(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-130906(P2017-130906A)
(43)【公開日】2017年7月27日
(54)【発明の名称】ガルバニーアイソレータ回路
(51)【国際特許分類】
H04B 5/02 20060101AFI20170630BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20170630BHJP
G01R 33/07 20060101ALI20170630BHJP
【FI】
H04B5/02
G01R33/02 Z
G01R33/06 H
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-90143(P2016-90143)
(22)【出願日】2016年4月28日
(31)【優先権主張番号】105101495
(32)【優先日】2016年1月19日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】張 元泰
(72)【発明者】
【氏名】▲莊▼ 凱翔
【テーマコード(参考)】
2G017
5K012
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AB07
2G017AB09
2G017AD04
2G017AD53
2G017BA05
5K012AB03
5K012AC06
5K012AC07
(57)【要約】
【課題】コイルと磁界センサを用いて、電磁結合によりガルバニーアイソレータの機能を実現するガルバニーアイソレータ回路を提供する。
【解決手段】ガルバニーアイソレータ回路は、コイルと、磁界センサとを含む。コイルは、第1回路の上に結合される。磁界センサは、第2回路の上に結合され、コイルに対応して配置される。第1回路は、コイルを介して磁界センサに磁界信号を伝送する。磁界センサは、磁界信号を出力信号に変換して、出力信号を第2回路に提供する。したがって、ガルバニーアイソレータ回路は、コイルと磁界センサを用いてガルバニーアイソレータの機能を実現することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回路に結合されたコイルと、
第2回路に結合され、前記コイルに対応して配置された磁界センサと、
を含み、前記第1回路が、前記コイルを介して前記磁界センサに磁界信号を伝送し、前記磁界センサが、前記磁界信号を出力信号に変換して、前記出力信号を前記第2回路に提供するガルバニーアイソレータ回路。
【請求項2】
前記第1回路が、
制御信号を生成する制御回路と、
前記コイルに結合され、前記制御信号を受信して、前記制御信号に基づいて送信電流を生成するとともに、前記送信電流を前記コイルに提供して、前記コイルが前記磁界信号を生成できるようにする送信側回路と、
を含む請求項1に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項3】
前記送信側回路が、
制御電流源と、
前記制御電流源を制御する電流エンコーダと、
を含み、前記電流エンコーダが、前記制御信号の電位遷移部分に基づいて、前記制御電流源により前記送信電流においてパルス部分を生成する請求項2に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項4】
前記第2回路が、
前記出力信号を受信する受信側回路と、
前記受信側回路に結合され、前記出力信号に基づいて、エネルギーを負荷に提供するかどうかを判断する出力段回路と、
を含む請求項1に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項5】
前記受信側回路が、
前記磁界センサの両端に結合され、出力ゲインに基づいて前記出力信号を増幅する出力アンプを含む請求項4に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項6】
前記第1回路が、第1電圧ドメインに属し、前記第2回路が、前記第1電圧ドメインと異なる第2電圧ドメインに属する請求項1に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項7】
前記磁界センサが、ホールセンサである請求項1に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項8】
前記第1回路が、
制御信号を変調するよう構成された変調器を含み、前記第1回路が、前記変調された制御信号に基づいて、前記コイルを介して前記磁界信号を前記磁界センサに伝送し、
前記第2回路が、
前記磁界センサによって生成された前記出力信号を復調するよう構成された復調器を含む請求項1に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項9】
送信側回路に結合された第1コイルおよび第2コイルと、
それぞれ前記第1受信側回路および前記第2受信側回路に結合された第1磁界センサおよび第2磁界センサと、
を含み、前記第1磁界センサが、前記第1コイルに対応して配置され、前記第2磁界センサが、前記第2コイルに対応して配置され、
前記送信側回路が、前記第1コイルおよび前記第2コイルを介して、第1磁界信号および第2磁界信号をそれぞれ前記第1磁界センサおよび前記第2磁界センサに伝送し、
