【解決手段】複数の導電粒子2が所定の配列で絶縁性樹脂層3に保持されている導電粒子配列層4を有する異方性導電フィルム1Aである。この異方性導電フィルム1Aは、導電粒子2の配列を保持している絶縁性樹脂層3の個々の導電粒子の周囲における樹脂量分布が、樹脂量の少ない方向を有する。この場合、フィルム平面方向において、導電粒子の周囲における樹脂量分布が、樹脂量の少ない方向を有することが好ましい。また、樹脂量の少ない方向が、複数の導電粒子について揃っていることが好ましい。
複数の導電粒子が所定の配列で絶縁性樹脂層に保持されている導電粒子配列層を有する異方性導電フィルムであって、導電粒子の配列を保持している絶縁性樹脂層の個々の導電粒子の周囲における樹脂量分布が、樹脂量の少ない方向を有する異方性導電フィルム。
導電粒子の中心を通る、前記樹脂量の少ない方向で異方性導電フィルムを切断した場合の異方性導電フィルムの断面において、該導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層の面積につき、導電粒子の一方の側の面積が、他方の側の面積に比して小さい請求項1〜3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
導電粒子の中心を通る、前記樹脂量の少ない方向で異方性導電フィルムを切断した場合の異方性導電フィルムの断面において、該導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層は一方の側面が異方性導電フィルムの厚み方向に起立した断崖状であり、他方の側面が、前記一方の側面よりも異方導電性フィルムの厚さ方向に対して傾いている請求項4記載の異方性導電フィルム。
導電粒子の中心を通る、前記樹脂量の少ない方向で異方性導電フィルムを切断した場合の異方性導電フィルムの断面において、該導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層は一方の側面が異方性導電フィルムの厚み方向に起立した断崖状であり、他方の側面が階段状である請求項4記載の異方性導電フィルム。
導電粒子配列層の一方の面が平坦で、他方の面が凹凸を有し、該凹凸を有する面に、第2の絶縁性樹脂層が積層されている請求項1〜6のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
前記樹脂量の少なくなる方向で転写型を切断した場合の転写型の断面において、開口部の最深部の中心を通る鉛直線の一方の側の開口部の面積が、他方の側の面積に比して小さい請求項9記載の製造方法。
前記樹脂量の少なくなる方向で転写型を切断した場合の転写型の断面において、開口部の対向する側壁の一方が転写型の厚み方向に断崖状に起立し、他方が前記一方の側壁よりも異方導電性フィルムの厚さ方向に対して傾いている請求項9又は10記載の製造方法。
前記樹脂量の少なくなる方向で転写型を切断した場合の転写型の断面において、開口部の対向する側壁の一方が転写型の厚み方向に断崖状に起立し、他方が階段状である請求項9又は10記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
(1)異方性導電フィルムの構成
(1-1)全体構成
図1Aは、本発明の一実施形態の異方性導電フィルム1Aの平面図、
図1BはそのA−A断面図、
図1CはB−B断面図である。
【0016】
図示したように異方性導電フィルム1Aは、複数の導電粒子2が絶縁性樹脂層3に直接的に保持された導電粒子配列層4を有し、この絶縁性樹脂層3が、個々の導電粒子2の周囲において、後述する特定の厚さ分布を有することを特徴としている。導電粒子配列層4は、一方の面が平坦で他方の面が凹凸を有し、導電粒子配列層4の凹凸面には第2の絶縁性樹脂層5が積層され、導電粒子配列層4の平坦面には第3の絶縁性樹脂層6が積層されている。なお、本発明において、第2の絶縁性樹脂層5及び第3の絶縁性樹脂層6は、異方性導電接続する電子部品同士の接着性を向上させるため、それぞれ必要に応じて設けられる。
【0017】
(1-2)導電粒子配列層
導電粒子配列層4では、複数の導電粒子2が単層で4方格子に配列している。また、個々の導電粒子2は、それぞれ導電粒子配列層4の凸部において絶縁性樹脂層3に保持され、個々の導電粒子2の周囲の絶縁性樹脂層3は、概ね角がまるめられた斜円錐台形状を有している。
なお、本発明において、導電粒子2の配列は、4方格子に限定されない。例えば、6方格子等でもよい。導電粒子配列層4の1つの凸部の絶縁性樹脂層3に保持される導電粒子の数は、1個に限られず、複数でもよい。
また、本発明において、導電粒子配列層4の凸部をなす絶縁性樹脂層3の形状は、斜円錐台に限られず、例えば、斜矩形錐台等の錐台形状等とすることができる。
【0018】
異方性導電フィルム1Aは、絶縁性樹脂層3の厚さ分布が、導電粒子2の中心軸L1(異方性導電フィルム1Aの厚さ方向の中心軸)に対して左右非対称となる方向Xを有し、この方向Xが全ての導電粒子2で揃っている。
【0019】
即ち、任意の導電粒子2の中心Pを通る、前記方向Xで異方性導電フィルム1Aを切断した場合の異方性導電フィルム1AのA−A断面(
図1B)において、個々の導電粒子2の周囲Qの絶縁性樹脂層3の面積は、該導電粒子2の一方の側Q
aの面積S
aが他方の側Q
bの面積S
bに比して小さくなっている。ここで、個々の導電粒子2の周囲Qの絶縁性樹脂層3とは、前記断面において、個々の導電粒子2を保持している絶縁性樹脂層3の凸部領域、即ち、前記断面において、導電粒子2と、その片隣の導電粒子2との間で絶縁性樹脂層3の層厚(絶縁性樹脂層3の凸領域側表面と平坦面側領域との距離)が最も薄い部分から、その導電粒子2と、その他方の片隣の導電粒子2との間で絶縁性樹脂層3の層厚が最も薄い部分までの範囲をいう。
【0020】
また、この断面において、導電粒子2の一方の側Q
aの側面3
aは異方性導電フィルム1Aの厚み方向に沿った断崖状となっており、他方の側Q
bの側面3
bは、一方の側Q
aの側面3
aよりも異方導電性フィルム1Aの厚さ方向に対して傾いている。
【0021】
このように、この異方性導電フィルム1Aは、個々の導電粒子2の周囲における絶縁性樹脂層3の厚さ分布が、該導電粒子2の中心軸L1に対して非対称となる方向Xを有し、この方向Xの断面(
