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特開2017-13091ワックス成形型、及びロストワックス鋳造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-13091(P2017-13091A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】ワックス成形型、及びロストワックス鋳造法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/04 20060101AFI20161222BHJP
   B22C 7/02 20060101ALI20161222BHJP
   B22C 9/08 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
   B22C9/04 A
   B22C7/02 103
   B22C9/04 H
   B22C9/08 B
   B22C9/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-132245(P2015-132245)
(22)【出願日】2015年6月30日
(71)【出願人】
【識別番号】515179716
【氏名又は名称】メカニックモデル有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191190
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 直文
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩治
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093GA02
4E093GB08
4E093GC16
4E093PA05
(57)【要約】
【課題】型の制作時間及び制作コストを低減することができ、少量多品種の生産に向き、設計変更に迅速に対応しやすく、軽量で移動や取り扱いが容易なワックス成形型を実現する。
【解決手段】ワックス成形型100は、キャビティ20を区画形成する樹脂製の下型11及び上型12と、樹脂製の上型12を貫通してキャビティ20に至る湯口管30と、湯口管30と離間した位置で引け巣の生じやすい部位に設けられ、樹脂製の上型を貫通してキャビティ20に至る押湯管40と、キャビティ20の気体溜まりが生じやすい部分に設けられ、樹脂製の上型を貫通する脱気管50と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを区画形成する樹脂製の下型及び上型と、
前記樹脂製の上型を貫通して前記キャビティに至る湯口管と、
前記湯口管と離間した位置で引け巣の発生しやすい部位に設けられ、前記樹脂製の上型を貫通して前記キャビティに至る押湯管と、
前記キャビティの気体溜まりが生じやすい部分に設けられ、前記樹脂製の上型を貫通する脱気管と、
を備えることを特徴とするワックス成形型。
【請求項2】
前記湯口管、押湯管、及び脱気管は、金属製の管体によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワックス成形型。
【請求項3】
前記下型と前記上型との間には、アンダーカット部を成形するための樹脂製の置き駒型が配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワックス成形型。
【請求項4】
前記型同士が接触する型合わせ面には、型合わせの位置決めのための凹凸形状部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のワックス成形型。
【請求項5】
前記下型及び前記上型の前記キャビティ以外の部分には、樹脂材の撓みを防止するための補強材が配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のワックス成形型。
【請求項6】
原型を作製する工程と、
前記原型に応じたワックス成形型を作製する工程と、
前記ワックス成形型内に溶融蝋を注入しワックス模型を作製する工程と、
前記ワックス模型を湯口ランナーに複数取り付けてツリーを作製する工程と、
前記ワックスツリーを粘結剤に浸して耐火砂を付着させて鋳型を作製するコーティング処理工程と、
前記鋳型内のワックスツリーを融かして取り除く脱蝋処理工程と、
前記鋳型を焼成する工程と、
前記鋳型のキャビティ内に溶融金属を注湯する鋳込み工程と、
前記鋳型を壊して鋳物を取り出す型ばらし工程と、
前記鋳物を機械加工して個々の製品を調整する仕上処理工程と、
を少なくとも有し、
