【解決手段】端末処理装置には、車両が受ける振動データが振動データ等記憶手段22に入力され記憶される。端末処理装置の振動データ確認手段23が、振動データが通常だと判断した時には、複数の端末処理装置が、所定のサンプリング間隔で、無線送信機26により、振動データを中央処理装置に送信する。端末処理装置の振動データ確認手段23が、振動データが異常だと判断した時には、端末処理装置が送信要求有線50により、中央処理装置に送信要求を行う。中央処理装置が送信許可有線60により、端末処理装置に送信許可を与える。送信許可を得た端末処理装置は無線送信機26により、異常だと判断したデータを中央処理装置に送信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術には次のような問題があった。
すなわち、例えば、特定の車両で異常データを検出した時であっても、中央処理装置からの指令を待たなければ、端末処理装置から中央処理装置に、異常データを送信することができないため、列車全体として異常データに対する対応が遅れ、危機管理上大きな問題である。
一方、端末処理装置から中央処理装置に送信要求をする場合に、無線により行うと、列車の走行状態等の外部要因により、確実に送信要求が中央処理装置に届かない恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、本発明の列車のデータ送信方法は、次のような構成を有している。
(1)各々に端末処理装置を備える複数車両が連結され、先頭車両には、中央処理装置がさらに備えられている列車のデータ送信方法において、端末処理装置には、車両の状態データが入力され記憶されること、端末処理装置が、状態データが正常だと判断した時には、複数の端末処理装置が、所定のサンプリング間隔で、無線により、状態データを中央処理装置に送信すること、端末処理装置が、状態データが異常だと判断した時には、端末処理装置が送信要求有線により、中央処理装置に送信要求を行い、中央処理装置が送信許可有線により、端末処理装置に送信許可を与えること、送信許可を得た端末処理装置は無線により、異常だと判断したデータを前記中央処理装置に送信すること、を特徴とする。
【0006】
(2)(1)に記載する列車のデータ送信方法において、前記送信要求有線が、前記複数車両に対して直列に配線されていること、前記送信要求は、前記端末処理装置に割り当てられた周期でON/OFFすることにより、車両を特定して送信されること、前記送信許可有線が、前記複数車両に対して直列に配線されていること、を特徴とする。
【0007】
本発明は、上記課題を解決して、車両の端末処理装置が検出した異常データを遅滞なく、中央処理装置に送信することのできる列車のデータ送信方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の列車のデータ送信方法は、次のような作用・効果を奏する。
(1)各々に端末処理装置を備える複数車両が連結され、先頭車両には、中央処理装置がさらに備えられている列車のデータ送信方法において、端末処理装置には、車両の状態データが入力され記憶されること、端末処理装置が、状態データが通常だと判断した時には、複数の端末処理装置が、所定のサンプリング間隔で、無線により、状態データを中央処理装置に送信すること、端末処理装置が、状態データが異常だと判断した時には、端末処理装置が送信要求有線により、中央処理装置に送信要求を行い、中央処理装置が送信許可有線により、端末処理装置に送信許可を与えること、送信許可を得た端末処理装置は無線により、異常だと判断したデータを前記中央処理装置に送信すること、を特徴とするので、特定の車両で異常状態データが検出された時に、端末処理装置から中央処理装置に送信要求を出し、中央処理装置の送信許可信号を受けて、端末処理装置が速やかに異常状態データを中央処理装置に送信できるため、危機管理を適切に行うことができる。このとき、送信要求と送信許可とが、各々有線で行われるため、確実に送信を開始することができる。
【0009】
(2)(1)に記載する列車のデータ送信方法において、前記送信要求有線が、前記複数車両に対して直列に配線されていること、前記送信要求は、前記端末処理装置に割り当てられた周期でON/OFFすることにより、車両を特定して送信されること、前記送信許可有線が、前記複数車両に対して直列に配線されていること、を特徴とするので、中央処理装置は、異常状態データの送信先の車両を容易に特定できるため、運転士は、車両を停止した後、特定された車両を速やかに点検することができる。また、送信要求有線と送信許可有線とが、各複数車両に対して直列に配線され、各々単線で信号をシリアルに送信しているため、各車両間を繋ぐ配線を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のデータ送信方法を行うデータ送信システムの一実施の形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
