【解決手段】SGLT1を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬、及びSGLT2を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬を組み合わせてなる医薬。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本願明細書において記載する記号、用語等の意義を説明するとともに、本発明を詳細に説明するが、本発明は例示されたものに特に限定されない。
【0019】
本願明細書における「糖尿病、糖尿病関連疾患、若しくは糖尿病性合併症の予防又は治療薬」とは、一般的に用いられているか、または現在開発中である糖尿病、糖尿病関連疾患、若しくは糖尿病性合併症の予防用の医薬又は治療用の医薬の総称を示す。
本願明細書における「糖尿病」とは、1型糖尿病、2型糖尿病、特定の原因によるその他の型の糖尿病を包含する。
本願明細書における「糖尿病関連疾患」とは、肥満、高インスリン血症、糖代謝異常、耐糖能異常、高脂質血症、高コレステロール血症、脂質代謝異常、高血圧、うっ血性心不全、浮腫、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪肝炎などがあげられる。
本願明細書における「糖尿病性合併症」とは、急性合併症及び慢性合併症に分類される。急性合併症には、高血糖(ケトアシドーシスなど)、感染症(皮膚、軟部組織、胆道系、呼吸系、尿路感染など)などがあげられる。慢性合併症には、細小血管症(腎症、網膜症)、動脈硬化症(アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、下肢動脈閉塞など)、神経障害(感覚神経、運動神経、自律神経など)、足壊疽などがあげられる。
【0020】
本明細書における「血糖値上昇抑制作用」とは、血漿中グルコース濃度(血糖値)を低く維持する作用を意味する。本作用により、例えば、食後の血糖値を低く維持することができる。
また、「血糖降下薬」とは、「血糖値上昇抑制作用」を有する医薬を意味する。例えば、血糖降下薬としては、前述のように、スルホニルウレア薬、ビグアナイド薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、DPP4阻害薬が挙げられ、また、SGLT1阻害薬やSGLT2阻害薬も挙げられる。
【0021】
本願明細書における「SGLT1を阻害する化合物」としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0022】
(i)国際公開第WO2007/136116号に記載の、下記一般式[III−1]で表される化合物、
【0023】
【化5】
(なお、式[III−1]中の置換基R
1、R
2、R
3、Y、及びZの定義は、国際公開第WO2007/136116号の記載による。)
【0024】
(ii)国際公開第WO2008/001864号に記載の、下記一般式[III−2]で表される化合物、
【0025】
【化6】
(なお、式[III−2]中の置換基X、Y、及びZの定義は、国際公開第WO2008/001864号の記載による。)
【0026】
(iii)国際公開第WO2008/072726号に記載の、下記に表される化合物:
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−メチル−5−(4−メチルベンジル)−2−ヒドロキシフェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4-メトキシベンジル)−4−メチル−2−ヒドロキシフェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4-エチルベンジル)−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[2−ヒドロキシ−4−メチル−5−[4−(メチルスルファニル)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−2−ヒドロキシ−5−(4−メチルベンジル)フェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−2−ヒドロキシ−5−(4−エチルベンジル)フェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシベンジル)フェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
【0027】
(iv)国際公開第WO2010/095768号に記載の、下記一般式[III−3]で表される化合物、
【0028】
【化7】
(なお、式[III−3]中の置換基R
1、R
2、R
3、及びR
4の定義は、国際公開第WO2010/095768号の記載による。)
なお、前述の式[I]で表される化合物は、上記一般式[III−3]で表される化合物のうちの1つである。
【0030】
(v)国際公開第WO2012/023582号に記載の、下記一般式[III−4]で表される化合物、
【0031】
【化9】
(なお、式[III−4]中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、W、Y、及びnの定義は、国際公開第WO2012/023582号の記載による。)
【0032】
(vi)国際公開第WO2012/023600号に記載の、下記式[III−5]で表される(E)−N−(1−アミノ−2-メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−4−(4−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−((2S,3R,4R,5S,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ベンジル)−3−メチルフェニル)−2,2−ジメチルブタ−3−エンアミド、
【0034】
(vii)国際公開第WO2004/014932号に記載の、下記一般式[III−6]で表される化合物、
【0035】
【化11】
(なお、式[III−6]中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、Q、T,X、Y、及びZの定義は、国際公開第WO2004/014932号の記載による。)
【0036】
(viii)国際公開第WO2004/018491号に記載の、下記一般式[III−7]で表される化合物、
【0037】
【化12】
(なお、式[III−7]中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、Q、T,X、Y、及びZの定義は、国際公開第WO2004/018491号の記載による。)
【0038】
(ix)国際公開第WO2004/019958号に記載の、下記一般式[III−8]で表される化合物、
【0039】
【化13】
(なお、式[III−8]中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、Q、及びTの定義は、国際公開第WO2004/019958号の記載による。)
【0040】
(x)国際公開第WO2009/084531号及び国際公開第WO2009/128421号に記載の、3−(3−{4−[3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イルメチル]−3−メチルフェノキシ}プロピルアミノ)−2,2−ジメチルプロピオンアミド、
(xi)国際公開第WO2004/050122号に記載の、5−ヒドロキシ−3−メチル−2−{4−[3−(3−ピリジルメチル)ウレイド]ベンジル}フェニル β−D−グルコピラノシド、及び3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−{[4−(2−グアニジノエトキシ)−2−メチルフェニル]メチル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール、
【0041】
(xii)国際公開第WO2008/016132号に記載の、下記一般式[III−9]で表される化合物、
【0042】
【化14】
(なお、式[III−9]中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、X、及びnの定義は、国際公開第WO2008/016132号の記載による。)
【0043】
(xiii)国際公開第WO2005/121161号に記載の、下記一般式[III−10]で表される化合物、
【0044】
【化15】
(なお、式[III−10]中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、A、B、X、L、Y、Cyc1、及びCyc2の定義は、国際公開第WO2005/121161号の記載による。)
【0045】
(xiv)国際公開第WO2008/042688号に記載の、下記一般式[III−11]で表される化合物。
【0046】
【化16】
(なお、式[III−11]中の置換基R
1、R
2、R
2B、R
2C、A、及びXの定義は、国際公開第WO2008/042688号の記載による。)
【0047】
当該「SGLT1を阻害する化合物」は、製薬学的に許容される塩を形成してもよく、また、水和物をはじめ、各種溶媒和物を形成してもよい。
【0048】
SGLT1を阻害する好ましい化合物としては、例えば、
前記(iv)で挙げた国際公開第WO2010/095768号に記載の、式[I]で表される化合物(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−{(1E)−4−[(1−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)アミノ]−3,3−ジメチル−4−オキソブタ−1−エン−1−イル}ベンジル)−2−メトキシ−4−(プロパン−2−イル)フェニル]−D−グルシトール)や
前記(vi)国際公開第WO2012/023600号に記載の、式[III−5]で表される化合物(E)−N−(1−アミノ−2-メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−4−(4−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−((2S,3R,4R,5S,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ベンジル)−3−メチルフェニル)−2,2−ジメチルブタ−3−エンアミド、
前記(x)で挙げた国際公開第WO2009/084531号及び国際公開第WO2009/128421号に記載の、式[III−12]で表される化合物3−(3−{4−[3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イルメチル]−3−メチルフェノキシ}プロピルアミノ)−2,2−ジメチルプロピオンアミドが挙げられる。
