(54)【発明の名称】観測地震の距離パラメータを推定する方法ならびに距離パラメータ推定プログラムおよび距離パラメータ推定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【解決手段】過去の地震上下動波形の初期微動を抽出し、比較的低周波数の第1の周波数範囲と比較的高周波数の第2の周波数範囲とを設定し、この2つの周波数範囲におけるスペクトル強度比を求める。これを複数の地震上下動波形に行って、各地震上下動波形に対応する距離パラメータと各スペクトル強度比との相関係数を導出する。この各ステップを第1の周波数範囲と第2の周波数範囲とを変更しながら繰り返し、相関係数が最大となる第1の周波数範囲および第2の周波数範囲を低周波数範囲および高周波数範囲とする。この低周波数範囲および高周波数範囲における観測地震の初期微動のスペクトル強度をとり、そのスペクトル比の一次式により観測地震の距離パラメータを推定する。
震源からの距離に対応するパラメータである距離パラメータの値が異なる複数の地震の地震上下動波形が過去に記録された観測点を対象として、当該観測点において観測される観測地震の観測データに基づいて当該観測地震の距離パラメータを推定する方法において、
過去に記録された複数の前記地震上下動波形の1つに対して、当該地震上下動波形における初期微動の初期破壊相を含む波形データを、周波数領域における振幅のスペクトル密度の離散関数である抽出データとして抽出する抽出ステップと、
比較的低周波数の周波数範囲である第1の周波数範囲と、比較的高周波数の周波数範囲である第2の周波数範囲とを、互いの周波数範囲が重ならないように設定する設定ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出された前記抽出データに対し、当該抽出データを前記第1の周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値と、前記抽出データを前記第2の周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値と、の比をスペクトル強度比として求めるスペクトル強度比導出ステップと、
前記抽出ステップおよび前記スペクトル強度比導出ステップを、過去に記録された複数の前記地震上下動波形のそれぞれに対して実行して、当該各地震上下動波形に対応する地震の前記距離パラメータと前記各スペクトル強度比との間の相関係数を導出する相関係数導出ステップと、
前記相関係数導出ステップを、前記設定ステップにおいて設定される前記第1の周波数範囲および前記第2の周波数範囲を変更しながら繰り返し実行して、前記相関係数導出ステップにおいて導出される前記相関係数が最も1に近くなる前記第1の周波数範囲と前記第2の周波数範囲との組み合わせを求め、この前記第1の周波数範囲および前記第2の周波数範囲をそれぞれ低周波数範囲および高周波数範囲として定める周波数範囲設定ステップと、
前記観測地震の初期微動の初期破壊相を含む波形データにおける、上下動成分の周波数領域での振幅のスペクトル密度の分布を導出する分布導出ステップと、
前記分布導出ステップにおいて導出された振幅のスペクトル密度の分布を前記周波数範囲設定ステップで定めた前記低周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値を、第1のスペクトル強度として導出する第1のスペクトル強度導出ステップと、
前記分布導出ステップにおいて導出された振幅のスペクトル密度の分布を前記周波数範囲設定ステップで定めた前記高周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値を、第2のスペクトル強度として導出する第2のスペクトル強度導出ステップと、
前記第1のスペクトル強度を前記第2のスペクトル強度で割ったスペクトル比の一次式により前記観測地震の前記距離パラメータを求めることができるものとして、当該距離パラメータの推定を行う推定ステップと、
を含む複数のステップを有している、
観測地震の距離パラメータを推定する方法。
震源からの距離に対応するパラメータである距離パラメータの値が異なる複数の地震の地震上下動波形が過去に記録された観測点を対象として、当該観測点において観測される観測地震の観測データに基づいて当該観測地震の距離パラメータを推定することを、コンピュータに実現させるための距離パラメータ推定プログラムであって、
前記コンピュータに、
過去に記録された複数の前記地震上下動波形の1つに対して、当該地震上下動波形における初期微動の初期破壊相を含む波形データを、周波数領域における振幅のスペクトル密度の離散関数である抽出データとして抽出する抽出ステップと、
比較的低周波数の周波数範囲である第1の周波数範囲と、比較的高周波数の周波数範囲である第2の周波数範囲とを、互いの周波数範囲が重ならないように設定する設定ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出された前記抽出データに対し、当該抽出データを前記第1の周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値と、前記抽出データを前記第2の周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値と、の比をスペクトル強度比として求めるスペクトル強度比導出ステップと、