本実施例では、状態データとして振動データを一例として説明を行う。
<データ送信システムの構成>
図1に、列車の配線図を示す。
図1に示す列車は、車両A、車両B・・・車両Jで構成されている。本実施形態では車両数が10車両であるが、2つ以上の車両であれば車両の数は問わない。
車両Aは、運転士が運転する先頭車両である。車両Aには、中央処理装置10と端末処理装置20Aが設置されている。また、車両Bには端末処理装置20B・・・車両Jには端末処理装置20Jが設置されている。
【0012】
図1に示すように、中央処理装置10と端末処理装置20Aは、送信要求有線50Aで接続している。端末処理装置20Aと端末処理装置20Bは、車両間をコネクタ51Aで接続しながら送信要求有線50Bで接続している。端末処理装置20B以降、端末処理装置20Jまでは、同様に車両間をコネクタで接続しながら送信要求有線50C〜50Jで接続している。送信要求有線50A〜50Jを含めた全体を送信要求有線50とする。
【0013】
送信要求手段56Aの一端は送信要求有線50Aと接続し、送信要求手段56Aの他端は送信要求有線50Bと接続している。送信要求手段56Aにより送信要求有線50Aと送信要求有線50Bは接続する。送信要求手段56Aは、接続が電気によりON/OFFが周期的に行われる。
送信要求手段56Bの一端は送信要求有線50Bと接続し、送信要求手段56Bの他端は送信要求有線50Cと接続している。送信要求手段56Bにより送信要求有線50Bと送信要求有線50Cは接続する。送信要求手段56Bは、接続が電気によりON/OFFが周期的に行われる。
送信要求有線50Cから送信要求有線50Jまでは、それぞれ送信要求手段56C〜56Jにより接続している。また、送信要求手段56C〜56Jは、接続が電気によりON/OFFが周期的に行われる。
【0014】
図1に示すように、中央処理装置10と端末処理装置20Aは、送信許可有線60Aで接続している。端末処理装置20Aと端末処理装置20Bは、車両間をコネクタ52Aで接続しながら送信許可有線60Bで接続している。端末処理装置20B以降、端末処理装置20Jまでは、同様に車両間をコネクタで接続しながら送信許可有線60C〜60Jで接続している。送信許可有線60A〜60Jを含めた全体を送信許可有線60とする。
【0015】
送信許可有線60Aと送信許可有線60Bは、コネクタ52Aを介して直列に配線されている。送信許可有線60Bと送信許可有線60Cは、コネクタ52Bを介して直列に配線されている。送信許可有線60C乃至送信許可有線60Jについてもそれぞれコネクタ52C乃至コネクタ52Iを介して直列に配線されている。
【0016】
図2に、中央処理装置10のブロック図を示す。
図2に示すように、中央処理装置10は、端末処理装置20A、20B・・・20Jから無線で通信を受けることを許可する送信許可手段11を有する。また、端末処理装置20A、20B・・・20Jに対して無線を送信する無線送信機12及び無線を受信する無線受信機13を有する。また、端末処理装置20A、20B・・・20Jから送信される振動データを記憶する記憶手段14を有する。また、端末処理装置20A、20B・・・20Jの送信要求手段25A、25B・・・25Jから特定車両信号a、b・・・jを受信したときに、車両A、車両B・・・車両Jのどの車両から送信されているのかを判断する車両判断手段15を有する。
【0017】
図3に、端末処理装置20Aのブロック図を示す。以下では、車両Aについて説明するが、車両B・・・車両Jについても同様のブロックを有する。
図3の符号は、アルファベットが付されていないが車両に対応したアルファベットを符号の最後につけることで車両に応じた符号として示すことができる。
図3に示すように、端末処理装置20Aは、振動計21A、振動データ等記憶手段22A、振動データ確認手段23A、振動データ送信手段24A、送信要求手段25A、無線送信機26A、無線受信機27Aを有する。
【0018】
振動計21Aは、車両の振動を計測する装置である。
振動データ等記憶手段22Aは、振動計21Aが計測した振動を記憶する手段である。振動データ等記憶手段22Aには、過去の蓄積された振動データが記憶されている。また、振動データ等記憶手段22Aには、端末処理装置20Aに割り当てられた周期でON/OFFすることにより車両Aを特定する特定車両信号aが記憶されている。
振動データ確認手段23Aは、取得された振動データを振動データ等記憶手段22Aが保有する過去の振動データと照らし合わせ正常値を超えない範囲かどうかを確認する装置である。取得された振動データが過去の振動データと比較して正常値を超えた場合には異常と判断をする。
【0019】
