【課題】 3Dプリンタを用いて立体構造物を製造に際し、内部の空隙の量が少ない立体構造物の製造方法、および、前記立体構造物を製造するための3Dプリンタ用フィラメントの提供。
【解決手段】 連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)を含む混繊糸であって、混繊糸中の連続強化繊維(A)の分散度が60〜100%である混繊糸を含むフィラメントを、3Dプリンタを用いて溶融し、積層することを含む、立体構造物の製造方法。
連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)を含む混繊糸であって、混繊糸中の連続強化繊維(A)の分散度が60〜100%である混繊糸を含むフィラメントを、3Dプリンタを用いて溶融し、積層することを含む、立体構造物の製造方法。
前記フィラメントの弾性率が、10MPa以上である、請求項1に記載の立体構造物の製造方法;但し弾性率とは、15mmの長さのフィラメントの一端を10mmの領域迄、直径25mmの円筒状となるように樹脂で包埋し、直径25mm、高さ20mmの円筒状の穴の開いた治具に前記円筒状の樹脂部が下側になるように嵌め込み、前記円筒状の樹脂部の上側方向から、直径25mmの円盤状の荷重を治具に嵌め込むことによって、試験速度0.2mm/分で荷重を付加したときの弾性率である。
前記連続熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂bがジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)を含む混繊糸であって、混繊糸中の連続強化繊維(A)の分散度が60〜100%である混繊糸を含む3Dプリンタ用フィラメント。
前記フィラメントの弾性率が、10MPa以上である、請求項10に記載の3Dプリンタ用フィラメント;但し弾性率とは、15mmの長さのフィラメントの一端を10mmの領域迄、直径25mmの円筒状となるように樹脂で包埋し、直径25mm、高さ20mmの円筒状の穴の開いた治具に前記円筒状の樹脂部が下側になるように嵌め込み、前記円筒状の樹脂部の上側方向から、直径25mmの円盤状の荷重を治具に嵌め込むことによって、試験速度0.2mm/分で荷重を付加したときの弾性率である。
前記連続熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂bがジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である、請求項10〜14のいずれか1項に記載の3Dプリンタ用フィラメント。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
立体構造物の製造方法
本発明の立体構造物の製造方法は、連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)を含む混繊糸であって、混繊糸中の連続強化繊維(A)の分散度が60〜100%である混繊糸を含むフィラメントを、3Dプリンタを用いて溶融し、積層することを含むことを特徴とする。
このような構成とすることにより、良好な強化繊維を含む立体構造物を製造可能になる。
上記非特許文献1に記載の方法では、得られる立体構造物の内部に空隙や気泡が多く存在してしまっていたが、本発明では、混繊糸を用いることにより、このような空隙や気泡の発生を効果的に抑制できる。
すなわち、熱可塑性樹脂をインク材料として用いる3Dプリンタでは、3Dプリンタ用フィラメントを溶融しながら吐出したり、吐出後に溶融させたりする。しかし、近年、立体構造物の機械的強度の向上の観点から、熱可塑性樹脂に繊維を配合することが検討されている。ここで、非特許文献1に記載のように、熱可塑性樹脂フィラメントをインクとして吐出しつつ、別途、繊維を供給すると、吐出の際や吐出後に、圧力を付加したり、含浸させる時間を十分に確保しなければ、熱可塑性樹脂フィラメントの繊維への含浸が十分に進まず、得られる立体構造物の内部に空隙ができてしまうことが分かった。
より具体的には、連続強化繊維は、通常、束状で供給されるが、このような束状の連続強化繊維中には、空気が含まれている。このような連続強化繊維束を、例えば、熱可塑性樹脂フィラメントに巻き付けたり、連続強化繊維束と熱可塑性樹脂フィラメントの組紐を用いたりして、立体構造物を製造すると、連続強化繊維束中に熱可塑性樹脂が含浸しにくい。その結果として、連続強化繊維束の中に含まれていた空気が立体構造物の内部に残ってしまう。具体的には、
図1に従って説明する。
図1は、3Dプリンタを用いて製造した立体構造物の断面概略図を示す図である。
図1中、11は立体構造物を、12は熱可塑性樹脂を、13は連続強化繊維を、14は空隙をそれぞれ示している。
図1(a)は、熱可塑性樹脂フィラメントに連続強化繊維束を巻き付けたものを3Dプリンタ用フィラメントとして用いた例である。
図1(a)では、連続強化繊維束中に存在していた空気が立体構造物11の中心に集まって空隙14となっている。また、連続強化繊維束等に水分が含まれていると、立体構造物中に気泡ができてしまう場合がある。
これに対し、
図1(b)は、本発明の3Dプリンタ用フィラメントを用いた例である。本発明では、
図1(b)に示すように、連続強化繊維(A)と熱可塑性樹脂繊維(B)が十分に混繊した混繊糸を用いることにより、含浸が十分に進み、得られる立体構造物の内部の空隙や気泡を少なくできる。
【0012】
以下、本発明の立体構造物の製造方法を
図2および
図3に従って説明する。本発明が
図2および
図3で示される構成に限定されるものではないことは言うまでもない。
図2および
図3は、本発明で使用可能な3Dプリンタの同一の例を示した概略図であって、
図2と
図3は、異なる方向から示した概略図である。
図2および
図3において、21は3Dプリンタを、22は3Dプリンタのノズルを、23は3Dプリンタの基板を、24は本発明のフィラメントを、25は立体構造物をそれぞれ示している。
ノズル22において、フィラメント24は溶融される。溶融とは、混繊糸に含まれる熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂bの少なくとも一部が溶融することをいい、好ましくは熱可塑性樹脂bの80重量%以上が溶融することをいい、より好ましくは95重量%以上が溶融することをいい、さらに好ましくは99重量%以上が溶融することをいう。具体的には、熱可塑性樹脂bの融点+10℃以上の温度で加熱することが好ましく、熱可塑性樹脂bの融点+15℃〜融点+60℃で加熱することがより好ましい。また、詳細を後述するとおり、フィラメントが補強材として、熱可塑性樹脂繊維(C)を含む場合、熱可塑性樹脂繊維(C)を構成する熱可塑性樹脂cの少なくとも一部も溶融することが好ましく、80重量%以上が溶融することがより好ましく、95重量%以上が溶融することがさらに好ましく、98重量%以上が溶融することが特に好ましい。
【0013】
溶融したフィラメント24は、基板23の上に積層される。
図3に示すように、フィラメント24は、所望の立体構造物25となるように吐出される。
本発明では、連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)が分散している混繊糸を用いるため、熱可塑性樹脂bが溶融し、積層する工程において、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の連続強化繊維(A)への含浸が進行する。そのため、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維を別々に供給したり、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維の組紐を用いる場合と異なり、十分に圧力をかけたり、十分に時間をかけなくても、含浸させることができる。結果として、空隙の少ない立体構造物が得られる。
【0014】
本実施形態では、溶融は、フィラメントの吐出時にノズル内部を加熱することによって行うことが好ましい。
また、ノズル内部で熱可塑性樹脂を溶融せずに、ノズルから吐出した後、溶融させてもよい。この場合、レーザを照射して、溶融させることが好ましい。レーザ照射は、ノズルから吐出した後、基板に積層するまでの間に行っても良いし、基板に積層してから行っても良いし、その両方であってもよい。
【0015】
再び
図2に戻り、造形中の立体構造物25は、熱可塑性樹脂が完全に硬化していないため、立体構造物25が反ってしまうことがある。そのため、立体構造物の製造において、基板23も加熱することが好ましい。この場合の加熱温度としては、上記フィラメントが溶融する温度よりも15〜150℃低い温度が好ましく、30〜100℃低い温度がより好ましい。また、本発明における立体構造物は連続強化繊維を含むので、収縮率が小さく、反りにくいという利点がある。その結果、立体構造物が基板23から剥がれてしまうのを効果的に抑制できる。
基板の加熱温度としては、例えば、50〜100℃とすることが例示され、さらには、55〜90℃とすることもできる。
また、基材を実質的に加熱しない態様も本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
