【解決手段】本発明による封止構造は、第一部材10に設けられる圧入突起16と、圧入突起16が圧入される第二部材20に設けられる圧入溝27と、を備える。圧入突起16は圧入溝27に、圧入突起16と圧入溝27が圧入される向きに間隔を隔てる第一圧入領域A1と第二圧入領域A2の二つの圧入領域において圧入される。本発明において、第一圧入領域A1に対応する根元部16aより、第二圧入領域A2に対応する先端部16bの厚さを薄くした先細りの圧入構造とすることが好ましく、第一圧入領域A1と第二圧入領域A2の間に、貯留槽Rを設けることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路基板に取り付けられる電気コネクタの端子をポッティング材により封止する場合、溶融状態の樹脂材料を枠状部材又は堰部材(以下、両者を含めてシャーシと称する)に投入する。
シャーシは、端子を保持するコネクタハウジングに組み付けられ、コネクタハウジングとともにポッティング材を保持するポッティング領域を形成する。樹脂材料は硬化するまでに流動性を備えているので、ポッティング領域に投入された後に硬化するまでの間に、シャーシとコネクタハウジングとの境界面からポッティング領域外に漏れるおそれがある。特許文献1及び特許文献2に開示される電気コネクタは、シャーシとコネクタハウジングとの境界面が単に接触している程度であるから、ポッティング領域外に漏れ出るのを防止することが難しい。
【0005】
そこで本発明は、シャーシとコネクタハウジングのように二つの部材の境界面から溶融樹脂などの流動性を有する材料が漏れるのを防止できる封止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第一部材と、第一部材と組み付けられる第二部材と、を備え、第一部材と第二部材の境界部分に設けられる圧入による封止構造に関する。
本発明の封止構造は、第一部材及び第二部材のいずれか一方に設けられる圧入突起と、圧入突起が圧入される、第一部材及び第二部材のいずれか他方に設けられる圧入溝と、を備え、圧入突起は圧入溝に、圧入突起と圧入溝が圧入される向きに間隔を隔てる少なくとも第一圧入領域と第二圧入領域の二箇所において圧入される、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の封止構造によれば、間隔を隔てて第一圧入領域と第一圧入領域を設けるので、各々の寸法精度は高く、適切な圧入状態を得ることができるので、溶融状態の流動材が外部に漏れるのを防止できる。
【0008】
本発明の封止構造において、第一圧入領域と第二圧入領域は、第一圧入領域が圧入突起の根元側に、第二圧入領域が圧入突起の先端側に、区分して設けられる場合に、第一圧入領域に対応する根元側の圧入突起より、第二圧入領域に対応する先端側の圧入突起の厚さを薄くすることができる。
この封止構造によれば、先端側の圧入突起が対応する圧入溝に挿入されるまでは摩耗するなどの損傷を受けることがなく、また、第一部材を押し込む力が弱くて済むので、第一部材と第二部材を組み付けるのが容易である。
【0009】
本発明の封止構造において、第一圧入領域と第二圧入領域の間に、圧入突起と圧入溝の間に設けられる空隙からなる貯留槽が設けられる、ことが好ましい。
これにより、仮に、第一圧入領域を流動材が通過したとしても、貯留槽に一定量の流動材を貯めることができる。流動材が第一圧入領域を通過するのは毛細管現象によるものであり、通過する流動材の量は微小であるから、貯留槽に貯まっている間に、流動材が硬化すれば、硬化した流動材がそれ以降の流動材の第一圧入領域の通過を封止する。
【0010】
本発明の封止構造の用途は任意であるが、第一部材と第二部材は、互いに組み付けられた状態で電気コネクタのコネクタハウジングを構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の封止構造によれば、第一部材と第二部材の境界部に、第一圧入部と第二圧入部の二か所の圧入構造を設けているので、流動材が境界部を通過して外部に漏れるのを防止できる。
特に、第一圧入部と第二圧入部の間に流動材溜まりを設けることにより、流動材の流れが第一圧入部と第二圧入部の途中で停滞するので、流動材が硬化するまでの時間を稼ぐことができるので、より確実に流動材が漏れるのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る圧入構造体1について説明する。