振動データ送信手段24は、無線送信機26で振動データを中央処理装置10の無線受信機13へ送信し、送信許可手段11に伝達する手段である。振動データ確認手段23が振動データについて正常値の通常の範囲内であると判断した場合に、無線送信機26を使用し所定のサンプリング間隔で振動データ情報を送信する。
送信要求手段25は、送信要求有線50を介して中央処理装置10の送信許可手段11に送信する手段である。
【0020】
<データ送信システムの作用及び効果>
・振動正常時
車両A、車両B・・・車両Jは、それぞれ振動計21A、21B・・・21Jを有する。振動計21A、21B・・・21Jは、車両A、車両B・・・車両Jが受けた振動を振動データとして計測し振動データ等記憶手段22A、22B・・・22Jに記憶する。
振動データ等記憶手段22A、22B・・・22Jが記憶した振動データを振動データ確認手段23A、23B・・・23Jが正常値の範囲内か否かを確認し、正常値の範囲内である場合には通常であると判断をする。通常であると判断した場合には、端末処理装置20A、20B・・・20Jの無線送信機26A、26B・・・26Jにより中央処理装置10の無線受信機13へと振動データを送信する。無線送信機26A、26B・・・26Jは、所定のサンプリング間隔でデータを送信するため、データが即座に伝わらないことがある。しかし、無線送信機26A、26B・・・26Jを使用する場合の振動データは通常であると判断されたものである。そのため、即座に中央処理装置10が認知し対応する必要性がないため危機管理上の問題がない。例えば、振動正常時には各端末処理装置20A、20B・・・20Jから中央処理装置10に対して0.01秒程度で送信できるデータを送信している。
【0021】
・振動異常時
車両A、車両B・・・車両Jは、それぞれ振動計21A、21B・・・21Jを有する。振動計21A、21B・・・21Jは、車両A、車両B・・・車両Jが受けた振動を振動データとして計測し振動データ等記憶手段22A、22B・・・22Jに記憶する。
振動データ等記憶手段22A、22B・・・22Jが記憶した振動データを振動データ確認手段23A、23B・・・23Jが正常値の範囲内か否かを確認し、正常値の範囲外である場合には異常であると判断をする。
【0022】
例えば、車両Bの端末処理装置20Bの振動データ確認手段23Bが異常であると判断をした場合について説明する。
振動データ確認手段23Bが異常と判断すると送信要求手段25Bが、中央処理装置10に対して送信要求を送信する。送信要求手段25Bから中央処理装置10に対しての送信要求は送信要求有線50B、送信要求有線50Aを介して中央処理装置10へと送信する。車両Bが異常な振動データを検出した場合には、一刻も早く中央処理装置10へと送信する必要がある。そのため、異常な振動データを緊急の割り込み送信を行う。このとき、無線を用いて異常な振動データの送信許可を中央処理装置10へと求めることも可能であるが、無線を用いた場合には受信状態の不安定さにより受信が失敗となる恐れがある。確実に異常な振動データの送信要求を中央処理装置10に送信するために、有線を用いて送信する。
送信要求手段25Bが送信要求すると接続スイッチ56Bが電気により車両Bを特定するON状態/OFF状態を繰り返す特定車両信号bを中央処理装置10に送信する。中央処理装置10の車両判断手段15は、接続スイッチ56Bが車両Bに設定されている特定車両信号bを受け取ることで、車両Bを特定することができる。接続スイッチ56A、56B・・・56Jはそれぞれ特定された特定車両信号a、b・・・jを送信する。そのため、車両判断手段15は車両を特定することができる。
【0023】
送信要求を受けた中央処理装置10の送信許可手段11が、端末処理装置20Bに対して送信許可を行う。中央処理装置10から端末処理装置20Bに対しての送信許可は送信許可有線60A〜送信許可有線60Jを介してすべての端末処理装置20へと送信する。送信許可手段11が送信許可を送信すると車両A,C・・・Jは、特定車両信号bを受信することで自らの車両ではないと判断する。それにより、通常時のサンプリング間隔で行うデータ送信を中止する。車両B以外の車両のデータ送信を中止することにより、車両Bが記憶した大量の振動データを早期に中央処理装置10に対して送信できるようになるためである。それにより、異常な振動データについて最優先で無線を使用して送信することができる。なお、異常な振動データの送信について無線を用いるのは、部品点数の低減や工数低減で優れているためである。
【0024】
また、端末処理装置20Bと中央処理装置10が有線で接続していることにより、異常発生を即伝達することができる。そのため、列車全体として異常データに対する対応が遅れることがなく、危機管理上大きな問題が生じることがない。