尚、立体構造物は、基板23の表面に直接に積層してもよいが、基板23の表面に何らかのフィルムをおいて、前記フィルム上に積層してもよい。前記フィルムとしては、金属箔や樹脂フィルムが例示され、アルミ箔、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムの市販品としては、カプトン(登録商標)フィルム、テフロン(登録商標)フィルムが例示される。一方、基板の素材としては、金属が例示され、アルミニウムおよび鋼鉄が好ましい。
基板は、フィラメントとの密着性を向上させるために、その表面に、表面処理を施しても良い。表面処理は、物理的処理および化学的処理が例示される。表面処理の具体例としては、樹脂フィルムの表面にシボ加工やエンボス加工、コロナ放電を施す処理、金属箔の表面にやすりがけする処理などが挙げられる。
本発明で用いるフィラメントの詳細は、後述する。
【0016】
3Dプリンタ21としては、熱溶解積層方式に使用可能な3Dプリンタ、またはSLM法に使用可能な3Dプリンタが好ましく採用できる。熱溶解積層方式の3Dプリンタの市販品としては、例えば、ストラタシス社製、FORTUSシリーズ、 DimensionシリーズおよびuPrintシリーズ、Solidoodle社製、Solidoodle3などが例示される。SLM方式の3Dプリンタの市販品としては、3DSystems社製、SLSシリーズ、アスペクト社製、RaFael550、EOS社製、EOSIntシリーズなどが例示される。
【0017】
立体構造物25の製造に際し、立体構造物25の空間部分をサポートするサポート材を用いてもよい。サポート材を用いる場合は、サポート材の表面に、フィラメントを吐出する。サポート材としては、アクリル樹脂等が用いられる。
また、本発明では、連続強化繊維を含むため、従来のフィラメントを用いる場合に比べ、サポート材を用いなくても製造可能な形状が多くなるという利点がある。
【0018】
本発明で得られる立体構造物の形状は、特に定めるものではないが、例えば、最も薄い部位が5mm以下、さらには3mm以下の薄肉の立体構造物も製造できる。下限値は特に定めるものではないが、例えば、最も薄い部位の厚さを0.5mm以上とすることができる。
本発明で得られる立体構造物は、繊維強化樹脂成形品に広く用いられる。利用分野については特に定めるものではなく、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。また、これらの試作品にも好ましく用いられる。
【0019】
3Dプリンタ用フィラメント
次に、本発明の3Dプリンタ用フィラメントについて説明する。
本発明の3Dプリンタ用フィラメントは、連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)を含む混繊糸であって、混繊糸中の連続強化繊維(A)の分散度が60〜100%である混繊糸を含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、内部に空隙の少ない立体構造物が得られる。また、公知の熱溶解積層法の3DプリンタやSLM方式の3Dプリンタや、それらの簡単な改良によって、良好な立体構造物を製造することが可能になる。
【0020】
3Dプリンタ用フィラメントのフィラメント径(直径)は、用途や用いるノズル等に応じて適宜定めることができるが、下限値としては、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、1.1mm以上であってもよい。また、フィラメント径の上限値としては、3.0mm以下が好ましく、2.5mmであることがより好ましく、2.0mm以下であってもよい。3Dプリンタ用フィラメントの断面は、熱溶解積層法の3Dプリンタを用いる場合、ノズルの吐出口の形状によって調整することができ、通常は、円形である。
3Dプリンタ用フィラメントにおける、連続強化繊維(A)の割合は、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、30〜70重量%がさらに好ましい。
3Dプリンタ用フィラメントの1mあたりの重量は、0.01〜40gであることが好ましく、0.1〜5gであることがより好ましく、0.5〜2gがさらに好ましくい。
【0021】
本発明のフィラメントは、弾性率が、10MPa以上であることが好ましい。このような構成とすることにより、フィラメントが、ある程度の硬さを持ち、3Dプリンタの内部を容易に移動できる。すなわち、フィラメントは、通常、糸状のものであるため、絡まったり、丸まったりしてしまうことがあるが、弾性率を上記値以上とすることにより、吐出性を向上させることができる。フィラメントの弾性率は、下限値が、10MPa以上であることが好ましく、50MPa以上であることがより好ましく、1000MPa以上であることがさらに好ましく、1500MPa以上であることが一層好ましい。フィラメントの弾性率の上限値は、10,000MPa以下であることが好ましく、8,000MPa以下であることがより好ましく、6,000MPa以下であることが一層好ましく、3,500MPa以下とすることもできる。弾性率を10,000MPa以下とすることにより、フィラメントがしなやかとなり、吐出性がより向上する傾向にある。
上記フィラメントの弾性率とは、15mmの長さのフィラメントの一端を10mmの領域迄、直径25mmの円筒状となるように樹脂で包埋し、直径25mm、高さ20mmの円筒状の穴の開いた治具に前記円筒状の樹脂部が下側になるように嵌め込み、前記円筒状の樹脂部の上側方向から、直径25mmの円盤状の荷重を治具に嵌め込むことによって、試験速度0.2mm/分で荷重を付加したときの弾性率である。詳細は後述する実施例に記載の方法に従う。荷重レンジは、想定される弾性率の値に応じて、当業者が、適宜、定めることができる。例として、本発明では、荷重レンジが50N、100Mおよび1kNのものが挙げられる。
【0022】
フィラメントの弾性率を上記値以上とする方法について述べる。
本発明におけるフィラメントの第一の実施形態は、混繊糸の補強材を用いる態様である。補強材としては、熱可塑性樹脂繊維(C)が好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂繊維(C)の表面の少なくとも一部に混繊糸を適用したフィラメント、熱可塑性樹脂繊維(C)と混繊糸を絡交させたフィラメントが例示される。
熱可塑性樹脂繊維(C)の表面の少なくとも一部に混繊糸を適用したフィラメントとしては、熱可塑性樹脂繊維(C)の表面の少なくとも一部に混繊糸を貼り付けたものや、熱可塑性樹脂繊維(C)の表面に混繊糸を巻きつけたものが例示される。本発明では、熱可塑性樹脂繊維(C)の表面に、混繊糸を一定のピッチでらせん状に巻きつけたものが好ましい。ここで、貼り付けるとは、熱可塑性樹脂繊維(C)と混繊糸の貼付剤を用いても良いし、混繊糸と熱可塑性樹脂繊維(C)を熱融着しても良い。尚、熱可塑性樹脂繊維(C)の表面の少なくとも一部に混繊糸を適用したフィラメント等では、混繊糸が熱可塑性樹脂繊維(C)の長手方向断面において、偏った領域に存在している場合もあろう。このような形態でも、通常は、3Dプリンタ用フィラメントの溶融時に混繊糸が熱可塑性樹脂繊維(C)内に適度に取り込まれ、実用上問題のないレベルに、均質に連続強化繊維(A)が分散した立体構造物を形成可能である。
貼付剤としては、熱可塑性樹脂繊維(C)の処理剤、連続強化繊維(A)の処理剤、および、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の処理剤の少なくとも1種であることが好ましい。
熱融着する場合、熱融着温度は、熱可塑性樹脂繊維(B)と熱可塑性樹脂繊維(C)のうち、融点の低い方の樹脂の融点+10〜50℃が好ましい。熱融着時間としては、0.01〜10秒程度が好ましい。融点の低い方の樹脂を基準とすることにより、立体構造物の形状をより保ちやすくなり、また、エネルギー効率の観点からも好ましい。
熱可塑性樹脂繊維(C)と混繊糸を絡交させたフィラメントとしては、熱可塑性樹脂繊維(C)と混繊糸の組紐や撚り紐が例示される。
補強材として、熱可塑性樹脂繊維(C)を用いる場合、3Dプリンタ用フィラメントにおける、混繊糸の割合は、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましい。
熱可塑性樹脂繊維(C)の詳細については、後述する。
【0023】
さらに、補強材を用いない実施形態として、連続熱可塑性樹脂繊維(B)中に、長さ20〜30mm程度の連続強化繊維(A)を分散させたものを、熱可塑性樹脂繊維で保形した混繊糸において、保形する熱可塑性樹脂繊維の割合を多くすることによっても達成できる。連続熱可塑性樹脂繊維(B)中に、長さ20〜30mm程度の連続強化繊維(A)を分散させたものを、熱可塑性樹脂繊維で保形した混繊糸の詳細については、後述する。
【0024】
また、補強材を用いない他の実施形態として、複数本の混繊糸を絡交させたフィラメントが例示される。複数本の混繊糸を絡交させる態様としては、混繊糸を組紐や撚り紐にすることが挙げられる。この場合の組紐は、中心が連続強化繊維ではなく、中心の糸も、その周りを覆う他の糸も混繊糸で構成される。
【0025】
また、混繊糸単体を熱処理する方法も考えられる。この場合、混繊糸の繊度を10,000〜50,000dtex程度とするとよい。また、この場合の熱処理温度は、熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂bと熱可塑性樹脂繊維(C)を構成する熱可塑性樹脂cのうち、融点の低い方の樹脂の融点+10〜50℃が好ましい。熱融着時間としては、0.01〜10秒程度が好ましい。
