃度で溶解し(0.1, 0.5, 1, 2 mol/L)、この溶液を30分間撹拌しながら窒素バブリングした。この溶液にCuCl、CuCl2、Me6TRENを加え、撹拌することで銅触媒の錯体形成を行った。この反応溶液とポリスチレンビーズ(粒径100μm、非多孔質粒子)を窒素を封入したグローブバッグ中で混合し、25°Cで16時間反応を行った。反応後、溶液を大気中に開放することで停止した。その後、調製したビーズをメタノール、50 mM EDTA溶液中で振とう後、上清を取り除く操作を繰り返すことで未反応モノマーならびに銅触媒を精製した。さらに同様の操作を純水(Mili-Q水)中で繰り返すことによりEDTAの除去を行った。得られたビーズを吸引濾過によって回収し、減圧乾燥することで目的とするポリマー修飾ビーズを得た。
【0035】
(細胞培養)
乾燥した各ビーズをPBS溶液中に分散させ、オートクレーブ滅菌をおこなった。その後、血球計算盤上に0.5 μl滴下し、ビーズ濃度を計算した。Hydrocell (35 mmφ)にビーズを1×104 beads/ml、CHO細胞を100 cells/beadとなるように加え、37°Cで培養を行った。24時間培養後、培養液をチューブに移し、培養液を2 ml加え、10分間静置した後、上澄みを捨てることで、未接着の浮遊細胞および細胞凝集塊を除いた。その後、20°Cのインキュベーターに移し、ピペッティングの後、温度低下にともなう細胞の脱着挙動を位相差顕微鏡により観察した。また0.02%EDTA溶液中で低温処理を行った際の細胞脱着実験を行い、細胞脱着挙動の比較を顕微鏡観察により行った。
【0036】
(温度応答性ビーズからの細胞回収)
温度応答性ビーズからの細胞回収は、24時間培養後、培養液をチューブに移し、培養液を2 mL加え、10分間静置した後、上澄みを捨てることで、未接着の浮遊細胞および細胞凝集塊を除いた。さらにセルストレーナー(メッシュサイズ40 μm)で浮遊細胞をろ過し、ろ物を培地2 mL中で再分散させた。その後、20°Cのインキュベーターで2時間インキュベートし、ピペッティングの後、セルストレーナー(メッシュサイズ40 μm)で脱着した細胞をろ過し、血球計算盤を用いて細胞数を計測した。また対照実験として、0.02%EDTA溶液中で低温処理を行った際の細胞脱着数、ならびにトリプシン−EDTA溶液のみにより回収した細胞数を計測した。
【0037】
(結果)
各細胞培養用ビーズにおいて培養中にビーズ同士の凝集は認められなかった。これらの細胞培養用ビーズは本発明の目的を満たしていることが分かった。各ビーズ上の細胞の位相差顕微鏡像を図2、3に示す。IB5DQ6ビーズでは、モノマー濃度が0.1, 0.5 mol/Lのビーズで細胞の接着が観察された。温度を20℃に低下した際、0.1 mol/Lのビーズでは細胞脱着が観察されなかったものの、0.5 mol/Lのビーズでは一部の細胞が脱着し、さらにピペッティング処理またはEDTA溶液中で低温処理をすることにより細胞の脱着が促進された。しかし、一部の細胞は接着したままだった。ItB25DQ10ビーズでは、モノマー濃度が1 mol/L以下のビーズで細胞の接着が観察された。また、0.5, 1 mol/Lのビーズでは低温処理により一部の細胞が脱着し、さらにピペッティングによりほぼすべての細胞が脱着した。ItB25DQ10ビーズが温度応答性ビーズとして特に好ましいことがわかる。このItB25DQ10ビーズを用いて、20℃への温度低下により脱着した細胞を定量的に解析した(図4)。図4に示した通り、1 mol/Lのビーズで温度低下+EDTA溶液処理により回収した細胞数は、トリプシン処理で回収した細胞数とほぼ同等であった。よって、モノマー濃度1 mol/Lで調製したItB25DQ10ビーズを用いることにより、温度変化によりほぼ100%細胞回収することができる、温度応答性ビーズ培養システムができることが分かる。
【比較例1】
【0038】
実施例1において、温度応答性ポリマー修飾ビーズを調製する際、モノマーの仕込みを(IPAAm / BMA = 92 / 8)として電荷を有さない細胞培養用ビーズを作製した。その後、実施例1と同様に細胞を培養したところ、細胞培養中に細胞培養用ビーズが凝集することが分かり、本発明として好ましくないものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に記載される温度応答性細胞培養基材を利用することで、各組織から得られた細胞を大量に効率良く培養できるようになる。この培養方法を利用すれば、温度を変えるだけで損傷なく、かつ効率良く培養細胞を剥離することができる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2016年7月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が1.2以下の材質からなる粒体表面に、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーが固定化され、温度変化により細胞を剥離させることができる、温度応答性細胞培養用ビーズ。
【請求項2】
電荷を有するポリマーが、ポリアルキルアクリルアミドの共重合物である、請求項1記載の温度応答性細胞培養用ビーズ。
【請求項3】
ポリアルキルアクリルアミドが、ポリ−(N−イソプロピルアクリルアミド)、及び/またはポリ−(N,N−ジエチルアクリルアミド)である、請求項1、2のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズ。
【請求項4】
電荷がカチオンである、請求項1〜3のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズ。
【請求項5】
ビーズがポリスチレン製粒子、ポリスチレン製細片である、請求項1〜4のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズ。
【請求項6】
イソプロピルアルコールを溶媒として、ビーズ表面の原子移動ラジカル重合開始剤から重合触媒下で原子移動ラジカル法により、電荷を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを成長反応させることを特徴とする、温度変化により細胞を剥離させることができる、温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法。
【請求項7】
原子移動ラジカル重合開始剤が、ビーズ表面に存在するクロロメチル基である、請求項6記載の温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法。
【請求項8】
原子移動ラジカル重合開始剤が0.08分子鎖/nm以上の割合で高密度に固定化されていることを特徴とする請求項6、7のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法。
【請求項9】
重合触媒が、ハロゲン化銅として塩化銅、リガンド錯体としてトリス(2−(ジメチルアミノ)エチル)アミンである、請求項6〜8のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法。
【請求項10】
ビーズ表面の電荷を有するポリマー固定化量が0.8〜10.0mg/mとなる、請求項6〜9のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項記載の温度応答性細胞培養用ビーズを利用した、細胞培養方法。