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特開2017-121757成形用金型およびこれを用いた発泡成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-121757(P2017-121757A)
(43)【公開日】2017年7月13日
(54)【発明の名称】成形用金型およびこれを用いた発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20170616BHJP
【FI】
   B29C67/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-2154(P2016-2154)
(22)【出願日】2016年1月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(74)【代理人】
【識別番号】100160668
【弁理士】
【氏名又は名称】美馬 保彦
(72)【発明者】
【氏名】廣田 徹治
【テーマコード(参考)】
4F212
【Fターム(参考)】
4F212AG20
4F212UA01
4F212UB01
4F212UK02
4F212UK09
4F212UL01
(57)【要約】
【課題】異なる形状の発泡成形体ごとに、その形状に応じた成形用金型の部品を管理および作製することなく、安価に複数の形状の発泡成形体を簡単に製造することができる成形用金型を提供する。
【解決手段】予備発泡粒子が充填されたキャビティ6内に蒸気を供給することにより、予備発泡粒子を発泡させて、発泡成形体を成形する成形用金型4である。成形用金型4は、キャビティ6を形成する成形用金型4の成形面4aを有した複数の柱状の駒体41、41、…を有している。各駒体41は、発泡成形体の形状に応じた成形面4aを形成するように移動自在となっている。成形用金型4は、移動させた各駒体41の位置を保持する保持機構の一つとして、押さえプレート43とボルト45を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備発泡粒子が充填されたキャビティ内に蒸気を供給することにより、前記予備発泡粒子を発泡させて、発泡成形体を成形する成形用金型であって、
前記成形用金型は、前記キャビティを形成する前記成形用金型の成形面を有した複数の柱状の駒体を有しており、
前記各駒体は、前記発泡成形体の形状に応じた前記成形面を形成するように移動自在となっており、
前記成形用金型は、移動させた前記各駒体の位置を保持する保持機構を備えていることを特徴とする成形用金型。
【請求項2】
前記駒体同士の間には、蒸気を前記キャビティ内に供給する隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成形用金型。
【請求項3】
前記駒体の側面には、隣接する前記駒体に係合する凸部または凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の成形用金型。
【請求項4】
前記成形用金型は、前記移動自在に複数の駒体を収容する枠体を備えており、
前記保持機構は、前記複数の駒体の位置を保持するように、前記枠体に収容された状態の前記複数の駒体を、その周りから押圧する機構であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形用金型。
【請求項5】
前記保持機構は、前記発泡成形体の形状に応じて前記各駒体を移動させ、前記各駒体の位置を保持するように、前記各駒体に取り付けられたアクチュエータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形用金型。
【請求項6】
請求項4に記載の成形用金型を用いた発泡成形体の製造方法であって、
前記発泡成形体の形状に応じた成形面を形成するように、前記各駒体を移動させる工程と、
移動させた前記各駒体の位置を前記保持機構で保持する工程と、
前記各駒体を保持した状態の成形型を用いて、前記発泡成形体を成形する工程と、を含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項7】
前記各駒体を移動させる工程において、前記成形する発泡成形体の形状に応じた型材を、前記複数の駒体に当接させることにより、前記各駒体を移動させることを特徴とする請求項6に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載の成形用金型を用いた発泡成形体の製造方法であって、
