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特開2017-122078ホスファゼン化合物、プリプレグ及び複合金属基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-122078(P2017-122078A)
(43)【公開日】2017年7月13日
(54)【発明の名称】ホスファゼン化合物、プリプレグ及び複合金属基板
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6593 20060101AFI20170616BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20170616BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20170616BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20170616BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20170616BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20170616BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20170616BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20170616BHJP
【FI】
   C07F9/6593CSP
   C08G59/40
   C08J5/24CFC
   C08K5/5399
   C08L63/00 C
   H05K1/03 610L
   H05K1/03 610S
   B32B15/08 J
   B32B15/092
   B32B15/08 105
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-152241(P2016-152241)
(22)【出願日】2016年8月2日
(31)【優先権主張番号】201610008253.2
(32)【優先日】2016年1月4日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】516064150
【氏名又は名称】広東広山新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲慶▼崇
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4H050
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD27
4F072AE01
4F072AE04
4F072AF15
4F072AF19
4F072AF27
4F072AG03
4F072AG19
4F072AL13
4F100AB01B
4F100AB02B
4F100AB10B
4F100AB17B
4F100AB17C
4F100AB31B
4F100AB33B
4F100AB33C
4F100AD00A
4F100AD11A
4F100AG00A
4F100AH10A
4F100AK41A
4F100AK49A
4F100AK53A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA02A
4F100DG01A
4F100DH01A
4F100EH46
4F100EJ82
4F100GB43
4F100JD15
4F100JG05
4F100JK06
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB48
4H050WA15
4H050WA23
4J002CD061
4J002EU117
4J002EW156
4J002FD146
4J002FD157
4J002GF00
4J002GQ00
4J036AA01
4J036AF08
4J036DC41
4J036DD07
4J036JA08
4J036JA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低誘電特性、優れた耐熱性及び機械的性質を有し、経済性が高く、環境に優しい低誘電率材料の提供。
【解決手段】特定組成を有するM基を採用することで得られる式(I)に示される分子構造を有するホスファゼン化合物。当該ホスファゼン化合物を含むエポキシ樹脂組成物によって製造された樹脂封止材及び複合金属基板。

(R1は置換/非置換の芳香族炭化水素基又は置換/非置換の脂肪族炭化水素基;R2、R3、R6及びR7は夫々独立に任意の有機基;R4及びR5は夫々独立に任意の不活性求核基;Mはシクロトリホスファゼン基、環数4以上のホスファゼン基又は非環式のポリホスファゼン基の1種又は2種以上の組合せ;n及びmは0以上の整数、nとmとは同時に零にはならない;a及びbは0以上の整数、(a+b+2)はM基における燐原子数の2倍に等しい)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)に示される分子構造を有する、ことを特徴とするホスファゼン化合物。
【化1】
(ただし、R1は置換又は非置換の芳香族炭化水素基、もしくは置換又は非置換の脂肪族炭化水素基であり、R2、R3、R6及びR7はそれぞれ独立してその化学的環境に満足する任意の有機基であり、R4、R5はそれぞれ独立して任意の不活性求核基であり、Mはシクロトリホスファゼン基M1、環数4以上のホスファゼン基M2又は非環式のポリホスファゼン基M3のいずれか1種又は2種以上の組合せであり、n、mはいずれも零以上の整数であり、且つnとmとは同時に零にはならなく、a、bはいずれも零以上の整数であり、且つ(a+b+2)はM基における燐原子数の2倍に等しい。)
