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特開2017-127619生体情報検出装置および生体情報検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-127619(P2017-127619A)
(43)【公開日】2017年7月27日
(54)【発明の名称】生体情報検出装置および生体情報検出方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20170630BHJP
【FI】
   A61B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-163456(P2016-163456)
(22)【出願日】2016年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-6479(P2016-6479)
(32)【優先日】2016年1月15日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115005
【氏名又は名称】ユースエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】出口 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】久保 潤一郎
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS09
4C038SV01
(57)【要約】
【課題】送信したパルス信号と受信したパルス信号との伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出することで、生体に関して生体状態を検出できる生体情報検出装置および生体情報検出方法を提供すること。
【解決手段】本発明の生体情報検出装置は、導体11をシート状に敷設した検出手段10と、導体11にパルス信号を送信する送信部22と、検出手段10を伝播したパルス信号を受信する受信部23と、送信部22から送信したパルス信号と受信部23で受信したパルス信号とを比較して伝播遅延時間を計測する計測部24と、計測部24で計測した伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出する生体状態検出部25とを備え、検出手段10を生体に近接させて用いることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体をシート状に敷設した検出手段と、前記導体にパルス信号を送信する送信部と、前記検出手段を伝播した前記パルス信号を受信する受信部と、前記送信部から送信した前記パルス信号と前記受信部で受信した前記パルス信号とを比較して伝播遅延時間を計測する計測部と、前記計測部で計測した前記伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出する生体状態検出部とを備え、
前記検出手段を前記生体に近接させて用いることを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項2】
呼吸に伴う前記生体の前記実効誘電率の前記変化から前記生体の状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記生体状態検出部において、前記呼吸が所定時間継続して検出されない場合に、無呼吸状態を判定することを特徴とする請求項2に記載の生体情報検出装置。
【請求項4】
前記導体として、等長の1対の前記導体を用い、一方の前記導体に対して他方の前記導体に逆位相の前記パルス信号を送信することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項5】
前記検出手段を、2枚の絶縁性フィルムの間に前記導体を挟んで構成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項6】
前記絶縁性フィルムが可撓性を有することを特徴とする請求項5に記載の生体情報検出装置。
【請求項7】
前記検出手段を、布状あるいは網目状のシートに、絶縁被覆した前記導体を担持させて構成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項8】
前記導体を、ジグザグ状に配置したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項9】
前記検出手段を寝具としたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項10】
前記検出手段を衣服としたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項11】