前記発泡成形体の形状に応じた成形面を形成するように、前記アクチュエータにより、前記各駒体を移動させた後、移動させた前記各駒体の位置を保持する工程と、
前記各駒体を保持した状態の成形型を用いて、前記発泡成形体を成形する工程と、を含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体を成形する成形用金型およびこれを用いた発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発泡成形体を製造する際には、樹脂粒子を予備発泡し、得られた予備発泡粒子を成形用金型のキャビティに充填する。次に、キャビティ内の予備発泡粒子を蒸気で加熱して再度発泡させて発泡成形体を成形し、成形された発泡成形体を冷却水等を用いて冷却した後、これを成形用金型から離型する。
【0003】
このような成形用金型として、例えば、特許文献1には、1つの成形用金型を用いて、異なる形状の発泡成形体を成形する成形用金型が提案されている。この成形用金型は、マスターフレームと、マスターフレームに取付けられた蒸気吹き出しプレートと、蒸気吹き出しプレートに着脱自在に取り付けられ、異なる形状の複数種の発泡成形体に応じた形状の複数のアタッチメントプレートと、を備えている。
【0004】
この成形用金型によれば、発泡成形体を成形する際に、発泡成形体に応じた形状のキャビティを形成するアタッチメントプレートを複数種のアタッチメントから選択し、選択したアタッチメントを蒸気吹き出しプレートに取付けて、発泡成形体を成形することができる。このような結果、発泡成形体の形状や厚さに変更があっても、発泡成形体に応じたアタッチメントプレートを交換するだけで、それに対処することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−228246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の成形用金型では、異なる形状の発泡成形体ごとに、その形状に応じたアタッチメントを、複数種管理せねばならず、新たな形状の発泡成形体を成形する際には、新たにアタッチメントを作製する必要があった。これにより、成形用金型の部品(アタッチメント)に対する管理コストおよび作製コストが多大に発生するおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、異なる形状の発泡成形体ごとに、その形状に応じた成形用金型の部品を管理および作製することなく、安価に複数の形状の発泡成形体を簡単に製造することができる成形用金型およびこれを用いた発泡成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を鑑みて、本発明に係る成形用金型は、予備発泡粒子が充填されたキャビティ内に蒸気を供給することにより、前記予備発泡粒子を発泡させて、発泡成形体を成形する成形用金型であって、前記成形用金型は、前記キャビティを形成する前記成形用金型の成形面を有した複数の柱状の駒体を有しており、前記各駒体は、前記発泡成形体の形状に応じた前記成形面を形成するように移動自在となっており、前記成形用金型は、移動させた前記各駒体の位置を保持する保持機構を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る成形用金型によれば、発泡成形体の形状に応じた成形面を形成するように、各駒体を移動させた後、移動させた各駒体の位置を保持機構で保持することができる。これにより、異なる形状の発泡成形体ごとに、その形状に応じた成形用金型の部品を管理および作製することなく、駒体の位置を調節することで、異なる形状の発泡成形体を安価にかつ簡単に製造することができる。
【0010】
より好ましい態様としては、前記駒体同士の間には、蒸気を前記キャビティ内に供給する隙間が形成されている。この態様によれば、駒体同士の隙間が形成されているため、各駒体の移動後も、駒体同士の隙間からキャビティ内に、安定して蒸気を供給することができる。
【0011】
さらに好ましい態様としては、前記駒体の側面には、前記隣接する駒体に係合する凸部または凹部が形成されている。この態様によれば、駒体の側面に形成された凸部または凹部により、駒体同士を相互に係合することができる。これにより、駒体同士を移動させた際に、駒体同士が分離することを抑制することができる。
【0012】
さらに、駒体の側面に形成された凸部または凹部により、駒体は、凹凸形状を有することになるので、蒸気の熱を、駒体の成形面からキャビティ内に効率良く伝達することができる。また、成形後の発泡成形体に残存する熱を効率良く放熱することができる。
