【解決手段】金属酸化物ナノ粒子(A)、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート類(B)及び(ポリ)アルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレート(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物及びこの硬化物からなるレンズシート。
前記ポリアルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレート(C)がポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート又はエトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートである請求項1〜3のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が2000mPa・s以下である請求項1〜5のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)が20℃以下である請求項1〜6のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本願の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、主として、
金属酸化物ナノ粒子(A)、
フェノキシベンジル(メタ)アクリレート類(B)及び
(ポリ)アルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレート(C)を含有する。
なお、本明細書においては、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの双方を意味する。また、以下に例示する成分はいずれも、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0008】
(A)金属酸化物ナノ粒子
金属酸化物微粒子としては、例えば、粒子径が5nm〜50nmのものを使用することが適しており、なかでも、5nm〜20nmが好ましく、10nm〜20nmがより好ましい。これにより、樹脂組成物の屈折率を調整することが可能となる。金属酸化物粒子の粒子径は、各種電子顕微鏡観察によって得られた画像を処理することにより得られる平均粒子径により評価することができる。例えば、金属酸化物粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等で拡大観察し、無作為に100個の粒子を選択してその長軸方向の長さを測定し、その算術平均を求めることで決定することができる。
【0009】
金属酸化物粒子は、球状、粒状、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状、薄片状等のいずれの形状でもよい。
金属酸化物微粒子としては、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、酸化第二鉄、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化マンガン、酸化ホロミウム、酸化銅、酸化ビスマス、酸化コバルト、四三酸化コバルト、四三酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロビウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化スカンジウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化ルテニウム及びこれらを結合させた複合酸化物を主成分とするナノ粒子が挙げられる。なかでも、酸化ジルコニウム、酸化チタンを主成分とするナノ粒子が好ましく、酸化ジルコニウムを主成分とするナノ粒子がより好ましい。ここで主成分とは、金属酸化物微粒子において最大重量を占める成分を意味する。
【0010】
金属酸化物ナノ粒子は、表面処理されていてもよい。表面処理は、公知の方法で行うことができる。例えば、シランカップリング剤、重合性官能基を有するイソシアネート化合物、有機スルホニルオキシ基を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物等で表面処理したものが挙げられる。なお、表面処理された金属酸化物ナノ粒子とは、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基によって、上述した化合物におけるアルコキシ基、イソシアネート基、スルホニル基、カルボキシル基等が化学結合するか、水素原子又はカチオン性原子とともに塩を形成して、その表面に物理的に付着した状態の双方を意味する。
【0011】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、(A)成分の含有量は、得ようとする特性のバランスによって適宜調整することができる。例えば、(A)〜(C)成分の総重量に対して20重量%以上70重量%以下が好ましく、30重量%以上70重量%以下がより好ましく、30重量%以上60重量%以下がさらに好ましい。
【0012】
(B)フェノキシベンジル(メタ)アクリレート類
フェノキシベンジル(メタ)アクリレート類は、式(1)で表される構造を有する化合物である。
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは0〜4の整数を表す。)
式(1)で表される化合物としては、具体的には、
等が挙げられる。なかでも、o位又はm位置換体であるフェノキシベンジル(メタ)アクリレート化合物、特に、式(B−1)の化合物が好ましく、m位置換体であるフェノキシベンジル(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。
これらの化合物は、粘度が低く、屈折率が比較的高い。また、これらの化合物を用いる場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物自体に外力が付加されて形状が変化したとしても、自己形状を復元し得る優れた復元性を付与することができる。
【0013】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、得ようとする特性のバランスによって適宜調整することができるが、(A)〜(C)成分の総重量に対して5重量%以上60重量%以下が好ましく、10重量%以上60重量%以下がより好ましく、10重量%以上55重量%以下がさらに好ましい。
【0014】
(C)(ポリ)アルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレート
(ポリ)アルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜10のアルキレングリコール構造を有する化合物が挙げられ、好ましくは、炭素数2〜4のアルキレングリコール構造を有する化合物が挙げられる。この化合物におけるアルキレングリコールの数は、2〜20が挙げられ、5〜15が好ましい。アルキレングリコール構造は、同一分子において、単独又は2種以上を組み合わせた構造のいずれでもよい。
