【解決手段】透光性を有する意匠材であって、透光性を有する基材1の少なくとも一方の面に、少なくとも1つ以上の紫外線発光部Aと、紫外線発光部に隣接する非発光部Bを有する意匠層が積層されてなり、紫外線発光部の隠蔽率が10〜80%、非発光部の隠蔽率が10〜80%であり、紫外線発光部と非発光部との隠蔽率の差が、0〜20%である意匠材。好ましくは紫外線発光部(A)と非発光部(B)との60度鏡面光沢度の差が0〜20であり、更に色差(△E)が0〜10である意匠材。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明は、透光性を有する意匠材に関するものである。本発明の意匠材は、
図1に示すように、透光性基材(1)の一方の面に、紫外線照射により発光する紫外線発光部(A)と、該紫外線発光部(A)に隣接する非発光部(B)を有する意匠層(2)が積層されてなり、当該紫外線発光部(A)と非発光部(B)が特定の隠蔽性を有する半透明の外観を呈し、透光性を有するものである。なお、本発明の「透光性」とは、可視光透過性を有することである。
【0014】
本発明の透光性基材(1)(以下、単に「基材(1)」ともいう。)は、意匠層(2)を保持する役割を担うものであり、意匠層(2)の少なくとも一方の面に積層すればよいが、意匠層(2)を挟むように両面に積層することもできる。基材(1)としては、透光性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ガラス、プラスチック等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
また、基材(1)の形状としては、例えば、板状、フィルム状、シート状等の面状体、当該面状体を湾曲加工や折り曲げ加工したもの、あるいは箱状、円筒状、球状等に成形したものが挙げられる。基材(1)の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜30mm(より好ましく0.05〜20mm)である。このような基材(1)の場合、意匠層(2)を保持するとともに、意匠材の両面から発光を視認できるため、意匠性にも優れるものとなる。
【0016】
本発明の意匠層(2)は、上記基材(1)の少なくとも一方の面に積層されてなり、紫外線発光部(A)と非発光部(B)を有する。まず、紫外線発光部(A)と非発光部(B)について説明する。
・紫外線発光部(A)
本発明の紫外線発光部(A)は、隠蔽率が10〜80%(好ましくは12〜60%、より好ましくは15〜50%)であり、具体的には、紫外線を照射した場合には、発光して蛍光発光色を呈し、また可視光を照射した場合には、光源からの光源色を呈する透光性を有するものである。なお、本発明において、隠蔽率は、紫外線発光部(A)を隠蔽率試験紙上に置いたときの、白地上と黒地上の視感反射率から算出することができる。視感反射率は色彩色差計を用いて測定し算出することができる。
【0017】
本発明の紫外線発光部(A)は、透光性を有する材料(以下、「透光性材料」という。)に蛍光発光を示す顔料、染料等(以下、「蛍光材料」という。)を含む組成物(以下「発光部用組成物」という。)を、上記基材(1)上に塗付して形成したもの、あるいは予めフィルム状または板状等に成形したものを使用することができる。その厚みは、好ましくは0.01〜10mm(より好ましくは0.05〜5mm)である。
【0018】
透光性材料としては、透光性を有するものであれば、無機質材料、有機質材料のどちらでもよい。例えば、無機質材料としては、ガラス、水ガラス、低融点ガラス、シリコン樹脂、アルコキシシラン等があげられる。また、有機質材料としては、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、アクリルシリコン樹脂、セルロールアセトブチレート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
蛍光材料としては、紫外線照射下において蛍光発光を示すものであれば限定されず、公知の蛍光染料や蛍光顔料等を使用することができる。本発明では、可視光下において蛍光発光を示さないものが好ましく、このような蛍光体の中でも、蛍光発光持続性、耐候性にも優れる無機蛍光顔料が特に好ましい。
