特開2017-122379(P2017-122379A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017122379-津波避難用フロート 図000003
  • 特開2017122379-津波避難用フロート 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-122379(P2017-122379A)
(43)【公開日】2017年7月13日
(54)【発明の名称】津波避難用フロート
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20170616BHJP
   B63C 9/03 20060101ALI20170616BHJP
   B63B 43/08 20060101ALI20170616BHJP
【FI】
   E04H9/14 Z
   B63C9/03
   B63B43/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-9252(P2016-9252)
(22)【出願日】2016年1月4日
(71)【出願人】
【識別番号】505073118
【氏名又は名称】株式会社未来予測研究所
(72)【発明者】
【氏名】米田 庄司
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AB23
2E139AB24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】収容力の面からも製作費の面からも広く社会が採用可能な津波用の避難施設を提供する。
【解決手段】木材あるいは鋼材で長方形のフレーム1と縦フレームをまず製作し、その底と周囲を板もしくは鋼板6で囲い、次にその底に重しとなるコンクリート7を打ちもしくは鋼材を敷き、その上に間伐材8を縦、横方向に周囲の板などまで隙間なく敷きつめ、その上に発泡プラスチック11を敷きつめ、その上に甲板と手すり、を取りつけ、津波避難用フロート20を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材あるいは鋼材の長方形のフレームをまず製作し、
その底と周囲を板もしくは鋼板で囲い、
次にその底に重しとなるコンクリートを打ちもしくは鋼材を敷き、
その上に間伐材を縦、横方向にフレームに取りつけた板等まで隙間なく敷きつめ、
その上に発泡プラスチックを敷きつめ、
その上に甲板と手すり、
を取りつけた津波避難用フロート。
【請求項2】
間伐材は相互に直交するよう敷きつめた、
ことを特徴とする請求項1に記載の津波避難用フロート。
【請求項3】
間伐材を何層か敷きつめるとき、上下、左右の接触する部分に接着剤を塗り、
またはボルトやバンドで締結し、
全体を一体の合板とほぼ同様のものとする、
ことを特徴とする請求項2に記載の津波避難用フロート。
【請求項4】
間伐材を所定の位置まで何層か敷きつめた後、
柱または鋼材で間伐材全体を押え、
かつ両端をフレームに固定した、
ことを特徴とする請求項1に記載の津波避難用フロート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は津波の避難用フロートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からある津波用の避難施設としては大きくはタワー型のものと潜水艇型のフロートタイプのものがある。これらはいずれも建造費が一人当たり20〜30万円と高額であり、かつタワー型でもせいぜい200〜300人用、潜水艇型のフロータイプでは最大で収容力は50人程度である。そのために実際の使用においては多数の人が殺到した場合、到底それに応じられない。製作費はタワー型で5000〜6000万円、潜水艇型で1000万円前後である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
津波用の避難施設はそれが必要になるときには最低でも数百人、できれば1000人規模の収容力が必要になるが、その条件のものは建造物の収容力からも製作費用からも合理的なものがないのが実情である。
【0004】
本発明は収容力の点からも製作費の点からも実用的な津波用の避難施設を提供することを目的とする。
【問題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために請求項1にかかる発明について、
木材あるいは鋼材の長方形のフレームをまず製作し、その底と周囲を板もしくは鋼板で囲い、次にその底に重しとなるコンクリートを打ち、もしくは鋼材を敷き、その上に間伐材を縦、横方向にフレームに取りつけた板等まで隙間なく敷きつめ、その上に発泡プラスチックを敷きつめ、その上に甲板と手すりを取りつけた津波避難用フロート。
【0006】
津波避難用フロートは多数の人が乗れるには全体の浮力をかなり大きくする必要がある。と同時に、安定性の関係で重心を低くする必要がある。そのためには津波避難用フロートの底にかなりの重量の重りを取りつける必要がある。重りの重量を少なくするにはその取り付け位置をかなり海面から深い位置にする必要がある。
1000人規模の津波避難用フロートは従来の船舶構造物では例えば幅15メートル、長さ30メートル、高さ5〜6メートルのかなり頑丈な鋼鉄製の構造物の底に鋼材を取りつけたものとなる。そのため建造費は高額となり、かつ設置場所は津波用に避難設備のために海岸から数百メートル内陸となる。これは大型の鋼鉄製の台船を海岸からかなり内側に据えつけることであり、設置は容易ではない。
これに対し本発明の津波避難用フロートは木材または鋼材でフレームを設置場所で組み立て、その外周を木材または鋼板で囲い、その底にまずコンクリートを打ち、あるいは鋼材を取りつけて重しとし、その上に間伐材を相互に直交するように何層も敷きつめ、その上に発泡プラスチックを敷きつめて、その上に甲板を取りつけることで十分使用に耐えるものが建造できる。特に造船の技術は必要としない。
この寸法は上記の1000人用の船舶構造物との比較では同じ寸法でも重しの重量はかなり軽くすることが可能である。それは間伐材が重りの役割も兼ねるためである。
【0007】
また請求項2に係る発明について、間伐材は相互に直交するよう敷きつめた津波避難用フロート。
【0008】
