(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-12252(P2017-12252A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】水洗式ポータブルトイレ
(51)【国際特許分類】
A47K 11/04 20060101AFI20161222BHJP
E03D 5/01 20060101ALI20161222BHJP
E03D 11/11 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
A47K11/04
E03D5/01
E03D11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-129339(P2015-129339)
(22)【出願日】2015年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】508124408
【氏名又は名称】株式会社アム
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】新保 昌貴
【テーマコード(参考)】
2D036
2D039
【Fターム(参考)】
2D036HA03
2D036HA26
2D036HA32
2D036HA42
2D036HA47
2D039AA02
2D039AB10
2D039BA01
2D039DB00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部から給水配管したり、外部に汚水を圧送配管したりすることが不要な水洗式ポータブルトイレを提供する。
【解決手段】便器11に取り付けたポンプ部12と、便器11と分離移動可能な移動式タンク部20とを備え、移動式タンク部20は少なくとも汚水を貯留するための汚水タンク22を有し、ポンプ部12は便器11から汚物を汚水タンク22に移送するためのものであり、汚水タンク22は底部に開閉自在の排水口を有するとともに排水口の高さが既設の固定式水洗トイレの便器の高さよりも高い位置に設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗式便器と、当該便器に取り付けた移送ポンプと、当該便器と分離移動可能な移動式タンク部とを備え、
前記移動式タンク部は少なくとも汚水を貯留するための汚水タンクを有し、
前記移送ポンプは便器から汚物を前記汚水タンクに移送するためのものであり、
前記汚水タンクは底部に開閉自在の排水口を有するとともに当該排水口の高さが既設の固定式水洗トイレの便器の高さよりも高いことを特徴とする水洗式ポータブルトイレ。
【請求項2】
前記移動式タンク部は、前記汚水タンクの他に給水タンクを備え、
前記汚水タンクと給水タンクとは密閉式であるとともに両方のタンクの空間部を直接又は間接的に連通してあることを特徴とする請求項1記載の水洗式ポータブルトイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗式のポータブルトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
病院,老人ホーム等の介護現場においては、バケツ状の便槽を備えたポータブルトイレを使用した場合に、使用の都度、頻繁にバケツを取り出して汚物を処理する必要があり、その際の臭いも問題になる。
使用者にとっても水洗式が好まれる。
しかし、ポータブルトイレを水洗式にする場合には、便器への給水配管と汚水の排水配管が必要となる。
ところが、その配管が通行の妨げになったり、病院等においては配管の敷設そのものができない場合もある。
【0003】
特許文献1には、便器と排水ホースとを一枚の装置固定台に搭載することで移動可能にした水洗トイレ装置を開示する。
しかし、同公報に開示する水洗トイレ装置もやはり給水ホース,排水ホース等の配管接続が必要となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−342652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、外部から給水配管したり、外部に汚水を圧送配管したりすることが不要な水洗式ポータブルトイレの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水洗式ポータブルトイレは、水洗式便器と、当該便器に取り付けた移送ポンプと、当該便器と分離移動可能な移動式タンク部とを備え、前記移動式タンク部は少なくとも汚水を貯留するための汚水タンクを有し、前記移送ポンプは便器から汚物を前記汚水タンクに移送するためのものであり、前記汚水タンクは底部に開閉自在の排水口を有するとともに当該排水口の高さが既設の固定式水洗トイレの便器の高さよりも高いことを特徴とする。
なお、移動式タンク部には、汚水タンクと給水タンクとをセットに設けてもよい。
【0007】
ここで水洗式便器とは、腰掛けタイプの洋式便器をいい、便器と分離させて移動可能な移動式タンク部には汚水タンクを有するものであり、この汚水タンクは移動式タンク部に取り替え可能なカートリッジ式のタンクであってもよい。
本発明は、この移動式タンク部を移送ポンプを介して便器側に連結すること、及び分離してキャスター等にて移動可能にしたことにより、使用者がトイレを使用して汚物が汚水タンクに溜まると便器から分離させて移動式タンク部を既設の固定式の水洗トイレまで移動させることができる。
ここで汚水タンクに設けた開閉自在の排水口の高さが固定式水洗トイレの便器の高さよりも高いので、排水口をそのまま固定式水洗トイレの便器の開口部(ボール開口部)に位置させることができるので、排水口のバルブ部を開き汚水を流し込むことができる。
【0008】
本発明において、移動式タンク部は、前記汚水タンクの他に給水タンクを備え、前記汚水タンクと給水タンクとは密閉式であるとともに両方のタンクの空間部を連通連結してあるようにすることもできる。