さらに、有線で接続していることにより、無線で送信している場合とは異なり、列車の走行状態等の外部要因により、接続が乱れることがないため確実に即送信要求を伝達することができる。
【0025】
送信許可を受けた端末処理装置20Bは無線送信機26Bにより、異常だと判断した振動データを中央処理装置10の無線受信機13へ送信する。無線送信機26から中央処理装置10の無線受信機13へ無線で送信される振動データは、例えば1kHz×10秒=10kバイトとデータが大きく送信に時間がかかる。そのため、端末処理装置20Bから中央処理装置10の無線受信機13がデータだけを受け取り、他の端末処理装置からデータを受け取らないことで早期にデータを受け取ることができる。
振動データを中央処理装置10の記憶手段14が確認し異常と判断した場合には、危機管理状態とする。危機管理状態と判断された情報は運転士が確認することができる。危機管理状態と判断した運転士は、車両を緊急停止又は近くの駅に停車させる。運転士は異常振動が発生した車両を確認しに行くことでいち早く異常を確認できる。さらに、異常振動を発生した車両を早期に発見できるため停止状態を長引かせることがない。
【0026】
以上詳細に説明したように、本発明は以下の構成を有することにより以下の作用効果を奏する。
各々に端末処理装置20A、20B・・・20Jを備える複数車両A、車両B・・・車両Jが連結され、先頭車両Aには、中央処理装置10が備えられている。端末処理装置20A、20B・・・20Jには、車両A、車両B・・・車両Jが受ける振動データが振動データ等記憶手段22A、22B・・・22Jに入力され記憶される。端末処理装置20A、20B・・・20Jの振動データ確認手段23A、23B・・・23Jが、振動データが通常だと判断した時には、複数の端末処理装置20A、20B・・・20Jが、所定のサンプリング間隔で、無線送信機26A、26B・・・26Jにより、振動データを中央処理装置10に送信する。端末処理装置20A、20B・・・20Jの振動データ確認手段23A、23B・・・23Jが、振動データが異常だと判断した時には、端末処理装置20A、20B・・・20Jが送信要求有線50により、中央処理装置10に送信要求を行う。中央処理装置10が送信許可有線60により、端末処理装置20A、20B・・・20Jに送信許可を与える。送信許可を得た端末処理装置20A、20B・・・20Jは無線送信機26A、26B・・・26Jにより、異常だと判断したデータを中央処理装置10に送信する。
したがって、特定の車両で異常振動データが検出された時に、端末処理装置20A、20B・・・20Jから中央処理装置10に送信要求を出し、中央処理装置10の送信許可信号を受けて、端末処理装置20A、20B・・・20Jが速やかに異常振動データを中央処理装置10に送信できるため、危機管理を適切に行うことができる。このとき、送信要求と送信許可とが、各々送信要求有線50と送信許可有線60の有線で行われるため、確実に送信を開始することができる。
【0027】
(2)送信要求有線50が、複数車両A、車両B・・・車両Jに対して直列に配線されている。送信要求は、端末処理装置20A、20B・・・20Jに割り当てられた特定車両信号a、b・・・jの周期でON/OFFすることにより、車両A、車両B・・・車両Jを特定して送信される。送信許可有線60が、車両A、車両B・・・車両Jに対して直列に配線されている。
したがって、中央処理装置10は、異常振動データの送信先の車両を容易に特定できるため、運転士は、車両を停止した後、特定された車両を速やかに点検することができる。また、送信要求有線50と送信許可有線60とが、各複数車両に対して直列に配線され、各々単線で信号をシリアルに送信しているため、各車両間を繋ぐ配線を低減することができる。
【0028】
本発明の列車のデータ送信方法については、上記実施例に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、本実施形態では異常な振動データを1カ所で検出した場合の中央処理装置への伝達する手段が記載されている。しかし、本実施形態では、異常な振動データが複数個所で検出された場合にも使用することができる。複数個所で異常な振動データが検出された場合、それぞれ先に異常な振動データを検知した端末処理装置が順に中央処理装置へ送信要求を行う。そして、1番に送信許可を得た端末処理装置から振動データの送信を中央処理装置に行う。1番に送信許可を得た端末処理装置が振動データを中央処理装置へ送信するまで、他の端末処理装置で検知した異常な振動データの送信は保留される。1番に送信許可を得た端末処理装置の送信が終了した後、2番目、3番目とそれぞれ順番に中央処理装置への送信を行う。それにより、異常な振動データを検知した順番に振動データを端末処理装置から中央処理装置へ伝送することができる。また、順番に振動データを送信することにより受信状態の不安定さにより受信が失敗することを回避することができる。