(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-12697(P2017-12697A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】遊技機用の複合装飾シート及びこれを備えた遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20161222BHJP
【FI】
A63F7/02 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-135708(P2015-135708)
(22)【出願日】2015年7月6日
(71)【出願人】
【識別番号】507224853
【氏名又は名称】山本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】服部 美千代
(72)【発明者】
【氏名】市原 啓子
【テーマコード(参考)】
2C088
【Fターム(参考)】
2C088DA13
2C088EA01
2C088EA33
(57)【要約】
【課題】製造に際してうまく空気を抜くことができることは勿論、高温の環境試験を実施してもアウターガスによる小泡の発生を抑制することができると共に、前面の平滑性の低下を抑制することができた複合装飾シートとこれを備えた遊技機の提供を図る。
【解決手段】遊技機の合成樹脂製基板20の前面側に遊技機用の装飾シート10を貼り合わせる。装飾シート10は、易変形シート11と難変形シート21との変形性の異なる2枚のシートと、両シートを重ねて貼り合わせる接着剤層23と、絵柄層22とを備えた複合装飾シート10によって構成される。難変形シート21は、PET製の易変形シート11の1.5倍以上の厚みを有する。絵柄層22は、10μm以上の厚みの差を有する凹凸が形成されたものであり、接着剤層23は、光硬化型接着剤により形成されたものである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機の合成樹脂製基板の前面側に貼り合わせられて、前記遊技機の前面を構成する遊技機用装飾シートにおいて、
前記装飾シートは、易変形シートと難変形シートとの変形性の異なる2枚のシートと、前記2枚のシートを重ねて貼り合わせる接着剤層と、前記2枚のシートのうち少なくとも何れか一方のシートの貼り合わせ面に印刷された絵柄層とを備えた複合装飾シートによって構成され、
前記難変形シートは前記遊技機の前面側に配置され、前記易変形シートの後面側が前記合成樹脂製基板の前面側に貼り合わせられ、
前記難変形シートは、前記易変形シートの1.5倍以上の厚みを有し、
前記易変形シートは、PET製のシートであり、
前記絵柄層は、これを構成する印刷の有無、絵柄層の多寡、印刷インキの種類、印刷形式の相違などの表現形態の相違によって生じる凹凸が、前記貼り合わせ面側に形成されたものであり、
前記凹凸は、10μm以上の厚みの差を有するものであり、
前記接着剤層は、光硬化型接着剤により形成されたものであることを特徴とする遊技機用の複合装飾シート。
【請求項2】
前記難変形シートは、CAB製又はPET製で75〜300μmの厚みを有するシートを含むことを特徴とする請求項1記載の遊技機用の複合装飾シート。
【請求項3】
前記光硬化型接着剤層は、10〜30μmの厚みを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の技機用の複合装飾シート。
【請求項4】
前記易変形シートは、50μm未満の厚みを有するPET製のシートであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の技機用の複合装飾シート。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の前記複合装飾シートを、前記易変形シートを後面側にして合成樹脂製の基板の前面に貼り合わせたことを特徴とする遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機やパチスロ遊技機などの遊技機に用いられる複合装飾シート及び遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機やパチスロ遊技機などの遊技機に用いられる化粧板については、種々の改良が提案されている。特に近年は、プレーヤーの関心を惹くように、華燭性の高さが求められる傾向があり、特許文献1〜3に示される遊技機のように、種々の改良が加えられた化粧板が提案されている。
【0003】
