(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-125505(P2017-125505A)
(43)【公開日】2017年7月20日
(54)【発明の名称】空気圧縮機のシリンダ排気構造
(51)【国際特許分類】
F04B 39/10 20060101AFI20170623BHJP
【FI】
F04B39/10 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-4190(P2017-4190)
(22)【出願日】2017年1月13日
(31)【優先権主張番号】105101307
(32)【優先日】2016年1月15日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501164676
【氏名又は名称】周 文三
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】周 文三
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AC02
3H003CC07
3H003CD03
(57)【要約】
【課題】シリンダの空気貯蔵チャンバに進入する単位時間当たりの圧縮空気量が増大する、空気圧縮機のシリンダ排気構造を提供する。
【解決手段】空気圧縮機のシリンダ排気構造の空気圧縮機は、メインフレーム11を備える。メインフレーム11には、モータ12が固定される。モータ12が歯車13を回転させると、シリンダ2内に設けたピストン本体14が歯車13により駆動される。ピストン本体14がシリンダ2内で往復運動すると圧縮空気が発生し、圧縮空気が空気貯蔵ユニット3内に進入する。シリンダ2の頂壁には、同じ穴径を有する複数個の排気孔6が形成される。排気孔6の穴径X,Y,Zは、X=Y=Zの関係にある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧縮機のシリンダ排気構造であって、
前記空気圧縮機は、メインフレームを備え、
前記メインフレームには、モータが固定され、
前記モータが歯車を回転させると、シリンダ内に設けたピストン本体が前記歯車により駆動され、
前記ピストン本体が前記シリンダ内で往復運動すると圧縮空気が発生し、前記圧縮空気が空気貯蔵ユニット内に進入し、
前記シリンダの頂壁には、同じ穴径を有する複数個の排気孔が形成され、
前記排気孔の穴径X,Y,Zは、X=Y=Zの関係にあることを特徴とする空気圧縮機のシリンダ排気構造。
【請求項2】
前記シリンダ及び前記複数個の排気孔は、プラスチック材料により前記メインフレームと一体成形されることを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機のシリンダ排気構造。
【請求項3】
前記複数個の排気孔には、同じ構造を有するバルブ機構がそれぞれ設置され、
前記バルブ機構は、Oリング、ばね及び共用のばね片により構成され、
前記ばね片は、根元部を有し、各前記排気孔に対応したブランチが前記根元部から外方へ延び、前記Oリングが前記排気孔に設置され、前記ばね片の前記根元部の位置決め孔が圧縮筒の頂壁上に設けた位置決めブロックに固定されると、前記ブランチが前記Oリングに圧接され、前記排気孔が前記ブランチによりそれぞれ閉止され、前記空気貯蔵ユニットには、互いに対をなす2個の嵌合クランプが設けられ、前記嵌合クランプは、前記空気貯蔵ユニットの底端縁から外側へ延びた短板を有し、前記短板の末端には、L字状係合部が設けられ、
前記シリンダの頂端には、環状ショルダが設けられ、
前記環状ショルダの外周側部には、環状の外周フランジが延設され、
前記外周フランジ及び前記シリンダの頂端には、係合溝が形成され、
前記ばねは、前記ブランチ上にそれぞれ設置され、
前記空気貯蔵ユニットの内側平面には、下方へ延びて互いに離間した複数個の縦ピンが設けられ、
前記縦ピンには、円径のサイズがそれぞれ異なる底ステップと、中ステップと、頂ステップとが順次形成され、
前記空気貯蔵ユニットには、前記嵌合クランプが設置され、
前記L字状係合部は、前記シリンダの前記係合溝に係合され、
前記空気貯蔵ユニットに設けた互いに離間した3本の縦ピンは、前記ばねに嵌入され、
前記ばねは、前記縦ピンの前記中ステップの外周にそれぞれ位置して前記底ステップに接触し、前記縦ピンの末端が僅かな距離で前記ブランチの上方に位置するため、前記ブランチの開閉動作の跳ね上げ高さが制限され、圧縮空気の圧力作用によりへたりが生じることを防ぎ、
