【解決手段】遠位端と近位端とを有し長尺のリード部3と、リード部の遠位端に配され体内で電気刺激をするための電極を有し体内に配置可能な電極部10と、リード部の近位部分に配されて所定の電気刺激用パルスを生成して前記電極部へ出力するパルス発生器30に接続可能なアダプタ39とを備え、リード部が、体内に配置されるリード部における領域の少なくとも一部に配され、リード部において体外に配置される領域における前記リード部の軸方向位置変動の電極部への伝達を緩和する外力緩和構造を備える。
前記外力緩和構造として、前記リード部において体外に配置される領域と体内に配置される領域との境界から前記電極部に至るまでの範囲の少なくとも一部において前記リード部が屈曲して体内で拡径するように変形可能な変形部を有することを特徴とする請求項1記載の医療用電気刺激電極。
前記規制部が、前記変形部が内部に貫通する操作シースとされるか、または、前記変形部の外套管内部に挿入された芯状部とされて、前記電極の体内挿入後に近位端側に移動可能とされていることを特徴とする請求項4記載の医療用電気刺激電極。
前記リード部は、体内に配置された前記電極部を体内で移動させるための力を体外から前記電極部へ伝達するために前記リード部の全体のうち体内に配置される領域に設定された調整力伝達部と、前記調整力伝達部と前記電極部との間に設定され前記調整力伝達部よりも柔軟な柔軟部と、を有し、
前記変形部が前記柔軟部に設けられることを特徴とする請求項5記載の医療用電気刺激電極。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る医療用電気刺激電極および医療用電気刺激装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における医療用電気刺激電極および医療用電気刺激装置を示す模式図であり、変形部40を操作シース52から移動した状態(a)、変形部40を操作シース52に収納した状態(b)、
図2は、本実施形態における医療用電気刺激電極を示す部分断面図であり、
図3は、本実施形態における変形部および規制部を示す模式図であり、
図4は、本実施形態における操作シース52端部52a付近を示す断面図であり、
図5は、本実施形態における医療用電気刺激電極の電極部を示す正面図であり、
図6は、本実施形態における電極部が患者に取り付けられている状態を示す模式図であり、図において、符号1は、医療用電気刺激装置である。
【0022】
本実施形態における医療用電気刺激装置1は、
図6に示すように、患者の神経に対して電気的刺激を印加することによって治療を行う装置である。一例として、本実施形態では、患者の迷走神経Nvに対して電気的刺激を印加するための装置が示されている。
【0023】
本実施形態における医療用電気刺激装置1は、
図1に示すように、血管内に留置される医療用電気刺激電極2と、医療用電気刺激電極2を介して血管内の留置部位に電気的刺激を印加するためのパルス発生器30とを備える。
【0024】
医療用電気刺激電極2は、
図1,
図2に示すように、リード部3と、電極部10と、リード部3が挿通された操作シース52及び回収用シース60とを備える。また、本実施形態の医療用電気刺激電極2は、電極部10の留置目標部位まで電極部10を案内するための筒状のイントロデューサーに取り付け可能である。
【0025】
リード部3は、電極部10を所定の留置位置まで案内するための可撓性の長尺部材である。本実施形態では、リード部3の両端のうち、電極部10が配されている側がリード部3の遠位端であり、リード部3の両端のうち、電極部10が配された端と反対側の端が近位端である。以下、本明細書では、医療用電気刺激電極2における遠位側と近位側とは、リード部3の遠位端と近位端とを基準として示されている。
【0026】
リード部3は、
図2〜
図4に示すように、内筒部4と、配線部6と、芯材部9とを有する。リード部3においては、筒状部材とされる内筒部4の内部に、配線部6と、芯材部9とが軸方向に沿って延在するように収納されている。
【0027】
内筒部4は、
図2〜
図4に示すように、電極部10とパルス発生器30側とを繋ぐ柔軟な筒状部材である。内筒部4の外径は、患者の血管の内径よりも小さい。リード部3の遠位部分の一部(
図1に示す領域3A)は、患者の体内に配置されることが想定された領域である。内筒部4の近位部分の一部(
図1に示す領域3B)は、患者の体外に露出してパルス発生器30への接続や電極部10の位置調整のための操作に使用されることが想定された領域である。
【0028】
リード部3には、患者の体内に配置される領域3Aと患者の体外に配置される領域3Bとがそれぞれ設定されているが、各領域の境界部位の位置は特に限定されない。境界部位の好ましい位置は、電極部10が所望の留置部位に留置されたときに、患者の体外に配置される領域3Bが患者の体内に入り込まないように、患者の固体差も考慮して設定される。 内筒部4は、外径φ0.6mm以上3mm以下、全長500mm程度の樹脂製の筒状部材、たとえばポリウレタン製、シリコーン製、ポリアミド製のチューブからなる。
【0029】
内筒部4には、その外側に内筒部4と同心状とされる筒状の操作シース52が設けられ、内筒部4は、リード部3の全長に延在して電極部10およびパルス発生器30側とに接続固定されているのに対して、操作シース52は、少なくとも遠位部分の一部(領域3A)を覆う長さに設けられていればよい。
内筒部4は、その内部に、配線部6と、芯材部9とが軸方向に沿って延在する。
操作シース52は、この内筒部4に対して軸方向に移動可能として組み合わされており、遠位側の端部42aが近位側へと移動してその内側に位置して対応する軸方向部分の内筒部4が露出可能となっている。
【0030】
本実施形態では、操作者が電極部10を体内に挿入する際には、
図1(b)に示すように、操作シース52が体内に配置されるリード部3の領域3Aの全領域を覆うことで、リード部3は全長にわたって概直線状である領域とされ、操作者が電極部10を体内に挿入するあるいは電極部10の位置を調整するための力量を電極部10まで好適に伝達するための調整力伝達部となっている。
【0031】
リード部3の体外に配置される領域3Bでは、その全長が調整力伝達部として、中心線が直線状となるように、内筒部4である樹脂製の筒状部材またはこの筒状部材の内部に通された可撓性を有するSUS、NiTi等の芯材部9が設けられている。
【0032】
リード部3のうち体内に配置される領域3Aには変形部40が設けられる。操作者が電極部10を体内に挿入する際には、変形部40が操作シース52に収納されて、変形部40および操作シース52に外力がかかっていない状態で中心線が直線状となるように調整力伝達部となっている。また、電極部10の位置設定を終了したら、変操作シース52が形部40を露出するように移動されて、変形部40が体外に配置される領域3Bにおけるリード部3における軸方向位置変動の電極部10への伝達を緩和する外力緩和構造として、屈曲してリード部が中心線に対して拡径するようになっている。このように変形可能な変形部40と、規制部50としての操作シース52とにより、電極部10の挿入時には変形部40が体内に挿入可能なように変形が防止される。
【0033】
具体的には、上記の樹脂製とされる筒状部材である操作シース52および内筒部4と、芯材部9とにより、これらの調整力伝達部と外力緩和構造とを構成するようになっている。
【0034】
本実施形態では、変形部40としては、操作シース52の規制がなくなった状態で、拡径する方向にリード部3の軸線(中心線)そのものが屈曲するように内筒部4および芯材部9によって遠位側領域3Aに形成されている。また、この変形部40は、操作シース52の内部に収納されている状態では、操作シース52の規制力が打ち勝って、調整力伝達部として中心線が直線状となっている。