前記抽出ステップおよび前記スペクトル強度比導出ステップを、過去に記録された複数の前記地震上下動波形のそれぞれに対して実行して、当該各地震上下動波形に対応する地震の前記距離パラメータと前記各スペクトル強度比との間の相関係数を導出する相関係数導出ステップと、
前記相関係数導出ステップを、前記設定ステップにおいて設定される前記第1の周波数範囲および前記第2の周波数範囲を変更しながら繰り返し実行して、前記相関係数導出ステップにおいて導出される前記相関係数が最も1に近くなる前記第1の周波数範囲と前記第2の周波数範囲との組み合わせを求め、この前記第1の周波数範囲および前記第2の周波数範囲をそれぞれ低周波数範囲および高周波数範囲として定める周波数範囲設定ステップと、
前記観測地震の初期微動の初期破壊相を含む波形データにおける、上下動成分の周波数領域での振幅のスペクトル密度の分布を導出する分布導出ステップと、
前記分布導出ステップにおいて導出された振幅のスペクトル密度の分布を前記周波数範囲設定ステップで定めた前記低周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値を、第1のスペクトル強度として導出する第1のスペクトル強度導出ステップと、
前記分布導出ステップにおいて導出された振幅のスペクトル密度の分布を前記周波数範囲設定ステップで定めた前記高周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値を、第2のスペクトル強度として導出する第2のスペクトル強度導出ステップと、
前記第1のスペクトル強度を前記第2のスペクトル強度で割ったスペクトル比の一次式により前記観測地震の前記距離パラメータを求めることができるものとして、当該距離パラメータの推定を行う推定ステップと、
を含む複数のステップを実行させるための、
距離パラメータ推定プログラム。
震源からの距離に対応するパラメータである距離パラメータの値が異なる複数の地震の地震上下動波形が過去に記録された観測点を対象として、当該観測点において観測される観測地震の観測データに基づいて当該観測地震の距離パラメータを推定することを、コンピュータに実現させるための距離パラメータ推定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記コンピュータに、
過去に記録された複数の前記地震上下動波形の1つに対して、当該地震上下動波形における初期微動の初期破壊相を含む波形データを、周波数領域における振幅のスペクトル密度の離散関数である抽出データとして抽出する抽出ステップと、
比較的低周波数の周波数範囲である第1の周波数範囲と、比較的高周波数の周波数範囲である第2の周波数範囲とを、互いの周波数範囲が重ならないように設定する設定ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出された前記抽出データに対し、当該抽出データを前記第1の周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値と、前記抽出データを前記第2の周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値と、の比をスペクトル強度比として求めるスペクトル強度比導出ステップと、
前記抽出ステップおよび前記スペクトル強度比導出ステップを、過去に記録された複数の前記地震上下動波形のそれぞれに対して実行して、当該各地震上下動波形に対応する地震の前記距離パラメータと前記各スペクトル強度比との間の相関係数を導出する相関係数導出ステップと、
前記相関係数導出ステップを、前記設定ステップにおいて設定される前記第1の周波数範囲および前記第2の周波数範囲を変更しながら繰り返し実行して、前記相関係数導出ステップにおいて導出される前記相関係数が最も1に近くなる前記第1の周波数範囲と前記第2の周波数範囲との組み合わせを求め、この前記第1の周波数範囲および前記第2の周波数範囲をそれぞれ低周波数範囲および高周波数範囲として定める周波数範囲設定ステップと、
前記観測地震の初期微動の初期破壊相を含む波形データにおける、上下動成分の周波数領域での振幅のスペクトル密度の分布を導出する分布導出ステップと、
前記分布導出ステップにおいて導出された振幅のスペクトル密度の分布を前記周波数範囲設定ステップで定めた前記低周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値を、第1のスペクトル強度として導出する第1のスペクトル強度導出ステップと、
前記分布導出ステップにおいて導出された振幅のスペクトル密度の分布を前記周波数範囲設定ステップで定めた前記高周波数範囲で積分した振幅のスペクトル強度の値を、第2のスペクトル強度として導出する第2のスペクトル強度導出ステップと、
前記第1のスペクトル強度を前記第2のスペクトル強度で割ったスペクトル比の一次式により前記観測地震の前記距離パラメータを求めることができるものとして、当該距離パラメータの推定を行う推定ステップと、
を含む複数のステップを実行させるための、
距離パラメータ推定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を用いて、本発明の一実施形態にかかる観測地震の距離パラメータを推定する方法について説明する。この観測地震の距離パラメータを推定する方法は、地表91上における単一の観測点10(