図1B)において、前記導電粒子2の一方の側Q
aの面積S
aが他方の側Q
bの面積S
bに比して小さく、導電粒子2を保持する絶縁性樹脂層3の樹脂量が、一方の側Q
aが他方の側Q
bに比して少ないから、異方性導電フィルム1Aを用いて電子部品を実装する際の加熱加圧時には、導電粒子2は、該導電粒子2を保持する絶縁性樹脂層3の樹脂量の少ない方向X
aに流動し易くなる(
図1A)。したがって、実装時の加熱加圧により導電粒子が不規則に流動し、特定部位に集中することを防止でき、電極間で導電粒子が連なることによるショートや、電極間に導電粒子が存在しないことによる導通不良を低減させることができる。
【0022】
更に、絶縁性樹脂層が上述の厚さ分布を有することにより、異方性導電フィルムの表面を形成する樹脂層が表面凹凸を有することとなり、表面が平坦な樹脂層で形成されている場合に比して、異方性導電フィルムのタック性が高くなり、接着性が向上することが期待できる。
【0023】
なお、本発明の異方性導電フィルムにおいて、個々の導電粒子2の周囲における絶縁性樹脂層3の厚さ分布が、該導電粒子2に対して非対称となる方向は少なくとも一つあればよく、他の方向では、導電粒子2の周囲における絶縁性樹脂層3の厚さ分布が、該導電粒子2に対して対称であってよい。例えば、上述の異方性導電フィルム1AのX方向に垂直なY方向のB−B断面では、
図1Cに示すように、導電粒子2の周囲における絶縁性樹脂層3の厚さ分布が、該導電粒子2の中心軸L1に対して対称となっている。
【0024】
(1-3)導電粒子
異方性導電フィルム1Aにおいて、導電粒子2としては、従来公知の異方性導電フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。
【0025】
導電粒子2の平均粒径としては、小さすぎると、異方性導電接続する配線の高さのばらつきを吸収できず抵抗が高くなる傾向があり、大きすぎてもショートの原因となる傾向があるので、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜6μmである。
【0026】
導電粒子2の異方性導電フィルム1Aにおける粒子量は、少なすぎると粒子捕捉数が低下して異方性導電接続が難しくなり、多すぎるとショートすることが懸念されるので、好ましくは1平方mm当たり50〜50000個、より好ましくは200〜40000個、更に好ましくは400〜30000個である。
【0027】
(1-4)絶縁性樹脂層
導電粒子2を保持する絶縁性樹脂層3としては、公知の絶縁性樹脂層を適宜採用することができる。例えば、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂層、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂層等を使用することができる。また、これらの樹脂層は、必要に応じて、それぞれ重合したものとすることができる。
【0028】
中でも、絶縁性樹脂層3として、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂層を採用することが好ましい。光ラジカル重合型樹脂層に紫外線を照射して光ラジカル重合させることにより、導電粒子2が絶縁性樹脂層3に固定されている導電粒子配列層4を形成することができる。この場合、後述するように、第2の絶縁性樹脂層5の形成前に、導電粒子2の側から光ラジカル重合型樹脂層に紫外線を照射して光ラジカル重合させると、
図4Dに示すように、導電粒子配列層4の平坦面と導電粒子2との間に位置する絶縁性樹脂層3の領域3
mの硬化率を、互いに隣接する導電粒子2の間に位置する絶縁性樹脂層3の領域3
nの硬化率よりも低くすることができる。従って、絶縁性樹脂層3において、導電粒子2の直下にあって硬化率の低い領域3
mの最低溶融粘度を、導電粒子2の周囲にあって硬化率の高い領域3
nの最低溶融粘度よりも低くすることができ、異方性導電接続の際に、導電粒子2が水平方向に位置ズレせずに押し込まれ易くなる。よって、粒子捕捉効率を向上させ、導通抵抗値を低下させ、良好な導通信頼性を実現することができる。
【0029】
ここで、硬化率は重合に寄与する官能基(例えばビニル基)の減少比率として定義される数値である。具体的には、硬化後のビニル基の存在量が硬化前の20%であれば、硬化率は80%となる。ビニル基の存在量の測定は、赤外吸収スペクトルのビニル基の特性吸収分析により行うことができる。絶縁性樹脂層3の硬化率の低い領域3
mの硬化率は好ましくは40〜80%であり、硬化率の高い領域3
nの硬化率は好ましくは70〜100%である。
【0030】
絶縁性樹脂層3の最低溶融粘度は、レオメーターで測定することができ、この値が低すぎると粒子捕捉効率が低下する傾向があり、高すぎると導通抵抗値が大きくなる傾向があるので、好ましくは100〜100000mPa・s、より好ましくは500〜50000mPa・sである。
【0031】
また、絶縁性樹脂層3の最低溶融粘度は、第2の絶縁性樹脂層5及び第3の絶縁性樹脂層6のそれぞれの最低溶融粘度よりも高いことが好ましい。具体的には[絶縁性樹脂層3の最低溶融粘度(mPa・s)]/[第2の絶縁性樹脂層5又は第3の絶縁性樹脂層6の最低溶融粘度(mPa・s)]の数値が、低すぎると粒子捕捉効率が低下し、ショート発生の確率が上昇する傾向があり、高すぎると導通信頼性が低下する傾向がある。そのため、[絶縁性樹脂層3の最低溶融粘度(mPa・s)]/[第2の絶縁性樹脂層5又は第3の絶縁性樹脂層6の最低溶融粘度(mPa・s)]の数値を、好ましくは1〜1000、より好ましくは4〜400とする。
【0032】
なお、第2の絶縁性樹脂層5及び第3の絶縁性樹脂層6の最低溶融粘度は、低すぎるとリールにした際に樹脂のはみ出しが生ずる傾向があり、高すぎると導通抵抗値が高くなる傾向があるので、好ましくは0.1〜10000mPa・s、より好ましくは1〜1000mPa・sである。
【0033】