【0020】
無機蛍光顔料の構成としては、例えば、母体結晶として、アルミナ(Al
2O
3)、タングステン酸カルシウム(CaWO
4)、硅酸亜鉛(Zn
2SiO
4)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、硫化酸化イットリウム(Y
2O
2S)、酸化アルミニウムイットリウム(Y
3Al
5O
12)、バナジン酸イットリウム(YVO
4)、酸化アルミニウムバリウムマグネシウム(BaMgAl
10O
17)、リン酸ストロンチウム(Sr
2P
2O
7)、等から選ばれる化合物に、Eu、Ce、Mn、Bi等の賦活剤を添加したものが使用できる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、無機蛍光顔料の平均粒子径は、好ましくは0.01〜50μm(より好ましくは0.05〜30μm)である。なお、本発明において、平均粒子径は、光散乱法によって測定される値である。
【0021】
発光部用組成物は、透光性材料(固形分)100重量部に対して、蛍光材料を0.5〜50重量部、さらには1〜30重量部混合することが好ましい。このような場合、優れた発光を視認することができる。また、所定の隠蔽率を満たすことができる。
【0022】
さらに、発光部用組成物は、所定の隠蔽率設定のために、粉粒体を混合することもできる。粉粒体としては、所定の隠蔽率となるように適宜選択して使用すればよいが、蛍光材料の発光を阻害(すなわち紫外線吸収)しないものが好ましく、例えば、アルミナ、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、タルク、マイカ、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいは寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、ガラスビーズ、ガラス粉砕物、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0023】
本発明では、このような粉粒体の種類、組合せ、量等によって、発光部(A)の隠蔽性に加えて、光沢、色調等も調整することもできる。特に、所望の光沢度に設定する場合、上記蛍光材料の種類に応じて適宜選択すればよいが、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等を用いる態様が好ましい。これにより、紫外線照射下において紫外線発光部(A)の発光輝度を低下させることなく、所望の光沢度に設定することができる。さらには、蛍光発光(可視光)の光拡散性が高まり、紫外線発光部(A)が呈する蛍光発光色がいっそう視認されやすくなる。
【0024】
粉粒体の平均粒子径は、好ましくは0.1μm〜30μm(より好ましくは0.3μm〜20μm)、屈折率は、好ましくは1.3〜3(より好ましくは1.4〜2.5)である。また、透光性材料(固形分)100重量部に対して、粉粒体は、好ましくは0.5〜50重量部(より好ましくは1〜30重量部)混合すればよい。このような範囲であることにより、本発明の効果が得られやすい。
【0025】
上記発光部用組成物には、上記成分に加え、本発明の効果を阻害しない程度であれば、例えば、着色顔料、体質顔料、艶消し剤、可塑剤、難燃剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、造膜助剤、吸着剤、架橋剤、酸化防止剤、触媒、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよく、このような成分を常法で均一に混合することができる。なお、上記発光部用組成物は、着色顔料の種類、組合わせ、量等を調整することで所望の色調に設定することができる。
【0026】
・非発光部(B)