【0013】
さらに好ましい態様として、前記成形用金型は、前記移動自在に複数の駒体を収容する枠体を備えており、前記保持機構は、前記複数の駒体の位置を保持するように、前記枠体に収容された状態の前記複数の駒体を、その周りから押圧する機構である。
【0014】
この態様によれば、発泡成形体を製造する際に、まず、発泡成形体の形状に応じた成形面を形成するように、各駒体にアクチュエータ等を当接させることにより、各駒体を移動させる。次に、移動させた各駒体の位置を前記保持機構で保持する。具体的には、枠体に収容された状態の複数の駒体を、その周りから押圧することで保持することができる。これにより、成形用金型に、様々な形状を有した成形面を簡単に形成することができる。このようにして、各駒体を保持した状態の成形型を用いて、様々な形状の発泡成形体を簡単に成形することができる。
【0015】
ここで、成形する発泡成形体の形状に応じた型材を、複数の駒体に当接させることにより、各駒体を移動させ、型材が当接した状態の各駒体の位置を押圧機構で保持すれば、精度良い成形面を有した成形用金型を簡単に得ることができる。
【0016】
別の好ましい態様として、前記保持機構は、前記発泡成形体の形状に応じて前記各駒体を移動させ、前記各駒体の位置を保持するように、前記各駒体に取り付けられたアクチュエータである。
【0017】
この態様によれば、発泡成形体の形状に応じた成形面を形成するように、アクチュエータにより、各駒体を移動させた後、移動させた前記各駒体の位置をアクチュエータで保持することができる。この場合も同様に、成形用金型に、様々な形状を有した成形面を簡単に形成し、様々な形状の発泡成形体を簡単に成形することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、異なる形状の発泡成形体ごとに、その形状に応じた成形用金型の部品を管理および作製することなく、異なる形状の発泡成形体を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る成形用金型を備えた成形装置の模式図である。
図2図1に示す移動型の成形用金型の平面図である。
図3図2に示す成形用金型のA−A矢視断面図である。
図4】(a)は、図1に示す駒体の模式的斜視図であり、(b)は、(a)に示す駒体の変形例に係る駒体の模式的斜視図である。
図5図3に示す成形用金型の駒体の位置を調整する方法を説明するための図であり、(a)は、調整前の成形用金型の断面図であり、(b)は、(a)に示す状態から、駒体を移動させた状態の成形用金型の断面図であり、(c)は、(b)に示す状態の駒体を保持した状態の成形用金型の断面図である。
図6図3に示す成形用金型の駒体の位置を調節する別の方法を説明するための図であり、(a)は、駒体を移動させた状態の成形用金型の断面図であり、(b)は、(a)に示す状態の駒体を保持した状態の成形用金型の断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る成形用金型を備えた成形装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の2つの実施形態に係る成形用金型について、図1図7を参照しながら、その詳細な説明を詳述する。
【0021】
〔第1実施形態〕
1.成形装置1について
図1は、本発明の第1実施形態に係る成形用金型4,5を備えた成形装置1の模式図である。
本実施形態に係る成形装置1は、成形型10を備えており、成形型10は、雌型となる移動型2と雄型となる固定型3とを備えている。成形型10は、固定型3に対して移動型2が接近・離間することで型閉め・型開きが可能となっている。
【0022】
移動型2は、キャビティ6を形成する成形面4aを有した成形用金型4と、成形用金型4を取り付けるフレーム21と、ブラケット側バックプレート22とを備えている。移動型2の内部には蒸気室23が形成されている。
【0023】
同様に、固定型3にも、キャビティ6を形成する成形面5aを有した成形用金型5と、成形用金型5を取り付けるフレーム31と、ダイプレート32とを備えている。移動型2と同様に、固定型3の内部にも蒸気室33が形成されている。
【0024】
フレーム21、31は、図1に示す型閉め状態において略長方体形状をなす成形型10の4つの側面を構成し、ブラケット側バックプレート22とダイプレート32とは、蒸気室23、33を密閉するように、各フレーム21、31に取付けられている。成形用金型4、5との間には、図1に示す型閉め状態において、発泡成形体の外形に合致したキャビティ6が形成される。この状態で、キャビティ6と蒸気室23(33)とを仕切るように、成形用金型4(5)が形成される。