導体を生体に近接させて用いる生体情報検出方法であって、前記導体にパルス信号を送信し、前記導体を伝播した前記パルス信号を受信し、送信した前記パルス信号と受信した前記パルス信号とを比較して伝播遅延時間を計測し、計測した前記伝播遅延時間から前記生体の実効誘電率の変化を検出することを特徴とする生体情報検出方法。
【請求項12】
呼吸に伴う前記生体の前記実効誘電率の前記変化から前記生体の呼吸状態を検出することを特徴とする請求項11に記載の生体情報検出方法。
【請求項13】
前記導体を掛け寝具に配設し、睡眠時の前記呼吸状態を検出することを特徴とする請求項12に記載の生体情報検出方法。
【請求項14】
前記導体を敷き寝具に配設し、睡眠時の前記呼吸状態を検出することを特徴とする請求項12に記載の生体情報検出方法。
【請求項15】
前記導体を衣服に配設し、睡眠時の前記呼吸状態を検出することを特徴とする請求項12に記載の生体情報検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば睡眠時の無呼吸症候群の状態検出を行える生体情報検出装置および生体情報検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時の無呼吸症候群の状態検出を行う方法には、生体にセンサを接触させる方法と、生体にセンサを接触させない方法とがある。
生体にセンサを接触させない方法としては、呼吸による体動に応じた荷重変化を呼吸信号として生成して、呼吸信号の周波数の変化に基づいて無呼吸状態を判定する方法(特許文献1)、マイクロフォンにより呼吸信号といびき信号を音圧として検出し、圧力センサで体位の動きを検出する方法(特許文献2)、静電容量型の振動センサによって振動によって発生する電荷の量を計測する方法(特許文献3)、撮像装置による画像を分析する方法(特許文献4)などが提案されている。
一方、生体の誘電率と空気の誘電率との相違に着目し、計測される人体の静電容量によって生体の容積を測定することが提案されている(特許文献5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−24684号公報
【特許文献2】特開2009−28423号公報
【特許文献3】特開2008−125595号公報
【特許文献4】特開2002−175582号公報
【特許文献5】特開平9−84778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から特許文献4で提案されているように、各種の検出方法が提案され、複数の検出方法を組み合わせることで、検出精度を高める試みもなされている。
本発明は、従来提案されていなかった新たな検出方法を提案するものであり、生体の実効誘電率の変化を検出するものである。
なお、特許文献5は、生体の静電容量に着目しているが、生体の容積を測定するものであり、特定の生体に対する実効誘電率の変化を計測できるものではない。
【0005】
本発明は、送信したパルス信号と受信したパルス信号との伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出することで、生体に関して生体状態を検出できる生体情報検出装置および生体情報検出方法を提供することを目的とする。
特に本発明は、呼吸に伴う生体の実効誘電率の変化から生体の状態を判定することができる生体情報検出装置および生体情報検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の生体情報検出装置は、導体をシート状に敷設した検出手段と、前記導体にパルス信号を送信する送信部と、前記検出手段を伝播した前記パルス信号を受信する受信部と、前記送信部から送信した前記パルス信号と前記受信部で受信した前記パルス信号とを比較して伝播遅延時間を計測する計測部と、前記計測部で計測した前記伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出する生体状態検出部とを備え、前記検出手段を前記生体に近接させて用いることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の生体情報検出装置において、呼吸に伴う前記生体の前記実効誘電率の前記変化から前記生体の状態を判定することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の生体情報検出装置において、前記生体状態検出部において、前記呼吸が所定時間継続して検出されない場合に、無呼吸状態を判定することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体情報検出装置において、前記導体として、等長の1対の前記導体を用い、一方の前記導体に対して他方の前記導体に逆位相の前記パルス信号を送信することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