また、変形部40としては、リード部3のほぼ全長における調整力伝達部と電極部10との間に設定され、操作シース52が内筒部4を覆っていない状態では調整力伝達部よりも柔軟な柔軟部とされている。
【0035】
本実施形態における規制部50としては、
図1(b)に示すように、規制部50としての操作シース52を遠位側に移動させ、外力がかかっていない状態で、操作シース52が変形部40における変形しようとする力に打ち勝ってリード部3の中心線が直線状となるように付勢する調整力伝達部とされている。
なお、
図1(a)においては、規制部50としての操作シース52を近位側に移動させ、操作シース52による規制を外して変形部40が変形した外力緩和構造としての状態を示すとともに、
図4においては、規制部50としての操作シース52の端部52aを近位側に移動させた状態での操作シース52端部52a付近を拡大して示している。
【0036】
変形部40としては、
図1(a)に示すように、内筒部4および芯材部9によって、規制部50としての操作シース52の規制がなくなり屈曲して拡径した状態で、調整力伝達部としての規制部50と比較して、リード部3の中心線に対して、拡径し軸方向に周回する形状、例えばコイル状となるように設定されている。
変形部40におけるこの拡径形状は、内筒部4および芯材部9に対して、芯材部9がSUSワイヤの場合はあらかじめその形状を記憶させる、もしくは、芯材部9がNiTiワイヤであれば形状記憶効果をもたせて拡径形状に形成するとともに、規制部50としての操作シース52に挿入して操作シース52に沿った形状とすることができるように構成されている。
【0037】
変形部40は、電極部10の近傍に設けられその軸方向位置としては、体外に配置される領域3Bにおけるリード部3の軸方向位置変動の電極部10への伝達を緩和する外力緩和構造として作用可能な範囲とされる。つまり、体外側である近位側にリード部3が引っ張られた際に、自身の屈曲状態を直線状に近づけることでその変位を緩和するように折れ曲がった状態とされている。
【0038】
また、変形部40は、血管内部において拡径屈曲変形して血管壁を内部から外側に向かって押圧し、この状態で体外に配置される領域3Bにおけるリード部3の軸方向位置変動の電極部10への伝達を緩和可能とされるために、血管内部において拡径屈曲変形した状態で、変形部40が血流阻害を最小に抑えることが求められる。このため、血管壁を押圧するとともに、血液の流れを阻害しないように血管壁に沿った螺旋状になっていることが好ましい。
【0039】
なお、拡径した状態である変形部40で作られるループの外形における外形径寸法C4は、後述する電極部10の径方向寸法に対して80±10%程度の範囲、または適用される血管径の120%±10%として設定されることができる。
この変形部40で作られるループの外形における外形径寸法C4は、
図1(a)に示すように、領域3A内で遠位側端部から近位側までほぼ一定とすることもできるが、例えば、この外形径寸法C4は、
図23(a)に示すように、体外側である近位側端部で、電極部10の径方向寸法の80±10%程度とし、電極部10側である遠位側で、電極部10の径方向寸法の70±10%程度として、近位側から遠位側に縮径するように設定してもよい。
この例においても、操作者が電極部10を体内に挿入する際には、
図23(b)に示すように、操作シース52が体内に配置されるリード部3の領域3Aの全領域を覆うことで、リード部3は全長にわたって概直線状である領域とされ、操作者が電極部10を体内に挿入するあるいは電極部10の位置を調整するための力量を電極部10まで好適に伝達するための調整力伝達部となっている。
【0040】
また、変形部40で作られるループの外形における外形径寸法C4は、
図24(a)に示すように、領域3A内で体外側である近位側端部のみを変形部40の最大寸法となる電極部10の径方向寸法の80±10%程度とし、この部分以外から遠位側は電極部10の径方向寸法の70±10%程度として設定することなどもできる。
このように引き抜き力がかかる側の端部である近位側端部において外形径寸法C4を大きく設定することで、体外に配置される領域3Bにおけるリード部3の軸方向位置変動の電極部10への伝達を緩和する能力をより確実に呈することが可能となるとともに、血管内壁に対する負荷を低減することもできる。
この例においても、操作者が電極部10を体内に挿入する際には、
図24(b)に示すように、操作シース52が体内に配置されるリード部3の領域3Aの全領域を覆うことで、リード部3は全長にわたって概直線状である領域とされ、操作者が電極部10を体内に挿入するあるいは電極部10の位置を調整するための力量を電極部10まで好適に伝達するための調整力伝達部となっている。
【0041】
あるいは、外形径寸法C4は、体外側である近位側端部で、電極部10の径方向寸法の70±10%程度とし、電極部10側である遠位側で、電極部10の径方向寸法の80±10%程度として、遠位側から近位側に縮径するようにしてもよい。
このようにすることで、血管径の異なる血管、例えば上大静脈から内頚静脈にわたって変形部40が入り込んでも血管に沿った変形をすることが容易になる。
【0042】
さらに、変形部40の軸方向長さとしては、体外におけるリード部3の軸方向における引っ張り変位が10cmであった場合にこれを緩和して、電極部10に伝達しないように設定することが好ましい。
つまり、操作シース52によって規制された状態で外力緩和性を持たせるには、変形部40の長さを、体動などによる外力を吸収するのに十分な長さに設定する。具体的には、変形部40の軸方向長さは15±5cm程度に設定されることができ、想定する引っ張り変位量よりも長く設定することが望ましい。また、変形部40は、ショア硬度20D以上40D以下程度の材質で構成することができる。
【0043】
変形部40において、外力緩和性を得る長さは、電極支持体25Aの留置場所によって異なる。例えば、電極部10を内頚静脈から埋植して、上大静脈に留置する場合には、変形部40を含む柔軟性を有する部分の長さを、50mm以上200mm以下程度にすればよい。同じく電極部10を、鎖骨下静脈から埋植する場合には、50mm以上250mm以下程度にすればよい。なお、外力を吸収するためには、変形部40を含む柔軟性を有する部分が長い方がより好ましい。例えば、変形部40を含む柔軟性を有する部分は、電極部10を内頚静脈、鎖骨下静脈のいずれから埋植する場合にも、100mm以上とする方がより良好に外力を吸収できる。
【0044】
変形部40に対する形状設定は、あらかじめ内筒部4に拡径形状を形成することもでき、また、あらかじめ芯材部9に拡径形状を形成することもでき、また、芯材部9および内筒部4の両方に拡径形状を形成することもできる。
【0045】
変形部40においてコイル状をなす屈曲変形形状におけるコイルの巻き方向はどちらでもよい。また、変形部40においてコイル状をなす領域において、時計回りの巻きと反時計回りの巻きとが同数となるように途中で巻き方向が変えられていると、外力緩和構造である変形部40が引っ張られたときに配線部6がキンクしにくい。
【0046】
配線部6は、後述する第一接点電極21に接続される第一配線7と、後述する第二接点電極22に接続される第二配線8とを有する。第一配線7及び第二配線8は、いずれも後述するアダプタ39を介してパルス発生器30に接続可能である。第一配線7及び第二配線8の構成は導体であれば特に限定されない。
【0047】
芯材部9は、リード部3の全長に亘る領域3Aおよび領域3Bに延在するものとされ、芯材部9は、
図2に示す近位端チップ11と接続されていてもよい。この領域3Bにおいて、外力がかかっていない状態で直線状となる調整力伝達部を構成するとともに、上述したように領域3Aにおいて変形部40の変形を記憶するものとされる。