本発明の非発光部(B)は、隠蔽率が10〜80%(好ましくは12〜60%、より好ましくは15〜50%)であり、具体的には、紫外線を照射した場合には、発光せず、また可視光を照射した場合には、光源からの光源色を呈する透光性を有するものである。なお、隠蔽率は、紫外線発光部(A)と同様の手法で測定されるものである。
【0027】
本発明の非発光部(B)は、透光性材料を主成分とする(好ましくは上記蛍光材料を含まない)ものであり、発光部(A)との隠蔽率の差が、0〜20%(好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜8%)となるように設定されたものである。このような場合、紫外線照射時には、紫外線発光部(A)の発光が視認されるが、紫外線非照射時には発光部の輪郭が視認されにくく美観性に優れた意匠材を得ることができる。さらに、本発明の意匠材に可視光を照射した場合には、紫外線発光部(A)及び非発光部(B)においてその境界が視認されにくく、均一な色相を呈することができる。なお、本発明において、隠蔽率の差とは、紫外線発光部(A)と非発光部(B)の隠蔽率の差の絶対値のことをいう。また、紫外線発光部(A)と非発光部(B)の隠蔽率が同一の場合、隠蔽率の差は「0%」となる。
【0028】
非発光部(B)は、上記透光性材料を主成分とする組成物(以下「非発光部用組成物」ともいう。)を、上記基材(1)上に塗付して形成したもの、あるいは予めフィルム状または板状等に成形したものを使用することができる。その厚みは、好ましくは0.01〜10mm(より好ましくは0.05〜5mm)である。
【0029】
本発明の非発光部(B)において、隠蔽率を設定する方法としては、特に限定されないが、例えば、
(1)透光性材料を成形し、その表面に微細な凹凸形状を付与する方法、
(2)透光性材料に、隠蔽性を付与する粉粒体を混合する方法、
(3)透光性材料として、屈折率、相溶性等が異なる複数の材料を組み合わせる方法、
等が挙げられ、上記(1)〜上記(3)を組み合わせることもできる。本発明では、上記(2)の方法が好ましい。
【0030】
上記(1)において、微細な凹凸形状の凹部と凸部の高さの差は、所望の隠蔽率によって適宜設定すればよいが、好ましくは0.01〜20μm(より好ましくは0.1〜10μm)、その間隔が好ましくは0.1〜100μm(より好ましくは0.5〜50μm)である。
【0031】
上記(2)において、粉粒体としては、所定の隠蔽率となるように適宜選択して使用すればよく、例えば、アルミナ、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、タルク、マイカ、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいは寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、ガラスビーズ、ガラス粉砕物、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して使用することができる。本発明では、このような粉粒体の種類、組合せ、量等によって、非発光部(B)の光沢、色調等を調整することもできる。特に、所望の光沢度に設定する場合、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等を用いる態様が好ましい。
【0032】
粉粒体の平均粒子径は、好ましくは0.1μm〜30μm(より好ましくは0.3μm〜20μm)、屈折率は、好ましくは1.3〜3(より好ましくは1.4〜2.5)である。また、透光性材料(固形分)100重量部に対して、粉粒体は、好ましくは0.5〜50重量部(より好ましくは1〜30重量部)混合すればよい。このような範囲であることにより、本発明の効果が得られやすい。なお、本発明において、屈折率は、アッベ屈折計を用いて測定される値である。
【0033】
また、本発明の非発光部(B)は、紫外線反射性及び/又は紫外線吸収性を有することが好ましい。このような場合、紫外線照射時に、紫外線発光部(A)の発光がより一層明確に視認される。特に、紫外線光源に対し、意匠材を介して発光を視認する場合、非発光部(B)では照射された紫外線が反射及び/又は吸収されるため、非発光部(B)からの紫外線の漏れを十分に抑制することができ、より一層効果的である。
