【解決手段】デジタルサイネージシステム(10)は、作業現場で作業する作業者(130)に装着され、作業者の生体データを取得する生体センサー(152)と、作業者に装着され、生体センサーが取得した生体データを近距離無線通信で通信する第1通信部(151)と、作業現場に配置され、情報を表示する表示画面(111)、表示画面に表示される内容を処理する処理部(113)、近距離無線通信により情報の通信を行うことができる第2通信部(112)及び第1通信部及び第2通信部を介して通信された生体データを記憶する記憶部(114)を有するデジタルサイネージ装置(100)と、を有する。
前記作業者に装着され、前記作業現場の気温、湿度、粉塵の少なくとも1つの環境データを測定する環境センサーを有し、前記環境データを前記第1通信部及び前記第2通信部を介して前記環境データが前記記憶部に記憶される請求項1又は請求項2に記載のデジタルサイネージシステム。
前記処理部は前記作業者の生体データが所定の範囲に入っているか管理し、前記生体データが所定の範囲に入っていない場合には、前記処理部は前記第1通信部及び前記第2通信部を介して前記作業者に前記生体データが所定の範囲に入っていないことを通知し又は前記表示画面に警報を表示する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のデジタルサイネージシステム。
前記作業現場の監督者は、通信端末を保有しており、前記処理部は前記第2通信部を介して前記生体データが所定の範囲に入っていないことを通知する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のデジタルサイネージシステム。
前記作業者に装着され、前記作業者の移動する加速度データを取得する加速度センサーを有し、前記作業者の加速度データは、前記第1通信部及び前記第2通信部を介して前記記憶部に記憶され、前記処理部は前記加速度データが所定の加速度以上であった際に落下と判断し、前記表示画面に警報を表示する請求項1から請求項5のいずれか一項のデジタルサイネージシステム。
前記作業者に装着され、前記作業者の位置データを取得する位置センサーを有し、前記作業者の位置データは、前記作業者が前記作業現場の所定のゲートを通ることにより前記第1通信部及び前記第2通信部を介して前記記憶部に記憶され、前記処理部は出勤及び退勤の情報として処理する請求項1から請求項7のいずれか一項のデジタルサイネージシステム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0016】
(第1実施形態)
<デジタルサイネージシステム10の構成>
図1(a)は、デジタルサイネージ装置100の斜視図である。デジタルサイネージ装置100は、外形が直方体に形成され、前面に表示画面111が配置される本体部110と、本体部110を載置する台座部120と、により構成されている。表示画面111には、工事情報、作業情報、広告等の様々な情報が表示される。台座部120は、上部に本体部110を載置するための天板121が配置され、下部にデジタルサイネージ装置100を移動させるための車輪122が配置されている。本体部110は天板121に固定されている。
【0017】
図1(b)は、作業者130の正面図である。作業者130は、工場、工事現場、建設現場等の作業現場で作業を行う者である。
図1(b)に示される作業者130の手首には装着装置141が装着され、足首には装着装置142が装着されている。
図1(b)では両手首に装着装置141が装着され、両足首に装着装置142が装着されている状態が示されているが、いずれかの手首又は足首のみに装着されていても良い。装着装置141又は装着装置142は、作業者130の生体データを測定する生体センサー152を含んでいる。生体センサー152は、例えば体温、脈拍、血圧、血中酸素濃度等の作業者130の生体データを収集するセンサーである。また、装着装置141及び装着装置142は生体センサー152と共に、作業現場の気温、湿度、粉塵等の環境データを計測する環境センサー153、GPS等で作業者130の位置データを取得する位置センサー154、作業者130の加速度データを取得する加速度センサー155を含んでいても良い。
【0018】
また、作業者130は、ベルトのバックルに取り付けられる装着装置143、作業服のポケットに取り付けられる装着装置144、又はヘルメットに取り付けられる装着装置145を有していても良い。これらの装着装置143から装着装置145は、環境センサー153、位置センサー154、又は加速度センサー155の少なくとも1つを含むことができる。さらに、作業者130は、
図1(b)に示されるセンサー以外にも様々な位置に取り付けられるセンサーを有していても良い。
