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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-125598(P2017-125598A)
(43)【公開日】2017年7月20日
(54)【発明の名称】滑り軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/20 20060101AFI20170623BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20170623BHJP
   F16C 27/08 20060101ALI20170623BHJP
   B60G 7/02 20060101ALI20170623BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20170623BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20170623BHJP
【FI】
   F16C33/20 Z
   F16C17/04 Z
   F16C27/08
   B60G7/02
   B60G15/06
   F16F9/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-6671(P2016-6671)
(22)【出願日】2016年1月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 耕平
(72)【発明者】
【氏名】森重 晃一
(72)【発明者】
【氏名】今川 圭介
【テーマコード(参考)】
3D301
3J011
3J012
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA60
3D301AA75
3D301AA89
3D301CA09
3D301DB02
3D301DB17
3J011AA03
3J011BA09
3J011DA01
3J011KA03
3J011MA02
3J011RA02
3J011SC04
3J011SC12
3J011SC13
3J011SC16
3J012AB07
3J012BB02
3J012CB04
3J012DB07
3J012DB14
3J012EB05
3J012FB01
3J012HB04
3J069AA50
3J069CC36
3J069DD03
3J069DD06
3J069DD43
(57)【要約】
【課題】長期に亘り、軸部材の円滑な回動を許容しつつ、軸部材に加わる荷重を支持可能な滑り軸受を提供する。
【解決手段】
ストラットアッセンブリを車体へ取り付けるアッパーサポートに取り付けられるアッパーケース2と、アッパーケース2に回動自在に組み合わされて環状空間7を形成するロワーケース3と、環状空間7に配置される環状のセンタープレート4および摺動シート5と、を備える。アッパーケース2は環状空間7の上面を構成する荷重伝達面27を有し、センタープレート4は潤滑剤が充填される環状凹部43を備え、荷重伝達面27に加わる荷重を支持する軸受面41を有し、摺動シート5は荷重伝達面27と軸受面41との間に配置され、軸受面41と摺接する摺動面51を有する。摺動シート5は熱可塑性プラスチックで形成され、センタープレート4は熱可塑性プラスチックより高い弾性を有する熱可塑性エラストマーで形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材の回動を許容しつつ、当該軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受であって、
前記軸部材が挿入された状態で前記軸部材の支持対象に取り付けられるアッパーケースと、
前記軸部材が挿入された状態で前記アッパーケースに回動自在に組み合わされて、当該アッパーケースとの間に環状空間を形成するロワーケースと、
前記環状空間に配置された環状のセンタープレートおよび環状の摺動シートと、を備え、
前記摺動シートは、前記アッパーケースと前記センタープレートとの間、および前記センタープレートと前記ロワーケースとの間の少なくとも一方に配置され、
互いに摺接する前記センタープレートの面および前記摺動シートの面の少なくとも一方は、潤滑剤が充填される凹部を有し、
前記センタープレートおよび前記摺動シートの一方は、他方より高い弾性を有する弾性変形可能な材料で形成されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の滑り軸受であって、
前記センタープレートおよび前記摺動シートの一方は、熱可塑性プラスチックで形成され、他方は前記熱可塑性プラスチックより高い弾性を有する熱可塑性エラストマーで形成されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項3】
請求項1または2に記載の滑り軸受であって、
前記センタープレートは、軸方向断面が波形状である
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記潤滑剤が充填される前記凹部は、互いに摺接する前記センタープレートの面および前記摺動シートの面の少なくとも一方に環状に形成されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の滑り軸受であって
前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間に配置され、前記環状空間を外部から遮断するシール材をさらに備える
