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特開2017-122029成長速度が遅くアスペクト比が低い水酸化マグネシウム粒子およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-122029(P2017-122029A)
(43)【公開日】2017年7月13日
(54)【発明の名称】成長速度が遅くアスペクト比が低い水酸化マグネシウム粒子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 5/22 20060101AFI20170616BHJP
   C01F 5/08 20060101ALI20170616BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170616BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20170616BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20170616BHJP
   C09C 1/02 20060101ALI20170616BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20170616BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20170616BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20170616BHJP
   C09C 3/12 20060101ALI20170616BHJP
【FI】
   C01F5/22
   C01F5/08
   C08L101/00
   C08K3/22
   C08K9/04
   C09C1/02
   C09C3/06
   C09C3/08
   C09C3/10
   C09C3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-1903(P2016-1903)
(22)【出願日】2016年1月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000162489
【氏名又は名称】協和化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】王 興東
(72)【発明者】
【氏名】岩本 禎士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克廣
(72)【発明者】
【氏名】六車 秀士
【テーマコード(参考)】
4G076
4J002
4J037
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA10
4G076AB04
4G076AB06
4G076BA12
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4G076BA15
4G076BA39
4G076BA43
4G076BB08
4G076BC02
4G076BC07
4G076BC08
4G076BC09
4G076BD02
4G076BD04
4G076BD06
4G076BE12
4G076BF05
4G076BF06
4G076CA04
4G076CA22
4G076CA26
4G076CA27
4G076CA28
4G076CA36
4G076DA01
4G076DA02
4G076DA05
4G076DA14
4J002AC071
4J002AC081
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB071
4J002BB121
4J002BB151
4J002BB171
4J002BB181
4J002BB241
4J002BC031
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4J002BD121
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4J002CH001
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4J037CA24
4J037CB09
4J037CB22
4J037CB23
4J037DD05
4J037EE02
4J037EE26
4J037EE33
4J037EE35
4J037FF15
4J037FF23
(57)【要約】
【課題】樹脂やゴムに配合する際の分散性に優れ、高充填することができる水酸化マグネシウム粒子および酸化マグネシウム粒子ならびにこれらの製造方法を提供することにある。
【解決手段】合成反応後の水酸化マグネシウム粒子を成長させるための熱処理工程において、圧力、温度および時間の異なる二段階の製造工程を設けることにより、粒子を構成する結晶子の成長を制御し、その結果、丸みをおびた多角形状で且つアスペクト比が低く、均一な粒子径を有し、嵩密度が低い、水酸化マグネシウム粒子を得た。本発明はこれらの粒子とその製造方法に係るものである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体からの結晶子サイズの平均成長率が0.5〜200.0%である水酸化マグネシウム粒子。