図1参照)において観測された観測地震の観測データから、この観測地震の震央距離91Bを、コンピュータ11(
図2参照)を用いて推定する方法である。ここで、震央距離91Bは、本発明における「距離パラメータ」に相当する。また、観測点10においては、震央距離91Bの値がそれぞれ異なるA回分(Aは2以上の自然数。例えばA=17)の地震の地震上下動波形(すなわち地震波形の上下動成分。具体的には例えば
図6に示す上下動応答加速度波形20)が過去に記録されている。なお、コンピュータ11は、具体的には例えばディスプレイ一体型ラップトップコンピュータである。
【0017】
コンピュータ11は、
図2に示すように、記録媒体11A(具体的には例えばUSBメモリ)および観測点10の地震計10Aが接続された状態で、観測点10内に設置されている。ここで、地震計10Aは、観測点10における地震動の計測を3軸で行いながらそのデータを蓄積し、地震を検知した際には、検知された観測地震の観測データをコンピュータ11にリアルタイムで出力するようになっている。また、記録媒体11Aには、上記観測地震の距離パラメータを推定する方法を実現させるための距離パラメータ推定プログラムが、コンピュータ読み取り可能に記録されている。この距離パラメータ推定プログラムは、コンピュータ11を観測地震の震央距離91B(
図1参照)の推定手段として機能させることで、上記観測地震の距離パラメータを推定する方法を実現させる。
【0018】
ここで、上述した観測地震の距離パラメータを推定する方法を技術者(図示せず)が実施しようとした場合に実行される一連の各ステップについて、主に
図3ないし
図5に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下においては、入力データのサンプリング周波数が距離パラメータ推定プログラムの処理に適合しない場合に、この処理に適合するように入力データの変換を行うリサンプリングステップなどの付随的なステップについて、その詳細な説明を省略する。
【0019】
技術者が上記距離パラメータ推定プログラムをコンピュータ11に実行させると、このコンピュータ11による処理は、まず、ステップS10に進む。
【0020】
ステップS10において、コンピュータ11は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行う。この初期設定には、コンピュータ11が地震計10Aの接続を認識して、この地震計10Aにおける地震動の計測のサンプリング周波数(例えば100[Hz])を取得する処理が含まれる。そして、コンピュータ11は、その処理をステップS20に進める。
【0021】
ステップS20において、コンピュータ11は、そのディスプレイに、観測点10において過去に記録された地震のデータの入力を求める旨のメッセージを表示し、コンピュータ11への地震のデータの入力が完了するまでの間待機する。これに対し、技術者は、観測点10において過去に記録されたA回分の地震のデータをコンピュータ11に1つずつ入力し、その後にデータ入力完了のコマンドをコンピュータ11に入力する。ここで、コンピュータ11は、データ入力完了のコマンドが入力されると、その処理をステップS30に進める。
【0022】
なお、ステップS20においてコンピュータ11に入力される地震のデータは、地震の上下動応答加速度波形20(
図6参照)を、この地震の震央距離および観測点10において地震動が始まった時刻(
図6に示す着震時刻20A)と対応付けたデータである。ここで、上記地震の震央距離は、観測点10とは独立して存在する地震観測網(図示せず)による地震の観測データから求められた地震の震央と、観測点10の位置との間の直線距離である。また、上下動応答加速度波形20は、本発明における「地震上下動波形」に相当する。
【0023】
ステップS30において、コンピュータ11は、ステップS20においてコンピュータ11に入力された全ての地震のデータに対して、後述するステップS40の処理を1回ずつ行う繰り返し処理を実行する。なお、コンピュータ11は、ステップS30において全ての地震のデータについてステップS40の処理を行うと、このステップS40の繰り返し処理を終了させてその処理をステップS50に進める。
【0024】
ステップS40において、コンピュータ11は、ステップS40の処理がまだ行われていない地震のデータを1つ選択して、その初期微動の初期破壊相を含む波形データを用意する。具体的には、コンピュータ11は、地震の上下動応答加速度波形20のうち、着震時刻20Aを起点とした所定の時間範囲(例えば1[秒])である抽出範囲20Bの波形(
図6参照)を、地震計10Aのサンプリング周波数と同じサンプリング周波数(例えば100[Hz])で抽出して用意する。
【0025】
ここで、「初期破壊相」とは、地震の初期微動のうち、この初期微動に続く主要動を発生させる主破壊のトリガーとなる初期破壊の地震動に対応する部分の地震波形のことをいう。この初期破壊相には、地震波形における初期破壊相以外の部分と比べて、地震の種類による地震波形の違いが少ないという性質がある。
【0026】
上記初期破壊相の性質について、
