【解決手段】キャリパブラケット(1)と、ロータディスク(2)と、キャリパ(9)によって締め付けられる2つの移動可能なパッド(5、5B)であって、摩耗から生じる粒子を放出することができる摩擦材料を備えるパッド(5、5B)と、キャリパブラケットに近接して少なくとも部分的に配置される吸引装置(3)とを備え、吸引装置は、偏向体(4)によって画定されると共に負圧が作り出される吸引領域を、各々のパッドに近接して備える、汚染しないブレーキ組立体において、偏向体は、パッドに対して外半径位置に位置付けられる少なくとも1つの部分を備えることを特徴とする、汚染しないブレーキ組立体。
前記偏向体は、前記ディスクの表面から1mmから2mmまでの間の距離(H)にある、前記ディスクに最も近い縁を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のブレーキ組立体。
前記偏向体(45)の自由な縁は、前記パッドのライニングの前端(54)に対して、ならびに、少なくとも部分的に内半径部および外半径部に対して、密に連続的に適合し、前記偏向体の前記自由な縁は、0.5mmから1.5mmまでの間の前記ライニングからの正接方向での距離(K)にある、請求項1から7のいずれか一項に記載のブレーキ組立体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、制動から生じる粒子および埃を前述の欠点の一部または全部を排除する仕方で捕捉するために、解決策を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、
- キャリパブラケットと、
- 径方向Rが相対して定められる軸Xの周りで回転するロータディスクと、
- キャリパによって提供される締め付け力の下で前記ディスクを制動するために、ディスクに圧し掛かるように意図される2つの移動可能なパッドであって、摩耗から生じる粒子を放出することができる摩擦材料を備えるパッドと、
- キャリパブラケットに近接して少なくとも部分的に配置され、キャリパブラケットに取り付けられる吸引装置と
を備え、
吸引装置は、偏向体によって画定されると共に負圧が作り出される吸引領域を、各々のパッドに近接して備える、汚染しないブレーキ組立体において、
偏向体は、パッドに対して外半径位置に位置付けられる少なくとも1つの第1の延在部を備えることを特徴とする、汚染しないブレーキ組立体を提案する。
【0008】
これらの構成があれば、ブレーキ組立体の周りでの様々な大気条件の下で、粒子捕捉率を増加することが可能である。
【0009】
具体的には、吸引領域ZAがディスクの通常の回転の方向FWに対してパッドの前方に主に位置付けられることは留意されるものであるが、局所的な大気における変化によって、粒子は必ずしもすべて正接方向に放出されない可能性があり、有利には、第1の延在部は、外向きに移動しようとする粒子を捕捉することを可能にする。
【0010】
本発明の様々な実施形態では、以下の構成の1つまたは複数が、場合によっては使用され得る。
【0011】
- 偏向体は、パッドに対して内半径位置に位置付けられる少なくとも1つの第2の延在部を備える。したがって、吸引領域ZAは、具体的には内向きに移動しようとする粒子について、さらに最適化される。
【0012】
- 吸引装置は、全体的にキャリパブラケットに近接して配置され、キャリパブラケットに取り付けられ、吸引装置は、
- 粒子を回収するための少なくとも1つの容器と、
- 吸引領域から容器へと通じる管と、
- 駆動手段によって駆動され、容器において負圧を作り出すように構成される羽根車と
をさらに備え、それによって、機械的組み込みおよび自律性を向上する。
【0013】
- 駆動手段は、機械的であってよく、そのため、ディスクにおいて擦れるローラを備えてもよく、したがって、完全な自律性を提供する。
【0014】
- 駆動手段は、電気的であってよく、制御ユニットによって制御される電気モータを備えてもよく、これは、その制御において多様性および融通性を提供する。
【0015】
- 偏向体は、有利にはディスクの表面から1mmから2mmまでの間の距離(H)にある、ディスクに最も近い縁を有する。
【0016】
