【実施例1】
【0011】
最初に、
図1及び
図2を参照しながら本発明の実施例1を説明する。
図1は、本実施例の割出装置の位置決め機構のロック状態を示す図であり、(A)は主要断面図,(B)はボールの配置を示す断面図であり、前記(B)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た図が前記(A)に相当する。また、
図2は、本実施例の割出装置の位置決め機構のアンロック状態を示す図であり、(A)は主要断面図,(B)はボールの配置を示す断面図であり、前記(B)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図が前記(A)に相当する。
【0012】
図1(A)及び
図2(A)に示すように、本実施例の割出装置10は、固定フレーム12に、公知の軸受け20,22,24,26等によって、回転軸14が回転可能に支持されている。前記回転軸14の一端側(図示の例では上端側)には、刃物台16がボルト18等によって固定されている。前記刃物台16には、例えば、図示しない切削工具等が取り付けられる。前記回転軸14は、他端側(図示例の例では下端側)に設けた図示しないモータ等により回転駆動される。あるいは、回転軸14の適宜位置に図示しないウォームホイールを設け、該ウォームホイールと噛み合うウォーム軸を、図示しないモータ等に連結して回転軸14を駆動するようにしてもよい。このような割出装置10には、前記刃物台16の回転停止位置を所定の位置で確実に停止させるための位置決め機構(ないしロック機構)30が設けられている。
【0013】
前記位置決め機構30は、前記回転軸14を所定の回転位置で停止保持するものであって、移動部材32,支持部材34及び50,回転軸14側の拡径部58,ボール70等によって構成されている。前記移動部材32は、前記固定フレーム12と前記回転軸14の間に、該回転軸14の軸方向に移動可能に設けられており、ボール70を受ける案内面38を有している。本実施例では、前記案内面38は、前記回転軸14の軸方向に形成されており、かつ、前記ボール70の表面と線接触する曲面形状(
図1(B)参照)を有するボール溝となっている。前記案内面38は、
図1(A)に示すように、軸方向断面で見たときに、下側が垂直部40A、上側が傾斜部40Bとなっている。そして、前記案内面38によって前記ボール70を、前記回転軸14側へ押し込むようになっている。
【0014】
また、前記移動部材32の外周寄りには、穴42が形成されており、バネ44の一方の端部44A側が収納されている。該バネ44の他方の端部44Bは、前記移動部材32の上方に設けられた支持部材50の段部56に当接している。そして、前記バネ44により、前記移動部材32は、常に下方に付勢されている。
【0015】
更に、前記移動部材32の底面と、該移動部材32の下方に設けられた支持部材34の間には、空気室36が形成されている。前記固定フレーム12の側面には、前記移動部材32が最も下がった位置においても前記空気室34に通じる位置に、図示しない通路が形成されている。前記通路には、前記固定フレーム12の外側に設けられた図示しない給排気装置が設けられている。該給排気装置によって、前記空気室36に空気を送ると、前記移動部材32が上昇し(
図1(A)の状態)、逆に、前記空気室36から空気を抜くと、前記移動部材32は前記バネ44の付勢力によって下降する(
図2(A)の状態)。
【0016】
次に、拡径部58について説明する。前記拡径部58は、本実施例では、回転軸14と一体に形成されており、該回転軸14よりも径が大きい略柱状(ないし略円筒状)となっている。該拡径部58の外周面には、前記移動部材32の案内面38と対向するように、前記回転軸14の軸方向にボール溝60が形成されている。該ボール溝60は、
図1(B)及び
図2(B)に示すように、前記ボール70を受ける曲面を有するボール溝60となっている。
【0017】
次に、前記支持部材50は、前記移動部材32の上方に配置されるとともに、前記移動部材32のボール溝38と、前記拡径部58のボール溝60の間に配置される筒部52を有している。該筒部52は、前記ボール70を保持する穴54を有している。前記支持部材50は、前記固定フレーム12側に適宜手段で固定されている。また、前記支持部材50の前記筒部52の周囲には、段部56が形成されており、該段部56には前記バネ44の他方の端部44Bが当接している。このため、前記移動部材32は、前記バネ44によって、常に下方(刃物台16と反対側)に付勢されている。
【0018】
次に、本実施例の作用を説明する。