【0025】
移動型2の蒸気室23には、調圧蒸気弁24を介して蒸気供給管路が接続され、その対向位置にはドレン弁25を介してドレン管路が接続され、このドレン管路には、真空弁26を介して真空排気管路が接続されている。また、移動型2の蒸気室23には、冷却水弁27を介して冷却水供給管路が挿入され、圧力計28が接続されている。
【0026】
同様に、固定型3の蒸気室33には、調圧蒸気弁34を介して蒸気供給管路が接続され、その対向位置にはドレン弁35を介してドレン管路が接続され、このドレン管路には、真空弁36を介して真空排気管路が接続されている。また、固定型3の蒸気室33には、冷却水弁37を介して冷却水供給管路が挿入され、圧力計38が接続されている。なお、図示していないが、成形型10には、キャビティ6内に予備発泡粒子を充填するための樹脂供給管路が接続された予備発泡粒子供給口や成形を終えた発泡成形体を成形型10から押し出すためのピンが設けられている。
【0027】
2.成形用金型4,5について
ここで、雌型である移動型2の成形用金型4と、雄型である固定型3の成形用金型5とは、形状は異なるが、基本的には、同じ機能を有した部材で構成されているため、以下に、移動型2の成形用金型4を説明し、固定型3の成形用金型5の詳細な説明を省略する。
【0028】
図2は、図1に示す移動型2の成形用金型4の平面図であり、図3は、図2に示す成形用金型4のA−A矢視断面図である。図4(a)は、図1に示す駒体41の模式的斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示す駒体41の変形例に係る駒体41Aの模式的斜視図である。
【0029】
図2および図3に示すように、本実施形態に係る成形用金型4は、キャビティ6を形成する成形用金型4の成形面4aを有した複数の柱状の駒体41、41、…と、複数の駒体41、41、…を収容する枠体42と、を備えている。図3および図4(a)に示すように、各駒体41、41、…は、発泡成形体の形状に応じた成形面4aを形成するように、キャビティ6が形成される方向(図では上下方向)に移動自在となっている。
【0030】
さらに、成形用金型4は、枠体42内で移動させた各駒体41の位置を保持する保持機構として、押さえプレート43とボルト(押圧部材)45とを備えている。本実施形態では、押さえプレート43とボルト45とは、複数の駒体41、41、…の位置を保持するように、枠体42に収容された状態の複数の駒体41、41、…を、その周りから押圧する部材である。
【0031】
具体的には、本実施形態では、図2に示すように、枠体42内において、4つの押さえプレート43が、複数の駒体41、41、…の周りに配置されている。枠体42には、ボルト45を螺着させる貫通孔42aが形成されている。これにより、枠体42にボルト45を螺着させてねじ込んだ状態で、押さえプレート43を介して複数の駒体41、41、…を、ボルト45で枠体42の内方に押圧することができる。これにより、複数の駒体41、41、…の位置が、枠体42の内部において保持(固定)される。
【0032】
本実施形態では、複数の駒体41、41、…を押圧する部材の一例として、ボルトを用いたが、押さえプレート43を介して複数の駒体41、41、…を押圧することができるのであれば、ネジ等その他の部材であってもよい。
【0033】
さらに、駒体41、41同士の間には、蒸気をキャビティ6内に供給する隙間Sが形成されている。本実施形態では、駒体41、41の移動する方向に沿って隙間Sが形成されているため、各駒体41、41の移動後も、駒体41、41同士の隙間Sを介して、蒸気室23からキャビティ6に、安定して蒸気を供給することができる。
【0034】
図4(a)に示すように、本実施形態では、駒体41同士が当接する側面は平面状であるが、例えば、図4(b)に示すように、駒体41Aの側面に、隣接する駒体41A、41A同士を相互に係合させる凸部41aまたは凹部41bが形成されていてもよい。
【0035】
これにより、駒体41Aの側面に形成された凸部41aまたは凹部41bにより、駒体41A同士を相互に係合することができる。これにより、駒体41A、41A同士を移動させた際に、駒体41A、41A同士が分離することを抑制することができる。
【0036】
さらに、駒体41Aの側面に形成された凸部41aまたは凹部41bにより、駒体41Aは、凹凸形状を有することになるので、蒸気の熱を、駒体41Aの成形面4aからキャビティ6内に効率良く伝達することができる。また、成形後の発泡成形体に残存する熱を効率良く放熱することができる。
【0037】