前記ワックス成形型は、請求項1から5のいずれかに1項に記載の樹脂製のワックス成形型により形成されていることを特徴とするロストワックス鋳造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のワックス成形型、及び当該樹脂製のワックス成形型を用いたロストワックス鋳造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロストワックス鋳造法は、蝋(WAX)が比較的低温で溶融することを利用した鋳造法である。即ち、ロストワックス鋳造法は、金型に溶融蝋を注入してワックス模型を作成し、当該ワックス模型を耐熱材でコーティングした後、加熱して脱蝋処理して形成した鋳型のキャビティ内に溶融金属を鋳込んで鋳物を作製する鋳造技術である。
【0003】
従来のロストワックス鋳造法において、ワックス模型の成形型としては、例えば、柔軟材からなる薄肉のワックスコアとその内側の凹部に嵌合するインサート部材を備え、アンダーカット部をワックスコアで形成し、ワックス模型が固形化した後、インサート部材を引き抜くことで、ワックスコアをワックス模型から容易に分離できるようにしたワックス模型形成に好適な金型が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−233259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のロストワックス鋳造法では、ワックス成形型として金型を用いてワックス模型の成形を行っていた。金型は、型の制作時間が30日〜45日程度掛かり、制作コストが約100万円を超えるので、少量多品種の生産には向かない。また、原型が設計変更になると、ワックス成形型を作り替える必要があるが、金型は制作時間及び制作コストが増大するため、設計変更に迅速に対応し難い。さらに、金型は重量があるため、移動や取り扱いが困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記の事情に鑑みて、型の制作時間及び制作コストを低減することができ、少量多品種の生産に向き、設計変更に迅速に対応しやすく、軽量で移動や取り扱いが容易なワックス成形型、及び当該ワックス成形型を用いたロストワックス鋳造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るワックス成形型は、キャビティを区画形成する樹脂製の下型及び上型と、前記樹脂製の上型を貫通して前記キャビティに至る湯口管と、前記湯口管と離間した位置で引け巣の発生しやすい部位に設けられ、前記樹脂製の上型を貫通して前記キャビティに至る押湯管と、前記キャビティの気体溜まりが生じやすい部分に設けられ、前記樹脂製の上型を貫通する脱気管と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記ワックス成形型の構成において、前記湯口管、押湯管、及び脱気管は、金属製の管体によって形成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記下型と前記上型との間には、アンダーカット部を成形するための樹脂製の置き駒型が配設されていることが好ましい。
【0010】
さらに、前記型同士が接触する型合わせ面には、型合わせの位置決めのための凹凸形状部が形成されていることが好ましい。
【0011】
そして、前記下型と前記上型の前記キャビティ以外の部分には、樹脂材の撓みを防止するための補強材が配設されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るロストワックス鋳造法は、原型を作製する工程と、前記原型に応じたワックス成形型を作製する工程と、前記ワックス成形型内に溶融蝋を注入しワックス模型を作製する工程と、前記ワックス模型を湯口ランナーに複数取り付けてツリーを作製する工程と、前記ワックスツリーを粘結剤に浸して耐火砂を付着させて鋳型を作製するコーティング処理工程と、前記鋳型内のワックスツリーを融かして取り除く脱蝋処理工程と、前記鋳型を焼成する工程と、前記鋳型のキャビティ内に溶融金属を注湯する鋳込み工程と、前記鋳型を壊して鋳物を取り出す型ばらし工程と、前記鋳物を機械加工して個々の製品を調整する仕上処理工程と、を少なくとも有し、前記ワックス成形型は、前記のいずれかに記載の樹脂製のワックス成形型により形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、型の制作時間及び制作コストを低減することができ、少量多品種の生産に向き、設計変更に迅速に対応しやすく、軽量で移動や取り扱いが容易なワックス成形型、及び当該ワックス成形型を用いたロストワックス鋳造法を実現できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係るワックス成形型の外観図である。
図2】本実施の形態に係るワックス成形型の断面図である。
図3】本実施の形態に係るワックス成形型の置き駒型の説明に供する断面図である。