前記ブランチは、前記ばねの付勢力により前記排気孔を完全に閉止することを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機のシリンダ排気構造。
【請求項4】
前記複数個の排気孔には、同じ構造を有するバルブ機構がそれぞれ設置され、
前記バルブ機構は、Oリング及び共用のばね片により構成され、
前記ばね片は、根元部を有し、各前記排気孔に対応したブランチが前記根元部から外方へ延び、前記Oリングが前記排気孔に設置され、前記ばね片の前記根元部の位置決め孔が圧縮筒の頂壁上に設けた位置決めブロックに固定されると、前記ブランチが前記Oリングに圧接され、前記排気孔が前記ブランチによりそれぞれ閉止されることを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機のシリンダ排気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機のシリンダ排気構造に関し、特に、シリンダに同じ穴径を有する複数個の排気孔が形成され、空気圧縮機のポンピングを開始してから終了するまでの期間、シリンダ内のピストン本体が往復して圧縮運動を行うと、シリンダの空気貯蔵チャンバに進入する単位時間当たりの圧縮空気量が増大し、圧縮空気が排気孔を通過して速やかに空気貯蔵チャンバ内に進入し、ピストン本体の動作がスムーズとなり、ポンピングの効率が高まる、空気圧縮機のシリンダ排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気圧縮機の構造は、基本的にシリンダを有する。シリンダ内でピストン本体が往復運動すると圧縮空気が発生する。発生した圧縮空気は、シリンダの排気孔を介してバルブ機構を押動し、圧縮空気を貯蔵する空間に圧縮空気が進入する。この空間は、空気貯蔵ユニット(又は空気タンク)内の空間でもよい。空気貯蔵ユニットには、排気口が設けられ、排気口を介して圧縮空気が気体被注入物へ注入されてポンピング動作が完了する。従来技術において、シリンダと空気貯蔵ユニットとの間に設けられた中間壁には、単一の排気孔のみが形成され、バルブ機構により排気孔の開閉を制御する。バルブ機構は、弁体及びばねで構成される。ピストン本体が発生させる圧縮空気により弁体を押動してばねを圧縮し、圧縮空気が空気貯蔵ユニットの空気貯蔵チャンバ内に進入し、空気貯蔵チャンバ内に溜められた圧縮空気が弁体に対して背向圧を発生させ、ポンピングを行う際に背向圧が弁体の開く動作を妨げ、相対的にピストン本体の動作により発生する圧縮空気により、弁体を押動するときに抵抗力が発生して動作が円滑でなくなり、ピストン本体が作動するときに発生する抵抗力が大きくなってポンピング速度が遅くなり、空気圧縮機のモータは過熱し易く、モータの運転効率が下がってモータが焼損してしまう虞があった。そのため本発明者は、従来の空気圧縮機のシリンダ構造の問題点について研究し、長年の努力により本発明を完成させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主な目的は、空気圧縮機のシリンダに複数個の排気孔を形成し、空気圧縮機が発生させた圧縮空気を、複数個の排気孔を介して空気貯蔵ユニットの空気貯蔵チャンバ内に進入させ、シリンダの空気貯蔵チャンバに進入する単位時間当たりの圧縮空気量が増大する、空気圧縮機のシリンダ排気構造を提供することにある。
本発明の他の目的は、空気圧縮機中のピストン本体が往復運動するシリンダに、同じ穴径を有する複数個の排気孔が形成され、空気圧縮機がポンピングを開始してから終了するまでの期間にシリンダ内のピストン本体が往復して圧縮運動を行うと、シリンダの空気チャンバに進入する単位時間当たりの圧縮空気量が増大し、圧縮された空気が速やかに排気孔を通過して空気貯蔵チャンバ内に進入し、ピストン本体の動作が円滑となり、ポンピング効率が向上し、ポンピング速度を高めることができる、空気圧縮機のシリンダ排気構造を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気圧縮機のシリンダ排気構造を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るシリンダ、バルブ機構及び空気貯蔵ユニットを