【請求項2】
アスペクト比が1〜6である請求項1に記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項3】
嵩密度が1.5〜3.0ml/gである請求項1および2のいずれかに記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項4】
耐酸性試験において溶出率が45〜60%である請求項1〜3のいずれかに記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項5】
粒子の表面が、0.01〜15.0重量部の界面活性剤、高級脂肪酸類、高級脂肪酸アルカリ土類金属塩、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、リン酸エステル、シリコーンオイル、SiOおよびAlから選ばれた少なくとも一種の表面処理剤により表面処理されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項6】
合成樹脂100重量部に対し、請求項1〜5のいずれかに記載の水酸化マグネシウム粒子を0.5〜400重量部配合した樹脂組成物。
【請求項7】
水酸化マグネシウム粒子の製造方法であって、
可溶性マグネシウム塩の水溶液とアルカリ水溶液を0〜99℃に保って反応率50〜400mol%で反応させた後、第一の熱処理工程として、常圧条件下で0.0〜120℃に保ちながら1.0〜350時間維持して前駆体水酸化マグネシウムのスラリーを得る工程(a)、
工程(a)のスラリーを、第二の熱処理工程として、加圧条件下で115〜265℃に保ちながら0.5〜200時間熱処理して水酸化マグネシウムのスラリーを得る工程(b)、および
工程(b)のスラリーをろ過、水洗、乾燥させて、水酸化マグネシウム粒子を得る工程(c)
を含む、水酸化マグネシウム粒子の製造方法。
【請求項8】
水酸化マグネシウム粒子の製造方法であって、
工程(a)のスラリーを得た後、さらに
水酸化マグネシウムスラリーの固形分に対して質量基準で5〜100倍の脱イオン水により洗浄し、濾過して得られた水酸化マグネシウムケーキを脱イオン水および0.1〜6.0mol/Lの可溶性マグネシウム塩水溶液のいずれか一方に再懸濁して水酸化マグネシウムスラリーを得る工程(a’)、
を含む、請求項7に記載の水酸化マグネシウム粒子の製造方法。
【請求項9】
酸化マグネシウム粒子の製造方法であって、
請求項1〜5のいずれかに記載の水酸化マグネシウム粒子または請求項7および8のいずれかに記載の方法により得られる水酸化マグネシウム粒子を、大気雰囲気中で、400〜1800℃で焼成する工程(d)、
を含む、酸化マグネシウム粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前駆体水酸化マグネシウム粒子を熱処理した際の結晶子サイズの成長率が小さく、分散性に優れ、アスペクト比が低く、嵩密度が低い水酸化マグネシウム粒子およびその製造方法ならびに酸化マグネシウムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水酸化マグネシウム粒子は高分子材料の難燃剤、高機能性材料、蓄熱材料、紙のコーテイング剤等として広く利用されている。酸化マグネシウムはゴム等の受酸剤、樹脂のフィラーおよび触媒の担体などとして利用されている。いずれの用途においても、優れた性能を発揮させるためには水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムの粒子サイズが均一であり、高充填できる性質を有することが求められる。
【0003】
水酸化マグネシウムの微粒子を得る製造方法において、加圧条件下にて熱処理時間を短縮する従来の方法では、粒子を構成する結晶子の緻密性が不十分となり、角ばった形状で、嵩密度が高く、アスペクト比が高くなるため、充填性をさらに高めることが困難であった。
【0004】
特許文献1には樹脂やゴムに高充填でき、分散性に優れた六角柱状の水酸化マグネシウム粒子の製造方法が開示されている。この製造方法では、酸化マグネシウム粒子を粉砕し、再水和工程において有機酸を添加するものである。
【0005】
しかしながら、製造工程が複雑化するため製造コストが高くなり、微小で均一な粒子を得ることが困難になる。さらに、得られた水酸化マグネシウム粒子は結晶外形が、互いに平行な上下2面の六角形の基底面と、これらの基底面間に形成される外周6面の角柱面とからなる六角柱形状粒子、すなわち縁辺部は鋭い角度を有する角ばった形状であることから、樹脂やゴムに配合した際に分散性、耐酸性および充填性が必ずしも十分では無かった。また、角ばった形状が樹脂やゴムとの境界面に傷を与えやすく、結果として成形品の物性や耐久性に悪影響を及ぼすことが予想できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006‐306659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、樹脂やゴムに配合する際の分散性に優れ、高充填することができる水酸化マグネシウム粒子および酸化マグネシウム粒子ならびにこれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、合成反応後の水酸化マグネシウム粒子を成長させるための熱処理工程において、圧力、温度および時間の異なる二段階の製造工程を設けることにより、粒子を構成する結晶子の成長を制御し、その結果、丸みをおびた多角形状で且つアスペクト比が低く、均一な粒子径を有し、嵩密度が低い、水酸化マグネシウム粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二段階の熱処理工程を設けることで従来の製造方法では得られない特徴を有する水酸化マグネシウム粒子を得ることができる。