体情報検出装置において、前記検出手段を、2枚の絶縁性フィルムの間に前記導体を挟んで構成したことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の生体情報検出装置において、前記絶縁性フィルムが可撓性を有することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体情報検出装置において、前記検出手段を、布状あるいは網目状のシートに、絶縁被覆した前記導体を担持させて構成したことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の生体情報検出装置において、前記導体を、ジグザグ状に配置したことを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の生体情報検出装置において、前記検出手段を寝具としたことを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の生体情報検出装置において、前記検出手段を衣服としたことを特徴とする。
請求項11記載の本発明の生体情報検出方法は、導体を生体に近接させて用いる生体情報検出方法であって、前記導体にパルス信号を送信し、前記導体を伝播した前記パルス信号を受信し、送信した前記パルス信号と受信した前記パルス信号とを比較して伝播遅延時間を計測し、計測した前記伝播遅延時間から前記生体の実効誘電率の変化を検出することを特徴とする。
請求項12記載の本発明は、請求項11に記載の生体情報検出方法において、呼吸に伴う前記生体の前記実効誘電率の前記変化から前記生体の呼吸状態を検出することを特徴とする。
請求項13記載の本発明は、請求項12に記載の生体情報検出方法において、前記導体を掛け寝具に配設し、睡眠時の前記呼吸状態を検出することを特徴とする。
請求項14記載の本発明は、請求項12に記載の生体情報検出方法において、前記導体を敷き寝具に配設し、睡眠時の前記呼吸状態を検出することを特徴とする。
請求項15記載の本発明は、請求項12に記載の生体情報検出方法において、前記導体を衣服に配設し、睡眠時の前記呼吸状態を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の生体情報検出装置によれば、送信したパルス信号と受信したパルス信号との伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出することができるため、検出手段を近接させた生体に関して生体状態を検出することができる。
特に本発明の生体情報検出装置によれば、呼吸に伴う生体の実効誘電率の変化から生体の状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による生体情報検出装置を示す構成図
図2】本発明の他の実施例による生体情報検出装置を示す構成図
図3】本発明の生体情報検出装置における検出手段を敷き寝具とした場合の使用状態説明図
図4】本発明の生体情報検出装置における検出手段を掛け寝具とした場合の使用状態説明図
図5図1に示す生体情報検出装置の実験データを示すグラフ
図6図2に示す生体情報検出装置の実験データを示すグラフ
図7】本発明の生体情報検出装置における計測部の原理を説明する図
図8】本発明の生体情報検出装置における計測部の構成例を示す図
図9】本発明の生体情報検出装置における計測部の他の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による生体情報検出装置は、導体をシート状に敷設した検出手段と、導体にパルス信号を送信する送信部と、検出手段を伝播したパルス信号を受信する受信部と、送信部から送信したパルス信号と受信部で受信したパルス信号とを比較して伝播遅延時間を計測する計測部と、計測部で計測した伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出する生体状態検出部とを備え、検出手段を生体に近接させて用いるものである。本実施の形態によれば、送信したパルス信号と受信したパルス信号との伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出することができるため、検出手段を近接させた生体に関して生体状態を検出することができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による生体情報検出装置において、呼吸に伴う生体の実効誘電率の変化から生体の状態を判定するものである。本実施の形態によれば、呼吸に伴う生体状態を判定することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による生体情報検出装置において、生体状態検出部において、呼吸が所定時間継続して検出されない場合に、無呼吸状態を判定するものである。