【0052】
SGLT1を阻害するより好ましい化合物としては、式[I]で表される化合物(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−{(1E)−4−[(1−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)アミノ]−3,3−ジメチル−4−オキソブタ−1−エン−1−イル}ベンジル)−2−メトキシ−4−(プロパン−2−イル)フェニル]−D−グルシトール)が挙げられる。
【0053】
本願明細書における「SGLT2を阻害する化合物」としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0054】
(i)国際公開第WO2006/073197号に記載の、下記一般式[IV−1]で表される化合物、
【0055】
【化20】
(なお、式[IV−1]中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、A、Ar
1、及びAr
2の定義は、国際公開第WO2006/073197号の記載による。)
なお、上記式[II]で表される化合物は、上記一般式[IV−1]で表される化合物のうちの1つである。
【0057】
(ii)国際公開第WO2004/080990号に記載の、下記一般式[IV−2]で表される化合物、
【0058】
【化22】
(なお、式[IV−2]中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、A、B、及びXの定義は、国際公開第WO2004/080990号の記載による。)
【0059】
(iii)国際公開第WO2006/080421号に記載の、下記一般式[IV−3]で表される化合物、
【0060】
【化23】
(なお、式[IV−3]中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、Ar
1、Q、n、及びAの定義は、国際公開第WO2006/080421号号の記載による。)
【0061】
(iv)国際公開第WO03/099836号に記載の、下記式[IV−4]で表される化合物、
【0063】
(v)国際公開第WO2005/012326号に記載の、下記一般式[IV−5]で表される化合物、
【0064】
【化25】
(なお、式[IV−5]中の置換基A、B、X、及びYの定義は、国際公開第WO2005/012326号の記載による。)
【0065】
(vi)国際公開第WO2005/092877号に記載の、下記一般式[IV−6]で表される化合物、
【0066】
【化26】
(なお、式[IV−6]中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7a、R
7b、及びR
7cの定義は、国際公開第WO2005/092877号の記載による。)
【0067】
当該「SGLT2を阻害する化合物」は、製薬学的に許容される塩を形成してもよく、また、水和物をはじめ、各種溶媒和物を形成してもよい。
【0068】
SGLT2を阻害する好ましい化合物としては、例えば、
前記(i)で挙げた国際公開第WO2006/073197号に記載の、式[II]で表される化合物(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エトキシベンジル)−2−メトキシ−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
前記(ii)で挙げた国際公開第WO2004/080990号に記載の、式[IV−6]で表される化合物(1S)−1,5−アンヒドロ−1−C−{3−[(1−ベンゾチオフェン−2−イル)メチル]−4−フルオロフェニル}−D−グルシトール、
前記(iii)で挙げた国際公開第WO2006/080421号に記載の、式[IV−7]で表される化合物(1S,3’R,4’S,5’S,6’R)−6−[(4−エチルフェニル)メチル]−6’−(ヒドロキシメチル)−3’,4’,5’,6’−テトラヒドロ−3H−スピロ[2−ベンゾフラン−1,2’−ピラン]−3’,4’,5’−トリオール、
前記(iv)で挙げた国際公開第WO03/099836号に記載の、式[IV−8]で表される化合物(1S)−1,5−アンヒドロ−1−C−{4−クロロ−3−[(4-エトキシフェニル)メチル]フェニル}−D−グルシトール、
前記(v)で挙げた国際公開第WO2005/012326号に記載の、式[IV−9]で表される化合物(1S)−1,5−アンヒドロ−1−C−(3{[5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−イル]メチル}−4−メチルフェニル)−D−グルシトール、
前記(vi)で挙げた国際公開第WO2005/092877号に記載の、式[IV−10]で表される化合物(1S)−1,5−アンヒドロ−1−C−{4−クロロ−3−[(4−{[(3S)−オキソラン−3−イル]オキシ}フェニル)メチル]フェニル}−D−グルシトールが挙げられる。
【0075】
SGLT2を阻害するより好ましい化合物としては、式[II]で表される化合物(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エトキシベンジル)−2−メトキシ−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトールが挙げられる。