本実施形態に係る圧入構造体1は、例えば、前述した回路基板に取り付けられる電気コネクタのコネクタハウジングに適用することができる。
圧入構造体1は、
図1に示すように、第一部材10と第二部材20が組み付けられており、第一部材10と第二部材20により区画される概ね直方体状の空隙は、溶融状態のポッティング材などの流動材を収容する収容領域30を想定している。
第一部材10と第二部材20の組み付けは、
図2に示すように、第一部材10に設けられる圧入突起16が第二部材20に設けられる圧入溝27に圧入により実現される。この圧入突起16及び圧入溝27の圧入構造により、流動材が収容領域30から漏れるのを防止する。なお、第一部材10及び第二部材20は、それぞれが電気絶縁性の樹脂材料を射出成形することにより作製されるものとする。
以下、圧入構造体1の構成を説明した後に、圧入構造体1が奏する効果を説明する。
なお、圧入構造体1において、
図1のx軸を前後方向、y軸を幅方向、及び、z軸を高さ方向と定義する。その中で、前後については、
図1において第二部材20が設けられる側を前とし、上下については、
図1(b),(c)の上下に従うものとする。
【0014】
[第一部材10]
第一部材10は、
図1〜
図3に示すように、前後方向xに互いに所定の間隔を空けて平行に配置される前壁11と後壁12、及び、幅方向yに互いに所定の間隔を空けて平行に配置される右壁13と左壁14を有している。第一部材10は、これらの壁が連なることで、平面視した形状が矩形状(又はC字状)をなしている。
後壁12、右壁13及び左壁14は、高さが一定で単純な直方体状の形状を有しているが、前壁11は、幅方向yの中央部分に上面から所定の深さまで、第二部材20を受け入れる空隙である受容凹部18が形成されている。前壁11は、受容凹部18を境にして幅方向yの両側に左前壁11a及び右前壁11bと、受容凹部18よりも下方において、左前壁11aと右前壁11bを繋ぐ連結壁11cと、を備えている。
【0015】
左前壁11a及び右前壁11bには、互いに対向する先端面に、それぞれ、第二部材20のガイド条23a,23bが挿入されるガイド溝15a及びガイド溝15bが形成されている。矩形状の開口断面を有するガイド溝15a及びガイド溝15bは、それぞれ、左前壁11a及び右前壁11bの高さ方向の全域にわたって形成されている。
【0016】
次に、連結壁11cの上面の後縁に沿って、圧入突起16が形成されている。圧入突起16は、連結壁11cの幅方向yの全域にわたって形成されている。
圧入突起16は、連結壁11cの上面に連なる根元側から所定の高さを越えると厚さが薄くなる。つまり、
図2(c),
図3(b)に示すように、圧入突起16は、根元側から所定の高さまでの、相対的に厚さの厚い根元部16aと、所定の高さからの先端側の、相対的に厚さの薄い先端部16bと、に区分されている。
図4(b)に示すように、根元部16aの厚さをe1、先端部16bの厚さをd1とすると、厚さe1>厚さd1となる。このように圧入突起16が段階的な先細りの形状をなしていることにより、圧入構造体1は二箇所の圧入領域を備えながらも、圧入をスムーズに行える。
ここで、圧入突起16における根元部16a及び先端部16bの厚さとは、圧入突起16が圧入溝27に圧入されたときに、圧入突起16が圧縮力を受ける向きの寸法をいう。また、後述する圧入溝27の溝幅は、圧入突起16の厚さに対応する向きの寸法をいう。この定義は、本願発明についても同様に適用されるものとする。
【0017】
[第二部材20]
第二部材20は、第一部材10の受容凹部18に配置されている圧入突起16が圧入溝27に圧入されることで第一部材10と組み付けられ、収容領域30を形成する。
第二部材20は、
図1及び
図2に示すように、受容凹部18に配置されて第一部材10の内外を仕切る、概ね直方体状の本体21と、本体21の幅方向yの両側から突出する、一対のガイド条23a,23bと、本体21の前方から下方に向けて延びる、圧入壁25と、を備える。圧入壁25は、その先端が本体21の下面よりも第一部材10の連結壁11cの厚さの分だけ突出して形成されている。
【0018】
本体21と圧入壁25の間には、圧入溝27が形成されている。圧入溝27は、第二部材20の幅方向yの全域にわたって形成されている。