絶縁性樹脂層3に使用するアクリレート化合物としては、従来公知のラジカル重合性アクリレートを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート(ここで、(メタ)アクリレートにはアクリレートとメタクリレートとが包含される)、二官能以上の多官能(メタ)アクリレートを使用することができる。また、本発明においては、絶縁性樹脂層3を熱硬化性とするために、アクリル系モノマーの少なくとも一部に多官能(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0034】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ブチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、モルホリン−4−イル(メタ)アクリレート等が挙げられる。二官能(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールF―EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。三官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。四官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。その他に、多官能ウレタン(メタ)アクリレートも使用することができる。具体的には、M1100、M1200、M1210、M1600(以上、東亞合成株式会社)、AH−600、AT−600(以上、共栄社化学株式会社)等が挙げられる。
【0035】
絶縁性樹脂層3におけるアクリレート化合物の含有量は、少なすぎると第2の絶縁性樹脂層5との最低溶融粘度差をつけにくくなる傾向があり、多すぎると硬化収縮が大きくなって作業性が低下する傾向があるので、好ましくは2〜70質量%、より好ましくは10〜50質量%である。
【0036】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。たとえば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、リン系光重合開始剤等が挙げられる。具体的には、アセトフェノン系光重合開始剤として、2−ヒドロキシ−2−シクロへキシルアセトフェノン(イルガキュア(IRGACURE)184、BASFジャパン株式会社製)、α−ヒドロキシ−α,α′−ジメチルアセトフェノン(ダロキュア(DAROCUR)1173、BASFジャパン株式会社製)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(イルガキュア(IRGACURE)651、BASFジャパン株式会社製)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(ダロキュア(DAROCUR)2959、BASFジャパン株式会社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル]−ベンジル}フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア(IRGACURE)127、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。ベンジルケタール系光重合開始剤として、ベンゾフェノン、フルオレノン、ジベンゾスベロン、4−アミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。また、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(イルガキュア(IRGACURE)369、BASFジャパン株式会社製)も使用することができる。リン系光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア(IRGACURE)819、BASFジャパン株式会社製)、(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(ダロキュア(DAROCURE)TPO、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0037】
光ラジカル重合開始剤の使用量は、アクリレート化合物100質量部に対し、少なすぎると、光ラジカル重合が十分に進行しない傾向があり、多すぎると剛性低下の原因となることが懸念されるので、好ましくは0.1〜25質量部、より好ましくは0.5〜15質量部である。
【0038】
絶縁性樹脂層3をアクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含有する熱ラジカル重合型樹脂層から構成する場合、アクリレート化合物としては先に説明したとおりのものを適用することができる。また、熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物やアゾ系化合物等が挙げられるが、アゾ系化合物は重合反応の際に分解して窒素ガスを発生し、重合物中に気泡を混入させることが懸念されるので、有機過酸化物を好ましく使用することができる。例えば、日本油脂株式会社製のパーヘキサ3MやパーロイルTCP、パーロイルL等が挙げられる。
【0039】
有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、イソブチルパーオキサイド、過酸化ラウロイル、琥珀酸パーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカルボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカルボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカルボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカルボネート、ビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、(α,α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、パーオキシネオデカン酸クミルエステル、パーオキシネオデカン酸オクチルエステル、パーオキシネオデカン酸ヘキシルエステル、パーオキシネオデカン酸−tert−ブチルエステル、パーオキシピバリン酸−tert−ヘキシルエステル、パーオキシピバリン酸−tert−ブチルエステル、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、パーオキシ−2−エチルヘキサン酸−tert−ヘキシルエステル、パーオキシ−2−エチルヘキサン酸−tert−ブチルエステル、パーオキシ−2−エチルヘキサン酸−tert−ブチルエステル、パーオキシ−3−メチルプロピオン酸−tert−ブチルエステル、パーオキシラウリン酸−tert−ブチルエステル、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、過酢酸−tert−ブチルエステル、過安息香酸−tert−ヘキシルエステル、過安息香酸−tert−ブチルエステルなどが挙げられる。有機過酸化物に還元剤を添加し、レドックス系重合開始剤として使用してもよい。
【0040】
アゾ系化合物としては、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2′−アゾビスブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−アミジノ−プロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(1,1−ビス(2−ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(2−メチル−プロピオンアミド)二水塩、4,4′−アゾビス(4−シアノ−吉草酸)、2,2′−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチルエステル(ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート))、シアノ−2−プロピルアゾホルムアミドなどが挙げられる。
【0041】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると熱ラジカル重合が十分に進行しない傾向があり、多すぎると剛性低下の原因になることが懸念されるので、アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは0.1〜25質量部、より好ましくは0.5〜15質量部である。
【0042】
絶縁性樹脂層3を、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含有する熱カチオン重合型樹脂層から構成する場合、あるいは、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂層から構成する場合、エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物もしくは樹脂が好ましく挙げられる。これらは液状であっても、固体状であってもよい。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、クレゾール、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ベンゾフェノン、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビキシレノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテル;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、チレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル;アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから得られるグリシジルアミノグリシジルエーテル;アミノ安息香酸から得られるグリシジルアミノグリシジルエステル;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホンなどから得られるグリシジルアミン;エポキシ化ポリオレフィン等の公知のエポキシ樹脂類が挙げられる。また、3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物も使用することができる。
【0043】
熱カチオン重合開始剤は、カチオン重合性化合物をカチオン重合させ得る酸を熱により発生するものである。熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、公知のヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。熱カチオン系重合開始剤の好ましい例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロボレート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロボレートが挙げられる。具体的には、株式会社ADEKA製のSP−150、SP−170、CP−66、CP−77;日本曹達株式会社製のCI−2855、CI−2639;三新化学工業株式会社製のサンエイドSI−60、SI−80;ユニオンカーバイド社製のCYRACURE−UVI−6990、UVI−6974等が挙げられる。
【0044】
熱カチオン重合開始剤の配合量は、少なすぎると熱カチオン重合が十分に進行しない傾向があり、多すぎると剛性低下の原因となることが懸念されるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは0.1〜25質量部、より好ましくは0.5〜15質量部である。
【0045】