【0034】
非発光部(B)に紫外線反射性を付与する方法としては、上記粉粒体として、例えば、アルミナ、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の紫外線反射性の高いものを用いればよい。一方、紫外線吸収性を付与する方法としては、上記粉粒体として、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線吸収性の高いものを用いたり、公知の紫外線吸収剤を添加したりすればよい。
【0035】
上記非発光部用組成物には、上記成分に加え、本発明の効果を阻害しない程度であれば、例えば、着色顔料、体質顔料、艶消し剤、可塑剤、難燃剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、造膜助剤、吸着剤、架橋剤、酸化防止剤、触媒、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよく、このような成分を常法で均一に混合することができる。なお、上記非発光部用組成物は、着色顔料の種類、組合わせ、量等を調整することで所望の色調に設定することができる。また、樹脂、粉粒体等の種類、組合せ、量等を調整することで所望の光沢度に設定することもできる。
【0036】
本発明の非発光部(B)は、該紫外線発光部(A)との60度鏡面光沢度(以下「光沢度」ともいう。)の差が、好ましくは0〜20(より好ましくは0〜15)である。このような場合、本発明の効果をより一層高めることができる。
なお、本発明において、光沢度は、紫外線発光部(A)または非発光部(B)を隠蔽率試験紙上の黒地上に置き、光沢度計を用いて測定することができる。なお、本発明において、光沢度の差とは、紫外線発光部(A)と非発光部(B)の光沢度の差の絶対値のことをいう。また、紫外線発光部(A)と非発光部(B)の光沢度が同一の場合、光沢度の差は「0」となる。
【0037】
さらに、本発明の非発光部(B)は、該紫外線発光部(A)との色差(△E)が、好ましくは0〜10(より好ましくは0〜8、さらに好ましくは0〜6)である。このような場合、本発明の効果をより一層高めることができる。なお、本発明において、色差(△E)とは、紫外線発光部(A)、または非発光部(B)を隠蔽率試験紙上の白地上に置き、色彩色差計を用いて測定される値であり、それぞれのL
*値、a
*値、b
*値(測定点10箇所以上の平均値)より下記式にて算出することができる。
<式>△E={(L
*1−L
*2)
2+(a
*1−a
*2)
2+(b
*1−b
*2)
2}0.5
(式中、L
*1、a
*1、b
*1はそれぞれ紫外線発光部(A)のL
*、a
*、b
*。L
*2、a
*2、b
*2はそれぞれ非発光部(B)のL
*、a
*、b
*)
【0038】
本発明の意匠層(2)は、
図1に示すように、透光性を有する基材(1)の少なくとも一方の面に、少なくとも1つ以上の紫外線発光部(A)と、該紫外線発光部(A)に隣接する非発光部(B)を有するように積層されてなるものであれば、特に限定されない。紫外線発光部(A)と非発光部(B)は、文字や図形等の種々の模様が形成可能である。また、紫外線発光部(A)と非発光部(B)の厚みの比A/Bは、好ましくは0.5〜2(より好ましくは0.6〜1.8、さらに好ましくは0.7〜1.5)である。このような場合、本発明の効果が一層得られやすい。
【0039】
さらに、本発明の意匠層(2)は、紫外線発光部(A)と、該紫外線発光部(A)に隣接する非発光部(B)に加えて、その他の部材を有することもできる。本発明の意匠層(2)の態様としては、例えば、
・紫外線発光部(A)と非発光部(B)が複数隣接したもの[
図2(a)]、
・紫外線発光部(A)と非発光部(B)が隣接し、さらに本発明規定外の非発光部(C)を有するもの[
図2(b)]、
・紫外線発光部(A)と非発光部(B))が隣接し、さらに遮光部(D)を有するもの[
図2(c)]、
等が挙げられる。
【0040】
