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特開2017-125065微小小胞および関連するマイクロRNAの治療用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-125065(P2017-125065A)
(43)【公開日】2017年7月20日
(54)【発明の名称】微小小胞および関連するマイクロRNAの治療用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20170623BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20170623BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20170623BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170623BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20170623BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20170623BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20170623BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20170623BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170623BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20170623BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170623BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20170623BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20170623BHJP
   A61L 27/60 20060101ALI20170623BHJP
   A61K 35/14 20150101ALN20170623BHJP
   A61K 35/16 20150101ALN20170623BHJP
   A61K 35/22 20150101ALN20170623BHJP
   A61K 35/26 20150101ALN20170623BHJP
   A61K 35/28 20150101ALN20170623BHJP
   A61K 35/39 20150101ALN20170623BHJP
   A61K 35/407 20150101ALN20170623BHJP
   A61K 35/51 20150101ALN20170623BHJP
   A61K 35/54 20150101ALN20170623BHJP
【FI】
   A61K35/12
   C12N15/00 GZNA
   C12Q1/02
   C12Q1/68 A
   A61P3/10
   A61P9/10
   A61P13/12
   A61P17/02
   A61P25/00
   A61P25/02
   A61P43/00 107
   A61K31/7105
   A61L27/38
   A61L27/38 100
   A61L27/60
   A61K35/14 Z
   A61K35/16 Z
   A61K35/22
   A61K35/26
   A61K35/28
   A61K35/39
   A61K35/407
   A61K35/51
   A61K35/54
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】97
(21)【出願番号】特願2017-83566(P2017-83566)
(22)【出願日】2017年4月20日
(62)【分割の表示】特願2016-10469(P2016-10469)の分割
【原出願日】2011年8月12日
(31)【優先権主張番号】61/380,766
(32)【優先日】2010年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/373,715
(32)【優先日】2010年8月13日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】506277591
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ コート オブ ザ ユニバーシティ オブ グラスゴー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ポール シールズ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン デイビーズ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C081
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR35
4B063QR40
4B063QR77
4B063QS40
4C081AA03
4C081AA12
4C081AB19
4C081AB38
4C081BA12
4C081CA171
4C081CD34
4C081DA02
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA32
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA20
4C086ZA36
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB22
4C086ZC35
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087AA04
4C087BB34
4C087BB35
4C087BB41
4C087BB43
4C087BB44
4C087BB51
4C087BB52
4C087BB61
4C087BB63
4C087BB64
4C087CA04
4C087CA10
4C087CA12
4C087DA03
4C087DA14
4C087DA15
4C087MA32
4C087MA52
4C087MA56
4C087MA58
4C087MA59
4C087MA60
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA20
4C087ZA36
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZB22
4C087ZC35
(57)【要約】
【課題】微小小胞および関連するマイクロRNAの治療用途
【解決手段】本発明は、種々の疾患、障害および状態を処置するための、微小水泡に基づく改善された方法および組成物を提供する。具体的には、本発明は、微小水泡が、細胞または組織の再生、リモデリング、再構築、再プログラミングまたは分化転換に関与する細胞間の調節因子として機能し得る特異的なマイクロRNAを含有するという認識を包含する。したがって、とりわけ、本発明は、さらに予測可能かつ有効な治療結果をもたらす、微小水泡および/または関連するマイクロRNAに基づく方法および組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小小胞および関連するマイクロRNAの治療用途、または、パスファインダー細胞由来の精製された微小小胞を含む組成物など。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2010年8月13日に出願された米国仮特許出願第61/373,715号、および2010年9月8日に出願された米国仮特許出願第61/380,766号への優先権を主張し、この米国仮特許出願の各々の全体は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本願は、同日に出願された「Cellular and Molecular Therapies」と題された米国出願に関し、その全体は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0003】
背景
微小小胞は、歴史的に、明白な機能がない細胞の残屑であるとみなされていた。しかし、つい最近、増加している実験データにより、微小小胞が多数の生物活性を有することが示唆されている。例えば、血小板由来の微小小胞は、微小小胞上の表面タンパク質(例えば、CD154、RANTES、および/またはPF−4;非特許文献1、または非特許文献2を参照されたい)を介して、選択された細胞を刺激することが示された。他の例では、血小板微小小胞中の生理活性脂質(例えば、スフィンゴシン−1−リン酸、HETE、またはアラキドン酸)の、特定の標的細胞に対する特異的な作用が報告された(例えば、非特許文献3;または非特許文献4を参照されたい)。さらに、血小板微小小胞は、特定の微小小胞表面構成成分を動員された細胞に移行させることによって、動員されたCD34+内皮細胞の接着を増大させた(例えば、非特許文献5を参照されたい)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Thromb. Haemost.(1999年)、82巻:794頁
【非特許文献2】J. Biol. Chem.(1999年)、274巻:7545頁
【非特許文献3】J. Biol. Chem.(2001年)、276巻:19672頁
【非特許文献4】Cardiovasc. Res.(2001年)、49巻(5号):88頁
【非特許文献5】Blood(2001年)、89巻:3143頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微小小胞の種々の臨床使用が提唱されてきた。そのような提唱された使用により、少なくともいくらかの有望な見込みがもたらされるが、大部分が解明されていない問題がいくつか残っている。例えば、微小小胞の生物活性は、多くの場合、予測することが難しい。さらに、現在意図されている治療的な使用は、一般には、微小小胞を含有する調製物を受けている人の感染症を予防するために滅菌および抗ウイルス処理を必要とし、これは時間がかかり、非効率的である。したがって、微小小胞に基づく、改善された組成物および使用方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明は、種々の疾患、障害および状態を処置するための、微小小胞に基づく改善された方法および組成物を提供する。具体的には、本発明は、微小小胞が、細胞または組織の再生、リモデリング、再構築、再プログラミングまたは分化転換に関与する細胞間の調節因子として機能し得る特異的なマイクロRNAを含有するという認識を包含する。したがって、本発明は、さらに予測可能かつ有効な治療結果をもたらす、微小小胞および/または関連するマイクロRNAに基づく方法および組成物を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、疾患、障害または状態を処置する方法であって、処置を必要とする患者に治療有効量の微小小胞を投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明による発明の方法を、糖尿病、心筋梗塞、腎疾患、創傷治癒、瘻孔再生(Fistulas regeneration)、神経再生(例えば、CNS再生、または末梢神経系再生)、乳房切除術後の豊胸、美容外科手技関連の状態、およびその組み合わせからなる群から選択される疾患、障害または状態を処置するために用いることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、in vivoで組織の修復、リモデリング、分化または分化転換を誘導する方法であって、処置を必要とする患者に治療有効量の微小小胞を投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、疾患組織(すなわち、標的組織)と同じ組織に由来する。いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、疾患組織(すなわち、標的組織)とは異なる組織に由来する。いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、膵臓細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、脾臓細胞、リンパ節、子宮筋層細胞、末梢血液細胞、臍帯血(chord blood)細胞、骨髄細胞、血清、またはその組み合わせに由来する。いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、膵臓由来パスファインダー細胞(pathfinder cell)に由来する。いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、自己細胞に由来する。いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、非自己細胞に由来する。
【0009】
いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、不織基材上で成長させた細胞に由来する。いくつかの実施形態では、不織基材は、脂肪族ポリエステル繊維を含む。いくつかの実施形態では、本発明に適した脂肪族ポリエステル繊維は、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、イプシロン−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、炭酸トリメチレン(1,3−ジオキサン−2−オン)のホモポリマーまたはコポリマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、酸素圧が5%以下である培養条件下で成長させた細胞に由来する。いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、室内空気の酸素条件下で成長させた細胞に由来する。いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、およそ80〜99%の集密度まで成長させた細胞に由来する。
【0011】
いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、血清欠乏条件下で成長させた細胞に由来する。いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、血清欠乏条件下で約24時間成長させた細胞に由来する。いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、血清が豊富な条件下で成長させた細胞に由来する。
【0012】
いくつかの実施形態では、分画超遠心分離によって適切な微小小胞を単離または精製する。いくつかの実施形態では、沈殿によって適切な微小小胞を単離または精製する。
【0013】
いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、表1および表7〜13に列挙されているマイクロRNAから選択される1種または複数種のマイクロRNAを含有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、miRNA−122、miRNA−127、miRNA−133b、miRNA−323、miRNA−433、miRNA−451、miRNA−466h、miRNA−467c、miRNA−467e、miRNA−468、miRNA−491、miRNA−495、miRNA−546、miRNA−666、miRNA−680、miRNA−346、miRNA−136、miRNA−202、miRNA−369、miRNA−370、miRNA−375、miRNA−376b、miRNA−381、miRNA−434、miRNA−452、miRNA−465a、miRNA−465b、miRNA−470、miRNA−487b、miRNA−543、miRNA−547、miRNA−590、miRNA−741、miRNA−881、miRNA−206、miRNA−224、miRNA−327、miRNA−347、およびその組み合わせからなる群から選択される1種または複数種のマイクロRNAを含有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、miRNA−122、miRNA−127、miRNA−133b、miRNA−323、miRNA−433、miRNA−451、miRNA−466h、miRNA−467c、miRNA−467e、miRNA−468、miRNA−491、miRNA−495、miRNA−546、miRNA−666、miRNA−680、miRNA−346、およびその組み合わせからなる群から選択される1種または複数種のマイクロRNAを含有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、適切な微小小胞は、miRNA−129−5p、miRNA−190、miRNA−203、miRNA−32、miRNA−34c、miRNA−376c、miRNA−384−3p、miRNA−499b、miRNA−455、miRNA−582−5p、miRNA−615−3p、miRNA−615−5p、miRNA−7b、miRNA−17−3p、miRNA−381、およびmiRNA−505を含有しない。
【0017】
いくつかの実施形態では、微小小胞の治療有効量は体重1kg当たり1fg〜1mgにわたる(例えば、体重1kg当たり10fg〜1mg、体重1kg当たり100fg〜1mg、体重1kg当たり1pg〜1mg、体重1kg当たり10pg〜1mg、体重1kg当たり100pg〜1mg)。いくつかの実施形態では、微小小胞を、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、皮下に、皮膚に、皮内に、頭蓋内に、髄腔内に(intratheccaly)、胸膜内に、眼窩内に、鼻腔内に、経口的に、消化管内に(intra alimentrally)、結腸直腸に、かつ/または脳脊髄内に投与する。
【0018】
いくつかの実施形態では、微小小胞を毎日投与する。いくつかの実施形態では、微小小胞を週に1回投与する。いくつかの実施形態では、微小小胞を2週間に1回投与する。いくつかの実施形態では、微小小胞を月に1回投与する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、微小小胞から得られた、単離された、または精製された1種または複数種のマイクロRNAを投与することによって疾患、障害または状態を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、微小小胞は、血清欠乏条件下で成長させた細胞に由来する。いくつかの実施形態では、微小小胞は、血清欠乏条件下で約24時間成長させた細胞に由来する。いくつかの実施形態では、微小小胞は、血清が豊富な条件下で成長させた細胞に由来する。いくつかの実施形態では、微小小胞から得られた、単離された、または精製されたマイクロRNAは、ストレス条件下(例えば、酸素圧、細胞培養集密、培地中の血清量など)で成長させた細胞および/またはその細胞に由来する微小小胞において識別的に発現される。いくつかの実施形態では、本発明は、疾患、障害または状態を処置する方法であって、処置を必要とする患者に、配列番号1〜72のうちのいずれか(例えば、配列番号1〜29)と少なくとも70%(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%)同一である配列を有する、治療有効量の1種または複数種のマイクロRNAを投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、1種または複数種のマイクロRNAは、配列番号1〜72のいずれか(例えば、配列番号1〜29)と同一の配列を有する。いくつかの実施形態では、本発明は、疾患、障害または状態を処置する方法であって、処置を必要とする患者に、表7〜13の配列のいずれかと少なくとも70%(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%)同一である配列を有する、治療有効量の1種または複数種のマイクロRNAを投与する工程を含む方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、in vivoで組織の修復、リモデリング、分化または分化転換を誘導する方法であって、処置を必要とする患者に、配列番号1〜72のうちのいずれか1つ(例えば、配列番号1〜29)と、少なくとも70%(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%)同一である配列を有する、治療有効量の1種または複数種のマイクロRNAを投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、1種または複数種のマイクロRNAは、配列番号1〜72のいずれか(例えば、配列番号1〜29)と同一の配列を有する。いくつかの実施形態では、本発明は、in vivoで組織の修復、リモデリング、分化または分化転換を誘導する方法であって、処置を必要とする患者に、表7〜13の配列のいずれかと少なくとも70%(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%)同一である配列を有する、治療有効量の1種または複数種のマイクロRNAを投与する工程を含む方法を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明による発明の方法を、糖尿病、心筋梗塞、腎疾患、創傷治癒、瘻孔再生、神経再生(例えば、CNS再生、または末梢神経系再生)、乳房切除術後の豊胸、美容外科手技関連の状態、およびその組み合わせからなる群から選択される疾患、障害または状態を処置するために用いることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、1種または複数種のmiRNAの治療有効量は、体重1kg当たり1fg〜1mgにわたる(例えば、体重1kg当たり10fg〜1mg、体重1kg当たり100fg〜1mg、体重1kg当たり1pg〜1mg、体重1kg当たり10pg〜1mg、体重1kg当たり100pg〜1mg)。