【請求項2】
1は置換又は非置換の直鎖状アルキレン基、置換又は非置換の分岐鎖状アルキレン基、置換又は非置換のシクロアルキレン基、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基、置換又は非置換のアリーレンアルキレン基、置換又は非置換のアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のシクロアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基、もしくは置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基のいずれか1種であり、
好ましくは、R2とR7はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖状アルキレン基、置換又は非置換の分岐鎖状アルキレン基、置換又は非置換のシクロアルキレン基、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基、置換又は非置換のアリーレンアルキレン基、置換又は非置換のアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のシクロアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基、もしくは置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基のいずれか1種であり、
好ましくは、R3とR6はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖状アルキル基又は分岐鎖状アルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のヘテロアリール基、置換又は非置換のアラルキル基、置換又は非置換のヘテロアリールアルキル基のいずれか1種であり、
好ましくは、R4とR5はそれぞれ独立して置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルアリールオキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルヘテロアリールオキシ基、置換又は非置換のカルボン酸エステル基、置換又は非置換の炭酸エステル基、置換又は非置換のスルホン酸エステル基、もしくは置換又は非置換のホスホン酸エステル基のいずれか1種又は2種以上の組合せである、ことを特徴とする請求項1に記載のホスファゼン化合物。
【請求項3】
1の構造は、
【化4】
2の構造は、
【化5】
ただし、xは4以上の整数であり、
3の構造は、
【化6】
だたし、yは3以上の整数である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のホスファゼン化合物。
【請求項4】
塩化ホスホニトリルと求核試薬を求核置換反応させてホスファゼン化合物が得られる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のホスファゼン化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のホスファゼン化合物を含む、ことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸又は塗布してなる、ことを特徴とするプリプレグ。
【請求項7】
前記基材はガラス繊維基材、ポリエステル基材、ポリイミド基材、セラミック基材又は炭素繊維基材である、ことを特徴とする請求項6に記載のプリプレグ。
【請求項8】
複合金属基板であって、一枚以上の請求項6又は7に記載のプリプレグを含み、順に表面金属層被覆、積層、ラミネートを行ってなり、
好ましくは、前記表面被覆金属層の材質は、アルミニウム、銅、鉄及びそれらを任意に組合せた合金であり、
好ましくは、前記複合金属基板は、CEM―1銅張積層板、CEM―3銅張積層板、FR―4銅張積層板、FR―5銅張積層板、CEM―1アルミ基板、CEM―3アルミ基板、FR―4アルミ基板又はFR―5アルミ基板である、ことを特徴とする複合金属基板。
【請求項9】
一枚以上の請求項6又は7に記載のプリプレグ及びラミネートされたプリプレグの片側又は両側に被覆された銅箔を含む、ことを特徴とするフレキシブル銅張積層板。
【請求項10】
請求項8に記載の複合金属基板の表面で回路を加工してなる、ことを特徴とするプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率材料の技術分野に属し、特にホスファゼン化合物、プリプレグ及び複合金属基板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、コンピュータ、ビデオカメラ、電子ゲーム機を代表とする電子製品、エアコン、冷蔵庫、テレビ映像、オーディオ用品等を代表とする家庭用品、オフィス用電器製品及び他の分野に使用される各種製品のうち、安全性を確保するために、多数の製品に対して低誘電特性と耐熱性が要求される。
【0003】
電気特性について、主に配慮すべき要素として、材料の誘電率及び誘電正接も含まれる。一般的に、基板の信号伝送速度は、基板材料の誘電率の平方根と反比例するため、通常、基板材料の誘電率が低ければ低いほど好ましい。一方、誘電正接が低いほど信号の伝送損失が小さいため、低誘電正接材料による伝送品質も高い。
【0004】
従って、如何にして低誘電率・低誘電正接を有する材料を開発して、その材料を高周波プリント基板の製造に用いることは、現段階でプリント基板材料の分野における早急に解決しなければならない問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に事情に鑑み、本発明の一態様として、低誘電特性、優れた耐熱性及び機械的性質を有するとともに低コストの利点もあるホスファゼン化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明は、下記技術方案を採用する。
