【実施例1】
【0028】
まず、
図1及び
図2を用いて、本発明の実施例1に係る椅子100の形態について説明する。
【0029】
図1は本発明の実施例1に係る椅子の斜視図であり、
図2は本発明の実施例1に係る椅子の座部を表す平面図である。
【0030】
図1に示すように、椅子100は、座部10、脚部20(前脚部20a及び後脚部20b)、肘掛け部30及び背もたれ部40を備える。
【0031】
[座部10]
図1及び
図2に示すように、座部10は、全体が板状にて形成される。座部10の前縁13側の他方の角13aは、前縁13側の一方の角13bよりも大きくアール面取りされており、座部10は、これにより、平面視において、左右の形状が非対象(左右非対象)となっている。このとき、座部10の一方の側縁12を座部10の前縁13に対して垂直に形成するとともに、座部10の他方の側縁11の全体を円弧状となるように形成することが好ましい(この場合、前縁13側の一方の角13bは直角となるのに対し、前縁13側の他方の角13aはカーブ形状となる。座部10は、平面視において、砲弾状となっている)。
【0032】
座部10の縦方向の長さは概ね45cm、横方向の長さは概ね50cm、厚みは概ね3cmに形成される。また、座部10は、一般に椅子の座部に用いられる材質、例えば、木材、繊維強化プラスチック(FRP)等にて形成することができる。
【0033】
[脚部20]
図1に示すように、脚部20は、全体が縦長の棒状からなり、前脚部20a、20a及び後脚部20b、20bの4本の脚から構成される。前脚部20a、20aは、それぞれ、座部10の前縁13の両端部近傍から下方に延設されており、後脚部20b、20bは、それぞれ、座部10の後縁14の両端部近傍から下方に延設されている。このように、脚部20は、座部10の下方に延設されることで、座部10を支持するものとなっている。
【0034】
脚部20の縦方向の長さは概ね40cm、外径は概ね5cmに形成される。また、脚部20は、一般に椅子の脚部に用いられる材質、例えば、木材、繊維強化プラスチック(FRP)等にて形成することができる。
【0035】
[肘掛け部30]
図1に示すように、肘掛け部30は、全体が倒L字状にて形成される。肘掛け部30は、座部10の一方の側縁12側の上方に設けられており、一端が座部10の前縁13側の一方の角13bの近傍に、他端が後述する背もたれ部40の一方の側縁の中央付近に連結される格好となっている。すなわち、肘掛け部30は、座部10の前縁13側の一方の角13bの近傍から上方に延設される部材30aと背もたれ部40の一方の側縁の中央付近から座部10の前縁13方向に延設される部材30bとで構成される。
【0036】
肘掛け部30の部材30aの長手方向の長さは概ね20cm、短手方向の長さは概ね4cm、厚みは概ね2cmに形成され、肘掛け部30の部材30bの長手方向の長さは概ね40cm、短手方向の長さは概ね4cm、厚みは概ね2cmに形成される。また、肘掛け部30(部材30a及び30b)は、一般に椅子の肘掛け部に用いられる材質、例えば、木材、繊維強化プラスチック(FRP)等にて形成することができる。
【0037】
[背もたれ部40]
図1に示すように、背もたれ部40は、全体が板状からなり、正面視において矩形状にて形成される(図示略)。背もたれ部40は、座部10の後縁14から上方に延設されており、一方の側縁の中央付近には、上述のとおり、肘掛け部30の他端(部材30b)が連結される格好となっている。
【0038】
背もたれ部40の縦方向の長さは概ね50cm、横方向の長さは概ね45cm、厚みは概ね3cmに形成される。また、背もたれ部40は、一般に椅子の背もたれ部に用いられる材質、例えば、木材、繊維強化プラスチック(FRP)等にて形成することができる。
【0039】
次に、
図3及び
図4を用いて、本発明の実施例1に係る椅子100の使用方法(着座及び起立方法)について説明する。
【0040】
図3は本発明の実施例1に係る椅子の平面図であり、
図4は本発明の実施例1に係る椅子の使用状態を表す斜視図である。
【0041】
[着座方法について]
図3及び
図4に示すように、被介助者等200は、矢印A方向から、座部10に向けて、腰を下ろし、椅子100に着座するようにする。このとき、座部10の前縁13側(椅子100の前方)及び座部10の他方の側縁11側(椅子100の他方の側方)は開放されていることから(椅子100には、肘掛け部30が座部10の一方の側縁12側の上方にのみ設けられており、他方の側縁11側の上方には、肘掛け部30が設けられていないため)、被介助者等200が、自身の臀部を肘掛け部30にぶつけることで(肘掛け部30が障害となって)、バランスを崩したり、転倒したりするおそれはなく、また、被介助者等200は、肘掛け部30を避けながら、慎重に(ゆっくりと)座部10に向けて腰を下ろす必要もない。よって、被介助者等200は、このように椅子100に着座することで(矢印A方向から、座部10に向けて、腰を下ろすことで)、安全かつ容易に椅子100に着座することができる。