【0026】
<混繊糸>
本発明で用いる混繊糸は、連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)を含み、連続強化繊維(A)が連続熱可塑性樹脂繊維(B)中に分散しており、かつ、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の一部または全部が連続強化繊維(A)に含浸せずに、繊維の状態を保っていることをいう。尚、本発明で用いる混繊糸は、連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)の一部が本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、交絡していてもよい。
【0027】
混繊糸中における、連続強化繊維の分散度は、60〜100%であり、60〜99%であることが好ましく、63〜99%であることがより好ましく、68〜99%がさらに好ましい。このような範囲とすることにより、連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)が含浸しやすく、また、得られる立体構造物中の空隙をより少なくすることができる。
本発明における分散度とは、後述する実施例で示す方法によって測定された値をいう。
【0028】
また、本発明のフィラメントに用いる原料である混繊糸における、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の含浸率は、通常、80%以下である。含浸率の上限値は、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。含浸率の下限値は、0%以上が好ましい。本発明の混繊糸は、含浸がかなり進行していても、含浸がさほど進行していなくてもよい。混繊糸の含浸率が高いと、立体構造物をより短い時間で製造でき、生産性を向上させることができる。一方、混繊糸の含浸率が低いと、混繊糸が柔軟性に優れるため、強化繊維が破断しにくく、操作性の向上と造形物の良好な物性を両立させることが出来る。また、本発明では、含浸率の低い混繊糸を熱可塑性樹脂繊維(C)に融着する際の熱を利用して含浸率を高めてフィラメントとして用いても良い。
【0029】
フィラメントに組み込んだ後の混繊糸における、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の含浸率は、上記原料である混繊糸における含浸率と同じであってもよいが、さらに含浸が進んでいてもよい。
具体的には、フィラメント中の混繊糸における連続熱可塑性樹脂繊維(B)の含浸率は、80%〜0%の範囲で、用途等に応じて適宜定められる。
本発明の含浸率の好ましい第一の実施形態は、0%以上10%未満である。このような範囲とすることにより、混繊糸が柔軟性に優れるため、強化繊維が破断しにくく、得られる立体構造物の表面に凹凸が無く、設計通りの立体構造物が得られやすい。
本発明の含浸率の好ましい第二の実施形態は、30%以上80%未満である。このような範囲とすることにより、立体構造物をより短い時間で製造でき、生産性を向上させることができる。
本発明の含浸率の好ましい第三の実施形態は、10%以上30%未満である。このような範囲とすることにより、上記第一の実施形態と第二の実施形態の利点をバランスよく享受することができる。
本発明における含浸率は、後述する実施例で測定された方法によって得られる値をいう。
【0030】
本発明で用いる混繊糸は、通常、混繊糸を構成する連続強化繊維の95重量%以上が連続強化繊維(A)または連続熱可塑性樹脂繊維(B)で構成される。
本発明で用いる混繊糸は、好ましくは、連続強化繊維(A)および連続熱可塑性樹脂繊維(B)とが、連続強化繊維(A)および連続熱可塑性樹脂繊維(B)の少なくとも一方の処理剤によって、束状にされたものである。
【0031】
また、混繊糸中における、連続強化繊維(A)の割合は、10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることがさらに好ましく、30重量%以上であることが一層好ましく、40重量%以上であることがより一層好ましく、50重量%以上であることが特に好ましく、55重量%以上とすることもできる。混繊糸中における連続強化繊維(A)の割合の上限は、好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは80重量%以下であり、さらに好ましくは70重量%以下であり、65重量%以下とすることもできる。
混繊糸中における、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の割合は、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることがさらに好ましく、35重量%以上とすることもできる。連続熱可塑性樹脂繊維(B)の割合の上限は、好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは85重量%以下であり、さらに好ましくは80重量%以下であり、一層好ましくは70重量%以下であり、より一層好ましくは60重量%以下であり、特に好ましくは50重量%以下であり、45重量%以下とすることもできる。
【0032】
混繊糸の製造には、通常、連続熱可塑性樹脂繊維束と連続強化繊維束を用いて製造する。一本の混繊糸の製造に用いられる繊維の合計繊度(一本の混繊糸の製造に用いられる連続熱可塑性樹脂繊維の繊度の合計および連続強化繊維の繊度の合計を足し合わせた値、すなわち、混繊糸の繊度)は、1000〜100000dtexであることが好ましく、1500〜50000dtexであることがより好ましく、2000〜50000dtexであることがさらに好ましく、3000〜30000dtexであることが特に好ましい。
【0033】
一本の混繊糸の製造に用いる連続熱可塑性樹脂繊維の繊度の合計と連続強化繊維の繊度の合計の比(連続熱可塑性樹脂繊維の繊度の合計/連続強化繊維の繊度の合計)は0.1〜10であることが好ましく、0.1〜6.0であることがより好ましく、0.5〜2.0がさらに好ましい。
【0034】
一本の混繊糸の製造に用いる繊維数の合計(連続熱可塑性樹脂繊維の繊維数の合計と連続強化繊維の繊維数の合計を合計した繊維数)は100〜100000fであることが好ましく、1000〜100000fであることがより好ましく、1500〜70000fであることがより好ましく、2000〜20000fであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、混繊糸の混繊性が向上し、物性と質感により優れた立体構造物が得られる。また、いずれかの繊維が偏る領域が少なく互いの繊維がより均一に分散し易い。
【0035】
一本の混繊糸の製造に用いる連続熱可塑性樹脂繊維の繊維数の合計と連続強化繊維の繊維数の合計の比(連続熱可塑性樹脂繊維の繊維数の合計/連続強化繊維の繊維数の合計)は0.001〜1であることが好ましく、0.001〜0.5であることがより好ましく、0.05〜0.2であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、混繊糸の混繊性が向上し、物性と質感により優れた立体構造物が得られる。また、混繊糸中の連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維は、互いの繊維が均一に分散していることが好ましいが、上述の範囲であると互いの繊維がより均一に分散し易い。
【0036】
本発明で用いる混繊糸は、撚りがかっていてもよい。撚りのかけ方は、特に定めるものではなく、公知の方法を採用できる。撚りの回数としては、連続熱可塑性樹脂繊維(B)に用いる熱可塑性樹脂bの種類、熱可塑性樹脂繊維束の繊維数、繊度、連続強化繊維(A)の種類、繊維数、繊度、連続熱可塑性樹脂繊維(B)と連続強化繊維(A)の繊維数比や繊度比に応じて適宜定めることができるが、例えば1〜200回/m(繊維長)とすることができ、さらには1〜100回/mとすることができ、よりさらには1〜70回/mとすることができ、特には1〜50回/mとすることができる。このような構成とすることにより、より機械的強度に優れた立体構造物が得られる。
【0037】
混繊糸に用いる連続強化繊維(A)および/または連続熱可塑性樹脂繊維(B)は、上述のとおり、処理剤で表面処理されたものを用いることが好ましい。このような構成とすることにより、連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)とがより均一に分散した混繊糸が得られ、また、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の連続強化繊維(A)への含浸率を向上させることができる。
さらに、混繊糸には、連続強化繊維(A)、連続熱可塑性樹脂繊維(B)、連続強化繊維(A)の処理剤、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の処理剤および以外の他の成分が含まれていても良く、具体的には、短繊維長炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、マイクロセルロースファイバー、タルク、マイカなどが例示される。これらの他の成分の配合量は、混繊糸の5重量%以下であることが好ましい。