図1を用いてより詳しく説明する。地震は、地盤90中に面状に広がる領域であるアスペリティー92に蓄積されたエネルギーが、このアスペリティー92に存在する岩石を破壊しながら解放される現象である。ここで、アスペリティー92が強震動を生じさせる地震を引き起こすものである場合、アスペリティー92は、地震の震源90Aの周辺に存在する震源周辺域92Aと、強震動を生じさせるエネルギーを蓄積させた大破壊域92Bとを有していることが知られている。
【0027】
このようなアスペリティー92により強震動を生じさせる地震が引き起こされる際には、まず、震源90Aを起点として震源周辺域92Aに存在する岩石の破壊が広がる初期破壊が発生する。この初期破壊においては、せん断ひずみ波を含む地震波が発生されて、この地震波が震源周辺域92Aの周辺に伝播される。この地震波は、地表91に到達すると、地震動の初期破壊相として現れる。また、上記せん断ひずみ波は、アスペリティー92の大破壊域92Bに到達すると、この大破壊域92Bにおいて岩石が破壊される主破壊を生じさせるトリガーとなる。この主破壊は、アスペリティー92に蓄積されたエネルギーを解放させることで、地表91に強震動を生じさせるとともに上記初期破壊をストップさせる。
【0028】
すなわち、初期破壊において震源周辺域92Aの岩石の破壊が広がる範囲は、初期破壊において岩石の破壊が広がる速度と、初期破壊により生じたせん断ひずみ波が震源周辺域92Aから大破壊域92Bに達するまでの時間とにより規定される。このため、初期破壊相の地震波形は、初期破壊相以外の部分の地震波形と比べて、地震の種類による地震波形の違いが少なくなる。
【0029】
ステップS50において、コンピュータ11は、
図4に示すサブルーチン1の処理を実行して、その処理をステップS60に進める。このサブルーチン1の処理は、地震動の低周波数における振幅と高周波数における振幅との比において、過去に記録された複数の地震の震央距離との相関が最も高くなる低周波数および高周波数の組み合わせを求める処理である。ここで、上記サブルーチン1の処理においては、上記低周波数および高周波数を、それぞれ周波数に幅を持つ周波数範囲である低周波数範囲および高周波数範囲とする。このため、ステップS50は、本明細書においては「周波数範囲設定ステップ」とも称する。
【0030】
上記サブルーチン1の処理においては、
図4に示すように、コンピュータ11による処理は、まず、ステップS140に進む。
【0031】
ステップS140において、コンピュータ11は、後述するサブルーチン1の各ステップを実行するために必要となる初期設定を行った後、その処理をステップS150に進める。
【0032】
なお、上記初期設定には、ステップS40において用意された波形データを離散フーリエ変換して得られる周波数領域の離散関数に対し、周波数の分布範囲および分布間隔を求める処理が含まれる。この周波数の分布範囲および分布間隔は、上記波形データにおけるサンプリング周波数と抽出範囲20Bの時間長さとから、上記周波数の分布範囲に少なくとも4つ以上の周波数成分が含まれるように算定される。具体的には、例えば上記サンプリング周波数が100[Hz]で抽出範囲20Bの時間長さが1[秒]である場合には、上記周波数の分布範囲は1[Hz]〜50[Hz]、上記周波数の分布間隔は1[Hz]と算定される。
【0033】
また、上記初期設定には、上記周波数の分布範囲に含まれる各周波数から、互いに異なる4つの周波数を選び出す組み合わせのパターンを数え上げて配列にまとめる処理が含まれる。この配列は、要素として与えられる周波数の組み合わせの総数よりも1だけ多い要素数で宣言されることで、最後の要素が欠損値となるようにされる。具体的には、例えば上記周波数の分布間隔が1[Hz]で上記周波数の分布範囲が1[Hz]〜50[Hz]である場合、
図7に示すように、上記配列はその要素のパターン番号が1〜230,301(=
50C
4+1)となる範囲で宣言される。また、上記配列においてパターン番号が1〜230,300となる各要素には、選び出される4つの周波数F
1、F
2、F
3、F
4(ただしF
1<F
2<F
3<F
4)の組み合わせが1つずつ代入される。また、上記配列においてパターン番号が230,301となる要素は、代入される4つの周波数がないことにより欠損値とされる。
【0034】
ステップS150において、コンピュータ11は、後述するステップS160の繰り返し処理において最初に処理の対象となる上記配列のパターン番号を1と設定し、その処理をステップS160に進める。
【0035】
ステップS160において、コンピュータ11は、後述するステップS170からステップS240までの一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、後述するステップS170(
図4に示す「設定ステップ」)において欠損値が扱われるまでの間繰り返し実行される。なお、コンピュータ11は、後述するステップS170において欠損値が扱われると、ステップS160の繰り返し処理をストップさせてその処理をステップS250に進める。
【0036】
ステップS170において、コンピュータ11は、上述した配列(
図7参照)を参照して、この配列における、現時点でのパターン番号に対応する4つの周波数F
1、F
2、F
3、F
4の組み合わせを抽出する。ここで、現時点でのパターン番号が上記配列における最大の(すなわち最後の)パターン番号である場合、このパターン番号に対応する要素が欠損値であることから、ステップS170の処理はステップS160の繰り返し処理をストップさせるトリガーとなる。