図2(A)には、アンロック状態が示されている。この状態では、前記空気室36への給気は行っておらず、移動部材32は前記バネ44によって下方に付勢されている。このため、前記ボール70は、前記移動部材32の案内面38の垂直部40Aではなく、傾斜部40Bで支持されるようになる。すなわち、
図2(A)に破線で示すロック状態から、ボール70が径方向外側へ移動し、前記ボール70と拡径部58のボール溝60との係合が解除される。この状態を平面的にみると、
図2(B)の通りである。すなわち位置決め機構30のロックが解除されており、この状態で回転軸14を図示しない駆動機構により回転することにより、回転軸14が回転して、前記刃物台16も回転し、該刃物台16に保持された図示しない工具の回転角度が変更される。
【0019】
以上のようにして刃物台16を所定角度回転させた後、回転軸14の回転を停止させてロックする場合には、
図1(A)に示すように、図示しない給排気装置によって、前記空気室36に空気を送り込む。これによって前記移動部材32を前記バネ44の付勢力に抗して回転軸14の軸方向(図示の例では上方)に移動させる。前記移動部材32が上昇すると、該移動部材32の案内面38に保持されたボール70は、前記案内面38の直線部40Aによって押し上げられるとともに、前記支持部材50の穴54内を回転軸14側へ移動し、前記拡径部58のボール溝60に嵌る。回転軸14側に押し込まれたボール70は、前記案内面38の垂直部40Aによって外側への移動が規制されるため、
図1(B)に示すように、ボール70とボール溝60の嵌合により、確実に回転軸14を所定の停止位置でロックすることができる。
【0020】
以上のようなロック動作の際、前記ボール70を受けるボール溝60が、前記ボール70の表面と線接触する曲面形状を有する溝(R溝)である。すなわち、R溝でボール70を保持することで、ボール70とボール溝60の間で摩擦が生じるため、大きな負荷でロックすることができる。ロック状態を解除するときは、前記図示しない給排気手段により前記空気室36から空気を排出すると、移動部材32はバネ44の付勢力により下降し、前記ボール70が径方向外側へ移動するため、該ボール70とボール溝60の係合によるロックが解除され、回転軸14の回転が可能となる(
図2(A)及び(B))。
【0021】
このように、実施例1によれば、割出装置10を、一端側に刃物台が固定された回転軸と、該回転軸を回転可能に支持する固定フレームと、前記固定フレームと前記回転軸の間に、該回転軸の軸方向に移動可能に設けられており、ボールを受ける案内面を有し、該案内面によって前記ボールを前記回転軸側へ押し込む移動部材と、前記回転軸の外周面に、前記移動部材の案内面と対向するように、前記回転軸の軸方向に形成されており、前記ボールを受ける曲面を有するボール溝と、前記移動部材の案内面と前記回転軸側のボール溝の間に配置されており、前記ボールを保持する穴を有するとともに、前記固定フレームに固定された支持部材と、で構成することとしたので、次のような効果がある。
(1)比較的簡単な構成で、刃物台16の回転を所定位置で確実にロックすることができる。
(2)回転軸14の拡径部58のボール溝60と、ボール70の表面が線接触するため、摩擦力が発生し、大きな負荷でロックすることができる。
(3)ボール70を、移動部材32のR溝形状の案内面38と、支持部材50の穴54とで保持することとしたので、ボール70の位置固定ができる。このため、ボール70を回転軸14の全周にわたって設けることなく、必要個数(本実施例では4個)のみを設ければよい。
【0022】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。材料についても、同様の効果を奏する範囲内で公知の各種の材料を用いてよい。
(2)前記実施例では、ボール70を4つ設けることとしたが、これも一例であり、同様の効果を奏する範囲内でボール70の数は適宜増減してよい。
(3)前記実施例では、移動部材32の案内面38と、拡径部58のボール溝60を、前記ボール70の表面と線接触する曲面を有するR溝としたが、少なくともボール溝60をR溝とすれば、必ずしも移動部材32側の案内面38はR溝でなくてもよい。
【0023】
(4)前記実施例では、回転軸14の駆動機構として、ウォームホイールを用いた駆動機構を一例として挙げたが、これに限定されるものではなく、同様の効果を奏する範囲内で公知の各種の回転駆動機構が適用可能である。
(5)前記実施例では、移動部材32を移動させる手段として空気圧を利用したが、これも一例であり、他の流体を用いた公知の機構を利用してもよい。
(6)前記実施例1では図示しなかったが、公知の各種のセンサ(ストロークセンサ,圧力センサ,変位センサ等)を設けて、移動部材32の移動量を検知するようにしてもよい。
(7)本発明の割出装置は、刃物台を備えた工作機械全般に適用可能である。