本発明の混繊糸の一例としては、連続強化繊維(A)と連続熱可塑性樹脂繊維(B)を含み、混繊糸中の連続強化繊維の分散度が60〜100%であり、連続熱可塑性樹脂繊維(B)が連続強化繊維に実質的に含浸しておらず、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の長さが30mmを超える混繊糸が挙げられる。
【0038】
また、本発明で用いる混繊糸として、熱可塑性樹脂繊維(B)中に、長さ20〜30mm程度の連続強化繊維を分散させたものを、熱可塑性樹脂繊維で保形した混繊糸も好ましく用いられる。この場合の、保形する熱可塑性樹脂繊維としては、後述する熱可塑性樹脂繊維(C)と同様の範囲が好ましい。保形としては、熱可塑性樹脂繊維(B)中に、長さ20〜30mm程度の連続強化繊維を分散させたものの周囲を熱可塑性樹脂繊維で巻くことが好ましい。
【0039】
<<連続強化繊維(A)>>
本発明で用いる混繊糸は連続強化繊維(A)を含む。本発明における連続強化繊維(A)とは、6mmを超える繊維長を有する連続強化繊維をいい、30mmを超える繊維長を有する連続強化繊維であることが好ましい。本発明における繊維長は、特に述べない限り、数平均繊維長をいう。本発明で使用する連続強化繊維(A)の平均繊維長は特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1〜20,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜10,000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
本発明で用いる連続強化繊維の一例は、複数の連続強化繊維が束状になった連続強化繊維束である。本実施形態では、繊維長1m以上の連続強化繊維が好ましい。
本発明で用いる連続強化繊維の他の一例は、繊維長30〜150mmの連続強化繊維である。このような連続強化繊維の例としては、「stretch-broken carbon fiber」が挙げられる。
【0040】
本発明で用いる連続強化繊維(A)は、混繊糸1本あたりの合計繊度が、100〜50000dtexあることが好ましく、500〜40000dtexであることがより好ましく、1000〜10000dtexであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、加工がより容易となり、得られる混繊糸の弾性率・強度がより優れたものとなる。
本発明で用いる連続強化繊維(A)は、混繊糸一本あたりの合計繊維数が、500〜50000fであることが好ましく、500〜20000fであることがより好ましく、700〜15000fであることがさらに好ましく、700〜7000fであることが特に好ましい。このような範囲とすることにより、混繊糸中での連続強化繊維(A)の分散状態がより良好となる。
1本の混繊糸において、連続強化繊維(A)が、所定の合計繊度および合計繊維数を満たすために、1本の連続強化繊維束で製造してもよいし、複数本の連続強化繊維束を用いて製造してもよい。本発明では、1〜10本の連続強化繊維束を用いて製造することが好ましく、1〜3本の連続強化繊維束を用いて製造することがより好ましく、1本の連続強化繊維束を用いて製造することがさらに好ましい。
【0041】
連続強化繊維(A)としては、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)等の無機繊維、および、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維などが挙げられる。なかでも、炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維の少なくとも1種であることが好ましく、炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも1種であることがより好ましい。特に、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特徴を有するため、炭素繊維が好ましく用いられる。炭素繊維はポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維を好ましく用いることができる。また、リグニンやセルロースなど、植物由来原料の炭素繊維も用いることができる。
【0042】
<<連続強化繊維(A)の処理剤>>
本発明で用いる連続強化繊維(A)は、処理剤で処理されたものを用いることが好ましい。このような処理剤としては、集束剤や表面処理剤が例示され、特許第4894982号公報の段落番号0093および0094に記載のものが好ましく採用され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0043】
具体的には、本発明で用いる処理剤は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、水不溶性ポリアミド樹脂および水溶性ポリアミド樹脂の少なくとも1種であることが好ましく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、水不溶性ポリアミド樹脂および水溶性ポリアミド樹脂の少なくとも1種であることがより好ましく、水溶性ポリアミド樹脂であることがさらに好ましい。
【0044】
エポキシ樹脂としては、エポキシアルカン、アルカンジエポキシド、ビスフェノールA−グリシジルエーテル、ビスフェノールA−グリシジルエーテルの二量体、ビスフェノールA−グリシジルエーテルの三量体、ビスフェノールA−グリシジルエーテルのオリゴマー、ビスフェノールA−グリシジルエーテルのポリマー、ビスフェノールF−グリシジルエーテル、ビスフェノールF−グリシジルエーテルの二量体、ビスフェノールF−グリシジルエーテルの三量体、ビスフェノールF−グリシジルエーテルのオリゴマー、ビスフェノールF−グリシジルエーテルのポリマー、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジル化合物;安息香酸グリシジルエステル、p−トルイル酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルアミン化合物が挙げられる。
【0045】
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオール、油脂と多価アルコールをウムエステル化したポリオール、及びポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタン樹脂を使用することができる。
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,8−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族イソシアネート類;3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,4−ジイソシアネート等の脂環族ジシソシアネート類;トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフテンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソサネート、4,4−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;塩素化ジイソシアネート類、臭素化ジイソシアネート類等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
前記ポリオールとしては、通常ウレタン樹脂の製造に使用される種々のポリオール、例えば、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリブタジエンポリオール、フランジメタノール等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0046】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0047】
ここで、水不溶性ポリアミド樹脂とは、25℃で1gのポリアミド樹脂を100gの水に添加したとき99重量%以上が溶解しないことをいう。
水不溶性ポリアミド樹脂を用いる場合、水または有機溶媒に、粉末状の水不溶性ポリアミド樹脂を分散または懸濁させて用いることが好ましい。このような粉末状の水不溶性ポリアミド樹脂の分散物または懸濁液に混繊維束を浸漬して用い、乾燥させて混繊糸とすることができる。
水不溶性ポリアミド樹脂しては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(好ましくは、ポリキシリレンアジパミド、ポリキシリレンセバカミド)および、これらの共重合体の粉体をノニオン系、カチオン系、アニオン系又はこれらの混合物である界面活性剤を添加して乳化分散したものが挙げられる。水不溶性ポリアミド樹脂の市販品は、例えば、水不溶性ナイロンエマルジョンとして販売されており、例えば、住友精化社製セポルジョンPA、Michaelman社製Michem Emulsionが挙げられる。