意匠層(2)の形状としては、基材(1)に積層可能なものであればよく、上記の態様を満たすものであれば、特に限定されず、例えば、板状、フィルム状、シート状等の面状体、当該面状体を湾曲加工や折り曲げ加工したもの、あるいは箱状、円筒状、球状等に成形したものが挙げられる。その厚みは、好ましくは0.01〜10mm(より好ましくは0.05〜5mm)である。
【0041】
上記基材(1)に、意匠層(2)を積層する方法としては、
・予め成形された意匠層(2)を基材(1)に、接着剤等を介して積層する方法、
・基材(1)上に、発光部用組成物、非発光部用組成物を塗付し、意匠層(2)を形成する方法、
等が挙げられる。
【0042】
さらに、本発明の意匠材は、本発明の効果を阻害しない限り、光拡散層(3)を積層することもできる (
図3)。光拡散層(3)としては、光拡散性及び透光性を有するものが使用でき、例えば、光拡散剤及び透光性材料を含む組成物(以下「光拡散層用組成物」ともいう。)を塗付して形成したもの、予めフィルム状または板状等に成形したもの、あるいは市販の透光性を有する乳白色フィルム等が使用できる。その厚みは、好ましくは0.01〜3mm(より好ましくは0.02〜2mm)である。
【0043】
上記光拡散剤としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、クレー、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、シリカ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズ、シリコンビーズ、スチレンビーズ等が挙げられる。これらの平均粒径は、光拡散層(3)の厚さとの関係で適宜選択されるが、好ましくは0.5〜30μm(より好ましくは1〜15μm、さらに好ましくは2〜10μm)であり、特に粒径の分布範囲が狭い方が好ましい。透光性材料(固形分)100重量部に対して、光拡散剤は、好ましくは1〜500重量部(より好ましくは5〜200重量部)混合すればよい。このような範囲であることにより、紫外線発光部(A)の発光が視認されるが、紫外線非照射時には発光部の輪郭がいっそう視認されにくく美観性に優れる。さらに、可視光を照射した場合には、紫外線発光部(A)及び非発光部(B)においてその境界が視認されにくく、均一な色相を呈することができる。
【0044】
光拡散層(3)は、視認方向から、意匠層(2)の手前に積層されることが好ましい。このような態様としては、例えば、視認方向から順に、
・基材(1)、光拡散層(3)、意匠層(2)[
図3(a)]
・光拡散層(3)、基材(1)、意匠層(2)[
図3(b)]
を積層したもの等が挙げられる。このような場合、本発明の効果を、より一層高めることができる。
【0045】
なお、本発明では、基材(1)と光拡散層(3)が一体化された光拡散性基材(13)を使用することもできる。この場合の態様としては、例えば、視認方向から順に、
・光拡散性基材(13)、意匠層(2)
を積層したもの等が挙げられる。このような光拡散性基材(13)としては、例えば、上記光拡散剤を含むガラスやプラスチック等、あるいは片面に微細な凹凸を形成したガラス(磨りガラス)やプラスチック等が挙げられる。
【0046】
<構造体>
本発明の構造体は、上述の意匠材と、紫外線光源(4)及び可視光光源(5)を備えた構造体である。
・紫外線光源(4)
本発明の紫外線光源は、紫外光を発するものであればよいが、波長300nm〜400nmの範囲に輝線を有するものが好ましく、例えば、ブラックライト、LED等が使用できる。紫外線光源は、蛍光発光体の全面を照射するものであっても、局部的に照射しパターン(模様)を形成するものであってもよい。また、紫外線の照射強度を変化させたり、連続的にON/OFFを切り替えたりすることができるものであってもよい。さらに紫外線の照射方向を自由に選択できるような可動式のものであっても良い。
【0047】
・可視光光源(5)
本発明の可視光光源は、可視光を発するものであればよく、特に各種色相を呈するものが好ましく、例えば、カラー電球、カラー電球型蛍光灯、LED等が使用できる。可視光光源の呈する色相(光源色)は、紫外線発光部(A)が紫外線照射下に呈する色相とは異なる色相のものを使用することが好ましい。また各色相の選択は、所望により適宜設定すればよい。なお、可視光光源が呈する色相とは、本発明の意匠材に照射されることにより視認される色相のことである。