圧入溝27は、第一部材10の圧入突起16が挿入される側(挿入側)から突き当りのある奥の側(奥側)までの間で、溝幅が段階的に変化する。圧入溝27は、具体的には、
図2(c)及び
図4(b)に示すように、挿入側に設けられるテーパ状の誘い込み27aと、誘い込み27aに連なる挿入側溝27bと、挿入側溝27bに連なる凹部27cと、凹部27cに連なり奥側に設けられる奥側溝27dと、を備える。挿入側溝27bの溝幅e2よりも奥側溝27dの溝幅d2が狭く設定されている。このようにe2>d2とされるのは、第一部材10の圧入突起16の先細りの形状に対応している。挿入側溝27bと奥側溝27dの間に設けられる凹部27cの溝幅は挿入側溝27bの溝幅e2よりも大きく設定されている。
【0019】
第一部材10と第二部材20が適切に組み付けられると、
図2に示すように、挿入側溝27bには、圧入突起16の根元部16aが圧入され、奥側溝27dには、圧入突起16の先端部16bが圧入される。
ここで、根元部16aの厚さe1と挿入側溝27bの溝幅e2、及び、先端部16bの厚さd1と奥側溝27dの溝幅d2は、所望する圧入による保持力が得られるように、その寸法が設定される。なお、挿入側溝27bに根元部16aが圧入される領域を第一圧入領域A1とし、奥側溝27dに先端部16bが圧入される領域を第二圧入領域A2とする。
また、凹部27cには、根元部16aと先端部16bの境界部分及びその近傍が挿入されるが、根元部16aと先端部16bの厚さ方向の周囲には、
図2(c)に示されるように空隙からなる貯留槽Rが設けられる。
【0020】
図4(b)に示すように、圧入突起16の高さをL1、根元部16aの高さをL11、先端部16bの高さをL12とし、圧入溝27の高さをL2、挿入側溝27bの高さをL21、凹部27cの高さをL22、奥側溝27dの高さをL23とする。なお、ここでは、便宜上、誘い込み27aもL21に含めている。
以上を前提とすると、本実施形態の圧入構造体1の第一部材10及び第二部材20は、以下が成り立つように形成されている。こうすることで、圧入構造体1は、貯留槽Rを設ける高さ方向のスペースを生み出している。
なお、ここでいう高さとは、圧入突起16を圧入溝27に圧入をする際に圧入突起16が変位する方向、つまり圧入方向の寸法をいう。
L1=L2 (L1:圧入突起16の高さ、L2:圧入溝27の高さ)
L11>L21 (L11:根元部16aの高さ、L21:挿入側溝27bの高さ)
L12>L23 (L12:先端部16bの高さ、L23:奥側溝27dの高さ)
【0021】
[組み付け手順]
以下、第一部材10と第二部材20を組み付ける手順を説明する。
始めに、第一部材10と第二部材20を位置決めする。
位置決めは、ガイド条23a,23bとガイド溝15a,15bの位置が合うように、かつ、圧入突起16と圧入溝27の位置が合うようにする。
【0022】
位置決めが済んだら、第二部材20を第一部材10に対して押し込む。そうすると、ガイド条23a,23bがそれぞれガイド溝15a,15bに挿入された状態で互いに案内しながら、第一部材10と第二部材20の組み付けが進む。
圧入突起16と圧入溝27の間では、誘い込み27aから挿入された圧入突起16の先端部16bは挿入側溝27bを通過し、次いで、奥側溝27dに到達して圧入が始まる。一方で、誘い込み27aから挿入された圧入突起16の根元部16aは挿入側溝27bに到達して圧入が始まる。
第二部材20の第一部材10に対する押し込みを、先端部16bが奥側溝27dの奥に突き当るまで継続すれば、第一部材10と第二部材20の組み付けが完了する。
【0023】
組み付けの完了の過程において、先端部16bと奥側溝27dの圧入の開始及び完了のタイミングと根元部16aと挿入側溝27bの圧入の開始及び完了のタイミングは、それぞれ、ほぼ一致する。根元部16a及び先端部16bの高さ、並びに、挿入側溝27b、凹部27c及び奥側溝27dの高さは、このタイミングが実現できるように設定される。
【0024】
[効 果]
次に、圧入構造体1による効果について説明する。
圧入構造体1は、
図5(a)に示すように、貯留槽Rを隔てて第一圧入領域A1と第二圧入領域A2という二つの圧入領域を有する封止構造を備える。このように、間隔を隔てて二つの圧入領域を区分して設けることにより、流動材Pが、圧入突起16と圧入溝27の間を通って外部に漏れるのを確実に封止できる。