【0048】
ここで、水溶性ポリアミド樹脂とは、25℃で1gのポリアミド樹脂を100gの水に添加したときに、その99重量%以上が水に溶けることをいう。
水溶性ポリアミド樹脂としては、アクリル酸グラフト化N−メトオキシメチル化ポリアミド樹脂、アミド基を付与したN−メトオキシメチル化ポリアミド樹脂などの変性ポリアミドが挙げられる。水溶性ポリアミド樹脂としては、例えば、東レ社製AQ-ナイロン、ナガセケムテックス社製トレジン等の市販品が挙げられる。
【0049】
前記処理剤の量は、連続強化繊維(A)の0.001〜1.5重量%であることが好ましく、0.1〜1.2重量%であることがより好ましく、0.5〜1.1重量%であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、連続強化繊維(A)の分散度がより向上し、本発明の効果がより効果的に発揮される。
【0050】
<<連続強化繊維(A)の処理剤による処理方法>>
連続強化繊維(A)による処理剤による処理方法は、公知の方法を採用できる。例えば、連続強化繊維(A)を、処理剤を溶液に溶解させたものに添加し、連続強化繊維(A)の表面に処理剤を付着させることが挙げられる。また、処理剤を連続強化繊維(A)の表面にエアブローすることもできる。さらに、既に、表面処理剤や処理剤で処理されている連続強化繊維(A)を用いてもよいし、市販品の表面処理剤や処理剤を洗い落してから、再度、所望の処理剤量となるように、表面処理しなおしても良い。
【0051】
<<連続熱可塑性樹脂繊維(B)>>
本発明における連続熱可塑性樹脂繊維(B)とは、6mmを超える繊維長を有する熱可塑性樹脂繊維をいい、30mmを超える繊維長を有する熱可塑性樹脂繊維であることが好ましい。本発明で使用する連続熱可塑性樹脂繊維(B)の平均繊維長に特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1〜20,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜1,0000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
本発明で用いる連続熱可塑性樹脂繊維(B)は、熱可塑性樹脂bを主成分とする熱可塑性樹脂組成物からなる。例えば、熱可塑性樹脂組成物の80重量%以上、さらには、90〜100重量%が熱可塑性樹脂bであることをいう。従って、熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂bのみからなってもよいし、熱可塑性樹脂bに加え、公知の添加剤等を適宜配合したものであってもよい。
熱可塑性樹脂bとしては、混繊糸に用いるものを広く使用することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、熱可塑性ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂を用いることができ、ポリアミド樹脂であることが好ましい。本発明で用いることができる熱可塑性樹脂組成物、ポリアミド樹脂の詳細については、後述する。
熱可塑性樹脂bの融点は、用いる樹脂の種類にもよるが、例えば、165〜390℃であることが好ましく、165〜375℃であることがより好ましく、165〜305℃であることがさらに好ましく、175〜295℃であることが一層好ましく、185〜285℃であることがより一層好ましい。
尚、熱可塑性樹脂bに高い融点を有する樹脂を採用する場合、スーパーエンプラと呼ばれる高耐熱性熱可塑性樹脂を用いることもできる。スーパーエンプラの例としては、三井化学社製、AURUM(登録商標)、Victrex社製、Victrex(登録商標)PEEKシリーズなどが例示される。
熱可塑性樹脂bは1種でも、2種以上であってもよく、2種以上の場合は、最も融点の低い熱可塑性樹脂bの融点が上記範囲となることが好ましい。また、熱可塑性樹脂bが2つ以上の融点を有する場合、最も低い融点を熱可塑性樹脂bの融点とする。
【0052】
本発明で用いる連続熱可塑性樹脂繊維(B)は、通常、連続熱可塑性樹脂繊維が束状になった連続熱可塑性樹脂繊維束を用いて製造するが、かかる連続熱可塑性樹脂繊維束1本の当たりの合計繊度が、40〜600dtexであることが好ましく、50〜500dtexであることがより好ましく、100〜400dtexであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、得られる混繊糸中での連続熱可塑性樹脂繊維(B)の分散状態がより良好となる。かかる連続熱可塑性樹脂繊維束を構成する繊維数は、1〜200fであることが好ましく、5〜100fであることがより好ましく、10〜80fであることがさらに好ましく、20〜50fであることが特に好ましい。このような範囲とすることにより、得られる混繊糸中での連続熱可塑性樹脂繊維(B)の分散状態がより良好となる。
【0053】
本発明では、1本の混繊糸を製造するために、上記連続熱可塑性樹脂繊維束を1〜100本の範囲で用いることが好ましく、1〜50本の範囲で用いることがより好ましく、3〜25本の範囲で用いることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
混繊糸1本を製造するための上記連続熱可塑性樹脂繊維の合計繊度は、200〜12000dtexであることが好ましく、1000〜6000dtexであることがより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
混繊糸1本を製造するための上記連続熱可塑性樹脂繊維(B)の合計繊維数は、10〜2000fであることが好ましく、20〜1600fであることがより好ましく、200〜350fであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、混繊糸の混繊性が向上し、物性と質感により優れた立体構造物が得られる。さらに、繊維数を10f以上とすることにより、開繊した繊維がより均一に混合しやすくなる。また、2000f以下とすると、いずれかの繊維が偏る領域がよりできにくく、より均一性のある混繊糸が得られる。
本発明で用いる連続熱可塑性樹脂繊維束は、引張強度が2〜10gf/dであるものが好ましい。
【0054】
<<<熱可塑性樹脂組成物>>>
本発明で用いる連続熱可塑性樹脂繊維は、上述のとおり、熱可塑性樹脂bを主成分とする熱可塑性樹脂組成物からなることが好ましく、ポリアミド樹脂を主成分とするポリアミド樹脂組成物からなることがより好ましい。
【0055】
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、エラストマー成分を含んでいても良い。
エラストマー成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等公知のエラストマーが使用でき、好ましくはポリオレフィン系エラストマー及びポリスチレン系エラストマーである。これらのエラストマーとしては、ポリアミド樹脂に対する相溶性を付与するため、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。
【0056】
熱可塑性樹脂組成物に、エラストマー成分を配合する場合、エラストマー成分の配合量は、熱可塑性樹脂組成物の5〜25重量%であることが好ましい。
【0057】
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130〜0155の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。尚、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、フィラーを含んでいても良いが、フィラーを含まないことが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂組成物中のフィラーの含有量が、3重量%以下であることをいう。
【0058】
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物の好ましい実施形態として、熱可塑性樹脂組成物の70重量%以上(好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上)が、ポリアミド樹脂である形態が例示される。
【0059】
<<<ポリアミド樹脂>>>
本発明で用いるポリアミド樹脂としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド66/6T、ポリキシリレンアジパミド、ポリキシリレンセバカミド、ポリキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT、ポリアミド6I/6T等が挙げられる。
【0060】
上述のようなポリアミド樹脂の中でも、成形性、耐熱性の観点から、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂(以下、「XD系ポリアミド」ということがある)であることが好ましい。XD系ポリアミド、ポリアミド11、ポリアミド12などの低吸水性ポリアミドを用いると、得られる立体構造物の発泡をより効果的に抑制することができる。