本実施の形態によれば、実効誘電率の定期的な変化が所定時間継続して検出されないことで無呼吸状態を判定することができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による生体情報検出装置において、導体として、等長の1対の導体を用い、一方の導体に対して他方の導体に逆位相のパルス信号を送信するものである。本実施の形態によれば、コモンモードノイズを除去することができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による生体情報検出装置において、検出手段を、2枚の絶縁性フィルムの間に導体を挟んで構成したものである。本実施の形態によれば、他の導体との接触によるノイズの影響を無くすことができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第5のいずれかの実施の形態による生体情報検出装置であって、絶縁性フィルムが可撓性を有するものである。本実施の形態によれば、検出手段を生体にフィットさせることができ、生体の実効誘電率の変化を検出しやすい。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による生体情報検出装置であって、検出手段を、布状あるいは網目状のシートに、絶縁被覆した導体を担持させて構成したものである。本実施の形態によれば、絶縁被覆した導体を用いることで、他の導体との接触によるノイズの影響を無くすことができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第1から第7のいずれかの実施の形態による生体情報検出装置であって、導体を、ジグザグ状に配置したものである。本実施の形態によれば、生体の実効誘電率の変化を広範囲で検出することができる。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第1から第8のいずれかの実施の形態による生体情報検出装置であって、検出手段を寝具としたものである。本実施の形態によれば、生体が横になった状態で実効誘電率の変化を検出できるため、睡眠時の呼吸状態を検出できる。
【0018】
本発明の第10の実施の形態は、第1から第8のいずれかの実施の形態による生体情報検出装置であって、検出手段を衣服としたものである。本実施の形態によれば、生体に近接させた状態を保つことができるため、寝台に横になった状態(臥位)だけでなく、座った状態(座位)や立った状態(立位)でも実効誘電率の変化を検出でき、更には歩行やリハビリなどの動作状態でも実効誘電率の変化を検出できる。
【0019】
本発明の第11の実施の形態による生体情報検出方法は、導体にパルス信号を送信し、導体を伝播したパルス信号を受信し、送信したパルス信号と受信したパルス信号とを比較して伝播遅延時間を計測し、計測した伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出するものである。本実施の形態によれば、送信したパルス信号と受信したパルス信号との伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出することができるため、導体を近接させた生体に関して生体状態を検出することができる。
【0020】
本発明の第12の実施の形態は、第11の実施の形態による生体情報検出装置において、呼吸に伴う生体の実効誘電率の変化から生体の呼吸状態を検出するものである。本実施の形態によれば、呼吸に伴う生体状態を判定することができる。
【0021】
本発明の第13の実施の形態は、第12の実施の形態による生体情報検出装置において、導体を掛け寝具に配設し、睡眠時の呼吸状態を検出するものである。本実施の形態によれば、生体が横になった状態で実効誘電率の変化を検出できるため、睡眠時の呼吸状態を検出できる。
【0022】
本発明の第14の実施の形態は、第12の実施の形態による生体情報検出装置において、導体を敷き寝具に配設し、睡眠時の呼吸状態を検出するものである。本実施の形態によれば、生体が横になった状態で実効誘電率の変化を検出できるため、睡眠時の呼吸状態を検出できる。
【0023】
本発明の第15の実施の形態は、第12の実施の形態による生体情報検出装置において、導体を衣服に配設し、睡眠時の呼吸状態を検出するものである。本実施の形態によれば、生体が横になった状態で実効誘電率の変化を検出できるため、睡眠時の呼吸状態を検出できる。
【実施例】
【0024】
以下本発明の一実施例による生体情報検出装置について説明する。
図1は本実施例による生体情報検出装置を示す構成図である。
本実施例による生体情報検出装置は、導体11をシート状に敷設した検出手段10と、検出手段10に送信したパルス信号と検出手段10から受信したパルス信号との伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出する制御手段20とから構成されている。