【0048】
本発明の構造体において、紫外線光源(4)と可視光光源(5)の設置場所は、意匠材を照射可能な場所であれば限定されないが、本発明では、
図4に示すように、紫外線光源(4)と可視光光源(5)は、意匠層(2)側に設置することが好ましい。
【0049】
また、意匠材として光拡散層(3)を有する場合には、
図5(a)(b)に示すように、紫外線光源(4)及び可視光光源(5)は、意匠層(2)側に設置することが好ましい。この場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0050】
図6に、本発明の構造体を用いた場合の意匠材(正面図)の発光パターンのモデル図を示す
図6(I)は、紫外線光源(4)及び可視光光源(5)を照射しない場合(紫外線光源:OFF、可視光光源:OFF)であり、均一な半透明層が視認される。
図6(II)は、紫外線光源(4))のみ照射した場合(紫外線光源:ON、可視光光源:OFF)であり、紫外線発光部(A)が蛍光発光色を呈する。
図6(III)は、可視光光源(5)のみ照射した場合(紫外線光源:OFF、可視光光源:ON)であり、意匠材一面(紫外線発光部(A)から非発光部(B)にわたって)が均一な光源色を呈する。
図6(IV)は、紫外線光源(4)、及び可視光光源(5)の両方を照射した場合(紫外線光源:ON、可視光光源:ON)であり、紫外線発光部(A)では蛍光発光色と光源色の混色を呈し、非発光部(B)では光源色を呈する。
【0051】
本発明では、紫外線光源(4)、及び可視光光源(5)のON/OFF切り替えや、光源の照射強度等を適宜設定することにより、上記の発光パターンを連続的に変化させることができる。発光面で発光色が単色となったり混色となったり、発光が動くような幻想的な発光パターンを表現することも可能となる。本発明の構造体は、照明装置や看板、インテリア等として利用できるものである。また、本発明の構造体は、プロジェクター等の投影機と組み合わせて使用することもできる。この場合、プロジェクターによる映像を投影するだけでなく、発光と映像を組み合わせて表現することができ、より一層視覚的効果を高めることができる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0053】
(発光部用組成物1〜8)
アクリル樹脂エマルション100重量部(固形分)に対し、表1に示す配合比率で蛍光顔料、粉粒体を混合、さらに添加剤(分散剤、消泡剤等)4重量部を常法にて混合し、発光部用組成物1〜8を作製した。
(非発光部用組成物1〜10)
アクリル樹脂エマルション100重量部(固形分)に対し、表2に示す配合比率で粉粒体を混合、さらに添加剤(分散剤、消泡剤等)4重量部を常法にて混合し、非発光部用組成物1〜10を作製した。
(光拡散層用組成物)
アクリル樹脂エマルション100重量部(固形分)に対し、粉粒体4を20重量部を混合、さらに添加剤(分散剤、消泡剤等)4重量部を常法にて混合し、光拡散層用組成物を作製した。
【0054】
なお、使用した原料を以下に示す。
・蛍光顔料1:青[BaMgAl
10O
17;Eu,Mn](平均粒子径1μm)
・蛍光顔料2:緑[3(BaMg)O・8Al
2O
3;Eu](平均粒子径1μm)
・蛍光顔料3:赤[Y
2O
2S;Eu](平均粒子径5μm)
・粉粒体1:炭酸カルシウム(平均粒子径1.5μm、屈折率1.56)
・粉粒体2:炭酸カルシウム(平均粒子径30μm、屈折率1.56)
・粉粒体3:硫酸バリウム(平均粒子径0.3μm、屈折率1.64)
・粉粒体4:硫酸バリウム(平均粒子径8μm、屈折率1.64)
・粉粒体5:アルミナ(平均粒子径1μm、屈折率1.76)
・粉粒体6:アルミナ(平均粒子径5μm、屈折率1.76)
・粉粒体7:含水カオリン(平均粒子径0.4μm、屈折率1.56)
・粉粒体8:酸化チタン(平均粒子径0.25μm、屈折率2.72)
【0055】
(隠蔽率測定)