また、ポリアミド樹脂が混合物である場合は、ポリアミド樹脂中のXD系ポリアミドの比率が50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。
【0061】
XD系ポリアミドは、好ましくは、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、一層好ましくは90モル%、より一層好ましくは95モル%以上が、炭素原子数が好ましくは4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来することが好ましい。
【0062】
XD系ポリアミドの原料ジアミン成分として用いることが出来るメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
【0063】
ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。
【0064】
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0065】
ジカルボン酸成分として、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性、バリア性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸を用いることが好ましい。テレフタル酸、イソフタル酸の割合は、好ましくはジカルボン酸構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
【0066】
さらに、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
【0067】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であることが好ましく、より好ましくは8,000〜28,000であり、さらに好ましくは9,000〜26,000であり、よりさらに好ましくは10,000〜24,000であり、特に好ましくは11,000〜22,000である。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好となる。
【0068】
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH
2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH
2])
【0069】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは1.8〜3.1である。分子量分布は、より好ましくは1.9〜3.0、さらに好ましくは2.0〜2.9である。分子量分布をこのような範囲とすることにより、機械物性に優れた立体構造物が得られやすい傾向にある。
ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量及び反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整することもできる。
【0070】
分子量分布は、GPC測定により求めることができ、具体的には、装置として東ソー社製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー社製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02重量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
【0071】
また、ポリアミド樹脂は、吸水時の曲げ弾性率保持率が、85%以上であることが好ましい。吸水時の曲げ弾性率保持率を、このような範囲とすることにより、成形品の高温高湿度下での物性低下が少なく、そりなどの形状変化が少なくなる傾向にある。
ここで、ポリアミド樹脂の吸水時の曲げ弾性率保持率とは、ポリアミド樹脂をJIS K7171に従って成形した曲げ試験片の0.1重量%の吸水時の曲げ弾性率に対する、0.5重量%の吸水時の曲げ弾性率の比率(%)として定義され、これが高いということは吸湿しても曲げ弾性率が低下しにくいことを意味する。ここで、曲げ弾性率はJIS K7171に従って測定した値をいう。
吸水時の曲げ弾性率保持率は、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
ポリアミド樹脂の吸水時の曲げ弾性率保持率は、例えば、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンの混合割合によりコントロールでき、パラキシリレンジアミンの割合が多いほど曲げ弾性率保持率を良好とすることができる。また、曲げ試験片の結晶化度をコントロールすることによっても調整できる。
【0072】
ポリアミド樹脂の吸水率は、JIS K7171に従って成形した曲げ試験片を23℃にて1週間、水に浸漬した後取り出し、水分をふき取ってすぐ測定した際の吸水率として1重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.6重量%以下、さらに好ましくは0.4重量%以下である。この範囲であると、成形品の吸水による変形を防止しやすく、また、熱可塑性樹脂bの溶融時の水分の発泡を抑制し、空隙の少ない成形品を得ることができる。
【0073】
また、ポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度([NH
2])が好ましくは100μ当量/g未満、より好ましくは5〜75μ当量/g、さらに好ましくは10〜60μ当量/gであり、末端カルボキシル基濃度([COOH])は、好ましくは150μ当量/g未満、より好ましくは10〜120μ当量/g、さらに好ましくは10〜100μ当量/gのものが好適に用いられる。このような末端基濃度のポリアミド樹脂を用いることにより、ポリアミド樹脂をフィルム状又は繊維状に加工する際に粘度が安定しやすく、また、後述のカルボジイミド化合物との反応性が良好となる傾向にある。
【0074】
また、末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH
2]/[COOH])は、0.7以下であるものが好ましく、0.6以下であるものがより好ましく、特に好ましくは0.5以下である。この比が0.7よりも大きいものは、ポリアミド樹脂を重合する際に、分子量の制御が難しくなる場合がある。
【0075】
末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂0.5gを30mlのフェノール/メタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定することができる。また、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160℃〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加える。その溶液を0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定を行い、色の変化が黄〜赤となり色の変化がなくなった時点を終点とすることで算出することができる。
ポリアミド樹脂の製造方法は、特開2014−173196号公報公報の段落0052〜0053の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0076】
本発明においては、ポリアミド樹脂の融点は、150〜310℃であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましく、180〜250℃であることがさらに好ましい。
また、ポリアミド樹脂のガラス転移点は、50〜100℃が好ましく、55〜100℃がより好ましく、特に好ましくは60〜100℃である。この範囲であると、耐熱性が良好となる傾向にある。
【0077】
なお、本発明における融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度をいう。ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。
測定には、DSC測定器を用い、試料量は約1mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点、融点を求めることができる。DSC測定器としては、島津製作所(SHIMADZU CORPORATION)社製、DSC−60を用いることができる。
【0078】
<<連続熱可塑性樹脂繊維(B)の処理剤>>
本発明で用いる連続熱可塑性樹脂繊維(B)は、その表面を処理剤で処理することも好ましい。このような態様とすることにより、混繊糸における連続強化繊維(A)の分散度がより向上する。処理剤は、連続熱可塑性樹脂繊維(B)を集束する機能を有するものであれば、その種類は特に定めるものではない。処理剤としては、エステル系化合物、アルキレングリコール系化合物、ポリオレフィン系化合物、フェニルエーテル系化合物を例示でき、より具体的には、界面活性剤が好ましい。