芯材部9は、たとえば、SUSからなる撚り線とされることができるが、体内に挿入されたリード部3としての緩やかな変形に追従でき、かつ、軸方向に作用される力を伝達可能であり、かつ、変形部40の変形を記憶再現可能なものであれば、その材質は限定されるものではない。
芯材部9によって、体外領域3Bでリード部3が引っ張られるような急激な位置変動が発生した場合であっても、外力緩和構造としての変形部40が構成されていることで外力を緩和して、電極部10における体内での位置変動が発生することを防止する。
【0048】
アダプタ39は、
図1に示すように、パルス発生器30に対して着脱可能な部材であり、第一配線7および第二配線8をパルス発生器30に接続するために使用可能である。なお、本実施形態ではアダプタ39が設けられていなくてもよい。この場合、第一配線7および第二配線8はパルス発生器30に直結されている。
【0049】
電極部10は、
図1,
図2に示すように、リード部3の遠位端に配されている。電極部10の使用時には、電極部10は、
図6に示すように、電気刺激を与える対象となる組織(本実施形態では迷走神経Nv)に近接した位置に留置される。
電極部10は、
図2,
図5に示すように、近位端チップ11と、弾性ワイヤ部12と、遠位端チップ28と、神経刺激電極2aとを備える。
【0050】
近位端チップ11は、リード部3の遠位端に固定されている。近位端チップ11には、弾性ワイヤ部12を構成する各弾性ワイヤの近位端が固定されている。近位端チップ11の内部には、第一配線7および第二配線8が挿通されている。
近位端チップ11の材質は、生体適合性が高いことが好ましいが特に限定されない。
【0051】
弾性ワイヤ部12は、神経刺激電極2aを有している弾性ワイヤ(第一弾性ワイヤ13)と、神経刺激電極2aを有していない他の弾性ワイヤ(第二弾性ワイヤ23,第三弾性ワイヤ24,第四弾性ワイヤ25,第五弾性ワイヤ26,第六弾性ワイヤ27)とを備える。弾性ワイヤ部12は、これらの各弾性ワイヤによって全体として球形、紡錘形、長球形、楕円球形の輪郭をなすバスケット状とされている。
【0052】
本実施形態では6本の弾性ワイヤによって弾性ワイヤ部12が構成されている。弾性ワイヤ部12を構成する弾性ワイヤの本数は、2以上であればよい。また、弾性ワイヤ部12を構成する弾性ワイヤの本数が3以上であると血管軸に沿って弾性ワイヤ部12を安定して留置できるのでさらに好ましい。また、弾性ワイヤ部12を構成する弾性ワイヤの本数が多い方が血管内壁に対するきめ細かな位置決めがしやすくなるが、弾性ワイヤ部12を構成する弾性ワイヤの数が極端に多いと血管への留置及び除去が困難になる可能性も考えられる。
【0053】
第一弾性ワイヤ13は、球や楕円球(ラグビーボール状)の外面に倣った湾曲形状をなしている。第一弾性ワイヤ13は、第一弾性ワイヤ13の形状を規定する芯線14と、芯線14を被覆する絶縁被覆15とを有する。
芯線14及び絶縁被覆15の構成は特に限定されない。一例を挙げると、芯線14は、初期の湾曲形状への復元力に優れる材料、たとえば形状記憶合金や超弾性合金等、を材料として使用可能である。また、絶縁被覆15は、生体(本実施形態では血管内壁)に接するので、生体適合性に優れた絶縁性部材を材料として使用可能である。
【0054】
第一弾性ワイヤ13に配された神経刺激電極2aは、第一弾性ワイヤ13における中央部近傍に配された白金製のプラス側電気刺激電極(以下「第一接点電極21」と称する。)と、第一弾性ワイヤ13における中央部近傍において第一接点電極21から離れた位置に配された白金製のマイナス側電気刺激電極(以下、「第二接点電極22」と称する。)とを備える。
【0055】
第一接点電極21は、芯線14と絶縁被覆15との間で第一配線7の遠位端に固定されている。第一接点電極21の形状については特に限定されないが、たとえば、第一接点電極21は、φ0.8mm、長さ4mmの円筒形状をなした白金イリジウム合金製であってもよい。第一接点電極21は、第一弾性ワイヤ13の外面のうち、弾性ワイヤ部12が血管内に留置されたときに血管内壁に第一接点電極21が接触可能な位置に配置されている。
【0056】
第二接点電極22は、芯線14と絶縁被覆15との間で第二配線8の遠位端に固定されている。第二接点電極22は、第一接点電極21に対して、最短距離で3〜8mm程度離れている。第二接点電極22の形状については特に限定されないが、たとえば、第二接点電極22は、φ0.8mm、長さ4mmの円筒形状をなした白金イリジウム合金製であってもよい。第二接点電極22は、第一弾性ワイヤ13の外面のうち、弾性ワイヤ部12が血管内に留置されたときに血管内壁に第二接点電極22が接触可能な位置に配置されている。
【0057】
第二弾性ワイヤ23と、第三弾性ワイヤ24と、第四弾性ワイヤ25と、第五弾性ワイヤ26と、第六弾性ワイヤ27とは、
図2,
図5に示すように、互いに略同形同大である。
【0058】
第二弾性ワイヤ23と、第三弾性ワイヤ24と、第四弾性ワイヤ25と、第五弾性ワイヤ26と、第六弾性ワイヤ27とは、神経刺激電極2aを有していない点及び第一配線7及び第二配線8が通されていない点において第一弾性ワイヤ13と構成が相違している。
【0059】
また、本実施形態では、第二弾性ワイヤ23と、第三弾性ワイヤ24と、第四弾性ワイヤ25と、第五弾性ワイヤ26と、第六弾性ワイヤ27とは、第一弾性ワイヤ13の芯線14と同形同大の芯線(不図示)を有していることにより、第一弾性ワイヤ13と同じ湾曲形状を有している。
【0060】
弾性ワイヤ部12は、第一弾性ワイヤ13,第二弾性ワイヤ23,第三弾性ワイヤ24,第四弾性ワイヤ25,第五弾性ワイヤ26,及び第六弾性ワイヤ27によって、リード部3の中心線C1を回転中心として60度おきの回転対称形をなすバスケット状(籠状)とされている。
【0061】
遠位端チップ28は、第一弾性ワイヤ13,第二弾性ワイヤ23,第三弾性ワイヤ24,第四弾性ワイヤ25,第五弾性ワイヤ26,及び第六弾性ワイヤ27の各々の遠位端に固定されている。遠位端チップ28は、リード部3の中心線C1を遠位側へ延長した延長線C2上に、各弾性ワイヤによって保持されている。遠位端チップ28は、弾性ワイヤ部12が拡げられた拡張状態であっても畳まれた縮小状態であっても上記の延長線C2上にある。
【0062】
パルス発生器30は、定電流方式又は定電圧方式のバイフェージック波形群を、所定の間隔を有して生成する。例えば、周波数20Hz、パルス幅50〜400μsecのプラス数ボルトからマイナス数ボルトのバイフェージック波形が、パルス発生器30によって1分間あたり3〜20秒間発生する。本実施形態のパルス発生器30は迷走神経Nvの刺激に適したパルスを生成する。
パルス発生器30の構成は特に限定されるものではなく、医療用電気刺激電極2に接続可能な構成が適宜選択されて採用されてよい。
【0063】
次に、本実施形態における医療用電気刺激電極2及び医療用電気刺激装置1の作用について説明する。
図6は、本実施形態の医療用電気刺激装置1が患者に取り付けられている状態を示す模式図である。
図7は、医療用電気刺激電極2の作用を説明するための図である。
【0064】
本実施形態における医療用電気刺激電極2及び医療用電気刺激装置1の使用時には、電極部10がまず留置対象部位まで案内される。本実施形態では、電極部10は上大静脈Svc内の所定位置まで案内される。
血管への電極部10の挿入のためにイントロデューサーを用いてもよい。この場合、医療用電気刺激電極2のリード部3及び電極部10を内部に収容可能であって且つ電極部10の留置位置までの血管の内径を考慮してイントロデューサーの内径及び外径があらかじめ選択される。