いくつかの実施形態では、1種または複数種のmiRNAを、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、皮下に、皮膚に、皮内に、頭蓋内に、髄腔内に、胸膜内に、眼窩内に、鼻腔内に、経口的に、消化管内に、結腸直腸に、かつ/または脳脊髄内に投与する。いくつかの実施形態では、1種または複数種のmiRNAを、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、皮下に、皮膚に、皮内に、頭蓋内に、髄腔内に、胸膜内に、眼窩内に、鼻腔内に、経口的に、消化管内に、結腸直腸に、かつ/または脳脊髄内に投与する。いくつかの実施形態では、1種または複数種のmiRNAを、毎日、週に1回、2週間に1回、または月に1回投与する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、種々の疾患、障害または状態を処置するための治療有効量の微小小胞を含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、糖尿病、心筋梗塞、腎疾患、創傷治癒、瘻孔再生、神経再生(例えば、CNS再生、または末梢神経系再生)、乳房切除術後の豊胸、美容外科手技関連の状態、およびその組み合わせを処置するための治療有効量の微小小胞を含む薬学的組成物を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明は、配列番号1〜72のうちのいずれか1つ(例えば、配列番号1〜29)と、少なくとも70%(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%)同一である配列を有する1種または複数種のマイクロRNAと、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、配列番号1〜72のうちのいずれか1つ(例えば、配列番号1〜29)と同一の配列を有する1種または複数種のマイクロRNAと、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、表7〜13の配列のいずれかと少なくとも70%(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%)同一である配列を有する1種または複数種のマイクロRNAと、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、表7〜13の配列のいずれかと同一の配列を有する1種または複数種のマイクロRNAと、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、1種または複数種のmiRNAは、糖尿病、心筋梗塞、腎疾患、創傷治癒、瘻孔再生、神経再生(例えば、CNS再生、または末梢神経系再生)、乳房切除術後の豊胸、美容外科手技関連の状態、またはその組み合わせを処置するための治療有効量で存在する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞の成長および/または再生を誘導するmiRNAを同定するための方法であって、微小小胞枯渇培地で成長させた細胞を供給する工程と、培地にmiRNAを添加する工程と、miRNAを添加したことにより、対照と比較して細胞増殖速度が増大したかどうかを決定し、それにより、miRNAにより細胞の成長および/または再生が誘導されたかどうかを同定する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は膵臓由来パスファインダー細胞である。いくつかの実施形態では、細胞増殖速度を倍加時間によって決定する。いくつかの実施形態では、微小小胞からmiRNAを単離する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞の成長および/または再生を誘導するmiRNAを同定するための方法であって、集密になるまで成長させた細胞に創傷領域を作製する工程と、細胞をmiRNAで処理する工程と、処理した細胞の、創傷領域にわたる再成長の速度を対照と比較して決定し、それにより、miRNAにより細胞の成長および/または再生が誘導されたかどうかを同定する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は線維芽細胞または心筋細胞である。いくつかの実施形態では、再成長の速度を定量的に決定する。
【0026】
いくつかの実施形態では、対照は、処理はしていないが、他の点では同一の条件下で成長させた細胞である。いくつかの実施形態では、微小小胞からmiRNAを単離する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の方法を用いて同定された、細胞の成長および/または再生を誘導するmiRNAを提供する。
本発明の好ましい実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
疾患、障害または状態を処置する方法であって、処置を必要とする患者に治療有効量の微小水泡を投与する工程を含む方法。
(項目2)
前記疾患、障害または状態が糖尿病である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記疾患、障害または状態が心筋梗塞である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記疾患、障害または状態が腎疾患である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記疾患、障害または状態が創傷治癒である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記疾患、障害または状態が瘻孔再生である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記疾患、障害または状態が神経再生である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記神経再生がCNS再生を含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記神経再生が末梢神経系再生を含む、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記疾患、障害または状態が乳房切除術後の豊胸である、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記疾患、障害または状態が美容外科手技に関連する、項目1に記載の方法。
(項目12)
in vivoで組織の修復、リモデリングまたは分化を誘導する方法であって、処置を必要とする患者に治療有効量の微小水泡を投与する工程を含む方法。
(項目13)
前記微小水泡が疾患組織と同じ組織に由来する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記微小水泡が前記疾患組織とは異なる組織に由来する、項目1から12までのいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記微小水泡が、膵臓細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、脾臓細胞、リンパ節、子宮筋層細胞、末梢血液細胞、臍帯血細胞、骨髄細胞、血清、間葉系幹細胞、またはその組み合わせに由来する、項目1から12までのいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記微小水泡が膵臓由来パスファインダー細胞に由来する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記微小水泡が自己細胞に由来する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記微小水泡が非自己細胞に由来する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記微小水泡が、不織基材上で成長させた細胞に由来する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記不織基材が脂肪族ポリエステル繊維を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記脂肪族ポリエステル繊維が、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、イプシロン−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1、4−ジオキサン−2−オン)、炭酸トリメチレン(1、3−ジオキサン−2−オン)、およびそれらの組み合わせのホモポリマーまたはコポリマーからなる群から選択される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記微小水泡が、酸素圧が5%以下である培養条件下で成長させた細胞に由来する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記微小水泡が、室内空気の酸素条件下で成長させた細胞に由来する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記微小水泡が、およそ80〜99%の集密度まで成長させた細胞に由来する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記微小水泡が、血清欠乏条件下で成長させた細胞に由来する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記細胞を、血清欠乏条件下で約24時間成長させる、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記微小水泡が、血清が豊富な条件下で成長させた細胞に由来する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記微小水泡が、無血清培地で成長させた細胞に由来する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記微小水泡を分画超遠心分離によって単離または精製する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記微小水泡を沈殿によって単離または精製する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
相当な割合の微小水泡が約100nm超のサイズを有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
相当な割合の微小水泡が約1μm超のサイズを有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
相当な割合の微小水泡が、およそ100nm〜1μmにわたるサイズを有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記微小水泡が、miRNA−122、miRNA−127、miRNA−133b、miRNA−323、miRNA−433、miRNA−451、miRNA−466h、miRNA−467c、miRNA−467e、miRNA−468、miRNA−491、miRNA−495、miRNA−546、miRNA−666、miRNA−680、miRNA−346、miRNA−136、miRNA−202、miRNA−369、miRNA−370、miRNA−375、miRNA−376b、miRNA−381、miRNA−434、miRNA−452、miRNA−465a、miRNA−465b、miRNA−470、miRNA−487b、miRNA−543、miRNA−547、miRNA−590、miRNA−741、miRNA−881、miRNA−206、miRNA−224、miRNA−327、miRNA−347、およびその組み合わせからなる群から選択される1種または複数種のマイクロRNAを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記微小水泡が、miRNA−122、miRNA−127、miRNA−133b、miRNA−323、miRNA−433、miRNA−451、miRNA−466h、miRNA−467c、miRNA−467e、miRNA−468、miRNA−491、miRNA−495、miRNA−546、miRNA−666、miRNA−680、miRNA−346、およびその組み合わせからなる群から選択される1種または複数種のマイクロRNAを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記微小水泡が、miRNA−129−5p、miRNA−190、miRNA−203、miRNA−32、miRNA−34c、miRNA−376c、miRNA−384−3p、miRNA−499b、miRNA−455、miRNA−582−5p、miRNA−615−3p、miRNA−615−5p、miRNA−7b、miRNA−17−3p、miRNA−381、およびmiRNA−505を含有しない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記治療有効量の微小水泡が体重1kg当たり1fg〜1mgにわたる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記微小水泡を、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、皮下に、皮膚に、皮内に、頭蓋内に、髄腔内に、胸膜内に、眼窩内に、鼻腔内に、経口的に、消化管内に、結腸直腸に、かつ/または脳脊髄内に投与する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記微小水泡を毎日投与する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記微小水泡を週に1回投与する、項目1から38までのいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記微小水泡を2週間に1回投与する、項目1から38までのいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記微小水泡を月に1回投与する、項目1から29までのいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
微小水泡から得られた、単離された、または精製された1種または複数種のマイクロRNAを投与することによって疾患、障害または状態を処置する方法。
(項目44)
前記微小水泡が血清欠乏条件下で成長させた細胞に由来する、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記細胞を、血清欠乏条件下で約24時間成長させる、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記微小水泡が、血清が豊富な条件下で成長させた細胞に由来する、項目43に記載の方法。
(項目47)
前記微小水泡が、無血清培地で成長させた細胞に由来する、項目43に記載の方法。
(項目48)
微小水泡から得られた、単離された、または精製されたマイクロRNAが、微小水泡において識別的に発現されるマイクロRNAを含む、項目43に記載の方法。
(項目49)
微小水泡から得られた、単離された、または精製されたマイクロRNAが、ストレス条件下で成長させた細胞に由来する微小水泡において識別的に発現されるマイクロRNAを含む、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記ストレス条件が、酸素圧、細胞培養集密度、細胞培養培地中の血清枯渇、およびそれらの組み合わせから選択される、項目49に記載の方法。
(項目51)
疾患を処置する方法であって、処置を必要とする患者に、配列番号1〜587のいずれかと少なくとも80%同一である配列を有する、治療有効量の1種または複数種のマイクロRNAを投与する工程を含む方法。
(項目52)
前記疾患が糖尿病である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記疾患が心筋梗塞である、項目51に記載の方法。
(項目54)
前記疾患が腎疾患である、項目51に記載の方法。
(項目55)
前記疾患、障害または状態が創傷治癒である、項目51に記載の方法。
(項目56)
前記疾患、障害または状態が瘻孔再生である、項目51に記載の方法。
(項目57)
前記疾患、障害または状態が神経再生である、項目51に記載の方法。
(項目58)
前記神経再生がCNS再生を含む、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記神経再生が末梢神経系再生を含む、項目57に記載の方法。
(項目60)
前記疾患、障害または状態が乳房切除術後の豊胸である、項目51に記載の方法。
(項目61)
前記疾患、障害または状態が美容外科手技に関連する、項目51に記載の方法。
(項目62)
in vivoで組織の修復、リモデリングまたは分化を誘導する方法であって、処置を必要とする患者に、配列番号1〜587のうちのいずれか1つと少なくとも80%同一である配列を有する、治療有効量の1種または複数種のマイクロRNAを投与する工程を含む方法。
(項目63)
前記1種または複数種のマイクロRNAが配列番号1〜29のうちのいずれか1つと少なくとも80%同一である配列を有する、項目51から62までのいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記1種または複数種のマイクロRNAが配列番号1〜587から選択される、項目51から62までのいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記1種または複数種のmiRNAの前記治療有効量が体重1kg当たり1fg〜1mgにわたる、項目51から64までのいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記1種または複数種のmiRNAを、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、皮下に、皮膚に、皮内に、頭蓋内に、髄腔内に、胸膜内に、眼窩内に、鼻腔内に、経口的に、消化管内に、結腸直腸に、かつ/または脳脊髄内に投与する、項目51から65までのいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記1種または複数種のmiRNAを毎日投与する、項目51から62までのいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記1種または複数種のmiRNAを週に1回投与する、項目51から62までのいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記1種または複数種のmiRNAを2週間に1回投与する、項目51から62までのいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記1種または複数種のmiRNAを月に1回投与する、項目51から62までのいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
糖尿病、心筋梗塞、腎疾患、創傷治癒、瘻孔再生、神経再生、乳房切除術後の豊胸、および/または美容外科手技関連の状態を処置するための治療有効量の微小水泡を含む薬学的組成物。
(項目72)
配列番号1〜587のうちのいずれか1つと少なくとも80%同一である配列を有する1種または複数種のマイクロRNAと、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物。
(項目73)
前記1種または複数種のマイクロRNAが、配列番号1〜29のうちのいずれか1つと少なくとも80%同一である配列を含む、項目72に記載の薬学的組成物。
(項目74)
前記1種または複数種のマイクロRNAが配列番号1〜587から選択される、項目72に記載の薬学的組成物。
(項目75)
前記1種または複数種のmiRNAが、糖尿病、心筋梗塞、または腎疾患を処置するための治療有効量で存在する、項目71から74までのいずれか一項に記載の薬学的組成物。
(項目76)
細胞の成長および/または再生を誘導するmiRNAを同定するための方法であって、
微小水泡枯渇培地で成長させた細胞を供給する工程と、
該培地にmiRNAを添加する工程と、
該miRNAを添加したことにより、対照と比較して細胞増殖速度が増大したかどうかを決定し、それにより、該miRNAによって細胞の成長および/または再生が誘導されるかどうかを同定する工程と
を含む方法。
(項目77)
前記細胞が膵臓由来パスファインダー細胞である、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記細胞増殖速度を倍加時間によって決定する、項目76または77に記載の方法。
(項目79)
前記miRNAが微小水泡から単離される、項目76から78までのいずれか一項に記載の方法。
(項目80)
細胞の成長および/または再生を誘導するmiRNAを同定するための方法であって、
集密になるまで成長させた細胞に創傷領域を作製する工程と、
該細胞をmiRNAで処理する工程と、
処理した該細胞の、創傷領域にわたる再成長の速度を対照と比較して決定し、それにより、該miRNAにより細胞の成長および/または再生が誘導されるかどうかを同定する工程と
を含む方法。
(項目81)
前記細胞が線維芽細胞または心筋細胞である、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記再成長の速度を定量的に決定する、項目80または81に記載の方法。
(項目83)
前記対照が、処理はしていないが、他の点では同一の条件下で成長させた細胞である、項目80から82までのいずれか一項に記載の方法。
(項目84)
前記miRNAが微小水泡から単離される、項目80から83までのいずれか一項に記載の方法。
(項目85)
項目76から84までのいずれか一項に記載の方法を用いて同定された、細胞の成長および/または再生を誘導するmiRNA。
【0028】
