【課題】金属箔としてアルミニウム箔を使用して、しかも断裁したり破砕したりした際の切れが良く断面が白化しにくいため、現状よりも良好な金属光沢を得ることができるグリッターと、その製造方法を提供する。
【解決手段】グリッターは、硬質アルミニウム箔、および樹脂層の積層体からなる。グリッターの製造方法は、硬質アルミニウム箔の少なくとも片面に、樹脂層のもとになる、少なくともポリアミドイミド樹脂を含む塗剤を塗布して前駆層を形成したのち、170℃以上、240℃以下の温度で焼き付ける工程を含む。
前記樹脂層は、顔料とポリアミドイミド樹脂とを、両者の質量比P(顔料)/R(ポリアミドイミド樹脂)で表して10/90以上、25/75以下の範囲で含む着色層を備えている請求項1または2に記載のグリッター。
前記請求項1ないし4のいずいれか1項に記載のグリッターの製造方法であって、前記硬質アルミニウム箔の少なくとも片面に、前記樹脂層のもとになる、少なくともポリアミドイミド樹脂を含む塗剤を塗布して前記樹脂層の前駆層を形成したのち、170℃以上、240℃以下の温度で焼き付ける工程を含むグリッターの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のグリッターは、硬質アルミニウム箔、および樹脂層の積層体からなる。
上記本発明のグリッターによれば、アルミニウム箔として、通常の一般的な軟質のアルミニウム箔より硬い硬質アルミニウム箔を選択して用いることにより、積層体を断裁したり破砕したりする際の切れを良くして断面を白化しにくくでき、現状よりも良好な金属光沢を得ることができる。
【0011】
そのため、例えば前述したように樹脂成形品等、あるいは化粧品等に配合したり、さらには直接散布したりして、様々な表面に、より一層良好な、きらきらとした金属光沢を持たせることが可能となる。
〈硬質アルミニウム箔〉
上記本発明のグリッターのもとになる硬質アルミニウム箔としては、汎用の軟質のアルミニウム箔よりも硬く切れの良い種々のアルミニウム箔が、いずれも使用可能である。
【0012】
かかる硬質アルミニウム箔としては、前述したアルミニウム箔の持つ利点を最大限に生かすことを考慮すると、例えば日本工業規格JIS H4000
:2014「アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条」において規定された合金番号で表して1085、1070、1050、1N30、1100、3001、3004、8021、8079等の、純度98.0%以上のアルミニウム合金ないしは純度99.0%以上の純アルミニウムからなり、しかも硬質のアルミニウム箔等が挙げられる。
【0013】
特に、JIS H4160
−1994「アルミニウム及びアルミニウム合金はく」において規定された、上記純アルミニウムないしアルミニウム合金からなり、加工硬化によって硬質とされて、JIS H0001:1998「アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金−質別記号」による質別記号がHに分類される各種の硬質アルミニウム箔、中でも特に、上記質別記号がH11〜H19に分類される硬質アルミニウム箔が好適に使用される。
【0014】
上記硬質アルミニウム箔の厚みは特に限定されず、上記JIS H4160
−1994において規定された0.006mm(=6μm)以上、0.2mm(=200μm)以下の範囲の種々の厚みで、なおかつ硬質のアルミニウム箔がいずれも使用可能である。
ただし、硬質アルミニウム箔に適度のコシと強さとを付与して、その少なくとも片面に樹脂層を積層して積層体を製造する際に破れたりシワになったりするのを防止することを考慮すると、硬質アルミニウム箔の厚みは、上記の範囲でも8μm以上、特に9μm上であるのが好ましい。
【0015】