【0037】
続いて、コンピュータ11は、周波数F
1から周波数F
2までの比較的低周波数の周波数範囲を第1の周波数範囲、周波数F
3から周波数F
4までの比較的高周波数の周波数範囲を第2の周波数範囲として設定し、その処理をステップS180に進める。ここで、ステップS140の初期設定においては、各周波数F
1、F
2、F
3、F
4はF
1<F
2<F
3<F
4となるように代入されているため、第1の周波数範囲は、第2の周波数範囲よりも低周波数の周波数範囲として、互いの周波数範囲が重ならないように設定される。このため、ステップS170は、本明細書においては「設定ステップ」とも称する。
【0038】
ステップS180において、コンピュータ11は、
図5に示すサブルーチン2の処理を実行して、その処理をステップS190に進める。このサブルーチン2の処理は、ステップS20で入力された各上下動応答加速度波形20からそれぞれ求められるスペクトル強度比と、各上下動応答加速度波形20に対応する地震の震央距離と、の相関係数を導出する処理である。このため、ステップS180は、本明細書においては「相関係数導出ステップ」とも称する。
【0039】
ここで、サブルーチン2の処理において、「スペクトル強度比」とは、第1の周波数範囲における振幅のスペクトル強度と、第2の周波数範囲における振幅のスペクトル強度との比のことをいう。また、「振幅のスペクトル強度」とは、周波数ごとの振幅の成分を表す関数である振幅のスペクトル密度を所定の周波数範囲で積分した値のことである。すなわち、例えば
図8に示すように振幅のスペクトル密度21が与えられた場合、「第1の周波数範囲における振幅のスペクトル強度」は、振幅のスペクトル密度21を第1の周波数範囲21Aで切り取った領域21Bに含まれる振幅の成分の総量となる。また、「第2の周波数範囲における振幅のスペクトル強度」は、振幅のスペクトル密度21を第2の周波数範囲21Cで切り取った領域21Dに含まれる振幅の成分の総量となる。なお、サブルーチン2の処理においては、求められたスペクトル強度比は地震の震央距離と対応付けられた状態でコンピュータ11にアーカイブされる。
【0040】
上記サブルーチン2の処理においては、
図5に示すように、コンピュータ11による処理は、まず、ステップS260に進む。
【0041】
ステップS260において、コンピュータ11は、後述するサブルーチン2の各ステップを実行するために必要となる初期設定を行う。この初期設定には、直前に実行された設定ステップ(ステップS170)において設定された第1の周波数範囲および第2の周波数範囲を引数として取得する処理が含まれる。そして、コンピュータ11は、その処理をステップS270に進める。
【0042】
ステップS270において、コンピュータ11は、後述するステップS280の繰り返し処理においてカウンター変数として機能するaの値を1と設定し、その処理をステップS280に進める。
【0043】
ステップS280において、コンピュータ11は、後述するステップS290からステップS330までの一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、カウンター変数として機能するaを増加させながら(ステップS330を参照)、このaがステップS20においてデータが入力された地震の数Aよりも大きくなるまでの間において繰り返し実行される。なお、コンピュータ11は、上記aが地震の数Aよりも大きくなったときには、ステップS280の繰り返し処理をストップさせてその処理をステップS340に進める。
【0044】
ステップS290において、コンピュータ11は、ステップS20において入力されたA回分の地震のデータから、a番目に入力された地震のデータを抽出して取得する。そして、コンピュータ11は、その処理をステップS300に進める。
【0045】
ステップS300において、コンピュータ11は、直前に実行されたステップS290において取得された地震のデータに対して、その上下動応答加速度波形20(
図6参照)における初期微動の初期破壊相を含む波形データを、周波数領域における振幅のスペクトル密度の離散関数である抽出データとして抽出する。具体的には、コンピュータ11は、まず、地震の上下動応答加速度波形20のうち、地震の着震時刻20Aを起点とした所定の時間範囲(例えば1[秒])の波形を、地震計10Aのサンプリング周波数と同じサンプリング周波数(例えば100[Hz])で抽出する処理を行う。ついで、コンピュータ11は、抽出した波形に対して離散フーリエ変換を実行して周波数領域の離散関数を導出し、導出した離散関数を上記抽出データとする処理を行う。このステップS300は、本明細書においては「抽出ステップ」とも称する。なお、コンピュータ11は、ステップS300の処理を完了させると、その処理をステップS310に進める。
【0046】
ステップS310において、コンピュータ11は、直前に実行された抽出ステップ(ステップS300)において抽出された抽出データに対し、この抽出データを第1の周波数範囲で積分することで、第1の周波数範囲における振幅のスペクトル強度を求める。続いて、コンピュータ11は、上記抽出データを第2の周波数範囲で積分することで、第2の周波数範囲における振幅のスペクトル強度を求める。そして、コンピュータ11は、上記第1の周波数範囲における振幅のスペクトル強度の値と、上記第2の周波数範囲における振幅のスペクトル強度の値との比をスペクトル強度比として求め、その処理をステップS320に進める。このため、ステップS310は、本明細書においては「スペクトル強度比導出ステップ」とも称する。なお、ステップS310の処理において、コンピュータ11は、上記第1の周波数範囲および第2の周波数範囲として、直近に実行された設定ステップ(ステップS170)において設定された第1の周波数範囲および第2の周波数範囲を使用する。