【0007】
式(I)に示される分子構造を有するホスファゼン化合物。
【0008】
【化1】
【0009】
(ただし、R1は置換又は非置換の芳香族炭化水素基、もしくは置換又は非置換の脂肪族炭化水素基であり、R2、R3、R6及びR7はそれぞれ独立してその化学的環境に満足する任意の有機基であり、R4、R5はそれぞれ独立して任意の不活性求核基であり、Mはシクロトリホスファゼン基M1、環数4以上のホスファゼン基M2又は非環式のポリホスファゼン基M3のいずれか1種又は2種以上の組合せであり、n、mはいずれも零以上の整数であり、且つnとmとは同時に零にはならなく、a、bはいずれも零以上の整数であり、且つ(a+b+2)はM基における燐原子数の2倍に等しい。)
【0010】
n、mはいずれも零を超える整数であり、例えば1、2、3、4、5、6、7等であり、且つnとmとは同時に零にはならない。
【0011】
a、bはいずれも零以上の整数であり、例えば0、1、2、3、4、5、6、7等であり、且つ(a+b+2)はM基における燐原子数の2倍に等しい。即ち、M基における燐原子は原子価が五価となる飽和状態となっている。
【0012】
本発明において、a、bはそれぞれR4基、R5基の個数を示し、R4基、R5基はいずれもM基における燐原子に連結される。
【0013】
本発明において、前記「その化学的環境に満足する」とは、その隣接する原子に連結して、安定な化学結合を形成することができることを意味している。
【0014】
好ましくは、R1は置換又は非置換の直鎖状アルキレン基、置換又は非置換の分岐鎖状アルキレン基、置換又は非置換のシクロアルキレン基、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基、置換又は非置換のアリーレンアルキレン基、置換又は非置換のアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のシクロアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基、もしくは置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基のいずれか1種である。
【0015】
好ましくは、R2とR7はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖状アルキレン基、置換又は非置換の分岐鎖状アルキレン基、置換又は非置換のシクロアルキレン基、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基、置換又は非置換のアリーレンアルキレン基、置換又は非置換のアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のシクロアルキレンアリーレン基、もしくは置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基のいずれか1種である。
【0016】
具体的に、R1、R2及びR7はそれぞれ独立して、
【0017】
【化2】
【0018】
のいずれか1種であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0019】
好ましくは、R3とR6はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖状アルキル基又は分岐鎖状アルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のヘテロアリール基、置換又は非置換のアラルキル基、置換又は非置換のヘテロアリールアルキル基のいずれか1種である。
【0020】
好ましくは、R4とR5はそれぞれ独立して置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルアリールオキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルヘテロアリールオキシ基、置換又は非置換のカルボン酸エステル基、置換又は非置換の炭酸エステル基、置換又は非置換のスルホン酸エステル基、もしくは置換又は非置換のホスホン酸エステル基のいずれか1種又は2種以上の組合せである。
【0021】
本発明において、前記「不活性求核基」とは、一般的な反応条件下で化学反応性が低く、他の物質と反応し難い基を意味し、これらの反応性基によって炭素鎖をブロックすることが可能であり、よって「ブロック基」とも呼ばれる。例えば本発明において、前記不活性求核基は―OCH3、―Ph(ベンゼン環)又は―COOCH3等であってもよい。
【0022】
本発明はノンハロゲンホスファゼン化合物を提供するものであるので、本発明の式(I)に示される構造において、あらゆる基及び基における置換基がハロゲンを含まない。
【0023】
本発明において、前記「求核試薬」とは、ハロゲン化ホスファゼンと求核置換反応できる求核試薬を意味する。求核置換の反応過程では、求核試薬から脱離基が脱離し、求核基がハロゲン化ホスファゼンにおけるハロゲン原子に攻撃し、求核基がM基に連結する。例えば、メタノールCH3OHを求核試薬として用いてハロゲン化ホスファゼンと求核置換反応させる場合に、CH3OHからH+が脱離し、求核基であるメトキシ基CH3O―がハロゲン化ホスファゼンにおけるハロゲン原子を置換し、ホスファゼンにおける―Pに連結する。
【0024】
