(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-125568(P2017-125568A)
(43)【公開日】2017年7月20日
(54)【発明の名称】締結構造体
(51)【国際特許分類】
F16B 39/02 20060101AFI20170623BHJP
F16B 39/284 20060101ALI20170623BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20170623BHJP
F16B 39/24 20060101ALI20170623BHJP
【FI】
F16B39/02 Z
F16B39/284 Z
F16B43/00 Z
F16B39/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-5258(P2016-5258)
(22)【出願日】2016年1月14日
(71)【出願人】
【識別番号】510155047
【氏名又は名称】有限会社ウェジコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】中上 輝夫
【テーマコード(参考)】
3J034
【Fターム(参考)】
3J034AA07
3J034BA17
3J034BC01
3J034DA03
(57)【要約】
【課題】締結用部材の緩み止め効果を得ることができ、しかも、構造が複雑でなく、ワッシャによるボルトへ傷が原理的につかない締結構造体を提供する。
【解決手段】この締結構造体1は、被締結体5、6と、ボルト2と、軸対称でかつ断面略台形状でありボルト挿通孔33が形成された中央突出部32を有するワッシャ3と、軸対称であり雌ねじ部41の一方の開口部が形成された中央凸部42を有するナット4と、を備えており、ボルト2は、雄ねじ部22がナット4の雌ねじ部41に螺合しており、ワッシャ3は、ボルト挿通孔33の周縁部33aがナット4中央凸部42にのみに接触し、ナット4は、ワッシャ3においてボルト挿通孔33が中央突出部32の中心軸Wから偏心していることによって、ワッシャ3から非対称的に力を受けてボルト2に対して傾斜している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結用挿通孔を有する被締結体と、
頭部と雄ねじ部を有するボルトと、
基部と、該基部の中央部から突出し軸対称でかつ断面略台形状でありボルト挿通孔が形成された中央突出部と、を有するワッシャと、
雌ねじ部と、軸対称であり該雌ねじ部の一方の開口部が形成された中央凸部と、を有するナットと、
を備えており、
前記ボルトは、前記雄ねじ部が、前記被締結体の前記締結用挿通孔及び前記ワッシャの前記ボルト挿通孔に挿通し、かつ、前記ナットの前記雌ねじ部に螺合しており、
前記ワッシャは、前記基部が前記被締結体に接触し、前記ボルト挿通孔の周縁部が前記ナットの前記中央凸部にのみに接触し、
前記ナットは、前記ワッシャにおいて前記ボルト挿通孔が前記中央突出部の中心軸から偏心していること、又は、前記ナットにおいて前記中央凸部の中心軸が前記雌ねじ部の中心軸から偏心していることによって、前記ワッシャから非対称的に力を受けて前記ボルトに対して傾斜していることを特徴とする締結構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の締結構造体において、
前記ワッシャは、前記ボルト挿通孔が前記中央突出部の中心軸から第1の向きに偏心しており、
前記ナットは、内側の側面が傾斜し、かつ、軸対称である周辺凸部を有しており、該周辺凸部に前記ワッシャの前記中央突出部が接触し、前記第1の向き側が前記ボルトの前記頭部側に近づくように傾斜していることを特徴とする締結構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の締結構造体において、
前記ナットは、前記中央凸部の中心軸が前記雌ねじ部の中心軸から第1の向きと反対側に偏心しており、内側の側面が傾斜し、かつ、軸対称である周辺凸部を有しており、該周辺凸部に前記ワッシャの前記中央突出部が接触し、前記第1の向き側が前記ボルトの前記頭部側に近づくように傾斜していることを特徴とする締結構造体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の締結構造体において、