【0019】
さらに、装着装置141から装着装置145は、知らせを受けるためのバイブレータ、アラーム、表示画面等を設けておいてもよい。装着装置141から装着装置145の各センサーは、近距離無線通信でデジタルサイネージ装置100と通信する第1通信部151を有する。第1通信部151は、生体センサー152、環境センサー153、位置センサー154、加速度センサー155から収集したデータ(以下、作業者データ)をデジタルサイネージ装置100に送信する。第1通信部151は、装着装置141から装着装置145のいずれか1つに含まれていればよく、この場合には、1つの第1通信部151が他のセンサーが収集した作業者データをまとめてデジタルサイネージ装置100に送信するようにしても良い。
【0020】
図2は、デジタルサイネージシステム10の概略構成図である。デジタルサイネージシステム10は、主にデジタルサイネージ装置100、作業者130が身に着ける第1通信部151、生体センサー152、環境センサー153、位置センサー154、及び加速度センサー155を含んで構成されている。また、デジタルサイネージ装置100は、インターネット160を介してデジタルサイネージ装置100の管理者132が管理する管理サーバ161に接続される。さらにデジタルサイネージ装置100は、作業現場の監督者131が有する通信端末162に近距離無線通信及びインターネット160を介して接続されている。通信端末162は、例えばスマートフォン又はタブレット端末等である。
【0021】
デジタルサイネージ装置100は、表示画面111の他に、第1通信部151と近距離無線通信を介して通信を行う第2通信部112、表示画面111に表示される内容等を処理する処理部113、及び生体データ等を記憶する記憶部114を有している。デジタルサイネージ装置100は、第2通信部112が第1通信部151を介して生体センサー152、環境センサー153、位置センサー154、及び加速度センサー155から取得した作業者データを必要に応じて処理部113で処理する。また記憶部114はそれら作業者データを記録し、処理部113が表示画面111にそれら作業者データを表示させることもできる。また、これらの作業者データは必要に応じて管理サーバ161及び通信端末162に送られても良い。
【0022】
図3は、デジタルサイネージシステム10の実施例である。
図3では、デジタルサイネージシステム10の実施例としてデジタルサイネージ装置100が道路工事の現場に1台設置されている状態が示されている。デジタルサイネージ装置100の表示画面111には、道路工事の内容等が表示される。
【0023】
第1通信部151及び第2通信部112との近距離無線通信は、例えばBluetooth(登録商標)、無線LAN等である。近距離無線通信は消費電力が小さいため、電池残量を大きく気にすることなく頻繁に又は常時接続により迅速に作業者データの送受信をすることができるため好ましい。作業現場の広さが狭い場合には、第1通信部151及び第2通信部112の通信範囲に作業現場全体を含むことができる。
【0024】
図4は、デジタルサイネージシステム10の動作の流れが示されたフローチャートである。以下に
図4を参照して、デジタルサイネージシステム10について説明する。
【0025】
ステップS101では、生体センサー152、環境センサー153、位置センサー154、及び加速度センサー155が作業者データを測定し、第1通信部151が作業者データをデジタルサイネージ装置100の第2通信部112に送信する。
【0026】
ステップS102では、処理部113が作業者データの異常を検知する。第1通信部151から第2通信部112に送信された作業者データを処理部113が異常値を示しているか否かが判断される。作業者データが異常と判断された場合には作業者データの異常値が検知されることとなる。
【0027】
作業者データの異常値とは、作業者データが所定の数値範囲から外れた場合である。例えば、生体データとして測定されていた作業者130の体温又は血圧が上昇し所定の閾値を越えて作業者130が体調を崩していると考えられる場合である。また、環境センサー153で測定する作業現場の気温もしくは湿度又は粉塵が所定の閾値を越えて作業に適さなくなったと考えられる場合がある。さらに作業者データの異常値には、作業時間中に作業者130の位置が作業現場の範囲から大きく外れた場合、作業者130に対して自由落下の加速度が所定時間あって、作業者130の落下事故が想定される場合等がある。
【0028】
ステップS103では、ステップS102で作業者データの異常値が検出された場合、処理部113がその異常の大きさが判断する。異常が小さい場合にはステップS104に進み、異常が大きい場合にはステップS105に進む。