【0076】
本願明細書における「塩」としては、SGLT1を阻害する化合物、又はSGLT2を阻害する化合物と製薬学的に許容される塩を形成するものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩のような鉱酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩のようなスルホン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、マンデル酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸、モノセバシン酸のような有機酸塩等の酸付加塩、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩、又は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のような無機塩若しくはアンモニウム塩、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩のような有機塩基との塩が挙げられる。なお、塩には、含水塩が含まれる。
【0077】
本願明細書における「SGLT1を阻害する化合物」及び「SGLT2を阻害する化合物」は、不斉中心を持つことがあり、その場合種々の光学異性体が存在する。したがって、本発明の化合物は、(R)および(S)の別々の光学活性体として、およびラセミ体又は(RS)混合物として存在し得る。また、不斉中心を2個以上持つ化合物の場合には、さらにそれぞれの光学異性によるジアステレオマーも存在する。本発明の化合物は、これらすべての型を、任意の割合で含むものも含む。そして、ジアステレオマーは、当業者によく知られた方法、例えば分別結晶法等によって分離することができ、また、光学活性体はこの目的のためによく知られた有機化学的手法によって得ることができる。また、本発明の化合物には、シス体、トランス体等の幾何異性体が存在することがある。本発明の化合物は、それらの異性体、及びそれらの異性体を任意の割合で含んだものも含む。
【0078】
SGLT1を阻害する化合物の、SGLT1に対する阻害活性は、公知の方法によって測定することができる。
【0079】
SGLT2を阻害する化合物の、SGLT2に対する阻害活性も、公知の方法によって測定することができる。
【0080】
よって、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、前述の公知の測定方法を用いることにより、いかなる化合物についても、そのSGLT1に対する阻害活性を測定し、SGLT1を阻害する化合物を同定することができる。
同様に、いかなる化合物についても、そのSGLT2に対する阻害活性を測定し、SGLT2を阻害する化合物を同定することができる
【0081】
以下に、本発明にかかる「併用医薬」が糖尿病、糖尿病関連疾患、若しくは糖尿病性合併症を予防又は治療する医薬として有用であることを示す試験例を記載する(試験例1)。該試験において使用した化合物は、上記式[I]で表される化合物((1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−{(1E)−4−[(1−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)アミノ]−3,3−ジメチル−4−オキソブタ−1−エン−1−イル}ベンジル)−2−メトキシ−4−(プロパン−2−イル)フェニル]−D−グルシトール)、及び上記式[II]で表される化合物((1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エトキシベンジル)−2−メトキシ−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール)である。
【0082】
上記式[I]で表される化合物は、国際公開第WO2010/095768号のExample 15−2で既に開示された化合物であり、当該文献に記載の方法により得ることができる。また、該化合物の結晶は、国際公開第WO2012/023598号に記載の方法により得ることができる。
【0083】
上記式[II]で表される化合物は、国際公開第WO2006/073197号の実施例7で既に開示された化合物であり、当該文献に記載の方法により得ることができる。
【0084】
本発明の糖尿病、糖尿病関連疾患、若しくは糖尿病性合併症の予防又は治療薬は、様々な方法によって製造することが可能であり、例えば、前述の文献に記載の方法によって製造することができる。
【0085】
本発明に係る併用医薬は、有効成分であるSGLT1を阻害する化合物及びSGLT2を阻害する化合物を単一の製剤(配合剤)、または別々に製剤化して得られる2種以上の製剤(併用剤)とすることができる。
これらの有効成分を別々に製剤化して2種以上の製剤とする場合には、個々の製剤を同時または一定の時間間隔を空けて投与することが可能である。また、これらの場合、どちらを先に投与しても構わない。当該2種以上の製剤は、1日にそれぞれ異なる回数で投与することもできる。これらの有効成分を別々に製剤化して2種以上の製剤とした場合には、個々の製剤を異なる経路で投与することもできる。
【0086】
これらの有効成分を別々に製剤化して2種の製剤とする場合は、同時に、または極めて短い間隔で投与する場合もあり、例えば、市販されている医薬の添付文書や販売パンフレット等の文書に、それぞれを併用する旨を記載するのが好ましい。