特許文献1には、化粧板の華燭性を高める凹凸面鏡シートの前面側に遮光性インキ層と着色インキ層とを印刷によって施すと共に、その印刷面上に、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂製の透光性シートを、紫外線硬化型接着剤を介して接着したものが開示されている。凹凸面鏡シートは非透過シートであり、その印刷シートに対して透光性シートを正確に位置決めし確実に貼り合わせることは困難であり、その解決が求められている。
【0004】
特許文献2は、透明樹脂シートの後面華燭性に、少なくとも(i)絵柄層、金属薄膜柄層、及び台紙、又は(ii)金属薄膜柄層、絵柄層、及び台紙が順次積層された積層体に、更に台紙の外前面に基板を接合してなる遊技機用化粧板であって、金属薄膜柄層が金属薄膜転写用紫外線硬化型接着剤(粘着糊)をオフセット印刷し、次に紫外線硬化型接着剤(粘着糊)上に金属薄膜を転写した後、紫外線照射手段により紫外線硬化型接着剤(粘着糊)を硬化して形成された層であることを特徴とする遊技機用化粧板を提案するものである。より詳しくは、この特許文献2は、コールドフォイルシステムによって、金属薄膜転写用紫外線硬化型接着剤(粘着糊)を塗布して金属薄膜柄層の金属薄膜を転写するものである。コールドフォイルシステムは、複数のローラ間にウエブ状の連続シートを移送させながら金属薄膜転写用紫外線硬化型接着剤(粘着糊)を印刷して塗工するものであるため、シート同士の位置ずれが僅かながら生じるおそれがあり、シートやパネルの位置合わせを正確に行う必要のある特許文献1への転用が困難である。
【0005】
また、特許文献3にあっては、遊技板と接着する接着剤からなる第1接着層と、前記第1接着層の上面に積層される第1樹脂フィルムと、前記第1樹脂フィルムの上面に設けられる印刷層及び第2接着層と、前記印刷層及び前記第2接着層の上面に積層される第2樹脂フィルムと、前記第2樹脂フィルムの上面に積層されるハードコート層とを備えていることを特徴とする遊技板用保護フィルムが示されている。前記第1樹脂フィルムと前記第2樹脂フィルムとは同じものを用いるとされており、発明の実施例にあっては、50μm厚のPETフィルムを用いることが示されている。
【0006】
ところが、華燭性を高めるために印刷層を複数層としたり金属薄膜層を付加したりすると無地の部分との凹凸の厚みの差が大きくなる。
その結果、次の問題が生じてしまう。
【0007】
1)基板との貼り合わせに際して、空気が浸入し、その空気をうまく抜くことができない。
2)空気をうまく抜いて貼り合わせることができたとしても、高温の環境試験を実施すると、基板のポリカーボネート等の合成樹脂層から、アウターガスが発生して、このガスが小泡となって基板と第1樹脂フィルムとの間に止まってしまう。
【0008】
3)遊技球の走行面である前面側の第1樹脂フィルム及びハードコート層に凹凸が生じてしまい、平滑性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許4819108号公報
【特許文献2】特開2010−68916号公報
【特許文献3】特開2014−3992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、製造に際してうまく空気を抜くことができることは勿論、高温の環境試験を実施してもアウターガスによる小泡の発生を抑制することができると共に、前面の平滑性の低下を抑制することができた複合装飾シートとこれを備えた遊技機の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、遊技機の合成樹脂製基板の前面側に貼り合わせられて、前記遊技機の前面を構成する遊技機用装飾シートにおいて、前記装飾シートは、易変形シートと難変形シートとの変形性の異なる2枚のシートと、前記2枚のシートを重ねて貼り合わせる接着剤層と、前記2枚のシートのうち少なくとも何れか一方のシートの貼り合わせ面に印刷された絵柄層とを備えた複合装飾シートによって構成され、前記難変形シートは前記遊技機の前面側に配置され、前記易変形シートの後面側が前記合成樹脂製基板の前面側に貼り合わせられ、前記難変形シートは、前記易変形シートの1.5倍以上の厚みを有し、前記易変形シートは、PET製のシートであり、前記絵柄層は、これを構成する印刷の有無、絵柄層の多寡、印刷インキの種類、印刷形式の相違などの表現形態の相違によって生じる凹凸が、前記貼り合わせ面側に形成されたものであり、前記凹凸は、10μm以上の厚みの差を有するものであり、前記接着剤層は、光硬化型接着剤により形成されたものであることを特徴とする遊技機用の複合装飾シートを提供する。
【0012】