前記第1磁界センサが、前記第1磁界信号を第1出力信号に変換して、前記第1出力信号を前記第1受信側回路に提供し、前記第2磁界センサが、前記第2磁界信号を第2出力信号に変換して、前記第2出力信号を前記第2受信側回路に提供するガルバニーアイソレータ回路。
【請求項10】
前記第1磁界センサおよび前記第2磁界センサが、ホールセンサである請求項9に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項11】
前記送信側回路が、
前記第1コイルの第1端に結合された第1端、前記第2コイルの第1端に結合された前記第1コイルの第2端、および前記第2コイルの第2端に結合された第2端を有する制御電流源を含み、前記第1コイルの巻線方向が、前記第2コイルの巻線方向と異なり、
前記制御電流源が、前記第1コイルおよび前記第2コイルを同時に流れる送信電流を生成する請求項9に記載のガルバニーアイソレータ回路
【請求項12】
前記送信側回路が、さらに、
前記制御電流源を制御する電流エンコーダ
を含み、前記電流エンコーダが、制御信号の電位遷移部分に基づいて、前記制御電流源により前記送信電流においてパルス部分を生成する請求項11に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項13】
前記第1受信側回路が、第1出力アンプであり、前記第2受信側回路が、第2出力アンプである請求項11に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項14】
前記第1出力アンプが、前記第1磁界センサの非反転出力に結合された非反転受信端、および前記第2磁界センサの反転出力に結合された反転受信端を有し、前記第2出力アンプが、前記第1磁界センサの反転出力に結合された非反転受信端、および前記第2磁界センサの非反転出力に結合された反転受信端を有する請求項13に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項15】
前記第1出力アンプが、前記第1磁界センサの非反転出力に結合された非反転受信端、および前記第1磁界センサの反転出力に結合された反転受信端を有し、
前記第2出力アンプが、前記第2磁界センサの非反転出力に結合された非反転受信端、および前記第2磁界センサの反転出力に結合された反転受信端を有する請求項13に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項16】
前記送信側回路が、
前記第1コイルに結合され、第1送信電流を生成する第1制御電流源と、
前記第2コイルに結合され、第2送信電流を生成する第2制御電流源と、
を含み、前記第1コイルの巻線方向が、前記第2コイルの巻線方向と同じであり、前記第1送信電流が、前記第1コイルの第1端から流入し、前記第2送信電流が、前記第2コイルの第2端から流入する請求項9に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項17】
前記送信側回路が、さらに、
前記制御電流源を制御する電流エンコーダ
を含み、前記電流エンコーダが、制御信号の電位遷移部分に基づいて、前記制御電流源により前記送信電流においてパルス部分を生成する請求項16に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項18】
前記第1受信側回路が、第1出力アンプであり、前記第2受信側回路が、第2出力アンプである請求項16に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項19】
前記第1出力アンプが、前記第1磁界センサの非反転出力に結合された非反転受信端、および前記第2磁界センサの反転出力に結合された反転受信端を有し、前記第2出力アンプが、前記第1磁界センサの反転出力に結合された非反転受信端、および前記第2磁界センサの非反転出力に結合された反転受信端を有する請求項18に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【請求項20】
前記第1出力アンプが、前記第1磁界センサの非反転出力に結合された非反転受信端、および前記第1磁界センサの反転出力に結合された反転受信端を有し、
前記第2出力アンプが、前記第2磁界センサの非反転出力に結合された非反転受信端、および前記第2磁界センサの反転出力に結合された反転受信端を有する請求項18に記載のガルバニーアイソレータ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガルバニーアイソレータ(galvanic isolator)回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
信号伝送の分野において、1つの電圧ドメインの回路から別の電圧ドメインの回路へ、または1つの媒体から別の媒体へ、信号やエネルギーを伝送しなければならないことがある。電圧ドメインや媒体が異なることによって、信号は、寄生路(parasitic path)により送信中に周辺回路との干渉や周辺回路内での故障を起こし、損傷する可能性がある。回路の信頼性を考慮して、通常、ガルバニーアイソレータ、信号アイソレータ、結合器、または隔離バリア(isolation barrier)を用いて異なる電圧ドメインの回路間で信号を送信し、回路を保護する。