【0015】
また、(ポリ)アルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレートは、(ポリ)アルキレングリコール構造及び2つの(メタ)アクリレートに加えて、エーテル結合を介した、炭素数1〜6のアルカンジイル基、2価の炭素数3〜10の環状炭化水素基(芳香族炭化水素基及び脂環式炭化水素基)、これらを組み合わせた基に等をさらに有していてもよい。
アルカンジイル基としては、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、tert−ブチレン、sec−ブチレン、n−ペンチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、2−エチルプロピレン、n−ヘキシレン、2−メチルペンチレン、3−メチルペンチレン、2−エチルブチレン、3−エチルブチレン等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタリン等から水素原子を2個取り除いた基が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等から水素原子を2個取り除いた基が挙げられる。
【0016】
(ポリ)アルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレートとしては、ポリメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリメチレンポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、メトキシエトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシエトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート又はエトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0017】
この化合物は、比較的粘度が高く、分子量が大きくなると、分子量あたりのアクリロイル基の含有量が小さくなるために、硬度が低くなる傾向がある。よって、この化合物の数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフによるポリスチレン換算値)は、例えば、200〜2000程度が挙げられ、500〜1000程度が好ましい。
また、この化合物は、ポリアルキレンオキサイドの付加モル数が大きくなると、柔軟性及び/又は復元性が向上する傾向がある。従って、これらの付加モル数は、2〜20程度が好ましく、5〜15程度がより好ましい。
【0018】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、(C)成分の含有量は、得ようとする特性のバランスによって適宜調整することができるが、(A)〜(C)成分の総重量に対して1重量%以上30重量%以下程度が好ましく、5重量%以上30重量%以下程度がより好ましい。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には(A)〜(C)成分以外の(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。このような化合物としては、単官能および二官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、4−ノニルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化O−フェニルフェノールアクリレート、ベンジルオキシアクリレート等が挙げられる。
【0021】
二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)−フルオレン等の特開2010−248358号公報に記載されているフルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、本来の機能を損なわない限り、当該分野で公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、光重合開始剤/重合開始剤、希釈剤、金属酸化物微粒子、レベリング剤、潤滑性付与剤、その他の樹脂等が挙げられる。
【0023】
光重合開始剤としては、例えば、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、シクロヘキシルフェニルケトン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、べンゾフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルべンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
光重合開始剤は、(A)〜(C)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部程度含有させることが好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0024】
希釈剤としては、アルキレングリコールのモノアルキルエーテル類、アルキルアルコール類、アルキレングリコールモノアルキルアルコールのアルキルカルボン酸エステル類、ケトン類、アルキルアルコールのアルキルカルボン酸エステル類等が挙げられる。これらは、例えば、特開2004−43790号に記載のものが例示される。
【0025】
レベリング剤及び潤滑性付与剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンとの共重合体、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体等が挙げられる。
その他の樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエピスルフィド樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のような(メタ)アクリル系重合体、アリル系重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリカーボネート、MS樹脂、環状ポリオレフィン等各種合成樹脂が挙げられる。
その他の樹脂を含む場合、その他の樹脂は、(A)〜(C)成分100重量部に対して、0.1〜10重量部程度含有させることが好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。
【0026】
また、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸エステル等の1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル残基を有するヒンダードアミン系光安定剤;テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、n−オクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のヒンダードフェノール系あるいはジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ビス〔2−メチル−4−{3−n−アルキル(C