また、規制部50となる操作シース52は、電極部10側つまり近位端チップ11近傍に位置する変形部40を完全に覆う状態とされており、変形部40に対応する部分もリード部3の中心線が直線状となるように付勢する調整力伝達部とされている。
【0065】
上大静脈Svcの所定位置に医療用電気刺激電極2を大まかに設置後、イントロデューサーから電極部10を出し、血管内壁に電極部10を接触させる。電極部10は、イントロデューサーの内部においてたたまれた状態から、球形、長球形、あるいは紡錘形となる初期のバスケット状の形状に弾性ワイヤ部12が復元しようとする。弾性ワイヤ部12を構成する各弾性ワイヤ(第一弾性ワイヤ13,第二弾性ワイヤ23,第三弾性ワイヤ24,第四弾性ワイヤ25,第五弾性ワイヤ26,及び第六弾性ワイヤ27)は、イントロデューサーから出た後、血管内壁に接触して血管内壁を付勢する。
【0066】
第一弾性ワイヤ13に配された第一接点電極21及び第二接点電極22は、弾性ワイヤ部12を構成する各弾性ワイヤによって、血管内壁に接した状態で保持される。
また、操作シース52のうち体内に配置される領域3Aの近位端はある程度体外に出ており、この部分を操作者が手に持って操作シース52を軸方向に進退させたり回転させたりすることによって、電極部10の位置を調整することができる。たとえば、医療用電気刺激電極2の留置作業を行う使用者は、体外から医療用電気刺激電極2を操作し、血管軸方向と血管軸回りの回転方向に電極部10の位置を調整する。
【0067】
医療用電気刺激電極2の留置作業は、パルス発生器30から電気刺激を発生させながらおこなうこともできる。
【0068】
心電計などにより得られる心拍数をモニターすることにより、第一接点電極21と第二接点電極22とが迷走神経Nvに向かう位置となったときに最も顕著に心拍数の低下が確認できる。心拍数の低下が顕著となる位置が、最適な刺激位置である。なお、本実施形態において電極部10が留置される好適な位置は、上大静脈Svcの背側おいて心臓に至る迷走神経Nvが上大静脈Svcと併走している部分である。
【0069】
電極部10の位置調整が完了したら、規制部50である操作シース52をリード部3に沿って近位側に移動させて、規制部50としての操作シース52の端部42aを変形部40よりも近位側に移動させ変形部40に対応する内筒部4が露出した状態とする。同時に、近位側3Bのリード部3を体内に移動させて、変形部40が軸方向に拡径するように変形させる。この拡径屈曲はあらかじめ設定されていた変形部40の内筒部1および芯材部9によって記憶された形状に基づいて変形する。
【0070】
これにより、変形部40が、
図7に示すように、所定寸法となるように屈曲拡径して血管壁に接触して血管内壁を付勢する。
この電極留置状態で、パルス発生器30を作動させて電極部10から電気刺激を発生させる。
【0071】
図1では、変形部40として、対向して血管壁を押圧する3対の螺旋状付勢部分を形成するために1つのループを有している構成を例示しているが、かかる付勢部分は血管の径方向および/または流路(長手)方向に設ける個数は限定されない。この例でも、変形部40は、刺激用電極10の近傍に設けるのが好ましい。
これにより、変形部40は、血管内壁に対し幅方向に3箇所の対向する部位で弾性力が働くので、その付勢力によってリードアンカーとしての移動防止効果が期待できる。特に、電極部10の血管の流路方向の下流方向のみならず上流方向へのアンカー効果が働くため、電極部10の移動防止効果を呈することができる。
【0072】
電極留置期間中に、患者の体動あるいは医療従事者や患者が不意に体外のリード部3を引っ張るなどして内筒部4を動かすと、内筒部4において操作者が持っている部分あるいは体内に入っている最浅部分付近から、遠位側、近位側へそれぞれ力量が伝達される。
【0073】
内筒部4において変位部分から遠位側へ伝わる力量は、血管内で電極部10を移動させる力量となる。
【0074】
本実施形態では、電極留置期間中において、操作者が手に持って操作している部分やあるいは患者の動きで変位が発生する体内に入っている最浅部分付近と、電極部10と、の間に、コイル状に成形された外力緩和構造としての変形部40が存在しているので、コイル状の部分が軸方向に柔軟に変形して、発生したリード部3の軸方向変位の電極部10への伝達を緩和する。さらに、電極留置期間中において、操作者または患者に起因して内筒部4の中心線(リード部3の中心線C1)を回転中心として内筒部4が回転させたときにも、ねじれはリード部3のコイル状の変形部40が径方向に変形することによって緩和されて、この回転が電極部10には伝達せず、電極部10は動かない。
【0075】
血管内の所望の位置に操作者が電極部10を留置した後、外力がリード部3に作用した場合には、コイル状になっている変形部40(外力緩和構造)が変形する。
このコイル状の変形部40が変形することで 体外から伝達してきた変位力は減衰され、電極部10を移動させるのに必要な力量に比して十分に小さいレベルまで緩和されているので、電極部10は移動せずに留置位置に保持される。
【0076】
また、電極部10の留置後に患者が動いたりリード部3に触れたりした場合に、リード部3のコイル状の変形部40を介して電極部10側へ力が伝わる可能性があるが、変形部40が、柔軟に変形してこの力を吸収するので、電極部10は血管内で移動することなく保持される。
【0077】
以下、本技術の背景について説明する。
【0078】
近年、心疾患の治療法の分野において、自律神経に対して直接的に電子的介入を加える神経刺激装置を用いることにより、循環調節異常を是正し、予後を改善できることが知られるようになった。
【0079】
神経刺激治療において、本医療用電気刺激電極2は電極全体を体内に植え込む長期神経刺激システムとすることもできるが、短期神経刺激を行うこともできる。短期間の神経刺激を行う場合は、電気刺激装置となるパルス発生器30は体外設置とし、医療用電気刺激電極2は短期治療後、抜去することができる。
【0080】
本医療用電気刺激電極2を用いることにより、急性心筋梗塞時の再灌流治療後に発生する心臓リモデリング現象を低減することができる。迷走神経Nvを電気的に刺激し、再灌流治療後に心拍数低下を一定期間継続することにより、心臓負荷を減少させ、また、抗炎症性サイトカインの増加により、リモデリング発症を低減することができる。一定期間治療後は医療用電気刺激電極2を生体より抜去し、治療を完了することができる。
【0081】
本医療用電気刺激電極2は、治療後に生体より抜去する際に、近位端側から引き抜くだけで、拡径した変位部40が縮径して内筒部4の軸線に沿った形状に向けて変形が減少するために、容易に抜管することができる。また、処置後に操作シース52を遠位側に移動させて変形部40の変形を元に戻して挿入前の形状に復帰させてから、電極部10を抜去することもできる。いずれにしても、近位側のリード部3を引き抜く動作によって血管内壁に対する影響を解除することができる。
【0082】
本実施形態の医療用電気刺激電極2及び医療用電気刺激装置1によれば、第一接点電極21及び第二接点電極22の位置が所望の留置位置からずれにくい。そのため、本実施形態の医療用電気刺激電極2及び医療用電気刺激装置1は、電極部10の位置調整が容易あり、また電極部10の位置調整後において迷走神経Nvに対して適切な位置から電気刺激を与えることができる。
【0083】
本実施形態の医療用電気刺激電極2において、外力緩和構造として、リード部3において体外に配置される領域3Bと体内に配置される領域3Aとの境界から電極部10に至るまでの範囲の少なくとも一部においてリード部3が屈曲して体内で拡径するように変形可能な変形部40を有することにより、体外あるいは体表面付近で発生したリード部3における位置変動を電極部10に伝達することなく緩和するように、リード部3の長さとして余裕を持った状態として電極部10を体内で位置設定することが可能となる。