本発明において、置換又は非置換の直鎖状アルキル基又は分岐鎖状アルキル基としては、置換又は非置換の炭素数1〜12個のC1〜C12(例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)直鎖状アルキル基又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、C1〜C8直鎖状アルキル基又は分岐鎖状アルキル基が更に好ましく、炭素数が1である場合はメチル基となり、炭素数が2である場合はエチル基となる。
【0025】
置換又は非置換のシクロアルキル基としては、置換又は非置換の炭素数3〜12個のC3〜C12(例えばC4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)のシクロアルキル基が好ましい。
【0026】
置換又は非置換のアルコキシ基としては、置換又は非置換の炭素数1〜12個のC1〜C12(例えばC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)のアルコキシ基が好ましい。
【0027】
置換又は非置換のシクロアルコキシ基としては、置換又は非置換の炭素数3〜12個のC3〜C12(例えばC4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)のシクロアルコキシ基が好ましい。
【0028】
置換又は非置換のアリール基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)のアリール基が好ましい。好ましくは、フェニル基、ナフチル基、或いは、
【0029】
【化3】
【0030】
等である。フェニル基の実例としては、ビフェニル基、テルフェニル基、ベンジル基、フェネチル基又はフェニルプロピル基等が挙げられる。
【0031】
置換又は非置換のヘテロアラルキル基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)のヘテロアラルキル基が好ましく、より好ましくは五員環又は六員環ヘテロアリール基であり、更に好ましくは置換又は非置換のフラニル基又はピリジル基である。
【0032】
置換又は非置換のアラルキル基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)のアラルキル基が好ましい。
【0033】
置換又は非置換のヘテロアラルキル基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)のヘテロアラルキル基が好ましい。
【0034】
置換又は非置換のアリールオキシ基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)のアリールオキシ基が好ましい。
【0035】
置換又は非置換のアリールアルコキシ基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)のアリールアルコキシ基が好ましい。
【0036】
置換又は非置換のアルキルアリールオキシ基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)のアルキルアリールオキシ基が好ましい。
【0037】
置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)のヘテロアリールアルコキシ基が好ましい。
【0038】
置換又は非置換のアルキルヘテロアリールオキシ基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)のアルキルヘテロアリールオキシ基が好ましい。
【0039】
置換又は非置換の直鎖状アルキレン基としては、炭素数1〜12個のC1〜C12(例えばC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)の直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0040】
置換又は非置換の分岐鎖状アルキレン基としては、炭素数1〜12個のC1〜C12(例えばC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)の分岐鎖状アルキレン基が好ましい。
【0041】
置換又は非置換のアリーレン基としては、炭素数6〜13個のC6〜C13(例えばC7、C8、C9、C10、C11又はC12)のアリーレン基が好ましい。
【0042】
置換又は非置換のヘテロアリーレン基としては、炭素数5〜13個のC5〜C13(例えばC6、C7、C8、C9、C10、C11又はC12)のヘテロアリーレン基が好ましい。
【0043】
置換又は非置換のアルキレンアリーレン基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)のアルキレンアリーレン基が好ましい。
【0044】
置換又は非置換のアリーレンアルキレン基としては、炭素数7〜13個のC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アリーレンアルキレン基が好ましい。
【0045】
置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基としては、炭素数6〜13個のC6〜C13(例えばC7、C8、C9、C10、C11又はC12)のアルキレンヘテロアリーレン基が好ましい。
【0046】
置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基としては、炭素数6〜13個のC6〜C13(例えばC7、C8、C9、C10、C11又はC12)のヘテロアリーレンアルキレン基が好ましい。
【0047】
本発明に用いられる専門用語「置換」とは、指定された原子が正常な原子価を超えずに置換後の結果として安定な化合物が生成する条件下で、前記指定された原子におけるいずれか一つ又は複数の水素原子が指定された群から選ばれる置換基で置換されることを意味する。置換基がオキソ基又はケトン基(即ち=O)である場合は、原子における2つの水素原子が置換される。芳香環にケトン置換基が存在しない。「安定な化合物」とは、反応混合物から有効な純度まで強力に分離して有効な化合物を調製できることを意味する。