また、積層体を断裁したり破砕したりする際の切れをさらに良くして、その断面の白化をより一層有効に防止することを考慮すると、当該硬質アルミニウム箔の厚みは、上記の範囲でも20μmmm以下、特に15μm以下であるのが好ましい。
〈樹脂層〉
樹脂層は、上記硬質アルミニウム箔の少なくとも片面、好ましくは両面に積層されて、樹脂成形品や樹脂シートを構成する樹脂、あるいはマニキュア等の化粧品の構成成分に対するグリッターの親和性、分散性を向上するために機能する。また、後述するように着色剤を配合することで、グリッターに任意の色味を付与するためにも機能する。
【0016】
上記樹脂層を形成する樹脂としては、特にグリッターを樹脂とペレット化したマスターバッチとして樹脂成形品等の成形に用いた際等に、当該成形時に加わる熱や応力等によって硬質アルミニウム箔から剥離したりしない高い耐熱性、および密着性を樹脂層に付与するために、種々の熱硬化性樹脂や高耐熱性の熱可塑性樹脂等が使用可能である。
特にポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0017】
ポリアミドイミド樹脂は、任意の溶剤によって塗剤(ワニス)化したりするのが容易なように分子量を下げた状態で供給されるため上記塗剤化が容易である。
またポリアミドイミド樹脂は、硬質アルミニウム箔の少なくとも片面に上記塗剤を塗布して樹脂層のもとになる前駆層を形成したのち焼き付けると、重縮合による脱水反応をして分子量が増大するため、例えば耐熱温度が260〜280℃程度といった高耐熱性の樹脂層を形成できる。
【0018】
しかも焼き付けをしても、ポリアミドイミド樹脂は分子量が増大するだけで、熱硬化性樹脂のように架橋硬化反応しないため、樹脂層は高い柔軟性を維持でき、硬質アルミニウム箔に対する追従性、密着性が低下するおそれもない。
ポリアミドイミド樹脂としては、上記の特性に優れた直鎖熱可塑型、もしくは直鎖非熱可塑型の芳香族ポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0019】
またポリアミドイミド樹脂としては、固形で供給されるものの他、例えば所定の1種または2種以上の溶剤に所定の割合で溶解した溶液として供給されるものも使用可能である。
前者の場合は、任意の1種または2種以上の溶剤に所定の割合で溶解して塗剤を調製すればよい。また後者の場合はそのままで、あるいは必要に応じてさらに任意の溶剤を加えて塗剤を調製すればよい。
【0020】
(着色層)
樹脂層は、グリッターを任意の色味に着色する場合、少なくとも着色層を含んでいるのが好ましい。
上記着色層を単層で樹脂層としてもよいが、当該着色層上にポリアミドイミド樹脂を含むクリア層を被覆して、この2層によって樹脂層を構成するのが好ましい。
【0021】
着色層は、ポリアミドイミド樹脂に顔料等の着色剤を加えて形成され、当該着色剤を含まないクリア層に比べて耐熱性が僅かに低いことから、その上をより耐熱性に優れたクリア層で被覆することにより、樹脂層の全体での耐熱性を向上できる。
そのため、特にグリッターを樹脂とペレット化したマスターバッチとして樹脂成形品等の成形に用いた際等に、硬質アルミニウム箔から剥離したりしない高い耐熱性と、それに伴う良好な密着性とを樹脂層に付与できる。
【0022】
着色剤としては、特に色味の耐熱性、耐候性、耐光性等を向上することを考慮すると、有機または無機の各種の顔料が好ましい。
着色層は、着色剤として顔料を含む場合、上記顔料の質量をP、ポリアミドイミド樹脂の質量をRとして、両者を質量比P/Rで表して10/90以上、25/75以下の範囲で含んでいるのが好ましい。
【0023】
この範囲より顔料が少ない場合には、当該顔料の色味等によっても異なるもののグリッター、ひいては当該グリッターを用いた樹脂成形品等を十分な色濃度に着色できないおそれがある。