【0042】
また、椅子100は、座部10の他方の側縁11が円弧状に形成されるとともに、座部10の一方の側縁12が座部10の前縁13に対して垂直に形成されることで(座部10の前縁13側の他方の角13aが座部10の前縁13側の一方の角13bよりも大きくアール面取りされることで)、座部10が平面視において左右非対称となっていることから、被介助者等200が、椅子100に着座した際、座部10の前縁13側の一方の角13b付近に載置される被介助者等200の足(膝裏付近)が座部10に接地する面積は、座部10の前縁13側の他方の角13a付近に載置される被介助者等200の足(膝裏付近)が座部10に接地する面積よりも、より大きいものとなる。そのため、被介助者等200は、その分、座部10の前縁13側の一方の角13b付近に載置される足(膝裏付近)を、安定して、座部10に載置することができることから、安定して、椅子100に着座することができる。
【0043】
さらに、椅子100の座部10の形状は、平面視において左右非対称となっており、被介助者等200は、この座部10の左右の形状の違いに着目することで、正しい着座方向(矢印A方向)を、確実に認識することができることから、安心安全に、椅子100に着座することができる。
【0044】
[起立方法について]
図3及び
図4に示すように、被介助者等200は、まず、着座した状態における座部10の他方の側縁11側の自身の足を、座部10の他方の側縁11側に広げることで(矢印B方向)、足を左右に広げた状態(下半身が安定した状態)にする。そして、被介助者等200は、この状態のまま、体を持ち上げ、矢印C方向へ向けて、椅子100から起立するようにする。
【0045】
このとき、座部10の前縁13側(椅子100の前方)及び座部10の他方の側縁11側(椅子100の他方の側方)は開放されていることから、被介助者等200は、椅子100から起立する際、足を揃えた不安定な状態で起立する必要はなく(自身の両腕の力に頼って、椅子100から立ち上がる必要はなく)、自身の足を大きく左右に広げ、下半身を安定させた状態で、足に力を込めながら立ち上がることができる(この開放スペースを活用して足を大きく広げることができる)。また、被介助者等200は、このように矢印C方向(開放されている側)へ向けて、椅子100から起立することで、肘掛け部30の圧迫を感じることはなく、安心かつ安定的に、椅子100から起立することができる(広いスペースから安心かつ安定的に起立することができる)。
【0046】
また、被介助者等200が、このように椅子100から起立すれば、椅子100には、必要以上に、後方に押し込まれる力が加わることはないことから(被介助者等200は、足に力を込めた状態で起立することができ、自身の両腕の力に頼る必要がないため)、この力によって、椅子100が後ろに倒れるおそれはない。よって、この際に、被介助者等200が後ろに転倒するおそれはないことから、被介助者等200は、椅子100から安全に起立することができる。
【0047】
さらに、座部10の他方の側縁11は、円弧状に形成されていることから(座部10の前縁13側の他方の角13aは、座部10の前縁13側の一方の角13bよりも大きくアール面取りされていることから)、被介助者等200は、着座した状態における座部10の他方の側縁11側の自身の足を、座部10の他方の側縁11側に広げる際、当該足の膝裏を、座部10の他方の側縁11(大きくアール面取りされている箇所)に当接させることで、当該足を、これに沿って、より滑らかに座部10の他方の側縁11側(矢印B方向)にスライドさせることができる。これにより、被介助者等200は、より負担なく、自身の足を、座部10の他方の側縁11側に大きく広げることができることから、さらに少ない労力で負担なく、椅子100から起立することができる。
【0048】
加えて、被介助者等200が、このように椅子100から起立すれば、介助者等は、被介助者等200を側面から支えることができることから、負担なく、被介助者等200の起立をサポートすることができる。
【0049】
以上のように、本発明の構成を採用すれば、被介助者等200が、安全かつ容易に安定して着座することができるとともに、少ない労力で負担なく安全に起立することができる椅子を提供することができるのである。
【0050】
なお、本実施例では、椅子100(座部10、脚部20(前脚部20a及び後脚部20b)、肘掛け部30及び背もたれ部40)を上記寸法にて形成するものとしているが、被介助者等200の体型や椅子100を使用する場所等の状況に応じて、これらを他の寸法(大きめ又は小さめ)にて形成することもできる。
【0051】