本出願では、「または(or)」の使用は、別段の指定のない限り、「および/または(and/or)」を意味する。本出願において使用される場合、「含む(comprise)」という用語、およびこの用語の変形、例えば、「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、他の添加物、構成成分、整数または工程を排除するものではない。本出願において使用される場合、「約(about)」および「およそ(approximately)」という用語は同等に使用される。本出願において約/およそを伴って、または伴わずに用いられる任意の数字は、当業者に認識される任意の通常のゆらぎを包含することを意味する。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段の指定のない限り、または文脈からそうでないことが明らかでない限り、規定された参照値についての、いずれかの方向(それを上回る、またはそれ未満)で、25%以内、20%以内、19%以内、18%以内、17%以内、16%以内、15%以内、14%以内、13%以内、12%以内、11%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、またはそれ未満に入る値の範囲を指す(そのような数が可能性のある値の100%を超える場合を除く)。
【0029】
本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の詳細な記載、図および特許請求の範囲において明らかになる。しかし、発明を実施するための形態、図、および特許請求の範囲は、本発明の実施形態が示されているが、単に例示として示されており、限定するものではないことが理解されるべきである。当業者には、本発明の範囲内の種々の変化および改変が明らかである。
【0030】
図は、単に例示するためのものであって、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1Aおよび1Bは、ウシ微小小胞を枯渇させたウシ胎仔血清(FBS)を有する培地での成長に適応させた準集密の(sub−confluent)ラットPDPCの例示的な走査電子顕微鏡法の画像を示す。両方の図で細胞の表面に発生期の微小小胞を認めることができる。
図2図2Aおよび2Bは、ラットPDPCの成長速度に対するMVの例示的な作用を示す。図2Aは、ラットPDPCの倍加時間に対するウシMV枯渇の作用を示す。(y軸には電気インピーダンスがプロットされている;負の値は、細胞死、したがって負の成長を示す。)43時間の時点でMV枯渇を実施した。倍加時間に対する負の作用が認められ、その後回復した。図2Bは、ラットPDPC由来のMVを添加した後のラットPDPCの倍加時間の用量依存的な回復を示す。48時間の時点で培養物をMV枯渇させ、次いで、10時間後に外因性MVを添加した。外因性MVを受けている細胞の倍加時間の急速な回復が通常の回復時間よりも前に順調に起こった。
図3図3は、微小小胞を含有する細胞培養培地の例示的な分画遠心分離の分画を示す。
図4図4は、ラットPC、MV画分、およびエキソソーム画分のmiRNA発現プロファイルを比較する例示的な図を示す。図は、血清欠乏条件下で24時間成長させることにより、血清が豊富な条件下での成長と比較して発現が変更されたmiRNAの数を示す。解析したラットmiRNA遺伝子の総計=584。解析したヒトmiRNA遺伝子の総計=761。示されているデータは、TLDAカードでの単回の遺伝子発現解析に関するN=1実験からのものである。
図5図5は、ラットPC、MV画分、およびエキソソーム画分のmiRNA発現プロファイルを比較する例示的なグラフを示す。グラフは、血清欠乏条件下で24時間成長させた後の、血清が豊富な条件下での成長と比較して遺伝子発現が増大したmiRNAを示す。解析したラットmiRNA遺伝子の総計=584。示されているデータは、TLDAカードでの単回の遺伝子発現解析に関するN=1実験からのものである。
図6図6は、ラットPC、ラットMSC、およびヒトPCのmiRNA発現プロファイルを比較する例示的な図を示す。チャートは、血清欠乏条件下で24時間成長させることにより、血清が豊富な条件下での成長と比較して発現が変更されたmiRNAの数を示す。解析したラットmiRNA遺伝子の総計=584。解析したヒトmiRNA遺伝子の総計=761。示されているデータは、TLDAカードでの単回の遺伝子発現解析に関するN=1実験からのものである。
図7図7は、ヒトPCおよびヒトPCから得た微小小胞(MV)のmiRNA発現プロファイルを比較する例示的な図を示す。チャートは、血清欠乏条件下で24時間成長させることにより、血清が豊富な条件下での成長と比較して発現が変更されたmiRNAの数を示す。解析したヒトmiRNA遺伝子の総計=761。示されているデータは、TLDAカードでの単回の遺伝子発現解析に関するN=1実験からのものである。
図8図8は、ラットPCから得たMVおよびヒトPCから得たMVのmiRNA発現プロファイルを比較する例示的な図を示す。図は、血清欠乏条件下で24時間成長させることにより、血清が豊富な条件下での成長と比較して発現が変更されたmiRNAの数を示す。解析したラットmiRNA遺伝子およびマウスmiRNA遺伝子の総計=584。解析したヒトmiRNA遺伝子の総計=761。示されているデータは、TLDAカードでの単回の遺伝子発現解析に関するN=1実験からのものである。
図9図9は、ラットPCから得たMVおよびヒトPCから得たMVのmiRNA発現プロファイルを比較する例示的なグラフを示す。グラフは、血清欠乏条件下で24時間成長させた後の、血清が豊富な条件下での成長と比較して遺伝子発現が増大または減少したmiRNAを示す。解析したラットmiRNA遺伝子およびマウスmiRNA遺伝子の総計=584。示されているデータは、TLDAカードでの単回の遺伝子発現解析に関するN=1実験からのものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
本発明をより理解しやすくするために、特定の用語を以下に最初に定義する。以下の用語および他の用語についての追加的な定義は、本明細書全体を通して説明されている。
【0033】
動物:本明細書で使用される場合、「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態では、「動物」とは、任意の発生段階にあるヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」とは、任意の発生段階にある非ヒト動物を指す。ある特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物としては、これらに限定されないが、哺乳動物、鳥類、は虫類、両生類、魚類、昆虫、および/または蠕虫が挙げられる。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、および/またはクローンであってよい。
【0034】
およそ:本明細書で使用される場合、対象の1つまたは複数の値に適用された「およそ」または「約」という用語は、規定された参照値と同様である値を指す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段の指定のない限り、または文脈からそうでないことが明らかでない限り、規定された参照値についての、いずれかの方向(それを上回る、またはそれ未満)で、25%以内、20%以内、19%以内、18%以内、17%以内、16%以内、15%以内、14%以内、13%以内、12%以内、11%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、またはそれ未満に入る値の範囲を指す(そのような数が可能性のある値の100%を超える場合を除く)。
【0035】
自己免疫障害:本明細書で使用される場合、「自己免疫障害」という用語は、体の自身の組織が、その免疫系に攻撃されることによって生じる障害を指す。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、糖尿病、多発性硬化症、早発性卵巣機能不全、強皮症、シェーグレン病、狼瘡、脱毛症(禿頭症)、多腺性不全症(polyglandular failure)、グレーブス病、甲状腺機能低下症、多発性筋炎(polymyosititis)、セリアック病、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、自己免疫性肝炎、下垂体機能低下症、ギランバレー症候群、心筋炎(myocardititis)、アジソン病、自己免疫性皮膚疾患(例えば、乾癬)、ぶどう膜炎(uveititis)、悪性貧血、リウマチ性多発筋痛、グッドパスチャー症候群、副甲状腺機能低下症、橋本甲状腺炎(Hashimoto’s thyoriditis)、レイノー現象、リウマチ性多発筋痛症(polymyaglia rheumatica)、および関節リウマチである。
【0036】
自己および非自己:本明細書で使用される場合、「自己」という用語は、同じ生物体由来であることを意味する。本出願に関しては、この用語は、「自己」と称される細胞の集団および/または微小小胞の集団が、互いに、同種異系または外因性(xenogenic)とみなされ得るいかなる材料も含有しない、すなわち、「外来の」細胞供給源に由来するいかなる材料も含有しないことを表すために使用される。本明細書で使用される場合、「非自己の」という用語は、同じ生物体由来ではないことを意味する。
【0037】
糖尿病:本明細書で使用される場合、「糖尿病」という用語は、遺伝性インスリン産生不能(1型)またはインスリンに対する獲得抵抗性(2型)によって引き起こされる、血液中のグルコースのレベルが異常に高いことを特徴とする代謝疾患を指す。1型糖尿病は、インスリンの産生が不十分であり、その結果、炭水化物、脂肪、およびタンパク質の異常な代謝が生じることによって引き起こされる、糖尿病の重度の慢性の形態である。この疾患は、一般には小児期または青年期に現れ、血液中および尿中の糖レベルの上昇、過剰なのどの渇き、頻尿、アシドーシス、およびるいそうを特徴とする。1型糖尿病は、インスリン依存性糖尿病とも称される。2型糖尿病は、一般には、成人期に初めて現れる糖尿病の軽度の形態であり、肥満および活動的でない生活様式により悪化する。この疾患は、多くの場合、症状がなく、通常は、グルコース不耐症を示す検査によって診断され、食事の変化および運動療法により処置される。2型糖尿病は、インスリン非依存性糖尿病とも称される。
【0038】
対照:本明細書で使用される場合、「対照」という用語は、それに対して結果を比較する標準であるという、その当技術分野で理解される意味を有する。一般には、対照は、変数についての結論を出すために、そのような変数を分離することによって実験における完全性を増強するために使用される。いくつかの実施形態では、対照は、コンパレータ(comparator)をもたらすために試験反応またはアッセイと同時に実施される反応またはアッセイである。1つの実験では、「試験」(すなわち、試験されている変数)を適用する。「対照」である第2の実験では、試験されている変数は適用しない。いくつかの実施形態では、対照は、歴史的対照である(すなわち、以前に実施された試験またはアッセイの、または以前公知の量もしくは結果)。いくつかの実施形態では、対照は、印刷されたか、そうでなければ保存された記録である、またはそれを含む。対照は、陽性対照または陰性対照であってよい。いくつかの実施形態では、対照は参照とも称される。
【0039】
美容外科手技:本明細書で使用される場合、「美容外科手技」という用語は、疾患の療法を対象とするのではなく、個体の美的外観、特に個体の皮膚または毛の外観を改善することを対象とする手技を指す。美容外科手技の例としては、皮膚のしわの減少、皮膚の硬さの増大、毛髪の成長またはつやの増大、白髪の減少、禿頭症(特に男性型禿頭症)の場合における毛髪の再成長、体毛の成長(特に顔の毛の成長)の減少、乳房のサイズまたは形状の美的増強、およびセルライトの減少をもたらす手技が挙げられる。
【0040】
粗製:本明細書で使用される場合、「粗製」という用語は、生体試料に関連して使用される場合、実質的に精製されていない(unrefined)状態にある試料を指す。例えば、粗製試料は、細胞溶解物または生検組織試料であってよい。粗製試料は、溶液で、または乾燥した調製物として存在してよい。
【0041】
その誘導体:本明細書で使用される場合、「その誘導体」という用語は、微小小胞または細胞に関連して使用される場合、元の生物活性(特に、分化を誘導する能力および/または治療的な利益をもたらす能力)を少なくともいくらか保持する元の微小小胞または細胞集団の画分または抽出物(特に、RNAおよび/またはDNAおよび/またはタンパク質を含有するもの)を指す。この用語は、複合体を形成した、カプセルに入れた、または製剤化された微小小胞または細胞(例えば、投与を容易にするためにカプセルに入れた、複合体を形成した、または製剤化された微小小胞)も包含する。誘導体の例としては、溶解物、凍結乾燥物およびホモジネートが挙げられる。
【0042】
機能障害:本明細書で使用される場合、「機能障害」という用語は、異常な機能を指す。分子(例えば、タンパク質)の機能障害は、そのような分子に関連する活性の増大または低下によって引き起こされ得る。分子の機能障害は、その分子自体、または直接もしくは間接的にその分子と相互作用する、もしくはその分子を調節する他の分子に関連する欠損によって引き起こされ得る。
【0043】
機能的な:本明細書で使用される場合、「機能的な」生体分子は、それを特徴付ける性質および/または活性を示す形態の生体分子である。
【0044】
機能性誘導体:本明細書で使用される場合、「機能性誘導体」という用語は、ヌクレオチド配列(例えば、マイクロRNA)の機能性誘導体に関しては、元の配列の生物活性(機能的な生物活性または構造的な生物活性のいずれか)と実質的に同様の生物活性を保持する分子を指す。機能性誘導体または等価物は、天然の誘導体であってよい、または、合成により調製される。例示的な機能性誘導体は、核酸(例えば、マイクロRNA)の生物活性が保存されているのであれば、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失、または付加を有するヌクレオチド配列を含む。
【0045】
炎症:本明細書で使用される場合、「炎症」という用語は、多くの障害において起こる炎症性の状態を包含し、それらとしては、これらに限定されないが、全身性炎症反応(Systemic Inflammatory Response)(SIRS);アルツハイマー病(ならびに、慢性神経炎症、グリアの活性化;小膠細胞の増加;神経炎性斑(neuritic plaque)の形成;および療法に対する応答を含めた関連する状態および症状);筋萎縮性側索硬化症(Amyotropic Lateral Sclerosis)(ALS)、関節炎(ならびに、これらに限定されないが、急性の関節の炎症、抗原誘導関節炎(antigen−induced arthritis)、慢性リンパ球性甲状腺炎に関連する関節炎、コラーゲン誘発関節炎、若年性関節炎;関節リウマチ、変形性関節症、予後関節炎および連鎖球菌誘発関節炎(prognosis and streptococcus−induced arthritis)、脊椎関節症(spondyloarthopathy)、痛風性関節炎を含めた関連する状態および症状)、喘息(ならびに、気管支喘息;慢性閉塞性気道疾患;慢性閉塞性肺疾患、若年性喘息(juvenile asthma)および職業性喘息を含めた関連する状態および症状);心臓血管疾患(ならびに、アテローム性動脈硬化症;自己免疫性心筋炎、慢性心臓低酸素症(chronic cardiac hypoxia)、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋症ならびに大動脈平滑筋細胞の活性化;心臓細胞アポトーシス;および心臓細胞機能の免疫調節を含めた心臓細胞機能障害;糖尿病、ならびに自己免疫性糖尿病、インスリン依存性(1型)糖尿病、糖尿病性歯周炎、糖尿病性網膜症、および糖尿病性腎症を含めた関連する状態および症状を含めた関連する状態および症状);胃腸炎(ならびに、セリアック病、関連する骨減少症、慢性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患および潰瘍性大腸炎を含めた関連する状態および症状);胃潰瘍;肝臓の炎症、例えば、ウイルス性肝炎および他の種類の肝炎、コレステロール胆石および肝線維症、HIV感染症(ならびに、変性反応(degenerative response)、神経変性反応(neurodegenerative response)、およびHIV関連ホジキン病(HIV associated Hodgkin’s Disease)を含めた関連する状態および症状)、川崎症候群(ならびに、皮膚粘膜リンパ節症候群、頸リンパ節症(cervical lymphadenopathy)、冠状動脈病変、浮腫、発熱、白血球の増加、軽度の貧血、皮膚剥離、皮疹、結膜発赤(conjunctiva redness)、血小板増加症を含めた関連する疾患および状態;多発性硬化症、腎症(ならびに、糖尿病性腎症、末期腎疾患、急性糸球体腎炎および慢性糸球体腎炎、急性間質性腎炎および慢性間質性腎炎、ループス腎炎、グッドパスチャー症候群、血液透析生存(hemodialysis survival)および腎虚血性再灌流傷害(renal ischemic reperfusion injury)を含めた関連する疾患および状態)、神経変性疾患(ならびに、急性神経変性、老化および神経変性疾患におけるIL−1の誘導、IL−1に誘導される視床下部神経細胞の可塑性および慢性ストレス応答性亢進を含めた関連する疾患および状態)、眼障害(ophtlialmopathy)(ならびに、糖尿病性網膜症、グレーブス眼症(Graves’ opthalmopathy)、およびぶどう膜炎を含めた関連する疾患および状態、骨粗鬆症(ならびに、歯槽骨、大腿骨、橈骨、椎骨または手根骨の骨量減少または骨折の発生、閉経後の骨量減少、骨量、骨折の発生または骨量減少速度を含めた関連する疾患および状態)、中耳炎(成人または小児の)、膵炎または膵臓腺房炎(pancreatic acinitis)、歯周病(ならびに、成人性、早発性および糖尿病性を含めた関連する疾患および状態);慢性肺疾患、慢性副鼻腔炎、ヒアリン膜症、低酸素症およびSIDSにおける肺疾患を含めた肺疾患;移植冠血管または他の移植血管の再狭窄;関節リウマチ、リウマチ性アショフ体、リウマチ性疾患およびリウマチ性心筋炎を含めたリウマチ;慢性リンパ球性甲状腺炎を含めた甲状腺炎;慢性前立腺炎、慢性骨盤痛症候群および尿路結石症を含めた尿路感染症が挙げられる。自己免疫疾患を含めた免疫性障害、例えば、円形脱毛症(alopecia aerata)、自己免疫性心筋炎、グレーブス病、グレーブス眼症、硬化性苔癬(lichen sclerosis)、多発性硬化症、乾癬、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、甲状腺疾患(例えば、甲状腺腫およびリンパ性甲状腺腫(橋本甲状腺炎、リンパ節様甲状腺腫)、睡眠障害および慢性疲労症候群および肥満(非糖尿病性の肥満または糖尿病に関連する肥満)など。細菌、ウイルス(例えば、サイトメガロウイルス、脳炎、エプスタインバーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス)または原生動物(例えば、Plasmodium falciparum、トリパソノーム)によって引き起こされるリーシュマニア症、ハンセン病、ライム病、ライム心臓(Lyme Carditis)、マラリア、脳マラリア、髄膜炎、マラリアに関連する尿細管間質性腎炎)などの感染症に対する抵抗性。脳外傷(脳卒中および虚血、脳炎、脳症、てんかん、周産期脳傷害、持続性の熱性痙攣、SIDSおよびくも膜下出血を含む)、低出生体重(例えば、脳性麻痺)、肺傷害(急性出血性肺傷害、グッドパスチャー症候群、急性虚血性再灌流)、職業性汚染物質および環境汚染物質によって引き起こされる心筋機能障害(例えば、有毒油症候群、珪肺症に対する感受性)、放射線外傷、および創傷治癒反応の効率(例えば、熱傷または熱傷(burn or thermal wound)、慢性創傷、手術創および脊髄傷害)を含めた外傷に対する応答。稔性/生殖能、妊娠の可能性、早産の発生率、早産低出生体重を含めた胎児合併症および新生児合併症、脳性麻痺、敗血症、甲状腺機能低下症、酸素依存、頭蓋異常、早期月経閉止を含めたホルモンによる調節。移植に対する被験体の反応(拒絶または受容)、急性相反応(例えば、熱性反応)、全身性炎症反応(general inflammatory response)、急性呼吸窮迫反応、急性全身性炎症反応(systemic inflammatory response)、創傷治癒、接着、免疫性炎症反応(immunoinflammatory response)、神経内分泌反応、発熱発生および抵抗性、急性相反応、ストレス応答、疾患感受性、反復運動ストレス、テニス肘、および疼痛管理および反応。
【0046】
誘導因子:本明細書で使用される場合、「誘導因子」という用語は、それが適用された細胞の分化の運命の変化を誘導することができる任意の分子または他の物質を指す。
【0047】
in vitro:本明細書で使用される場合、「in vitro」という用語は、多細胞の生物体内ではなく、人工的な環境において、例えば、試験管または反応容器内、細胞培養物中などで起こる事象を指す。
【0048】
in vivo:本明細書で使用される場合、「in vivo」という用語は、非ヒト動物などの多細胞の生物体内で起こる事象を指す。
【0049】
単離された:本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、(1)最初に生成された場合(自然環境であろうと、かつ/または実験的な環境であろうと)結合していた構成成分の少なくとも一部から分離された物質および/もしくは実体、ならびに/または(2)人間の手によって生成、調製、および/もしくは製造された物質および/もしくは実体を指す。単離された物質および/または実体は、それらが最初に結合していた他の構成成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%、実質的に100%、または100%から分離されていてよい。いくつかの実施形態では、単離された作用物質は、約80%超、約85%超、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、約99%超、実質的に100%超、または100%超純粋である。本明細書で使用される場合、物質は、他の構成成分を実質的に含まない場合に「純粋」である。本明細書で使用される場合、「単離された細胞」という用語は、多細胞の生物体内に含有されていない細胞を指す。
【0050】