【0084】
本実施形態の医療用電気刺激電極2は、変形部40が屈曲して拡径しコイル状に変形可能とされることにより、発生したリード部3の長さ変動を拡径した部分が軸方向に延びることで吸収してリード部3の長さ変動に対する余裕を持った状態として体内で配置されることにより、リード部3の長さ変動を電極部10に伝達することなく緩和することが可能である。
【0085】
また、本実施形態の医療用電気刺激電極2において、電極部10の挿入時には変形部40が体内に挿入可能なように変形を防止する規制部50となる操作シース52を有することにより、電極部10の体内挿入後には操作シース52を引き抜く動作により、変形部40の屈曲変形が可能として外力緩和構造としての外力緩和能を呈する状態にするとともに、電極部10の体内挿入時あるいは、体内に配置された電極部10を体内で移動させるための力を体外から前記電極部へ伝達する際には、リード部3としての挿入力あるいは調整力を電極部10側に伝達することを可能として、これらを規制部である操作シース52の軸方向への動作だけで切り替えることができる。なお、操作シース52は、電極部10の設置位置が決まったのちに、ピールアウェイして取り除かれる。
【0086】
<変形例1>
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図8は、本変形例を示す模式図であり、内筒部4の変形部40内部から芯状部9Aが移動した状態(a)、内筒部4の変形部40内部に芯状部9Aが位置した状態(b)である。
【0087】
本変形例では、
図8に示すように、内筒部4と操作シース52とが二重管とされていない。
また、変形部40として拡径屈曲変形を記憶するのは内筒部4のみとされている。
【0088】
規制部50として、変形部40の変形を規制するのは内筒部4内に延在する芯状部9Aのみとされて、この芯状部9Aは、
図8(b)に示すように、操作シース52に対応する規制力を有する状態として変形部40に挿入されて調整力伝達部を形成しているとともに、
図8(a)に示すように、変形部40に対応する内筒部4内部から抜去されることで、変形部40の規制を解除して、拡径屈曲変形による血管内壁の押圧が可能とされている。
【0089】
本変形例では、電極部10の位置調整が完了したら、規制部50である芯状部9Aをリード部3に沿って近位側に移動させて、規制部50としての芯状部9Aの端部9Aaを変形部40よりも近位側に移動させた状態とする。
これにより、
図7に対応するように、変形部40が所定寸法として屈曲拡径して血管壁に接触して血管内壁を付勢する。
このような構成であっても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0090】
<変形例2>
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図9は、本変形例の構成を示す図である。
【0091】
本変形例では、
図9に示すように、変形部40の拡径形状が蛇行状とされている。
このような構成であっても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0092】
<変形例3>
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図10は、本変形例の構成を示す図である。
【0093】
本変形例では、
図10に示すように、変形部40の拡径形状が軸を含む平面方向に沿って周回する形状とされている。
このような構成であっても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0094】
さらに、本変形例では、変形部40として血管の内壁の一箇所に対して折り返される変曲部を有するループ形状が複数箇所として、血管内壁の少なくとも2箇所以上で接触する変曲部40を有するような屈曲形状となるように複数個のループを設けることができる。変形部40のループは1個でもよく、この場合、変形部40が拡径屈曲変形した際に畳まれて短縮するリード部3の長さが少なくてよいので、電極部10に対して変形部40の変形時に作用する引張力を減少させることができる。
あるいは、変曲部40を1セットの変曲部として、変曲部40が複数セットあってもよい。変曲部40が複数セットある場合には、それぞれのセットが例えば
図9に示したような変曲部形状であってもよいし、それぞれのセットで変曲部40の外径が異なるものであってもよい。
【0095】
また、複数個の弛み形状記憶部ループを設けた場合には、血管の長手方向に対しクッション性を向上し付勢部材(リードアンカー)の移動防止性を向上することができる。
【0096】
本実施形態の変形例3では、変形部40として、2以上の対向する血管内壁に対し付勢を与えるような拡張型としてのループ形状を複数有している。即ち、拡張型の弛み形状記憶部(変形部)40は、血管壁にリードが積極的に突っ張るように、血管の径方向(リードの長手方向に対し垂直な方法)に向けて2以上の部位に対し血管内径よりも幅広い長さ(たとえばバスケット状の電極と同じ径方向の幅長)のUの字、または部分的な楕円の形状となるように弾性部材を含んだ拡張型付勢構造を少なくとも1箇所以上有することが好ましい。
図10に示す例では、この対向する血管壁に当接する部分が、2対設けられた構成を例示している。
【0097】
なお、本実施形態においては、血管内の所望の位置で留まるために構成された超弾性ワイヤ、形状記憶合金などからなる付勢部材を1つ以上有し、付勢部材には、所望の位置へ設置するための導電性リードまたは絶縁性チューブが接続され、導電性リードまたは絶縁性チューブの血管内に留まる箇所に相当する留置部位は、適用血管の軸長よりも長く、挿通可能な操作シース52内への収容状態では操作シース52内の通路に沿って弛みが無い略線状にならうとともに、操作シース52からの開放状態では所要量の弛みが生じるような弛み形状記憶部(変形部)を有するカテーテルとすることもできる。これにより、導電性リードまたは絶縁性チューブは、血管内で適度な弛み(ゆるみ)量をもつように弛み形状記憶部が予め形付けられているため、操作シース52を抜去するなどして除去するのみで、術者の操作に依存せずに弛み具合を規定できるので、体内に導入したリードに対し適度な弛みを作ることが容易となる。よって、弛みを作る際の複雑な操作をなくして操作時間を短縮させることが可能となる。
【0098】
さらに、本実施形態におけるこの場合、複数箇所の弛み形状記憶部が設けられることができ、これにより、弛み形状記憶部が複数個所にあることで、クッション性が向上し、付勢部材(リードアンカー)の移動防止効果が期待できる。
【0099】
また、本実施形態において、弛み形状記憶部は、血管内壁に対し付勢する拡張型の形状を有することもできる。これにより、弛み形状記憶部が血管壁にリードが積極的に突っ張るように拡張することにより、付勢部材(リードアンカー)の移動防止を期待できる。
【0100】
なお、本実施形態において、医療用電気刺激電極2として、先端部に神経刺激用の電極をバスケット状に拡張状態で配置する刺激用ワイヤ(主に形状記憶部材および超弾性部材からなる)を設けたリードとすることも可能である。
この刺激用ワイヤが配置されるリード先端部の基端側近傍には、予め弛み(ゆるみ)が所要量且つループ状に弛むように形状記憶合金を含有させて形付けられた弛み形状記憶部(変形部)40として、導電性リード6および/または絶縁チューブ41が配置されることができる。ここで、導電性リードおよび絶縁性チューブの血管内に留まる箇所の長さは適用血管の軸長よりも長く、この長さの差分において弛み形状記憶部(変形部)40を設けることで、体内でリードに対し引っ張り力が働いた際には主に弛み形状記憶部の部分が伸長するようにする。リード外径寸法は、操作シース52内径の20%〜80%程度であることが望ましい。