12またはC
14)チオプロピオニルオキシ}−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド等の硫黄系等の3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル残基あるいは3−メチル−6−t−ブチルフェニル残基を有する酸化防止剤;亜リン酸エステル系の脱色剤;シリコーンオイル等の消泡剤;シランカップリング剤;難燃剤;充填剤;艶消し剤;光増感剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;離型剤等の当該分野で公知の添加剤を配合してもよい。
【0027】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、種々の方法によって調製することができる。例えば、分散液に分散された金属酸化物ナノ粒子(A)に、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート類(B)及び(ポリ)アルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレート(C)、任意に添加剤を添加し、混合する方法、さらにこの混合物における水又は共溶媒(使用する場合)を蒸発除去することにより、粒子を(B)及び(C)成分中に分散させる方法、粉末状態の金属酸化物ナノ粒子、任意に添加剤を、直接(B)及び(C)成分中に分散させる方法等が挙げられる。
【0028】
このようにして組成された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、25℃における粘度が2000mPa・s以下であり、さらに、1000mPa・s以下であることが好ましい。このような粘度とすることにより、室温において取り扱い及び加工性を向上させることができる。
【0029】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、20℃以下であることが好ましく、14℃以下であることがより好ましい。このようなTgとすることにより、室温で柔軟かつ復元性の良好な物性を得ることができ、耐スクラッチ性、耐衝撃性の良好な塗膜となる。Tgの調整は、例えば、原料成分の配合比により、任意に調整することができる。
【0030】
さらに、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物の屈折率は、25℃で1.60以上であることが適しており、1.62以上であることが好ましい。屈折率は、例えば、アッベ屈折率計にて測定することができる。このような屈折率にすることにより、正面輝度等をより向上させることができる。なお、このような屈折率の調整は、例えば、原料成分の配合比により、任意に調整することができる。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、紫外線、放射線、赤外線、X線、電子線の活性エネルギー線、特に紫外線を照射することにより硬化させることができ、硬化物を得ることができる。ここで、硬化物としては、かならずしも特定の形状に成形加工したもののみならず、種々の形態を有するものが包含される。例えば、レンズと基材との間に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を流し込み、活性エネルギー線を照射して硬化させ、特定の形状に成形したものも包含される。
活性エネルギー線の光源としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、複写用高圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、走査型又はカーテン型電子線加速路による電子線等を挙げることができる。
このような光源を用いて硬化させる場合、活性エネルギー線照射量は300〜3000mJ/cm
2程度が適している。なお、樹脂組成物を十分に硬化させるために、紫外線等の活性エネルギー線を照射することが好ましい。
【0032】
本発明の硬化物としては、プラスチックレンズ等のような成形物が挙げられる。
成形物の作製法としては、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体等からなるガスケットと所望の形状の2つの鋳型の間に、樹脂組成物を注入した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して本発明の樹脂組成物を硬化させ、硬化物を型より剥離する方法等が挙げられる。
【0033】
また、本発明の硬化物は、シート状に成形してもよい。シートの形成は、当該分野で公知の方法、例えば、押し出し成形等、あるいは、適当な基材上に、上述した方法を用いて塗布膜を形成し、硬化させた後に基材を剥離する方法等が例示される。
なお、後述するように、レンズシート、プリズムシート等の光学シートとする場合には、例えば、硬化後の厚みが0.01μm〜10mm程度とすることが適しており、0.01〜1000μm程度とすることが好ましく、0.01〜100μm程度とすることがより好ましい。
【0034】
さらに、本発明の硬化物は、基材に対する積層層として形成してもよい。具体的には、基材に、刷毛塗り、バーコーター、アプリケーター、ロールコーターあるいはローラーブラシ等により直接塗布する方法、エアースプレーまたはエアーレススプレー塗装機等によるスプレー塗布法、シャワーコーターまたはカーテンフローコーター等により流し塗りする方法(フローコート)、浸漬法、キャスティング法、スピンコート法を用いる方法などによって、積層することができる。
基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフテート(PEN)などのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエピスルフィド樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のような(メタ)アクリル系重合体、アリル系重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリカーボネート、MS樹脂、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)等各種合成樹脂からなる基材が挙げられる。基材は、平板状、曲板状、フィルム状等のいずれの形状であってもよい。
【0035】
このように、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、任意な形状に硬化させることにより、例えば、プリズムレンズシート、非球面レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、眼鏡レンズ、液晶ディスプレイ用パネル及びカラーフィルター用保護膜、光ディスク用コーティング剤及び接着剤、光ファイバー用コア材及びクラッド材、光ファイバー接続用接着剤、光導波路用コア材及びクラッド材等の種々の物品に応用することが可能である。
【0036】