連続熱可塑性樹脂繊維(B)の処理剤の量は、連続熱可塑性樹脂繊維(B)に対し、0.1〜2重量%であることが好ましく、0.5〜1.5重量%であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の分散が良好となり、より均質な混繊糸を得られやすい。また、混繊糸を製造する際には連続熱可塑性樹脂繊維(B)には機械との摩擦力や繊維同士の摩擦力が生じ、その際に連続熱可塑性樹脂繊維(B)が切れることがあるが、上記の範囲とすることによって繊維の切断をより効果的に防ぐことができる。また、均質な混繊糸を得るために機械的な応力を連続熱可塑性樹脂繊維(B)に加えるが、その際の応力により連続熱可塑性樹脂繊維(B)が切断することをより効果的に防ぐことができる。
【0079】
<<連続熱可塑性樹脂繊維(B)の処理剤による処理方法>>
連続熱可塑性樹脂繊維(B)の処理剤による処理方法は、所期の目的を達成できる限り特に定めるものではない。例えば、連続熱可塑性樹脂繊維(B)に、処理剤を溶液に溶解させたものを付加し、連続熱可塑性樹脂繊維(B)の表面に処理剤を付着させることが挙げられる。あるいは処理剤を連続熱可塑性樹脂繊維(B)の表面に対してエアブローすることによってもできる。
【0080】
<熱可塑性樹脂繊維(C)>
次に、混繊糸の補強材である、熱可塑性樹脂繊維(C)について説明する。熱可塑性樹脂繊維(C)は、通常は、連続熱可塑性樹脂繊維であり、所望の3Dプリンタ用フィラメントの長さに応じて適宜定められる。具体的には、1〜20,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜1,0000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
熱可塑性樹脂繊維(C)の径(直径)は、0.5〜2.5mmであることが好ましく、1.0〜1.8mmであることがより好ましい。このような範囲とすることにより、連続生産性に優れたフィラメントが得られる。
【0081】
本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維(C)は、熱可塑性樹脂cを主成分とする熱可塑性樹脂組成物からなる。主成分とは、例えば、熱可塑性樹脂組成物の80重量%以上、さらには、90〜100重量%が熱可塑性樹脂cであることをいう。従って、熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂cのみからなってもよいし、熱可塑性樹脂cに加え、公知の添加剤等を適宜配合したものであってもよい。熱可塑性樹脂cの詳細は、上述の熱可塑性樹脂bと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、熱可塑性樹脂繊維(C)に配合してもよい添加剤等も同様である。すなわち、熱可塑性樹脂繊維(C)を構成する熱可塑性樹脂組成物の好ましい範囲は、上記熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂組成物の好ましい範囲と同様である。従って、熱可塑性樹脂cの融点等の好ましい範囲は、熱可塑性樹脂bの融点等の好ましい範囲と同様である。
さらに、熱可塑性樹脂cは、水分率が5.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましい。下限値は特に定めるものではないが、0.1%以上であってもよい。水分率を5.0%以下とすることにより、成形品の発泡をより効果的に抑制できる。
水分率の測定方法は、後述する実施例に記載の方法に従う。
熱可塑性樹脂cは1種でも、2種以上であってもよく、2種以上の場合は、最も融点の低い熱可塑性樹脂cの融点が上記範囲となることが好ましい。また、熱可塑性樹脂cが2つ以上の融点を有する場合、最も低い融点を熱可塑性樹脂cの融点とする。
【0082】
熱可塑性樹脂繊維(C)は、モノフィラメントまたはマルチフィラメントであってもよいが、モノフィラメントが好ましい。マルチフィラメントの場合の繊維数は、16〜540fが好ましく、24〜108fがより好ましい。
熱可塑性樹脂繊維(C)を束状にするために、処理剤を用いても良く、この場合の処理剤としては、上記連続熱可塑性樹脂繊維(B)の処理剤として述べたものが好ましく用いられる。
【0083】
本発明の3Dプリンタ用フィラメントにおいて、熱可塑性樹脂bと熱可塑性樹脂cは同一の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。しかしながら、熱可塑性樹脂(B)を構成する熱可塑性樹脂bの融点と、前記補強材である熱可塑性樹脂繊維(C)を構成する熱可塑性樹脂cの融点の差が50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましい。下限値については、特に定めるものではないが、0℃であってもよい。このような範囲とすることにより、吐出が安定し成形性に優れる。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0085】
1.熱可塑性樹脂
<合成例1 MPXD10>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(伊藤製油社製TAグレード)10kg(49.4mol)及び酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gを仕込み、十分に窒素置換した後、更に少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。
メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)とパラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)のモル比が70/30である混合キシリレンジアミン6.647kg(メタキシリレンジアミン34.16mol、パラキシリレンジアミン14.64mol)を溶融したセバシン酸に攪拌下で滴下し、生成する縮合水を系外に排出しながら、内温を連続的に2.5時間かけて240℃まで昇温した。
滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、更に内温を上昇させて255℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化することにより、ポリアミド樹脂MPXD10を得た。
得られたポリアミド樹脂の融点は、213℃、数平均分子量は、15400であった。
【0086】
<合成例2 MXD10>
原料ジアミンに混合キシリレンジアミンの代わりにメタキシリレンジアミンを用いた以外は合成例1と同様に合成することにより、ポリアミド樹脂MXD10を得た。
得られたポリアミド樹脂の融点は、190℃、数平均分子量は、15000であった。
【0087】
MXD6:メタキシリレンアジパミド樹脂、三菱ガス化学社製、S6001、融点237℃、数平均分子量16800
Ny6:ポリアミド樹脂6、宇部興産社製、1022B、融点220℃
【0088】
2.連続強化繊維(A)
CF−1:三菱レイヨン社製、Pyrofil−TR−50S、8000dtex、繊維数12000f、エポキシ樹脂で表面処理されている。
CF−2:三菱レイヨン社製、Pyrofil−TR−50S、4000dtex、繊維数6000f、エポキシ樹脂で表面処理されている。
GF−1:日東紡績社製、1350dtex、繊維数800f。
【0089】
3.混繊糸の製造
(連続熱可塑性樹脂繊維(B)の製造)
上記熱可塑性樹脂を用い、以下の手法に従って繊維状にした。
熱可塑性樹脂を直径30mmのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、48穴のダイからストランド状に押出し、ロールにて巻き取りながら延伸し、回巻体に巻き取った熱可塑性樹脂繊維束を得た。溶融温度は、熱可塑性樹脂bの融点+20℃とした。
但し、混繊糸5で用いた連続熱可塑性樹脂繊維(Ny66繊維)については、旭化成せんい社製、レオナ、融点265℃、235dtex/繊維数35fを用いた。
【0090】
(混繊糸の製造)
混繊糸は、以下の方法に従って製造した。
連続熱可塑性樹脂繊維(B)の回巻体(200m巻)10個、および連続強化繊維(A)の回巻体(200m巻)1個からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながらエアブローにより開繊を行った。開繊しながら、連続熱可塑性樹脂繊維(B)および連続強化繊維(A)を一束とし、さらに、複数のガイドを通しながらエアブローを与え、均一化を進めた。得られた繊維束を、処理剤(東レ社製、AQナイロンT70)を含む水溶液に10秒間浸漬し、その後、40℃で60分乾燥させて、混繊糸を得た。水溶液中の処理剤の濃度は、処理剤塗布量が表1に示す量となるように、調整した。
【0091】
(混繊糸の繊度)
混繊糸1mの製造に用いられる繊維の合計繊度当たりの重量を測定し、繊度(dtex)に換算した。
【0092】
(分散度の測定)
混繊糸を切り取り、エポキシ樹脂で包埋し、前記包埋した混繊糸の長手方向に垂直な断面を研磨し、断面図を超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500(コントローラー部)/VK−9510(測定部)(キーエンス社製)を使用して撮影した。