マイクロRNA:本明細書で使用される場合、「マイクロRNA(miRNA)」という用語は、一般には標的メッセンジャーRNA転写物(mRNA)の3’非翻訳領域(3’UTR)にある相補配列に結合し、通常、遺伝子サイレンシングをもたらす転写後調節因子を指す。一般には、miRNAは、例えば、21ヌクレオチド長または22ヌクレオチド長の短いリボ核酸(RNA)分子である。「マイクロRNA」および「miRNA」という用語は、互換的に使用される。
【0051】
微小小胞:本明細書で使用される場合、「微小小胞」という用語は、種々の細胞型に由来する原形質膜の断片を含む膜性粒子を指す。一般には、微小小胞の直径(または、粒子が球状ではない場合は最も大きな寸法)は、約10nmから約5000nmの間(例えば、約50nmから1500nmの間、約75nmから1500nmの間、約75nmから1250nmの間、約50nmから1250nmの間、約30nmから1000nmの間、約50nmから1000nmの間、約100nmから1000nmの間、約50nmから750nmの間など)である。一般には、微小小胞の膜の少なくとも一部は、細胞(ドナー細胞としても公知である)から直接得られる。本発明において使用するために適した微小小胞は、細胞から、膜の反転、エキソサイトーシス、排出(shedding)、小疱形成(shedding)、および/または出芽により生じ得る。生成の様式に応じて(例えば、膜の反転、エキソサイトーシス、排出、または出芽)、本発明において意図されれている微小小胞は、異なる表面/脂質特性を示し得る。微小小胞に対する代替の名称としては、これらに限定されないが、エキソソーム、エクトソーム(ectosomse)、膜粒子、エキソソーム様粒子、およびアポトーシス小胞が挙げられる。本明細書では、微小小胞を指すために時には省略形「MV」が使用される。
【0052】
パスファインダー細胞:本明細書で使用される場合、「パスファインダー細胞」という用語は、組織の修復、再生、リモデリングまたは分化を誘導または刺激する能力を有する細胞を指す。一般には、パスファインダー細胞は、新しい組織自体の供給源にはならずに組織の修復、再生、リモデリングまたは分化を誘導または刺激する。いくつかの実施形態では、パスファインダー細胞は、「前駆細胞」とも称される。本明細書では、パスファインダー細胞を指すために時には省略形「PC」が使用される。
【0053】
被験体:本明細書で使用される場合、「被験体」という用語は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類)を指す。ヒトは、胎児の形態および新生児の形態を包含する。多くの実施形態では、被験体は、ヒトである。被験体は患者であってよく、疾患を診断または処置するために医療提供者を訪問しているヒトを指す。「被験体」という用語は、本明細書では、「個体」または「患者」と互換的に使用される。被験体は、疾患または障害を患っているかそれに対して感受性であり得るが、疾患または障害の症状を示していても示していなくてもよい。
【0054】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、対象の特性または性質の全体のまたはほぼ全体の程度または度合(extent or degree)を示す定性的な条件を指す。生物学の分野の当業者には、生物学的現象および化学的現象は、めったに完全にならない、かつ/もしくは完全にまで進行しない、または絶対的な結果が実現されない、もしくは回避されることが理解されよう。したがって、本明細書では、「実質的に」という用語は、多くの生物学的現象および化学的現象に固有である完全性の潜在的な欠乏を捕らえるために使用される。
【0055】
罹患している:疾患、障害、および/または状態に「罹患している」個体は、疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状について診断されている、またはそれを示す。
【0056】
感受性:疾患、障害、および/または状態に対して「感受性」の個体は、疾患、障害、および/または状態について診断されている。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または状態に対して感受性の個体は、疾患、障害、および/または状態の症状を示していない場合がある。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または状態に対して感受性の個体で疾患、障害、および/または状態が発生する。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または状態に対して感受性の個体で疾患、障害、および/または状態は発生しない。
【0057】
治療有効量:本明細書で使用される場合、治療剤の「治療有効量」という用語は、疾患、障害、および/または状態に罹患しているまたはそれに対して感受性の被験体に投与した場合に、疾患、障害、および/または状態の症状(複数可)を処置する、診断する、予防する、および/またはその発症を遅延させるために十分な量を意味する。治療有効量は、一般には、少なくとも1つの単位用量を含む投薬レジメンによって投与されることは、当業者には理解されよう。
【0058】
治療剤:本明細書で使用される場合、「治療剤」という句は、被験体に投与すると、治療効果を有し、かつ/または所望の生物学的効果および/または薬理学的効果を引き出す任意の作用物質を指す。いくつかの実施形態では、本発明の治療剤とは、本発明によるペプチド阻害剤またはその誘導体を指す。
【0059】
分化転換:本明細書で使用される場合、「分化転換」という用語は、非幹細胞が異なる細胞型に形質転換する、またはすでに分化した幹細胞が、そのすでに確立された分化の進路外の細胞を生み出すプロセスを指す。一般には、分化転換は、成熟細胞型(または分化細胞型)の脱分化、次いで再分化を含む。
【0060】
処置すること:本明細書で使用される場合、「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、または「処置すること(treating)」という用語は、特定の疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状または特徴を、部分的にまたは完全に緩和する、改善する、軽減する、阻害する、予防する、その発症を遅延させる、その重症度を低下させる、かつ/またはその発生率を低下させるために用いる任意の方法を指す。処置は、疾患の徴候を示していない被験体および/または疾患の初期の徴候のみを示している被験体に、疾患に関連する病変が発生する危険性を減らすために施すことができる。
【0061】
特定の実施形態の詳細な説明
本発明は、とりわけ、組織の修復、リモデリング、再構築、分化または分化転換を誘導するため、および/または関連する疾患、障害および状態を処置するための、微小小胞または微小小胞に関連するマイクロRNAに基づく改善された組成物および方法を提供する。
【0062】
本発明の種々の態様は、以下の節に詳しく記載されている。節の使用は、本発明を限定するものではない。各節を本発明の任意の態様に適用することができる。本出願では、別段の指定のない限り、「または(or)」の使用は、「および/または(and/or)」を意味する。
【0063】
I.微小小胞
本明細書で使用される場合、「微小小胞」という用語は、種々の細胞型に由来する原形質膜の断片を含む膜性粒子を指す。一般には、微小小胞は、約10nmから約5000nmの間(例えば、約50nmから1500nmの間、約75nmから1500nmの間、約75nmから1250nmの間、約50nmから1250nmの間、約30nmから1000nmの間、約50nmから1000nmの間、約100nmから1000nmの間、約50nmから750nmの間など)の直径(または、粒子が球状ではない場合は最も大きな寸法)を有する小粒子である。一般には、微小小胞の膜の少なくとも一部は、細胞(ドナー細胞としても公知である)から直接得られる。本発明において使用するために適した微小小胞は、細胞から、膜の反転、エキソサイトーシス、排出、小疱形成、および/または出芽により生じ得る。生成の様式に応じて(例えば、膜の反転、エキソサイトーシス、排出、または出芽)、本発明において意図される微小小胞は、 異なる表面/脂質特性を示し得る。微小小胞に対する代替の名称としては、これらに限定されないが、エキソソーム、エクトソーム、膜粒子、エキソソーム様粒子、およびアポトーシス小胞が挙げられる。
【0064】
微小小胞は、RNAおよびタンパク質分子が細胞間を通過することを可能にする手段としての機能を果たし得ることが意図される。いかなる特定の理論にも制約されることなく、膵臓由来パスファインダー細胞(PDPC)に由来する微小小胞は、特異的なmRNA、miRNA、および/またはタンパク質を移行させることによって修復プロセスを刺激することができることが意図される。しかし、本発明の前には、微小小胞に結合する特異的なマイクロRNAはまだ特徴付けられていない。マイクロRNAの節および実施例の節において考察されている通り、本発明者らは、マイクロRNAを解析および同定するための有効なin vitroアッセイを開発した。予想外に、本発明者らは、特定のマイクロRNAが微小小胞に特異的に存在する(すなわち、微小小胞にのみ存在し、細胞には存在しない)ことを見いだした。この知見により、微小小胞が、無作為に試料採取した細胞質またはエンドソームの内容物を単に含有するのではないことが初めて実証された。微小小胞に特異的に存在するマイクロRNAは、組織の修復、リモデリング、再構築、分化または分化転換を誘導するために重要な細胞内の調節因子であり得ることが意図される。
【0065】
ドナー細胞
本発明に従って使用される微小小胞は、任意の細胞型から得ることができる。本明細書で使用される場合、微小小胞を産生する細胞は、ドナー細胞とも称される。適切なドナー細胞は、原核細胞、古細菌細胞、真菌細胞、および単細胞の真核細胞および多細胞の真核細胞を含んでよい。いくつかの実施形態では、微小小胞は、真核細胞(例えば、多細胞の生物体、特に、脊椎動物細胞(例えば、哺乳動物)由来の真核細胞)から得られる。さらに、ドナー細胞は有核または無核であってよいことが認識されるべきである。したがって、適切なドナー細胞としては、リンパ球(例えば、多核性リンパ球、多形核リンパ球など)、線維芽細胞、肝細胞、ならびに赤血球、および血小板が挙げられる。
【0066】
適切なドナー細胞は、その細胞系統に関して任意の望ましい発生段階から得ることができる。例えば、適切なドナー細胞としては、幹細胞(特定の細胞系に関係づけられていても関係づけられていなくてもよい)、部分的に分化した幹細胞、および完全に分化した細胞を挙げることができる。いくつかの実施形態では、適切なドナー細胞は、ヒト胚性幹細胞由来の間葉系幹細胞であってよい。いくつかの実施形態では、適切なドナー細胞はパスファインダー細胞である。本明細書で使用される場合、「パスファインダー細胞」という用語は、組織の修復、再生、リモデリングまたは分化を誘導または刺激する能力を有する多能性細胞を包含する。パスファインダー細胞は、これらに限定されないが、膵臓、腎臓、リンパ節、肝臓、脾臓、子宮筋層、血液細胞(末梢血由来の細胞および臍帯血由来の細胞を含む)、および骨髄を含めた種々の組織型のいずれからも得ることができる。
【0067】
適切なドナー細胞は、それらの前駆細胞から分離されたばかりのものから、老化した細胞、またはさらには死細胞までにわたる、それらの個々の細胞年齢の任意の段階にあってもよい。いくつかの実施形態では、微小小胞の排出は、アポトーシス性の小疱形成(原形質膜および/または核由来であってよい)と関連する可能性がある。したがって、ドナー細胞は、アポトーシス促進性のドナー細胞、またはアポトーシスに関係づけられた細胞を包含し得る。
【0068】
さらに、適切なドナー細胞は、非疾患細胞および疾患細胞も包含し、疾患細胞は、1種または複数種の病原体および/または状態の影響を受け得ることが意図される。例えば、病的なドナー細胞に、ウイルス、細胞内寄生生物、または細菌を感染させることができる。他の例では、疾患細胞は、代謝的疾患細胞(例えば、遺伝的欠陥に起因する、酵素、受容体、および/または輸送体の機能障害に起因する、または代謝的な傷害に起因する)、新生物細胞、または、制御されていない細胞の成長に対する感受性を与える1つまたは複数の変異を有する細胞であってよい。同様に、ドナー細胞は、ネイティブであってよい(例えば、生検によって得られる)、培養することができる(例えば、ネイティブな細胞、または不死化細胞)、または処理することができる。例えば、ドナー細胞を化学的かつ/または機械的に処理し、それにより、細胞特異的なストレス応答を示すドナー細胞をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、適切なドナー細胞は、細胞がそれに対する受容体を有する、または別の方法で相補的な構造を有する天然リガンドまたは合成リガンドを用いて処理することができる。いくつかの実施形態では、ドナー細胞は、代謝、細胞の成長、細胞分裂、細胞構造、および/または分泌の少なくとも1つを変化させる薬物または化合物を用いて処理することもできる。
【0069】
いくつかの実施形態では、適切なドナー細胞は組換え細胞である。例えば、組換えドナー細胞は、組換えDNA技術により導入された1種または複数種の核酸分子を含有してよい。核酸を導入する公知の様式は全て本発明で使用するために適しているとみなされる(例えば、ウイルスによるトランスフェクション、化学的トランスフェクション、電気穿孔、弾道トランスフェクションなど)。核酸がDNAである場合、そのDNAを、ドナー細胞のゲノムに組み込むことができる、またはそのDNAは染色体外ユニットとして細胞内に存在してよいことが意図される。そのようなDNAは、調節機能および/またはタンパク質をコードする機能を有し得るRNAを生成するための鋳型として使用することができる。同様に、核酸がRNAである場合、そのようなRNAを、調節性実体(例えば、アンチセンスまたは干渉による)として、かつ/またはタンパク質をコードする実体として使用することができる。本明細書で使用される場合、核酸は、公知の核酸類似体(例えば、ホスホロチオエート類似体、ペプチド核酸類似体など)の全てを包含する。
【0070】
適切なドナー細胞は、内皮起源、中皮起源、および外皮(ectothelial)起源を含めた任意の望ましい起源を有し得る。したがって、適切なドナー細胞は、腺、臓器、筋肉、構造組織などに見いだされる細胞を包含する。適切なドナー細胞は、レシピエントに対して異種性(もしくは非自己)または自己であってよい。例えば、適切なドナー細胞は、レシピエント組織(例えば、処置しようとする疾患組織)と同じ組織またはそれとは異なる組織から得ることができる。非限定的な例として、線維芽細胞などのドナー細胞から得た微小小胞を、レシピエントの疾患膵臓組織を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態では、ドナー細胞は、異なる生物体(すなわち、非自己)から得ることができる。例えば、ドナー細胞はブタ膵臓細胞であってよく、一方上記レシピエントはヒト膵臓である。
【0071】
いくつかの実施形態では、微小小胞は、生きている 哺乳動物から得ることができる全血、血清、血漿、または、尿、腹水、乳、涙、脊髄液、羊水などを含めた任意の他の生体液から得られる。あるいは、微小小胞は、保管材料(例えば、生体液、組織、臓器など)から得ることもできる。そのような保管は、温度を低下させての(例えば、4℃)保管、またはさらには凍結させた形態での保管を含んでよい。同様に、微小小胞は、in vitro供給源から得ることもでき、細胞培養物または組織培養物(以下の細胞培養条件の節を参照されたい)、または、さらには臓器培養物から得ることが最も典型的である。
【0072】
細胞培養条件
いくつかの実施形態では、微小小胞は、培養したドナー細胞から得られる。例えば、適切なドナー細胞は、細胞のための栄養分を含有する液体培地で培養することができ、温度および/またはガス組成を制御した環境でインキュベートする。当業者には理解されるように、特定の細胞培養条件は、使用する細胞の種類に応じて変動し得る。例えば、パスファインダー細胞に対する細胞培養条件が記載されている。例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO2006120476号を参照されたい。パスファインダー細胞を培養するための例示的な適切な培地は、ウシ胎仔血清を補充した(例えば、10%で)CMRL1066培地(Invitrogen)である。いくつかの実施形態では、培地は、グルタミンまたはGLUTAMAX(商標)(Invitrogen)などのグルタミンを含有する混合物が補充されている、かつ/または抗生物質(例えば、アンホテリシン、ペニシリン、および/またはストレプトマイシン)が補充されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、細胞を、表面上に付着するように成長させる。いくつかのそのような実施形態では、細胞を表面上に単層として成長させる。いくつかの実施形態では、細胞をそれらが集密になるまで、すなわち、細胞が成長している表面全体を覆い、表面上に細胞が成長する場所がなくなるまで成長させる。いくつかの実施形態では、細胞を、それらが集密に近いが、まだ集密ではないところまで、すなわち、細胞が成長している表面の大半を覆うが、まだいくらか細胞が成長する余地があるところまで成長させる。いくつかの実施形態では、細胞を、それらがおよそ50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、またはそれを超える集密になるまで成長させ、ここでx%の集密とは、およそx%の成長表面の被覆度と定義される。いくつかの実施形態では、細胞を、それらがおよそ50〜99%(例えば、60〜99%、70〜99%、75〜99%、80〜99%、85〜99%、90〜99%、または95〜99%)集密になるまで成長させる。
【0074】
いくつかの実施形態では、細胞を、細胞の1つまたは複数の性質、例えば、微小小胞産生速度、細胞増殖速度、またはmiRNAの発現パターンに影響を与え得る基材上で成長させる。いくつかの実施形態では、細胞を、繊維で構成される不織布などの不織基材上で成長させる。本明細書で使用される場合、「不織布」という用語は、織ることまたは編むこと以外のプロセスによって製造される接着布、形成布(formed fabric)、または加工布(engineered fabric)を包含するが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、「不織布」という用語は、主にまたは完全に、クモの巣状、シートまたはバットに集合したステープルファイバーなどの繊維で構成される、通常平らなシートの形態である多孔質の布地様(textile−like)材料を指す。不織布の構造は、例えば、一般には大体無作為に配置されるステープルファイバーの配置に基づく。不織布は、繊維工業において公知のさまざまな技法によって作製することができる。種々の方法により、けば立てた(carded)不織布、湿式不織布、メルトブローン不織布、スパンボンデッド不織布、または風成(air laid)不織布を作製することができる。典型的な方法および基材は、その教義が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100151575号に記載されている。不織布の密度は、加工条件に応じて変動してよい。一実施形態では、不織布の密度は、約60mg/mL〜約350mg/mLである。
【0075】
いくつかの実施形態では、不織基材は生体適合性かつ/または生体吸収性である。使用することができる適切な生体適合性、生体吸収性ポリマーの例としては、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート(polyalkylene oxalate)、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル(polyoxaester)、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、およびその混合物からなる群から選択されるポリマーが挙げられる。
【0076】
いくつかの実施形態では、脂肪族ポリエステルは、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、イプシロン−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、炭酸トリメチレン(1,3−ジオキサン−2−オン)、炭酸トリメチレンのアルキル誘導体、デルタ−バレロラクトン、ベータ−ブチロラクトン、ガンマ−ブチロラクトン、イプシロン−デカラクトン、ヒドロキシブチレート(繰り返し単位)、ヒドロキシバレラート(繰り返し単位)、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体である1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オンおよびそのポリマー混合物からなる群から選択される単量体のホモポリマーおよび/またはコポリマーである。別の実施形態では、脂肪族ポリエステルとしては、これらに限定されないが、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、イプシロン−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、炭酸トリメチレン(1,3−ジオキサン−2−オン)およびそれらの組み合わせのホモポリマーおよび/またはコポリマーが挙げられる。
【0077】