【0029】
異常値の大きさの判断は、至急対処しなければならないか否かの違いを基準として判断される。例えば、処理部113は、作業者130の体温が第1閾値(37°C)を1分間超えた場合は、異常値が小と判断し、第2閾値(39°C)を1分間超えた場合は、異常値が大と判断する。また処理部113は、作業者130の脈拍が第1閾値(80回/分)を超えた場合は、異常値が小と判断し、第2閾値(100回/分)を超えた場合は、異常値が大と判断する。また処理部113は、作業現場の外気温が上昇し40°Cを一分間(第1閾値)越えた場合は、異常値が小と判断し、40°Cを15分間(第2閾値)超えた場合は、異常値が大と判断する。
【0030】
また例えば、処理部113は、作業時間中に作業者130の位置が作業現場から1分間1分間(第1閾値)超えた場合は、異常値が小と判断し、作業現場から10分(第2閾値)超えた場合は、異常値が大と判断する。また処理部113は、作業者の加速度が0.5G(4.9 m/s
2 )以上で0.15秒(第1閾値)越えた場合は、異常値が小と判断し、0.5G(4.9 m/s
2 )以上で0.3秒(第2閾値)超えた場合は、異常値が大と判断する。
【0031】
一つのセンサーから作業者データではなく複数の作業者データの組み合わせに基づいて、処理部113は異常値の大小を判断してもよい。例えば処理部113は、作業者130に加速度がかかったが、生体センサーから脈拍データ又は血圧データが正常であり生命の危険が感じられない場合等は、作業者130の安全と想定されるため、異常値が小さいと判断することができる。また、例えば処理部113は、作業現場の外気温(環境データ)が上昇し40°Cを一分間(第1閾値)越えて、且つ生体データの脈拍が80回/分(第1閾値)を超えている場合は、脱水症状の可能性が高いため、異常値が大と判断する。さらに処理部113は、加速度データが第1閾値を超え且つ脈拍データも第1閾値を超えた場合には、落下事故に相当する事故と想定して、異常値が大と判断することができる。
【0032】
異常値が小の場合(ステップS104)には、処理部114が、作業者130本人に血圧が高いとか、湿度が高く粉塵が多い環境になった旨を装着装置141〜145に通知する。すると装着装置141〜145のバイブレータが振動し、アラームが鳴り、又は表示画面に注意喚起が表示される。
【0033】
また、処理部113が作業現場の監督者131に異常を知らせる場合には、監督者131が所持するパソコン又は通信端末162に、どの作業者130が、どこで、どのような異常を検知しているか、などの情報を送り、監督者131に異常の確認を促す。通信端末162がデジタルサイネージ装置100の第2通信部112に近距離無線通信及びインターネット160を介して繋がることにより、作業現場の監督者131が一時的に現場を離れたとしてもすぐに異常を感知できる。さらに、異常はインターネット160を介して管理サーバ161に伝えられても良い。
【0034】
異常値が大の場合(ステップS105)には、作業現場の監督者131及び作業者130本人に通知すると共に、デジタルサイネージ装置100の表示画面111に異常が生じている旨を表示する。作業現場の監督者131及び作業者130本人への通知はステップS104と同じである。ステップS105では、これに加えて、
図5(b)に示されるように、表示画面111に異常が生じている旨が表示される。
【0035】
図5(a)は、表示画面111の通常表示である。
図5(a)は通常表示の例であり、道路で水道工事を行っている場合に、表示画面111に工事の内容を示す表示を行っている。
図5(b)は、表示画面111の異常発生時の表示である。異常値が大であるため、助けが必要であると考えられる。このため、作業現場の監督者131及び作業者130本人への通知のみではなく、
図5(b)に示されるように、処理部113は、デジタルサイネージ装置100の付近で働く他の作業員及び通行者等に救急車を呼んでもらう等の助けが必要な旨を表示画面111に表示することができる。
図5(b)の例では、「怪我人発生」の事故内容、救急車を呼んでほしいとの依頼内容、救急車を呼ぶ際に必要となる現在地の住所が示されている。
【0036】
ステップS106では、作業者130の安否が確認され、又は作業者130が救助される。ステップS104からステップS106に至った場合には、作業現場の監督者131及び作業者130本人により異常値の認識が確認され、異常に対する対応が取られる。また、ステップS105からステップS106に至った場合には、救急車が呼ばれる等により作業者130が救助される。
【0037】