【0047】
ステップS320において、コンピュータ11は、直近に実行されたステップS290において取得された地震のデータから、この地震の震央距離を距離パラメータとして抽出する。続いて、コンピュータ11は、直前に実行されたスペクトル強度比導出ステップ(ステップS310)において導出されたスペクトル強度比を、抽出された距離パラメータと対応づけてコンピュータ11にアーカイブする。そして、コンピュータ11は、その処理をステップS330に進める。
【0048】
ステップS330において、コンピュータ11は、上述したaに1を足す処理を行う。そして、コンピュータ11は、上述したステップS280における1回分の処理を終了させ、a≦Aであればその処理をステップS290に戻し、a>Aであればその処理をステップS340に進める。ここで、ステップS280の繰り返し処理の直前に実行されるステップS270において、何番目に入力された地震のデータを扱うかを表すaは1と設定される。このため、ステップS280の繰り返し処理においては、上述したステップS20において入力されたA回分の地震のデータに対して、このデータが入力された順に処理が実行される。
【0049】
ステップS340において、コンピュータ11は、直前に実行されたステップS280の繰り返し処理においてコンピュータ11にアーカイブされた全てのデータを取得する。続いて、コンピュータ11は、取得したデータにおけるスペクトル強度比と距離パラメータとの相関係数を導出する。そして、コンピュータ11は、導出した相関係数を戻り値としてサブルーチン2の処理を終了させ、その処理を
図4に示すステップS190に進める。
【0050】
すなわち、上述したサブルーチン2の処理においては、コンピュータ11は、抽出ステップ(ステップS300)およびスペクトル強度比導出ステップ(ステップS310)を、過去に記録されたA回分の地震における各上下動応答加速度波形20に対して実行する。そして、コンピュータ11は、各上下動応答加速度波形20に対応する地震の距離パラメータと各スペクトル強度比との間の相関係数を導出する。
【0051】
ステップS190において、コンピュータ11は、
図4に示すように、ステップS160により繰り返されるステップS180において求められた各相関係数のうち、最も1に近い相関係数を記録媒体11A(
図2参照)に保存した値である相関係数保存値を取得する。そして、コンピュータ11は、その処理をステップS200に進める。
【0052】
なお、コンピュータ11は、ステップS140の初期設定において、相関係数保存値のダミーデータを記録媒体11Aに保存する。これにより、コンピュータ11は、サブルーチン1の処理においてステップS180が初めて実行される場合でも、ステップS190においてエラーを発生させないようになっている。
【0053】
ステップS200において、コンピュータ11は、直近に実行されたステップS180において導出された相関係数が、ステップS160により繰り返されるステップS180において求められた各相関係数のうちで最も1に近い相関係数であるか否かを判定する。この判定は、上記相関係数および上記相関係数保存値に対して、「|1−(相関係数)|≦|1−(相関係数保存値)|」の式が成立するか否かによって判定される。上記判定の結果が「はい」である(すなわち|1−(相関係数)|≦|1−(相関係数保存値)|となる)場合、コンピュータ11は、その処理をステップS210に進める。上記判定の結果が「いいえ」である(すなわち|1−(相関係数)|>|1−(相関係数保存値)|となる)場合、コンピュータ11は、その処理をステップS240に進める。
【0054】
なお、コンピュータ11は、ステップS140の初期設定において保存される相関係数保存値のダミーデータを、|1−(ダミーデータ)|>2の不等式が成立する値(例えば4)とする。これにより、コンピュータ11は、サブルーチン1の処理においてステップS200が初めて実行される場合に、このステップS200の判定の結果が必ず「はい」となるようにする。また、技術者は、必ず−1以上1以下の値をとる相関係数と、上記ダミーデータとを明りょうに区別することができる。
【0055】
ステップS210において、コンピュータ11は、直近に実行されたステップS180において導出された相関係数を相関係数保存値として更新し、この相関係数保存値を記録媒体11A(
図2参照)に上書き保存する。そして、コンピュータ11は、その処理をステップS220に進める。
【0056】
ステップS220において、コンピュータ11は、直近に実行された設定ステップ(ステップS170)において設定された第1の周波数範囲および第2の周波数範囲を記録媒体11A(
図2参照)に保存する。ここで、コンピュータ11は、第1の周波数範囲および第2の周波数範囲のデータが既に記録媒体11Aに保存されている場合には、この記録媒体11Aに保存されたデータを消去してから上記保存を行う。そして、コンピュータ11は、その処理をステップS230に進める。