前記ナットの前記中央凸部の周面の1か所又は複数個所に前記周辺凸部に向かって突出部分が形成されている、又は、前記ワッシャの前記ボルト挿通孔の前記周縁部又は前記ナットの前記中央凸部の前記周面に接着剤が塗られていることを特徴とする締結構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械類などを構成する部材(被締結体)を締結用部材を用いて締結してなる締結構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被締結体を締結する締結用部材は、締結後に緩むのを防止するために様々な工夫がなされてきた。本願発明者も、締結用部材として特有形状のナットと特有形状のワッシャ(座金)をボルトとともに用いて締結してなる締結構造体を開発してきた。
【0003】
その中で、特許文献1に、ワッシャがボルトに噛み合うことでワッシャとボルトが強力に結合し、かつ、ナットがボルトに対して傾斜することでそれらのねじ山間の摩擦が増大してナットとボルトが強力に結合するようになる締結構造体を開示している。
【0004】
また、特許文献2に、ワッシャのボルトに噛み合う部分に硬度の低い部材を用いることでボルトへの傷がつき難くなる締結構造体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−213523号公報
【特許文献2】特許第5734495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、被締結体が小さい場合、締結用部材も小さなものとなり、製造過程のバラツキにより過度にワッシャがボルトに噛み合うものが増す傾向になる。その場合、大きな傷がボルトにつくことも起こり得る。一方、特許文献2に開示のワッシャは、構造が少し複雑なので高価になり易い。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、締結用部材の緩み止め効果を得ることができ、しかも、構造が複雑でなく、ワッシャによるボルトへ傷が原理的につかない締結構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の締結構造体は、締結用挿通孔を有する被締結体と、頭部と雄ねじ部を有するボルトと、基部と該基部の中央部から突出し軸対称でかつ断面略台形状でありボルト挿通孔が形成された中央突出部とを有するワッシャと、雌ねじ部と軸対称であり該雌ねじ部の一方の開口部が形成された中央凸部とを有するナットと、を備えており、前記ボルトは、前記雄ねじ部が、前記被締結体の前記締結用挿通孔及び前記ワッシャの前記ボルト挿通孔に挿通し、かつ、前記ナットの前記雌ねじ部に螺合しており、前記ワッシャは、前記基部が前記被締結体に接触し、前記ボルト挿通孔の周縁部が前記ナットの前記中央凸部にのみに接触し、前記ナットは、前記ワッシャにおいて前記ボルト挿通孔が前記中央突出部の中心軸から偏心していること、又は、前記ナットにおいて前記中央凸部の中心軸が前記雌ねじ部の中心軸から偏心していることによって、前記ワッシャから非対称的に力を受けて前記ボルトに対して傾斜していることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の締結構造体は、請求項1に記載の締結構造体において、前記ワッシャは、前記ボルト挿通孔が前記中央突出部の中心軸から第1の向きに偏心しており、前記ナットは、内側の側面が傾斜し、かつ、軸対称である周辺凸部を有しており、該周辺凸部に前記ワッシャの前記中央突出部が接触し、前記第1の向き側が前記ボルトの前記頭部側に近づくように傾斜していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の締結構造体は、請求項1に記載の締結構造体において、前記ナットは、前記中央凸部の中心軸が前記雌ねじ部の中心軸から第1の向きと反対側に偏心しており、内側の側面が傾斜し、かつ、軸対称である周辺凸部を有しており、該周辺凸部に前記ワッシャの前記中央突出部が接触し、前記第1の向き側が前記ボルトの前記頭部側に近づくように傾斜していることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の締結構造体は、請求項2又は3に記載の締結構造体において、前記ナットの前記中央凸部の周面の1か所又は複数個所に前記周辺凸部に向かって突出部分が形成されている、又は、前記ワッシャの前記ボルト挿通孔の前記周縁部又は前記ナットの前記中央凸部の前記周面に接着剤が塗られていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の締結構造体によれば、締結用部材の緩み止め効果を得ることができ、しかも、構造が複雑でなく、ワッシャによるボルトへ傷が原理的につかない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る締結構造体を示す側面視断面図である。