【0003】
ガルバニーアイソレータは、電源システム(例えば、電源、モータ制御システム、サーバー電源システム、家電機器)、照明制御システム(例えば、LEDコントローラ)、工業モータシステム(例えば、ロボットアーム、自動車モータ)等の電源供給回路の多くの分野に応用可能である。上述した電源供給回路システムは、通常、制御回路により信号又は命令を生成して出力段回路を制御し、負荷にエネルギーを伝送する。
【0004】
現在、ガルバニーアイソレータは、通常、光結合器、キャパシタ、または変圧器により実現される。光結合器をガルバニーアイソレータとして使用する場合、LEDの製造プロセスは、トランジスタの製造プロセス(例えば、CMOS製造プロセス)と互換性がなく、且つLEDに光減衰や熱損失等の問題が生じる。そのため、LEDをチップに集積することができず、追加の実装が必要になる。しかし、チップに集積することのできる変圧器やキャパシタをガルバニーアイソレータとして使用する場合は、、効率のよい送信を達成するため、高周波信号の送信が必要になる。その結果、このようなガルバニーアイソレータを設置した回路は、信号を送信するための追加の変調および復調機能が必要になる。したがって、電力消費量を削減し、且つ信号歪みを低減することのできるガルバニーアイソレータをいかにして実現するかが、解決すべき課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コイルと磁界センサを用いて、磁気結合(magnetic coupling)によりガルバニーアイソレータの機能を実現するガルバニーアイソレータ回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの実施形態において、ガルバニーアイソレータ回路は、コイルと、磁界センサとを含む。コイルは、第1回路に結合される。磁界センサは、第2回路に結合され、磁界センサは、コイルに対応して配置される。第1回路は、コイルを介して磁界センサに磁界信号を伝送する。磁界センサは、磁界信号を出力信号に変換して、出力信号を第2回路に提供する。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、ガルバニーアイソレータ回路は、第1コイルと、第2コイルと、第1磁界センサと、第2磁界センサとを含む。第1コイルおよび第2コイルは、送信側回路に結合される。第1磁界センサおよび第2磁界センサは、それぞれ第1受信側回路および第2受信側回路に結合される。第1磁界センサは、第1コイルに対応して配置され、第2磁界センサは、第2コイルに対応して配置される。送信側回路は、第1コイルおよび第2コイルを介して、第1磁界信号および第2磁界信号をそれぞれ第1磁界センサおよび第2磁界センサに伝送する。第1磁界センサは、第1磁界信号を第1出力信号に変換して、第1出力信号を第1受信側回路に提供する。第2磁界センサは、第2磁界信号を第2出力信号に変換して、第2出力信号を第2受信側回路に提供する。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の実施形態のガルバニーアイソレータ回路は、コイルと磁界センサを用いて、電磁結合によりガルバニーアイソレータの機能を実現する。本発明の実施形態のガルバニーアイソレータは、チップ製造プロセスと組み合わせることができ、送信された信号は、高周波信号であっても低周波信号であってもよいため、変調または復調する必要がない。したがって、本発明の実施形態のガルバニーアイソレータは、電力消費量を削減し、信号歪みを低減するとともに、製造工程コストと実装コストを削減することができる。さらに、ガルバニーアイソレータは、半導体製造プロセスで製造し、チップに統合することができる。一方、ガルバニーアイソレータは、2つのコイルおよび2つの磁界センサを用いてガルバニーアイソレータの機能を実現することにより、同相ノイズ(common mode noise)の除去および差動信号(differential mode signal)の増幅を行い、ノイズ干渉に抵抗することができる。
【0009】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るガルバニーアイソレータを適用した回路を示す概略図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るガルバニーアイソレータを適用した回路を示す機能ブロック図である。
【
図3】回路における送信側回路および受信側回路の詳細な回路図である。
【