第一の熱処理工程は低温かつ常圧条件下であるため、前駆体である水酸化マグネシウム粒子を構成する結晶子は緻密になる。そのため、高温かつ加圧条件下にて第二の熱処理を施した際にも結晶子サイズの成長率および成長速度はともに遅くなり、平均二次粒子径が均一で小さく、嵩密度が低い水酸化マグネシウム粒子を得ることができる。またこれらの特徴に加えて、得られる水酸化マグネシウム粒子はアスペクトが低く、丸みをおびた多角形状となるため、有機高分子材料や無機材料への用途において、均一に高充填することができ、その際の取り扱い性も良好となる。したがって、本発明の水酸化マグネシウム粒子を配合した樹脂組成物は耐酸性、熱伝導性、難燃性など、所望の特性を向上させることができる。また本発明の水酸化マグネシウム粒子の形状は丸みをおびているため、配合した粒子が樹脂との接触面に傷を与えにくく、得られる成形品は物性および耐久性に優れる。
【0010】
また、本発明の製造方法によれば、製造設備の大幅な複雑化を必要としないため、本発明の水酸化マグネシウム粒子を工業的に安価に、安全に、大量に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例4において反応後70℃で22時間処理をして得られた前駆体粒子の粒度分布図である。
図2】実施例4の水酸化マグネシウムの粒度分布図である。
図3】実施例4において反応後70℃で22時間処理をして得られた前駆体粒子のSEM写真(5万倍)である。
図4】実施例4の水酸化マグネシウムのSEM写真(5万倍)である。
図5】実施例8の水酸化マグネシウムのSEM写真(5万倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の水酸化マグネシウム粒子および酸化マグネシウム粒子について、好ましい実施形態に基づき詳述するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0013】
(結晶子サイズの平均成長率)
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、前駆体からの結晶子サイズの平均成長率が0.5〜200.0%であり、好ましい上限は190%であり、より好ましい上限は170%であり、好ましい下限は0.6%である。
【0014】
(嵩密度)
本発明の水酸化マグネシウム粒子の嵩密度は、1.5〜3.0ml/gであり、好ましい上限は2.9ml/gであり、より好ましい上限は2.8ml/gであり、好ましい下限は1.8ml/gであり、より好ましい下限は2.0ml/gである。
【0015】
(BET比表面積およびアスペクト比)
本発明の水酸化マグネシウム粒子のBET比表面積は0.2〜50m/gであり、好ましい上限は45m/gであり、より好ましい上限は40m/gであり、好ましい下限は0.3m/gであり、より好ましい下限は0.5m/gである。
本発明の水酸化マグネシウム粒子のアスペクト比は1〜6であり、好ましい上限は5であり、より好ましい上限は4である。
【0016】
(水酸化マグネシウムの平均粒子径)
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径MVが0.1〜1.5μmであり、好ましい上限は1.45μmであり、より好ましい上限1.40μmであり、好ましい下限は0.12μmであり、より好ましい下限は0.13μmである。
【0017】
(水酸化マグネシウムの純度、不純物)
本発明の水酸化マグネシウム粒子の純度は99.5%以上であり、好ましくは99.6%以上であり、より好ましくは99.7%以上である。
本発明の水酸化マグネシウム粒子に含まれるCr、Ni、Ti、Mn、Mo、Fe、Zn、Cd、Co、PbおよびZrの合計含有量は、金属元素換算で5〜110ppmであり、好ましい上限は60ppmであり、より好ましい上限は40ppmである。
また本発明の水酸化マグネシウム粒子に含まれる水溶性ナトリウム塩の含有量は、金属元素換算で300ppm以下である。
【0018】
(酸化マグネシウムの平均粒子径)
本発明の製造方法により得られる酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径MVが0.1〜1.5μmであり、好ましい上限は1.45μmであり、より好ましい上限は1.40μmであり、好ましい下限は0.12μmであり、より好ましい下限は0.13μmである。
【0019】
本発明の水酸化マグネシウム粒子の製造方法は、
可溶性マグネシウム塩の水溶液とアルカリ水溶液を0〜99℃に保って反応率50〜400mol%で反応させた後、第一の熱処理工程として、常圧条件下で0.0〜120℃に保ちながら1.0〜350時間維持して前駆体水酸化マグネシウムのスラリーを得る工程(a)、