【0057】
ステップS230において、コンピュータ11は、直近に実行された相関係数導出ステップ(ステップS180)においてコンピュータ11にアーカイブされたデータを記録媒体11A(
図2参照)に保存する。そして、コンピュータ11は、その処理をステップS240に進める。
【0058】
ステップS240において、コンピュータ11は、上述したパターン番号に1を足す処理を行う。そして、コンピュータ11は、上述したステップS160における1回分の処理を終了させ、その処理をステップS170に戻す。ここで、ステップS160の繰り返し処理の直前に実行されるステップS150において、上記パターン番号は1と設定される。このため、ステップS160の繰り返し処理においては、上述した周波数の組み合わせにおける全てのパターン(
図7参照)に対して、パターン番号が若い順に処理が実行される。
【0059】
ステップS250において、コンピュータ11は、現時点において記録媒体11Aに保存されている第1の周波数範囲を取得し、この第1の周波数範囲を上述した低周波数範囲として設定する。また、コンピュータ11は、現時点において記録媒体11Aに保存されている第2の周波数範囲を取得し、この第2の周波数範囲を上述した低周波数範囲として設定する。そして、コンピュータ11は、上記第1の周波数範囲および第2の周波数範囲を戻り値としてサブルーチン1の処理を終了させ、その処理を
図3に示すステップS60に進める。
【0060】
すなわち、上述したサブルーチン1の処理においては、コンピュータ11は、相関係数導出ステップ(ステップS180)を、設定ステップ(ステップS170)において設定される第1の周波数範囲および第2の周波数範囲を変更しながら繰り返し実行する。そして、コンピュータ11は、上記相関係数導出ステップにおいて導出される相関係数が最も1に近くなる第1の周波数範囲と第2の周波数範囲との組み合わせを求め、この第1の周波数範囲および第2の周波数範囲をそれぞれ低周波数範囲および高周波数範囲として定める。
【0061】
ステップS60において、コンピュータ11は、直近に実行されたステップS230(
図3参照)において記録媒体11A(
図2参照)に保存されたデータを取得する。また、コンピュータ11は、取得したデータから、ステップS20で入力された各上下動応答加速度波形20に対応する地震の震央距離とスペクトル強度比とを抽出し、この震央距離およびスペクトル強度比を軸とした散布図(
図9参照)を作成する。そして、コンピュータ11は、作成した散布図における震央距離およびスペクトル強度比の分布を最もよく近似する一次式(すなわち回帰直線の一次式)22を導出して、その処理をステップS70に進める。
【0062】
ステップS70において、コンピュータ11は、観測点10の地震計10Aから観測地震の観測データが入力されるまでの間、その処理をストップさせる。また、コンピュータ11は、観測点10の地震計10A(
図2参照)から観測地震の観測データが入力されると、その処理をステップS80に進める。ここで、
図3に示すルーチンでは、ステップS70を「観測地震の観測データが入力される」ことを抜け出し条件とした「何もしないこと」の繰り返し処理としている。ただし、ステップS70の処理は、地震計10Aからコンピュータ11に観測地震の観測データが出力されることを復帰のトリガーとしたコンピュータ11のスリープ処理であってもよい。
【0063】
ステップS80において、コンピュータ11は、地震計10Aから入力される観測地震の観測データを取得し、この観測データから観測地震の初期微動の初期破壊相を含む波形データを抽出する。具体的には、コンピュータ11は、観測地震の観測データに含まれる上下動応答加速度波形のうち、観測地震の着震時刻を起点とした所定の時間範囲(例えば1[秒])の波形データを抽出する。そして、コンピュータ11は、その処理をステップS90に進める。
【0064】
ステップS90において、コンピュータ11は、直前に実行されたステップS80において抽出された上下動応答加速度波形の波形データをフーリエ変換することで、その周波数領域での振幅のスペクトル密度の分布を導出する。そして、コンピュータ11は、その処理をステップS100に進める。ここで、ステップS90は、本発明における「分布導出ステップ」に相当する。
【0065】
ステップS100において、コンピュータ11は、直前に実行されたステップS90において導出された振幅のスペクトル密度の分布を、ステップS50において設定された低周波数範囲で積分して振幅のスペクトル強度の値を導出し、その処理をステップS110に進める。ここで、ステップS100は、本明細書においては「第1のスペクトル強度導出ステップ」とも称し、ステップS100において導出される振幅のスペクトル強度は、本明細書においては「第1のスペクトル強度」とも称する。
【0066】
ステップS110において、コンピュータ11は、直近に実行されたステップS90において導出された振幅のスペクトル密度の分布を、ステップS50において設定された高周波数範囲で積分して振幅のスペクトル強度の値を導出し、その処理をステップS120に進める。ここで、ステップS110は、本明細書においては「第2のスペクトル強度導出ステップ」とも称し、ステップS110において導出される振幅のスペクトル強度は、本明細書においては「第2のスペクトル強度」とも称する。
【0067】