【0101】
また、弛み形状記憶部(変形部)40は、挿通可能な操作シース52内への収容状態では操作シース52内の通路に沿って弛みが無い略線状にならう伸展状態(第1の形状)となり、操作シース52からの開放状態では所要量の弛みで所定の形状で縮む縮小状態(第2の形状)となる。
このようなカテーテルを体内に導入する際には、そのままの形態では血管内の所望の位置まで移動させにくいので、規制部50として、導電性リード6および/または絶縁チューブ41の外周に挿通されるカバー(操作シース)とされる操作シース52または、内腔に挿通するスタイレットのような芯状部9Aを内筒部4に収容させることより、弛み形状記憶部40を直線に近い状態にして所望の位置まで移動させる。
【0102】
その後、導電性リード6および/または絶縁チューブ41の外周に構成する操作シース52または、必要に応じて内腔に構成するスタイレット(芯状部)9Aを取り外した開放状態では、弛み形状記憶部40により自然とループが形成される。このような状態では、血管内で一定量の弛みを一定の領域に形成することができる。したがって、術者は一定量の弛みを確保することができ、画面上でも特定の視野範囲(刺激用ワイヤの近傍)でリードの弛みや引っ張り状態を確認できる。とくに、弛み部分としての変形部40を神経刺激用ワイヤの近傍に設けることで、刺激部位への引っ張りを確実に解消できる。
また、弛み形状記憶部40に弾性力が働いているので、体動の変化によってもリード全体の形状を殆ど変化させることなく(ランダムな形状変化をせず)ので、安定性が増す。
【0103】
さらに、本実施形態における変形部40としては、拡径した屈曲形状を形づくる際に、変形部40として、形状記憶合金を有する構成とすることで所望の形状にすることができるとともに、弾性部材を含有する構成とすることで、血管壁への一定の付勢力を得ることができる。この場合、操作シース52、あるいは、芯状部9Aを設けることなく、屈曲していない変形部40を調整力伝達部として体内に挿入し、その後、体内の温度であらかじめ記憶した形状に屈曲変形させて外力緩和構造として変形部40を用いることが可能となる。この場合、変形部40が含有する弾性部材を規制部50として利用し、さらに、変形部40における形状記憶合金を変形部40として上記の作用を呈することができる。また、規制部として操作シース52あるいは芯状部9Aを設けることが必要ないという効果を奏することができる。
【0104】
また、変形例3では、変形部40として血管壁を押圧する2つのループを有している例であるが、かかる付勢部分は血管の径方向および/または流路(長手)方向に1対以上であれば所定の複数設けてもよい。この例でも、弛み形状記憶部(変形部)40は、刺激用電極10の近傍に設けるのが好ましい。
これにより、弛み形状記憶部(変形部)40は、血管内壁に対し幅方向に少なくとも2箇所の対向する部位で弾性力が働く組が2組あるので、その付勢力によってリードアンカーとしての移動防止効果が期待できる。特に、電極部の血管の流路方向の下流方向のみならず上流方向へのアンカー効果が働くため、電極部10の移動防止効果を呈することができる。
【0105】
以下、本発明に係る医療用電気刺激電極の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0106】
図11〜
図17は、本実施形態における医療用電気刺激電極を示す図であり、本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、電極部2bの形状に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0107】
本実施形態における医療用電気刺激電極2は、
図11〜
図17に示すように、血管の内壁を通して電気刺激を与えるための刺激電極部10a、10bと、刺激電極部10a、10bに電気的に接続された後述する配線6(
図2参照)を挿通する線状のリード部3と、線状の弾性部材26A、26B、26Cによって一定の軸線C周りに略回転対称となる籠状に形成された電極支持体25Aと、リード部3が挿通された操作シース52及び回収用シース60とを備えている。
ここでは、リード部3に対する電極支持体25A側を先端側(遠位側)、電極支持体25Aに対するリード部3側を基端側(近位側)とそれぞれ称する。
【0108】
リード部3は、ポリアミド樹脂等の生体適合性を有する材料で管状に形成されたリード本体(外套部)4と、リード本体4の先端部に設けられた近位側交差ブロック22とを有している。
リード本体4の外径は1〜2mm、全長500mm程度である。リード本体4の管路内には、配線6が挿通されている。配線6は、耐屈曲性を有するニッケルコバルト合金(35NLT28%Ag材)からなる撚り線を、電気的絶縁材(厚さ20μmのETFE〔四フッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂〕等)で被覆したものが用いられる。
近位側交差ブロック22は、例えばチタンで6角柱状に形成されている。近位側交差ブ
ロック22の中心には図示しない貫通孔が形成され、この貫通孔には前述の配線6が挿通されている。
リード本体4や近位側交差ブロック22の表面に抗血栓コーティングを施すことが有効であることは、言うまでも無い。
【0109】
電極支持体25Aは、
図11,
図12に示すように、本実施形態では、近位側交差ブロック22の中心軸線を先端側に延長した軸線Cを中心として、弾性部材26A、26B、26Cを周方向にずらして組み合わせ、軸線C周りに回転対称性を有する籠状、言い換えればバスケット状に形成されている。ここで言う籠状とは、先端側が円筒形であって、基端側は基端側に向かうにしたがって外径が小さくなる円錐の側面の形状のことを意味する。弾性部材26A、26B、26Cには、弾性部材26A、26B、26Cの外周面(外面)から突出する複数の凸部31が設けられている。
弾性部材26A、26B、26Cの形状は、弾性部材26Aのみに刺激電極部10a、10bが配置されている点、及び凸部31が設けられている位置を除けば、いずれも同様の形状を有する。
【0110】
以下では、特に断らない限り、弾性部材26Aの形状について符号として数字や英小文字に英大文字「A」を付して説明し、弾性部材26B、26Cの説明は、同形状の部位に数字や英小文字に英大文字「B」、「C」をそれぞれ付して説明を省略する。
例えば、弾性部材26B(26C)における屈曲部27fB(27fC)は、弾性部材26Aにおける屈曲部27fAと対応する同一形状の部位を指す。
【0111】
弾性部材26Aは、弾性を有する1本の線状の部材を折り曲げることにより、立体的なループ形状が形成された部材である。以下では、
図13〜
図17を参照して、弾性部材26A単体の自然状態の形状について説明する。ここで、弾性部材26A単体の自然状態とは、弾性部材26Aに外力が作用しないか、作用しても変形が無視できる状態である。
弾性部材26Aは、
図13〜
図15に示すように、一端部から他端部に向かって、連結端部26aA、基端側線状部26bA、屈曲部27fA、先端側線状部26cA、屈曲部27hA、基端側線状部26dA、及び連結端部26eAを、この順に備える。
【0112】
連結端部26aA、26eAは、弾性部材26Aを近位側交差ブロック22に固定し、近位側交差ブロック22を介してリード本体3と係合するための部位である。連結端部26aA、26eAは、それぞれ第1軸線O1に沿って直線状に延ばされ、第1軸線O1を挟んで平行かつ互いに近接して配置されている。
連結端部26aA、26eAは、軸線Cに対して第1軸線O1が平行となるように配置される。