工程(a)のスラリーを、第二の熱処理工程として、加圧条件下で115〜265℃に保ちながら0.5〜200時間熱処理して水酸化マグネシウムのスラリーを得る工程(b)、および
工程(b)のスラリーをろ過、水洗、乾燥させて、水酸化マグネシウム粒子を得る工程(c)
を含む。
【0020】
本発明の水酸化マグネシウム粒子の製造方法は、
工程(a)のスラリーを得た後、さらに
水酸化マグネシウムスラリーの固形分に対して質量基準で5〜100倍の脱イオン水により洗浄し、濾過して得られた水酸化マグネシウムケーキを脱イオン水および0.1〜6.0mol/Lの可溶性マグネシウム塩水溶液のいずれか一方に再懸濁して水酸化マグネシウムスラリーを得る工程(a’)、
を含む。
【0021】
本発明の酸化マグネシウム粒子の製造方法は、
本発明の水酸化マグネシウム粒子または本発明の製造方法により得られる水酸化マグネシウム粒子を、大気雰囲気中で、400〜1800℃で焼成する工程(d)、
を含む。
焼成温度の好ましい上限は1700℃であり、より好ましい上限は1600℃であり、好ましい下限は450℃であり、より好ましい下限は500℃である。
【0022】
(マグネシウム原料と濃度)
工程(a)において、本発明の水酸化マグネシウムのマグネシウム原料としては可溶性マグネシウム塩を用いることができ、好ましくは塩化マグネシウム、塩化マグネシウム2水和物、塩化マグネシウム6水和物、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム6水和物、酢酸マグネシウム、苦汁などが好適に挙げられる。
工程(a)において、本発明に用いる可溶性マグネシウム塩の濃度は、各原料が溶液中で析出しない範囲の濃度で用いることができる。塩化マグネシウム水溶液を用いた場合、その濃度は0.1〜5.7mol/Lであり、好ましい上限は5.5mol/Lであり、より好ましい上限は5.0mol/Lであり、好ましい下限は0.5mol/Lであり、より好ましい下限は1.0mol/Lである。硫酸マグネシウム水溶液を用いた場合、その濃度は0.1〜4.6mol/Lであり、好ましい上限は4.4mol/Lであり、より好ましい上限は4.2mol/Lであり、好ましい下限は0.5mol/Lであり、より好ましい下限は1.0mol/Lである。硝酸マグネシウム水溶液を用いた場合、その濃度は0.1〜6.0mol/Lであり、好ましい上限は5.0mol/Lであり、より好ましい上限は4.5mol/Lであり、好ましい下限は0.5mol/Lであり、より好ましい下限は1.0mol/Lである。酢酸マグネシウム水溶液を用いた場合、その濃度は0.1〜8.0mol/Lであり、好ましい上限は7.0mol/Lであり、より好ましい上限は6.0mol/Lであり、好ましい下限は0.5mol/Lであり、より好ましい下限は1.0mol/Lである。
【0023】
(アルカリ原料と濃度)
工程(a)において、本発明に水酸化マグネシウムのアルカリ原料としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアンモニアなどの水溶液が好適に挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は1.0〜18.0Nであり、好ましい上限は16.0Nであり、より好ましい上限は12.0Nであり、好ましい下限は1.5Nであり、より好ましい下限は2.0Nである。
【0024】
(反応温度)
工程(a)において、可溶性マグネシウム塩の水溶液とアルカリ水溶液は0〜99℃に保って混合し、反応させる。混合温度の好ましい上限は90℃であり、より好ましい上限は75℃であり、好ましい下限は20℃であり、より好ましい下限は35℃である。
【0025】
(反応率)
工程(a)において、可溶性マグネシウム塩の水溶液とアルカリ水溶液の反応率はマグネシウムとして、50〜400mol%であり、好ましい上限は350mol%であり、より好ましい上限は200mol%であり、好ましい下限は60mol%であり、より好ましい下限は80mol%である。なお、反応率は、Mg2+イオン:OHイオン=1:2の理論計量時に100mol%であることを示す。反応率が50mol%以下の場合、分散性に優れる水酸化マグネシウム粒子は得られるが、生成した水酸化マグネシウムの回収率が低くなる。反応率が400mol%以上の場合においても、分散性に優れる水酸化マグネシウム粒子は得られるが、反応物の粘度が高くなるために水洗し難くなる。さらに製造コストは高くなる。
【0026】
(反応スラリーの維持温度と維持時間)
工程(a)において、反応スラリーは解放条件下で維持させ、前駆体粒子を得る。維持温度は0.0〜120℃であり、好ましい上限は115℃であり、より好ましい上限は100℃であり、好ましい下限は20℃であり、より好まし下限は40℃である。維持時間は1.0〜350時間であり、好ましい上限は300時間であり、より好ましい上限は280時間であり、好ましい下限は1.5時間であり、より好ましい下限は2.0時間である。維持温度を低くした場合、維持時間を長くしたほうがよい。
【0027】
(前駆体粒子の水洗および再懸濁)