- 一実施形態によれば、偏向体は、キャリパブラケットと一体に成形されてもよく、これは、解決策の構造を単純にし、コストを低減することを可能にするが、これがさらなる機械加工を排除するものではないことに留意されたい。
【0017】
- この場合、管は、キャリパブラケットにおいて、貫通孔によって一部で形成されてもよく、解決策の小形化がさらに向上される。
【0018】
- 偏向体は、鋳造アルミニウム材料から作られる別部品であり、この材料は、その場所において広がり得る高温に耐えることができる。
【0019】
- 一実施形態では、偏向体の自由な縁は、パッドのライニングの前端に対して、ならびに、少なくとも部分的に内半径部および外半径部に対して、密に連続的に適合し、偏向体の自由な縁は、0.5mmから1.5mmまでの間のライニングからの正接方向での距離(K)にあり、したがって、製造および捕捉品質における統計的ばらつきを受け入れるのに必要で十分な遊びがある。
【0020】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、非限定的な例として提供された本発明の2つの実施形態の以下の記載を読むことで明らかとなる。本発明は、添付の図面を参照することでより良く理解されもする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
様々な図において、同じ符号は、同一または同様の要素を指示している。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、具体的には特定の安全クリアランスまたは隙間といった、一部の寸法が説明における明確性のために誇張されていることは、留意されるべきである。
【0023】
図1Aは、ディスクブレーキ構成に関する本発明の第1の実施形態によるブレーキ組立体10を示している。このようなディスクブレーキ構成は、自動車、多目的車、大型車、およびバスのほかに、鉄道車両および二輪車において、非常に一般的である。この構成では、制動動作は、車輪周縁と一体であるが車輪周縁とは別である「ディスク」と呼ばれるロータに加えられる。
【0024】
特には都市部において、車両交通の増加のため、制動システムによって発せられる粒子の数の増加がある。医学研究は、呼吸器系および一般的な健康に対するこれらの粒子の有害性を認めている。そのため、周囲環境へのこれらの粒子の放出を実質的に低減することは重要であり、これが本発明の目的である。
【0025】
再生式の電気制動または渦電流制動など、可能な場合に摩擦のない制動システムを使用する努力が行われているが、摩擦制動システムは、すべての速度において効果的であり、車両を停止したままにすることができ、緊急制動のための適切で効果的な解決策を提供するため、完全に排除できないことが分かっている。
【0026】
摩擦制動では、制動は、運動エネルギーを熱へと変換することによって車輪の速度を低下させるために2つのパッドが摩擦を加える、車輪の軸Xの周りに回転するロータ2に基づいている。軸Xの周りの回転は、正接方向(または、周囲方向)Tと、径方向R(局所的に、軸および正接方向Tに対して直交する)とを定めることを可能にする。
【0027】
前方への進行に対応する回転の通常の方向FWも定められている。いずれの方向にも進行する鉄道設備については、以下で記載されている吸引装置は、FWと反対の方向を取り扱うために、重複され得ることに留意されたい。
【0028】
図1A〜
図4Bに示しているように、様々な実施形態で共通して、ブレーキ組立体10は、制動される車輪(または、制動される車軸の車輪)と一体である一定の厚さのディスクの形態のロータ2と、ブレーキキャリパ9の動作を用いて、前記ロータを制動するために、ロータに圧し掛かるように設計された2つのパッド5、5B(「ブレーキパッド」とも呼ばれる)とを備えている。
【0029】
ディスクは、ハブと、軸Xに対して垂直な符号21で表された第1の環状の側面と、第1の環状の側面と平行な第2の環状の側面22とを備えており、それら側面の径方向外側の縁は、ディスク縁23と呼ばれる周縁によって連結されている。
【0030】
ブレーキキャリパ9は、キャリパブラケット1へフローティングマウントによって取り付けられている。このマウントは、例えばピン95(「案内ピン」としても知られている)において、Xに沿って浮遊しており、良く知られているため、さらなる説明はしない。