検出手段10は、2枚の絶縁性フィルムの間に導体11を挟んで構成することで、他の導体との接触によるノイズの影響を無くすことができる。
絶縁性フィルムは、可撓性を有することが好ましく、可撓性を有する絶縁性フィルムを用いることで、検出手段10を生体にフィットさせることができ、生体の実効誘電率の変化を検出しやすい。
検出手段10は、絶縁性フィルムを用いる代わりに、布状あるいは網目状のシートに、絶縁被覆した導体11を担持させて構成してもよい。絶縁被覆した導体11を用いることで、他の導体との接触によるノイズの影響を無くすことができる。
導体11は、図示のように、ジグザグ状に配置することで、生体の実効誘電率の変化を検出しやすい。
【0025】
制御手段20は、パルス信号を発生させるパルス発生部21と、発生させたパルス信号を導体11に送信する送信部22と、送信部22から送信したパルス信号と検出手段10を伝播したパルス信号を受信する受信部23と、送信部22から送信したパルス信号と受信部23で受信したパルス信号とを比較して伝播遅延時間を計測する計測部24と、計測部24で計測した伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出する生体状態検出部25と、呼吸に伴う生体の実効誘電率の変化から生体の状態を判定する判定部26とを備えている。
受信部23で受信したパルス信号や計測部24で計測する伝播遅延時間は、時間データとともにメモリ27に格納され、メモリ27に格納したデータを元に判定部26にて判定が行われる。なお、メモリ27には、判定部26にて判定された情報も格納される。
【0026】
送信部22から検出手段10に至る信号線31にはラインドライバ32を設け、ラインドライバ32の出力側の信号線31からは、基準信号線33がラインレシーバ34を介して受信部23に接続されている。
検出手段10から受信部23に至る信号線35には、ラインレシーバ36を設けている。
基準信号線33からのパルス信号に対して信号線35からのパルス信号は、検出手段10の近傍に存在する物質の誘電率に影響して遅延する。例えば人体は、その約70%の体液を有し、呼吸の動作によって、胸郭や腹部の体積が変化し体液分布が変わる。また、呼吸による膨張・収縮動作によって、人体と検出手段10との相対的な位置関係が変動する。水は非常に誘電率の大きな物質であるため、これらの変化に伴い、検出手段10内の導体11を伝播する電気信号の伝播速度を決定する導体11近傍の物質の総合的な誘電率(これを実効誘電率と称する)が変化する。この実効誘電率の変化によってパルス信号の伝搬スピードが変化するため、パルス信号の伝搬遅延時間を計測することで人体変化を計測でき、呼吸に伴う生体状態を判定することができる。
【0027】
図2は本発明の他の実施例による生体情報検出装置を示す構成図である。図1と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
検出手段10に敷設する導体11は、等長の1対の導体11a、11bで構成している。
送信部22から検出手段10に至る信号線31は、ラインドライバ32によって、一方の信号線31aと他方の信号線31bとに分岐し、一方の信号線31aに対して他方の信号線31bには逆位相のパルス信号が送信される。
一方の信号線31aは一方の導体11aと接続され、他方の信号線31bは他方の導体11bと接続される。
一方の導体11aと接続される一方の信号線35aと、他方の導体11bと接続される他方の信号線35bとは、ラインレシーバ36に接続される。
一方の信号線31aと他方の信号線31bとからは、逆位相のパルス信号が基準信号線33a、33bによってラインレシーバ34に送信される。
本実施例のように、導体11として、等長の1対の導体11a、11bを用い、一方の導体11aに対して他方の導体11bに逆位相のパルス信号を送信し、一方の導体11aのパルス信号と他方の導体11bのパルス信号との電位差を用いることで、コモンモードノイズを除去することができる。
【0028】
図3および図4は本発明の生体情報検出装置における検出手段を寝具とした場合の使用状態説明図である。
【0029】
図3は検出手段10を敷き寝具41とした場合を示している。
図3に示すように、本発明の生体情報検出装置は、敷き寝具41の少なくとも一部に検出手段10が配設され、被験者Aが敷き寝具41に背臥位となることで生体情報を検出することができる。
敷き寝具41は、例えば敷き布団やマットレスであり、検出手段10は、人体の背部に少なくとも位置させることが好ましい。
【0030】
図4は検出手段10を掛け寝具42とした場合を示している。
図4に示すように、本発明の生体情報検出装置は、掛け寝具42の少なくとも一部に検出手段10が配設され、被験者Aが寝台43に背臥位となり、被験者Aに掛け寝具42を掛けることで生体情報を検出することができる。