前駆体粒子を含むスラリーは、そのまま次の熱処理工程に用いても良いが、濾過および/または水洗ならびに再懸濁をした後に次の熱処理工程に用いてもよい。工程(a’)において、濾過および/または水洗ならびに再懸濁させる工程を加えることにより粒子の成長速度を抑えることができ、水酸化マグネシウムの嵩密度を小さすることができる。再懸濁させる溶液には脱イオン水または可溶性マグネシウム塩水溶液を用いることができる。可溶性マグネシウム塩水溶液を用いた場合のスラリーのpHは7〜8付近になり、脱イオン水を用いた場合のスラリーのpHは10.5付近になるため、可溶性マグネシウム塩水溶液を用いた方が、工程(b)における加圧条件下での水熱処理を行った際の結晶子サイズの成長を遅くできる。可溶性マグネシウム塩水溶液を用いる場合、その濃度は0.1〜6.0mol/Lであり、好ましい上限は5.5mol/Lであり、より好ましい上限は5.0mol/Lであり、好ましい下限は0.3mol/Lであり、より好ましい下限は0.5mol/Lである。
【0028】
(熱処理)
工程(b)において、得られた前駆体粒子を含むスラリーは、さらに加圧条件下で熱処理を行う。熱処理温度は115〜265℃であり、好ましい上限は250℃であり、より好ましい上限は230℃であり、好ましい下限は120℃であり、より好ましい下限は130℃である。熱処理時間は0.5〜200時間であり、好ましい上限は180時間であり、より好ましい上限は150時間であり、好ましい下限は1時間であり、より好ましい下限は1.5時間である。
【0029】
(熱処理後の水洗)
工程(c)において、水洗の水の量は水酸化マグネシウムに対して質量基準で20〜200倍の脱イオン水であり、好ましくは25〜150倍であり、より好ましくは30〜100倍である。
【0030】
(表面処理)
本発明の水酸化マグネシウム粒子および酸化マグネシウム粒子は、用途によって表面処理をすることができる。表面処理剤は公知の化合物を利用することができる。表面処理剤としては高級脂肪酸、高級脂肪酸アルカリ土類金属塩、界面活性剤、カップリング剤および燐酸と高級アルコールとからなる燐酸エステル類からなる群より選択される少なくとも1種を用いて行われることが好ましい。
【0031】
高級脂肪酸の例としては、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、エルカ酸など炭原子数10以上の高級脂肪酸が挙げられる。高級脂肪酸アルカリ土類金属塩の例としては、マグネシウム、ベリリウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属塩が挙げられる。界面活性剤は、カチオン界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤が好適であり、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンジステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル、高級アルコール硫酸ナトリウム、ココナットアミンアセテート、ラウリルベタインなどが挙げられる。カップリング剤の例としては、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p‐トリエトキシシリルスチレンなどが挙げられる。燐酸と高級アルコールとからなる燐酸エステル類の例としては、オルト燐酸とオレイルアルコールとからなるリン酸エステルなどが挙げられる。
【0032】
表面処理方法は公知の湿式法および乾式法を適用することができる。湿式法において表面処理剤の添加量は水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウム粒子100重量部に対して、0.01〜15重量部であり、好ましくは1.0〜12重量部であり、より好ましくは2.0〜10重量部である。表面処理温度は20〜100℃であり、好ましくは40〜95℃であり、より好ましくは50〜85℃である。乾式処理は表面処理剤を有機溶媒中に分散させ、粉末とよく混合し、120℃で有機溶媒を飛ばせる方法が挙げられる。
【0033】
(耐酸性)
本発明の表面処理を施した水酸化マグネシウム粒子は、0.1N塩酸中での溶出率が45〜60重量%であり、好ましい上限は58重量%であり、好ましい下限は50重量%である。
【0034】
(樹脂組成物)
本発明には、合成樹脂または合成ゴムに水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムを配合した樹脂組成物が含まれる。樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンと他のα‐オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチルまたはアクリル酸メチルとの共重合体、プロピレンと他のα‐オレフィンとの共重合体、ポリブテン‐1、4‐メチルペンテン‐1、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体、スチレンとアクリロニトリルおよびブタジエンとの共重合体、エチレンとプロピレンジエンゴムまたはブタジエンとの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。合成ゴムの例としては、EPDM、SBR、NBR、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。
【0035】