これにより本発明の津波避難用フロートは発泡プラスチックよりもかなり割安な間伐材で浮力を得ると同時に、重心の位置を下げることができ、かつ構造的に極めて強固なものとなる。
【0009】
また請求項3に係る発明について、間伐材を何層か敷きつめるとき、上下、左右の接触する部分に接着剤を塗り、またはボルトやバンドで締結し全体を一体の合板とほぼ同様のものとする。
【0010】
このために津波により津波避難用フロートが浮上し、流され、岸壁やその他の障害物に激突した際に間伐材が衝撃を受け止め、全体の破断、沈没を阻止する力が著しく高まる。
【0011】
また請求項4に係る発明について、間伐材を所定の位置まで何層か敷きつめた後、柱または鋼材で間伐材全体を押え、その両端をフレームに固定する。
【0012】
これにより特に長軸方向の衝撃に対して間伐材は一体の合板に近い強度を発揮して衝撃に耐え、津波避難用フロートの破損を阻止する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、多数の人が乗れ津波の衝撃にも耐える大型の津波避難用フロートがどの場所にも安く設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例を示す津波避難用フロートの一部切欠断面を含む外観図である。
図2】本発明の津波避難用フロートのフレームの内部に間伐材を敷きつめ、その上から柱などで押さえ、かつその柱の両端をフレームに固定した状態の外観図である。
図3】津波避難用フロートのフレーム内部に敷きつめた何層かの間伐材の相互の締結を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1図3に基づいて説明する。
【0016】
図1に、本発明の実施形態に係る一部切欠断を含む外観図を示す。
津波避難用フロート20は横方向のフレーム1や縦方向の縦フレーム10とそれに取りつけた板や鋼板6とその内部に取りつける各種資材より構成され、上部は手すり2のついた甲板3である。
この津波避難用フロートは一般的には海岸から少し陸地内部に設置されるので甲板にははしご4で上る。甲板が広い場合には人が乗って津波で流される場合、傾いて一方向に偏らないように仕切りの手すり5も取りつけておく。
【0017】
津波避難用フロート20は船の船殻のようにそれで外部からの衝撃に耐えるような強固なものとする必要はなく、かいつまんで言うと全体を締結する意味合いのものである。かつ防水性も特には必要はない。
津波避難用フロート20の内部にはまずコンクリートや鋼材7などを取り付ける。その上に間伐材8を取りつける。これは何層も敷きつめるが、その場合、それぞれの層は図3に示すように同一方向としかつ上下の層は互いに直交させ、かつ左右、上下の間伐材8は出来るかぎり接着剤12やボルト13、あるいはバンド14で締結する。
1000人乗りの津波避難用フロート20で全長は約30メートル、幅15メートル、高さ4〜5メートル、内部の重りのコンクリート7の厚さは30〜50センチメートル、間伐材8は2〜3メートルの厚さとなる。
【0018】
間伐材8を2〜3メートルの厚さまで敷きつめた後、図2に示すようにその上に間伐材を押さえる部材9を取り付け、その両端は縦方向のフレーム10に固定する。
間伐材8の価格は発泡プラスチック11の数分の一の価格であり、これにより前述のように全体の衝撃を受けとめ、かつ重りの重量を担う浮力の効果を発揮し、かつ重りの位置を下げる効果がある。
間伐材8は単体で比重が0.5程度で、大きな浮力を有するので、津波避難用フロート20の内部に海水が入っても沈む心配がない。これは船の船体に穴が開いたときのように沈むことがなく、フレーム1とその周囲の外板は防水性や衝撃に耐える強度を必要とせず、製作費は著しく安価となる。
【0019】
間伐材8を敷きつめ、間伐材を押える部材9で固定した後、発泡プラスチック11をその上に取りつける。その厚さは1000人乗りの場合で2〜3メートル程度である。この発泡プラスチック11も上から押さえるように横方向のフレーム1に板や鋼板6で押さえて固定し、その上は甲板3とし、次に手すり2等も取りつける。
その他津波で沖に流された場合に必要なさまざまな船舶の装備も備えるが、ここではそれは一般的なことであり省く。
【0020】
ここでは1000人乗りのかなり大型の津波避難用フロート20を例に取り上げたが、小規模なものは全長6〜10メートル、全幅3〜5メートル程度のもので、50人程度の収容力のものも可能である。このような規模のものも人が乗った状態での安定性を計算して重りの重量、その位置、間伐材の厚さ、発泡プラスチックの厚さを決めて製作する。これらを資材がむき出しの状態で全体を梱包しておく方法も可能ではあるが、実際に使用するまでにかなり長い年月を要するのが普通であり、その間に間伐材の間に動物が住み着き、人に危害を与える危険性もあり、また発泡プラスチックは燃えやすい。そのような理由で本発明のように全体を構成するフレームをまず製作し、その中に順次資材を取りつけていくことが望ましい方法である。
【0021】
設置場所は公園の片隅などが適している。また海水浴場に置いては広い敷地が取れればよいが、それがない場合には駐車場に架台を組み、下を駐車場としその上に据えつける。公共施設に設置する場合も同様の方法で設置出来る。
高さが津波に対し不十分な建築物の場合、それが重量的に耐えることが出来る場合には屋上に設置することも可能である。
この程度の高さであれば車椅子で避難してきた人も運び込むことが可能であり、そういう点でもタワー型よりも優れている。
【0022】
本発明による津波避難用フロートは南海トラフ地震津波を想定した場合、その影響を受ける海岸線は全長が1200キロメートルにもなる。これに対し1キロ間隔で1000人乗りの津波避難用フロートの設置を計画した場合、一台3000万円と仮定すると、360億円である。これは設置に用地買収をほとんど必要としないためで、これが実現すると巨大津波がいつ来襲してもほとんどの人は最低の命を守る場にたどり着くことができる。そういう点でも優れた方法である。
【符号の説明】
【0023】
1 横方向のフレーム
2 手すり
3 甲板
4 はしご
5 仕切りの手すり
6 板や鋼板
7 コンクリートや鋼材
8 間伐材
9 間伐材を押さえる部材
10 縦方向のフレーム
11 発泡プラスチック
12 接着剤
13 ボルト
14 バンド
20 津波避難用フロート
図1
図2
図3