【
図2】同上の締結構造体に用いるワッシャを示すもので、(a)は平面図、(b)は側面視断面図である。
【
図3】同上の締結構造体に用いるナットを示すもので、(a)は側面視断面図、(b)は底面図である。
【
図4】同上の締結構造体に用いるナットとワッシャにおける互いの接触部分を変形したものを部分的に示す側面視断面図である。
【
図5】同上の締結構造体の締結途中の状態を示す側面視断面図である。
【
図6】同上の締結構造体の締結途中の他の状態を示す側面視断面図である。
【
図7】同上の締結構造体のナットの中央凸部の周面を変形したものの締結途中の状態を示す側面視断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る他の締結構造体を示す側面視断面図である。
【
図9】同上の他の締結構造体に用いるワッシャを示すもので、(a)は平面図、(b)は側面視断面図である。
【
図10】同上の他の締結構造体に用いるナットを示すもので、(a)は側面視断面図、(b)は底面図である。
【
図11】同上の他の締結構造体の締結途中の状態を示す側面視断面図である。
【
図12】同上の他の締結構造体の締結途中の他の状態を示す側面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る締結構造体1は、
図1に示すように、締結用部材としてボルト2とワッシャ(座金)3とナット4とを用いた締結構造体である。ボルト2は、頭部21と雄ねじ部22を有するものであり、通常のものでよい。
【0015】
ワッシャ3は、
図2(a)、(b)に示すように、基部31と、この基部31の中央部から突出した中央突出部32と、を有している。中央突出部32は、軸対称(中心軸Wに対して軸対称)でかつ断面略台形状になっている。
【0016】
中央突出部32は、詳細には、側面32aと頂面32bを有している。側面32aは、軸方向(中心軸Wの方向)に対し傾斜角φで傾斜しており、頂面32bは、軸方向に対し大略直交している。側面32aの傾斜角φは、例えば約15度とすることができる。
【0017】
ワッシャ3の中央突出部32には、ボルト2の雄ねじ部22が挿通するボルト挿通孔33が形成されている。ボルト挿通孔33の中心軸Whは、中央突出部32の中心軸Wから第1の向きDIに偏心している。すなわち、
図2(a)に示すように、平面視において、ボルト挿通孔33の周縁部33aが描く円の中心に位置する中心軸Whは、中央突出部32の側面32aと頂面32bの境目の角部32cが描く円の中心に位置する中心軸Wから第1の向きDIにずれている。
【0018】
ナット4は、
図3(a)、(b)に示すように、雌ねじ部41と、軸対称であり雌ねじ部41の一方(
図3(a)において下方)の開口部が形成された中央凸部42と、を有している。また、ナット4は、周辺凸部43を有している。中央凸部42と周辺凸部43の中心軸は、雌ねじ部41の中心軸Nに一致している。なお、ナット4は、角柱状(例えば正六角形の角柱)である。
【0019】
周辺凸部43の内側の側面43aは、軸方向(中心軸Nの方向)に対し傾斜角θで傾斜しており、かつ、軸対称である。周辺凸部43の外側の側面は、どのような形状でも構わないが、ナット4全体の外側面の一部(角柱状)とすればよい。
【0020】
周辺凸部43の側面43aの傾斜角θは、ワッシャ3の中央突出部32の側面32aの傾斜角φよりも大きくなっており、例えば約17〜18度とすることができる。そして、周辺凸部43は、ナット4がワッシャ3に重なり合ったときに、ワッシャ3の中央突出部32の角部32c(中央突出部32の側面32aと頂面32bの境目)が周辺凸部43の側面43aに接触できるような底面視における寸法となっている(