樹脂組成物における水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムの配合量は、合成樹脂または合成ゴム100重量部に対し、0.5〜400重量部であり、好ましくは1.0〜380重量部であり、より好ましくは1.5〜350重量部である。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、難燃性等の物性を向上させるために、その他の難燃剤および難燃助剤等を含有してもよい。例えば、炭素粉末、赤燐等またはこれらの混合物が好ましい。難燃助剤の配合量は、樹脂組成物の全量に対して、15重量部以下が好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、その他の添加剤を配合することも可能であり、例えば、架橋助剤、架橋剤、軟化剤、老化防止剤、耐候剤、潤滑剤、帯電防止剤、耐酸化剤、発泡剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は一種類を配合してもよいし、二種類を配合してもよい。これらの添加剤は、樹脂100重量部に対して、35重量部以下の配合が好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、本発明の水酸化マグネシウム粒子およびその他の無機粒子、有機粒子を樹脂中に配合することによって得ることができる。このような成分を熱可塑性樹脂に分散させる方法としては、単軸混練機、2軸混練機、ニーダー、ロール混練機等によって混合する方法が挙げられる。また成形体は、プレス成型機、カレンダー成型機等で成形される。
【0039】
以下、本発明に関し実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0040】
得られた水酸化マグネシウム粒子について、(1)アスペクト比、(2)粒度分布および平均粒子径、(3)結晶子のサイズ、成長速度および成長率、(4)BET比表面積、(5)嵩密度、(6)耐酸性、(7)樹脂組成物の難燃性、(8)厚み方向の熱伝導率、および(9)押出ストランドの外観、ならびに
得られた酸化マグネシウム粒子について、(2)粒度分布および平均粒子径、(10)熱伝導率、および(11)樹脂混練時の取り扱い性、を評価するために以下の方法を用いた。
【0041】
(1)アスペクト比
まず、Field Emission Scanning Electron Microscope(JSM‐7600F 日本電子株式会社製)を使用して、乾燥後の粒子のSEM写真を撮影した。次に、得られた2万倍の画像からランダムに20個の粒子を選択し、それぞれの粒子の中心を通過する直線のうち、最も長い直線であらわされる粒子径を長径、最も短い直線であらわされる粒子径を短径として測定し、長径/短径の比を求めた。最後に、得られた20点の長径/短径の比の平均値をアスペクト比とした。
【0042】
(2)粒度分布、平均粒子径
0.2重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液80mlを100mlのガラスビーカーに採り、これに乾燥後の試料粉末を0.8g入れ、3分間の超音波処理を行った。この水溶液について、レーザー回折散乱式粒度分布装置(MT3000 日機装社製)を使用して粒度分布を測定し、平均粒子径MVを求めた。
【0043】
(3)結晶子サイズ、成長速度および成長率
まず、X‐RAY DIFFRACTOMETER(RINT2000 Rigaku社製)を使用して、前駆体および熱処理後の水酸化マグネシウム粒子について(101)面、(001)面および(110)面の半価幅βを測定した。その際、測定電流および測定電圧はそれぞれ20mAおよび40kvとし、(101)面、(001)面および(110)面の測定角度2θはそれぞれ17〜20、36〜40および57〜60とし、処理の平滑点数は31とした。
これらの値をシェラー式(Scherrer式)に代入して、それぞれ(101)面、(001)面および(110)面の結晶子サイズを求めた。
シェラー式:Dhkl=K×λ/(βcosθ)
hkl:(hkl)面に垂直方向の結晶子サイズ(Å)
K:Scherrer定数
λ:測定X線波長(Å)
β:半価幅(ラジアン)
θ:回折線のブラッグ角
但し式中、K=0.9、λ=1.542とする。
【0044】
次いで、前駆体を熱処理したときの(hkl)面の結晶子サイズの成長率は(式1)によって求めた。
hklの成長率(%)=(熱処理後のDhkl−前駆体のDhkl/前駆体のDhkl×100 (式1)
【0045】
さらに、Dhklの成長速度は(式2)によって求めた。
hklの成長速度(Å/時間)=(加熱処理後のDhkl−前駆体のDhkl)/加熱時間 (式2)
【0046】
最後に、結晶子の平均成長率は(式3)によって求めた。
結晶子サイズの平均成長率(%)=(D101の成長率+D001の成長率+D110の成長率)/3×100 (式3)
【0047】
(4)BET比表面積
比表面積の測定装置(商品名 NOVA2000 ユアサアイオニクス社製)を使用して、ガス吸着法により比表面積を測定した。
【0048】
(5)嵩密度
ガラス製100mlメスシリンダーに試料粉末を10g入れ、30回パットを行い、嵩密度を求めた。
【0049】
(6)耐酸性
水酸化マグネシウムの耐酸性の指標として、0.1N塩酸中での溶出率を測定した。まず、0.1N塩酸溶液100mlを200mlのガラスビーカーに採り、これに乾燥後の水酸化マグネシウムの粉末を0.5833g入れ、26℃で5分撹拌した。次に、懸濁液のpH値を測定した後、懸濁液を濾過し、回収したものを120℃で5時間乾燥させて質量を測定し、水酸化マグネシウムの溶出率を下記の式により求めた。