【0048】
本発明において、好ましくは、M1の構造は、
【0049】
【化4】
【0050】
2の構造は、
【0051】
【化5】
【0052】
ただし、xは4以上の整数である。
【0053】
3の構造は、
【0054】
【化6】
【0055】
ただし、yは3以上の整数である。
【0056】
なお、M1、M2の構造式において、
【0057】
【化7】
【0058】
は「環状」という構造を模式的に示すものに過ぎない。
【0059】
また、M1、M2及びM3において、
【0060】
【化8】
【0061】
におけるP原子に連結される結合は、三者中P原子に置換基が連結されていることを示し、メチル基を示すものではない。
【0062】
好ましくは、Mは、主に不飽和結合をもつ燐原子と不飽和結合をもつ窒素原子によって構成される燐-窒素不飽和結合骨格を有するホスファゼン基を有する基を示す。具体的には、Mは50wt%以上のシクロトリホスファゼン基M1、48wt%以下の環数4以上のホスファゼン基M2及び48wt%以下の非環式のポリホスファゼン基M3を含む。
【0063】
本発明において、M1の含有量は50wt%以上であり、即ち、M1の含有量は50wt〜100wt%であってもよく、M1は必須成分である。M1の含有量が100wt%である場合、M2とM3を含まない。本発明において、M1の含有量の代表例としては、50wt%、51wt%、55wt%、58wt%、60wt%、65wt%、70wt%、74wt%、75wt%、80wt%、85wt%、90wt%、92wt%、95wt%、98wt%又は100wt%が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明において、M2の含有量は30wt%以下であり、即ち、M2の含有量は0〜30wt%であってもよい。M2の含有量が0wt%である場合、即ち、M2を含まない。本発明において、M2の含有量の代表例として、0wt%、2wt%、5wt%、8wt%、11wt%、14wt%、16wt%、17wt%、19wt%、20wt%、22wt%、25wt%、27wt%、28wt%又は29wt%が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明において、M3の含有量は30wt%以下であり、即ち、M3の含有量は0〜30wt%であってもよい。M3の含有量が0wt%である場合、即ち、M3を含まない。本発明において、M3の含有量の代表例として、0wt%、2wt%、5wt%、8wt%、10wt%、12wt%、14wt%、16wt%、18wt%、20wt%、23wt%、25wt%、27wt%、28wt%、30wt%、32wt%、35wt%、38wt%、40wt%、43wt%又は45wt%が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
本発明において、M1、M2及びM3の質量百分率の合計は、100%である。
【0067】
本発明において、M1の含有量が50wt%未満、又はM2の含有量が30wt%を超える場合、エポキシ樹脂と反応させて得られた生成物は、使用時に耐熱性、耐水性及び機械的性質が損なわれる。M3の含有量が45%を超えると、エポキシ樹脂と反応させて得られた生成物は、使用時、粘度が大きくなり過ぎることによって使用が困難になる恐れがある。さらに、分子量が高くなりすぎることによって性能が損なわれる等の悪い結果をもたらす恐れがある。
【0068】
好ましくは、本発明に係る前記ホスファゼン化合物は、下記構造を有する化合物の1種又は2種以上の組合せである。
【0069】
【化9】
【0070】
ただし、Mはシクロトリホスファゼン基である。
【0071】
本発明の式(I)中、封鎖基としてのR3、R4、R5、R6は、いずれも芳香族封鎖基であってもよい。例えば、R4、R5は、
【0072】
【化10】
【0073】
等の基であってもよく、R3、R6はフェニル基、ビフェニル基、ベンジル基等であってもよい。例えば、式(I)に示される化合物は、
【0074】
【化11】
【0075】
等である。ただし、Mはシクロトリホスファゼン基である。
【0076】
本発明の第2態様では、優れた耐熱性、機械的性質及び低誘電率を有するホスファゼン化合物の製造方法を提供するものである。
【0077】
上記ホスファゼン化合物の製造方法は、塩化ホスホニトリルとカルボン酸類及びフェノール又はアルコール系求核試薬とを求核置換反応させてホスファゼン化合物を得ることである。
【0078】
塩化ホスホニトリルとは、
【0079】
【化12】
【0080】
であり、求核試薬とは、式(I)におけるM基に連結された基に対応する求核試薬であり、例えば、R1が、
【0081】
【化13】
【0082】
である場合、塩化ホスホニトリルと求核置換反応させて、
【0083】
【化14】
【0084】
をM基における燐原子に連結させる求核試薬は、
【0085】
【化15】
【0086】
であり、R3が―CH2CH2―である場合、塩化ホスホニトリルと求核置換反応させて―O―CH2CH2―O―をM基における燐原子に連結させる求核試薬は、OHCH2CH2OHであってもよく、同様に、R2、R5、R6、R7とM基における燐原子との連結を実現できる。
【0087】