また、本実施例では、座部10を、平面視において砲弾状となるように形成するものとしているが、座部10の前縁13側の他方の角13aが、前縁13側の一方の角13bよりも大きくアール面取りされることで(座部10が平面視左右非対象となる)、被介助者等200が、着座した状態における座部10の他方の側縁11側の自身の足を、座部10の他方の側縁11側に広げる際、当該足の膝裏を、座部10の他方の側縁11(大きくアール面取りされている箇所)に当接させることで、当該足を、これに沿って、より滑らかに座部10の他方の側縁11側(矢印B方向)にスライドさせることができ、かつ、被介助者等200が、椅子100に着座した際、座部10の前縁13側の一方の角13b付近に載置される足(膝裏付近)を、安定して、座部10に載置することで、安定して椅子100に着座することができるのであれば、座部10の平面視における形状を、例えば、船首状等の他の形状にて形成することもできる(座部10の他方の側縁11の一部を円弧状となるように形成する。
図5を参照)。
【0052】
また、本実施例では、座部10の前縁13側の一方の角13bを直角にするものとしているが、座部10の前縁13側の他方の角13aが、前縁13側の一方の角13bよりも大きくアール面取りされており(座部10が、これにより、平面視左右非対象となり)、被介助者等200が、座部10の前縁13側の一方の角13b付近に載置される足(膝裏付近)を、安定して、座部10に載置することができるのであれば(安定して、椅子100に着座することができるのであれば)、前縁13側の一方の角13bにもアール面取りを施すことができる。
【0053】
さらに、本実施例では、座部10の構成を上記のとおりとしているが、例えば、これを次のように変形することもできる。
【0054】
図6は本発明の実施例1に係る椅子の変形例を表す平面図であり(座部のみを表す)、
図7は本発明の実施例1に係る椅子の変形例を表す正面図である(座部のみを表す)。
【0055】
図6及び
図7に示すように、座部10は、上記同様、座部10の一方の側縁12が座部10の前縁13に対して垂直に形成されるとともに、座部10の他方の側縁11の全体が円弧状となるよう形成されるところ、座部10の他方の側縁11側を、x1−x2線を境にして、下方(矢印D方向)に折り畳み可能となるよう構成することもできる。このように座部10を構成することで、椅子100を使用しない場合には、これをコンパクトに収納することができる(椅子100を使用しない場合には、座部10の他方の側縁11側を下方に折り畳むようにする)。
【0056】
なお、この場合には、例えば、座部10の他方の側縁11側(平面視におけるx1−x2線の右側の領域)を、ヒンジ50で、座部10の一方の側縁12側(平面視におけるx1−x2線の左側の領域)に回動自在に枢着し、椅子100を使用する際には(座部10の他方の側縁11側が下方に折り畳まれていない状態)、座部10の他方の側縁11側が下方に折り畳まれることがないよう(回動不能となるよう)、ヒンジ50にロック片を挿入する等、公知の枢着及びロック手段を用いることができる。
【0057】
また、本実施例では、脚部20(前脚部20a及び後脚部20b)の形状を、全体が縦長の棒状となるよう形成するものとしているが、座部10を支持することができるのであれば、例えば、これを、他の形状にて形成することができる。例えば、脚部20(前脚部20a及び後脚部20b)を、全体がU字状となるよう形成することもできる(パイプ等の棒状からなるものをU字状に折り曲げたもの等)。
【0058】
加えて、本実施例では、肘掛け部30の形状を、全体が倒L字状となるよう形成するものとしているが、被介助者等200が、椅子100に着座した際、自身の肘(被介助者等200が、椅子100に着座した状態における、座部10の一方の側縁12側の肘)を、肘掛け部30に載置することができるのであれば、これを、他の形状にて形成できることは勿論である。
【0059】
また、本実施例では、肘掛け部30を、座部10の一方の側縁12側の上方に設けるものとしているが、これを、座部10の他方の側縁11側の上方に設けることもできる。なお、この場合に、座部10の前縁13側の一方の角13bを、前縁13側の他方の角13aよりも大きくアール面取りする等、上記座部10の構成を左右反転に構成する必要があることは勿論である。
【0060】
最後に、本実施例では、背もたれ部40を、座部10の後縁14から上方に延設するものとしているが、椅子100を使用する被介助者等200の状況によっては、これを、椅子100に設けないようにすることもできる。このことを具体的に説明すると、腰が曲がっている被介助者等200(例えば、高齢者に多い)が、椅子100に着座する場合には、曲がっている腰が、背もたれ部40に当たるおそれがあることから、背もたれ部40が存在することで(障害となり)、被介助者等200は、かえって、深く安定して、椅子100に着座することができない。そのため、このように構成することで、椅子100の後方(後縁14側)には、開放スペースが生まれることになることから(背もたれ部40が存在しないため)、腰が曲がっている被介助者等200は、椅子100に、深く安定して着座することができるようになるのである(この構成は、このような状況下で、特に効果を発揮する)。
【0061】
このように、本実施例では、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。