いくつかの実施形態では、脂肪族ポリエステルは、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、イプシロン−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、炭酸トリメチレン(1,3−ジオキサン−2−オン)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される単量体のホモポリマーおよび/またはコポリマーである。さらに別の実施形態では、脂肪族ポリエステルは、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、およびp−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される単量体のホモポリマーおよび/またはコポリマーである。適切な布(fabric)の非限定的な例としては、脂肪族ポリエステル繊維、例えば、ラクチド(例えば、乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチド)、グリコリド(例えば、グリコール酸)、イプシロン−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、炭酸トリメチレン(1,3−ジオキサン−2−オン)、およびそれらの組み合わせのホモポリマーまたはコポリマーを含む繊維を含む布が挙げられる。例えば、適切な布は、ポリ(グリコリド−co−ラクチド)(PGA/PLA);ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLA/PGA);1,3プロパンジオール(PDO)、および/またはその混合物を含有してよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、細胞を、表面に特別な性質(例えば、特定の物質の斥力または引力、タンパク質の吸着の減少など)を付与し、それが今度は、そのような表面における細胞の挙動に影響を及ぼし得るように特定のやり方で織って作った固体表面上で成長させる。例えば、細胞を、ナノテクスチャード(nano−textured)表面(「ナノ表面」)上で成長させることができる。例えば、そのそれぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれるUS7,597,950;Sunら(2009年)「Combining nanosurface chemistry and microfluidics for molecular analysis and cell biology」、Analytica Chimica Acta、650巻(1号):98〜105頁を参照されたい。ナノ表面および他の織って作った表面は、例えば、研磨、化学エッチング、サンドブラスティング、および/またはディウェッティングを含めた当技術分野で公知の種々の方法のいずれによっても生成することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、細胞を懸濁液中で成長させる。
【0080】
ドナー細胞を培養するために、種々の成長培地を使用することができる。成長培地とは、一般に、生細胞を培養(cultivation)するために使用される任意の物質または調製物を指す。いくつかの実施形態では、成長培地は腎臓成長培地である。いくつかの実施形態では、成長培地はダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)である。いくつかの実施形態では、細胞を、血清を含有しない培地で成長させる。いくつかの実施形態では、細胞を、少なくともしばらくの間、培地の構成成分から微小小胞を枯渇させた培地で成長させる。例えば、ウシ胎仔血清を含有する培地からウシ微小小胞を枯渇させることができる。その代わりにまたはそれに加えて、微小小胞(例えば、ウシ微小小胞)が枯渇している市販の培地を使用する。
【0081】
いくつかの実施形態では、細胞を、37℃でまたは約37℃で成長させる。いくつかの実施形態では、細胞を、5%のCOまたは約5%のCOの存在下で成長させる。いくつかの実施形態では、細胞を室内空気の酸素条件下で成長させる。いくつかの実施形態では、細胞を酸素圧が5%以下のOである条件下で成長させる。いくつかの実施形態では、細胞を通常の酸素の条件(例えば、約5%のO)で成長させる。いくつかの実施形態では、細胞を低酸素条件(例えば、<5%のO、<4%のO、<3%のO、<2%のO、または<1%のOなどの低酸素)で成長させる。
【0082】
いくつかの実施形態では、ドナー細胞を血清欠乏条件下で成長させる。本明細書で使用される場合、「血清欠乏」という用語は、血清が豊富な培地または条件、無血清の培地または条件を包含するが、これに限定されない。種々の血清欠乏条件は、当技術分野で公知であり、本発明を実施するために使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞を血清欠乏条件下で約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約30時間、約36時間、約42時間、約48時間、またはそれより長く成長させることができる。いくつかの実施形態では、細胞を、血清濃度が10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、または0.5%以下である条件下で成長させることができる。いくつかの実施形態では、細胞を、血清濃度が0%である(すなわち、血清が存在しない)条件下で成長させることができる。いくつかの実施形態では、細胞を、血清濃度を時間経過とともに段階的な様式で低下させる条件下で成長させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、細胞を、血清濃度が約2%から約11%の間(例えば、約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、または11%)であり、その後に、1つまたは複数の工程で、約0%から約5%の間(例えば、約0%、0.5%、1%、1.5%、2%、3%、4%、または5%)の血清濃度に低下させる条件下で成長させることができる。
【0083】
微小小胞の調製
本発明を実施するために、当技術分野で公知の微小小胞を単離または富化する種々の方法を用いることができる。微小小胞と併せて本明細書で使用される場合、「単離(isolation)」または「単離すること(isolating)」という用語は、「富化(enrichment)」または「富化すること(enriching)」という用語と互換的に使用され、試料中の微小小胞の割合を、得られた生体試料中の微小小胞の割合と比較して増加を結果としてもたらす1つまたは複数のプロセスの工程を指す。したがって、微小小胞を均質に精製すること、少なくとも90%(非微小小胞粒子物質に対して)、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、または少なくとも20%(またはさらに低く)まで精製することができる。例えば、微小小胞の物理特性を利用して微小小胞を培地または他の供給源材料から分離することができる。例えば、微小小胞は、電荷(例えば、電気泳動による分離)、サイズ(例えば、濾過、分子ふるいなど)、密度(例えば、定型遠心分離または勾配遠心分離)、スベトベリ定数(Svedberg constant)(例えば、外力を用いた沈降または外力を用いない沈降など)に基づいて分離することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、微小小胞を、遠心分離(例えば、超遠心分離)によって単離または精製する。所望の割合の単離または精製された微小小胞を得るために、種々の遠心分離条件(例えば、スピード、遠心力、遠心分離時間など)を用いることができることが理解される。例えば、いくつかの実施形態では、試料を、より大きな微小小胞(例えば、およそ1000nm以上)をペレット化するために十分であるかなり低い遠心力(例えば、およそ16,000×g)で遠心分離することができる。いくつかの実施形態では、試料(例えば、最初の低スピードの回転から生じた上清)を、より小さなサイズ(例えば、1000nm未満)の微小小胞をペレット化するために十分である、より高い遠心力(例えば、およそ120,000×g)で遠心分離することができる。いくつかの実施形態では、この方法を用いて調製した微小小胞調製物は、実質的に小さな粒子、例えば、サイズが約10nm〜1000nm(例えば、約50〜1000nm、75〜1000nm、100〜1000nm、10〜750nm、50〜750nm、100〜750nm、100〜500nm)にわたる粒子を含有してよい。例示的な微小小胞の分画の概略図が図3に示されている。いくつかの実施形態では、そのような小粒子は、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および/または膜粒子とも称される。いくつかの実施形態では、そのような画分は、エキソソーム画分と称される。
【0085】
いくつかの実施形態では、微小小胞を、沈殿によって単離または精製する。所望の割合の単離または精製された微小小胞を得るために、種々の沈殿条件を用いることができることが理解される。例えば、エキソソーム沈殿のために、種々のキット、例えば、ExoQuick(商標)およびExo−Quick−TC(商標)(System Biosciences、Mountain View、Californiaから入手可能)が利用可能であり、本発明に従って用いることができる。
【0086】
その代わりにまたはそれに加えて、単離は、1つまたは複数の生物学的性質に基づいてよく、また、表面マーカーを使用してよい(例えば、沈殿、固相への可逆的な結合、FACS分離、特異的なリガンド結合性、非特異的なリガンド結合性のために、例えば、アネキシンVなど)。さらに別の意図されている方法では、微小小胞を、PEG誘導性融合および/または超音波融合を含めた化学的方法および/または物理的方法を用いて融合することもできる。
【0087】
いくつかの実施形態では、微小小胞は、微小小胞産生細胞の培養物由来の馴化培地から得られる。
【0088】
合成微小小胞
いくつかの実施形態では、本発明に適した微小小胞は、合成により生成することができる。合成微小小胞は、一般には、ドナー細胞から得た1種または複数種の膜構成成分を含む。いくつかの実施形態では、合成微小小胞は、本明細書に記載の少なくとも1種のマイクロRNAを含む。例えば、合成微小小胞は、ドナー細胞を崩壊させ(例えば、界面活性剤、音波処理、せん断力などによって)、粗製の調製物または少なくとも部分的に富化された膜画分を使用して1つまたは複数の微小小胞を再構成することによって調製することができる。いくつかの実施形態では、微小小胞に外因性のマイクロRNAを付加することができる。
【0089】
II.マイクロRNA
いくつかの実施形態では、微小小胞は、1種または複数種の特異的なマイクロRNAを含む。本明細書で使用される場合、微小小胞に特異的なマイクロRNAは、微小小胞にのみ存在し、細胞には存在しないマイクロRNAおよび微小小胞において細胞と比較して実質的に富化されたマイクロRNAを包含する。微小小胞に特異的なマイクロRNAは、微小小胞から単離もしくは精製されたマイクロRNAまたは組換え技法または化学的技法を用いて合成されたマイクロRNAを包含する。例えば、マイクロRNA分子は、関連する分子をコードするDNA配列のin vitroにおける転写によって生成することができる。そのようなDNA配列は、T7、T3、またはSP6などの適切なRNAポリメラーゼプロモーターを伴う多種多様なベクターに組み入れることができる。本明細書で使用される場合、「マイクロRNA(miRNA)」という用語は、一般には標的メッセンジャーRNA転写物(mRNA)の3’非翻訳領域(3’UTR)にある相補配列に結合し、通常遺伝子サイレンシングをもたらす転写後調節因子を指す。一般には、miRNAは短いリボ核酸(RNA)分子である。例えば、マイクロRNAは、およそ18〜25ヌクレオチド長(例えば、およそ18、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチド長)であってよい。
【0090】
微小小胞に特異的なマイクロRNAを個別にまたは組み合わせて使用して、他の機能の中でも、組織または細胞の成長、リモデリング、再構築、分化および/または分化転換を誘導または刺激することができることが意図される。したがって、本発明は、とりわけ、微小小胞に特異的なマイクロRNAまたは組織または細胞の成長、リモデリング、再構築、分化および/または分化転換を誘導または刺激することができる任意のマイクロRNAを同定する方法を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明による発明の方法は、微小小胞枯渇培地で成長させた細胞を供給する工程、培地にmiRNAを添加する工程、およびmiRNAを添加したことにより、対照と比較して細胞増殖速度が上昇したかどうかを決定し、それにより、miRNAにより細胞の成長および/または再生が誘導されたかどうかを同定する工程のうちの1つまたは複数を含んでよい。いくつかの実施形態では、倍加時間(例えば、細胞培養容器内の細胞集団が倍加するのにかかる時間)を細胞増殖速度の指標として使用する。
【0092】
細胞増殖アッセイが当技術分野で公知であり、種々のそのようなアッセイの任意のものを使用して、細胞増殖速度を決定することができる。例えば、細胞数(例えば、培地の体積当たりの;または細胞培養容器全体についてのなど)を、当技術分野で公知の標準の細胞計数技法を用いて計数することができる。いくつかのそのような細胞計数方法では、検出を容易にするために細胞を色素で標識する。細胞増殖を評価するいくつかの方法では、細胞を既知体積の懸濁液とし、細胞懸濁液の少なくとも一定分量の密度(例えば、光学濃度)を標準の分光測定技法を用いて測定する。
【0093】
いくつかの細胞増殖アッセイでは、DNA合成を測定する。例えば、標識されたヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体(例えば、BrdU(ブロモデオキシウリジン)、トリチウムで標識したチミジンなどの組み込みを細胞増殖アッセイに用いることができる。いくつかの細胞増殖アッセイでは、代謝酵素による基質の変換を測定する。例えば、「MTT」アッセイでは、細胞ミトコンドリアデヒドロゲナーゼによる、テトラゾリウム塩WST−1のホルマザンへの切断を測定する。
【0094】
いくつかの実施形態では、細胞の生存能力も測定し、生存細胞のみが計数されるように考慮に入れる。例えば、トリパンブルー色素を排除する能力を膜の完全性、したがって細胞の生存能力のしるしとみなし、細胞計数方法は、一般には、トリパンブルーを使用することを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明によるマイクロRNAを同定するための発明の方法は、集密になるまで成長させた細胞に創傷領域を作製する工程、細胞をmiRNAで処理する工程、および処理した細胞の創傷領域にわたる再成長の速度を対照と比較して決定し、それにより、miRNAにより細胞の成長および/または再生が誘導されたかどうかを同定する工程のうちの1つまたは複数を包含し得る。
【0096】
集密の細胞培養物における創傷領域にわたる再成長は、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。いくつかの実施形態では、再成長を定量的に測定する。例えば、再成長は、例えば、XCELLIGENCE(商標)System(Roche Applied Science)を用いて定量的に測定することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、ハイスループットな様式で、例えば、並行して試験されている多くのmiRNAを用いて方法を実施する。マルチウェルプレート(例えば、24ウェル、48ウェル、96ウェル、324ウェルなど)により、個々のウェルで各miRNAを試験することができるので、そのような並行試験が容易になり得る。
【0098】
本発明の方法では、培養物中で成長させることができる任意の種類の細胞を使用することができる。例えば、本明細書に記載の種々のドナー細胞を用いることができる。いくつかの実施形態では、適切な細胞としては、膵臓由来パスファインダー細胞、線維芽細胞、および心筋細胞が挙げられる。
【0099】
種々の候補miRNAを、本明細書に記載の本発明の方法を用いて試験することができる。例えば、微小小胞から単離されたmiRNAを用いることができる。その代わりにまたはそれに加えて、文献または他の実験において、潜在的に興味深い(例えば、疾患に関連づけられる、分化転換に関連づけられる、治療への適用の潜在性に関連づけられるなど)ことが同定されたmiRNAを、本発明の方法において使用して、そのようなmiRNAにより細胞の成長および/または再生が誘導されるかどうかを決定することができる。いくつかの実施形態では、miRNAライブラリーを使用する。例えば、発現ライブラリーからクローニングされたmiRNAのコレクションを本発明の方法に従って使用して、細胞の成長および/または再生を誘導する1種または複数種のmiRNAを同定することができる。いくつかの実施形態では、対象の細胞型由来のmiRNAの発現ライブラリーを使用する。
【0100】
決定する工程における適切な対照としては、これらに限定されないが、処理をせず、他の点では同一の条件下で成長させる細胞(例えば、miRNAを添加しない細胞)、および/または「対照」miRNAを添加し、他の点では同一の条件下で成長させる細胞が挙げられる。使用する場合、「対照」miRNAは、一般に、細胞の成長および/または再生に対する公知の効果を有する。いくつかの実施形態では、2つ以上の対照を使用する。いくつかの実施形態では、陰性対照(細胞の成長および/または再生の誘導が予測されない対照)を使用する。いくつかの実施形態では、陽性対照(細胞の成長および/または再生の誘導が予測される対照)を使用する。いくつかの実施形態では、陽性対照と陰性対照の両方を使用する。
【0101】
表1は、微小小胞に特異的に存在する例示的なマイクロRNAを示す。いくつかの実施形態では、miRNA−122、miRNA−127、miRNA−133b、miRNA−323、miRNA−433、miRNA−451、miRNA−466h、miRNA−467c、miRNA−467e、miRNA−468、miRNA−491、miRNA−495、miRNA−546、miRNA−666、miRNA−680、およびmiRNA−346(配列番号1〜29)が微小小胞内に比較的高い濃度で存在することが見いだされた。本発明に従って同定された追加的なマイクロRNAが表3〜13に列挙されている。表1には、対象のmiRNAそれぞれについての例示的なmiRNA配列が列挙されている;これらに限定されないが、Homo sapiens、Rattus norvegicus、Mus musculus、Danio rerio、およびGallus gallusを含めた他の種における対応するmiRNA配列が公的に入手可能である(例えば、http://diana.cslab.ece.ntua.gr/mirgen/を参照されたい)。表1および表7〜13において認めることができるように、いくつかのmiRNA配列は種間にわたってよく保存されており、また、同じ種においてさえ、いくつかのmiRNA配列バリアントが存在する。表7〜13には、本発明に従って使用することができる例示的なマイクロRNAが示されている。
【0102】
【表1-1】
【0103】
【表1-2】
【0104】
【表1-3】
【0105】
【表1-4】
【0106】
【表1-5】
【0107】
【表1-6】
本発明に従って同定された1種または複数種のマイクロRNA(例えば、配列番号1〜72および表7〜13に列挙されているものを使用して、組織または細胞の成長、リモデリング、再構築、分化および/または分化転換を誘導または刺激すること、および/または関連する疾患、障害または状態を処置することができることが意図される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のマイクロRNAの機能的バリアントを用いることができる。例えば、適切なマイクロRNAは、表1および表7〜13において識別されるマイクロRNAのうちのいずれか1つと少なくとも70%(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)同一の配列を有するマイクロRNAを含んでよい。いくつかの実施形態では、適切なマイクロRNAは、微小小胞内に比較的高い濃度で存在するマイクロRNAの機能的バリアント体である。したがって、いくつかの実施形態では、適切なマイクロRNAは、配列番号1〜16のうちのいずれか1つと少なくとも70%(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)同一の配列を有するマイクロRNAを含んでよい。
【0108】
「パーセント(%)核酸配列同一性」は、本明細書において同定されるマイクロRNA配列に関しては、配列をアラインメントし、必要であれば最大のパーセント配列同一性を実現するためにギャップを導入した後の、参照配列のヌクレオチドと同一である候補配列におけるヌクレオチドの百分率と定義される。パーセント核酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野の技術の範囲内である種々のやり方で、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して実現することができる。当業者は、比較する配列の全長にわたって最大のアラインメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含めた、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。WU−BLAST−2ソフトウェアを使用してアミノ酸配列の同一性を決定することが好ましい(Altschulら、Methods in Enzymology、266巻、460〜480頁(1996年);http://blast.wustl/edu/blast/README.html)。WU−BLAST−2では、いくつかの検索パラメータを使用し、その大半を初期状態の値に設定する。調整可能なパラメータは、以下の値に設定する:オーバーラップスパン(overlap span)=1、オーバーラップフラクション(overlap fraction)=0.125、ワールド閾値(world threshold)(T)=11。HSPスコア(S)およびHSP S2パラメータは動的な値であり、特定の配列の組成に応じてプログラム自体によって確立されるが、最小値は調整することができ、上に示されている通りに設定する。
【0109】
適切なマイクロRNAは、完全に天然のRNAヌクレオチドで構成されてよい、または、その代わりに、1種または複数種のヌクレオチド類似体および/または改変を含んでよい。マイクロRNA構造は、例えば、消化、例えばエキソヌクレアーゼによる消化を低下させるために1つまたは複数の遊離鎖の末端にヌクレオチド類似体を含めることによって安定化することができる。適切なマイクロRNAは、改変されたリボヌクレオチド、すなわち、改変されていないヌクレオチド塩基、糖および/またはホスフェート(またはホスホジエステル(phospodiester)連結)の化学構造に改変を含有するリボヌクレオチドを含有してよい。当技術分野で公知の通り、「改変されていないリボヌクレオチド」は、ベータ−D−リボ−フラノースの1’炭素につながったアデニン塩基、シトシン塩基、グアニン塩基、およびウラシル塩基のうちの1つを有する。改変されたマイクロRNA分子は、改変された骨格または非天然のヌクレオシド間連結、例えば、改変された亜リン酸(phosphorous)を含有する骨格および非亜リン酸骨格、例えば、モルホリノ骨格;シロキサン骨格、スルフィド骨格、スルホキシド骨格、スルホン骨格、スルホネート骨格、スルホンアミド骨格、およびスルファメート酸骨格;ホルムアセチル(formacetyl)骨格およびチオホルムアセチル(thioformacetyl)骨格;アルケン含有骨格;メチレンイミノ骨格およびメチレンヒドラジノ骨格;アミド骨格なども含有してよい。