連結端部26aA、26eAと近位側交差ブロック22との固定方法は特に限定されず、近位側交差ブロック22の材質に応じて、例えば、接着、溶接、カシメなどの固定方法を適宜選択することができる。
【0113】
基端側線状部26bA、26dAは、第1軸線O1を含み、連結端部26aA、26eAの中心軸線を通る平面S2において、第1軸線O1に関して互いに線対称をなして配置され、全体としてU字状とされた部位である。
すなわち、基端側線状部26bA、26dAは、それぞれ、
図14に示すように、連結端部26aA、26eAに接続する端部から、先端側に向かうにしたがって互いに離間するように斜め方向に延ばされ、それぞれ第1軸線O1から漸次離間している。基端側線状部26bA、26dAの先端側の端部の近傍では、第1軸線O1と略平行(平行の場合を含む)になっている。
【0114】
基端側線状部26bAは、第1軸線O1から離間する方向に向かって凸となる曲線部、折れ線部、又はこれら曲線部と折れ線部との組み合わせによって構成することができる。
本実施形態では、基端側線状部26bAの形状は、一例として、連結端部26aAに近い基端側領域b1では、先端側線状部26cAに近い先端側領域b2に比べて、第1軸線O1に対する傾斜の平均変化率がより大きくなる曲線形状を採用している。
【0115】
基端側線状部26dAは、基端側線状部26bAと同様に構成されている。
本実施形態では、基端側線状部26bA、26dAは、先端側に向かうにつれて互いに離間するように傾斜する形状を採用している。このため、基端側線状部26bA、26dAの先端側端部は、自然状態において、弾性部材26Aの第1軸線O1と直交する方向の最大幅となる部位になっている。
【0116】
屈曲部27hAは、
図13に示すように、基端側線状部26dAの先端部と、後述する先端側線状部26cAの基端部との間において、平面S2に関して先端側線状部26cAと反対側に向かって突出するU字状に形成された部位である。
本実施形態では、「U字状」は、平行な2つの直線部が円弧状の湾曲部で接続された形状には限定されない。例えば、2つの直線部は非平行に並行していてもよく、湾曲部は円弧以外の曲線で湾曲していてもよい。さらに、湾曲部は、直線又は曲線からなる折れ線で構成されていてもよいし、
図16に示すように、2つの直線部の端部で屈曲された1つの直線部からなる形状(コ字状)であってもよい。
本実施形態の屈曲部27hAは、第1部分h1、第2部分h2、及び第3部分h3を備
える。
【0117】
第1部分h1は、基端側線状部26dAの先端部にて屈曲された線状部である。第1部分h1は直線状であってもよいし、曲線状であってもよいが、本実施形態では、一例として、直線状である。
第1部分h1の屈曲角度φ1は、90°±30°の範囲内程度が好ましく、長さは、刺激電極部10の長手方向よりも長く、例えば、4.5mm〜7.0mmが好ましい。
ここで、屈曲角度φ1は、第1部分h1と基端側線状部26dAの先端部とのなす角のうち、小さい方の角度である。
【0118】
第2部分h2は、第1部分h1の突出方向の端部において、屈曲された線状部であり、平面S2の法線方向から見て基端側線状部26dAの延長線上となる位置(
図14参照)で、平面S2に平行に延ばされている。第2部分h2は直線状であってもよいし、曲線状であってもよいが、本実施形態では、一例として、直線状である。
第2部分h2の長さは、例えば、3.0mm〜7.0mmが好ましい。
【0119】
第3部分h3は、第2部分h2の延出方向の端部において、屈曲されて、先端側線状部26cAの基端部に接続された線状部である。第3部分h3は直線状であってもよいし、曲線状であってもよいが、本実施形態では、一例として、直線状である。
第3部分h3の屈曲角度φ2は、90°±30°の範囲内程度が好ましい。
ここで、屈曲角度φ2は、第3部分h3と第2部分h2とのなす角のうち、小さい方の角度である。
第3部分h3の先端部は、本実施形態では、平面S2上に位置している。
【0120】
このような構成の屈曲部27hAにおいて、第1部分h1上には刺激電極部10bが、第3部分h3上には刺激電極部10aがそれぞれ配置されている。すなわち、刺激電極部10a、10bは屈曲部27hAに形成されている。
刺激電極部10bは、その長手方向が、第1部分h1の中心軸線方向に沿うように、第1部分h1の中間部に配置されている。刺激電極部10aは、その長手方向が、第3部分h3の中心軸線方向に沿うように、第3部分h3の中間部に配置されている。
刺激電極部10a、11bの詳細構成については、弾性部材26Aの説明をした後で説明する。
【0121】
次に、弾性部材26Aの屈曲部27fAについて説明する。
屈曲部27fAは、
図17に示すように、基端側線状部26bAの先端部と、後述する先端側線状部26cAの基端部との間において、屈曲部27hAと同様に、平面S2に関して先端側線状部26cAと反対側に突出するU字状に形成された部位である。
本実施形態の屈曲部27fAは、第1部分f1、第2部分f2、及び第3部分f3を備
える。
【0122】
屈曲部27fAの外形は、第1軸線O1を含み平面S2と直交する平面S1(
図13参照)を挟んで対向する位置に設けられた屈曲部27hAと異なっていてもよいが、本実施形態では、平面S1に関して、屈曲部27hAと面対称な形状を採用している。
すなわち、第1部分f1、第2部分f2、及び第3部分f3は、それぞれ屈曲部27hAにおける第1部分h1、第2部分h2、及び第3部分h3と同じ外形状を有する。
ただし、屈曲部27fAは、屈曲部27hAとは異なり、刺激電極部10a、10bは設けられていない。
【0123】
先端側線状部26cAは、
図13に示すように、屈曲部27fA、27hAにおける第3部分f3、h3の先端部から、さらに先端側に向かうにつれて、平面S2の側方に向かって、張り出す凸状に湾曲した部位である。
本実施形態では、先端側線状部26cAは、一例として、平面S2内の第3軸線O3を含み平面S2に対して角度θをなして交差する平面S3上に配置されるとともに平面S1に関して面対称なC字状に形成されている。
ここで、第3軸線O3は、平面S2内にあって、第3部分f3、h3の先端部を通り第1軸線O1に直交する軸線である。
このため、平面S1、S3の交線からなる第2軸線O2が、先端側線状部20cAと交差する位置に、先端側線状部26cAの頂部26gAが形成されている。
平面S3の角度θは、5°以上90°以下が好ましい。
【0124】
先端側線状部26cAは、第3軸線O3から離間する方向に凸となる曲線部、折れ線部、又はこれら曲線部と折れ線部との組み合わせによって構成することができる。
本実施形態では、
図14に示すように、先端側線状部26cAの形状は、一例として、屈曲部27fA(27hA)に近い基端側領域c1(c3)では、屈曲部27fA(27hA)の第3部分f3(h3)の先端側端部から平面S1に向かって傾斜する曲線状又は直線状に延ばされている。
また、基端側領域c1、c3の間の先端側領域c2では、頂部26gAを頂点とする山形の形状を有する。先端側領域c2における山形は、例えば、円弧、楕円弧などの曲線からなる山形や、複数の折れ線で形成された山形も可能である。本実施形態では、一例として、頂部26gAの曲率が最大となり頂部26gAの近傍に屈曲状の部位が形成された曲線形状を採用している。
【0125】
このような構成により、弾性部材26Aは、刺激電極部10a、10b及び凸部30以外は、平面S1に関して面対称な形状になっている。
ここで、弾性部材26Aの内部構造と、刺激電極部10a、10b及び凸部30の構成について説明する。
【0126】
弾性部材26Aは、
図18及び
図19に示すように、ワイヤ部33の外周面が、電気的絶縁性を有する被覆34で覆われた線状体で構成される。
