(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-124844(P2017-124844A)
(43)【公開日】2017年7月20日
(54)【発明の名称】缶蓋及び缶
(51)【国際特許分類】
B65D 17/34 20060101AFI20170623BHJP
B21D 51/30 20060101ALI20170623BHJP
【FI】
B65D17/34
B21D51/30 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-4051(P2016-4051)
(22)【出願日】2016年1月13日
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】賢持 英治
【テーマコード(参考)】
3E093
【Fターム(参考)】
3E093AA02
3E093AA13
3E093BB02
3E093CC01
3E093DD02
3E093DD06
3E093EE20
(57)【要約】
【課題】開缶用タブのリベットに対する回転を防止でき、開栓性に優れた缶蓋及び缶を提供する。
【解決手段】缶蓋100は、缶蓋本体2とリベット25により缶蓋本体2に取り付けられた開缶用タブ1とを備え、缶蓋本体2には、開缶用タブ1の下面側で開缶用タブ1に向けて突出する一対の凸部29が設けられ、開缶用タブ1には、缶蓋本体2に向けて突出するタブパネルが設けられており、タブパネル14は、リベット25の中心から凸部29の頂部29aまでの距離を半径r1とする円弧Q上において、対となる凸部29どうしの間に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶蓋本体とリベットにより該缶蓋本体に取り付けられた開缶用タブとを備え、
前記缶蓋本体には、前記開缶用タブの下面側で該開缶用タブに向けて突出する一対の凸部が設けられ、
前記開缶用タブには、前記缶蓋本体に向けて突出するタブパネルが設けられており、
前記タブパネルは、前記リベットの中心から前記凸部の頂部までの距離を半径とする円弧上において、対となる前記凸部どうしの間に設けられていることを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
前記凸部の頂部が、前記タブパネルの裏面よりも上側に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の缶蓋。
【請求項3】
前記円弧上において、対となる前記凸部どうしの間の円弧長をa1とし、前記タブパネルの両側縁間の円弧長をa2とし、前記開缶用タブの両側縁間の円弧長をa3としたときに、前記円弧長a1と前記円弧長a2との差分が、前記円弧長a3と前記円弧長a1との差分よりも小さく設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の缶蓋。
【請求項4】
缶胴本体に請求項1から3のいずれか一項に記載の缶蓋が巻締められていることを特徴とする缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に飲料等の内容物が充填される缶胴本体に巻締められる缶蓋及び缶に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用の缶蓋として、特許文献1に開示されるように、開缶用タブ(タブ)を缶蓋本体に取り付けたままの状態で飲み口が開口可能なステイオンタブ型のものが知られている。この缶蓋は、缶蓋本体のパネルに開缶用タブがリベットによって取り付けられており、開缶用タブの後端部側に形成された引上部(タブテール部)を引き上げることにより、リベット近傍が折れ曲がって支点となり、押下部(タブの先端)が作用点となって、パネル表面のスコアに囲まれた開口片を押圧、没入させてスコアを破断させ、飲み口を開口させることができる。この際、パネルはスコア形状に沿って破断されるが、開口片はパネルから離れることなく飲料用内部に押し入れられる。
【0003】