ことを特徴とする滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部材の回動を許容しつつ、軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受に関し、特に、ストラット式サスペンション(マクファーソンストラット)のストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる荷重を支持する滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前輪に用いられるストラット式サスペンションは、ピストンロッドおよび油圧式ショックアブソーバを備えたストラットアッセンブリに、コイルスプリングを組み合わせた構造を有しており、ステアリング操作によってストラットアッセンブリがコイルスプリングと共に回動する。このため、ストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる荷重を支持するべく、通常、車体へのストラットアッセンブリの取付機構であるアッパーマウントとコイルスプリングの上端部のばね座であるアッパースプリングシートとの間に、軸受が配置されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ストラット式サスペンション用の滑り軸受が開示されている。この滑り軸受は、アッパーマウント側に取り付けられるアッパーケースと、アッパースプリングシート側に取り付けられ、アッパーケースに回動自在に組み合わされるロワーケースと、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間に配置された環状のセンタープレートおよび環状の摺動シートと、を備えている。
【0004】
ここで、アッパーケースは、ロワーケースと組み合わされることにより形成される環状空間の上面を構成する環状の荷重伝達面を有する。センタープレートは、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂およびフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含むプラスチック(合成樹脂)で形成され、摺動シートを介してアッパーケースの荷重伝達面から伝達された荷重を支持する環状の軸受面を有する。この軸受面には、円周方向に沿って環状の凹部が形成されており、この凹部に潤滑グリースが充填される。摺動シートは、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含むプラスチックで形成され、アッパーケースの荷重伝達面とセンタープレートの軸受面との間に配置され、センタープレートの軸受面と摺動自在に接触する摺動面を有する。
【0005】
上記構成の滑り軸受は、ストラット式サスペンションに加わる荷重を、アッパーケースの荷重伝達面および摺動シートを介して、センタープレートの軸受面により支持する。また、センタープレートの軸受面の凹部に充填された潤滑グリースにより、センタープレートの軸受面とストラット式サスペンションに加わる荷重によってこの軸受面に押圧された摺動シートの摺動面とが潤滑され、これにより、ストラットアッセンブリの円滑な回動を許容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−176728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ストラット式サスペンションに加わる荷重は、車両の走行状態等によって、その方向が変動する。特許文献1に記載の滑り軸受では、ストラット式サスペンションに加わる荷重の方向変化により摺動シートおよびセンタープレートに偏荷重が加わって、摺動シートの摺動面とセンタープレートの軸受面とが片当たりすることがある。この場合、摺動シートの摺動面とセンタープレートの軸受面との間に隙間ができて、この隙間から軸受面および摺動面を潤滑する潤滑グリースが押し出されてしまう。長年の使用により、このような状態が繰り返されると、センタープレートの軸受面の凹部に充填された潤滑グリースが減少して、摺動シートの摺動面とセンタープレートの軸受面とを十分に潤滑できなくなる。その結果、アッパーケースおよびロワーケースを相対的に回転させるために必要なトルクが初期状態から増大して、ステアリング操作のフィーリングが変化してしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、長期に亘り、軸部材の円滑な回動を許容しつつ、軸部材に加わる荷重を支持することができる滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の滑り軸受は、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間に配置された環状のセンタープレート、および環状の摺動シートの一方を、他方より弾性が高い(剛性が低い)熱可塑性エラストマーで形成した。また、互いに摺接するセンタープレートの面および摺動シートの面の少なくとも一方に、潤滑剤が充填される凹部を設けた。
【0010】
例えば、本発明は、軸部材の回動を許容しつつ、当該軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受であって、
前記軸部材が挿入された状態で前記軸部材の支持対象に取り付けられるアッパーケースと、
前記軸部材が挿入された状態で前記アッパーケースに回動自在に組み合わされて、当該アッパーケースとの間に環状空間を形成するロワーケースと、
前記環状空間に配置された環状のセンタープレートおよび環状の摺動シートと、を備え、
前記摺動シートは、前記アッパーケースと前記センタープレートとの間、および前記センタープレートと前記ロワーケースとの間の少なくとも一方に配置され、
互いに摺接する前記センタープレートの面および前記摺動シートの面の少なくとも一方は、潤滑剤が充填される凹部を有し、