図4】本実施の形態に係るロストワックス鋳造法の工程図である。
図5】本実施の形態に係るワックス成形型の下型の作製方法の説明に供する模式図である。
図6】本実施の形態に係るワックス成形型の上型の作製方法の説明に供する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るワックス成形型及びロストワックス鋳造法について説明する。ただし、図面において、同一又は類似の部材や部分には同一又は類似の符号を付している。また、図面は模式的に図示しており、実際の寸法や比率等とは必ずしも一致しない。さらに、図面相互間において、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることがある。
【0016】
まず、図1から図3を参照して、本実施の形態に係るワックス成形型の構成について説明する。図1は本実施の形態に係るワックス成形型の外観図である。図2は本実施の形態に係るワックス成形型の断面図である。図3は本実施の形態に係るワックス成形型の置き駒型の説明に供する断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るワックス成形型100は、主に下型11、上型12、湯口管30、押湯管40、及び脱気管50を備える。
【0018】
下型11と上型12は、溶融蝋の注入空間としてのキャビティ20を区画形成する。当該キャビティ20は、原型(図示せず)の外形状に応じた内形状に形成される。本実施の形態の下型11及び上型12は、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂材を用いて作製することが好ましいが、例示の樹脂材に限定されない。樹脂材は、硬化剤を混合することにより、約8〜12時間程度放置することにより硬化する。樹脂材は、例えば、乳白色シリコン樹脂のように、樹脂材が硬化した状態で外観からキャビティ20内の溶融蝋の挙動を観察可能な材料を選択することが好ましい。また、キャビティ20内で固化させた蝋(WAX)の離型性を良くするため、オイルブリーズタイプの潤滑性の良い樹脂材を採用することが好ましい。
【0019】
下型11及び上型12のキャビティ20以外の部分には、樹脂材の撓みを防止するための補強材60を配設することが好ましい。補強材60としては、例えば、鉄筋や金属パイプなどが挙げられる。
【0020】
また、図3に示すように、本実施の形態に係るワックス成形型100で成形するワックス模型がアンダーカット部21を有する場合には、樹脂製の下型11と上型12との間に、当該アンダーカット部21を成形するための置き駒型13を配設してもよい。ここで、「アンダーカット部」とは、ワックス成形型100の開閉方向や押し出すことでは離型できない製品形状があり、その要因となっている部位のことをいう。
【0021】
下型11と上型12、下型11と置き駒型13、置き駒型13と上型12、及び置き駒型同士13の型同士が接触する型合わせ面には、型合わせの位置決めのための凹凸形状部14を形成することが好ましい。本実施の形態の凹凸形状部14は、例えば、緩やかな凹凸部が連なった波形凹凸部によって形成されているが、型合わせの位置決めをすることができると共に、位置ずれを防止することができれば、例示の波形凹凸部に限定されない。
【0022】
湯口管30は、キャビティ20内に溶融蝋を注湯するための注入口であり、樹脂製の上型12を貫通してキャビティ20に至っている。湯口管30の上端部は、不図示の注入ノズルを嵌入しやすいように、例えば、拡径された凹形状のノズル受け部と成っている。本実施の形態の湯口管30は、例えば、ステンレス鋼管や銅管、真鍮管、アルミニウム管等の金属製の管体(パイプ)により形成することが好ましい。湯口管30として金属パイプを採用することにより、繰り返しの注湯に耐えることができ、上型12を構成する樹脂材を補強することができる。
【0023】
押湯管40は、キャビティ20内の引け巣が発生しやすい部位に溶融蝋を行きわたらせるための押湯部である。引け巣は、溶融蝋が凝固・収縮によりキャビティ20の容積よりも小さくなり発生し、特に肉厚の大きな部位に発生しやすい。したがって、押湯管40は、湯口管30と離間した位置で引け巣の発生しやすい部位に設けられ、樹脂製の上型12を貫通してキャビティ20に至っている。本実施の形態の押湯管40は、上記湯口管30と同様に、例えば、ステンレス鋼管や銅管、真鍮管、アルミニウム管等の金属製の管体(パイプ)により形成することが好ましい。押湯管40として金属パイプを採用することにより、繰り返しの注湯に耐えることができ、上型12を構成する樹脂材を補強することができる。
【0024】