【0110】
III.治療への適用
いくつかの実施形態では、本発明は、組織または細胞の成長、リモデリング、再構築、分化および/または分化転換を誘導または刺激するため、または関連する疾患、障害または状態を処置するための、微小小胞および/またはマイクロRNAの使用方法を提供する。特定の理論または仮説に制約されることを望むものではないが、微小小胞は、例えば、細胞移動性の増大、組織のリモデリングおよび再プログラミング、成長、新脈管形成、細胞接着および細胞シグナル伝達などに関する遺伝子の発現を調節するマイクロRNAおよび/または他の構成成分(例えば、膜に結合するポリペプチド、転写因子など)をもたらすことによって標的の組織または細胞内の変化を誘導してそれらを活性な修復モードに転換し得ることが意図される。さらに、微小小胞は、一般には、新しい組織または細胞の一部ではないことが意図される。したがって、本発明によると、種々の組織、細胞型または生物体由来の微小小胞またはマイクロRNAを用いることができる。いくつかの実施形態では、免疫反応を誘導することなく微小小胞またはマイクロRNAを用いることができる。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤を用いずに微小小胞またはマイクロRNAを用いることができる。
【0111】
したがって、適切な微小小胞またはマイクロRNAは、自己細胞(すなわち、患者と同じ個体由来の細胞)または非自己細胞(すなわち、患者とは異なる個体由来の細胞)またはその両方に由来してよい。いくつかの実施形態では、微小小胞は疾患組織と同じ組織に由来する。例えば、腎疾患を処置する方法では、微小小胞は、処置されている個体と同じ個体または異なる個体由来の健康な腎臓細胞から取得することができる。いくつかの実施形態では、微小小胞は、疾患組織とは異なる組織に由来する。
【0112】
いくつかの実施形態では、処置方法は、細胞(「レシピエント細胞」)の、望ましい細胞型への分化または分化転換を誘導するためにin vitroまたはex vivoで実施する1つまたは複数の工程を含む。次いで、そのようなレシピエント細胞を患者に移入することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、ドナー細胞(すなわち、微小小胞を産生する細胞)とレシピエント細胞(すなわち、微小小胞および/またはそのような微小小胞の内容物を受ける細胞)をex vivoで共培養し、次いでレシピエント細胞を患者に移入する工程を含む。いくつかの実施形態では、レシピエント細胞を、レシピエント細胞を得た個体と同じ個体に戻す。例えば、パスファインダー細胞と患者から得た骨髄細胞とをex vivoでしばらくの間共培養して微小小胞および/またはそれらの内容物を移行させ、次いで、骨髄細胞をその個体に戻すことができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、レシピエント細胞を、ドナー細胞と共培養した後、患者に移入する前に、特定のマイクロRNAなどの特異的なバイオマーカーの発現について試験する。
【0115】
ある特定の実施形態では、処置方法は、処置を必要とする患者に、治療有効量の、本明細書に記載の1種または複数種のマイクロRNAを投与する工程を含む。miRNAは、微小小胞またはその誘導体の非存在下または存在下で使用することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明による方法および組成物(例えば、微小小胞および/またはマイクロRNA)を、これらに限定されないが、中枢神経系(CNS)、末梢神経系、心臓血管系、呼吸器系、胃腸管および関連する腺、外皮系、筋骨格系、および体の他の系を含めたさまざまな組織における疾患、障害、または状態を処置するために用いることができる。いくつかの実施形態では、本発明による方法および組成物(例えば、微小小胞および/またはマイクロRNA)を、加齢性の変性を処置するために用いることができる。いくつかの実施形態では、本発明による方法および組成物(例えば、微小小胞および/またはマイクロRNA)を、炎症を処置するために用いることができる。いくつかの実施形態では、本発明による微小小胞および/またはマイクロRNAは、美容的使用のため、または美容外科手技関連の状態または障害を処置するために適している可能性がある。
【0117】
炎症
いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物を、炎症を処置または改善するために用いる。本明細書で使用される場合、「炎症」という用語は、多くの障害において起こる炎症性の状態を包含し、それらとしては、これらに限定されないが、全身性炎症反応(Systemic Inflammatory Response)(SIRS);アルツハイマー病(ならびに、慢性神経炎症、グリアの活性化;小膠細胞の増加;老人斑の形成;および療法に対する応答を含めた関連する状態および症状);筋萎縮性側索硬化症(ALS)、関節炎(ならびに、これらに限定されないが、急性の関節の炎症、抗原誘導関節炎、慢性リンパ球性甲状腺炎に関連する関節炎、コラーゲン誘発関節炎、若年性関節炎;関節リウマチ、変形性関節症、予後関節炎および連鎖球菌誘発関節炎、脊椎関節症、痛風性関節炎を含めた関連する状態および症状)、喘息(ならびに、気管支喘息;慢性閉塞性気道疾患;慢性閉塞性肺疾患、若年性喘息および職業性喘息を含めた関連する状態および症状);心臓血管疾患(ならびに、アテローム性動脈硬化症;自己免疫性心筋炎、慢性心臓低酸素症、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋症ならびに大動脈平滑筋細胞の活性化;心臓細胞アポトーシス;および心臓細胞機能の免疫調節を含めた心臓細胞機能障害;糖尿病、ならびに自己免疫性糖尿病、インスリン依存性(1型)糖尿病、糖尿病性歯周炎、糖尿病性網膜症、および糖尿病性腎症を含めた関連する状態および症状を含めた関連する状態および症状);胃腸炎(ならびに、セリアック病、関連する骨減少症、慢性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患および潰瘍性大腸炎を含めた関連する状態および症状);胃潰瘍;肝臓の炎症、例えば、ウイルス性肝炎および他の種類の肝炎、コレステロール胆石および肝線維症、HIV感染症(ならびに、変性反応、神経変性反応、およびHIV関連ホジキン病を含めた関連する状態および症状)、川崎症候群(ならびに、皮膚粘膜リンパ節症候群、頸リンパ節症、冠状動脈病変、浮腫、発熱、白血球の増加、軽度の貧血、皮膚剥離、皮疹、結膜発赤、血小板増加症を含めた関連する疾患および状態;多発性硬化症、腎症(ならびに、糖尿病性腎症、末期腎疾患、急性糸球体腎炎および慢性糸球体腎炎、急性間質性腎炎および慢性間質性腎炎、ループス腎炎、グッドパスチャー症候群、血液透析生存および腎虚血性再灌流傷害を含めた関連する疾患および状態)、神経変性疾患(ならびに、急性神経変性、老化および神経変性疾患におけるIL−1の誘導、IL−1に誘導される視床下部神経細胞の可塑性および慢性ストレス応答性亢進を含めた関連する疾患および状態)、眼障害(ならびに、糖尿病性網膜症、グレーブス眼症、およびぶどう膜炎を含めた関連する疾患および状態、骨粗鬆症(ならびに、歯槽骨、大腿骨、橈骨、椎骨または手根骨の骨量減少または骨折の発生、閉経後の骨量減少、骨量、骨折の発生または骨量減少速度を含めた関連する疾患および状態)、中耳炎(成人または小児の)、膵炎または膵臓腺房炎、歯周病(ならびに、成人性、早発性および糖尿病性を含めた関連する疾患および状態);慢性肺疾患、慢性副鼻腔炎、ヒアリン膜症、低酸素症およびSIDSにおける肺疾患を含めた肺疾患;移植冠血管または他の移植血管の再狭窄;関節リウマチ、リウマチ性アショフ体、リウマチ性疾患およびリウマチ性心筋炎を含めたリウマチ;慢性リンパ球性甲状腺炎を含めた甲状腺炎;慢性前立腺炎、慢性骨盤痛症候群および尿路結石症を含めた尿路感染症が挙げられる。自己免疫疾患を含めた免疫性障害、例えば、円形脱毛症、自己免疫性心筋炎、グレーブス病、グレーブス眼症、硬化性苔癬、多発性硬化症、乾癬、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、甲状腺疾患(例えば、甲状腺腫およびリンパ性甲状腺腫(橋本甲状腺炎、リンパ節様甲状腺腫)、睡眠障害および慢性疲労症候群および肥満(非糖尿病性の肥満または糖尿病に関連する肥満)。細菌、ウイルス(例えば、サイトメガロウイルス、脳炎、エプスタインバーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス)または原生動物(例えば、Plasmodium falciparum、トリパソノーム)によって引き起こされるリーシュマニア症、ハンセン病、ライム病、ライム心臓炎、マラリア、脳マラリア、髄膜炎、マラリアに関連する尿細管間質性腎炎)などの感染症に対する抵抗性。脳外傷(脳卒中および虚血、脳炎、脳症、てんかん、周産期脳傷害、持続性の熱性痙攣、SIDSおよびくも膜下出血を含む)、低出生体重(例えば、脳性麻痺)、肺傷害(急性出血性肺傷害、グッドパスチャー症候群、急性虚血性再灌流)、職業性汚染物質および環境汚染物質によって引き起こされる心筋機能障害(例えば、有毒油症候群、珪肺症に対する感受性)、放射線外傷、および創傷治癒反応の効率(例えば、熱傷または熱傷、慢性創傷、手術創および脊髄傷害)を含めた外傷に対する応答。稔性/生殖能、妊娠の可能性、早産の発生率、早産低出生体重を含めた胎児合併症および新生児合併症、脳性麻痺、敗血症、甲状腺機能低下症、酸素依存、頭蓋異常、早期月経閉止を含めたホルモンによる調節。移植に対する被験体の反応(拒絶または受容)、急性相反応(例えば、熱性反応)、全身性炎症反応(general inflammatory response)、急性呼吸窮迫反応、急性全身性炎症反応(systemic inflammatory response)、創傷治癒、接着、免疫性炎症反応、神経内分泌反応、発熱発生および抵抗性、急性相反応、ストレス応答、疾患感受性、反復運動ストレス、テニス肘、および疼痛管理および反応が挙げられる。
【0118】
特定の実施形態では、本発明の方法および組成物を、免疫不全性の疾患、障害、または状態に関連する炎症を処置または改善するために用いることができる。免疫不全を特徴とし得る疾患、障害、および状態の非限定的な例としては、低ガンマグロブリン血症(hypgammaglobulinemia)、無ガンマグロブリン血症、毛細管拡張性運動失調(ataxia telengiectasia)、重度の複合免疫不全症(SCID)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することによって引き起こされるものなどの後天性免疫不全症候群(AIDS)、チェディアック東症候群、複合免疫不全症、補体欠損症、ディジョージ症候群、ヨブ症候群、白血球接着欠損(leukocyte adhesion defect)、汎低ガンマグロブリン血症(例えば、ブルトン病、先天性無ガンマグロブリン血症、選択的IgA欠損症、ウィスコットアルドリッチ症候群が挙げられる。いくつかの実施形態では、パスファインダー細胞および/またはパスファインダー細胞から分化した細胞により、1種または複数種の血液細胞型、すなわち、免疫系の細胞の再構成を刺激することによって免疫不全を処置または改善する。本明細書に開示されるパスファインダー細胞に結合するマイクロRNAは、免疫不全を処置または改善することにおいて同様に有用であることが意図される。
【0119】
ある特定の実施形態では、本発明の方法および組成物を、自己免疫性の疾患、障害または状態を処置または改善するために用いる。一般に、自己免疫は、生物体がそれ自身の構成成分の一部を「自己」と認識することの不全であり、それにより生物体の自身の組織および細胞に対する免疫応答がもたらされる。例示的な自己免疫疾患および/または疑わしい自己免疫疾患としては、これらに限定されないが、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、全身性脱毛症、強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitisis)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性卵巣炎、バロー病、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、シャーガス病、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、クローン病、瘢痕性類天疱瘡(cicatrical perphigoid)、セリアックスプルー(Coeliac sprue)−疱疹状皮膚炎、寒冷凝集素症、CREST症候群、デゴス病、糖尿病、円板状ループス、自律神経障害、子宮内膜症、本態性混合クリオグロブリン血症、線維筋痛症−線維筋炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群(GBS)、橋本甲状腺炎、化膿性汗腺炎、特発性かつ/または急性の血小板減少性紫斑病、特発性肺線維症、IgAニューロパチー、間質性膀胱炎(Interstitial cytisis)、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、紅斑性狼瘡、ライム病、メニエール病、混合結合組織病(MCTD)、多発性硬化症、重症筋無力症、神経ミオトニー、眼球クローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、オード甲状腺炎(Ord’s thyroiditis)、変形性関節症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性関節炎、多発性軟骨炎、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、結節性多発性動脈炎、多腺症候群、リウマチ性多発筋痛、原発性無ガンマグロブリン血症、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても公知である)、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、外陰部痛(vulvodynia)(「外陰部前庭炎」)、およびヴェグナー肉芽腫症が挙げられる。
【0120】
移植ストレス
ある特定の実施形態では、本発明の方法および組成物を、移植ストレスを緩和するために用いる。組織/臓器移植により、急性の組織傷害が引き起こされる恐れがあり、本明細書に開示されている微小小胞を臓器/組織移植レシピエントに投与して、組織の修復、再生、再構成、リモデリングを刺激し、かつ/または免疫寛容を誘導し、それにより、移植ストレスを緩和することができることが意図される。本発明を用いて、これらに限定されないが、心臓移植、腎臓移植、肝臓移植、肺移植、膵臓移植、腸移植、胸腺移植、および皮膚移植を含めた任意の臓器移植を容易にすることができることが意図される。
【0121】
ある特定の実施形態では、本発明の方法および組成物を、移植片拒絶に関連する疾患、障害、または状態を処置または改善するために用いる。一般に、移植片拒絶は、レシピエントの機能的な免疫細胞がドナーの臓器または組織を外来実体と認識し、ドナーの臓器または組織に対する免疫学的攻撃を開始することに起因し得る。いくつかの場合には、移植片拒絶は、ドナーの臓器または組織をレシピエントに移植した後の急性期に生じる。いくつかの場合には、移植片拒絶は、ドナーの臓器または組織をレシピエントに移植した後の慢性期に生じる。本発明は、急性移植片拒絶および/または慢性移植片拒絶を処置するための方法および組成物を包含することが理解されるべきである。
【0122】
ある特定の実施形態では、本発明の方法および組成物を、移植片対宿主の疾患、障害、または状態を処置または改善するために用いる。一般に、移植片対宿主病(GVHD)は、ドナーから移植された組織または臓器の機能的な免疫細胞がレシピエントを外来実体と認識し、レシピエントの細胞および/または組織に対する免疫学的攻撃を開始することに起因し得る。いくつかの場合には、GVHDは、ドナーの臓器または組織をレシピエントに移植した後の急性期に生じる。いくつかの場合には、GVHDは、ドナーの臓器または組織をレシピエントに移植した後の慢性期に生じる。本発明は、急性GVHDおよび/または慢性GVHDを処置するための方法および組成物を包含することが理解されるべきである。
【0123】
免疫寛容
パスファインダー細胞またはそれらの細胞外セクレトーム(例えば、微小小胞)は、免疫寛容を誘導し、したがって、炎症を処置すること、および移植に関連するストレスを抑制、阻害または軽減することにおいて特に有用であることが意図される。特定の理論に制約されることを望まず、パスファインダー細胞またはそれらの細胞外セクレトーム(例えば、微小小胞)は、IL−2応答の増大を誘導し、その結果、調節性T細胞の増大(例えば、T調節性細胞のレベルおよび/もしくは活性の上昇)、細胞傷害性T細胞および/もしくはヘルパーT細胞のレベルおよび/もしくは活性の低下、ならびに/またはT細胞リンパ球応答もしくは非T細胞リンパ球応答の抑制を誘導することによって免疫寛容を誘導することが意図される。いくつかの実施形態では、パスファインダー細胞またはそれらの細胞外セクレトーム(例えば、微小小胞)は、炎症促進性サイトカイン応答またはケモカイン応答および/または抗脈管形成性のサイトカイン応答またはケモカイン応答を抑制する。炎症促進性のサイトカインまたはケモカインおよび/または抗脈管形成性のサイトカインまたはケモカインは当技術分野で周知である。例示的な炎症促進性のサイトカインまたはケモカインおよび/または抗脈管形成性のサイトカインまたはケモカインとしては、これらに限定されないが、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−12、IL−13、IL−17、GMCSF、TGF−β、TNF−α、IFN−γ、MCAF、およびMIP1が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞またはそれらの細胞外セクレトーム(例えば、微小小胞)により、抗炎症性のサイトカイン応答またはケモカイン応答および/または脈管形成促進性のサイトカイン応答またはケモカイン応答が増大する。抗炎症性のサイトカインまたはケモカインおよび/または脈管形成促進性のサイトカインまたはケモカインは、当技術分野で公知である。例示的な抗炎症性のサイトカインまたはケモカインおよび/または脈管形成促進性のサイトカインまたはケモカインとしては、これらに限定されないが、IL−1β、GSCF、およびIL−8が挙げられる。
【0124】
したがって、本発明によるパスファインダー細胞またはそれらの細胞外セクレトーム(例えば、微小小胞)を投与することにより被験体における重度の有害作用はもたらされない。本明細書で使用される場合、重度の有害作用としては、これらに限定されないが、重大な免疫応答、毒性、または死亡が挙げられる。本明細書で使用される場合、「重大な免疫応答」という用語は、重度または深刻な免疫応答、例えば、適応T細胞免疫応答を指す。
【0125】
したがって、多くの実施形態では、本発明による発明の方法は、共同に作用する免疫抑制剤療法(すなわち、前処置/前コンディショニングとして、または該方法と並行して用いる任意の免疫抑制剤療法)を必要としない。いくつかの実施形態では、本発明による発明の方法は、処置されている被験体における免疫寛容の誘導を必要としない。いくつかの実施形態では、本発明による発明の方法は、T細胞免疫抑制薬を使用する被験体の前処置または前コンディショニングを必要としない。
【0126】
しかし、いくつかの実施形態では、本発明によるパスファインダー細胞またはそれらの細胞外セクレトーム(例えば、微小小胞)を投与することにより、これらの作用物質に対する免疫応答が開始され得る。したがって、いくつかの実施形態では、細胞またはそれらの細胞外セクレトーム(例えば、微小小胞)を受けている被験体に療法に対する耐性を与えることが有用であり得る。当技術分野で公知のさまざまな方法を用いて免疫寛容を誘導することができる。当業者に公知の任意の免疫抑制剤を本発明の併用療法と一緒に使用することができる。そのような免疫抑制剤としては、これらに限らないが、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、CTLA4−Ig、およびエタネルセプトなどの抗TNF薬が挙げられる(例えば、Moder、2000年、Ann. Allergy Asthma Immunol. 84巻、280〜284頁;Nevins、2000年、Curr. Opin. Pediatr. 12巻、146〜150頁;Kurlbergら、2000年、Scand. J. Immunol. 51巻、224〜230頁;Ideguchiら、2000年、Neuroscience 95巻、217〜226頁;Potterら、1999年、Ann. N.Y. Acad. Sci. 875巻、159〜174頁;Slavikら、1999年、Immunol. Res. 19巻、1〜24頁;Gazievら、1999年、Bone Marrow Transplant. 25巻、689〜696頁;Henry、1999年、Clin. Transplant. 13巻、209〜220頁;Gummertら、1999年、J. Am. Soc. Nephrol. 10巻、1366〜1380頁;Qiら、2000年、Transplantation69巻、1275〜1283頁を参照されたい)。移植患者において有効であることが実証されている抗IL2受容体(α−サブユニット)抗体であるダクリズマブ(例えば、Zenapax.(商標))は、免疫抑制剤としても使用することができる(例えば、Wisemanら、1999年、Drugs 58巻、1029〜1042頁;Beniaminovitzら、2000年、N. Engl J. Med. 342巻、613〜619頁;Ponticelliら、1999年、Drugs R. D. 1巻、55〜60頁;Berardら、1999年、Pharmacotherapy 19巻、1127〜1137頁;Eckhoffら、2000年、Transplantation 69巻、1867〜1872頁;Ekbergら、2000年、Transpl. Int. 13巻、151〜159頁を参照されたい)。追加的な免疫抑制剤としては、これらに限らないが、抗CD2(Brancoら、1999年、Transplantation 68巻、1588〜1596頁;Przepiorkaら、1998年、Blood 92巻、4066〜4071頁)、抗CD4(Marinova−Mutafchievaら、2000年、Arthritis Rheum. 43巻、638〜644頁;Fishwildら、1999年、Clin. Immunol. 92巻、138〜152頁)、および抗CD40リガンド(Hongら、2000年、Semin. Nephrol. 20巻、108〜125頁;Chirmuleら、2000年、J. Virol. 74巻、3345〜3352頁;Itoら、2000年、J. Immunol. 164巻、1230〜1235頁)が挙げられる。