そして、この種の缶蓋には、缶蓋本体のパネルに、上方に向けて凸とされたディンプルと称される凸部が設けられている。凸部は、一般に、パネルに2つ設けられており、これらの凸部は、開口片とリベットを挟んで反対側の開缶用タブの後端部側に重なるように配置されている。これにより、開缶用タブに、リベットを中心に回転しようとする力が作用した場合でも、開缶用タブの外縁部が凸部に引っ掛かることで、開缶用タブの回転移動が防止されるので、押下部を開口片に重ねて配置した状態に維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005‐335808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、開缶用タブの後端部には、厚さ方向に貫通したフィンガーホールが形成されていることから、その後端部と凸部とが重ねて配置される範囲は限られている。このため、開缶用タブの外縁部が凸部を乗り越えて回転した場合には、その後は開缶用タブと干渉する箇所がなく回転を制限できなくなる。その結果、押下部と開口片との重なりを十分に確保できずに、開缶用タブの引上部を引き上げても開口片を開口できなくなり、開栓性を損なうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、開缶用タブのリベットに対する回転を防止でき、開栓性に優れた缶蓋及び缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の缶蓋は、缶蓋本体とリベットにより該缶蓋本体に取り付けられた開缶用タブとを備え、前記缶蓋本体には、前記開缶用タブの下面側で該開缶用タブに向けて突出する一対の凸部が設けられ、前記開缶用タブには、前記缶蓋本体に向けて突出するタブパネルが設けられており、前記タブパネルは、前記リベットの中心から前記凸部の頂部までの距離を半径とする円弧上において、対となる前記凸部どうしの間に設けられていることを特徴とする。
【0008】
この缶蓋の開缶用タブには、フィンガーホールを設けることなく、タブパネルが設けられている。そして、開缶用タブの下面側に突出するタブパネルが、缶蓋本体に設けられる対となる凸部どうしの間に設けられている。これにより、開缶用タブにリベットを中心とする時計回り又は反時計回りの力を加えて回転させようとしても、対となる凸部のうちの一方の凸部がタブパネルに接触して、開缶用タブの回転が防止される。また、開缶用タブにリベット回りの回転が加えられた際に、その一方の凸部がタブパネルの裏面と摺動することで、それ以上の回転を阻止できる。このため、開缶用タブの押下部を開口片を開栓可能な範囲に留めておくことができる。したがって、開缶用タブの押下部で開口片を確実に押圧でき、優れた開栓性を維持できる。
【0009】
本発明の缶蓋において、前記凸部の頂部が、前記タブパネルの裏面よりも上側に突出して設けられているとよい。
この場合、開缶用タブがリベット回りに回転した際に、凸部の頂部をタブパネルの裏面に接触させることができ、開缶用タブの回転を回転を阻止できる。
【0010】
本発明の缶蓋は、前記円弧上において、対となる前記凸部どうしの間の円弧長a1とし、前記タブパネルの両側縁間の円弧長をa2とし、前記開缶用タブの両側縁間の円弧長をa3としたときに、前記円弧長a1と前記円弧長a2との差分が、前記円弧長a3と前記円弧長a1との差分よりも小さく設けられているとよい。
対となる凸部とタブパネルとの関係をこのように設定することで、開缶用タブをリベット回りに回転させた際に、対となる凸部のうちの一方の凸部が開缶用タブの下面側から外れて露出する前に、他方の凸部をタブパネルの裏面と確実に接触させることができる。
【0011】
本発明の缶は、缶胴本体に前記缶蓋が巻締められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、開缶用タブのリベットに対する回転を防止できるので、開口片を開缶用タブの押下部によって確実に押圧でき、良好な開缶性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る缶蓋の平面図である。
【
図3】
図1に示すA‐A線に沿う矢視断面における缶蓋の要部断面図である。
【
図4】
図1に示すB‐B線に沿う矢視断面における缶蓋の断面図である。
【
図5】
図1に示すC‐C線に沿う矢視断面における缶蓋の断面図である。
【
図6】
図1に示す缶蓋において、開缶用タブをリベット回りに回転させた状態を説明する平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る容器の断面図である。
【
図8】
図1に示す缶蓋の缶蓋本体に取り付けられる開缶用タブの平面図である。
【
図9】