脱気管50は、キャビティ20内の気体溜まりから空気抜きを行うためのエア抜き孔を形成する。脱気管50は、キャビティ20の気体溜まりが生じやすい部分に複数設けられ、樹脂製の上型12を貫通している。本実施の形態の脱気管50は、例えば、ステンレス鋼管や銅管、真鍮管、アルミニウム管等の金属製の管体(チューブ)により形成することが好ましい。脱気管50として金属チューブを採用することにより、樹脂製の上型12にキャビティ20に至る複数の貫通孔を形成し、当該貫通孔に金属チューブをそれぞれ挿通させることにより、極めて容易にエア抜き孔を形成することができる。或いは、金属チューブ製の脱気管50の先端部を尖らせて、尖った先端部側から樹脂製の上型12を貫通するように圧入し、脱気管50に圧縮空気を吹き込めば、当該脱気管50内に残留した樹脂材を吹き飛ばすことができる。
【0025】
なお、本実施の形態に係るワックス成形型100のキャビティ20内に注入する蝋(WAX)は、例えば、ワックスグリーンやワックスレッド等の有色ワックスを採用することが好ましい。有色ワックスを採用することにより、例えば、乳白色シリコン樹脂でワックス成形型100を形成する場合には、当該ワックス成形型100の外観からキャビティ20内の溶融蝋の挙動を観察することが可能となる。
【0026】
次に、図1から図6を参照して、本実施の形態に係るワックス成形型100の作用と共に、本実施の形態に係るロストワックス鋳造法について説明する。図4は本実施の形態に係るロストワックス鋳造法の工程図である。図5は本実施の形態に係るワックス成形型の下型の作製方法の説明に供する模式図である。図6は本実施の形態に係るワックス成形型の上型の作製方法の説明に供する模式図である。
【0027】
図4に示すように、本実施の形態に係るロストワックス成形方法は、原型を作製する工程と、原型に応じたワックス成形型を作製する工程と、ワックス成形型内に溶融蝋を注入しワックス模型を作製する工程と、ワックス模型を湯口ランナーに複数取り付けてツリーを作製する工程と、ワックス模型を粘結剤に浸して耐火砂を付着させて鋳型を作製するコーティング処理工程と、鋳型内のワックス原型を融かして取り除く脱蝋処理工程と、鋳型を焼成する工程と、鋳型のキャビティ内に溶融金属を注湯する鋳込み工程と、鋳型を壊して鋳物を取り出す型ばらし工程と、鋳物を機械加工して個々の製品を調整する仕上処理工程と、を少なくとも有する。具体的には、各工程は以下のように実施される。
【0028】
まず、図4に示すように、原型を作製する工程を行う(S101)。原型を作製する工程(S101)では、粘度や石膏、蝋、木材等により原型を作製する。作製した原型は下型11や上型12に対応するように2つの原型片10A,10Bに分割形成される(図5及び図6参照)。
【0029】
次に、原型に応じたワックス成形型100を作製する工程を行う(S102)。ワックス成形型100を作製する工程(S102)では、分割形成した各原型片10A,10Bに基づいて、下型11と上型12を作製する。
【0030】
具体的には、図5(a)に示すように、木材や金属板等の型枠80の底板81上に原型片10Aの分割面を伏せて配置する。原型片10Aの表面には、離型剤を塗布することが好ましい。また、型枠80内には、補強材60を配置する。次に、図5(b)に示すように、例えば、シリコン樹脂等の樹脂材に硬化剤を混ぜて、充分に気泡を除去して型枠80内に充填する。その際、底板81の表面に波形凹凸形状14Aを付与しておけば、型合わせ面に位置決め用の波形の凹凸形状部14を作製することができる。約8時間〜12時間放置した後、図5(c)に示すように、型枠80をばらして原型片10Aを取り除けば、下側のキャビティ20を有する下型11が完成する。
【0031】
また、図6(a)に示すように、型枠80の底板81上に原型片10Bの分割面を伏せて配置する。原型片10Bの表面には、離型剤を塗布することが好ましい。また、型枠80内には、湯口管30、押湯管40、及び補強材60を配置する。次に、図6(b)に示すように、例えば、シリコン樹脂等の樹脂材に硬化剤を混ぜて、充分に気泡を除去して型枠80内に充填する。その際、底板81の表面に波形凹凸形状14Aを付与しておけば、型合わせ面に位置決め用の波形の凹凸形状部14を作製することができる。約8時間〜12時間放置した後、図6(c)に示すように、型枠80をばらして原型片10Bを取り除けば、上側のキャビティ20を有する上型12が完成する。脱気管50は、樹脂製の上型12にキャビティ20に至る複数の貫通孔を形成し、当該貫通孔に金属チューブをそれぞれ挿通させることにより形成する。或いは、金属チューブ製の脱気管50の先端部を尖らせて、尖った先端部側から樹脂製の上型12を貫通するように圧入し、脱気管50に圧縮空気を吹き込んで当該脱気管50内に残留した樹脂材を吹き飛ばすことにより、形成することができる。
【0032】
次に、図5及び図6の手順で作製したワックス成形型100内に溶融蝋を注入し、ワックス模型を作製する工程を行う(S103)。図1及び図2に示すように、下型11と上型12との型合わせは、これら下型11と上型12との縁を合わせて、波形の凹凸形状部14を頼りに位置決めすることにより行う。置き駒型13が存在する場合は、下型11上に置き駒型13を配置した後、上型12を配置する(図3参照)。湯口管30から溶融蝋を注入し、凝固収縮による引け巣を防止するため、押湯管40まで押湯を注入する。そして、蝋が凝固したら、下型11と上型12を離型させて、ワックス模型を取り出す。