一方、上記の範囲よりポリアミドイミド樹脂が少ない場合には、着色層の、硬質アルミニウム箔に対する密着性が低下して、特にグリッターを樹脂とペレット化したマスターバッチとして樹脂成形品等の成形に用いた際等に、上記着色層を含む樹脂層が硬質アルミニウム箔から剥離しやすくなるおそれがある。
【0024】
そして、樹脂層の剥離によってアルミニウム箔の表面が露出した、着色されていないグリッターを生じて、却って樹脂成形品等を十分な色濃度に着色できなくなるおそれがある。
これに対し、質量比P/Rを上記の範囲とすることにより着色層、ひいては樹脂層の、硬質アルミニウム箔に対する密着性の低下を抑制しながらグリッター、そして樹脂成形品等を十分な色濃度に着色できる。
【0025】
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、質量比P/Rは、上記の範囲でも15/85以上であるのが好ましく、20/80以下であるのが好ましい。
なおポリアミドイミド樹脂として、前述したようにあらかじめ溶剤に溶解した溶液として供給されるものを使用する場合、質量Rは、当該溶液中に含まれる固形分としてのポリアミドイミド樹脂の質量である。
【0026】
着色層は、上記ポリアミドイミド樹脂、顔料、および任意の溶剤を所定の割合で含む塗剤を調製し、かかる塗剤を、従来同様にリバースロールコート法、ダイコート法、グラビアコート法等のコーティング法によって硬質アルミニウム箔の表面に塗布し、乾燥させて溶剤を除去して上記着色層のもとになる前駆層を形成したのち、さらに焼き付けて形成される。
【0027】
この焼き付けにより、前述したようにポリアミドイミド樹脂が重縮合による脱水反応をして分子量が増大して、所定の耐熱性を有する着色層が形成されるとともに、当該着色層が硬質アルミニウム箔の表面に定着されて、当該着色層を含む樹脂層の密着性が向上される。
焼き付けには、従来同様にガス熱風炉や電熱ドラム等を使用できる。
【0028】
例えば硬質アルミニウム箔の表面に塗布した塗剤を乾燥させて前駆層を形成した硬質アルミニウム箔を、所定の焼き付け温度に設定したガス熱風炉に通したり、所定の焼き付け温度に設定した電熱ドラムに巻き付けたりすることで、上記前駆層が焼き付けられて着色層が形成される。
また、例えばガス熱風炉による焼き付けの場合はその前段部を低温に設定して、塗剤の乾燥による前駆層の形成に利用してもよい。
【0029】
また電熱ドラムの場合は、その前段に低温に設定したガス熱風炉を設けて、塗剤の乾燥による前駆層の形成に利用してもよい。
硬質アルミニウム箔の両面に着色層を形成する場合は、当該両面にほぼ同時に前駆層を形成したのち一度に焼き付けてもよいし、片面ずつ別個に前駆層を形成して別個に焼き付けをしてもよい。
【0030】
ただし電熱ドラムは接触式のため、まず片面に前駆層を形成し、当該前駆層を形成した面を外にして電熱ドラムに接触させて焼き付けたのち、反対面に前駆層を形成して、同様に前駆層を形成した面を外にして電熱ドラムに接触させて焼き付けるのが好ましい。
焼き付けの温度は170℃以上、240℃以下に設定するのが好ましい。
焼き付けの温度がこの範囲未満では、前述した脱水反応が良好に進行しなかったり、着色層がアルミニウム箔の表面に良好に定着されなかったりして、当該着色層の耐熱性や、着色層を含む樹脂層の密着性が不十分になるおそれがある。
【0031】
一方、焼き付けの温度が上記の範囲を超える場合には脱水反応が過剰に進行して着色層が硬くなりすぎて、硬質アルミニウム箔に対する追従性が低下する結果、当該硬質アルミニウム箔に対する着色層、そして樹脂層の密着性が却って低下するおそれがある。
また、アルミニウムの焼きなましが進行して硬質アルミニウム箔としての硬さが失われ、グリッターのもとになる積層体を断裁したり破砕したりする際の切れが悪くなって断面が白化しやすくなるおそれもある。
【0032】
これに対し、焼き付けの温度を上記の範囲に設定することにより、着色層が硬くなりすぎたり、硬質アルミニウム箔が柔らかくなったりするのを抑制しながら、当該硬質アルミニウム箔に対する着色層、ひいては樹脂層の耐熱性、密着性を良好に向上できる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、前駆層の焼き付けの温度は、上記の範囲でも180℃以上であるの好ましい。
【0033】
また焼き付けに先立つ乾燥は、前述したようにガス熱風炉を通過させる等して、100℃以上の温度で実施するのが好ましい。
乾燥の温度がこの範囲未満では、続く焼き付けの温度との差が大きくなりすぎて、焼き付け時に硬質アルミニウム箔にシワを生じたりしやすくなるおそれがある。
また乾燥の時間が長くかかったり、乾燥のために硬質アルミニウム箔を搬送する距離が長くなったりして、グリッターの生産性が低下するおそれもある。
【0034】
これに対し、乾燥の温度を上記の範囲に設定することにより、続く焼き付け時に硬質アルミニウム箔にシワを生じさせることなしに、着色層を生産性良く形成することができる。
なお乾燥の温度は、上記の範囲でも150℃以下、特に120℃以下に設定するのが好ましい。
【0035】
乾燥の温度が上記の範囲を超える場合には、硬質アルミニウム箔の表面に塗布した塗剤中から溶剤が急激に蒸発する等して、均一で連続した前駆層、ひいては着色層を形成できないおそれがある。
着色層の厚みは、樹脂層をクリア層との2層構造とする場合、0.2μm以上、特に0.5μm以上であるのが好ましく、10μm以下、特に5μm以下であるのが好ましい。
【0036】
また硬質アルミニウム箔の、少なくとも片面の樹脂層を着色層のみの単層構造とする場合、当該単層の着色層の厚みは0.5μm以上、特に1μm以上であるのが好ましく、20μm以下、特に10μm以下であるのが好ましい。
いずれの場合も着色層の厚みが上記の範囲未満では、当該着色層に配合する顔料の色味や、あるいは前述した顔料とポリアミドイミド樹脂との質量比P/Rにもよるもののグリッター、ひいては樹脂成形品等を十分な色濃度に着色できないおそれがある。
【0037】
一方、着色層の厚みが上記の範囲を超える場合には当該着色層、ひいては樹脂層の柔軟性や、硬質アルミニウム箔に対する追従性、密着性が低下して、特にグリッターを樹脂とペレット化したマスターバッチとして樹脂成形品等の成形に用いた際等に、上記着色層を含む樹脂層が硬質アルミニウム箔から剥離しやすくなるおそれがある。
そして、樹脂層の剥離によってアルミニウム箔の表面が露出した、着色されていないグリッターを生じて、却って樹脂成形品等を十分な色濃度に着色できなくなるおそれがある。
【0038】
これに対し着色層の厚みを上記の範囲とすることにより、当該着色層を含む樹脂層の、硬質アルミニウム箔に対する密着性の低下を抑制しながらグリッター、そして樹脂成形品等を十分な色濃度に着色できる。
(クリア層)
クリア層は、着色剤を含まない(除く)こと以外は着色層と同様にして形成される。
【0039】
すなわちポリアミドイミド樹脂を含み、かつ着色剤を含まない塗剤を上記着色層の上に塗布し、必要に応じて乾燥させて上記クリア層のもとになる前駆層を形成したのちさらに焼き付ける。
そうすると、前述したようにポリアミドイミド樹脂が重縮合による脱水反応をして分子量が増大して、所定の耐熱性を有するクリア層が形成されるとともに、当該クリア層が着色層の表面に定着されてその密着性が向上される。
【0040】
ポリアミドイミド樹脂としては、着色層で使用したのと同じ、または同系のポリアミドイミド樹脂を使用するのが、両層の親和性等を向上したり、使用材料の種類を減らして生産性良く、コスト安価にグリッターを製造したりする上で好ましい。
焼き付けには、やはりガス熱風炉や電熱ドラム等が使用される。