図8に示すD‐D線に沿う矢視断面における開缶用タブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る開缶用タブ及び缶蓋並びに缶の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の缶蓋100は、例えば飲料用等の缶に用いられる、いわゆるステイオンタブ方式の缶蓋であり、
図1〜
図6に示すように、缶蓋本体2と、この缶蓋本体2に取り付けられた開缶用タブ1とにより構成される。また、このように構成される缶蓋100は、
図7に示すように、内容物を充填した缶胴本体3の開口端部に巻締められ、缶胴本体3の内部を密閉した缶101が製造される。なお、図示は省略するが、缶胴本体3は有底筒状に形成されている。これらの缶胴本体3、缶蓋本体2及び開缶用タブ1は、それぞれアルミニウム合金により形成されている。
【0015】
缶蓋本体2は、
図1〜
図6に示すように、略円板状のパネル部21と、このパネル部21の外周部に沿って下方に凸となるように設けられた環状のカウンターシンク部22とを備えている。そして、パネル部21の一部には、凹状に形成されたパネルデボス23が設けられており、このパネルデボス23の底面に、開口片27を画成するスコア24と、開口片27とはリベット25を介して反対側に配置された指掛け凹部26と、開缶用タブ1の下面側で開缶用タブ1に向けて突出する一対の凸部29とが設けられている。凸部29は、一般的にディンプルと称されるものであり、
図1に示すように、リベット25と指掛け凹部26との間に開缶用タブ1の幅方向に間隔をおいて配置されている。
【0016】
スコア24は、開缶用タブ1による押圧によって破断されて開口片27を缶内部に押し込まれることで、飲み口を開口する構成とされる。なお、開口片27上には、スコア24に沿うようにして上方に突出したインナービード28が形成されており、開口片27が補強されている。
リベット25は、パネル部21の上面をリング状に圧印するコイニング加工を施して、パネル部21の中心部を上方に張り出させることにより形成されている。
【0017】
また、指掛け凹部26は、開缶用タブ1の後端部に沿うようにして、その下方近傍に、パネルデボス23の底面の一部をさらに凹状にして形成されている。これにより、開封者は、指掛け凹部26から指を開缶用タブ1の後端部(引上部17)の下側に入れることで、後端部に指をかけやすく、後端部を容易に引き上げることができる。
そして、これらリベット25と指掛け凹部26との間に、凸部29が形成されている。凸部29は、パネルデボス23の上面に突出し、開缶用タブ1(タブ本体11)の幅方向に間隔をおいて2つ形成されている。この一対の凸部29に、開缶用タブ1の周縁部19やタブパネル14が接触することで、開缶用タブ1がリベット25回りへ回転移動することが防止されている。これら一対の凸部29と開缶用タブ1との関係は、後に詳述する。
【0018】
開缶用タブ1は、
図3及び
図8〜
図10に示すように、外形形状を形成するタブ本体11の周縁部19が下面側に折り曲げられてカール成形が施されて全体の剛性が高められており、下面側に突出する凸状に設けられている。そして、このタブ本体11の中央付近には、缶蓋本体2のリベット25と固着されるリベット孔15を有する固着部12が設けられている。また、固着部12は、U字状のスロット13により形成されている。
【0019】
また、開缶用タブ1は、タブ本体11の先端部に設けられて缶蓋本体2の開口片27を押し下げて開口させるための押下部16と、この押下部16に対してタブ本体11の固着部12を挟んだ反対側に配置される後端部に設けられて押下部16を押し下げるために缶蓋本体2から引き上げられる引上部17と、缶蓋本体2に向けて突出するタブパネル14とを備えている。また、タブパネル14は、タブ本体11の引上部17と固着部12との間に設けられて下面側に向けて凸となるように凹状に形成されている。
【0020】
また、押下部16及び引上部17を含むタブ本体11の周縁部19は、下面側に折り返されることにより形成されている。このうち、引上部17は、
図9に符号17a〜17cで示すように、タブ本体11の周縁部が下面側に折り返された後にさらに押し潰されており、裏側に凹部17cが形成されている。
【0021】
そして、引上部17を除く開缶用タブ1の厚みt3は、1.3mm以上1.6mm以下に形成され、引上部17の厚みt1は、0.7mm以上1.2mm以下に形成される。また、タブパネル14の凹部深さMは、この開缶用タブ1を形成している素材の板厚(0.26mm以上0.35mm以下)よりも大きく、0.50mm以上1.0mm以下に形成されており、タブパネル14の厚みt2は、0.80mm以上1.15mm以下に設けられている。