掛け寝具42は、例えば掛け布団、毛布、タオルケットであり、検出手段10は、人体の胸郭または腹部に少なくとも位置させることが好ましい。
【0031】
図5および図6は本発明の生体情報検出装置の実験データを示すグラフである。
図5は、図1に示す装置を用い、図3に示すように検出手段10を敷き寝具41とした場合の実験データである。
図5(a)は、縦軸がパルス信号の伝播遅延量、横軸が経過時間であり、約600秒間のデータを示している。なお、区間Bが呼吸を意図的に停止した期間である。
図5(b)は、図5(a)における通常呼吸期間における周波数成分の分析結果、図5(c)は、図5(a)における呼吸停止期間における周波数成分の分析結果であり、縦軸が振幅(強度)、横軸が周波数(0〜約5Hz)である。
図5(a)に示すように、通常呼吸期間では、呼吸に伴う周期的な伝播遅延量の変化が見られ、呼吸停止期間では、周期的な伝播遅延量の変化は見られない。
図5(a)に示す通常呼吸期間で見られる周期的な伝播遅延量の変化は、図5(b)に示すように、0.2Hz近傍で呼吸に伴う周期のスペクトルを確認できる。これに対して、図5(c)に示すように、呼吸停止期間では、0.2Hz近傍でのスペクトルは確認できない。
【0032】
図6は、図2に示す装置を用い、図4に示すように検出手段10を掛け寝具42とした場合の実験データである。
図6は、縦軸がパルス信号の伝播遅延量、横軸が経過時間である。なお、区間Cが呼吸を意図的に停止した期間である。
図6では、平衡信号をパルス信号として用いているため、コモンモードノイズの影響が少なく、図5と比較して周期的な伝播遅延量の変化が明確に現れている。
なお、図6において、時間の経過とともにパルス信号の伝播遅延量が減少しているが、この減少は、生体情報検出装置のスタート時に生じるもので、図6に示すように時間の経過とともに収束する。従って、呼吸以外の要因による実効誘電率の変化、すなわち例えば外部環境の変化による実効誘電率の変化や寝返りなどの体動による実効誘電率の変化によってもパルス信号の伝播スピードは変化するが、呼吸に伴う周期的な実効誘電率の変化や呼吸の周期のスペクトルを検出することで、呼吸状態を正確に検出できる。
【0033】
以上のように、導体11を敷き寝具41または掛け寝具42に配設し、検出手段10を寝具とすることで、生体が横になった状態で実効誘電率の変化を検出できるため、睡眠時の呼吸状態を検出できる。
そして、図1または図2に示す生体状態検出部25において、呼吸が所定時間継続して検出されない場合に、実効誘電率の周期的な変化が所定時間継続して検出されないことで無呼吸状態を判定することができる。
【0034】
本発明は、導体11にパルス信号を送信し、導体11を伝播したパルス信号を受信し、送信したパルス信号と受信したパルス信号とを比較して伝播遅延時間を計測し、計測した伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出することで、送信したパルス信号と受信したパルス信号との伝播遅延時間から生体の実効誘電率の変化を検出することができるため、導体11を近接させた生体に関して生体状態を検出することができる。
また本発明は、呼吸に伴う生体の実効誘電率の変化から生体の呼吸状態を検出することで、呼吸に伴う生体状態を判定することができる。
なお、検出手段10を衣服とすることで、生体に近接させた状態を保つことができるため、寝台43に横になった状態(臥位)だけでなく、座った状態(座位)や立った状態(立位)でも実効誘電率の変化を検出でき、更には歩行やリハビリなどの動作状態でも実効誘電率の変化を検出できる。
【0035】
図7は本発明の生体情報検出装置における計測部の原理を説明する図、図8および図9は本発明の生体情報検出装置における計測部の構成例を示す図である。
【0036】
図7は、図1および図2に示す実施例において、受信部23で受信した受信したパルス信号の僅かな伝播遅延時間を計測する計測部24の原理を説明するための図である。
送信部22から送出されたパルス信号は2つに分岐し、一方のパルス信号は、一方のラインドライバ32aによって駆動され、信号線31を通り、検出手段10に敷設された導体11を通ってラインレシーバ36に至る。他方のパルス信号は、他方のラインドライバ32bから、ラインドライバ32bに近接したラインレシーバ34にすぐに至る。これらの2つのパルス信号には、経路の違いにより、検出手段10の周囲の空間の実効誘電率を反映した時間差が生じる。2つのパルス信号は排他的論理和回路50によって位相比較され、2つのパルス信号の時間差に応じたパルス幅のパルスが生成される。これらのパルスはLPF(低域通過フィルタ)51によって平均化される。パルス信号は一定の周期で繰り返し送出されるため、LPF51によって高周波成分を遮断することにより、そのパルス幅に応じた直流電圧信号に変換される。この直流電圧信号と基準電圧52との差を差動増幅回路53によって増幅することにより、検出手段10の周囲の空間の実効誘電率を反映した電気信号が得られる。但し、LPF51の遮断周波数は、その出力が観測対象の事象の変化に十分追従できるように設定する必要がある。