前記難変形シートは、CAB製又はPET製で75〜300μmの厚みを有するシートを含むものとして実施することができる。
前記光硬化型接着剤層は、10〜20μmの厚みを有するものとして実施することができる。
【0013】
前記易変形シートは、50μm未満の厚みを有するPET製のシートであることがより望ましい。
本発明は、前記複合装飾シートを、前記易変形シートを後面側にして合成樹脂製の基板の前面に貼り合わせたことを特徴とする遊技機を提供する。
【0014】
なお、各シートは、一枚のフィルムで構成することもでき、複数のフィルムを積層したシートであってもよい。従って、本発明において、シートとはフィルム及びシートを含むものであると理解されるべきである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、製造に際してうまく空気を抜くことができることは勿論、高温の環境試験を実施してもアウターガスによる小泡の発生を抑制することができると共に、前面の平滑性の低下を抑制することができた複合装飾シートとこれを備えた遊技機の提供を課題とすることができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の複合装飾シートを製造する方法の一例を示すもので、(A)は載置工程の説明図、(B)は基板の斜視図。
【
図2】同方法を示すもので、(A)は位置固定工程の平面説明図、(B)は同要部拡大側面図。
【
図3】同方法を示すもので、(A)は空気排除工程の平面説明図、(B)は同要部拡大側面図。
【
図4】同方法を示すもので、(A)は硬化工程の平面説明図、(B)は同要部拡大側面図。
【
図5】本発明の実施の形態に係る複合装飾シートとこれを備えた遊技機の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
まず、
図5を参照して、本発明の実施の形態にパチンコ遊技機の完成状態の構成を説明する。
この遊技機は、その前面の大部分を構成する遊技盤30を備え、この遊技盤30は、複合装飾シート10を合成樹脂製の基板20の前面に貼り合わせたものである。
【0018】
この複合装飾シート10は、透過性シートである易変形シート11の前面側(図の上方側)に、難変形シート21を光硬化型接着剤23にて接着固定したものである。難変形シート21は、その後面側(図の下方側)に絵柄層22を印刷や転写箔を設けることによって装飾が施されることによって紫外線を透過しない非透過シートであり、複合装飾シート10全体では後面側から前面側に向けて、易変形シート11、絵柄層22、光硬化型接着剤23、難変形シート21が積層されている。
【0019】
この複合装飾シート10は、難変形シート21が遊技球の走行面を形成するものであり、その前面側から遊技球の走行路を規制する釘(図示せず)が打ち込まれて、易変形シート11を貫通し、その後面側の基板20に固定される。
なお、絵柄層22は、
図4には図示していない。また各図は層構造のみを示すものであり、その厚みは正確に示されていない。
【0020】
基板20は、ポリメタクリル酸メチル樹脂などのアクリル樹脂製やポリカーボネート樹脂製の透光性パネルである。基板20の形状は、1辺が600mm程度の正方形又は長方形をなし、その厚みが10mm程度で、自立性ある剛体パネルである。この基板20の製法や材質は紫外線を透過し得るものであれば特に制限はなく、押し出し加工品を切断したものであってもよく、型成形品であってもよい。
【0021】
この基板20と複合装飾シート10とは、粘着剤12によって貼り合わせることができる。この貼り合わせは従来より多用されている方法を用いることができる。粘着剤12は、完成された複合装飾シート10の後面に塗布するものであってもよく、さらに、完成された複合装飾シート10の保管や移送の便のために離型シート13を粘着剤12の後面に貼り付けておき、この離型シート13を外して、基板20と複合装飾シート10とは、粘着剤12によって貼り合わせるようにしてもよい。また、複合装飾シート10を構成する易変形シート11の後面に予め粘着剤12と離型シート13とを積層し、この易変形シート11のによって、複合装飾シート10を形成するようにしてもよい。
【0022】
次に、複合装飾シート10は、易変形シート11と難変形シート21とを備えた複合シートである。これらのシートは基板20と同じく1辺が600mm程度の正方形又は長方形をなす。
易変形シート11には、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)を用いる。この易変形シート11は、難変形シート21よりも薄く変形し易いものであり、60μm未満、より望ましくは50μm未満の厚みを有するものであることが適当である。但し、25μm以上の厚みを有する方が、絵柄層22により生じる凹凸を必要以上に後面側に現出させない点で適当である。