図4】制御信号、符号化されていない送信電流、符号化された送信電流、および出力信号のタイミング図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る2つのガルバニーアイソレータを適用した回路を示す機能ブロック図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係るガルバニーアイソレータ回路を適用した回路を示す概略図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係るガルバニーアイソレータ回路を適用した回路を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明において、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の具体的詳細を示す。しかしながら、これらの具体的詳細がなくとも、1つまたはそれ以上の実施形態が実施され得ることは明らかである。別の場合では、図面を簡潔にするため、周知の構造および装置は概略的に示される。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガルバニーアイソレータ110を使用した回路100を示す概略図である。回路100は、主に、ガルバニーアイソレータ110と、第1回路120と、第2回路130とを含む。第1回路120の電源は、第1電圧ドメインVD1に接続され、第2回路130の電源は、第2電圧ドメインVD2に接続される。つまり、第1回路120は、第1電圧ドメインVD1に属し、第2回路130は、第2電圧ドメインVD2に属する。回路100は、さらに、負荷140を含んでもよい。負荷140は、第2回路130の出力に接続される。
【0013】
本実施形態において、第1電圧ドメインVD1と第2電圧ドメインVD2は、異なっていてもよい。この場合、ガルバニーアイソレータ110を使用して信号を伝送し、電圧ドメインを隔離する必要がある。本実施形態において、回路100は、電源供給回路システムに適用可能である。そのため、第2電圧ドメインVD2は、使用する電源供給回路システムに応じて、20V〜35kVであってもよい。第1電圧ドメインVD1は、制御回路に通常使用される電圧範囲(例えば、1.25V、3.3V、5V等)である。また、電源供給回路システムの異なる応用に応じて、負荷140は、電源、照明機器、モータ、家電機器、ロボットアーム、自動車モータ等であってもよい。しかしながら、本発明の実施形態は、これらに限定されない。
【0014】
図2は、本発明の第1実施形態に係るガルバニーアイソレータ110を採用した回路100を示す機能ブロック図である。
図2を参照すると、ガルバニーアイソレータ110は、コイル210と、磁界センサ220とを含む。本実施形態において、磁界センサ220は、ホールセンサ(Hall sensor)(または、ホールデバイスと称す)により実現される。第1回路120は、制御回路230と、送信側回路240とを含む。制御回路230は、制御信号CSを生成することができる。本実施形態において、制御信号CSは、パルス幅変調(pulse width modulation, PWM)信号により実現されるが、本発明はこれに限定されない。送信側回路240は、コイル210に結合される。送信側回路240は、主に、制御信号CSを受信し、制御信号CSに基づいて送信電流Iを生成するとともに、送信電流Iをコイル210に提供して、コイル210が磁界信号Bを生成できるようにする。
【0015】
第2回路130は、受信側回路250と、出力段回路260とを含む。磁界センサ220は、磁界信号Bの大きさに基づいて出力信号VSを生成する。本実施形態において、磁界センサ220は、ホールセンサであってもよい。受信側回路250は、出力信号VSを受信して、出力信号(例えば、増幅信号、フィルタリング信号)を処理するよう構成される。出力段回路260は、処理した出力信号SAに基づいて、エネルギーを
図1の負荷140に提供するかどうかを判断することができる。本実施形態において、出力段回路260は、電力出力段回路であってもよい。
【0016】
図3は、回路100における送信側回路240および受信側回路250の詳細な回路図である。
図3において、コイル210、磁界センサ220、制御回路230、および出力段回路260は、
図2において同一名称を有する素子と類似する。送信側回路240は、制御電流源310と、電流エンコーダ320とを含む。本発明の本実施形態において、電流エンコーダ320は、制御電流源310を制御するよう構成され、制御信号CSを送信電流Iに変換して、コイル210が磁界信号Bを生成できるようにする。しかしながら、制御信号CS(例えば、PWM信号)が単に送信電流Iに変換される場合、制御電流源310は、制御信号CSのイネーブル(enable)期間の間に送信電流Iを維持し続けるため、不必要な電力の無駄が生じる。
【0017】
図4は、制御信号CS、符号化されていない送信電流IO、符号化された送信電流IN、および出力信号SAのタイミング図である。
図3および
図4を同時に参照すると、制御信号CSがイネーブル期間T1にある時、符号化されていない送信電流IOは、上述したイネーブル期間T1の間電流量を維持して、電力を無駄にする。電力の無駄を回避するため、本発明の本実施形態の送信側回路240において、電流エンコーダ320は、制御信号CSの電位遷移部分(例えば、制御信号CSがディセーブル状態からイネーブル状態に変化する期間TC1、および制御信号CSがイネーブル状態からディセーブル状態に変化する期間TC2)に基づいて制御電流源310を制御することにより、符号化された送信電流INにおいてパルス部分(例えば、PL1、PL2)を生成することができる。したがって、磁界センサ220および受信側回路250によって処理された出力信号SAは、チップ(tip)形状のパルスを生成するため、制御信号CSの遷移時間点を知ることができる。つまり、電流エンコーダ320は、遷移中に制御信号CSの辺縁部分を検出して、その辺縁部分が検出された時に符号化された送信電流INにおいて対応するパルス部分(例えば、PL1、PL2)を生成するため、後続の回路(例えば、出力段回路260)は、制御信号CSの遷移時間点を知ることができ、省電力の効果を達成することができる。