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る複数個の排気孔を有するシリンダを示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図3の排気孔上にバネ片を設置した状態を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の空気貯蔵ユニットの内側を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明のシリンダに結合した空気貯蔵ユニットを示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図1を歯車側から見たところを示す平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係るシリンダと、ばねを含まないバルブ機構と、空気貯蔵ユニットとを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1及び
図2を参照する。
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る空気圧縮機は、基本的にメインフレーム11を備える。メインフレーム11には、モータ12が固定される。モータ12が歯車13を回転させると、歯車13によりシリンダ2内に設けたピストン本体14が駆動される。ピストン本体14がシリンダ2内で往復運動すると、圧縮空気が発生し、空気貯蔵ユニット3内に圧縮空気が進入する。空気貯蔵ユニット3は、発生させた圧縮空気を溜めるために用いる。空気貯蔵ユニット3には、1個又は複数個の排気マニホールドが設けられる。排気マニホールドは、例えば、圧力計30に接続されるマニホールド31、ガス抜き弁32に接続されるマニホールド33、気体被注入物に接続されるフレキシブル管(図示せず)であるマニホールド34でもよい。
【0006】
図2〜
図7を参照する。
図2〜
図7に示すように、本実施形態のシリンダ2の排気孔は、従来技術と異なり、圧縮空気が出力されるシリンダ2の界面において、シリンダ2の頂壁21に複数個形成される。シリンダ2及び複数個の排気孔は、プラスチック材料により前述したメインフレーム11と一体成形される。本実施形態の複数個の排気孔は、排気孔4,5,6でもよい。これら複数個の排気孔4,5,6は、同じ穴径を有する空気孔(
図3を参照する)でもよい。例えば、排気孔4の穴径がXであり、排気孔5の穴径がYであり、排気孔6の穴径がZであるとき、X=Y=Zの関係にある。前述した排気孔4,5,6は、開いた状態又は閉じた状態にあり、各排気孔が属するバルブ機構により制御される。各バルブ機構は、Oリング、ばね及び共用のばね片により構成される。ばね片7は、根元部70を有し、各排気孔4,5,6に対応したブランチ(branch)72,73,74が外方へ延び、Oリング41が排気孔4に設置され、Oリング51が排気孔5に設置される。Oリング61は、排気孔6に設置される。ばね片7の根元部70の位置決め孔71が圧縮筒の頂壁21上に設けた位置決めブロック24に固定されると、ブランチ72がOリング41に圧接され、ブランチ73がOリング51に圧接され、ブランチ74がOリング61に圧接され、排気孔4,5,6がブランチ72,73,74によりそれぞれ閉止される(
図4及び
図7を併せて参照する)。ばね82,83,84の一端は、ブランチ72,73,74上にそれぞれ設置される(
図2及び
図7を併せて参照する)。シリンダ2の頂端には、環状ショルダ22が設けられる。環状ショルダ22の外周側部には、環状の外周フランジ221が延設される。外周フランジ221及びシリンダ2の頂端には、係合溝222が形成される。前述した空気貯蔵ユニット3には、互いに対をなす2個の嵌合クランプ35が設けられる(
図5を参照する)。嵌合クランプ35は、空気貯蔵ユニット3の底端縁から外側へ延びた短板351を有する。短板351の末端には、L字状係合部352が設けられる。空気貯蔵ユニット3の内側平面には、互いに離間した複数個の縦ピン37,38,39が下方へ延びるように設けられる。これら複数個の縦ピン37,38,39には、それぞれ円径のサイズがそれぞれ異なる底ステップ371,381,391と、中ステップ372,382,392と、頂ステップ373,383,393とが順次形成され、空気貯蔵ユニット3の嵌合クランプ35が設けられ、L字状係合部352がシリンダ2の係合溝222に係合される。