デジタルサイネージシステム10では、作業者130が身に着けるセンサーとデジタルサイネージ装置100との間の作業者データの送受信に近距離無線通信が用いられることにより通信の電力消費量が小さくなるため第1通信部151と第2通信部112との間の常時接続又は頻繁に通信を行うことができ、これにより異常を素早く発見し、異常に対して迅速に対処することができる。また、デジタルサイネージシステム10は、インターネット160に接続されていなくても異常を発見することができるため、通信環境の悪い地域等においても用いることができる。さらに、デジタルサイネージシステム10では、既存のデジタルサイネージ装置100を利用するものであるためシステム導入が容易であり、作業者データの分析もデジタルサイネージ装置100を利用し、複雑な操作が省かれるため使用も容易である。
【0038】
また、デジタルサイネージシステム10では、デジタルサイネージ装置100が作業者130から作業者データの受信を開始した時を出勤時とし、作業者データの受信を終了したときを退勤時として記憶部114に記憶させることにより、作業者130の勤務管理をすることができる。
【0039】
(第2実施形態)
デジタルサイネージシステムでは、複数のデジタルサイネージ装置100を含み、又は中継器を用いて、作業現場が広範囲に渡る場合に対応しても良い。以下に、複数のデジタルサイネージ装置100及び中継器を含むデジタルサイネージシステム20について説明する。
【0040】
<デジタルサイネージシステム20の構成>
図6は、デジタルサイネージシステム20の概略構成図である。
図6では、デジタルサイネージ装置100a、デジタルサイネージ装置100b、及び中継器101が示されている。デジタルサイネージ装置100a及びデジタルサイネージ装置100bの構成はデジタルサイネージ装置100と基本的には同じであるが、デジタルサイネージ装置100aは他のデジタルサイネージ装置100bに接続される点で、デジタルサイネージ装置100bは他のデジタルサイネージ装置100aに接続されると共にインターネット160に接続されない点で、デジタルサイネージ装置100とは異なっている。さらにデジタルサイネージシステム20では、近距離無線通信を中継する中継器101が用いられており、これによって、作業者130が身に着ける第1通信部151とデジタルサイネージ装置の第2通信部112との通信可能距離が延ばされている。
【0041】
デジタルサイネージシステム20では、デジタルサイネージ装置100aがインターネット160を介して管理サーバ161に接続されて管理され、デジタルサイネージ装置100bはデジタルサイネージ装置100aを介して管理サーバ161に管理される。デジタルサイネージシステム20では、デジタルサイネージ装置100aが作業者データを収集し、分析し、異常を発見し、作業者130本人、監督者131等に連絡を行う。
【0042】
図7は、デジタルサイネージシステム20の実施例である。
図7では例として大規模な建設現場の一部が示されている。デジタルサイネージ装置100aは、例えば建設現場に隣接する歩道に面するように配置されており、歩行者等に工事の概要等の表示を行っている。また、デジタルサイネージ装置100bは、例えば作業現場内に配置され、作業者130等に作業工程、安全確認表示等がなされている。また、デジタルサイネージ装置100a及びデジタルサイネージ装置100bから離れた位置に中継器101が配置されている。中継器101は作業現場全体が近距離無線通信の通信可能範囲となるように、デジタルサイネージ装置100a及びデジタルサイネージ装置100bに対して適切な距離だけ離れるように配置されている。
【0043】
また、位置センサー154として、近距離無線通信により情報のやり取りを行うICタグが用いられても良い。この場合、例えば、作業現場の入り口に配置されるゲート171に位置センサー154を検出する検出器(不図示)を配置する。検出器は、例えば位置センサー154に所定の電波を発する発振器と、ICタグからの電波を受信する受信機を含み、作業者がゲート171を通過した場合に信号を検出することができる。これにより、作業者130の作業現場への入場及び退場を管理することで、作業者130の勤務を管理することができる。
【0044】
デジタルサイネージシステム20では、デジタルサイネージシステム10と同様にデジタルサイネージ装置100aで作業者130の健康管理及び安全管理を行い、異常発生を素早く把握することができ、迅速に対処することができる。また、複数のデジタルサイネージ装置100及び中継器101等を用いることにより、作業現場が広範囲である場合でも、作業現場全体を近距離無線通信の通信可能範囲にすることができる。
【0045】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。また、各実施形態の特徴を様々に組み合わせて実施することができる。