【0033】
さらに、ワックス模型を複数作製し、湯口ランナーに複数のワックス模型を接着剤等により取り付けてワックスツリーを作製する工程を行う(S104)。ワックスツリーを作製することにより、複数の鋳物を同時に鋳込むことができる。そして、ワックスツリーを粘結剤(スラリー)に浸して、その表面に耐火砂(スタッコ)を付着させてツリー鋳型を作製するコーティング処理工程を行う(S105)。コーティング処理工程(S105)は繰り返し行い、所望の厚さに耐火砂を付着させる。
【0034】
次に、鋳型内のワックスツリー型を融かして取り除く脱蝋処理工程を行う(S106)。脱蝋処理工程(S106)は、例えば、高温・高圧蒸気で鋳型を加熱し、当該鋳型内のワックスツリー型を融かし出す。脱蝋処理により鋳型内に形成された空洞が溶融金属を鋳込むキャビティとなる。
【0035】
さらに、ツリー状の鋳型を焼成する工程を行う(S107)。焼成する工程(S107)は、例えば、加熱炉内で約1000℃の温度で焼成する。鋳型を焼成することにより粘着材が固化するため、鋳型の強度が増大するとともに、不純物が取り除かれる。
【0036】
次に、鋳型のキャビティ内に溶融金属を注湯する鋳込み工程を行う(S108)。鋳込み工程(S108)は、焼成したツリー状の鋳型の湯口を上にして、枠体内に充填した砂等で支持し、当該鋳型のキャビティ内に溶融金属を注湯する。溶融金属が凝固した後、鋳型を壊して鋳物を取り出す型ばらし工程を行う(S109)。型ばらし工程(S109)を行うと、ツリー状の湯口系付きの複数の鋳物が取り出される。
【0037】
そして、鋳物を機械加工して個々の製品を調整する仕上処理工程を行う(S110)。即ち、仕上処理工程(S110)は、湯口系やバリ等の不要な部分を切断・切削加工したり、穴開け加工等を行って、所望の製品形状に仕上げる。必要に応じて、例えば、アルミナイズド処理等の表面処理を行ってもよい。
【0038】
さらに、製品を熱処理する工程を行うことが好ましい(S111)。熱処理することにより、所望の金属組織に調整して強靱な製品を得ることができる。加えて、製品を検査する工程を行うことが好ましい(S112)。引け巣等の鋳造欠陥の有無等の外観目視検査や寸法検査等を行うことにより、製品の品質の信頼性を向上させることができる。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ワックス成形型100を樹脂材で成形したので、ワックス成形型100の制作時間及び制作コストを低減することができる。具体的には、従来の金型の制作時間は30日〜45日程度であるところ、樹脂製のワックス成形型100は15日程度で作製することができる。また、従来の金型の制作コストが約100万円超えるところ、半分の約50万円程度で作製することができる。
【0040】
このように樹脂製のワックス成形型100は制作時間及び制作コストを低減することができるので、少量多品種の生産に向いている。また、原型に設計変更が生じても、樹脂製のワックス成形型100は型の制作時間が短く、制作コストが安いので、設計変更に迅速に対応しやすい。さらに、樹脂製のワックス成形型100は軽量であるので、移動や取り扱いを容易に行うことができる。
【0041】
また、硫酸カルシウム(CaSO)を主成分とする石膏材でワックス成形型を形成してワックス模型を作製する場合は、主にアルミニウム及びアルミニウム合金のロストワックス鋳造に適している。他方、本実施の形態に係る樹脂製のワックス成形型100でワックス模型を作製する場合は、アルミニウム及びアルミニウム合金の他、鋳鉄、銅、青銅、真鍮等の多種多様な金属及び合金のロストワックス鋳造に適している。
〔他の実施形態〕
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【0043】
すなわち、上記の実施の形態では、補強材60として、例えば、鉄筋や金属パイプなどを採用している。補強材60は、これらの金属材に限定されず、例えば、ポリプロピレン樹脂パイプやウレタン樹脂パイプ等の機械的強度の高い硬質樹脂材の周囲に耐熱材を付着させたものを採用しても構わない。
【0044】
また、図3に示すように、ワックス成形型100の型の膨らみや撓みを防止するために、当該ワックス成形型100の周囲に金属製型枠材90を配設してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10A、10B 原型、
11 下型、
12 上型、
13 置き駒型、
20 キャビティ、
21 アンダーカット部、
30 湯口管、
40 押湯管、
50 脱気管、
60 補強材、
100 ワックス成形型。
図1
図2
図3
図4
図5
図6