ステップS120において、コンピュータ11は、直近に実行されたステップS60において導出された一次式22(
図9参照)を、震央距離およびスペクトル強度比のそれぞれを元とした二元一次不定方程式の形で取得する。続いて、コンピュータ11は、直近に実行された第1のスペクトル強度導出ステップ(ステップS100)において導出された第1のスペクトル強度を、直近に実行された第2のスペクトル強度導出ステップ(ステップS110)において導出された第2のスペクトル強度で割ったスペクトル比を求める。そして、コンピュータ11は、求めたスペクトル比の値を一次式22におけるスペクトル強度比の元に代入して震央距離の一元一次方程式を作成し、この一元一次方程式を解くことで震央距離を求めて、その処理をステップS130に進める。
【0068】
ここで、一次式22は、観測点10において観測された地震の震央距離およびスペクトル強度比の分布を近似する式であるため、ステップS120において求められる震央距離は、観測地震の震央距離91B(
図1参照)の推定値となる。すなわち、ステップS120において、コンピュータ11は、上記スペクトル比の一次式により観測地震の距離パラメータである震央距離91Bを求めることができるものとして、この震央距離91Bの推定を行う。このため、ステップS120は、本明細書においては「推定ステップ」とも称する。
【0069】
ステップS130において、コンピュータ11は、そのディスプレイにステップS120において求められる震央距離91Bの推定結果を出力する。そして、コンピュータ11は、上述した観測地震の距離パラメータを推定する方法において実行される一連の各ステップを終了させる。
【0070】
上述した各ステップによれば、地震動の低周波数における振幅と高周波数における振幅との比から観測地震の震央距離を推定する際に、過去に記録されたA回分の地震の震央距離とスペクトル強度比との相関が最も高い低周波数および高周波数の組み合わせが使用される。ここで、上記A回の地震は、それぞれ震央距離が異なるものであるので、設定される低周波数および高周波数の組み合わせには、震源の位置によらず共通する地点特性の影響が比較的強く反映される。すなわち、上述した各ステップによれば、地点特性の影響が比較的強く反映された、低周波数における振幅と高周波数における振幅との比から地震の震央距離を推定することで、この震央距離の推定精度を高めることができる。また、上述した各ステップによれば、上記低周波数および高周波数をそれぞれ周波数に幅を持つ周波数範囲として、各周波数範囲における振幅のスペクトル強度に基づいて推定を行う。これにより、地点特性により特定の周波数の振幅のみが大きく増幅されることで生じる誤差を抑えることができる。また、初期微動の波形データを周波数領域におけるスペクトル密度の離散関数として抽出する手法によれば、上述した低周波数範囲および高周波数範囲に周波数の幅を持たせながら、震央距離との相関を求める必要がある、各周波数範囲の組み合わせの数を有限個とすることができる。また、初期微動の波形データをこの初期微動の初期破壊相を含むものとする手法によれば、地震の種類による地震波形の違いが震央距離91Bの推定結果に及ぼす影響を低減させて、この震央距離91Bの推定の精度を向上させることができる。
【0071】
なお、技術者は、ステップS130において出力された震央距離91Bの推定結果を確認した後に、上述した距離パラメータ推定プログラムをコンピュータ11に再度実行させることができる。この場合、技術者は、再度実行されるステップS20において、以前に震央距離91Bの推定が行われた観測地震の上下動応答加速度波形20を、その着震時刻20Aおよび前回の震央距離91Bの推定結果と対応付けて、上述した地震のデータとして追加で入力してもよい。この手法によれば、震央距離91Bの推定に使用される一次式22を決定する地震のデータの数を観測地震が発生する度に増やして、震央距離91Bの推定の精度を向上させることができる。
【0072】
本発明は、フローチャートなどを用いて上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0073】
(1)本発明においては、観測地震の震央距離91Bの代わりに、この震央距離とは別種の距離パラメータである震源距離90Bを推定して、この震源距離90Bを推定結果として出力する手法を採用することができる。また、本発明においては、観測地震の震央距離91Bおよび震源距離90Bの両方を推定して、この推定結果から観測地震の震源深さ90Cを推定する手法を採用することもできる。ここで、震源深さ90Cとは、
図1に示すように、震源90Aから震央91Aまでの直線距離のことであり、震央距離91Bおよび震源距離90Bから計算で求めることができるものである。
【0074】
(2)本発明においては、地震の上下動応答加速度波形の代わりに、この上下動応答加速度波形とは別種の地震上下動波形である上下動速度波形を使用して地震の距離パラメータの推定を行う手法を採用することができる。ここで、地震の上下動速度波形は、地震の上下動応答加速度波形と比べて、地震によって発生することが想定されにくい比較的高周波数のノイズの影響が少ないという性質がある。このため、地震の上下動速度波形を使用して地震の距離パラメータの推定を行った場合には、地震の上下動応答加速度波形を使用して地震の距離パラメータの推定を行った場合と比べて、この推定におけるノイズの影響を少なくすることができる。