例えば、先に形成した着色層上に塗剤を塗布し、乾燥させて前駆層を形成した硬質アルミニウム箔を、所定の焼き付け温度に設定したガス熱風炉に通したり、所定の焼き付け温度に設定した電熱ドラムに巻き付けたりすることで、上記前駆層が焼き付けられて、着色層上にクリア層が積層された樹脂層が形成される。
【0041】
また、例えばガス熱風炉による焼き付けの場合はその前段部を低温に設定して、塗剤の乾燥による前駆層の形成に利用してもよい。
また電熱ドラムの場合は、その前に低温に設定したガス熱風炉を設けて、塗剤の乾燥による前駆層の形成に利用してもよい。
硬質アルミニウム箔の両面の着色層上にクリア層を積層する場合は、当該両面のクリア層上にほぼ同時に前駆層を形成したのち一度に焼き付けてもよいし、片面ずつ別個に前駆層を形成して別個に焼き付けをしてもよい。
【0042】
ただし電熱ドラムは接触式のため、まず片面のクリア層上に前駆層を形成し、当該前駆層を形成した面を外にして電熱ドラムに接触させて焼き付けたのち、反対面のクリア層上に前駆層を形成して、同様に前駆層を形成した面を外にして電熱ドラムに接触させて焼き付けるのが好ましい。
焼き付けの温度は170℃以上、特に180℃以上に設定するのが好ましく、240℃以下に設定するのが好ましい。また焼き付けに先立つ乾燥の温度は100℃以上に設定するのが好ましく、150℃以下、特に120℃以下に設定するのが好ましい。これらの理由は前述したとおりである。
【0043】
なお、焼き付け前の着色層の前駆層上にクリア層の前駆層を積層して、両層を一度に焼き付けることも可能である。しかし、焼き付けによる脱水反応で生じる水分を速やかに除去して、より一層耐熱性等に優れた着色層、クリア層を形成することを考慮すると、当該両層は、上記のように別個に焼き付けて形成するのが好ましい。
着色層とともに樹脂層を構成するクリア層の厚みは0.2μm以上、特に0.5μm以上であるのが好ましく、10μm以下、特に5μm以下であるのが好ましい。
【0044】
クリア層の厚みがこの範囲未満では、当該クリア層を着色層の上に積層することによる、樹脂層の全体での耐熱性、密着性を向上する効果が十分に得られないおそれがある。
一方、クリア層の厚みが上記の範囲を超える場合には当該クリア層、ひいては樹脂層の柔軟性や、硬質アルミニウム箔に対する追従性、密着性が低下するおそれがある。
そのためいずれの場合にも、特にグリッターを樹脂とペレット化したマスターバッチとして樹脂成形品等の成形に用いた際等に、上記クリア層を含む樹脂層が硬質アルミニウム箔から剥離しやすくなるおそれがある。
【0045】
そして、樹脂層の剥離によってアルミニウム箔の表面が露出した、着色されていないグリッターを生じて、却って樹脂成形品等を十分な色濃度に着色できなくなるおそれがある。
なお本発明では、例えばグリッターを着色しない場合は着色層を省略して、硬質アルミニウム箔の両面に直接に、クリア層のみを樹脂層として形成してもよいし、硬質アルミニウム箔の片面のみ着色層とクリア層とを形成して樹脂層とし、反対面には着色層を形成せずに直接にクリア層を形成して樹脂層としてもよい。
【0046】
各層は任意の手順で形成できる。例えば硬質アルミニウム箔の両面に共に着色層とクリア層を形成して樹脂層とする場合は、
(1) まず硬質アルミニウム箔の片面に着色層用の塗剤を塗布し、乾燥させたのち焼き付けて着色層を形成し、
(2) 次いで上記硬質アルミニウム箔の反対面に着色層用の塗剤を塗布し、乾燥させたのち焼き付けて着色層を形成したのち、
(3) 上記いずれか一方の着色層の上にクリア層用の塗剤を塗布し、乾燥させたのち焼き付けてクリア層を形成し、さらに
(4) 他方の着色層の上にクリア層用の塗剤を塗布し、乾燥させたのち焼き付けてクリア層を形成する
のが好ましい。
【0047】
〈グリッターの製造〉