隠蔽率試験紙の上に、作製した発光部用組成物1〜8、非発光部用組成物1〜10をそれぞれ乾燥膜厚が75μmとなるように塗付、乾燥させた試験体を用い、試験体における黒地上被膜と白地上被膜の視感反射率を、色彩色差計を用いて測定し隠蔽率(%)を算出した。結果は表1、2に示した。
(光沢度)
隠蔽率試験紙の上に、作製した発光部用組成物1〜8、非発光部用組成物1〜10をそれぞれ乾燥膜厚が75μmとなるように塗付、乾燥させた試験体を用い、試験体における黒地上被膜の光沢を、光沢度計を用いて測定した。結果は表1、2に示した。
【0056】
(意匠材の作製)
・意匠材1〜15
図7に示すように、基材(透明ガラス板)の片面に、表3、4に示す組み合わせで、紫外線発光部(A)と非発光部(B)からなる意匠材1〜15を作製した。なお、塗付方法としては、まず、紫外線発光部(A)部分に発光部用組成物を乾燥膜厚が75μmとなるように塗付、乾燥させた。次いで、紫外線発光部(A)部分をマスキングし、非発光部用組成物を乾燥膜厚が75μmとなるように塗付、乾燥後、マスキング材を除去し、基材の一方の面に紫外線発光部(A)と非発光部(B)が隣接した意匠材を得た[
図8(a)]。
【0057】
・意匠材16
基材(透明ガラス板)の片面に対し、
図8の(A)部分のみに発光部用組成物1を乾燥膜厚が75μmとなるように塗付、乾燥させ、紫外線発光部(A)のみが部分的に形成された意匠材16を得た[
図8(b)]。
【0058】
・意匠材17
基材(透明ガラス板)の片面に、非発光部用組成物4を乾燥膜厚が75μmとなるように全面に塗付、乾燥させた。次いで、形成された非発光部(B)の上に、発光部用組成物1を乾燥膜厚が75μmとなるように塗付、乾燥させ、
図7の(A)模様を形成し、非発光部(B)上の一部に紫外線発光部(A)が積層した意匠材17を得た[
図8(c)]。
【0059】
・意匠材18
意匠材1の基材側全面に、光拡散層用組成物を乾燥膜厚が75μmとなるように塗付、乾燥させ、光拡散層が積層された意匠材18を得た。
【0060】
・意匠材19
意匠材10の基材側全面に、光拡散層用組成物を乾燥膜厚が75μmとなるように塗付、乾燥させ、光拡散層が積層された意匠材19を得た。
【0061】
(実施例・比較例)
(構造体の作製)
各意匠材の意匠層側に紫外線光源(6W紫外線ランプ:365nm)と可視光光源(光源色:赤)を意匠材から5cmの距離に設置し構造体を作製した。
【0062】
(評価)
構造体の各光源を以下(I)〜(IV)の通り照射し、紫外線発光部(A)と非発光部(B)の発光について目視で評価した。各評価基準を以下に示す。
【0063】
(I)紫外線光源:OFF、可視光光源:OFFの場合
(A)と(B)の模様の輪郭が全く確認されず、均一な質感が視認されるものを「◎」とし、(A)と(B)の模様の輪郭がはっきりと確認され、質感の差が視認されるものを「×」として4段階(◎>○>△>×)で評価した。
【0064】
(II)紫外線光源:ON、可視光光源:OFFの場合
(A)の輪郭が明瞭な発光模様(青、緑、または赤)が確認されるものを「◎」とし、(A)の輪郭が不明瞭なものを「×」として4段階(◎>○>△>×)で評価した。
【0065】
(III)紫外線光源:OFF、可視光光源:ONの場合
(A)と(B)の模様の輪郭が全く確認されず、均一な赤色発光面が視認されるものを「◎」とし、(A)の輪郭が確認され、均一な発光が視認されないものを「×」として4段階(◎>○>△>×)で評価した。
【0066】
(IV)紫外線光源:ON、可視光光源:ON
(A)と(B)の模様が明確に確認され、(A)部は蛍光発光色(青、緑または赤)と光源色(赤)の混色の発光が確認され、(B)部は赤色発光面が視認されるものを「◎」とし、(A)または(B)の発光が不十分であるものを「×」として4段階(◎>○>△>×)で評価した。
【0067】
意匠材1〜12は、紫外線非照射時、あるいは可視光照射時に、発光部の輪郭が視認されにくく、紫外線照射時には、輪郭が明瞭な発光模様が確認された。さらに、意匠材18、19では、上記効果をよりいっそう高めることが可能となった。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】