【0018】
図3を参照すると、受信側回路250は、主に、出力アンプ330を含む。出力アンプ330は、磁界センサ220の両端に結合される。出力アンプ330の非反転(non-inverting)受信端は、磁界センサ220の非反転出力に結合され、出力アンプ330の反転(inverting)受信端は、磁界センサ220の反転出力に結合される。したがって、磁界センサ220は、内蔵された出力ゲイン(例えば、内蔵されたゲインはAである)に基づいて、出力信号SAを適度に増幅し、後続の出力段回路260が信号を処理しやすいようにすることができる。受信側回路250は、回路の異なる応用および設計要求に基づいて調整可能なフィルタや整流器(rectifier)等を含んでもよい。
【0019】
本発明の本実施形態の回路100は、さらに、変調および復調機能を用いて、制御信号CSをよりスムーズに送信することができる。
図2および
図3を参照すると、第1回路120内の制御回路230は、変調器(図示せず)を含んでもよく、第1回路120内の出力段回路260は、それに応じて復調器(図示せず)を含んでもよい。変調器は、制御信号CSを変調するよう構成される。第1回路120は、変調された制御信号CSに基づいて、コイル210を介して磁界信号Bを磁界センサ220に伝送する。復調器は、磁界センサ220によって生成された出力信号SAを復調するよう構成される。しかしながら、本発明の本実施形態では、コイル210と磁界センサ220の間の磁気誘導を用いて結合する。このように、上述した方法によってノイズ干渉が少なくなるため、変調器と復調器を用いて送信している間、制御信号CSを保護する必要が比較的少なくなる。
【0020】
いくつかの実施形態において、1つのガルバニーアイソレータを通過した信号が消失したりノイズ干渉を受けたりしないよう、2つのガルバニーアイソレータを用いて信号を伝送してもよい。
図5は、本発明の第2実施形態に係る2つのガルバニーアイソレータ510および520を採用した回路500を示す機能ブロック図である。回路500は、主に、第1コイル512と磁界センサ514で構成されたガルバニーアイソレータ510、および第2コイル522と磁界センサ524で構成されたガルバニーアイソレータ520を含む。
【0021】
また、回路500は、送信側回路530および受信側回路540を含む。2つのガルバニーアイソレータを用いて信号を伝送するため、送信側回路530は、2つの電流エンコーダ532および534と、2つの制御電流源536および538とを含む。電流エンコーダ532および534は、それぞれ異なる制御信号CS1およびCS2を受信するとともに、それぞれ制御電流源536および538を制御して、送信電流I1およびI2を生成する。制御信号CS1およびCS2が同じである場合、1つの電流エンコーダのみで制御電流源536および538を同時に制御し、送信電流I1およびI2を生成することも可能である。受信側回路540は、2つの出力アンプ542および544を含み、これらを使用して、それぞれ磁界センサ514および磁界センサ524からの信号を受信および増幅し、出力信号SA1およびSA2を生成する。
【0022】
しかしながら、回路500が外部の磁界ノイズからの干渉を受けた場合、磁界センサ514および磁界センサ524もそれにより影響を受ける。その結果、出力信号SA1およびSA2に信号歪みが生じる可能性もある。ノイズ干渉を減らし、同時に省電力の要求を達成するため、本発明の本実施形態は、同相ノイズ除去および差動信号増幅の概念を用いて、ガルバニーアイソレータ回路を追加して設計する。
図6は、本発明の第3実施形態に係るガルバニーアイソレータ回路600を示す概略図である。
図6において、ガルバニーアイソレータ回路600は、単に制御電流源636および電流エンコーダ632を送信側回路630として使用する。制御電流源636の第1端は、第1コイル612の第1端に結合される。第1コイル612の第2端は、第2コイル622の第1端に結合される。制御電流源636の第2端は、第2コイル622の第2端に結合される。さらに、本発明の本実施形態は、2つの磁界信号B1およびB2が信号差動入力機能を含むものとする。そのため、本発明の本実施形態において、第1コイル612の巻線方向は、第2コイル622の巻線方向と異なるよう設計される。例えば、第1コイル612の巻線方向が時計回りの時、第2コイル622の巻線方向は、逆時計回りに変化する。したがって、電流エンコーダ632が送信電流Iを生成するよう制御電流源636を制御した時、送信電流Iは、第1コイル612および第2コイル622を同時に流れて、異なる位相を有する磁界信号B1および磁界信号B2を同時に生成する。これにより、ガルバニーアイソレータ回路600は、2つの電流エンコーダまたは2つの制御電流源を含む必要がないため、コストと電力消費量の両方を節約することができる。
【0023】