硬質アルミニウム箔の少なくとも片面に上記樹脂層を形成した積層体を、従来同様に断裁したり破砕したりすることで本発明のグリッターが製造される。
例えば上記積層体を、まず幅0.05〜1.5mm程度にスリットして糸状にし、さらに長さ0.1mm〜20mm程度にカットしたり(断裁)、あるいは上記積層体を、例えばハンマーミル、ボールミル、ニーダー等を用いて粉砕したりすることでグリッターが製造される。
【0048】
上記本発明のグリッターは硬質アルミニウム箔を含み、前述したように積層体を断裁したり破砕したりする際の切れが良く断面が白化しにくいため、例えば樹脂成形品や樹脂シート、あるいは化粧品等に配合したり、さらには直接散布したりすることで、様々な表面に、きらきらとしたより一層良好な金属光沢を持たせることができる。
【実施例】
【0049】
〈実施例1〉
(硬質アルミニウム箔)
硬質アルミニウム箔としては、合金番号1N30の純アルミニウムからなり、加工硬化によって質別記号がHとされた、厚み12μmの長尺のアルミニウム箔を用いた。
(着色層の形成)
黄色顔料、直鎖熱可塑型の芳香族ポリアミドイミド樹脂、および下記表1に示す各溶剤を、それぞれ同表に示す割合で配合して着色層用の塗剤を調製した。
【0050】
【表1】
【0051】
黄色顔料と芳香族ポリアミドイミド樹脂の質量比P/Rは20/80であった。
先に用意した硬質アルミニウム箔を順次送りながら、その片面に、ロールコーターを用いて上記塗剤を塗布し、次いで110℃に設定したガス熱風炉を通して乾燥させて着色層の前駆層を形成したのち、上記前駆層を形成した面を外にして、200℃に設定した電熱ドラムに接触させて焼き付けて、上記片面に着色層を形成した。
【0052】
この操作を、硬質アルミニウム箔の反対面にも実施して、当該硬質アルミニウム箔の両面に、それぞれ厚み2μmの着色層を形成した。
(クリア層の形成)
着色層で使用したのと同じ直鎖熱可塑型の芳香族ポリアミドイミド樹脂、および下記表2に示す各溶剤を、それぞれ同表に示す割合で配合してクリア層用の塗剤を調製した。
【0053】
【表2】
【0054】
先の工程で両面に着色層を形成した硬質アルミニウム箔を順次送りながら、その片面の着色層の上に、ロールコーターを用いて上記塗剤を塗布し、次いで110℃に設定したガス熱風炉を通して乾燥させてクリア層の前駆層を形成したのち、上記前駆層を形成した面を外にして、200℃に設定した電熱ドラムに接触させて焼き付けて、上記着色層上にクリア層を積層した。
【0055】
この操作を、硬質アルミニウム箔の反対面の着色層上にも実施して、当該硬質アルミニウム箔の両面の着色層上に、それぞれ厚み2μmのクリア層を積層して、硬質アルミニウム箔の両面に、それぞれ着色層と当該着色層を被覆するクリア層の2層からなる樹脂層が形成された積層体を作製した。
(グリッターの製造)
上記積層体を幅約0.2mmの糸状にスリットし、さらに長さ約0.3mmにカットしてグリッターを製造した。
【0056】
〈実施例2〜4〉
着色層用の塗剤における、黄色顔料と芳香族ポリアミドイミド樹脂との質量比P/Rを10/90(実施例2)、15/85(実施例3)、および25/75(実施例4)としたこと以外は実施例1と同様にして、硬質アルミニウム箔の両面に、それぞれ着色層と当該着色層を被覆するクリア層の2層からなる樹脂層が形成された積層体を作製し、グリッターを製造した。
【0057】
〈実施例5〉
着色層の厚みを4μmとするとともにクリア層を省略したこと以外は実施例1と同様にして、硬質アルミニウム箔の両面に、それぞれ上記着色層のみからなる単層の樹脂層が形成された積層体を作製し、グリッターを製造した。
〈実施例6〉
着色層とクリア層の形成順序を逆にしたこと以外は実施例1と同様にして、硬質アルミニウム箔の両面に、それぞれクリア層と当該クリア層を被覆する着色層の2層からなる樹脂層が形成された積層体を作製し、グリッターを製造した。