前記求核置換反応において、塩化ホスホニトリルにおける塩素原子が置換される。求核反応は、本分野における公知の方法によって行われることができ、例えば、「ポリホスファゼンの研究の進展,張宏偉等,材料導報2010年第24巻第7期」を参照できる。求核反応に使用される触媒の具体例としては、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム等の金属塩化物、三フッ化ホウ素及びその錯体、水酸化ナトリウム等のルイス塩基(Lewis base)が挙げられる。これらの触媒は1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよく、本発明では特に限定されるものではない。ここで、「塩化ホスホニトリル」とは、式(I)におけるM基がClに連結されて得られた化合物である。塩化ホスホニトリルとしては、公知の溶媒、触媒を使用して公知の反応経路に基づいて合成してもよく、五塩化燐と塩化アンモニウムを使用して公知方法に基づきクロロホスファゼン化合物を合成した後、物理的方法により精製し、或いは精製せずに直接製造してもよく、その反応式は、
PCl5+NH4Cl→1/n(NPCl2)n+4HCl
であり、該反応生成物には、主に三量体(PNCl23(即ち、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン)と四量体(PNCl24が含まれており、反応生成物を60℃の真空で緩慢に昇華して高純度のヘキサクロロシクロトリホスファゼンを得る。環数4以上のクロロホスファゼンと非環式のクロロポリホスファゼンとは、先行技術により製造されることもできる。
【0088】
求核試薬と塩化ホスホニトリルとの反応において、先ず1種の求核試薬と塩化ホスホニトリルとを反応させ、塩化ホスホニトリルにおける一部の塩素原子を置換させた後、他の1種の求核試薬と塩化ホスホニトリルとを反応させて、式(I)に示される構造を有するホスファゼン化合物が得られる。更に、物質同士の物質量関係を制御することにより、一つ以上のM基を有する構造のホスファゼン化合物が得られる。
【0089】
本発明の第3態様では、低誘電特性、優れた耐熱性及び機械的性質を有するエポキシ樹脂組成物を提供する。
【0090】
該エポキシ樹脂組成物は本発明に記載のホスファゼン化合物を含む。
【0091】
エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂、硬化剤、他のフィラーとして、公知のものが用いられてもよい。
【0092】
前記エポキシ樹脂組成物は、上記ホスファゼンを含むポリエステル以外、ほかのポリエステルが含まれても良い。
【0093】
本発明の第4態様では、上記エポキシ樹脂組成物を基材に含浸又は塗布してなるプリプレグを提供するものである。
【0094】
前記基材は、ガラス繊維基材、ポリエステル基材、ポリイミド基材、セラミック基材又は炭素繊維基材等であってもよい。
【0095】
ここで、含浸又は塗布の具体的なプロセス条件は、特に限定されるものではない。「プリプレグ」も当業者が熟知している「接着シート」である。
【0096】
複合金属基板は、一枚以上の上記プリプレグを含み、順に表面金属層被覆、積層、ラミネートを行ってなるものである。
【0097】
ここで、表面被覆金属層の材質は、アルミニウム、銅、鉄及びそれらを任意に組合せた合金である。
【0098】
複合金属基板の具体例としては、CEM―1銅張積層板、CEM―3銅張積層板、FR―4銅張積層板、FR―5銅張積層板、CEM―1アルミ基板、CEM―3アルミ基板、FR―4アルミ基板又はFR―5アルミ基板が挙げられる。
【0099】
フレキシブル銅張積層板は、一枚以上の前記プリプレグ及びラミネートされたプリプレグの片側又は両側に被覆された銅箔を含むものである。
【0100】
プリント基板は、上記複合金属基板の表面で回路を加工してなるものである。
【0101】
エポキシ樹脂組成物の原料を複合金属基板に硬化させて優れた低誘電特性及び耐熱性を有するコーティングを形成することにより、プリント基板の応用範囲を広げることができる。例えば、電子産業、電気・電器産業、交通輸送、航空エアロスペース、おもちゃ産業等のプリント基板を必要とする機器、装置、メータ、計器等の産業への応用範囲を広げることができる。
【0102】
上記用語「×××基又は基」とは、「×××化合物」の分子構造から一つ以上の水素原子、もしくは他の原子又は原子団を脱離させた後に残った部分を意味する。
【発明の効果】
【0103】
本発明は、特定組成を有するM基を使用することで前記ホスファゼン化合物を製造するものであり、それにより製造されたエポキシ樹脂組成物の硬化物は低誘電特性、優れた耐熱性及び機械的性質を付与させ、経済性が高く環境に優しい低誘電率材料である。該難燃性化合物により製造される銅張積層板は、誘電率(1GHz)が3.28〜3.33であり、誘電正接(1GHz)が0.005〜0.006であり、Tgが175℃以上であり、T―剥離強度が1.90kg/mm2以上であり、層間剥離強度が1.64kg/mm2以上であり、飽和吸水率が0.35%以下である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
以下、実施例を参照しながら本発明の技術案を詳しく説明する。
【0105】
以下の実施例において、使用される原料である塩化ホスホニトリル(例えばヘキサクロロシクロトリホスファゼン)は、本発明に係る合成方法又は本分野における既知の合成方法によって合成されることができ、他の原料は市販品であってもよい。
【0106】
実施例1
本実施例におけるホスファゼン化合物の構造式は、以下の通りである。
【0107】
【化16】
【0108】
その製造方法は以下の通りである。
【0109】
2000mlの撹拌装置付き三口ガラス反応器にヘキサクロロシクロトリホスファゼン1mol、アセトン200ml、ナトリウムメトキシド4mol、エチレングリコール1molを投入し、撹拌しながら窒素ガスを導入し、60℃まで昇温し、60minをかけて20%水酸化ナトリウム溶液620gを滴下し、60℃で保温し、撹拌して8時間反応させた。反応終了後、物理的方法によって体系中の無機成分と水分を除去し、98%濃硫酸3mLを滴下し、コハク酸1molを添加し、40℃で撹拌して5時間反応させた後、エタノール1molを添加し、更に撹拌して2時間反応させた。反応終了後、物理的方法によって体系中の不純物と水分を除去し、体系中の溶媒を蒸留して除去し、上記構造を有するエステル当量が180g/eqであるエステル化物A1molを得た。