【0127】
さらに、本発明による方法および組成物(例えば、パスファインダー細胞、パスファインダー細胞から分化した細胞、微小小胞および/またはマイクロRNA)を、これらに限定されないが、中枢神経系(CNS)、末梢神経系、心臓血管系、呼吸器系、胃腸管および関連する腺、外皮系、筋骨格系、および体の他の系を含めたさまざまな組織における疾患、障害、または状態を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明による方法および組成物を、加齢性の変性ならびに早老症を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明による方法および組成物を、炎症を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明による細胞および/またはマイクロRNAは、美容的使用のため、または美容外科手技関連の状態または障害を処置するために適し得る。
【0128】
中枢神経系(CNS)
本発明の方法および組成物によって処置することができるCNSに関連する疾患、障害または状態の例としては、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、CNSの変性疾患、認知症性疾病(dementive illness)、例えば、アルツハイマー病など、CNSの加齢性機能障害、パーキンソン病、脳血管障害、てんかん、一過性虚血性障害(temporary ischaemic accident)、気分障害、精神病性疾病(psychotic illness)、特定の葉の機能障害、圧迫関連傷害(pressure related injury)、認知の機能障害または欠陥、聴覚消失、失明、嗅覚脱失、特殊感覚の疾患、運動障害、感覚消失、頭部損傷およびCNSに対する外傷が挙げられる。本発明の方法および生成物は、脳機能を増強するため、または機能的レベルで欠損を改善するため、またはCNSの術後修復を容易にするためにも用いることができる。
【0129】
心臓血管系
本発明の方法および組成物によって処置することができる心臓血管系の疾患、障害または状態の例としては、不整脈、心筋梗塞および他の心臓発作、心膜炎、うっ血性心疾患、弁に関連する病変、心筋、心内膜および心膜の機能障害または変性、加齢性の心血管障害、機能障害、変性または疾患、硬化症および弁フラップの肥厚、心筋の線維症、心予備力の減退、心臓または循環系の先天性欠損、心臓または循環系の発育欠陥、低酸素損傷または壊死性の損傷の修復、血管損傷および心臓血管の疾患または機能障害(例えば、狭心症、大動脈解離(dissected aorta)、血栓性損傷、動脈瘤、アテローム性動脈硬化症、塞栓損傷および血流、圧力または障害に関連する他の問題)が挙げられる。本発明の方法および組成物は、心血管系の機能または健康を増強するため、および組織の血管を再生するためにも用いることができる。さらに、本発明の方法および組成物は、心臓または血管に対する外傷性の損傷を修復、改変、増強または再生するため、および臓器全体またはその部分の移植/埋め込みを増強する技法として用いることができる。この後者の実施形態の例としては、心臓移植、弁置換術、人工デバイスの埋め込みおよび新規の外科的技法の開発が挙げられる。
【0130】
呼吸器系
本発明の方法および組成物によって処置することができる呼吸器系の疾患、障害または状態の例としては、鼻および副鼻腔、上咽頭、口腔咽頭部、咽頭喉頭部、喉頭、声帯靱帯、声帯、室ヒダ、声門、喉頭蓋、気管、粘膜線毛粘膜(mucocilliary mucosa)、気管筋、主気管支、葉気管支、区気管支、終末細気管支、呼吸領域構造および複数の膜の損傷、病変、老化および外傷が挙げられる。そのような損傷の例としては、閉塞性の肺疾患、拘束性障害、肺気腫、慢性気管支炎、肺の感染症、喘息、結核、遺伝的障害(例えば、嚢胞性線維症)、ガス交換の問題、熱傷、気圧外傷および呼吸器系への血液供給に影響を及ぼす障害が挙げられる。本発明の方法および医薬品は、損傷後の呼吸器系を修復、改変、増強または再生するためにも用いることができる。さらに、本発明の方法および組成物は、呼吸器の構造もしくは臓器の全体またはそれらの部分の移植/埋め込みを増強するための技法として用いることができる。
【0131】
胃腸管および関連する腺
本発明の方法および医薬品によって処置することができる胃腸管および関連する腺の疾患、障害または状態の例としては、胃腸管および大きな副腺(肝臓および膵臓)の両方、唾液腺、口、歯、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸および肛門管および腸管の神経系の障害、損傷および加齢性の変化が挙げられる。特定の実施形態では、これらの障害、損傷および加齢性の変化としては、う食、歯周病、嚥下の問題、潰瘍、酵素的な障害(disturbance)/欠損、運動性の問題、麻痺、吸収または吸収面の機能障害、憩室症、炎症性の腸の問題、肝炎、硬変症および門脈圧亢進症が挙げられる。本発明の方法および医薬品は、損傷後の胃腸管を修復、改変、増強または再生するためにも用いることができる、または外科手術、例えば、胃の切除、回腸造瘻術および再建手術(例えば回腸肛門連結)の後のこれらのプロセスのいずれかを増強するための技法として用いることができる。この後者の実施形態の例としては、口の特異的な解剖学的構造、例えば、唇、口腔前庭、固有口腔、赤唇縁(red margin)、唇小帯、硬口蓋、口蓋骨、軟口蓋、垂、舌、舌の内在筋および舌の外来筋が関与する再建手術が挙げられる。
【0132】
外皮系
本発明の方法および医薬品によって処置することができる外皮系の疾患、障害または状態の例としては、皮膚および外皮系の障害、損傷および加齢性の変化、例えば、厚さまたは機能の加齢性の減退、汗腺および脂腺の障害、立毛機能障害(piloerectile dysfunction)、濾胞の問題、脱毛、表皮疾患、真皮または皮下組織の疾患、熱傷、潰瘍、びらんおよび感染症が挙げられる。本発明の方法および生成物は、例えば、形成性再建、美容修復、刺青除去、創傷治癒、しわの調節において皮膚の構造または機能を増強、再生または修復するため、および線条、脂漏(seborrhoea)、酒さ、火炎状母斑、皮膚色の処置において、および皮膚への血液供給の改善にも用いることができる。さらに、本発明の方法および生成物は、植皮、再建手術、美容外科手技、創傷治癒および美容的外観を増強するために用いることができる。
【0133】
筋骨格系
本発明の方法および生成物によって処置することができる筋骨格系の疾患、障害または状態の例としては、筋骨格系の疾患、損傷および加齢性の変化が挙げられる。いくつかの実施形態では、筋骨格系の疾患、損傷および加齢性の変化は、頭蓋(skull)、頭蓋(cranium)、顔、頭蓋に関連する骨、耳小骨、舌骨、胸骨、肋骨、椎骨、仙骨および尾骨を含めた軸骨格の構成成分におけるものであってよい。他の実施形態では、筋骨格系の疾患、損傷および加齢性の変化は、鎖骨、肩甲骨、上腕骨、橈骨、尺骨、手根骨、中手骨、指骨(基節骨、中節骨、末節骨)、下肢帯、大腿骨、膝蓋骨、脛骨、腓骨、足根骨および中足骨を含めた体肢骨格の構成成分におけるものであってよい。本発明の方法および組成物は、骨化および骨形成に伴う問題、例えば、膜内骨化、軟骨内骨化、骨リモデリングおよび修復、骨粗鬆症、骨軟化症、くる病、パジェット病、リウマチおよび関節炎を補正するためにも用いることができる。さらに、本発明の方法および生成物は、骨格筋、弾性軟骨、線維軟骨、長骨、短骨、扁平骨および不規則形骨の疾患、損傷および加齢性の変化を処置するために用いることができる。
【0134】
体の他の系
本発明の方法および生成物により、体の他の系の疾患、障害または状態を処置することができる。例えば、本発明は、特殊感覚、内分泌系、リンパ系、泌尿器系、生殖系を含めた体の他の系の機能を増強するため、またはそれらの疾患、損傷および加齢性の変化、ならびに代謝およびエネルギー論の変更を処置するために用いることができる。
【0135】
一般的な加齢性の変性の処置
本発明の方法および組成物は、一般的な加齢性の変性を治療、改善、軽減、または補償するために用いることができる。同様に、本発明の方法および組成物は、体の若い機能を保持するために用いることができる。さらに、本発明の方法および生成物は、特定の加齢性の系機能障害、例えば、認知の欠陥、聴力損失、視覚的活動性の損失、内分泌不均衡、骨格の変化および生殖機能の損失を処置するために用いることができる。
【0136】
美容的使用
いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物を、傷害または感染の部位における瘢痕を予防または軽減するために用いることができる。例えば、微小小胞またはマイクロRNAを使用して、肝線維症および/または硬変症の処置中の肝臓の組織、ざ瘡を処置する顔面の上皮組織、および虚血性梗塞の処置中の心臓の組織を含めた、そうでなければ瘢痕ができるまたは壊死すると思われる組織を再生することができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明による方法および組成物(例えば、微小小胞および/またはマイクロRNA)は、乳房切除術後の豊胸を増強するために用いることができる。
【0138】
IV.薬学的組成物
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の種々の疾患、障害または状態を処置するための、治療有効量の微小小胞またはマイクロRNAを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、糖尿病、心筋梗塞、腎疾患、創傷治癒、瘻孔生成または再生、神経再生、乳房切除術後の豊胸、および/または美容外科手技関連の状態を処置するための、治療有効量の微小小胞またはマイクロRNAを含む薬学的組成物を提供する。
【0139】
ある特定の実施形態では、本発明は、表1および表7〜13において識別されるマイクロRNA(例えば、配列番号1〜29)のいずれかと少なくとも70%(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)同一である配列を有する1種または複数種のマイクロRNAと、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物を提供する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、政府の規制当局に認可されたキャリアまたは米国薬局方、欧州薬局方、英国薬局方、または動物、特にヒトにおいて使用するための他の一般に認識されている薬局方に列挙されているキャリアを包含する。本明細書で使用される場合、「キャリア」という用語は、治療剤(例えば、微小小胞および/またはマイクロRNA)と一緒に投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。
【0140】
提供される組成物は、少量の湿潤剤、乳化剤、および/またはpH緩衝剤も含有してよい。提供される組成物は、液剤、懸濁剤、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などを含めた種々の固体形態、液体形態、またはゲル形態のいずれかをとることもできる。適切な薬学的キャリアの非限定的な例は、E.W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。組成物は、一般に、治療有効量の微小小胞および/またはマイクロRNAを、場合によって精製された形態で、患者に適切に投与するための形態をもたらすために適量のキャリアと一緒に含有する。
【0141】
製剤は、一般には、投与形式に適するように適合させる。例えば、静脈内投与するための組成物は、滅菌された等張性の水性緩衝液の液剤として製剤化することができる。そのような組成物は、可溶化作用物質および/または、注射部位における疼痛を和らげるために局部麻酔薬、例えば、リドカイン(リグノカイン、キシロカイン、またはキシロカード(xylocard)としても公知である)を含んでもよい。
【0142】
別の例として、局所使用および/または局部使用するための組成物は、例えば、液体または半固体の水中油エマルションまたは油中水エマルションを含むローション剤またはクリーム剤および軟膏剤として製剤化することができる。そのような組成物は、保存料も含んでよい。
【0143】
眼に送達するための組成物は、例えば、水性または油性の溶液中に活性成分を含む点眼剤および滅菌形態で製造することができる眼軟膏剤として製剤化することができる。鼻に送達するための組成物は、例えば、エアロゾルまたは噴霧剤、急速に吸入するための粗粉末、または水性または油性の溶剤に活性成分(例えば、微小小胞および/またはマイクロRNA)を含む点鼻薬として製剤化することができる。頬側口腔に局部送達するための組成物は、例えば、一般に糖およびアラビアゴムまたはトラガントで形成された練剤の中に活性成分を含むロゼンジ、および不活性な練剤(例えば、ゼラチンとグリセリンの練剤または糖とアラビアゴムの練剤)の中に活性成分を含むパステル剤として製剤化することができる。ロゼンジまたはパステル剤に香味成分を添加することができる。
【0144】
エアロゾル製剤および噴霧製剤は、例えば、適切な薬学的に許容される溶媒(例えば、エタノールおよび水)またはそのような溶媒の混合物を含んでよい。いくつかの実施形態では、そのような製剤は、他の薬学的アジュバント(例えば、非イオン性または陰イオン性の表面活性剤、乳化剤、および安定剤)ならびに/または他の種類の活性成分を含む。エアロゾル製剤および噴霧製剤は、不活性ガスなどの噴射ガスと、圧力上昇下で、または揮発性の液体(例えば、通常の気圧の下、通例の室温未満、例えば、−30℃〜+10℃で沸騰する液体)と混合することができる。
【0145】
投与経路および投薬レジメン
本発明の処置方法、またはin vivoにおいて組織の修復、リモデリングまたは分化を誘導する方法では、微小小胞、miRNA、またはその薬学的組成物は、一般に、少なくとも1つの所望の結果を実現するために必要な、またはそのために十分な量および時間で投与する。例えば、miRNAは、疾患、障害、または状態の1つまたは複数の症状を改善する;患者の生存時間を延長する;または別の方法で臨床的利益をもたらすような量および時間で投与することができる。
【0146】
本発明による投薬レジメンは、単回量またはある期間にわたる複数回用量からなってよい。投与は、例えば、毎日1回または複数回、週に1回(または他の複数日の間隔で)、2週間に1回、月に1回、または断続的なスケジュールであってよい。一般には、有効量を投与する。微小小胞、マイクロRNA、またはその薬学的組成物の有効量は、被験体間で変動し、いくつかの因子に左右される(以下を参照されたい)。
【0147】
微小小胞、マイクロRNA、またはその薬学的組成物は、所望の治療効果を実現するために有効な任意の投与経路を用いて投与することができる。全身投与経路および局部投与経路のどちらも、本発明の方法に従って用いることができる。適切な投与経路としては、これらに限定されないが、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、皮膚(例えば、局所)、皮内、頭蓋内、髄腔内、胸膜内、眼窩内、鼻腔内、経口、消化管内(例えば、坐薬によって)、結腸直腸(例えば、坐薬によって)、および脳脊髄内への投与経路が挙げられる。
【0148】
投与経路に応じて、例えば、患者の体重および/または体表面積、損傷を受けた組織または疾患組織の程度などに応じて有効用量を算出することができる。適切な投与量の最適化は、当業者、例えば、臨床医が容易に行うことができる。最終的な投薬レジメンは、一般には、主治医により、微小小胞、miRNA、またはその薬学的組成物(本明細書では、集合的に「薬物」と称する)の作用を改変し得るさまざまな因子、例えば、薬物の特異的活性、組織傷害の重症度および患者の反応性、患者の年齢、条件、体重、性別および食事、存在する任意の感染症の重症度、投与時間、他の療法の使用(または不使用)、および他の臨床的因子を考慮して決定される。
【0149】
典型的な投与量は、体重1kg当たり1fg〜体重1kg当たり1mgを含む。いくつかの実施形態では、投与量は、体重1kg当たり100pg〜体重1kg当たり1mg、体重1kg当たり10pg〜体重1kg当たり1mg、体重1kg当たり1pg〜体重1kg当たり1mg、体重1kg当たり100ng〜体重1kg当たり1mg、体重1kg当たり10ng〜体重1kg当たり1mg、または体重1kg当たり1ng〜体重1kg当たり1mgにわたる。
【実施例】
【0150】
(実施例1)
膵臓由来パスファインダー細胞(PDPC)の形態学的検査および微小小胞(MV)の同定
本実施例では、ラットの膵臓由来パスファインダー細胞(PDPC)の形態学的な試験を、走査電子顕微鏡(EM)によって行った。走査EM画像により、暫定的に発生期の微小小胞(MV)と同定されるPDPCの表面からの突出部が明らかになった。
【0151】
パスファインダー細胞を、以前に記載されている通り培養したラット膵臓から単離した(例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO2006/120476A1号を参照されたい)。これらのラットPDPCを、ウシ微小小胞を枯渇させたウシ胎仔血清(FBS)を含有する培地で成長させた。
【0152】
ラットPDPCの準集密の培養物の画像を走査電子顕微鏡により取得した。図1Aは、線維芽細胞型と小円形細胞型の両方のPDPCを示す代表的な画像を示す。図1Aにおいて認めることができるように、どちらの細胞型も非常に多数の薄い突起を有し、他の細胞と、多数の点において複雑な様式で相互接続する。さらに、これらの細胞は、その表面上に、発生期の微小小胞と同定される多数の小さな球体を産生する(図1B)。
【0153】
図1Aに示されている平らな細胞型は直径およそ15〜20μmであり、試験した培養物の中で優勢な細胞型である。他の細胞型はおよそ3〜5μmのサイズの球状の形態であり、一般に同一の細胞型に隣接して見いだされる。いかなる特定の理論にも制約されることなく、これらの球状の細胞は、最近細胞分裂した細胞から得ることができる。
【0154】
特に、より平らで、より大きな細胞型の縁から放射状に伸びたさまざまな長さの突出部を認めることができる。これらの細胞突出部の末端に推定上の微小小胞(MV)がはっきり観察された。いくつかの場合には、MVは、実際には細胞に付着していなかったが、それでも細胞および付着したMVの付近にあった。MVは、小細胞型の膜の近くおよび周囲にもはっきり認められた(図1B)。一部の領域、一般には、細胞突出部の末端にMVのクラスターが観察された。同定されたMVのサイズの範囲は、一般には直径300〜600nmであった。
【0155】
(実施例2)
ラットPDPCにおけるmiRNAの発現およびラットPDPCから単離されたMVにおけるmiRNAの発現の解析
実施例1の結果により、他の細胞および組織に対するPCの作用の機構を明らかにすることができる。PCの作用の機構をさらに調査するために、PDPCから得た微小小胞をさらに詳細に試験した。
【0156】
本実施例では、MVを、ウシ微小小胞を枯渇させた血清を含む培地におけるラットPDPC培養物の上清から、分画遠心分離プロトコールを用いて精製した。RNAを、MVとPDPCの両方から標準の手順を用いて調製した。miRNAの発現を解析するために、RNA試料を逆転写(RT)し、定量的PCRアッセイで増幅させた。
【0157】
材料および方法
RNA抽出。細胞由来のRNAおよび微小小胞(MV)を、TRI試薬(Sigma)を使用し、製造者のプロトコールに以下の改変を行って抽出した。TRI試薬に1/5体積のクロロホルムを添加した後、試料を6℃、16,000×gで15分間回転させた。次いで、水相をフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(pH6.6;Ambion)により、10℃、16,000×gで10分間抽出した。水相を最大2時間、−20℃で沈殿させた。6℃、16,000×gで30分間遠心分離した後、得られたRNAを95%の氷冷のエタノール中で洗浄した。次いで、RNAをDEPC−水に再懸濁させ、NanoDrop1000分光光度計を使用して定量化した。
【0158】
miRNA解析。細胞由来のRNAおよびMV由来のRNAを、マイクロRNA(miRNA)の発現についてAppplied BiosystemのTaqman Low Density Arrays(TLDA)カードを使用して解析した。ラットPDPCについては、Taqman Rodent MicroRNA Array AおよびTaqman Rodent MicroRNA Array Bを、MegaPlex
RT Rodent Pool AプライマーおよびMegaPlex RT Rodent Pool Bプライマーと組み合わせて使用した。MVのRNAをArray Aにより、製造者のプロトコールに従って解析した;Array Bを用いた解析は進行中である。
【0159】
結果
細胞およびMVにおけるmiRNA分布を比較した。表1には、ラットPDPCのMVのRNA調製物由来のmiRNA373種の解析の結果が示されている。表2に示されているように、解析したmiRNA373種のうち20種は、MVにのみ存在し、細胞のRNA集団では検出不可能なレベルであることが見いだされた。別の23種のmiRNAは、MVにおいてのみ検出可能であったが、これらのmiRNAの発現は低レベルであった。70種のmiRNAは、細胞のRNAにおいて検出されたが、MVのRNAにおいては検出することができなかった。
【0160】
【表2】
さらなる研究により、MVには存在するがPDPCには存在しないmiRNAの数が38種であり、そのうちの22種のmiRNAが低レベルで存在していたことがさらに正確になった。表3には、更新された、MVにおいて見いだされるが細胞においては見いだされないmiRNAの一覧が示されている。これらのmiRNAの例示的な配列が表1および付録1に示されている。いかなる特定の理論にも制約されることなく、MVにはあるが細胞にはないmiRNAがいくらか存在することは、これらのMVが、MVにおいて産生された可能性が高いことを示唆している。