【0023】
難変形シート21は、PET樹脂又はCAB樹脂(セルロースアセテートブチレート樹脂)製で、易変形シート11の1.5倍以上の厚みを有する。具体的には、約300μm未満の厚みを有する合成樹脂製シートであることが適当であり、特に、75〜250μm未満の厚みを有するものであることが適当である。さらに、PET樹脂製の場合には、100μm前後(75〜150μm)、CAB樹脂製の場合には、200〜250μmであることが望ましい。
【0024】
難変形シート21の平面形状は、一般的には、透明であるが、本発明の実施に関しては透明性は問わない。この易変形シート11と難変形シート21は、連続するウエブ状で提供され得るが、両社の接着の際には、上記の平面形状に切断済の形態で実施されることが適当である。
【0025】
また、難変形シート21は、1層である必要はなく、例えば、PET樹脂の前面にハードコート層(図示せず)をコーティングしたものであってもよい。このハードコート層は、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂を主成分とする樹脂を用いるとができ、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等を例示することができ、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンメタクリレートなどの分子末端にアクリル基又はメタクリル基を有しているものが好適に使用できる。
【0026】
この難変形シート21の後面側には、複合装飾シート10の絵柄層22が印刷などによって形成される。なお、難変形シート21の後面側に加えて易変形シート11の前面側に形成することもでき、易変形シート11の前面側のみに形成することもできるものであり、難変形シート21と易変形シート11との貼り合わせ面に形成される。但し、難変形シート21の後面側にのみ加工する方が、次に述べる凹凸の解消には有利である。
【0027】
絵柄層22のインキは、難変形シート21に印刷できることを条件に種々のものを用いることができ、印刷方法についても、シルクスクリーン印刷やグラビア印刷など自由に選択することができる。また例えばオフセット印刷とシルク印刷とを組み合わせるなどの実施をすることができる。
【0028】
さらにインキ以外に、金属箔等で形成される金属薄膜やホログラムホイル、ホログラムフィルム、ホログラムシール等のようなホログラム手段を備えた光フィルムを用いることもできる。
この絵柄層22は、全面に形成されるが、その表現形態によって、部分的に、印刷の有無、絵柄層の多寡、印刷インキの種類、印刷形式の相違などの表現形態の相違によって生じる凹凸が、前記貼り合わせ面側に形成されたものであり、10μm以上(10〜30μm程度)の厚みの差を有するものである。
【0029】
難変形シート21と易変形シート11とは、接着剤層によって貼り合わせられる。この接着剤層は、UV接着剤などの光硬化型接着剤23により形成されるもので、紫外線エネルギーなどの光エネルギーが照射されることにより、光開始剤などの作用により短時間に重合硬化する。重合の化学反応種としてはラジカル重合を用いるものやイオン重合を用いるものが知られている。ラジカル重合タイプとしては、エポキシ変性、ウレタン変性、シリコーン変性などのアクリレートラジカル重合を例示することができ、イオン重合としてはエポキシカチオン重合を例示することができるものであり、種々のものを選択して用いることができる。この接着剤層は、10〜30μm程度が適当であり、10〜20μmの厚みを有するものであることが望ましく、この光硬化型接着剤23を硬化前に、前記凹凸の全体に塗布し、その後、光エネルギーを付与して、硬化させることで、易変形シート11への凹凸の現出を減少させる。
【0030】
以上の層構成によって、前記凹凸を抑え込みつつ、全面側と後面側とに分散して現出させることがきる。凹凸が、複合装飾シート10の後面側に現出すると、基板20との貼り合わせに悪影響を与え、基板20から発生するアウターガスを抑え込むことが困難となり、このガスが小泡となって現れてしまう。その対策として、後面側のシートを厚くすると、複合装飾シート10の前面側に凹凸が現出し、遊技球の走行面の平滑性を低下させる。そのため、特許文献3のように、前後のシートを50μmとすると、アウターガスの抑え込み不良と遊技球の走行面の平滑性と低下との両課題が共に生じ易くなってしまい、その解決が困難となる。
【0031】