前記センタープレートおよび前記摺動シートの一方は、他方より高い弾性を有する弾性変形可能な材料で形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弾性変形可能な材料で形成されたセンタープレートあるいは摺動シートが弾性変形することにより、互いに摺接するセンタープレートの面と摺動シートの面とが密接して、これらの面の少なくとも一方に形成された凹部に充填された潤滑剤のシール性が向上する。このため、摺動シートおよびセンタープレートに偏荷重が加わった場合でも、互いに摺接するセンタープレートの面および摺動シートの面を潤滑する潤滑剤がこれらの面の隙間から押し出されるのを防止できる。したがって、長期に亘り、互いに摺接するセンタープレートの面および摺動シートの面を潤滑剤で潤滑することができるので、長期に亘り、軸部材の円滑な回動を許容しつつ、軸部材に加わる荷重を支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)、図1(B)および図1(C)は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、図1(D)は、図1(A)に示す滑り軸受1のA−A断面図である。
図2図2は、図1(D)に示す滑り軸受1のB部拡大図である。
図3図3(A)、図3(B)および図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、図3(D)は、図3(A)に示すアッパーケース2のC−C断面図である。
図4図4(A)、図4(B)および図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、図4(D)は、図4(A)に示すロワーケース3のD−D断面図である。
図5図5(A)は、センタープレート4の平面図であり、図5(B)は、図5(A)に示すセンタープレート4のE−E断面図であり、図5(C)は、図5(B)に示すセンタープレート4のF部拡大図である。
図6図6(A)は、摺動シート5の平面図であり、図6(B)は、図6(A)に示す摺動シート5のG−G断面図である。
図7図7(A)および図7(B)は、ダストシール6の平面図および底面図であり、図7(C)は、図7(A)に示すダストシール6のH−H断面図であり、図7(D)は、図7(C)に示すダストシール6のI部拡大図である。
図8図8は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例の図2に相当する図(図1(D)のB部拡大図)である。
図9図9は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例の図2に相当する図(図1(D)のB部拡大図)である。
図10図10(A)〜図10(C)は、センタープレート4の変形例4a〜4cの図5(C)に相当する図(図5(B)のF部拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0014】
図1(A)、図1(B)および図1(C)は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、図1(D)は、図1(A)に示す滑り軸受1のA−A断面図である。また、図2は、図1(D)に示す滑り軸受1のB部拡大図である。
【0015】
本実施の形態に係る滑り軸受1は、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリ(不図示)を収容するための収容孔10を備え、この収容孔10に収容されたストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持する。図示するように、滑り軸受1は、アッパーケース2と、アッパーケース2と回動自在に組み合わされて、アッパーケース2との間に環状空間7を形成するロワーケース3と、この環状空間7に配置された環状のセンタープレート4および環状の摺動シート5と、この環状空間7へのダストの侵入を防止するダストシール6と、図示していないが、センタープレート4に保持された潤滑グリース等の潤滑剤と、を備えている。
【0016】
アッパーケース2は、必要に応じて潤滑油が含浸されたポリアセタール樹脂等の摺動特性に優れた熱可塑性プラスチックで形成され、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリが挿入された状態で、車体へのストラットアッセンブリの取付機構であるアッパーマウント(不図示)に取り付けられる。
【0017】
図3(A)、図3(B)および図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、図3(D)は、図3(A)に示すアッパーケース2のC−C断面図である。
【0018】
図示するように、アッパーケース2は、ストラットアッセンブリを挿入するための挿入孔20を備えた環状のアッパーケース本体21と、アッパーケース本体21の上面22に形成され、滑り軸受1をアッパーマウントに取り付けるための取付面23と、アッパーケース本体21の下面24に形成され、ロワーケース3と回動自在に組み合わされることにより環状空間7を形成する環状凹部25と、を備える。
【0019】
環状凹部25の底面26には、環状空間7の上面を構成する荷重伝達面27が形成されている。荷重伝達面27は、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を摺動シート5およびセンタープレート4に伝達する。
【0020】
ロワーケース3は、ポリアミド樹脂等の熱可塑性プラスチックで成形され、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリが挿入された状態でストラット式サスペンションのコイルスプリング(不図示)の上端部のばね座であるアッパースプリングシート(不図示)に取り付けられる。
【0021】
図4(A)、図4(B)および図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、図4(D)は、図4(A)に示すロワーケース3のD−D断面図である。
【0022】