溶出率(%)=(0.5833g−回収した粉末の質量)/0.5833×100
【0050】
(7)樹脂組成物の難燃性評価
試験体試料は、LLDPE樹脂(ノバテックLL UF‐240 日本ポリエチレン株式会社)100重量部および難燃剤として水酸化マグネシウム粒子130重量部からなり、これらの混合物を小型バッチ式混練機(ドイツブラベンダー社製)により160℃、30rpmで5分間混練した。混練したものは130mm×70mm×3mmの金型で150℃、100kg/cm、5分間成型処理を行った。成型したものは130mm×15mmの大きさにカットし、UL94V規格に準拠して、難燃性の評価を行った。
【0051】
(8)厚み方向の熱伝導率の評価
エチレン・1−オクテン共重合体(ENGAGE8200 デュポンダウエラストマー株式会社)100重量部に対して熱伝導剤として水酸化マグネシウム粒子75重量部を配合し、厚み8mm×30mmφの円盤状試験体試料を作製した。前記試料をホットディスク法熱伝導率測定装置(京都電子工業:TPS−2500S)で6φのセンサーを用い、室温大気中における熱伝導率を測定した。
【0052】
(9)押し出しストランドの外観
前記(7)で得られた樹脂成形品を作製した押し出しストランドの表面を目視評価した。目視の評価について、表面の状態が非常に良いは◎、良いは○、普通は△として評価した。
【0053】
(10)熱伝導率
エチレン・1−オクテン共重合体(ENGAGE8200 デュポンダウエラストマー株式会社)100重量部に対して熱伝導剤として酸化マグネシウム粒子300重量部を配合し、厚み8mm×30mmφの円盤状試験体試料を作製した。前記試料をホットディスク法熱伝導率測定装置(京都電子工業:TPS−2500S)で6φのセンサーを用い、室温大気中における熱伝導率を測定した。
【0054】
(11)樹脂混練時の粉体の取り扱い性
練り込み時、紛体の飛散、スクリューへの噛み込み易さおよびホッパーへの付着を総合的に判断し、紛体の取り扱い性として、全ての項目が良好であったものを◎、良好な項目が2〜3項目であったものを○、良好な項目が1項目以下であったものを△で表した。
【実施例1】
【0055】
1.0Lの容器に4.2mol/Lの塩化マグネシウム水溶液0.4Lを入れて、撹拌しながら8.4Nの水酸化ナトリウム水溶液0.4Lをゆっくり添加して反応させ、70℃、500rpmで撹拌しながら開放条件下で1時間維持し、前駆体粒子を含むスラリーを得た。
得られた前駆体粒子を含むスラリーは1.0Lのオートクレーブに入れ、130℃、500rpmで撹拌しながら加圧条件下で5時間熱処理を行った後、濾過し、水酸化マグネシウム固形分に対して質量基準で20倍の脱イオン水で水洗した。
水洗後の水酸化マグネシウムケーキを再び脱イオン水に懸濁させた後、撹拌しながら80℃で水酸化マグネシウム固形分の質量に対しSiOとして3重量部に相当する20%コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製スノーテックスO)を入れ、2時間処理後、固形分に対し10倍の脱イオン水で洗浄した後、120℃で20時間乾燥を行って、実施例1の粒子を得た。
【実施例2】
【0056】
オートクレーブ内での熱処理温度を165℃、熱処理時間を3時間に変更し、表面処理剤をステアリン酸に変更した以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の粒子を得た。
【実施例3】
【0057】
開放条件下での前駆体の維持時間を5時間に変更した以外は実施例2と同様の方法により実施例3の粒子を得た。
【実施例4】
【0058】
解放条件下での前駆体の維持時間を22時間に変更した以外は実施例2と同様の方法により実施例4の粒子を得た。
【実施例5】
【0059】
水酸化ナトリウム溶液の濃度を16.8Nに変更した以外は実施例4と同様の方法により実施例5の粒子を得た。
【実施例6】
【0060】
50Lの容器に4.2mol/Lの塩化マグネシウム水溶液25.0Lを入れて、撹拌しながら8.4Nの水酸化ナトリウム水溶液25.0Lをゆっくり添加して反応させ、115℃、250rpmで撹拌しながら解放条件下で2時間維持し、前駆体粒子を含むスラリーを得た。
得られた前駆体粒子を含むスラリーは50Lのオートクレーブに入れ、165℃、250rpmで撹拌しながら加圧条件下で3時間熱処理を行った後、濾過し、水酸化マグネシウムに対して質量基準で20倍の脱イオン水で水洗した。
水洗後の水酸化マグネシウムケーキは、実施例2と同様の表面処理方法を行って、実施例6の粒子を得た。
【実施例7】
【0061】
同実施例4と同様の方法で前駆体粒子を含むスラリーを得た後、得られた前駆体粒子を含むスラリーを濾過し、得られた水酸化マグネシウムケーキの半分(粉として49g)を600mlの4.2モル/L塩化マグネシウム水溶液に再懸濁させた。再懸濁させた前駆体粒子を含むスラリーは1.0Lのオートクレーブに入れ、140℃、500rpmで撹拌しながら加圧条件下で5時間熱処理を行った後、濾過し、水酸化マグネシウム固形分に対して質量基準で20倍の脱イオン水で洗浄した。
水洗後の水酸化マグネシウムケーキは、実施例2と同様の表面処理方法を行って、実施例7の粒子を得た。
【実施例8】
【0062】