【0110】
得られた化合物Aに対して核磁気共鳴スペクトル(1H NMR)によって特性評価して、その結果は以下の通りである。
【0111】
1H NMR(CDCl3、500MHz): 4.15〜4.22(m、4H、COOCH2)、3.83(m、2H、COOCH2CH2O)、3.42(s、12H、OCH3)、2.58〜2.60(m、4H、COCH2CH2CO)、2.1(m、3H、COCH3)、1.63(m、2H、CH3CH2O)、1.0(m、3H、CH3CH2O)。
【0112】
赤外線吸収スペクトルにおける特徴的なピーク位置:エステルカルボニル基1730〜1740cm-1、エステル基のC―O―C結合1200cm-1、ホスファゼン骨格におけるP=N結合1217cm-1、ホスファゼン骨格におけるP―N結合874cm-1、メチルエーテル2995.3cm-1、P―O―C結合1035cm-1、CH2―O結合2983cm-1
【0113】
硬化剤である上記エステル化物A 90gにエポキシ当量が200g/eqであるo―クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100g、硬化促進剤である2―メチルイミダゾール0.2gを添加し、エポキシ樹脂組成物を製造した。該エポキシ樹脂組成物を用いて汎用銅張積層板の製作プロセスに基づいて国家基準、UL等の標準に合致する標準銅張積層板サンプルを得た。銅張積層板aと称し、該銅張積層板aの性能を測定し、その結果を表―1に示す。
【0114】
実施例2
本実施例におけるホスファゼン化合物の構造式は、以下の通りである。
【0115】
【化17】
【0116】
その製造方法は以下の通りである。
【0117】
2000mlの撹拌装置付き三口ガラス反応器にヒドロキノン1mol、安息香酸1mol、アセトン200mlを投入し、98%濃硫酸3mLを滴下し、1hをかけてエステル化反応を行った。その後、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン1mol、フェノール4molを添加し、撹拌しながら窒素ガスを導入し、60℃mで昇温し、60minをかけて20%水酸化ナトリウム溶液621gを滴下し、60℃で保温し、撹拌して10時間反応させた。反応終了後、物理的方法によって体系中の無機成分と水分を除去し、98%濃硫酸3mLを滴下し、テレフタル酸1molを添加し、更に3時間反応させた。その後、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン1molを更に添加し、更に5時間反応させた後、フェノール4mol、ヒドロキノン1molを添加し、更に8時間反応させた。反応終了後、物理的方法によって体系中の無機成分と水分を除去し、98%濃硫酸3mLを滴下し、安息香酸1molを添加し、2時間反応させた。反応後、物理的方法によって体系中の不純物と水分を除去し、体系中の溶媒を蒸留して除去し、上記構造を有するエステル当量が410g/eqであるエステル化物B1molを得た。
【0118】
得られた化合物Bに対して核磁気共鳴スペクトル(1H NMR)によって特性評価して、その結果は以下の通りである。
【0119】
【化18】
【0120】
赤外線吸収スペクトルにおける特徴的なピーク位置:エステルカルボニル基1730〜1740cm-1、エステル基のC―O―C結合1200cm-1、ホスファゼン骨格におけるP=N結合1217cm-1、ホスファゼン骨格におけるP―N結合874cm-1、P―O―C結合1035cm-1、パラ位の置換されたベンゼン環860〜790cm-1
【0121】
硬化剤である上記エステル化物B 205gにエポキシ当量が200g/eqであるo―クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100g、硬化促進剤である2―メチルイミダゾール0.2gを添加し、エポキシ樹脂組成物を製造した。該エポキシ樹脂組成物を用いて汎用銅張積層板の製作プロセスに基づいて国家標準、UL等の標準に合致する標準銅張積層板サンプルを得た。銅張積層板bと称し、該銅張積層板bの性能を測定し、その結果を表―1に示す。
【0122】
実施例3
本実施例におけるホスファゼン化合物の構造式は、以下の通りである。
【0123】
【化19】
【0124】
その製造方法は、以下の通りである。
【0125】
2000mlの撹拌装置付き三口ガラス反応器にエチレングリコール1mol、酢酸1mol、アセトン200mlを投入し、98%濃硫酸3mLを滴下し、1hをかけてエステル化反応を行った後、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン1mol、ナトリウムメトキシド4molを添加し、撹拌しながら窒素ガスを導入し、60℃まで昇温し、60minをかけて20%水酸化ナトリウム溶液620gを滴下し、60℃で保温し、撹拌して15時間反応させた。反応終了後、物理的方法によって体系中の無機成分と水分を除去し、98%濃硫酸3mLを滴下し、テレフタル酸1molを添加し、60℃で保温し、撹拌して3時間反応させた後、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン1molを添加し、3時間反応させた後、ナトリウムメトキシド4molを添加し、5時間反応させた。その後、ヒドロキノン1molを添加し、4時間反応させた。反応終了後、物理的方法によって体系中の無機成分と水分を除去し、98%濃硫酸3mLを滴下し、酢酸1molを添加し、3時間反応させた。反応終了後、物理的方法によって体系中の不純物と水分を除去し、体系中の溶媒を蒸留して除去し、上記構造を有するエステル当量が255g/eqであるエステル化物C1molを得た。
【0126】
得られた化合物Cに対して核磁気共鳴スペクトル(1H NMR)によって特性評価して、その結果は以下の通りである。