図6参照)。なお、逆に、周辺凸部43の側面43aの傾斜角θを、ワッシャ3の中央突出部32の側面32aの傾斜角φよりも小さくして、周辺凸部43の底面視における寸法を、ナット4がワッシャ3に重なり合ったときに、
図4に示すように、側面43aと底面43bの境目の角部43cがワッシャ3の中央突出部32の側面32aに接触できるような大きさとすることも可能である。
【0021】
締結構造体1は、このようなボルト2とワッシャ3とナット4とを用いて、以下のように組み立てる。先ず、被締結体5、6の締結用挿通孔5a、6aにボルト2の雄ねじ部22を挿通させる(
図5参照)。そして、締結用挿通孔5aから突出したボルト2の雄ねじ部22をワッシャ3のボルト挿通孔33に挿通させるとともに、ワッシャ3の基部31を被締結体5に接触させて載置する。そして、
図5に示すように、ボルト2の雄ねじ部22にナット4の雌ねじ部41を螺合させ、ボルト2に対してナット4を回して行く。
【0022】
ナット4を回して行くと、ワッシャ3の中央突出部32は、その角部32cがナット4の周辺凸部43の側面43aに接触しながら、ナット4の中央凸部42と周辺凸部43の間に嵌り込んで行く。
【0023】
更にナット4を回して締め付けて行くと、前述のようにワッシャ3のボルト挿通孔33の中心軸Whは中央突出部32の中心軸Wから偏心しているため、ワッシャ3の中央突出部32は、ナット4の周辺凸部43に押され、
図6に示すように、第1の向きDIと反対側DI’の部分AIにおいて、ボルト挿通孔33の周縁部33aはナット4の中央凸部42に接触する。そうすると、ナット4は、ワッシャ3から非対称的に力(第1の向きDIと反対側DI’の部分AIにおける抵抗力)を受けて、
図1に示すように、第1の向きDI側がボルト2の頭部21側(
図1においては下方側)に近づくようにボルト2に対して傾斜することになる。
【0024】
このようにして締結された締結構造体1は、ナット4がボルト2に対して傾斜することにより、ボルト2の雄ねじ部22とナット4の雌ねじ部41とのねじ山間の摩擦が非常に大きく、ナット4とボルト2の結合が強力になっている。また、ワッシャ3の中央突出部32がナット4の中央凸部42と周辺凸部43の間に嵌り込んでいることにより、ナット4とワッシャ3の結合が強力になっている。従って、締結構造体1は、締結用部材の緩み止め効果を得ることができ、しかも、ワッシャ3のボルト挿通孔33の周縁部33aはナット4の中央凸部42のみに接触してボルト2に接触しないので、ワッシャ4によるボルト2へ傷が原理的につかない。
【0025】
この締結構造体1は、締結用部材が小さなものの場合に好適である。締結用部材が小さく(例えば、ボルト2の雄ねじ部22の直径が4mm〜10mm程度)になると、ボルト2の雄ねじ部22は、ねじ山の高さの雄ねじ部22の外径に対する比率が高くなり、ナット4の雌ねじ部41は、ねじ山の高さの雌ねじ部41の内径に対する比率が高くなる。従って、この締結構造体1は、締結用部材が小さくなると、ねじ山間の摩擦を、より効率的に利用して緩み止め効果を得ることができる。
【0026】
締結構造体1は、組み立てる前に予めワッシャ3を適正な向きでナット4に組み合わせて分離しないようにしておくことも可能である。例えば、ワッシャ3をナット4に組み合わせ、ナット4の中央凸部42の周面42aの1か所又は複数個所に、必要な打撃等を与えて周辺凸部43に向かって突出部分42bを形成することにより、ワッシャ3がナット4から分離しないようにすることができる(
図7参照)。或いは、例えば、ワッシャ3のボルト挿通孔33の周縁部33a又はナット4の中央凸部42の周面42aに接着剤を塗っておき、ワッシャ3をナット4に組み合わせたときに、ナット4の中央凸部42の周面42aにワッシャ3のボルト挿通孔33の周縁部33aを接着することにより、ワッシャ3がナット4から分離しないようにすることができる。そうすると、組み立てる際に、
図7に示すように、ワッシャ3とナット4を適正な向きで同時にボルト2に取り付けることができる。なお、接着剤による接着は、ナット4の締め付けの際に外れることになる。
【0027】
次に、本発明の実施形態に係る他の締結構造体1’について、
図8〜
図12に基づいて説明する。この締結構造体1’は、
図8に示すように、締結用部材としてボルト2とワッシャ(座金)3’とナット4’とを用いた締結構造体である。ボルト2は、上述した締結構造体1のボルト2と同様のものである。
【0028】