【0022】
なお、図示は省略するが、このように構成される開缶用タブ1は、金属板にリベット孔15等の開缶用タブ1に形成される孔形状を形成した後、連結片18(
図10参照)を除いたブランクを打ち抜き、そのブランクを連結片18で連結された状態で、
図8から
図10に示すように、凹凸形状等の成形を施し、且つ、タブ本体11の周縁部19をカール成形する。そして、その後に後端部の周縁部19を押しつぶして、引上部17を形成する。最後に、連結片18を切断することにより、個片化された開缶用タブ1が形成される。
【0023】
そして、このように設けられる開缶用タブ1は、固着部12に形成されたリベット孔15に缶蓋本体2のリベット25を挿入し、固着部12の下面をパネルデボス23の底面に当接させた状態でリベット25をかしめることにより、缶蓋本体2に取り付けられている。
缶蓋本体2のパネルデボス23の底面には、上述したように、一対の凸部29が設けられており、タブパネル14は、
図1及び
図6に示すように、リベット25の中心から凸部29の頂部29aまでの距離を半径r1とする円弧Q上に設けられている。また、一対の凸部29は、タブパネル14とタブ本体11の幅方向の両側に設けられた周縁部19との間に一つずつ設けられており、各凸部29の頂部29aは、
図3に示すように、タブパネル14の裏面14cよりも上側に突出して設けられるとともに、周縁部19の下面19cよりも上側に突出して設けられている。
【0024】
つまり、缶蓋本体2に設けられる一対の凸部29のそれぞれが、
図1及び
図2に示すように、開缶用タブ1の下面側に突出するタブパネル14とタブ本体11の周縁部19との間に設けられている。また、これら凸部29とタブパネル14とは、
図2及び
図3に示すように、円弧Q上において、対となる凸部29どうしの間の円弧長をa1とし、タブパネル14の両側縁間の円弧長をa2とし、開缶用タブ1(タブ本体11)の両側縁間の円弧長をa3としたときに、円弧長a1と円弧長a2との差分(a1−a2)が、円弧長a3と円弧長a1との差分(a3−a1)よりも小さく設けられている。
【0025】
これにより、開缶用タブ1にリベット25を中心とする時計回り又は反時計回りの力を加えて回転させようとしても、対となる凸部29のうちの一方の凸部29がタブパネル14に接触することで、開缶用タブ1の回転が防止されるようになっている。なお、開缶用タブ1は、タブ本体11の周縁部19に接触することによっても回転が防止されるようになっている。
また、この缶蓋100の開缶用タブ1においては、フィンガーホールが形成されていないので、開缶用タブ1にリベット25回りの回転が加えられた際に、
図6に示すように、一方の凸部29がタブパネル14の裏面14cと摺動することで、それ以上の回転を阻止できる。なお、フィンガーホールの代わりにタブ本体11の一部を下面側に向けて凸となるように形成したタブパネル14を設けることで剛性を確保できるので、フィンガーホールを無くしたことにより全体の折れ曲がり強度が低下することを回避できる。
【0026】
さらに、上述したように、凸部29間の円弧長a1とタブパネル14の両側縁間の円弧長a2との差分が、開缶用タブ1の両側縁間の円弧長a3と凸部29間の円弧長a1との差分よりも小さく設けられているので、開缶用タブ1をリベット25回りに回転させた際に、
図6に示すように、対となる凸部29のうちの一方の凸部29(
図6では、紙面の上側に配置されている凸部29)が開缶用タブ1の下面側から外れて露出する前に、他方の凸部29(
図6では、紙面の下側に配置されている凸部29)をタブパネル14の裏面14cに確実に接触させることができる。
このため、開缶用タブ1の押下部16を開口片27を開栓可能な範囲に留めておくことができる。したがって、開缶用タブ1の押下部16で開口片27を確実に押圧でき、優れた開栓性を維持できる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 開缶用タブ
2 缶蓋本体
3 缶胴本体
11 タブ本体
12 固着部
13 スロット
14 タブパネル
14a タブパネルの上面
14c タブパネルの裏面
15 リベット孔
16 押下部
17 引上部
18 連結片
19 周縁部
21 パネル部
22 カウンターシンク部
23 パネルデボス
24 スコア
25 リベット
26 指掛け凹部
27 開口片
28 インナービード
29 凸部
29a 凸部の頂部
100 缶蓋
101 缶