ここで、本実施形態を、第一圧入領域A1と第二圧入領域A2を、間隔を隔てることなく、連続的に設ける場合(比較例)と比べる。第一部材10と第二部材20は、樹脂を射出成形して作製されるものであり、高い寸法精度で圧入突起16及び圧入溝27を成形することが困難な場合がある。このことを前提に、第一圧入領域A1と第二圧入領域A2を連続的に設ける、つまり、圧入領域が長くなれば、高い寸法精度で圧入突起16と圧入溝27を成形するのが難しい。これに対して、本実施形態のように、間隔を隔てて第一圧入領域A1と第二圧入領域A2を設ければ、各々の寸法精度は高く、適切な圧入状態を得ることができるので、流動材Pが外部に漏れるのを確実に封止できる。
【0025】
次に、圧入構造体1は、第一圧入領域A1における根元部16aの厚さ及び挿入側溝27bの溝幅より、第二圧入領域A2における先端部16bの厚さ及び凹部27cの溝幅を小さくした、先細りの圧入構造を有している。これにより、根元部16aは挿入側溝27bとだけ圧入の動作が行われ、先端部16bは奥側溝27dとだけ圧入の動作が行われる。特に、圧入溝27に先に挿入される先端部16bは挿入側溝27bを単に通過するだけで、奥側溝27dに到達して初めて圧入の動作が行われる。
【0026】
仮に、先端部16bを根元部16aと同じ厚さにしたとすれば、先端部16bは挿入側溝27bを通過する際に圧入の動作が行われるので、先端部16bは挿入側溝27bを通過する過程で、先端部16bの外周面及び挿入側溝27bを区画する壁面は、摩耗するなどの損傷を受けるおそれがある。そうすると、第一圧入領域A1(根元部16aと挿入側溝27b)、及び、第二圧入領域A2(先端部16bと奥側溝27d)、の両者の圧入力が劣る、あるいは、不必要な隙間が生じるなど、の不健全な圧入構造が生じ得る。
これに対して、本実施形態は、先端部16bは挿入側溝27bを単に通過するだけであるから、先端部16bが挿入側溝27bを通過することによる不健全な圧入構造は生じ得ない。また、先端部16bが挿入側溝27bを通過する際には、第一部材10を押し込む力が弱くて済むので、第一部材10と第二部材20を組み付けるのが容易である。
【0027】
さらに、圧入構造体1は、二つの第一圧入領域A1及び第二圧入領域A2の間に貯留槽Rが設けられているので、仮に、第一圧入領域A1を流動材が通過したとしても、
図5(b)に示すように、貯留槽Rに一定量の流動材Pを貯めることができる。流動材Pが第一圧入領域A1を通過するのは毛細管現象によるものであり、通過する流動材Pの量は微小であるから、貯留槽Rに溜まっている間に、流動材Pが硬化してしまうことがあり、そうすると、硬化した流動材がそれ以降の流動材の第一圧入領域A1の通過を封止する。
【0028】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本実施形態における第一部材10及び第二部材20は本発明が適用される一例に過ぎず、収容領域30のように流動性を有する材料を収容する収容領域を二つの部材の境界部分のいずれかに圧入構造を有する構造体に広く適用することができる。
ここで、収容領域30に収容される充填材は、収容領域30に収容された時点で流動性を有していれば足り、その後に流動性を失って硬化するものであってもよい。
【0029】
また、本実施形態は、第一部材10に圧入突起16を設け、第二部材20に圧入溝27を設けたが、この逆、つまり第一部材10に圧入溝を設け、第二部材20に圧入突起を設けることができる。つまり、本発明は、圧入突起を第一部材及び第二部材のいずれか一方に設け、圧入溝を第一部材及び第二部材のいずれか他方に設ければよい。
また、本実施形態では、根元部16aと挿入側溝27b、及び、先端部16bと奥側溝27dの二箇所の圧入構造を設けたが、これは圧入構造の最小限を示すものであり三箇所以上の圧入構造を設けることもできる。
【0030】
また、本発明の封止構造の典型的な用途は、電気コネクタを構成するコネクタハウジングである。この場合、第二部材20が端子を保持するハウジング本体をなし、第一部材10がハウジング本体に組み付けられてポッティング領域を構成するシャーシ(又はポッティングケース)をなし、このポッティング領域には、ポッティング領域に引き出される端子を防水するボッティング材が設けられる。