【0161】
【表3】
表4には、細胞においては見いだされたが、微小小胞においては見いだされなかったmiRNAが列挙されている。示されている配列は、Rattus norvegicus由来の配列である。Homo sapiensおよびMus musculusを含めた他の種由来の対応するmiRNAの配列も当技術分野で公知である;例えば、http://diana.cslab.ece.ntua.gr/mirgen/を参照されたい。
【0162】
【表4-1】
【0163】
【表4-2】
これらの結果により、MVが、細胞質またはエンドソームの内容物の単に無作為な試料を含有するのではないことが実証される。いかなる特定の理論にも制約されることなく、MVに特異的に存在するmiRNAは、細胞間の調節因子の候補であり得る。これらのMVに特異的なmiRNAは、実施例3および4に記載のものなどのアッセイを用いて個々に検証することができる。
【0164】
(実施例3)
細胞の成長に対するMVまたはmiRNAの作用を特徴付けるためのアッセイ
本実施例では、ラットPDPCの成長に対するMVの作用が実証される。
【0165】
XCELLINGENCE(商標)装置を使用して、ウシMVを枯渇させたラットPDPC培養物、またはMVを枯渇させ、その後ラットPDPCのMVを戻して加えたラットPDPC培養物における細胞の成長を測定した。
【0166】
ラットPDPCを、ウシ血清を含有する培地で培養し、次いで、43時間の時点でウシMV枯渇培地に切り換えた。MVを枯渇させることにより、細胞増殖が減少し、倍加時間が31時間まで遅くなった(図2A)。倍加時間に対する負の作用が認められ、その後回復した。
【0167】
実験の別々のセットにおいて、48時間の時点で培養物をMV枯渇させ、次いで、10時間後に外因性MVを添加する。ラットPDPC由来のMVを添加した後に、ラットPDPCの倍加時間(すなわち、細胞増殖の増加)の用量依存的な回復が観察された(図2B)。細胞増殖の増大は48時間持続し、その後次第に消えた。外因性MVを受けている細胞の倍加時間の急速な回復が通常の回復時間よりも前に順調に起こった。
【0168】
これらの結果は、MVが細胞増殖を増大させることができることを示すだけでなく、PDPCの成長速度に対する個々のmiRNAの作用を特徴付けるための可能性のあるアッセイをもたらす。標的細胞型に対するPCの作用についての同様のアッセイを開発することもできる。
【0169】
他のPCの成長速度に対するMVの作用を同様に試験することができる。例えば、ヒトの腎臓由来パスファインダー細胞(KDPC)およびリンパ節由来パスファインダー細胞(LNDPC)をPDPCの代わりに用いることができる。
【0170】
(実施例4)
in vitro細胞損傷アッセイ
この実施例では、創傷修復の刺激または細胞損傷からの回復に対するMVまたはmiRNAの作用を評価するためのin vitroアッセイが首尾よく開発されたことが実証される。
【0171】
線維芽細胞を、標的細胞として使用するために、XCELLIGENCE(商標)装置(Roche Applied Science)のウェル中で集密になるまで成長させる。次いで培養物に、ピペットの先端で切り目をつけて創傷を模倣する。培養物を、(1)種々の組織起源のPCの存在下;(2)PCに由来するMVの存在下;(3)例えば、実施例2に記載の通り解析された特定のmiRNAの存在下;または(4)陰性対照として上記のいずれも存在しない培地の存在下で成長させる。
【0172】
損傷領域にわたる細胞の再成長を、定量的な読み取りをもたらすXCELLIGENCE(商標)装置によって読み取る。創傷修復に対するPC、MV、および特定のmiRNAの作用は、種々の培養物からの再成長の速度によって決定することができる。
【0173】
(実施例5)
低酸素条件で培養した細胞由来のMVの産生
この実施例は、PC細胞におけるMVの産生および/またはRNA発現プロファイルを、特定の細胞培養条件を変動させることによって最適化することができることを示すために設計する。培養中に低酸素条件で成長している細胞は、サイトカインの分泌を低下させることができ、それによりMVを産生している細胞の寿命を延長することができ、それにより、MVの産生が増加すると仮定される。
【0174】
本実施例では、種々の細胞型のPCを低酸素(5%未満のO)条件で成長させ;対照として使用するために、培養物を通常(例えば、約5%のO)酸素条件でも成長させる。MVの産生は、電子顕微鏡法、FACS、MVの重量の測定および既知の数/重量比に基づく算出などの標準の方法または公知の方法の適応を用いて定量することができる。
【0175】
例えば、MVのRNA含有量に対する低酸素の可能性のある作用を検査するために、実施例2に記載の通りMVを培養物から単離する。RNA調製物をMVから作製し、定量化し、その量を2つの群間(低酸素対通常の酸素)で比較する。
【0176】
(実施例6)
馴化培地からのMVの単離および富化
この実施例では、馴化培地からのMVの単離および富化について記載されている。種々の細胞型のPCを、以前に記載されている通り単離し、培養する(例えば、国際特許公開第WO2006/120476A1号を参照されたい)。PCを、組織培養フラスコ内の血清を含まない培地で、ほぼ集密(準集密(sub−confluence))になるまで増殖させる(ウシ微小小胞枯渇培地を用いることもできる)。準集密の培養物(「馴化培地」)から培地を収集し、すぐに解析するか、またはさらなる解析のために凍結させる。馴化培地は、MVの産生について、実施例5に記載のものなどの当技術分野で公知の方法によって解析することができる。標準の方法を用いてMVを馴化培地(conditional media)から採取することができる。RNAを馴化培地から抽出し、総RNA含有量およびMVに関連する特定のmiRNAの量を解析する。
【0177】
(実施例7)
馴化培地におけるMVの産生を増大させるための、不織基材上でのPCの培養
この実施例では、馴化培地におけるMVの産生を増大させることができる改変された培養方法について記載されている。PCを、種々の組成の不織布上で成長させ、馴化培養培地における微小小胞の産生を評価する。
【0178】
直径1センチメートルの円形の基材を種々の組成の不織布から作製する:
(1)VICRYL(商標)の商品名で販売されている(Ethicon、Inc.、Somerville、NJ)、90/10ポリ(グリコリド−co−ラクチド)(PGA/PLA)の繊維を含む布;
(2)95/5PLA/PGA(商標)の商品名で販売されている、95/5ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLA/PGA)の繊維を含む布;および
(3)(90/10 PGA/PLA)繊維を50%とPDO繊維を50%含む布。
【0179】
本実施例で使用した布は、厚さ1mmまたは1.5mmであり、密度は約60〜約300mg/mLにわたった。
【0180】
布基材を密集度の低い(low−cluster)24ウェルプレートに入れ、100%エタノール中に4時間浸漬することにより滅菌する。次いで、基材をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、ウシ微小小胞を枯渇させたウシ胎仔血清(FBS)を含有する培地に入れる。
【0181】
種々の組織起源のPCをウェル内の基材上に播種する。対照として、基材を伴わない24ウェル組織培養プレートにPCを播種する。細胞を播種した基材および対照ウェルを、培養物が準集密に達するまで培養する。
【0182】
準集密の培養物由来の培地(「馴化培地」)をウェルから収集し、MVの産生について、例えば、実施例5に記載の通り解析する。標準の方法を用いてMVを馴化培地から採取することができる。
【0183】
(実施例8)
ラットPDPCのRNA発現プロファイリング
本実施例では、ラットPDPCに対してRNA発現プロファイリングを実施した。実施例2に記載の通りPDPCを培養し、RNAを抽出した。表5には、PDPCにおいて発現されることが見いだされた、本明細書に記載の治療への適用に対して有用であり得るmiRNAが示されている。大量に発現されたmiRNAが太字で示されている。これらのmiRNAの配列は、付録1において見出すことができる。
【0184】
【表5】
(実施例10)
微小小胞(MV)の精製
本実施例では、MVを、血清が豊富な条件または血清欠乏条件で成長させたラットPC培養物の上清から、図3の概略図または市販のエキソソーム沈殿キット(Exo−Quick(商標)Exosome Preciptitation、System Biosciences、Mountain View、California)に従って分画遠心分離プロトコールを用いて精製した。血清が豊富な条件または血清欠乏条件で成長させたラット間葉系幹細胞(MSC)由来の対照MVも精製した。
【0185】
簡単に述べると、分画遠心分離法を用いて精製するために、培養培地10mlを1000×gで10分間遠心分離して細胞の残屑を除去した。その試料をさらに4℃、16,0000×gで90分間遠心分離した。ペレット(P1)画分および上清(S1)画分を分離し、ペレット画分をPBS10mlで洗浄し、4℃、16,000×gで90分間遠心分離した。生じたペレット画分P2を緩衝液0.2mlに再懸濁させた。S1上清画分を4℃、120,000×gで120分間遠心分離し、生じたペレットP3をPBS5mlで洗浄し、4℃、120,000×gで120分間、遠心分離した。生じたペレット画分P4を緩衝液0.2mlに再懸濁させた。
【0186】
Exo−Quick(商標)Exosome Preciptitation(System Biosciences、Mountain View、California)を用いてMVを精製するために、培養培地1mlをExo−Quick試薬を用い、製造者の指示に従って処理した。MVペレットを回収し、緩衝液に再懸濁させた。
【0187】
各精製方法(分画遠心分離法および沈殿)によって得られる画分について、総タンパク質および全RNAを標準の方法を用いて定量した。表6には、試験した精製方法の各画分において得られた例示的な総タンパク質量および全RNA量が示されている。
【0188】
【表6-1】
【0189】
【表6-2】
(実施例11)
血清を欠乏させたPC由来のMVのRNA発現プロファイリング
本実施例では、MVを、血清欠乏条件下で約24時間成長させたラットPCまたはヒトPCの培養物の上清から分画遠心分離プロトコールを用いて(実施例10に記載されている)精製した。RNAを、実施例2に記載の通りPCおよびMVから調製した。
【0190】
ラットPC、MV画分、およびエキソソーム画分についてマイクロRNAの発現プロファイルを決定し、比較した。図4に示されている通り、血清欠乏条件下で24時間成長させることによって、血清が豊富な条件下での成長と比較して発現が変化したマイクロRNAを決定し、ラットPC、MV画分およびエキソソーム画分の間で重複しているマイクロRNA配列を同定した。図4において認めることができるように、血清欠乏に応答して発現が増大した、全ての試料に共通するmiRNAが35種あった。図5には、ラットPC、MV画分、およびエキソソーム画分のmiRNA発現プロファイルを比較する例示的なグラフが示されている。図5において認めることができるように、血清欠乏に応答して発現が増大したマイクロRNAは、細胞周期、損傷応答、ストレス応答、細胞生存、および免疫シグナル伝達を含めた種々の細胞機能において役割を果たし得る。
【0191】
ラットPC、ラットMSC、およびヒトPCについてマイクロRNAの発現プロファイルを決定し、比較した。図6に示されている通り、血清欠乏条件下で24時間成長させることにより、血清が豊富な条件下での成長と比較して発現が変化したマイクロRNAを決定し、ラットPC、ラットMSC、およびヒトPCの間で重複しているマイクロRNA配列を同定した。図6において認めることができるように、血清欠乏に応答して発現が増大した、全ての試料に共通するmiRNAが26種あった。
【0192】
上記の通り、血清欠乏条件下で成長させたラットPC細胞から得られたMV中のmiRNAを同定した。表7には、ラットPCから得たMVのRNA調製物由来のmiRNAの解析の結果が示されている。
【0193】
【表7-1】
【0194】
【表7-2】
【0195】
【表7-3】
【0196】
【表7-4】
【0197】
【表7-5】
【0198】
【表7-6】
【0199】
【表7-7】
表8には、ラットPCのRNA調製物由来のmiRNAの解析の結果が示されている。
【0200】
【表8-1】
【0201】
【表8-2】
【0202】
【表8-3】
【0203】
【表8-4】
【0204】
【表8-5】
【0205】
【表8-6】
【0206】
【表8-7】
【0207】
【表8-8】
【0208】
【表8-9】
表9には、血清欠乏条件下で成長させたラットPC間で共通するmiRNA(表8において識別される)および血清欠乏条件下で成長させたラットPC由来のMV(表7において識別される)が列挙されている。
【0209】
【表9-1】
【0210】
【表9-2】
【0211】
【表9-3】
表10には、エキソソームを含めたラットPCのMVにおいて見いだされるmiRNAが列挙されている。
【0212】
【表10-1】
【0213】
【表10-2】
【0214】
【表10-3】
【0215】
【表10-4】
【0216】
【表10-5】
表11には、エキソソームを除いた、ラットPCのMVおよびPCにおいて見いだされるmiRNAが列挙されている。
【0217】
【表11-1】
【0218】
【表11-2】
【0219】
【表11-3】
【0220】
【表11-4】
表12には、エキソソームよりも大きな外分泌(extrasectetory)小胞を除いたラットPCのエキソソームおよびPCにおいて見いだされるmiRNAが列挙されている。
【0221】
【表12-1】
【0222】
【表12-2】
【0223】
【表12-3】

血清欠乏条件下で成長させたヒトPCおよび血清欠乏条件下で成長させたヒトPCから得たMVについてのマイクロRNAの発現プロファイル決定し、比較した。図7に示されている通り、血清欠乏条件下で24時間成長させることにより、血清が豊富な条件下での成長と比較して発現が変化したマイクロRNAを決定し、ヒトPCおよびMVの間で重複しているマイクロRNA配列を同定した。図7において認めることができるように、血清欠乏に応答して発現が減少した、全ての試料に共通するmiRNAが43種あった。
【0224】
血清欠乏条件下で成長させたヒトPCから得たMV由来のmiRNAを、比較に適した条件下で成長させたラットPCから得たMV由来のmiRNAと比較した。図8において認めることができるように、血清欠乏に応答して発現が増大した、共通のmiRNAが7種あった。図9には、血清欠乏条件下で成長させたPCから得たラットMVおよびヒトMVのmiRNA発現プロファイルを比較する例示的なグラフが示されている。図9において認めることができるように、血清欠乏に応答して発現が増大したマイクロRNAは、とりわけ、細胞周期、MAPKシグナル伝達経路、TGFベータシグナル伝達経路、およびDNAのメチル化を含めた種々の細胞機能において役割を果たし得る。
【0225】
表13には、ヒトPCのRNA調製物から得たMV由来のmiRNAの解析の結果が示されている。
【0226】
【表13-1】
【0227】
【表13-2】
【0228】
【表13-3】
【0229】
【表13-4】
【0230】
【表13-5】
【0231】
【表13-6】
均等物および範囲
当業者は、本明細書に記載の特定の実施形態に対する多くの均等物を、常套的な実験だけを用いて理解または確認することができる。本発明の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載の通りである。
【0232】
当業者は、本明細書に記載の本発明による特定の実施形態に対する多くの均等物を、常套的な実験だけを用いて理解または確認することができる。本発明の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載の通りである。
【0233】
請求項では、例えば、「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、それに反する指示がある、またはそうでないことが文脈から明らかである場合を除き、1つまたは1つ超を意味し得る。ある群の1種または複数種のメンバーの間に「または(or)」を含む請求項または記載は、それに反する指示がある、またはそうでないことが文脈から明らかである場合を除き、群のメンバーのうちの1種、2種以上、または全種が所与の産物またはプロセスに存在する、それに使用される、または他の点でそれに関連する場合に満たされるとみなされる。本発明は、群のちょうど1種のメンバーが所与の産物またはプロセスに存在する、それに使用される、または他の点でそれに関連する実施形態を包含する。本発明は、群のメンバーのうち2種以上、または全種が所与の産物またはプロセスに存在する、それに使用される、または他の点でそれに関連する実施形態を包含する。さらに、本発明は、1つまたは複数の限定、要素、条項、記述的な用語などが、列挙されている請求項のうちの1つまたは複数から別の請求項に導入されている変形、組み合わせ、および入れ替えの全てを包含することが理解されるべきである。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項を、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項において見いだされる1つまたは複数の限定を含むように改変することができる。さらに、請求項に組成物が列挙されている場合、別段の指定のない限りまたは矛盾または不一致が生じるであろうことが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示されている目的のいずれかのための組成物の使用方法が含まれ、本明細書に開示されている作製方法のいずれか、または当技術分野で公知の他の方法に従って組成物を作製する方法が含まれることが理解されるべきである。
【0234】
要素が、例えばマーカッシュ群形式で列挙されている場合、その要素のサブグループのそれぞれも開示され、また、任意の要素(複数可)を、群から除去することができることが理解されるべきである。一般に、本発明、または本発明の態様が、特定の要素、特徴などを含むとみなされる場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様は、そのような要素、特徴などからなる、またはそれから本質的になることが理解されるべきである。わかりやすくするために、これらの実施形態では、本明細書においてこういう言葉で具体的には記載していない。「含む(comprising)」という用語は非限定的であり、追加的な要素または工程の包含が容認されるものとすることにも留意する。
【0235】
範囲が示されている場合、端点が含まれる。さらに、別段の指定がある場合、または文脈および当業者の理解からそうでないことが明らかである場合を除き、範囲として表されている値は、本発明の異なる実施形態において明示された範囲内の、文脈により明確に別段の規定がなされない限りその範囲の下限の単位の10分の1まで、任意の特定の値または部分範囲を想定し得ることが理解されるべきである。
【0236】
さらに、先行技術の範囲内に入る本発明の任意の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つまたは複数から明確に排除され得ることが理解されるべきである。そのような実施形態は、当業者に公知であるとみなされるので、排除について本明細書に明確に記載されていなくとも排除され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の細胞型;任意の神経細胞系;シナプス小胞サイクリング(synaptic vesicle
cycling)の任意のレポーター;任意の電気刺激系;任意の画像処理系;任意のシナプス小胞サイクリングアッセイ;任意のシナプス小胞サイクル改変因子;任意の使用方法;など)は、任意の1つまたは複数の請求項から、先行技術の存在に関連しようがしまいが任意の理由で排除され得る。
【0237】
参照の組み込み
本出願において引用された全ての刊行物および特許文献は、個々の刊行物または特許文献の内容全体を通して本明細書に組み込まれるのと同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【手続補正書】
【提出日】2017年4月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0194
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0194】
【表7-2】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0206
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0206】
【表8-7】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0221
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0221】
【表12-1】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0222
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0222】
【表12-2】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0223
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0223】
【表12-3】

血清欠乏条件下で成長させたヒトPCおよび血清欠乏条件下で成長させたヒトPCから得たMVについてのマイクロRNAの発現プロファイル決定し、比較した。図7に示されている通り、血清欠乏条件下で24時間成長させることにより、血清が豊富な条件下での成長と比較して発現が変化したマイクロRNAを決定し、ヒトPCおよびMVの間で重複しているマイクロRNA配列を同定した。図7において認めることができるように、血清欠乏に応答して発現が減少した、全ての試料に共通するmiRNAが43種あった。
【外国語明細書】
2017125065000001.pdf