図示するように、ロワーケース3は、ストラットアッセンブリを挿入するための挿入孔30を備えた筒状のロワーケース本体31と、ロワーケース本体31の上端部35側に形成され、ロワーケース本体31の外周面36から径方向外方へ張り出したフランジ部32と、フランジ部32の上面33に形成され、ロワーケース3がアッパーケース2と回動自在に組み合わされた場合に、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25に収容されて環状空間7を形成する環状凹部34と、を備えている。フランジ部32の下面37には、アッパースプリングシートが取り付けられる。
【0023】
センタープレート4は、摺動特性に優れ、かつ摺動シート5に用いられる後述の熱可塑性プラスチックよりも高い弾性(低い剛性)を有するポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーで形成され、必要に応じてPTFE、潤滑油、シリコーン等の潤滑剤が添加される。また、センタープレート4は、ロワーケース3のフランジ部32の上面33に形成された環状凹部34内に配置され、この環状凹部34とともに環状空間7を構成するアッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27、および摺動シート5を介して、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持する(図2参照)。
【0024】
図5(A)は、センタープレート4の平面図であり、図5(B)は、図5(A)に示すセンタープレート4のE−E断面図であり、図5(C)は、図5(B)に示すセンタープレート4のF部拡大図である。
【0025】
図示するように、センタープレート4は、環状体であり、その上面40には、アッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27および摺動シート5を介して加わる荷重を支持する軸受面41が形成されている。センタープレート4は、この軸受面41が少なくとも2つの環状凸部42a、42bに挟まれた環状凹部43を有するように、軸O方向の断面形状が上下方向に波打つ波形状に形成されている。また、この軸受面43の環状凹部43には、潤滑グリース等の潤滑剤が充填される。
【0026】
摺動シート5は、PTFE等のフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の摺動特性に優れた熱可塑性プラスチックで形成され、必要に応じてPTFE(ただし、熱可塑性プラスチックがPTFE樹脂の場合を除く)、潤滑油、シリコーン、黒鉛等の潤滑剤、および/またはアラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の補強材が添加される。また、摺動シート5は、環状空間7において、センタープレート4の軸受面41とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に配置される。
【0027】
図6(A)は、摺動シート5の平面図であり、図6(B)は、図6(A)に示す摺動シート5のG−G断面図である。
【0028】
図示するように、摺動シート5は、軸O方向の断面形状が平板状に形成された環状体であり、その下面50には、センタープレート4の軸受面41と摺接する摺動面51が形成されている。摺動シート5の摺動面51がセンタープレート4の軸受面41と摺接することにより、アッパーケース2およびロワーケース3間の自在な回動が可能となる。
【0029】
ダストシール6は、ウレタン樹脂等の弾性体で形成されており、図2に示すように、ロワーケース3のロワーケース本体31のフランジ部32に装着されて、環状空間7に繋がるアッパーケース2およびロワーケース3の隙間を塞ぐ。
【0030】
図7(A)および図7(B)は、ダストシール6の平面図および底面図であり、図7(C)は、図7(A)に示すダストシール6のH−H断面図であり、図7(D)は、図7(C)に示すダストシール6のI部拡大図である。
【0031】
図示するように、ダストシール6は、ロワーケース3のロワーケース本体31のフランジ部32に装着される筒状のダストシール本体60と、ダストシール本体60の外周面61から径方向外方に延びる環状のリップ部62と、を有する。リップ部62は、ダストシール本体60がロワーケース3のロワーケース本体31のフランジ部32に装着された状態において、アッパーケース2の環状凹部25の外周側内壁28と当接する。これにより、環状空間7に繋がるアッパーケース2およびロワーケース3の隙間を塞いで、この環状空間7へのダストの侵入を防止する(図2参照)。
【0032】
上記構成を有する本実施の形態に係る滑り軸受1において、センタープレート4は、アッパーケース2の環状凹部25とともに環状空間7を構成するロワーケース3の環状凹部34内に配置され、その上面40にアッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27および摺動シート5を介して加わる荷重を支持する軸受面41を有している。また、摺動シート5は、環状空間7において、センタープレート4の軸受面41とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に配置され、その下面50にセンタープレート4の軸受面41と摺接する摺動面51を有している。そして、アッパーケース2およびロワーケース3は、センタープレート4および摺動シート5を介在させることにより、互いに回動自在に組み合わされる。これにより、滑り軸受1は、収容孔10に挿入されたストラット式サスペンションのストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持することができる。
【0033】