図4に示すように、撮影画像において、放射状に補助線を等間隔に6本ひき、各補助線上にある連続強化繊維(A)領域の長さをa1, a2, a3・・・ai(i=n)と測量した。同時に各補助線上にある連続熱可塑性樹脂繊維(B)の領域の長さをb1, b2, b3・・・bi(i=m)と測量した。次式により連続強化繊維の分散度を算出した。
【数1】
【0093】
(含浸率の測定)
混繊糸を切り取ってエポキシ樹脂で包埋し、前記包埋した混繊糸の長手方向に垂直な断面を研磨し、断面図を超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500(コントローラー部)/VK−9510(測定部)(キーエンス社製)を使用して撮影した。得られた断面写真に対し、連続強化繊維(A)の連続熱可塑性樹脂繊維(B)由来の成分が溶融し含浸した領域を画像解析ソフトImageJを用いて選択し、その面積を測定した。含浸率は、連続熱可塑性樹脂繊維(B)由来の成分が連続強化繊維(A)に含浸した領域/撮影断面積(単位%)として示した。
【0094】
【表1】
【0095】
4.熱可塑性樹脂繊維(C)の製造
下記表2に示す熱可塑性樹脂cを用い、以下の手法に従って繊維状にした。
熱可塑性樹脂cを、スクリューを有する単軸押出機にて、表2に示すフィラメント径およびフィラメントとなるように、ストランド状に溶融押出しし、ロールにて巻き取りながら延伸し、回巻体に巻き取った熱可塑性樹脂繊維束(モノフィラメント)を得た。溶融温度は、樹脂の融点+20℃とした。
【0096】
また、得られた熱可塑性樹脂繊維(C)の繊維径および水分率を測定した。
(繊維径の測定)
超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500(コントローラー部)/VK−9510(測定部)(キーエンス社製))で測定した。
(水分率の測定)
25℃において、熱可塑性樹脂繊維(C)1.0gを切り出し、測定機器の設定温度は、熱可塑性樹脂繊維cの融点−5℃とし、検出開始までの待機時間を0秒とし、測定時間を30分間とし、カール・フィッシャー法で水分量を測定した。ブランクとして試料量0gに対して同条件で水分量を測定した。次式により、試料の水分量を計算した。
水分率=((試験片の水分量)―(ブランクの水分量))/(試験片の重量)
単位は、重量%である。
本実施例では、測定機器として、三菱化学アナリテック社製、水分計CA200と、サンプルチャージャーVA−236Sを用いた。
【0097】
【表2】
【0098】
<実施例1>
(3Dプリンタ用フィラメントの製造)
上記混繊糸1を樹脂繊維C−1に、下記表3に記載のフィラメント中の混繊糸の割合となるように、混繊糸と樹脂繊維とを接触させながら、らせん状に巻きつけた。表3に示す熱融着温度(熱可塑性樹脂bおよび熱可塑性樹脂cの融点のうち、低い方の融点+20℃)にて、1.0秒間熱融着して、3Dプリンタ用フィラメントを得た。
得られた3Dプリンタ用フィラメント径(単位:mm)は、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500(コントローラー部)/VK−9510(測定部)(キーエンス社製)で測定した。
【0099】
(含浸率の評価)
得られたフィラメント中の混繊糸の含浸率について、上記と同様の方法で含浸率を測定し、以下の区分に従って、評価した。
A:0%以上10%未満
B:10%以上30%未満
C:30%以上80%未満
D:80%以上
【0100】
(弾性率の測定)
試験片の作製
試験に用いる3Dプリンタ用フィラメントから15mmの長さを切り出した。
図5(a)に示す様に、15mmの長さの3Dプリンタ用フィラメント51の一端を10mmの領域迄、直径25mmの円筒状となるように樹脂で包埋し、全高15mm、3Dプリンタ用フィラメント部分が5mmとなるようにし、試験片を得た。
【0101】
試験方法
上記で得られた試験片を、
図5(b)に示す、直径25mm、高さ20mmの円筒状の穴を有するアルミ製治具53に、前記円筒状の樹脂部52が下側となるように嵌め込んだ。
図5(b)中、上側が治具を上から見た図であり、下側が治具を正面から見た図である。次いで、
図5(c)に示すように、前記円筒状の樹脂部52の上側方向から、直径25mmの円盤状の荷重54を治具に嵌め込みながら、圧縮し、試験を行った。ロードセルは50Nまたは500kNのものを使用し、試験条件は、試験速度0.2mm/分、荷重レンジ50N(実施例3、7、比較例2)または1kN(実施例1、2、4〜6、比較例1)で行って弾性率を測定した。
【0102】
(3Dプリンタを用いた立体構造物の製造)
上記で得られたフィラメントを、Solidoodle3(Solidoodle社製)にセットし、「熱可塑性樹脂b」の融点+40℃の温度にて、5mm/秒の速度で、カプトンフィルムの上に、円を描くように吐出した。このとき、基板は融点−100℃となるように加熱した。また、Solidoodle3の出力を上げられるように、スライダックを接続し、改変したものを用いた。得られた立体構造物の最薄肉部の厚さは、1mmであった。
【0103】
(吐出性)
上記3Dプリンタを用いた立体構造物の製造において、ノズルからのフィラメントの吐出性について、以下の通り評価した。
A:フィラメントを良好に吐出できた。
B:フィラメントが絡まったり、丸まったりすることがあり、調整が必要だったものの、吐出できた。
C:フィラメントが絡まったり、丸まったりすることがあり、調整が頻繁に必要だったものの、吐出できた。
D:フィラメントを吐出できなかった。
【0104】
(立体構造物の評価)
((空隙や発泡の量))
得られた立体構造物について、任意の断面で切り取ってエポキシ樹脂で包埋し、前記包埋した混繊糸の長手方向に垂直な断面を研磨し、断面図を超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500(コントローラー部)/VK−9510(測定部)(キーエンス社製)を使用して撮影した。得られた断面写真に対し、空隙や発泡の状態を確認した。
A:空隙や発泡が認められない、または、わずかに認められた。
B:空隙や発泡が認められたが、実用上問題ないレベルであった。
C:空隙や発泡が認められ、実用上問題となるレベルであった。
D:上記A〜C以外のいずれにも該当しない(立体構造物が製造できないなど)
【0105】
((造形性))
得られた立体構造物を目視で観察し、以下の通り評価した。
A:設計通りの立体構造物を得た。
B:表面に凹凸がやや認められるも、設計通りの立体構造物を得た。
C:立体構造物は得られたが、設計通りのものは得られなかった。
D:上記A〜C以外のいずれにも該当しない(立体構造物が製造できないなど)
【0106】
<実施例2>
実施例1において、表3に示す通り、混繊糸の種類、熱可塑性樹脂繊維(C)の種類を変更し、他は同様に行った。
【0107】
<実施例3>
3本の混繊糸3を、製紐機(コクブンリミテッド社製)に供給し、巻き上げ速度を10cm/分に設定して、20g/mの混繊糸の組紐(3Dプリンタ用フィラメント)を製造した。
得られた組紐を、Solidoodle3(Solidoodle社製)にセットし、実施例1と同様にして立体構造物を製造し、評価した。
【0108】
<実施例4>
実施例1において、表3に示す通り、熱可塑性樹脂繊維(C)を用いずに、混繊糸4を単体で表3に示す温度で5秒間加熱処理し、他は同様に行った。
【0109】
<実施例5>
実施例1において、表3に示す通り、混繊糸の種類、熱可塑性樹脂繊維(C)の種類を変更し、他は同様に行った。
【0110】
<実施例6>
実施例1において、表3に示す通り、混繊糸の種類を変更し、他は同様に行った。
【0111】
<実施例7>
混繊糸1をそのままSolidoodle3にセットした以外は実施例1と同様に行った。
【0112】
<比較例1>
実施例1において混繊糸の代わりに連続炭素繊維CF−1を、熱可塑性樹脂繊維C−1に、炭素繊維(連続強化繊維)の割合が表3に示す割合となるようにらせん状に直接巻きつけた他は同様に行った。
【0113】
<比較例2>
1本の連続炭素繊維CF−1と32本の樹脂繊維C−1(233dtex)とを、製紐機(コクブンリミテッド社製)に供給し、巻き上げ速度を10cm/分に設定して、1.55g/mの組紐(比較用3Dプリンタ用フィラメント)を製造した。
得られたフィラメントを用い、実施例1と同様に行った。
【0114】
【表3】
【0115】
上記結果から明らかなとおり、本発明の3Dプリンタ用フィラメントを用いた場合、内部に空隙や気泡が少ない立体構造物が得られた(実施例1〜7)。
また、フィラメントの弾性率を10MPa以上とすることにより、吐出性および造形性にも優れた立体構造物が得られた(実施例1〜6)。
これに対し、比較例1または2のフィラメントを用いた場合、内部に空隙または気泡が認められた。さらに、比較例1および2のフィラメントは、吐出性も劣っていた。比較例1のフィラメントは、弾性率は高いものの、混繊糸を使用せず、炭素繊維を熱可塑性樹脂繊維に巻き付けているため、炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維が混繊糸を用いる場合の様に容易に一体化しなかったことが、吐出性が劣る原因と考えられた。一方、比較例2は混繊糸ではないため、含浸が不十分であることが原因であった。
また、実施例1において、樹脂繊維C−1を同じ繊度で、フィラメント数48fのマルチフィラメントに変更し、同様に行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。