3.成形装置1を用いた発泡成形体の製造方法について
以下に、図1図3を再度参照しつつ、図5(a)〜(c)を用いて、本実施形態に係る成形装置1を用いた発泡成形体の製造方法を説明する。
【0038】
図5は、図3に示す成形用金型4の駒体41の位置を調整する方法を説明するための図である。図5(a)は、調整前の成形用金型4の断面図であり、図5(b)は、図5(a)に示す状態から、駒体41を移動させた状態の成形用金型4の断面図であり、図5(c)は、図5(b)に示す状態の駒体41を保持した状態の成形用金型4の断面図である。
【0039】
図5(a)に示すように、まず、調整前の成形用金型4を準備し、成形面4aと反対側から各駒体41に当接するように、アクチュエータ7を配置する。この状態では、駒体41は、成形用金型4の成形面4aが平面となるように配置されている。また、枠体42にはボルト45は取り付けられておらず、各駒体41は、上下方向に移動自在となっている。
【0040】
一方、アクチュエータ7には、駒体41の個数に応じて複数の調整用のロッド71が取り付けられ、各ロッド71は、各駒体41に当接している。アクチュエータ本体72には、モータ(図視せず)が配置されており、モータを駆動制御(具体的にはNC制御)することにより、ロッド71の先端部は、上下方向に移動可能となっている。
【0041】
次に、図5(b)に示すように、アクチュエータ7のモータをNC制御し、ロッド71の先端を移動させる。具体的には、アクチュエータ7のロッド71を介して、発泡成形体の形状に応じた成形面4aを形成するように、各駒体41を所定量、上下方向に移動させる。この作業が、本発明でいう駒体を移動させる工程に相当する。
【0042】
次に、移動させた各駒体41の位置を、保持機構である押さえプレート43とボルト45とで、保持する。具体的には、図5(b)および図5(c)に示すように、枠体42に形成された貫通孔42aにボルト45を螺着させ、ボルト45を締め込むことにより、押さえプレート43を介して駒体41を枠体42の内方へ押圧する。この作業が、本発明でいう、保持機構で保持する工程に相当する。これにより、上下方向に移動自在な駒体41を拘束し、図3に示すような成形用金型4を得ることができる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、発泡成形体の形状に応じた成形面4aを形成するように、アクチュエータ7で各駒体41を移動させた後、移動させた各駒体41の位置を保持することができる。この結果、異なる形状の発泡成形体ごとに、その形状に応じた成形用金型4の部品を管理および作製することなく、駒体41、41の位置を調節することで、異なる形状の発泡成形体を簡単に製造することができる。
【0044】
図5(a)〜図5(c)に示す方法では、成形用金型の駒体の位置の調整を、アクチュエータ7を用いて行ったが、例えば、図6(a)、(b)に示す方法により、駒体を調整してもよい。
【0045】
図6は、図3に示す成形用金型4の駒体41の位置を調節する別の方法を説明するための図であり、図6(a)は、駒体41を移動させた状態の成形用金型4の断面図であり、図6(b)は、図6(a)に示す状態の駒体41を保持した状態の成形用金型4の断面図である。
【0046】
具体的には、図6(a)に示すように、成形する発泡成形体の形状に応じた型材9を準備し、型材9を枠体42内に押し込むことにより、型材9を、複数の駒体41、41、…に当接させる。これにより、発泡成形体の形状に応じた成形面4aを形成するように、各駒体41を移動させることができる。このような型材9は、3Dプリンタなどの付加製造法により、簡単に製造することができる。
【0047】
次に、図6(a)、(b)に示すように、移動させた各駒体41の位置を、保持機構である押さえプレート43とボルト45とで、保持する。このようにして、成形する発泡成形体の形状に応じた型材9を、複数の駒体41、41、…に当接させることにより、各駒体41を移動させ、型材9が当接した状態の各駒体の位置を保持すれば、精度良い成形面4aを有した成形用金型4を簡単に得ることができる。
【0048】
同様に、図5(a)〜(c)または図6(a)、(b)で説明したいずれかの方法で、固定型3の成形用金型5も、発泡成形体の形状に応じた成形面5aが形成されるように、各駒体を移動させた後、駒体を保持する。得られた、成形用金型4、5を成形装置1に取り付ける。
【0049】
次に、移動型2を固定型3に対して接近させることにより、図1に示すように成形装置1を型閉めする。その後、予備発泡粒子供給口(図示せず)から、成形用金型4、5により形成された成形型10のキャビティ6内に予備発泡粒子を充填する。
【0050】