そこで、遊技球の走行面の平滑性を低下させることを難変形シート21によって抑制し、易変形シート11にて前記凹凸を緩和させると共に、光硬化型接着剤23を硬化前に、前記凹凸の全体に塗布し、その後、光エネルギーを付与して、硬化させることで、易変形シート11への凹凸の現出を減少させることによって、上記の両課題を一挙に解決するものである。
【0032】
なお、難変形シート21にCAB樹脂製(特に、200〜250μm厚)を用いると、釘打ちが比較的容易である利点がある反面、温度変化によって、1〜2mmの平面方向に伸縮する弊害を生むおそれがある。ところが、易変形シート11としてPET樹脂シートを用いることによって、その伸縮を止めることができるという利点も生じる。
【0033】
(製造工程の説明)
上記の複合装飾シート10は、塗布工程、載置工程、位置固定工程、空気排除工程、硬化工程の各工程を順に経て製造される。以下、これらの各工程を製造装置と共に説明する。
【0034】
(塗布工程)
塗布工程は、非透過シートである難変形シート21の後面と、透過性シートである易変形シート11の前面との少なくとも何れか一方に、光硬化型接着剤23を塗布する工程である。
【0035】
この工程は、シートやパネルに対して液体を塗布する種々の手段を採用でき、例えば、シルクスクリーンやグラビア印刷などの印刷方法で塗布することもでき、スプレーコート、エアレスコート、ロールコート、ハケ塗り、ローラ塗りによってなされてもよい。光硬化型接着剤23の膜厚は、その種類によっても変化するが、10〜30μm程度が適当であり、10〜20μmであることがより望ましい。
【0036】
(載置工程)
載置工程は、易変形シート11の前面側を上面として、その上に難変形シート21を置く工程であり、易変形シート11の前面(上面)と、難変形シート21の後面(下面)との何れかに光硬化型接着剤23が塗布され、光硬化型接着剤23の上下に易変形シート11と難変形シート21とが配置されるものである。
【0037】
この載置工程において、易変形シート11と難変形シート21とは正しく位置決めされて重ねられる。具体的には、
図1に示すように、直交する2辺に直線状の位置決め部42が設けられた載置台41の上に、易変形シート11を載置し、その上に難変形シート21を載置する。その際に、易変形シート11と難変形シート21の2辺を正確に位置決め部42に当接させて載置することで、易変形シート11と難変形シート21とを正しく位置決めして重ねることができる。
【0038】
(位置固定工程)
位置固定工程は、載置工程の後に、易変形シート11と難変形シート21との一部同士を固定する工程であり、この工程によって易変形シート11と難変形シート21とが正しく位置決めされた状態下で固定される(
図2(A)(B)参照)。この固定は、次になされる空気排除工程に際して、易変形シート11と難変形シート21とがずれないように固定するものである。空気排除工程では、
図3に示すように、ローラ45やヘラなどの押圧部材に対して易変形シート11と難変形シート21とが一方向に相対的に移動させられるものである。従って、位置固定工程では、易変形シート11と難変形シート21とを、上記相対的移動の上手にあたる1辺(図では右辺)を、位置固定辺31として固定するものであり、他の3辺は固定されない自由辺33となる。この位置固定辺31における固定は、線状に行なっても良いが、前記目的のためになされるものであり、この例では、点状の接着部32を位置固定辺31に沿って複数形成することで、位置固定がなされる。
【0039】
より具体的には、載置台41(
図2では図示せず)上に重ねて載置された易変形シート11及び難変形シート21に対して、事前照射装置43から紫外線を照射することによって、接着部32が形成される。接着部32は、例えば直径5〜10mm程度の円形として実施することができ、難変形シート21から数cm離れた位置に配置された紫外線照射用のLEDを備えた事前照射装置43から、紫外線を数秒間照射することで、光硬化型接着剤23が硬化する。また、線状の事前照射装置43を用いて、位置固定辺31に沿って、所定の幅の接着部32を設けることも可能である。このように、易変形シート11と難変形シート21とを後述の硬化工程にて接着するために予め塗布された光硬化型接着剤23を利用して、位置固定を行なうため、別途の接着剤を位置固定用のために塗布する必要がなく有利である。
【0040】
この紫外線照射に際しては、易変形シート11と難変形シート21とが移動しないように、帯状の押圧体44を位置固定辺31に沿って配置することも望ましい。この押圧体44は、上方に配置された事前照射装置43からの紫外線を透過するように、透明体で構成することが望ましい。また、押圧体44と事前照射装置43とを連結して、押圧体44が難変形シート21を押さえた段階で、難変形シート21と事前照射装置43との間隔が上記の所定の間隔に設定維持されるようにしてもよい。