このようにすると、汚水タンクが密閉状態になっているので、臭いの発生が少なくなるとともに、汚水タンクに汚水が送水されると汚水量により空間部の体積が少なくなるために空間部の圧力が上がる。
そこで、汚水タンクと給水タンクとの空間部を密閉状態で相互に連通させると、汚水タンクの空間部の上昇圧により給水タンクの空間部の圧力が上がり、水を便器に流し込むことができる。
これにより、給水タンクから便器側に送水するポンプを省略することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る水洗式ポータブルトイレは、汚水タンクを便器側に連結及び分離可能に設置するとともに、汚水タンクの底部に設けた排水口の高さを固定式の一般水洗トイレの便器の高さより高く設定してあるので、そのまま排水口のバルブを開くだけで汚水処理が可能になる。
また、移動式タンク部に汚水タンクと給水タンクとをセットで設けると、従来のような便器と外部との配管敷設が不要になることから、ポータブルトイレの設置及び移動が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る水洗式ポータブルトイレの外観図を示し、(a)は移動式タンク部を便器側に連結した状態、(b)は分離させた状態を示す。
【
図2】(a),(b)は汚水タンクの高さと固定式水洗トイレの便器との高さの位置関係を示す。
【
図3】汚水タンクと給水タンクとを密閉連結した構造例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る水洗式ポータブルトイレの構造例を
図1〜3に示した模式図に基づいて説明する。
本発明はこれに限定されるものではなく、目的に応じて設計変更が可能である。
水洗式ポータブルトイレは、洋式の便器11をポンプ部12を介して基部13側に取り付けてある。
この基部13に対して
図1,2に示すように、連結及び分離可能に移動式タンク部20を備える。
移動方法に制限はないが、本実施例ではキャスター23を取り付けてある。
移動式タンク部20は、給水タンク21と汚水タンク22を有し、この両方のタンクを両側の脚部22cにて門構え状に設け、内側に空間(隙間)24が形成されている。
給水タンク21及び汚水タンク22は、移動式タンク部20の本体部に一体的に設けても、カートリッジ式に設けてもよい。
給水タンク21には、便器側に給水するための給水口21aを有し、給水タンクに水を補給する補給部は省略してある。
汚水タンク22には、便器側から汚水が送り込まれるための流入口22aを有する。
これら給水口21a,流入口22aは、基部13に設けた連結部を介してポンプ部12と内部配管接続されているが、その構造は図示省略してある。
本実施例では、基部13に肘掛け部14を設けた例になっている。
ポンプ部には、汚水タンクに汚物を送水するためのポンプを有し、公知の圧送ポンプ,破砕機付ポンプ等を使用できる。
また、ポンプ部は給水タンク21から洗浄水を便器側に流し込む送水ポンプ等を有してもよい。
これらを作動及び制御する操作部は図示を省略したが、公知の方法を用いることができる。
このようにすると、給水タンク及び汚水タンクを便器11から分離移動させることができるので、ポータブルトイレの設置自由度が高く、外部との配管敷設工事も不要である。
【0012】
移動式タンク部20は、
図2に示すように装着した汚水タンク12の底部に自然放流式に設けた排水口22bの床面からの高さH
1を既設の固定式の一般水洗トイレ1の便器の高さH
0よりも高く設定されている。
一般的な固定式トイレは、便座までの高さが約400mmであり、そのままその上に排水口22bを移動させてもよく、また便座を後方側に開いて排水口22bを便器の開口部に移動させてもよい。
よって、排水口22bの高さは約400mm以上が好ましく、汚水タンクの深さLは容量等を考慮して設定される。
汚水タンクの容量は、1日〜2日に1回程度排水作業を行う場合、20〜40リットルの大きさが好ましい。
従来はバケツをその都度、手で運んで固定式水洗トイレなどにて処理していたが、1日〜2日で1回程度の処理作業で済ませるには、約20kg程度を越える汚物等を処理することになり、このような重量になると持ち運ぶのが大変であり、特に固定式の洋式水洗トイレに処理するにはその高さまで持ち上げなければならず、現実的に無理である。
これを解消するために汚水タンクを移動式にした点に第1の特徴がある。
この点においても本発明のポータブルトイレは水洗式でない場合にも適用できる。
なお、排水口22bには図示を省略したが、開閉自在のバルブ類が設けられている。
汚水タンク22は、定期的に内部を洗浄できるように蓋部を設けてもよい。
【0013】
図3は、汚水タンク22と給水タンク21とを密閉状態で相互に連通部24bにて連結させた例を示す。
連通部24bは、給水タンクと汚水タンクの上部空間部を直接連通させてもよいが、本実施例では連通部24bの配管の先を給水タンクの水中に位置するように間接的に連通させてある。
ポンプ部12と汚水タンク22とも密閉状態で内部配管24aで連結され、給水タンク21も便器側に密閉状態で内部配管24cにて連結した例を示す。
このようにすると、送水ポンプにて汚水を汚水タンク22に圧送すると、汚水量W
1が増え、空間部の内部圧P
1が上昇し、この圧力が給水タンクの水中部を経由して空間部に伝達される。
この内部圧力P
2により給水用の水量W
0の液面を押圧し、便器11側の供給が容易になる。
本実施例では、給水タンクの底部に凹部21bを形成し、この部分に水中ポンプ25を設けた例になっている。
また、便器側へのサイホン流出防止手段を設けてもよい。
これにより外部に臭いが漏れるのを抑えることができ、予め給水タンクに消臭剤を投入しておくことで汚水タンクからのエアーが給水タンクの水中を通過するので消臭効果も期待できる。
【符号の説明】
【0014】
11 便器
12 ポンプ部
13 基部
20 移動式タンク部
21 給水タンク
22 汚水タンク