本実施形態では、ワイヤ部33の長手方向に直交する断面は、例えば0.3mm角の矩形状に形成されている。ワイヤ部33としては、形状記憶合金や超弾性ワイヤ等を用いることができる。被覆34の外周面の長手方向に直交する断面は、円形である。被覆34の外径は、例えば0.8mmである。被覆34に好適な材料としては、例えばポリアミド樹脂などを採用することができる。
【0127】
刺激電極部10aは、白金イリジウム合金等の生体適合性を有する金属で円筒状に形成されている。刺激電極部10aの寸法は、例えば外径が0.8mm、長さが4mmである。刺激電極部10aは、外周面が全周にわたり被覆34から外部に露出している。すなわち、刺激電極部10aの外周面と被覆34の外周面とは、面一である。刺激電極部10aとワイヤ部33との間は、被覆34により絶縁されている。被覆34とワイヤ部33との間の絶縁をより確実にするために、刺激電極部10aとワイヤ部33との間に樹脂製の絶縁部材を設けてもよい。
刺激電極部10aの内周面には、前述の配線35が溶接等により電気的に接続されている。配線35は、被覆34内に配置されてワイヤ部33に沿って延び、連結端部26eAの基端部から、リード部20側に延出されている。
【0128】
刺激電極部10bは、刺激電極部10aと同一の構成である。このように刺激電極部10a、10bは弾性部材26A上に形成され、弾性部材26Aの一部に刺激電極部10a、10bを有している。刺激電極部10aと刺激電極部10bとは、少なくとも3mmから8mm以上離間して配置されている。
【0129】
本実施形態において凸部31は、
図20および
図21に示すように、被覆34と同一の材料で筒状に形成されている。凸部31の寸法は、例えば外径が1.0mm、長さが1mmから3mmである。この例では、凸部31が被覆34の外周面から突出する長さLは、0.1mmである。凸部31は、弾性部材26Aの全周にわたり弾性部材26Aの外周面から突出するように形成されている。
凸部31は、被覆34の外周面に溶融接合等により固定されている。
【0130】
本実施形態では、
図11および
図12に示すように、例えば弾性部材26Aに凸部31が3つ形成されている。
弾性部材26B及び弾性部材26Cには、3つの凸部31がそれぞれ形成されている。ただし、弾性部材26A、26B、26Cにおける凸部31が形成された場所は互いに異
なる。
【0131】
このように構成された弾性部材26A、26B、26Cは、ワイヤ部33等により弾性を有している。弾性部材26A、26B、26Cは、各第1軸線O1が軸線Cに重なるとともに、頂部26gA、26gB、26gCが、軸線Cに関する周方向において、等間隔(120°間隔)に離間するようにして配置されている。
各弾性部材26A、26B、26Cは、それぞれの先端側線状部26cA、26cB、26cCの張り出し方向が軸線Cに関して径方向外側に向くようにして、
図12に示す先端側から見たときに、反時計回りに弾性部材26A、26B、26Cの順で配置されている。
【0132】
基端側線状部26bAと基端側線状部26dB、基端側線状部26bBと基端側線状部26dC、基端側線状部26bCと基端側線状部26dAは、
図11および
図12に示すように、それぞれ周方向において隙間をあけて対向する位置に配置されている。これにより、屈曲部27fAと屈曲部27hB、屈曲部27fBと屈曲部27hC、屈曲部27fCと屈曲部27hAは、それぞれU字状の開口が対向するように位置している。屈曲部27fA及び屈曲部27hBで張出し部40Aを構成する。同様に、屈曲部27fB及び屈曲部27hCで張出し部41Aを構成し、屈曲部27fC及び屈曲部27hAで張出し部42Aを構成する。
張出し部40A、41A、42Aは、血管内に電極支持体25Aが配置されたときに、血管内で突っ張って電極支持体25Aの位置ズレを抑える部分である。
【0133】
隣り合う弾性部材26A、26B、26Cは互いに交差しており、弾性部材26Aと弾性部材26B、弾性部材26Bと弾性部材26C、弾性部材26Cと弾性部材26Aがそれぞれ交差した部分が弾性部材固定部(交差部)38によって接続されている。弾性部材固定部38は、各弾性部材26A、26B、26Cの被覆34が溶融接合により互いに接合されて形成されたものである。
電極支持体25Aには、3つの弾性部材固定部38が設けられている。
電極支持体25Aには、凸部31が9つ形成されている。電極支持体25Aの自然状態における外径は、電極支持体25Aを留置する上大静脈等の血管の内径よりも大きな、例えば35mmである。電極支持体25Aの軸線C方向の長さは35mmである。
9つの凸部31の少なくとも一部は、弾性部材26A、26B、26Cの外面から電極支持体25Aの径方向外側に突出する。
【0134】
電極支持体25Aの自然状態において、
図11に示すように、9つの凸部31は軸線C方向の互いに異なる位置に配置されている。ここで言う9つの凸部31が軸線C方向の異なる位置に配置されているとは、軸線C方向において、1の凸部31と、この1の凸部31以外の他の8の凸部31とに重なる部分が無いことを意味する。この条件は、9つの凸部31のうちいずれの1つの凸部31を選んだ場合でも成り立つ。
電極支持体25Aの自然状態において、3つの弾性部材固定部38は軸線C方向の同じ位置に配置され、3つの張出し部40A、41A、42Aは軸線C方向の同じ位置に配置されている。
【0135】
電極支持体25Aの弾性部材26A、26B、26Cの基端部(軸線C方向における一端部)は、リード部3の近位側交差ブロック22(端部)に溶接接合、接着接合、又はカシメ接合により接続されている。
このように構成された電極支持体25Aは、
図22に示すように、回収用シース60内に挿通されて電極支持体25Aが縮径したときに9つの凸部31が軸線C方向の異なる位置に配置される。ここで言う電極支持体25Aが縮径するとは、電極支持体25Aの各構成が全周にわたり軸線Cに近づいて電極支持体25Aが最小径になることを意味する。
【0136】
回収用シース60の内径は例えば3mmである。この場合、回収用シース60内に挿入することで電極支持体25Aの外径は、35mmから3mmと、35/3分の1(10分の1以下の約11.7分の1)になる。電極支持体25Aを回収用シース60内に挿入すると、弾性部材26A、26B、26Cのワイヤ部33が折り返されて6本のワイヤ部33が密集する。
【0137】
回収用シース60は、管状に形成されたシース本体61と、筒状に形成されシース本体61の基端部に設けられたハブとを有している。
シース本体61は、例えば、外径が4mm程度、内径が3mm程度、全長400mm程度の、ETFE製の管状部材である。シース本体61内及びハブ内にはリード部3が軸線C方向に進退可能に挿通されている。
ハブの内周面にはOリングが取付けられている。Oリングには、リード部3が軸線C方向に進退可能に挿通されている。Oリングとリード部3との間は、水密に保持されている。ハブには、チューブの一端部が接続されている。チューブの管路はハブの筒孔を介してシース本体61の管路と連通している。チューブの他端部には、ルアーロックコネクタ等の一般的なコネクタが設けられている。このコネクタには、シリンジピストンポンプのシリンジが着脱可能である。
回収用シース60は、電極支持体25Aが縮径するガイドとなる。
【0138】
電気刺激装置30では、定電流方式又は定電圧方式のバイフェージック波形である刺激パルスが、所定の間隔を有して発生される。例えば、周波数20Hz、パルス幅50〜400μsecのプラス数ボルトからマイナス数ボルトの刺激パルスが1分間(60sec)あたり3〜20秒(sec)間発生する。
【0139】
本実施形態の医療用電気刺激電極2bにおいて、上記の第1実施形態と同様の効果を奏することができるとともに、さらに、血管内における付勢部材の回転操作性の向上、付勢部材の先端が開放されていることにより血栓発生の予防効果の向上が期待できる。