【0031】
キャリパブラケット1は、サスペンションアームまたはハブ担体にしっかりと固定されるように意図されているクレビス11と、ディスクに跨るU字形の連結部(「ブリッジ」と称されることもある)であって、より正確には、前側における第1のブリッジ12、後側における第2のブリッジ13、および、クレビスの反対でブリッジ同士を連結する連結円弧部19とを備えている。
【0032】
道路車両の場合には、クレビス11は、ディスク2に対して車両の内側に配置され、連結円弧部19は、ディスク2に対して車両の外側に配置される。クレビス11は、留め付けネジを受け入れる孔17を用いて、サスペンションアームまたはハブ担体に固定されるように意図されている。
【0033】
パッド5は、キャリパブラケット1に対してXに沿って移動可能であるように備え付けられるが、後でさらに詳述されるように、相補的な形によって周囲方向Tおよび径方向Rにおいて実質的に動かないようにされている。
【0034】
パッド5は、ブレーキキャリパ9の内部に収容されており、パッド5のライニングがそれぞれ第1のディスク面21と第2のディスク面22とを向く状態で、ディスク2を包囲している。
【0035】
それ自体で知られているように、2つのパッド5、5Bは、ロータ2を挟み、車輪の軸方向Xと平行に方向付けられる力PFを生成するために、ピストン91によって互いに向かって駆り立てられ得る。キャリパは、概してU字形の構成を有し、本体90と、ピストン91と反対に配置された指片92とを備えている。
【0036】
各々のパッド5は、金属の裏当て50と、摩擦による摩耗から生じる粒子8を放出する可能性のある摩擦材料を備えた圧力を加える本体51とを有している。圧力を加える本体は「ライニング」51とも呼ばれ、摩擦材料は、そのブランド名によって称されることもある。摩擦面は符号52で表されており、ライニング51が擦り減るにつれて、この面は、裏当て板50に徐々に近づくように移動する。
【0037】
裏当て板50は、各々の端において舌部56を備えており、各々の舌部は、キャリパブラケット1のぴったりと合う筐体14に受け入れられる。これは、正接方向Tおよび径方向Rにおいて動かないようにでき、筐体は、軸方向Xにおける舌部の移動を許容する。
【0038】
本発明によれば、ブレーキ組立体10は、制動による摩耗から生じる粒子および埃8を捕捉することができる吸引装置3を備えている。
【0039】
吸引装置3は、キャリパブラケット1の身近な環境へのそれ自体の組み込みを容易にする寸法を有している。
【0040】
より具体的には、吸引装置3は、
- パッドのライニングの近くに捕捉領域を定めることを可能にする偏向体4を備えた吸引領域ZAと、
- 摩擦材料の粒子8を回収するための回収容器38と、
- 吸引領域ZAから回収容器38へと通じる管31、32であって、すなわち、容器に通じる共通部分を場合によっては備える、一方の側のための第1の管31、および、他方の側のための第2の管32と、
- 後で説明されることになる駆動手段によって駆動され、そのため、容器において負圧を作り出すことができる羽根車36と
を備える。
【0041】
フィルタが容器に設けられており、フィルタは、負圧を作り出すために空気の通過を許容するが、粒子8の通過を許容しない。
【0042】
負圧は、羽根車の回転によって容器38において作り出される。この負圧は、吸引口47において、および、偏向体4によって画定された捕捉領域ZAにおいて、管においても広がる。負圧は、捕捉領域ZAから容器38へと粒子を引き込むのに十分である。
【0043】
別の言い方をすれば、偏向体4は、ディスク2およびライニング51と共に、吸引領域ZAと呼ばれるいくらか包囲された空間を定めている。
【0044】
有利には、先行技術の特定の解決策と異なり、粒子を撒き散らすことになる吹き付けが使用されない。
【0045】
ある有利な態様によれば、偏向体は、パッドに対して外半径位置に位置付けられる第1の延在部41を備える。
【0046】
偏向体が、パッドに対して内半径位置に位置付けられる第2の延在部42を備えることも、可能である。
【0047】