また、本実施の形態に係る滑り軸受1では、アッパーケース2およびロワーケース3を組み合わせることにより形成される環状空間7に配置されるセンタープレート4および摺動シート5について、摺動シート5を摺動特性のよい熱可塑性プラスチックで形成し、センタープレート4を当該熱可塑性プラスチックより高い弾性(低い剛性)を有する熱可塑性エラストマーで形成している。熱可塑性エラストマーで形成されたセンタープレート4が弾性変形することにより、摺動シート5の摺動面51とセンタープレート4の軸受面41に設けられた2つの環状凸部42a、42bとが隙間なく接触して、センタープレート4の軸受面41の環状凹部43に充填された潤滑剤のシール性が向上する。このため、アッパーケース2の荷重伝達面27を介して摺動シート5およびセンタープレート4に偏荷重が加わった場合でも、摺動シート5の摺動面51およびセンタープレート4の軸受面41を潤滑する潤滑剤が摺動シート5の摺動面51とセンタープレート4の軸受面41との隙間から押し出されるのを防止できる。したがって、長期に亘り、摺動シート5の摺動面51およびセンタープレート4の軸受面41を潤滑剤で潤滑することができるので、長期に亘り、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持することができる。
【0034】
また、本実施の形態に係る滑り軸受1では、センタープレート4の軸O方向の断面形状を波形状に形成している。このため、センタープレート4の軸O方向の断面形状を平板状に形成した場合に比べて、より大きく容易に弾性変形させることが可能となる。これにより、センタープレート4の軸受面41の環状凹部43に充填された潤滑剤のシール性がさらに向上し、より長期に亘り、摺動シート5の摺動面51およびセンタープレート4の軸受面41を潤滑剤で潤滑することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形は可能である。
【0036】
例えば、上記の実施の形態では、摺動シート5を熱可塑性プラスチックで形成し、センタープレート4を熱可塑性エラストマーで形成している。しかし、本発明はこれに限定されない。センタープレート4を熱可塑性プラスチックで形成し、摺動シート5を熱可塑性エラストマーで形成してもよい。この場合、熱可塑性エラストマーで形成された摺動シート5の摺動面51に、熱可塑性プラスチックで形成されたセンタープレート4の軸受面41の凹凸が転写されることがある。そして、摺動シート5の摺動面51に転写された凹凸の形状によっては、この凹凸が摺動シート5の摺動面51とセンタープレート4の軸受面41との摺接(回動)方向に段差を生じさせ、両者の円滑な回動を妨げる可能性がある。しかし、センタープレート4の軸受面41の凹凸を環状に形成しているので(環状凸部42a、42bおよび環状凹部43)、摺動シート5の摺動面51とセンタープレート4の軸受面41との摺接方向に段差は生じない。したがって、摺動シート5の摺動面51に転写された凹凸によって摺動シート5の摺動面51とセンタープレート4の軸受面41との円滑な回動が阻害されるのを防止することができる。
【0037】
また、上記の実施の形態では、図2に示すように、軸受面41を上方に向けてセンタープレート4を環状空間7のロワーケース3側に配置し、摺動面51を下方に向けて摺動シート5を環状空間7のアッパーケース2側に配置している。しかし、本発明はこれに限定されない。図8に示すように、軸受面41を下方に向けてセンタープレート4を環状空間7のアッパーケース2側に配置し、摺動面51を上方に向けて摺動シート5を環状空間7のロワーケース3側に配置してもよい。この場合、センタープレート4の軸受面41と摺動シート5の摺動面51との間に潤滑剤を保持するため、摺動面51にグリース溜め(環状凹部)54を設けてもよい。また、図9に示すように、センタープレート4の上下にそれぞれ摺動シート5を配置して、センタプレート4を一対の摺動シート5で上下方向に挟み込むようにしてもよい。
【0038】
また、上記の実施の形態では、図2に示すように、センタープレート4の軸O方向の断面形状を上下方向に波打つ波形状に形成しているが、本発明はこれに限定されない。容易に弾性変形可能な形状であればどのような形状であってもよい。例えば、図10(A)に示すセンタープレート4aのように、下面44を平坦面としてもよい。あるいは、図10(B)に示すセンタープレート4bのように、センタープレート4の上面40および下面44の両側に、少なくとも2つの環状凸部42a、42bに挟まれた環状凹部43を有する軸受面41を形成してもよい。あるいは、図10(C)に示すセンタープレート4cのように、3つ以上の環状凸部42a〜42cを設けることにより、2つ以上の環状凹部43a、43bを、軸受面41に形成してもよい。ここでは、環状凹部43aが環状凸部42aと環状凸部42cとの間に形成され、環状凸部43bが環状凸部42cと環状凸部42bとの間に形成されている。
【0039】
本発明は、ストラット式サスペンションを含む様々な機構において、軸部材の回動を許容しつつ、この軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:滑り軸受、 2:アッパーケース、 3:ロワーケース、 4、4a:センタープレート、 5、5a:摺動シート、 6:ダストシール、 7:環状空間、 10:滑り軸受1の収容孔、 20:アッパーケース2の挿入孔、 21:アッパーケース本体、 22:アッパーケース本体21の上面、 23:アッパーケース本体21の取付面、 24:アッパーケース本体21の下面、 25:アッパーケース本体21の環状凹部、 26:環状凹部25の底面、 27:アッパーケース2の荷重伝達面、 28:環状凹部25の外周側内壁、 30:ロワーケース3の挿入孔、 31:ロワーケース本体、 32:ロワーケース本体31のフランジ部、 33:フランジ部32の上面、 34:ロワーケース本体31の環状凹部、 35:ロワーケース本体31の上端部、 36:ロワーケース本体31の外周面、 37:フランジ部32の下面、 40:センタープレート4の上面、 41:センタープレート4の軸受面、 42a、42b:軸受面41の環状凸部、 43:軸受面41の環状凹部、 44:センタープレート4の下面、 50:摺動シート5の下面、 51:摺動シート5の摺動面、 54:グリース溜め、 60:ダストシール6のダストシール本体、 61:ダストシール本体60の外周面、 62:ダストシール6のリップ部
図1
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図10