熱アニオン重合開始剤は、アニオン重合性化合物をアニオン重合させ得る塩基を熱により発生するものである。熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱アニオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、脂肪族アミン系化合物、芳香族アミン系化合物、二級又は三級アミン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリメルカプタン系化合物、三フッ化ホウ素−アミン錯体、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジッド等を用いることができ、温度に対して良好な潜在性を示すカプセル化イミダゾール系化合物を好ましく使用することができる。
【0046】
熱アニオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは0.1〜40質量部、より好ましくは0.5〜20質量部である。
【0047】
一方、第2の絶縁性樹脂層5及び第3の絶縁性樹脂層6は、それぞれ公知の絶縁性樹脂の中から適宜選択した樹脂により形成することができる。絶縁性樹脂層3と同様の材質から形成してもよい。
【0048】
絶縁性樹脂層3の最低溶融粘度は、第2および第3の絶縁性樹脂層5、6のそれに対し同等以上又は以下とすることができるが、第2の絶縁性樹脂層5及び第3の絶縁性樹脂層6を絶縁性樹脂層3と同様の材質から形成する場合、絶縁性樹脂層3の最低溶融粘度は、第2および第3の絶縁性樹脂層5、6のそれよりも高くすることが好ましい。
【0049】
第2の絶縁性樹脂層5の層厚は、薄すぎると樹脂充填不足による導通不良が生ずることが懸念され、厚すぎると圧着時に樹脂のはみ出しが生じ、圧着装置を汚染することが懸念されるので、40μm以下、好ましくは5〜20μm、より好ましくは8〜15μmである。第3の絶縁性樹脂層6の層厚は、薄すぎると第2電子部品に仮貼りする際の貼付け不良が生ずることが懸念され、厚すぎると導通抵抗値が大きくなる傾向があるので、好ましくは0.5〜6μm、より好ましくは1〜5μmである。
【0050】
なお、異方性導電フィルム1Aを用いて異方性導電接続を行う際に、第2の絶縁性樹脂層5(導電粒子配列層4の凹凸面に積層された絶縁性樹脂層)及び第3の絶縁性樹脂層6(導電粒子配列層4の平坦面に積層された絶縁性樹脂層)のうち、樹脂層の層厚の薄い方が、通常、ガラス基板のベタ電極などの相対的に高いアライメント精度が要求されない端子側に配置され、層厚の厚い方が、通常、ICチップのバンプ等の高い位置精度でアライメントが必要な端子側に配置される。第2の絶縁性樹脂層5及び第3の絶縁性樹脂層6のうち、一方しか設けられていない場合は、導電粒子との距離が近い側が、アライメント精度が相対的に低い側となる。どちらも設けられていない場合においては、特に限定されない。
【0051】
(2)異方性導電フィルムの製造方法
(2-1)転写型
異方性導電フィルム1Aは、例えば、次のように転写型を用いて製造することができる。即ち、
図2Aは、異方性導電フィルム1Aの製造に使用することのできる転写型10Aの斜視図であり、
図2Bは、その転写型10Aの上面図、
図2Cは、転写型10Aの断面図である。
【0052】
この転写型10Aは、4方格子に配列した複数の開口部11を表面に有し、個々の開口部11における深さ分布が、開口部11の最深部の中心Rを通る鉛直線L1’に対して非対称となる方向X’を有している。より具体的には、開口部11の最深部の中心Rを通る方向X’で転写型10Aを切断した場合の転写型10Aの断面(
図2C)において、開口部11の最深部の中心Rを通る鉛直線L1’の一方の側Q
a’の開口部10の面積S
a’が、他方の側Q
b’の面積S
b’に比して小さい。
【0053】
なお、本発明で使用する転写型において、開口部の配列は、製造する異方性導電フィルムにおける導電粒子の配列に応じて適宜選択され、例えば、導電粒子を6方向格子に配列させる場合、転写型の開口部の配列も6方格子とする。
【0054】
また、この断面における開口部11の対向する側壁の形状に関し、一方の側Q
a’の側壁11
aに対して他方の側Q
b’側壁11
bが傾いている。即ち、一方の側Q
a’の側壁11
aは転写型10の厚み方向に起立した断崖状であり、他方の側Q
b’の側壁11
bは、転写型10の厚み方向に対して傾斜している。
【0055】
各開口部11に1個の導電粒子2が充填される場合に、開口部11の深さD1は、転写型10Aに形成した導電粒子配列層4を、転写型10Aから外す作業の容易性と導電粒子2の保持性とのバランスの点から、この開口部11に充填する導電粒子2の平均粒径W0と開口部11の深さD1との比(W0/D1)を、好ましくは0.4〜3.0とし、より好ましくは0.5〜1.5とする。
【0056】
開口部11の最深部の中心Rを通る方向X’の転写型10Aの断面(
図2C)において、開口部11の開口径W1と導電粒子2の平均粒径W0との関係は、開口部11への導電粒子2の充填のし易さと開口部11への絶縁性樹脂の押し込み易さの点から、開口部11の開口径W1と導電粒子2の平均粒径W0との比(W1/W0)を、好ましくは1.2〜5.0、より好ましくは1.5〜3.0とする。
【0057】
また、この断面において、開口部11の底面径W2と導電粒子2の平均粒径W0との関係は、熱圧着時の各導電粒子2の流動方向を揃える点から、開口部11の底面径W2と導電粒子2の平均粒径W0との比(W2/W0)を、好ましくは0〜1.9、より好ましくは0〜1.6とする。
【0058】
転写型10Aの形成材料としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料を使用することができ、開口部11は、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって形成することができる。
【0059】
(2-2)異方性導電フィルムの製造方法1
異方性導電フィルム1Aの製造方法においては、まず、
図3A、
図3Bに示すように、転写型10Aの開口部11に導電粒子2を充填する。導電粒子2の充填方法は特に限定されず、例えば、乾燥した導電粒子2またはこれを溶媒中に分散させた導電粒子2の分散液を転写型10Aの開口部11の形成面上に散布または塗布し、次いでブラシや布などを用いて開口部11の形成面をワイプすればよい。このワイプを、前述の方向X’に沿って、開口部11の傾斜した側壁11