図8に示すように、前述した空気貯蔵ユニット3に設けた互いに離間した3本の縦ピン37,38,39は、前述したばね82,83,84に嵌入される。これら複数個のばね82,83,84は、前述した縦ピン37,38,39の中ステップ372,382,392の外周にそれぞれ位置して底ステップ371,381,391に接触され、3本の縦ピン37,38,39の末端が僅かな距離で前述したブランチ72,73,74の上方に位置するため、ブランチ72,73,74の開閉動作の跳ね上げ高さが制限され、圧縮空気の圧力作用によりへたりが生じることを防ぐ。また、前述したブランチ72,73,74は、ばね82,83,84の付勢力により排気孔4,5,6を完全に閉止する(
図7を参照する)。
【0007】
図7及び
図8を参照する。
図7及び
図8に示すように、シリンダ2内でピストン本体14が往復運動して発生させた圧縮空気が、同じ穴径を有する排気孔4,5,6上のブランチ72,73,74を押動するとばね82,83,84が圧縮され、排気孔4,5,6を介して空気貯蔵ユニット3の空気貯蔵チャンバ36内へ圧縮空気が進入する。シリンダ2のピストン本体14の動作を開始してから終了するまでの期間、初期のポンピング動作で発生させる圧縮空気が排気孔4,5,6を介して空気貯蔵チャンバ36内へ速やかに進入し、シリンダ2の空気貯蔵チャンバ36へ進入する単位時間当たりの圧縮空気量が増大する。ポンピングの中期及び後期段階では、既に大量の圧縮空気が空気貯蔵チャンバ36内に進入しているため、空気貯蔵チャンバ36内の圧縮空気がブランチ72,73,74に対して反作用力を発生させるが、この反作用力のことを本明細書中では「背向圧」と表す。このような背向圧は、ブランチ72,73,74が開くことを抑制し、ピストン本体14が圧縮空気を押し出す際の抵抗力が大きくなるが、本実施形態はシリンダ2の頂壁21が有する複数個の排気孔と、それらに対応するブランチ72,73,74とを組み合わせ、空気貯蔵チャンバ36内の背向圧によりブランチ72,73,74が圧力を受け、空気貯蔵チャンバ36内の背向圧が減ると、シリンダ2内で発生し続ける圧縮空気が排気孔4,5,6を介して空気貯蔵チャンバ36内へ進入する。そのため全体的に、ピストン本体14の動作が円滑となりポンピング効率が高まり、ポンピング速度を高めることができる。
【0008】
図2を参照する。
図2に示すように、ブランチ72,73,74上にばね82,83,84を設置し、ばね82,83,84の付勢力によりブランチ72,73,74の閉じる速度を速くしているが、
図9に示すように、本発明は、ばね82,83,84を設置しなくとも、ブランチ72,73,74の弾性回復力により、排気孔4,5,6を完全に閉止することができる。
【0009】
上述したことから分かるように、本発明の空気圧縮機のシリンダ排気構造は、空気圧縮機のシリンダと空気貯蔵ユニットとの間に設けた中間壁に単一の排気孔だけを有する従来技術と異なり、シリンダ2の頂壁21に、同じ穴径を有する複数個の排気孔4,5,6と、排気孔4,5,6と同じ穴径を有するブランチ72,73,74とを組み合わせ、シリンダ2の空気貯蔵チャンバ36に進入する単位時間当たりの圧縮空気量を増大させ、圧縮空気を排気孔4,5,6に通過させて空気貯蔵チャンバ36内へ進入させ、ピストン本体14の動作を円滑にしてポンピングの効率を高めることができるため、本発明は実用的で進歩性を有する。
【符号の説明】
【0010】
2 シリンダ
3 空気貯蔵ユニット
4 排気孔
5 排気孔
6 排気孔
7 ばね片
11 メインフレーム
12 モータ
13 歯車
14 ピストン本体
21 頂壁
22 環状ショルダ
24 位置決めブロック
30 圧力計
31 マニホールド
32 ガス抜き弁
33 マニホールド
34 マニホールド
35 嵌合クランプ
36 空気貯蔵チャンバ
37 縦ピン
38 縦ピン
39 縦ピン
41 Oリング
51 Oリング
61 Oリング
70 根元部
71 位置決め孔
72 ブランチ
73 ブランチ
74 ブランチ
82 ばね
83 ばね
84 ばね
221 外周フランジ
222 係合溝
351 短板
352 L字状係合部
371 底ステップ
372 中ステップ
373 頂ステップ
381 底ステップ
382 中ステップ
383 頂ステップ
391 底ステップ
392 中ステップ
393 頂ステップ