【0127】
【化20】
【0128】
赤外線吸収スペクトルにおける特徴的なピーク位置:エステルカルボニル基1730〜1740cm-1、エステル基のC―O―C結合1200cm-1、ホスファゼン骨格におけるP=N結合1217cm-1、ホスファゼン骨格におけるP―N結合874cm-1、メチルエーテル2995.3cm-1、P―O―C結合1035cm-1、CH2―O結合2983cm-1、パラ位の置換されたベンゼン環860〜790cm-1
【0129】
硬化剤である上記エステル化物C 128gにエポキシ当量が1200g/eqであるo―クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100g、硬化促進剤である2―メチルイミダゾール0.2gを添加し、エポキシ樹脂組成物を製造した。該エポキシ樹脂組成物を使用して汎用銅張積層板の製作プロセスに基づいて国家標準、UL等の標準に合致する標準銅張積層板サンプルを得た。銅張積層板cと称し、該銅張積層板のc性能を測定し、その結果を表―1に示す。
【0130】
実施例4
本実施例におけるホスファゼン化合物の構造式は、以下の通りである。
【0131】
【化21】
【0132】
その製造方法は以下の通りである。
【0133】
2000mlの撹拌装置付き三口ガラス反応器にヒドロキノン1mol、酢酸1mol、アセトン200mlを投入し、98%濃硫酸3mLを滴下し、1hをかけてエステル化反応を行った後、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン1mol、ナトリウムメトキシド4molを添加し、撹拌しながら窒素ガスを導入し、60℃まで昇温し、60minをかけて20%水酸化ナトリウム溶液621gを滴下し、60℃で保温し、撹拌して10時間反応させた。反応終了後、物理的方法によって体系中の無機成分と水分を除去し、98%濃硫酸3mLを滴下し、テレフタル酸1molを添加し、更に3時間反応させた。ヘキサクロロシクロトリホスファゼン1molを添加し、更に5時間反応させた後、ナトリウムメチラート4mol、キノール1molを添加し、8時間反応させた。反応終了後、物理的方法によって体系中の無機成分と水分を除去し、98%濃硫酸3mLを滴下し、酢酸1molを添加し、2時間反応させた。反応終了後、物理的方法によって体系中の不純物と水分を除去し、体系中の溶媒を蒸留して除去し、上記構造を有するエステル当量が250g/eqであるエステル化物D1molを得た。
【0134】
得られた化合物Dに対して核磁気共鳴スペクトル(1H NMR)によって特性評価して、その結果は以下の通りである。
【0135】
【化22】
【0136】
赤外線吸収スペクトルにおける特徴的なピーク位置:エステルカルボニル基1730〜1740cm-1、エステル基のC―O―C結合1200cm-1、ホスファゼン骨格におけるP=N結合1217cm-1、ホスファゼン骨格におけるP―N結合874cm-1、メチルエーテル2995.3cm-1、P―O―C結合1035cm-1、CH2―O結合2983cm-1、パラ位の置換されたベンゼン環860〜790cm-1
【0137】
硬化剤である上記エステル化物D 125gにエポキシ当量が200g/eqであるo―クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100g、硬化促進剤である2―メチルイミダゾール0.2gを添加し、エポキシ樹脂組成物を製造した。該エポキシ樹脂組成物を使用して汎用銅張積層板の製作プロセスに基づき国家標準、UL等の標準に合致する標準銅張積層板サンプルを得た。銅張積層板dと称し、該銅張積層板dの性能を測定し、その結果を表―1に示す。
【0138】
比較例1
エポキシ当量が200g/eqであるo―クレゾールノボラック型エポキシ樹脂200gに、フェノール性水酸基当量が105g/eqであるノボラック型樹脂硬化剤105g、難燃剤であるヘキサフェノキシホスファゼン70g、2―メチルイミダゾール0.2gを添加し、適量のブタノンで溶解させて溶液となり、標準ガラス布を使用して一般的な製造方法に基づき、樹脂含有量が50%である銅張積層板eを得た。該銅張積層板eの各性能を表―1に示す。
【0139】
比較例2
エポキシ当量が200g/eqであるo―クレゾールノボラック型エポキシ樹脂200gに、式(2)に示される構造を有する樹脂化合物220g、エステル当量が220g/eqである難燃剤としてのヘキサフェノキシホスファゼン70g及びピリジルアゾール0.2gを添加し、適量のブタノンで溶解させて溶液となり、標準ガラス布を使用して一般的な製造方法に基づき、樹脂含有量が50%である銅張積層板fを得た。該銅張積層板fの各性能を表―1に示す。
【0140】
【化23】
【0141】
実施例と比較例の測定結果は下記表―1に示される(具体的な測定方法は当業者にとって明らかなものであるため、ここで詳細な説明を省略する)。
【0142】
【0143】
表1から見て、本発明は、である式(I)に示される分子構造を有する化合物によって製造される樹脂組成物を使用することで、該樹脂組成物によって製造された銅張積層板の誘電率(1GHz)が3.28〜3.33であり、誘電正接(1GHz)が0.005〜0.006であり、Tgが175℃以上であり、T―剥離強度が1.90kg/mm2以上であり、層間剥離強度が1.64kg/mm2以上であり、飽和吸水率が0.35%以下であり、比較例に係る銅張積層板よりも性能が遥かに優れるものである。
【0144】
本発明は、上記実施例によって本発明に係るホスファゼン化合物、樹脂封止材及び複合金属基板を説明したが、上記実施例に限定されず、即ち、本発明は上記実施例に依存しなければ実施できないものであることを意味していないと、出願人は声明する。当業者にとっては、本発明に対するあらゆる改良、本発明の製品の各原料に対する同等置換及び補助成分の添加、具体的な方式の選択等は、いずれも本発明の保護範囲と開示範囲に含まれることが明らかなものである。