また、これらの有効成分を別々に製剤化して2種の製剤からなるキットの形態とすることも好ましい。
【0087】
本発明の糖尿病、糖尿病関連疾患、若しくは糖尿病性合併症の予防又は治療薬について、含有するSGLT1を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩、及びSGLT2を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩は、単独に、又は薬学的あるいは薬剤学的に許容される添加剤と共に投与することができる。
添加剤としては、常用の賦形剤又は希釈剤、そして、必要に応じて一般に使用される結合剤、崩壊剤、潤滑剤、被覆剤、糖衣剤、pH調整剤、溶解剤又は水性若しくは非水性溶媒を使用することができる。具体的には、水、乳糖、デキストロース、フラクトース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、デンプン、コーンスターチ、ガム、ゼラチン、アルギネート、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、セルロース、水シロップ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルキルパラヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、寒天、ペクチン、アラビアゴム、グリセリン、ゴマ油、オリーブ油、大豆油カカオバター、エチレングリコール、低粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)等やその他常用されるものを挙げることができる。
【0088】
本発明の糖尿病、糖尿病関連疾患、若しくは糖尿病性合併症の予防又は治療薬は、固体組成物、液体組成物及びその他の組成物のいずれの形態でもよく、必要に応じて最適のものが選択される。
【0089】
本発明の糖尿病、糖尿病関連疾患、若しくは糖尿病性合併症の予防又は治療薬について、含有するSGLT1を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩、及びSGLT2を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩に、前記の添加剤を添加し、常用の製剤技術によって、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤等に調製する事ができる。
【0090】
また、本発明の糖尿病、糖尿病関連疾患、若しくは糖尿病性合併症の予防又は治療薬について、含有するSGLT1を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩、及びSGLT2を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩は、α、β若しくはγ−シクロデキストリン又はメチル化シクロデキストリン等と包接化合物を形成させて製剤化することができる。
【0091】
本発明の糖尿病、糖尿病関連疾患、若しくは糖尿病性合併症の予防又は治療薬の投与量は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状等によっても異なるが、例えば、成人の糖尿病患者に経口投与する場合、SGLT1を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩、SGLT2を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩を、それぞれ通常1回量として0.01mg〜1000mg、好ましくは1mg〜200mgであり、この量を1日1回〜3回投与するのが望ましい。
【0092】
本発明により、糖尿病、糖尿病関連疾患、若しくは糖尿病性合併症を予防又は治療する新規な医薬を提供することができる。本発明にかかる併用医薬は、SGLT1阻害作用を有し、消化管からの糖吸収を抑制することにより食後の急激な血糖値の上昇を抑制することができる。また、SGLT2阻害作用も有し、腎臓において糖の再吸収を抑制することにより過剰な糖を体外へ排泄することもできる。したがって、本発明は過剰な膵β細胞からのインスリン分泌を伴わず高血糖を是正することにより、糖尿病を治療し、膵β細胞の負担を軽減して糖尿病の進展を抑制することができる。
【0093】
SGLT1を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬、及びSGLT2を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療薬を組み合わせてなる、本発明の併用医薬は、SGLT1を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬、又はSGLT2を阻害する化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬を単独で投与した場合の効果よりも、優れた血糖値上昇抑制作用を有し、有用性が高い。
【0094】
以下に、試験例及び製剤例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
化合物[I]及び化合物[II]を組み合わせてなる医薬の血糖値上昇抑制作用を、以下の試験例1により説明する。