一方、ガルバニーアイソレータ回路600の受信側回路640は、第1受信側回路(例えば、第1出力アンプ642)および第2受信側回路(例えば、第2出力アンプ644)を含む。本発明の本実施形態は、第1磁界センサ614、第2磁界センサ624、第1出力アンプ642、および第2出力アンプ644の間の接続関係を特別設計することにより、同相ノイズを除去し、差動信号の振幅を増幅することができる。詳しく説明すると、第1出力アンプ642の非反転受信端は、第1磁界センサ614の非反転出力に結合され、第1出力アンプ642の反転受信端は、第2磁界センサ624の反転出力に結合される。一方、第2出力アンプ644の非反転受信端は、第1磁界センサ614の反転出力に結合され、第2出力アンプ644の反転受信端は、第2磁界センサ624の非反転出力に結合される。したがって、磁界信号B1およびB2は、互いに逆位相を有するため、磁界信号B1およびB2に含まれる制御信号は、出力アンプ624および644の演算(computation)を介して増幅される。反対に、磁界ノイズからの干渉が生じた時、第1磁界センサ614および第2磁界センサ624は、磁界ノイズを同時に検出するため、出力アンプ624および644の演算後、同相ノイズを除去することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、受信側回路640の設計時に磁界センサと後段アンプを接続する方向を微調整して、受信側回路640が後段アンプにおいて信号差動入力機能を提供することができれば、第1コイル612の巻線方向を第2コイル622と同じ巻線方向に設計してもよい。
【0025】
図7は、本発明の第4実施形態に係るガルバニーアイソレータ回路700を示す概略図である。ガルバニーアイソレータ回路700は、第1コイル712と、第2コイル722と、第1磁界センサ714と、第2磁界センサ724と、送信側回路730と、受信側回路740とを含む。
図7の受信側回路740および出力アンプ742、744は、
図6の受信側回路640および出力アンプ642、644と類似する。
図6と
図7の相違点は、
図7の送信側回路730が主に2つの電流エンコーダ732および734と、2つの制御電流源736および738とを含むことである。制御電流源736および738は、それぞれ第1コイル712および第2コイル722に結合される。第1コイル712の巻線方向は、第2コイル722の巻線方向と同じである(例えば、両方が時計回りに巻かれているか、反時計回りに巻かれている)。詳しく説明すると、制御電流源736の非反転送信端は、第1コイル712の第1端に接続され、制御電流源736の反転送信端は、第1コイル712の第2端に接続される。一方、制御電流源738の非反転送信端は、第2コイル722の第2端に接続され、制御電流源738の反転送信端は、第2コイル722の第1端に接続される。したがって、制御電流源736によって生成された第1送信電流I1は、第1コイル712の第1端から流入し、制御電流源738によって生成された第2送信電流I2は、第2コイル722の第2端から流入する。したがって、第1コイル712および第2コイル722は、互いに逆位相を有する磁界信号B1およびB2を生成することができる。
【0026】
以上のように、本発明の実施形態のガルバニーアイソレータ回路は、コイルと磁界センサ(例えば、ホールセンサ)を用いて、磁気結合によりガルバニーアイソレータの機能を実現する。本発明の実施形態のガルバニーアイソレータは、チップ製造プロセスと組み合わせることができ、送信された信号は、高周波信号であっても低周波信号であってもよいため、変調または復調する必要がない。したがって、本発明の実施形態のガルバニーアイソレータは、電力消費量を削減し、信号歪みを低減するとともに、製造工程コストと実装コストを削減することができる。さらに、ガルバニーアイソレータは、半導体製造プロセスで製造し、チップに統合することができる。一方、ガルバニーアイソレータは、2つのコイルおよび2つの磁界センサを用いてガルバニーアイソレータの機能を実現することにより、同相ノイズの除去および差動信号の増幅を行い、ノイズ干渉に抵抗することができる。
【0027】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、一般的に、コイルおよび磁界センサを用いて、磁気結合によりガルバニーアイソレータの機能を実現するガルバニーアイソレータ回路を提供する。
【符号の説明】
【0029】
100、500、600、700 回路
110 ガルバニーアイソレータ
120 第1回路
130 第2回路
140 負荷
VD1、VD2 電圧ドメイン
210、512、522、612、622、714、724 コイル
220、514,524、614、624、714、724 磁界センサ
230 制御回路
240、530、630、730 送信側回路
250、540、640、740 受信側回路
260 出力段回路
CS、CS1、CS2 制御信号
I、I1、I2 送信電流
B、B1,B2 磁界信号
VA、SA、SA1、SA2 出力信号
310、536、538、636、736、738 制御電流源
320、532、534、632、732、734 電流エンコーダ
330、542、544、642、644、742、744 出力アンプ
IO 符号化されていない送信電流
IN 符号化された送信電流
T1 制御信号のイネーブル期間
TC1、TC2 期間
PL1、PL2 パルス部分
【外国語明細書】