開放条件下での前駆体の維持温度を40℃、維持時間を120時間に変更した以外は実施例1と同様の方法で前駆体粒子を含むスラリーを得た後、得られた前駆体粒子を含むスラリーを濾過し、水酸化マグネシウム固形分に対して質量基準で20倍の脱イオン水で洗浄し、再び濾過し、得られた水酸化マグネシウムケーキを脱イオン水に再懸濁させた。
再懸濁させた前駆体粒子を含むスラリーは1.0Lのオートクレーブに入れ、200℃、500rpmで撹拌しながら加圧条件下で50時間熱処理を行った後、濾過し、水酸化マグネシウム固形分に対して質量基準で20倍の脱イオン水で洗浄した。
水洗後の水酸化マグネシウムケーキは、実施例2と同様の表面処理方法を行って、実施例8の粒子を得た。
【0063】
(比較例1)
開放条件下での115℃、2時間の維持工程を無くしたことを除き、実施例6と同様の方法により比較例1の粒子を得た。
【0064】
(比較例2)
1.0Lのステンレス容器に2.1mol/Lの塩化マグネシウム水溶液0.4Lを入れて、撹拌しながら4.2Nの水酸化ナトリウム水溶液0.36Lをゆっくり添加して反応させ、室温、500rpmで撹拌しながら開放条件下で1時間維持し、前駆体粒子を含むスラリーを得た。
得られた前駆体粒子を含むスラリーは1.0Lのオートクレーブに入れ、160℃、500rpmで撹拌しながら加圧条件下で2時間熱処理を行った後、濾過し、水酸化マグネシウム固形分に対して質量基準で20倍の脱イオン水で水洗した。
水洗後の水酸化マグネシウムケーキは、実施例2と同様の表面処理方法を行って、比較例2の粒子を得た。
【0065】
(比較例3)
表面処理剤をコロイダルシリカに変更した以外は比較例2と同様の方法により比較例3の粒子を得た。
【0066】
(比較例4)
特許文献(特開2006‐306659号公報)の実施例1と同様の方法により比較例4の粒子を得た。すなわち、結晶子径58.3×10−9mの電融MgOをボールミルで粉砕し、湿式法で200メッシュのふるいを通過させた。ふるいを通過した粒子を、濃度0.02mol/Lの酢酸10Lを入れた内容積20Lの容器に、酸化物(MgO)濃度が100g/Lとなるように添加した。得られたMgO含有混合溶液を90℃に保持しながら、高速撹拌機を使用し、タービン羽根の周速を10m/sとして撹拌しながら、4時間水和反応を行った。得られた反応生成物を500メッシュのふるいにかけ、ふるいを通過した微小粒子を引き続き、ろ過、水洗、乾燥を行い、水酸化マグネシウム粒子を得た。
【実施例9】
【0067】
実施例1で得られた乾燥水酸化マグネシウム粒子を300mlのアルミナ製坩堝に投入し、電気炉を用いて650℃で2時間焼成を行い、酸化マグネシウム粒子を得た。得られた酸化マグネシウム粒子は電気炉中で自然に冷却させた後、アルコール中にステアリン酸を溶解させ、酸化マグネシウム固形分の質量に対して、2重量部に相当するステアリン酸で表面処理を行って、実施例9の粒子を得た。
【実施例10】
【0068】
乾燥水酸化マグネシウム粒子を実施例2で得られたものに変更した以外は実施例9と同様の方法により実施例10の粒子を得た。
【実施例11】
【0069】
乾燥水酸化マグネシウム粒子を実施例3で得られたものに変更した以外は実施例9と同様の方法により実施例11の粒子を得た。
【実施例12】
【0070】
乾燥水酸化マグネシウム粒子を実施例4で得られたものに変更した以外は実施例9と同様の方法により実施例12の粒子を得た。
【実施例13】
【0071】
乾燥水酸化マグネシウム粒子を実施例5で得られたものに変更した以外は実施例9と同様の方法により実施例13の粒子を得た。
【実施例14】
【0072】
乾燥水酸化マグネシウム粒子を実施例6で得られたものに変更した以外は実施例9と同様の方法により実施例14の粒子を得た。
【実施例15】
【0073】
乾燥水酸化マグネシウム粒子を実施例7で得られたものに変更した以外は実施例9と同様の方法により実施例15の粒子を得た。
【実施例16】
【0074】
乾燥水酸化マグネシウム粒子を実施例8で得られたものに変更した以外は実施例9と同様の方法により実施例16の粒子を得た。
【0075】
(比較例5)
乾燥水酸化マグネシウム粒子を比較例1で得られたものに変更した以外は実施例9と同様の方法により比較例5の粒子を得た。
【0076】
(比較例6)
乾燥水酸化マグネシウム粒子を比較例2で得られたものに変更した以外は実施例9と同様の方法により比較例6の粒子を得た。
【0077】
(比較例7)
乾燥水酸化マグネシウム粒子を比較例4で得られたものに変更した以外は実施例9と同様の方法により比較例7の粒子を得た。
【0078】
実施例1〜8および比較例1〜4について、結晶子の物性等は表1に示し、樹脂組成物の評価等は表2に示す。実施例9〜16および比較例5〜7についての評価等は表3に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の水酸化マグネシウム粒子および酸化マグネシウム粒子は有機高分子材料や無機材料のフィラー、触媒および触媒の担体などとして好適に利用できる。また、本発明の樹脂組成物は、航空機、自動車車体、鉄道車両、電子機械、電子部品、産業機材に好適に使用できる樹脂組成物であり、例えば、当該分野における成形体、成形部品などの製造に使用される。例えば、枠体、フレーム、ボール、玩具、シート、容器、ケース、本発明の樹脂組成物を用いて被覆された電線、ケーブル、光ファイバコードなど樹脂材料が挙げられる。

図1
図2
図3
図4
図5