【0041】
(空気排除工程)
空気排除工程は、固定された位置固定辺31から対向する位置にある自由辺33に向けて、ローラ45などの押圧手段を相対的に移動させることによって、易変形シート11と難変形シート21との間の脱泡を行う工程である(
図3(A)(B)参照)。光硬化型接着剤23は空気が存在すると良好な硬化が不可能なため、易変形シート11と難変形シート21との間の気泡24を排除する必要があり、ローラ45によって、脱泡を行なう。この空気排除工程の工程時に、易変形シート11と難変形シート21とが正確な位置を維持することが重要であり、そのため、前述の位置固定工程によって位置ずれを抑制する。この位置ずれは、例えば、押圧体で押さえておくことでも可能である。ただし、上述のように、光硬化型接着剤23を位置決め部42で部分的に硬化させることよって、易変形シート11上に何も存在しない状態で、易変形シート11と難変形シート21との位置固定辺31を固定できるため、ローラ45の相対的移動をスムーズに行なうことができる。また位置固定辺31の接着部32は、10mm以下の小さなドットや帯状部分であるため、その部分を最終段階で捨てるとしても、10mm以下の細い帯状部分を捨てるだけで済むため、材料に無駄を生じることがない。なお、前述の位置固定工程での接着と後述の硬化工程での接着とも、共に同じ光硬化型接着剤23を紫外線で硬化させるため、両者の均質性も得ることができるため、場合によっては、位置固定工程での接着部32を捨てることなく、製品として利用することも可能となる。なお、押圧手段は、回転可能なローラ4の他、スクレーパ等の回転せずに21を上から押すものであってもよい。
【0042】
ローラ45の移動は、位置固定辺31を上手として、対向する自由辺33を下手として、ローラ45によって難変形シート21の上面を押圧しながら、移動させる。その際、易変形シート11及び難変形シート21を停止させた状態でローラ45を移動させてもよく、ローラ45を停止させた状態で易変形シート11及び難変形シート21を移動させてもよく、両者を移動させてもよい。ローラ45は自由回転状態としてもよく、自転するものであってもよい。ローラ45に代えて、へら状の板部材など、易変形シート11を難変形シート21に押圧して空気を抜くことができるものに変更して実施することも可能である。
【0043】
(硬化工程)
硬化工程は、易変形シート11及び難変形シート21の全面に介在する光硬化型接着剤23の全体を硬化させる工程である。具体的には易変形シート11及び難変形シート21の全幅以上の照射範囲を有する紫外線照射装置55を、易変形シート11及び難変形シート21に対して、相対的に移動させることによって、その全面に紫外線を照射する。その際、この例では、易変形シート11の上面に難変形シート21を重ねた状態で、移動させる。ところが、難変形シート21には予め絵柄層22が印刷されているため、上方のみから、紫外線を照射させた場合、難変形シート21の絵柄層22によって、光硬化型接着剤23に紫外線が到達しない箇所が生じる。そのため、下方から紫外線を照射することによって、全体が紫外線透過性を有する易変形シート11内部を通って、光硬化型接着剤23の全面に紫外線が到達するものである。
【0044】
この下方からの紫外線の照射を効率的に行なうには、
図4(A)(B)に示すように、上流ベルトコンベア51と下流ベルトコンベア52とにより構成される上流移送面53と下流移送面54との間を、易変形シート11の上に難変形シート21を重ねた状態で移動させ、その際、上流移送面53と下流移送面54との間に隙間56を設けておき、隙間56の下方に紫外線照射装置55を配置する。この紫外線照射装置55から紫外線を上方に照射することによって、光硬化型接着剤23を順次硬化させることによって、全面の光硬化型接着剤23をムラなく硬化させることができ、これによって複合装飾シート10が完成される。移動装置としては、上記のベルトコンベア51、52を用いることができる他、ローラコンベアや他のコンベアであってもよい。また、易変形シート11及び難変形シート21を紫外線透過性のある載置台に載置して、紫外線照射装置55を相対的に移動させるものであってもよく、より具体的には、載置台と紫外線照射装置55との少なくとも何れか一方をシリンダやギアなどの移動装置で相対的に移動させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 複合装飾シート
11 易変形シート
12 粘着剤
13 離型シート
20 基板
21 難変形シート
22 絵柄層
23 光硬化型接着剤(接着剤層)