検出手段10の周囲の空間の実効誘電率の変化により生じるパルス信号の時間差の変化は極僅かであるため、十分な検出感度を得るために、差動増幅回路53の増幅度は極めて大きく設定する。
【0037】
観測対象の事象による実効誘電率の変化により生じるパルス信号の時間差の変化を検出するには、2つのパルス信号の伝播経路長の差によって元々生じる時間差に相当する電圧分に応じて、基準電圧52を適切に設定してこれを差し引く必要がある。
図8は、差動増幅回路53の出力の飽和を防止する構成例を示す図である。
排他的論理和回路50によって位相比較されたパルス信号は、一方のLPF51aによって平均化され直流電圧信号に変換されると同時に、他方のLPF51bによっても平均化され、差動増幅回路53に与える基準電圧52を生成する。
一方のLPF51aを構成する抵抗RおよびキャパシタCによる時定数CRは、位相比較されたパルスの繰り返し周期に比べて十分に大きな値に設定する。一方、他方のLPF51bを構成する抵抗RrefおよびキャパシタCrefによる時定数Rrefrefは、一方のLPF51aの時定数CRよりも十分大きく、さらに、実効誘電率の変化として観測対象とする事象の変化周期に対しても十分に大きな値に設定する。
これにより、観測対象の事象により実効誘電率が変化し、位相比較されたパルスのパルス幅が変化した時、一方のLPF51aの出力は直流電圧の変化としてこれを反映する一方、他方のLPF51bの出力はこれに追従できず、時定数Rrefrefに相当する時間にわたってこれを平均した電圧を示す。差動増幅回路53は、これら二者の差を検出して大きく増幅するため、実効誘電率が時間平均値からどれだけ偏移したかを感度良く検出することができる。
【0038】
なお、検出手段10の周囲の空間の実効誘電率は、観測対象とする事象による以外に種々の要因によって変化する可能性がある。例えば、図3あるいは図4に示す方法で睡眠時の呼吸状態を観測する場合、被験者Aの呼吸が変化することによる影響以外に、寝返りを打つ等、被験者Aの動きのために検出手段10と被験者Aとの位置関係が変化することによる影響が想定される。
【0039】
図9は、さらに好ましい構成例を示す図である。
本構成例は、寝返りを打つ等、被験者Aの動きのために検出手段10と被験者Aとの位置関係が変化することによる影響を無くし、基準電圧52を適正値に保ち、差動増幅回路53の出力が一時的に飽和することを防止できる。
差動増幅回路53に与える基準電圧52を生成する他方のLPF51bは、第一の抵抗Rref1と第二の抵抗Rref2およびキャパシタCrefによって構成され、他方のLPF51bには、位相検波されたパルスではなく、参照信号として任意にパルス幅を設定できるパルス信号を入力する。パルス幅はデジタル的に容易に制御することができる。他方のLPF51bは、このパルス信号を平均化するとともに、第一の抵抗Rref1と第二の抵抗Rref2によって分圧した電圧を生成する。これによって差動増幅回路53の出力を監視し、これが飽和に近付いた場合、基準電圧52を制御して速やかに適正値に近づけることができる。他方のLPF51bを、一方のLPF51aと同じ構成ではなく、第一の抵抗Rref1と第二の抵抗Rref2による分圧を用いているのは、基準電圧52を調節する分解能を高めるためである。
【0040】
なお、上記実施例においては、検出手段10の周囲の空間の実効誘電率の変化を生体情報の検出のために用いることについて述べたが、本発明による測定原理は、検出手段10の周囲の空間の実効誘電率の変化が起きる要因が何であっても用いることが可能であり、同等の効果を有することは言うまでもない。例えば、人体以外の物体の検知、その動きの検知、物質中に含まれる水分量の評価、液中の気泡の検知や気泡密度の評価、等にも用いることができる。
また、検出手段10に送出する電気信号としてパルス信号を用いる場合について説明したが、伝播遅延時間の変化は電気信号の波形によらず生じるものであって、正弦波信号を用いても同等の効果を奏することは言うまでもない。この場合、位相比較のための排他的論理和回路50に替えてダブルバランストミキサ等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明による生体情報検出装置によれば、人だけでなく、ペットや家畜などの動物についても生体状態を検出することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 検出手段
11 導体
11a 導体
11b 導体
20 制御手段
21 パルス発生部
22 送信部
23 受信部
24 計測部
25 生体状態検出部
26 判定部
41 敷き寝具
42 掛け寝具
A 被験者
B 区間
C 区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9