図3に示しているように、時間tにおいて広がる大気に依存して、粒子の排出は、厳密に正接である排出の形態ETでは必ずしも起こらない。かなりの頻度の状況において、外側に向かう排出EFが見られ、他のより稀な状況では、中心に向かう排出EPが見られさえする可能性もある。当然ながら、外側に向かう排出と中心に向かう排出とを同時に伴う軌跡での著しい撒き散らしもあり得る。
【0048】
外半径位置および内半径位置にそれぞれ位置付けられている延在部41、42からの覆いは、
図3においてかなり広範囲に及んでいるが、
図6ではそれほど広範囲に及んでいないことが分かる。
【0049】
実際には、ライニングは、Xに中心付けられた円の円弧を形成する外側縁58を有しており、この外側縁は前端59を有しており、発明者は、外の延在部41が少なくとも前記前端59まで延びなければならないことを決定している(
図6参照)。好ましくは、外の延在部41は、円の円弧を形成する外側縁58の前端59を覆う。
【0050】
図2で示しているように、偏向体4は、ディスクの表面から1mmから2mmまでの間の距離Hに位置付けられている、ディスクに最も近い縁を有している。別の言い方をすれば、Hは、ディスクの表面に対する偏向体4のクリアランスである。
図2では、キャリパブラケット1が表されていないことは留意されるものである。
【0051】
偏向体の自由な縁45の形は、パッドのライニングの前端54に対して、ならびに、少なくとも部分的に内半径部および外半径部に対して、密に連続的に適合している。有利な一実施形態では、偏向体の自由な縁は、0.5mmから1.5mmまでの間のライニングからの距離Kにある。
【0052】
偏向体の覆いは、唯一の厳密に必要なものであり、パッドおよび他の構成要素の冷却への影響は最小である。
【0053】
ディスク2も擦り減らされ、吸引装置によって同じく捕捉される金属粒子を放出することは、留意されるものである。
【0054】
ここまでにおいて、記載は異なる実施形態について同じであることは、留意されるものである。
【0055】
具体的には
図1Aおよび
図4Aにおいて描写されている第1の実施形態によれば、駆動手段は、特許文献1においてすでに言及されている機械的な解決策に基づいている。ローラ39がロータの縁23に当たっており、ローラは摩擦によって駆動される。バネ荷重の掛けられた搭載によって、加えられる圧力を調節することができる。増速/減速歯車が、ディスクの速度と、所望の負圧を満たす羽根車の速度との間の比例定数を得るために、提供されてもよい。
【0056】
示した例では、偏向体4は、鋳造アルミニウムなどの材料から作られた別部品である。
【0057】
図1Bおよび
図4Bにおいて描写されている第2の実施形態によれば、電気モータ35が羽根車を駆動するための手段として使用されている。この電気モータは、例えばブレーキペダルにおける運転者の制動動作に基づいて、電気モータを作動するように構成されたソフトウェアを備える制御ユニット(図示せず)によって制御される。
【0058】
一変形形態(図示せず)によれば、ブレーキ組立体の各々へと管によって連結された中央化ユニットにおいて負圧発生要素が用いられる。
【0059】
図示した例では、偏向体4は、鋳造アルミニウムなどの材料から作られた別部品である。
【0060】
図示した2つの実施形態では、偏向体4、4Bはキャリパブラケット1に対してしっかりと備え付けられている。ディスクに対するキャリパブラケットの位置が非常に正確であるため、偏向体4、4Bの位置は、パッドの擦り減りの度合いに係わらず、ディスクに対して適切に維持され、したがって、パッド5のライニング51の残りの厚さに係わらず、適切に維持された寸法Hおよび寸法K(上記参照)を得ることが可能である。
【0061】
図示した2つの実施形態では、偏向体4、4Bは、鋳造アルミニウムなどの材料から作られた別部品として形成されている。
【0062】
一変形形態(図示せず)によれば、偏向体はキャリパブラケット1と一体に成形される。この場合、
図4Bに示した場合にあるように、管は、キャリパブラケットにおいて、貫通孔18によって一部で形成されてもよい。
【0063】
一変形形態(図示せず)によれば、キャリパはキャリパブラケットに固定的に備え付けられてもよいことに留意されたい。