bの底部から上部方向へ行うことにより、開口部11内に導電粒子2を円滑に送り込むことができる。
【0060】
また、導電粒子2の充填方法としては、まず、転写型10Aの開口部11の形成面上に分散させ、次に磁場等の外力を利用して導電粒子2を開口部11に移動させてもよい。
【0061】
次に、
図4Aに示すように、導電粒子2を充填した開口部11上に、剥離フィルム7上に形成した絶縁性樹脂層3を対向させて積層し、開口部11の底部の隅に絶縁性樹脂層3が入り込まない程度に加圧し、
図4Bに示すように導電粒子2が絶縁性樹脂層3に埋め込まれるようにして導電粒子2を絶縁性樹脂層3に保持させる。これを転写型10Aから取り出すと、
図4Cに示すように、転写型10Aの開口部11の配列にしたがって4方格子に配列した導電粒子2が絶縁性樹脂層3に保持されている導電粒子配列層4を、剥離フィルム7上に得ることができる。
【0062】
なお、導電粒子配列層4において、導電粒子2は、絶縁性樹脂層3内に完全には埋入していなくてもよく、埋入してもよい。導電粒子2を絶縁性樹脂層3に完全に埋入させるため、転写型10Aの底部にある導電粒子2を転写型10Aの開口面側に移動させることができる。この移動は磁力などの外力で行ってもよい。
【0063】
次に、
図4Dに示すように、導電粒子配列層4の表面凹凸を有する面に紫外線UVを照射することが好ましい。これにより、導電粒子2を絶縁性樹脂層3に固定できる。また、導電粒子2の直下の絶縁性樹脂層の領域3
mは、UV照射が導電粒子2で遮られることにより、その硬化率がその周囲に比して相対的に低くなる。そのため、異方性導電接続の際に、導電粒子2が水平方向に位置ズレせずに押し込まれ易くなる。よって、粒子捕捉効率を向上させ、導通抵抗値を低下させ、良好な導通信頼性を実現することができる。
【0064】
次に、
図4Eに示すように、導電粒子配列層4の表面凹凸がある面(即ち、絶縁性樹脂層3における導電粒子2の転写面)に、第2の絶縁性樹脂層5を積層し、
図4Fに示すように、剥離フィルム7を剥がして除去し、
図4Gに示すように、剥離フィルム7を剥がした面(即ち、絶縁性樹脂層3における導電粒子2の転写面と反対側の面)に、第3の絶縁性樹脂層6を積層する。こうして
図1A、
図1B及び
図1Cに示した異方性導電フィルム1Aを製造することができる。
【0065】
(2-3)異方性導電フィルムの製造方法2
図1A、
図1B及び
図1Cに示した異方性導電フィルム1Aの製造方法は、上述の例に限られない。例えば、上述の製造方法において、剥離フィルム7に代えて、第3の絶縁性樹脂層6を形成してもよい。
【0066】
即ち、まず、
図3A、
図3Bに示したように、転写型10Aの開口部11に導電粒子2を充填し、次に、
図5Aに示すように、導電粒子2を開口部11に充填した転写型10Aの、その開口部11上に、予め第3の絶縁性樹脂層6が張り合わされている絶縁性樹脂層3を対向させて積層する。
【0067】
次に、
図5Bに示すように、転写型10Aの開口部11の形成面に絶縁性樹脂層3を押し込み、絶縁性樹脂層3に導電粒子2を保持させ、導電粒子配列層4を形成する。
【0068】
そして、
図5Cに示すように、導電粒子配列層4と第3の絶縁性樹脂層6の積層体を転写型10Aから取り出し、
図5Dに示すように、絶縁性樹脂層3の凹凸面側からUV照射し、絶縁性樹脂層3に導電粒子2を固定する。
【0069】
次に、
図5Eに示すように絶縁性樹脂層3の凹凸面に第2の絶縁性樹脂層5を積層する。こうして、
図1A、
図1B及び
図1Cに示した異方性導電フィルム1Aを製造することができる。
【0070】
(2-4)異方性導電フィルムの製造方法3
図1A、
図1B及び
図1Cに示した異方性導電フィルム1Aの製造方法において、紫外線透過性の転写型10A’を使用した場合には、導電粒子2が保持された絶縁性樹脂層3への紫外線照射を転写型10A’を通して行ってもよい。紫外線透過性の転写型10A’は、紫外線透過性ガラス等の無機材料、あるいはポリメタクリレート等の有機材料から形成することができる。
【0071】
この方法では、まず、紫外線透過性の転写型10A’の開口部に、
図3A、
図3Bに示したように、導電粒子2を充填し、次に、
図6Aに示すように、導電粒子2を開口部11に充填した転写型10A’の、その開口部11上に、剥離フィルム7上に形成した光重合性の絶縁性樹脂層3を対向させ、それを、開口部11の底部の隅に絶縁性樹脂層3が入り込まない程度に加圧し、
図6Bに示すように導電粒子2が絶縁性樹脂層3に埋め込まれるようにして導電粒子2を絶縁性樹脂層3に保持させ、導電粒子配列層4を形成する。この場合にも、導電粒子2は絶縁性樹脂層3に完全に埋入させてもよく、完全には埋入させなくてもよい。
【0072】
次に、
図6Cに示すように、転写型10A’側から絶縁性樹脂層3に紫外線UVを照射する。これにより、光重合性の絶縁性樹脂層3を重合し、導電粒子2を絶縁性樹脂層3に固定することができ、しかも、導電粒子2で紫外線UVが遮られていた絶縁性樹脂層の領域3
mの硬化率を、その周囲の絶縁性樹脂層の領域3
nの硬化率に比べて相対的に低くすることができる。したがって、異方性導電接続時に、導電粒子2の水平方向の位置ズレを防止しつつ導電粒子2の押し込み性を向上させることができる。よって、粒子捕捉効率を向上させ、導通抵抗値を低下させ、良好な導通信頼性を実現することができる。
【0073】
次に、
図6Dに示すように、絶縁性樹脂層3から剥離フィルム7を除去する。そして、
図6Eに示すように、剥離フィルム7を除去した絶縁性樹脂層3の面に第3の絶縁性樹脂層6を積層し、その積層体を、
図6Fに示すように転写型10A’から外し、
図6Gに示すように、導電粒子配列層4の表面凹凸がある面に第2の絶縁性樹脂層5を積層する。こうして
図1A、
図1B及び
図1Cに示した異方性導電フィルム1Aを製造することができる。
【0074】
(3)変形態様
(3-1)導電粒子の周囲における絶縁性樹脂層の厚さ分布が非対称となる方向
本発明の異方性導電フィルムは、複数の導電粒子2を所定の配列で直接的に保持している絶縁性樹脂層3に関し、個々の導電粒子2の周囲における絶縁性樹脂層3の厚さ分布が、導電粒子2の中心軸L1に対して非対称となる方向を複数有していてもよい。例えば、
図7A、