ここで、予備発泡粒子は、発泡剤を含有させた合成樹脂粒子を予備発泡させて得られるものであり、この合成樹脂粒子を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等を挙げることができ、強度と成形性の良さからポリスチレン系樹脂が好ましい。
【0051】
次に、成形型10のキャビティ6内に予備発泡粒子を充填した後、調圧蒸気弁24、34、ドレン弁25、35を開き、成形型10に蒸気を流し、成形用金型4、5を加熱する。
【0052】
次に、移動型2の調圧蒸気弁24と固定型3のドレン弁35を開いた状態を維持し、固定型3の調圧蒸気弁34と移動型2のドレン弁25を閉じる。これにより、移動型2から固定型3に向かってキャビティ6内に蒸気を流す。
【0053】
次に、固定型の調圧蒸気弁34と移動型2のドレン弁25を開き、移動型2の調圧蒸気弁24と固定型3のドレン弁35とを閉じる。これにより、移動型2から固定型3に向かってキャビティ6内に蒸気を流す。このようにして、キャビティ6に充填された予備発泡粒子が発泡し、発泡成形体を成形することができる。
【0054】
次に、移動型2の調圧蒸気弁24と固定型の調圧蒸気弁34とを開き、移動型2のドレン弁25と固定型3のドレン弁35とを閉じて、成形用金型4、5を両側から加熱する。その後、移動型2の調圧蒸気弁24と固定型の調圧蒸気弁34を閉じて、成形用金型4、5内を保温する。
【0055】
その後、冷却水弁27、37を開いて冷却水を成形装置1内に導入し、成形用金型4、5を冷却する。冷却後、ドレン弁25、35を閉じ、真空弁26、36を開くことによって成形型10内を真空排気して、成形用金型4、5を放冷する。放冷後、固定型3に対して移動型2を離間する方向に、移動型2を移動させて型開きし、型内発泡成形により得られた発泡成形体を取り出す。これら一連の作業が、本発明でいう発泡成形体を成形する工程に相当する。
【0056】
〔第2実施形態〕
図7は、本発明の第2実施形態に係る成形用金型4,5を備えた成形装置1Aの模式図である。第2実施形態に係る成形用金型4、5が、第1実施形態のものと相違する点は、押さえプレートとボルトの代わりに、保持機構にアクチュエータ8を用いた点である。
【0057】
なお、第1実施形態と同じ部材には、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。また、図7では、便宜上、移動型2および固定型3に取付けられた、冷却水弁、冷却水供給管路および圧力計は図示しせず、省略している。
【0058】
本実施形態では、図7に示すように、成形装置1A内において、発泡成形体の形状に応じて各駒体41を移動させ、各駒体41の位置を保持するように、アクチュエータ8が各駒体41に取り付けられている。
【0059】
具体的には、アクチュエータ8は、図5で示したものと、同様の機構である。発泡成形体を成形する際には、アクチュエータ本体82のモータ(図示せず)を駆動制御(具体的にはNC制御)することにより、発泡成形体の形状に応じた量で、成形用金型4の各駒体41を移動させる。各駒体41は、ロッド81に取付けられているので、移動させた各駒体41の位置を保持することができる。この作業が、本発明でいう各駒体の位置を保持する工程に相当する。成形用金型5も同様であるので、アクチュエータ8により、発泡成形体の形状に応じた成形面5aを形成する。
【0060】
このようにして、成形用金型4,5を成形装置1Aから取り外すことなく、発泡成形体の形状に応じた成形面4a,5aを形成するように、アクチュエータ8により、各駒体を移動させた後、移動させた各駒体の位置を保持することができる。この場合も同様に、成形用金型4,5に、様々な形状を有した成形面4a,5aを簡単に形成し、様々な形状の発泡成形体を簡単に成形することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0062】
1,1A:成形装置、2:移動型、3:固定型、4,5:成形用金型、4a:成形面、6:キャビティ、7,8:アクチュエータ、9:型材、10:成形型、21:フレーム、22:ブラケット側バックプレート、23,33:蒸気室、24,34:調圧蒸気弁、25,35:ドレン弁、27,37:冷却水弁、28,38:圧力計、31:フレーム、32:ダイプレート、41,41A:駒体、41a:凸部、41b:凹部、42:枠体、42a:貫通孔、43:押さえプレート、45:ボルト、71:ロッド、72:アクチュエータ本体、81:ロッド、82:アクチュエータ本体、S:隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7