【0096】
試験例1
ストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルラットにおける血糖値上昇抑制作用確認試験
(1)糖尿病モデルラットの作製
6週齢のSD/IGSラット(日本チャールスリバー株式会社,雄性)について約17
時間の絶食後、ストレプトゾトシン(STZ)50mg/kgを尾静脈内投与し、糖尿病モデルラットを作製した。同様に1.25mmol/Lクエン酸生理食塩液1mL/kgを尾静脈内投与し、正常対照ラットを作製した。STZまたは1.25mmol/Lクエン酸生理食塩液投与1週後(7週齢)、経口グルコース負荷試験に供した。
(2)経口グルコース負荷試験
約19時間絶食させたラットに0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液に懸濁した化合物[II](1mg/kg)または0.5%CMC水溶液を経口投与した。その30分後に0.5%メチルセルロース(MC)水溶液に溶解した化合物[I]
(0.5及び1mg/kg)または0.5%MC水溶液を経口投与し、直後にグルコース溶液(2g/kg)を経口投与した。グルコース投与前(0時間)及び投与後0.25、0.5、1、1.5、2時間の計6点で採血した。グルコース負荷前の血漿中グルコース(PG)濃度を基準としたグルコース負荷後2時間までのPG濃度-時間曲線下面積(ΔPG AUC
0-2h)を指標にしてグルコース負荷後の血糖値上昇に対する化合物[I]及び化合物[II]の併用効果を検討した。
【0098】
【表1】
平均値±標準誤差 n=7
*** p<0.001(正常対照群に対するWelchのt検定)
化合物[I]の主効果 F(2,36)=30.44 p<0.001、
化合物[II]の主効果 F(1,36)=52.38 p<0.001、
交互作用 F(2,36)=1.03 有意差なし(二元配置分散分析)
【0099】
化合物[I]及び化合物[II]の併用投与により、糖尿病モデルであるSTZラットの血糖値の上昇が抑制された。このとき、化合物[I]の単独投与による血糖値上昇抑制作用よりも併用投与による血糖値上昇抑制作用が優れていた。また、同様に、化合物[II]の単独投与による血糖値上昇抑制作用よりも併用投与による血糖値上昇抑制作用も優れていた。この結果により、化合物[I]及び化合物[II]の併用投与が、糖尿病に対して、より有用であることが示された。
【0100】
以下に、本発明の併用医薬の製剤例を示す。
【0101】
製剤例1
以下の成分を含有する顆粒剤を製造する。
(処方)
成分 式[I]で表される化合物 3.3mg
式[II]で表される化合物 6.6mg
乳糖 700.1mg
コーンスターチ 274 mg
HPC−L 16 mg
1000 mg
【0102】
(製法)
式[I]で表される化合物、式[II]で表される化合物、及び乳糖を60メッシュのふるいに通す。コーンスターチを120メッシュのふるいに通す。これらをV型混合機にて混合する。混合末に低粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)水溶液を添加し、練合、造粒(押し出し造粒 孔径0.5〜1mm)した後、乾燥する。得られた乾燥顆粒を振動ふるい(12/60メッシュ)で篩過し顆粒剤を得る。
【0103】
製剤例2
以下の成分を含有するカプセル充填用散剤を製造する。
成分 式[I]で表される化合物 3.3mg
式[II]で表される化合物 6.6mg
乳糖 79.1mg
コーンスターチ 10 mg
ステアリン酸マグネシウム 1 mg
100 mg
【0104】
(製法)
式[I]で表される化合物、式[II]で表される化合物、及び乳糖を60メッシュのふるいに通す。コーンスターチを120メッシュのふるいに通す。これらとステアリン酸マグネシウムをV型混合機にて混合する。10倍散100mgを5号硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0105】
製剤例3
以下の成分を含有するカプセル充填用顆粒剤を製造する。
成分 式[I]で表される化合物 5mg
式[II]で表される化合物 10mg
乳糖 90mg
コーンスターチ 42mg
HPC−L 3mg
150mg
【0106】
(製法)
式[I]で表される化合物、式[II]で表される化合物、及び乳糖を60メッシュのふるいに通す。コーンスターチを120メッシュのふるいに通す。これらをV型混合機にて混合する。混合末に低粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)水溶液を添加し、練合、造粒した後、乾燥する。得られた乾燥顆粒を振動ふるい(12/60メッシュ)で篩過し整粒し、その150mgを4号硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0107】
製剤例4
以下の成分を含有する錠剤を製造する。
成分 式[I]で表される化合物 3.3mg
式[II]で表される化合物 6.6mg
乳糖 90.1mg
微結晶セルロース 30 mg
ステアリン酸マグネシウム 5 mg
CMC−Na 15 mg
150 mg
【0108】
(製法)
式[I]で表される化合物、式[II]で表される化合物、及び乳糖と微結晶セルロース、CMC−Na(カルボキシメチルセルロース ナトリウム塩)を60メッシュのふるいに通し、混合する。混合末にステアリン酸マグネシウムを添加し、製剤用混合末を得る。本混合末を直打し150mgの錠剤を得る。