図7B及び
図7Cに示す異方性導電フィルム1A’のように、個々の導電粒子2の周囲の絶縁性樹脂層3の平面視の形状を略扇形とすることができる。この扇形の開きの角度αにより非対称性は任意の形状を取ることができ、α=90°の扇形(
図7A)、α=180°の半円形等とすることができる。また、
図8に示すように、中心角α(例えば、α=270°)の円弧と弦からなる部分円としてもよい。
【0075】
より具体的には、例えば、
図7A、
図7B及び
図7Cに示す異方性導電フィルム1A’の場合、
図7Aに示したX方向及びY方向のそれぞれにおいて、導電粒子2の周囲における絶縁性樹脂層3の厚さ分布が、導電粒子2の中心軸L1に対して非対称となっている。この異方性導電フィルム1A’を用いて電子部品を実装する際の加熱加圧時には、導電粒子2は、該導電粒子2を保持する樹脂量の少ない二つの方向X
a、Y
aに流動し易くなる。したがって、実装時の加熱加圧により導電粒子が不規則に流動し、導電粒子が集中した部位が生じることによる電極間の導電粒子の連なりや、電極間に導電粒子が存在しないことによる導通不良を低減させることができる。
また、
図8の異方性導電フィルム1A’’の場合、導電粒子2は矢印方向に流動し易くなる。
【0076】
本発明の異方性導電フィルムにおいて、個々の導電粒子2の周囲における絶縁性樹脂層3の厚さ分布を異方性導電フィルムの全域で揃え、異方性導電接続時に導電粒子2が流動し易くなる方向を全ての導電粒子2について揃えてもよく、個々の導電粒子2の周囲における絶縁性樹脂層3の厚さ分布を、異方性導電フィルム内の所定の領域ごとに異ならせ、異方性導電接続時に導電粒子2が流動し易くなる方向を異方性導電フィルムの所定の領域ごとに異ならせてもよい。
【0077】
さらに、個々の導電粒子2の周囲における絶縁性樹脂層3の厚さ分布が、導電粒子2の中心軸L1に対して非対称となる方向を有することにより、異方性導電接続時に導電粒子2を特定の方向に流動し易くさせるにあたり、その流動方向が隣り合う導電粒子で重ならないようにする限り、異方性導電フィルムの全域において、導電粒子2の周囲における絶縁性樹脂層3の厚さ分布を揃えなくても良い。
【0078】
(3-2)導電粒子の周囲における絶縁性樹脂層の具体的形状
本発明の異方性導電フィルムにおいては、複数の導電粒子2を所定の配列に保持している絶縁性樹脂層3の厚さ分布が個々の導電粒子2の周囲において特定の方向で非対称となるように、絶縁性樹脂層3は種々の形状をとることができる。したがって、絶縁性樹脂層3を形成するために使用する転写型も、開口部11における深さ分布が、開口部11の最深部の中心Rを通る鉛直線L1’に対して非対称となる方向X’を有するように、種々の形状をとることができる。
【0079】
例えば、
図2A、
図2B及び
図2Cに示した転写型10Aにおいて、開口部11の底面を、小さい凹凸を有する粗面に形成してもよい。これにより、導電粒子2が転写型10Aに接する面積が小さくなり、導電粒子配列層を転写型10Aから取り外す作業が容易になる。
【0080】
図2A、
図2B及び
図2Cに示した転写型10Aでは、開口部11の最深部の中心Rを通る方向X’で該転写型10Aを切断した場合の断面(
図2C)において、開口部11の底面が所定の幅W2を有するが、
図9Aに示す転写型10Bのように、開口部11の底面の幅W2をゼロとしてもよい。この転写型10Bを使用することにより、
図9Bに示す断面を有する異方性導電フィルム1Bを得ることができる。
【0081】
図2A、
図2B及び
図2Cに示した転写型10Aでは、開口部11の最深部の中心Rを通る方向X’で該転写型10Aを切断した場合の断面(
図2C)において、転写型10Aの上面で隣り合う開口部11が接しているが、
図10Aに示す転写型10Cのように、転写型の上面において、隣り合う開口部間に所定の距離W3をもたせてもよい。この転写型10Cを使用することにより、
図10Bに示す断面を有する異方性導電フィルム1Cを得ることができる。
【0082】
図11Aに示す転写型10Dのように、開口部11の最深部の中心Rを通る方向X’で転写型を切断した場合の断面において、開口部11の対向する側壁の一方を、転写型10Dの厚み方向に沿って断崖状に起立させ、他方を階段状にしてもよい。この転写型10Dを使用することにより、
図11Bに示す断面を有する異方性導電フィルム1Dを得ることができる。
【0083】
転写型の開口部11の側壁を階段状に形成する場合に、その段数は適宜変えることができ、例えば、
図12Aに示す転写型10Eのように、3段とすることができる。この転写型10Eを使用することにより、
図12Bに示す断面を有する異方性導電フィルム1Eを得ることができる。
【0084】
さらに、上述の各態様の異方性導電フィルムにおいて、導電粒子2が部分的に絶縁性樹脂層3から露出していてもよい。
【0085】
本発明の異方性導電フィルムの製造に使用する転写型として、個々の開口部における深さ分布が、開口部の最深部の中心を通る鉛直線を含む任意の方向の断面において対称なもの(例えば、開口部の側壁の全周が転写型の厚み方向に起立した断崖状のもの)を使用しても良い。この場合、開口部に充填した導電粒子上に積層する絶縁性樹脂の粘度、該絶縁性樹脂への押圧分布、該絶縁性樹脂への照射タイミングや照射方向などを調整することにより、異方性導電フィルムにおいて導電粒子を保持する絶縁性樹脂層の厚さ分布が、導電粒子に対して非対称となるようにしても良い。
【0086】
上述した本発明の異方性導電フィルムは、それぞれ異方性導電接続時に導電粒子2が特定の方向に流動し易くなる。これに対し、転写型10Xの開口部11が任意の方向で
図13Aに示すように左右対称であると、
図13Bに示すように、得られる異方性導電フィルム1Xは、導電粒子2を保持している絶縁性樹脂層3の周囲の厚さ分布が、導電粒子2を中心とする任意の方向で左右対称となり、異方性導電接続時に導電粒子の流動方向が定まらない。そのため、電極間で導電粒子が連なることによるショートや、電極間に導電粒子が存在しないことによる導通不良の発生を回避することができない。
【0087】
本発明において、上述した異方性導電フィルムの変形態様は、適宜組み合わせることができる。
【0088】