以下に、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び硬化物の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
実施例及び比較例
表1に示した成分を、所定の比率で均一になるまで混合・攪拌し、溶剤を蒸発させて、除去する方法により、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。なお、表における成分の単位は重量部で表した。
【0038】
得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をガラス板上に膜厚が100μmになるよう塗布し、基材として未処理PETフィルム(東レ(株)製ルミラー)を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化させた。その後、樹脂硬化膜のみを剥離して、屈折率測定およびTg測定用の硬化物を得た。
【0039】
プリズム形状の型の上に膜厚が50μmになるように塗布し、その上に基材として易接着処理PETフィルム(東洋紡績(株)コスモシャインA4100)を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化させた。その後、金型より剥離して、本発明の硬化物を得た。
【0040】
各樹脂組成物について、以下の評価を行った。
密着性:プリズム形状の型の上に膜厚が50μmになるように塗布し、その上に基材として易接着処理PETフィルム(東洋紡績(株)コスモシャインA4100を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後、金型より剥離してテストピースを作成し、JIS K5600−5−6に準じた碁盤目セロハンテープ剥離試験を行った。評価結果は0〜2を○とし、3〜5を×とした。
屈折率:硬化した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、アッベ屈折率計(DR−M2:(株)アタゴ製)にて589nm波長(D線)における屈折率を測定した。
粘度:活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、ビスメトロン粘度計(VDA2:芝浦システム(株)製)にて測定した。
【0041】
耐スクラッチ性:プリズム形状の型の上に膜厚が50μmになるように塗布し、その上に基材として易接着処理PETフィルム(東洋紡績(株)コスモシャインA4100を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後、金型より剥離して得られたテストピースの上にガラス棒を当て、横方向に引きずった時の、傷のつき方を観察した。
○:傷がつかず、外観に問題がない状態
×:傷がつき、外観に問題がある状態
【0042】
耐衝撃性:プリズム形状の型の上に膜厚が50μmになるように塗布し、その上に基材として易接着処理PETフィルム(東洋紡績(株)コスモシャインA4100を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後、金型より剥離してテストピースを得た。2mm厚みのアクリル板(三菱レイヨン(株)アクリライト)の上に、得られたテストピース、アクリル板の順に載せ、20cmの高さから直径60mmφ、重さ130gfのアクリル樹脂製の球を落下させた。表面のアクリル板を取り外し、テストピースの落下部分の痕のつき方を観察した。
○:痕がつかず、外観に問題がない状態
×:痕がみえ、時間が経過しても消えず、外観に問題がある状態
【0043】
硬化後のガラス転移温度(Tg):得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をガラス板上に膜厚が100μmになるよう塗布し、基材として未処理PETフィルム(東レ(株)製ルミラー)を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後、樹脂硬化膜のみを剥離してテストピースを得た。得られたテストピースを動的粘弾性測定装置(TAインスツルメンツ社製 Q800)を用いて、引張正弦波、1Hzの周波数、毎分5℃の昇温速度で測定した。得られた結果の貯蔵弾性率と損失弾性率との損失正接(tanδ)の極大時温度をTgとした。
【0045】
なお、表1の成分は、以下のとおりである。
(A)成分:商品名ジルコスターZP−153A(株式会社日本触媒製、ナノ酸化ジルコニウムメチルエチルケトン分散液(固形分70%))
(B)成分1:商品名ライトアクリレートPOB−A(共栄社化学株式会社製、m−フェノキシベンジルアクリレート)
(b)成分1:商品名NKエステルA−LEN−10(新中村化学工業株式会社製、エトキシ化O−フェニルフェノールアクリレート)
(b)成分2:商品名ライトアクリレートPO−A(共栄社化学株式会社製、フェノキシエチルアクリレート)
【0046】
(C)成分1:商品名ライトアクリレート14EG−A(共栄社化学株式会社製、ポリエチレングリコールジアクリレート n=14)
(C)成分2:商品名ライトアクリレートBP−10EA(共栄社化学株式会社製、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート 付加モル数は合計10モル)
(C)成分3:商品名エポキシエステル3000A(共栄社化学株式会社製、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応生成物)
【0047】
(D)成分:商品名イルガキュア184(BASF社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
【0048】
表1から、実施例は、比較例に対して、耐スクラッチ性及び耐衝撃性、屈折率、Tgにおいてバランスを図ることができ、これらの特性の全てにおいて、意図する満足のいく結果を得ることができたことが確認された。また、粘度が比較的低く、加工しやすいことが確認された。
前記ポリアルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレート(C)がポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート又はエトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートである請求項1〜3のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が2000mPa・s以下であり、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)が20℃以下である請求項1〜5のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
前記ポリアルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレート(C)がポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート又はエトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートである請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。