【0058】
〈実施例7〜10〉
着色層、クリア層のもとになる前駆層の焼き付け温度をそれぞれ250℃(実施例7)、240℃(実施例8)、180℃(実施例9)、および170℃(実施例10)としたこと以外は実施例1と同様にして、硬質アルミニウム箔の両面に、それぞれ着色層と当該着色層を被覆するクリア層の2層からなる樹脂層が形成された積層体を作製し、グリッターを製造した。
【0059】
〈比較例1〉
硬質アルミニウム箔に代えて、合金番号1N30の純アルミニウムからなり、焼きなましによって質別記号がOとされた、厚み12μmの長尺の軟質アルミニウム箔を用いたこと以外は実施例1と同様にして、上記軟質アルミニウム箔の両面に、それぞれ着色層と当該着色層を被覆するクリア層の2層からなる樹脂層が形成された積層体を作製し、グリッターを製造した。
【0060】
〈断面の白化〉
上記各実施例、比較例で製造したグリッターの断面を、顕微鏡を用いて観察して、下記の基準で白化の有無を評価した。
○:白化は全く見られなかった。良好。
△:僅かに白化が見られたものの、通常レベル。
【0061】
×:著しく白化しているのが見られた。不良。
〈実用試験〉
上記各実施例、比較例で製造したグリッター30質量部を、ABS樹脂70質量部に加えて一軸押出機で混練し、押し出してホットカッターでカットして直径約2mm、長さ約5mmのペレットを作製した。
【0062】
次いでこのペレットをマスターバッチとして、同量でかつ同寸法の、グリッターを混入していないABS樹脂のペレットと混合し、押出機に供給して混練したのち押出成形して樹脂成形品を製造した。
そして製造した樹脂成形品を観察して、下記の基準でグリッターの特性を評価した。
○:樹脂成型品中に分散したグリッターには全く変化は見られず、樹脂成型品はきらきらとした良好な金属光沢を有していた。良好。
【0063】
△:樹脂成型品中に分散したグリッターの中に、樹脂層が剥離しているものが僅かに見られたり、上記剥離や、あるいは断面の白化によって樹脂成型品の金属光沢が僅かに不足していたりしたが、通常レベル。
×:樹脂成型品中に分散したグリッターの中に、樹脂層が剥離しているものが多数見られたり、上記剥離や、あるいは断面の白化によって樹脂成型品の金属光沢が大幅に不足していたりした。不良。
【0064】
以上の結果を表3、表4に示す。なお表中、層構成の欄の記号は下記のとおり。
I:クリア層/着色層/アルミニウム箔/着色層/クリア層
II:着色層/アルミニウム箔/着色層
III:着色層/クリア層/アルミニウム箔/クリア層/着色層
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
表3、表4の実施例1〜10、比較例1の結果より、アルミニウム箔として硬質アルミニウム箔を選択して用いることにより、積層体を断裁したり破砕したりする際の切れを良くして断面を白化しにくくして、現状よりも樹脂成形品に良好な金属光沢を付与できることが判った。
また、特に実施例1〜4の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、着色層を構成する顔料とポリアミドイミド樹脂の質量比P/Rは10/90以上、特に15/85以上であるのが好ましく、25/75以下、特に20/80以下であるのが好ましいことが判った。
【0068】
また実施例1、5、6の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると樹脂層は、着色層と、当該着色層上に被覆されたクリア層の2層構造とするのが好ましいことが判った。
さらに実施例1、7〜10の結果より、樹脂層(着色層、クリア層)の焼き付け温度は170℃以上、特に180℃以上であるのが好ましく、240℃以下であるのが好ましいことが判った。