ワッシャ3’は、
図9(a)、(b)に示すように、基部31と、この基部31の中央部から突出した中央突出部32と、を有している。中央突出部32は、軸対称(中心軸Wに対して軸対称)でかつ断面略台形状になっている。ワッシャ3’の基部31と中央突出部32は、上述したワッシャ3の場合と同様のものである。但し、中央突出部32に形成されたボルト挿通孔33の中心軸は、中央突出部32の中心軸Wから偏心していない。
【0029】
ナット4’は、
図10(a)、(b)に示すように、雌ねじ部41と、軸対称であり雌ねじ部41の一方(
図10(a)において下方)の開口部が形成された中央凸部42と、を有している。また、ナット4’は、周辺凸部43を有している。ナット4’の雌ねじ部41と中央凸部42と周辺凸部43は、上述したナット4と同様のものである。但し、中央凸部42の中心軸Ntは、雌ねじ部41の中心軸Nから第1の向きDIの反対側DI’に偏心している。すなわち、
図10(b)に示すように、底面視において、中央凸部42の周面42aが描く円の中心に位置する中心軸Ntは、雌ねじ部41の中心軸Nから第1の向きDIの反対側DI’にずれている。なお、ナット4’は、ナット4と同様に、角柱状(例えば正六角形の角柱)である。
【0030】
締結構造体1’は、このようなボルト2とワッシャ3’とナット4’とを用いて、上述した締結構造体1と同様にして組み立てる。すなわち、先ず、被締結体5、6の締結用挿通孔5a、6aにボルト2の雄ねじ部22を挿通させる(
図11参照)。そして、締結用挿通孔5aから突出したボルト2の雄ねじ部22をワッシャ3’のボルト挿通孔33に挿通させるとともに、ワッシャ3’の基部31を被締結体5に接触させて載置する。そして、
図11に示すように、ボルト2の雄ねじ部22にナット4’の雌ねじ部41を螺合させ、ボルト2に対してナット4’を回して行く。
【0031】
ナット4’を回して行くと、ワッシャ3’の中央突出部32は、その角部32cがナット4’の周辺凸部43の側面43aに接触しながら、ナット4’の中央凸部42と周辺凸部43の間に嵌り込んで行く。
【0032】
更にナット4’を回して締め付けて行くと、前述のようにナット4’の中央凸部42の中心軸Ntは雌ねじ部41の中心軸Nからに偏心しているため、ワッシャ3’の中央突出部32は、ナット4’の周辺凸部43に押され、
図12に示すように、第1の向きDIと反対側DI’の部分AIにおいて、ボルト挿通孔33の周縁部33aはナット4’の中央凸部42に接触する。そうすると、ナット4’は、ワッシャ3’から非対称的に力(第1の向きDIと反対側DI’の部分AIにおける抵抗力)を受けて、
図8に示すように、第1の向きDI側がボルト2の頭部21側(
図8においては下方側)に近づくようにボルト2に対して傾斜することになる。
【0033】
このようにして締結された締結構造体1’は、上述した締結構造体1と同様の効果を有する。但し、ナット4’において雌ねじ部41から中央凸部42の第1の向きDI側の周面42aまでの厚さが薄くなり過ぎないようにしておくことが物理的強度の点で必要である。また、締結構造体1’は、締結構造体1と同様にして、組み立てる前に予めワッシャ3’を適正な向きでナット4’に組み合わせて分離しないようにしておくことも可能である。
【0034】
以上、本発明の実施形態に係る締結構造体について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、実施形態に記載したボルトとナットとワッシャの大きさや細かな形状などは、それらが用いられる環境や被締結体に合わせて任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1、1’ 締結構造体
2 ボルト
21 ボルトの頭部
22 ボルトの雄ねじ部
3、3’ ワッシャ
31 ワッシャの基部
32 ワッシャの中央突出部
33 ワッシャのボルト挿通孔
33a ワッシャのボルト挿通孔の周縁部
4、4’ ナット
41 ナットの雌ねじ部
42 ナットの中央凸部
42a ナットの中央凸部の周面
42b ナットの中央凸部の突出部分
43 ナットの周辺凸部
5、6 被締結体
5a、6a 被締結体の締結用挿通孔
DI 第1の向き
DI’ 第1の向きの反対側
N ナットの雌ねじ部の中心軸
Nt ナットの中央凸部の中心軸
W ワッシャの中央突出部の中心軸
Wh ワッシャのボルト挿通孔の中心軸