また、本発明は、本発明の異方性導電フィルムで第1電子部品と第2電子部品とが異方性導電接続されている接続構造体を包含する。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0090】
実施例1〜5及び比較例1
(1)異方性導電フィルムの製造
各実施例及び比較例で使用する転写型として、次の(a)〜(f)の形状及び寸法を有するステンレススチール製の転写型を用意し、
図4A〜
図4Gに示した方法に準じて異方性導電フィルムを製造した。
【0091】
(a)実施例1:
図2A〜
図2Cに示した転写型10Aと同様の形状で、表1に示す寸法を有するもの
(b)実施例2:
図2A〜
図2Cに示した転写型10Aにおいて、A−A断面を
図10Aに示す形状とし、表1に示す寸法を有するもの
(c)実施例3:(b)と同様の形状で、表1に示す寸法を有するもの
(d)実施例4:
図2A〜
図2Cに示した転写型10Aにおいて、A−A断面を
図11Aに示す形状とし、表1に示す寸法を有するもの
(e)実施例5:
図2A〜
図2Cに示した転写型10Aにおいて、A−A断面を
図12Aに示す形状とし、表1に示す寸法を有するもの
(f)比較例1:
図2A〜
図2Cに示した転写型10Aにおいて、A−A断面を
図13Aに示す形状とし、表1に示す寸法を有するもの
【0092】
フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学株式会社)60質量部、アクリレート(EB−600、ダイセル・オルネクス株式会社)40質量部、及び光ラジカル重合開始剤(IRUGACURE369、BASFジャパン株式会社)2質量部を酢酸エチル又はトルエンにて固形分が50質量%となるように混合液を調製した。一方、剥離フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用意し、この剥離フィルムに、上述の混合液を、乾燥厚が5μmとなるように塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、光ラジカル重合型の絶縁性樹脂層を形成した。
【0093】
次に、表1に示す転写型の各開口部に平均粒径3μmの導電粒子(Ni/Auメッキ樹脂粒子、AUL703、積水化学工業株式会社を溶剤に分散して塗布し、布でワイプすることにより充填した(
図4A)。
【0094】
次に、転写型の開口面に対し、上述の絶縁性樹脂層を対向させ、剥離フィルム側から、60℃で0.5MPaという条件で加圧することにより導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込み、導電粒子2が絶縁性樹脂層3に保持されている導電粒子配列層4を形成した(
図4B)。
【0095】
次に、導電粒子配列層4を転写型10Aから取り外し(
図4C)、絶縁性樹脂層3の表面凹凸が形成されている面に、波長365nm、積算光量4000mJ/cm
2の紫外線を照射することにより、絶縁性樹脂層3に導電粒子2を固定した(
図4D)。
【0096】
フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学株式会社)60質量部、エポキシ樹脂(iER828、三菱化学株式会社)40質量部、熱カチオン重合開始剤(SI−60L、三新化学工業株式会社)2質量部を酢酸エチル又はトルエンにて固形分が50質量%となるように混合液を調製した。この混合液を、厚さ50μmのPETフィルムに、乾燥厚が12μmとなるように塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、第2の絶縁性樹脂層5を形成した。同様の操作により、乾燥厚3μmの第3の絶縁性樹脂層6を形成した。
【0097】
上述の、絶縁性樹脂層3に導電粒子2を固定した導電粒子配列層4の絶縁性樹脂層3上に、第2の絶縁性樹脂層5を、60℃、0.5MPaという条件でラミネートし(
図4E)、続いて反対面の剥離フィルム7を除去し(
図4F)、剥離フィルム7の除去面に第3の絶縁性樹脂層6を、第2の絶縁性樹脂層と同様にラミネートし、異方性導電フィルムを得た(
図4G)。
【0098】
(2)評価
各実施例及び比較例で得た異方性導電フィルムに対して、(i)接合強度、(ii)連結粒子数、(iii)絶縁性(ショート発生率)を次のように評価した。結果を表1に示す。
【0099】
(i)接合強度
各実施例及び比較例で得た異方性導電フィルムを使用し、次のICとガラス基板からなる導通評価用部材を、180℃、80MPaで5秒間加熱加圧することにより、実装サンプルを作成した。
【0100】
IC:寸法1.8×20.0mm、厚さ0.5mm、Bumpサイズ 30×85μm、Bump高さ 15μm、Bumpピッチ50μm
ガラス基板:コーニング社製、1737F、サイズ 50×30mm、厚さ0.5mm
次に、デイジ社製ボンドテスターを用いて、
図14に示すように、ガラス基板20上のIC21にプローブ22を当てて矢印の方向に剪断力を加え、IC21が剥離するときの力を測定した。
【0101】
(ii)連結粒子数
実装サンプルの接続領域(端子同士の接合部分を除く)の40000μm
2を微鏡観察することにより、連結している導電粒子数の最大値を数えた。
【0102】
(iii)絶縁性
各実施例及び比較例で得た異方性導電フィルムを使用し、(i)と同様の接合条件で7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group)パターン同士を接続し、ショート発生率を求めた。実用上、100ppm以下であることが望ましい。ショート発生率は、「ショートの発生数/7.5μmスペース総数」で算出される。
【0103】
【表1】
【0104】
表1から、実施例1〜5の異方性導電フィルムは、比較例1の異方性導電フィルムに比して、連結粒子数が顕著に少なく、ショート発生率が少ないことがわかる。また、実施例1〜5の異方性導電フィルムは、比較例1の異方性導電フィルムに比して、接合強度が優れているが、これは、実施例1〜5の異方性導電フィルムは、導電粒子を直接する絶縁性樹脂層の厚さ分布が、導電粒子に対して非対称であり、その絶縁性樹脂層の凹凸が異方性導電フィルムの表面凹凸に影響し、樹脂の密着性が高まったためと推察される。