(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-131491(P2017-131491A)
(43)【公開日】2017年8月3日
(54)【発明の名称】換気靴
(51)【国際特許分類】
A43B 7/06 20060101AFI20170707BHJP
A43B 13/20 20060101ALI20170707BHJP
A43B 17/08 20060101ALI20170707BHJP
【FI】
A43B7/06
A43B13/20 Z
A43B17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-15278(P2016-15278)
(22)【出願日】2016年1月29日
(71)【出願人】
【識別番号】591169630
【氏名又は名称】株式会社インフォム
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆好
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA50
4F050BC46
4F050EA15
4F050EA17
(57)【要約】
【課題】換気靴を小型化することができるとともに、靴本体部内の換気を十分に行うことができるようにする。
【解決手段】アッパ31と、第1、第2の底板と、空気を靴本体部34内に取り込み、空気を靴本体部34外に排出するための換気装置とを有する。換気装置は、空気を吸気するための第1の通気部、空気を排気するための第2の通気部、及び第1の通気部において吸気された空気を第2の通気部に送るポンプ装置50を備える。ポンプ装置50は、偏平な室から成るポンプ室161、及び第1、第2の通気部と隣接させて配設された第1、第2の逆止弁を備える。ポンプ室161の容積を大きくすることができるので、靴本体部34内の換気を十分に行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アッパと、
(b)第1の底板と、
(c)第1の底板より下方において第1の底板と重ねて配設された第2の底板と、
(d)靴本体部外の空気を靴本体部内に取り込み、靴本体部内の空気を靴本体部外に排出するための換気装置とを有するとともに、
(e)換気装置は、靴本体部内の所定の箇所に形成され、空気を吸気するための第1の通気部、靴本体部内の他の所定の箇所に形成され、空気を排気するための第2の通気部、及び第1の通気部において吸気された空気を第2の通気部に送るポンプ装置を備え、
(f)ポンプ装置は、第1、第2の底板を重ねることによって形成された偏平な室から成るポンプ室、第1の通気部と隣接させて開閉自在に配設された第1の逆止弁、及び第2の通気部と隣接させて開閉自在に配設された第2の逆止弁を備えることを特徴とする換気靴。
【請求項2】
第1、第2の逆止弁は、可撓性を有する材料から成る弁体を備える請求項1に記載の換気靴。
【請求項3】
装着者が換気靴を装着したときに装着者の足が密着する面に凹凸溝列が形成される請求項1又は2のいずれか1項に記載の換気靴。
【請求項4】
第1、第2の逆止弁は装着者の足の踵より後方、又は指先より前方に配設される請求項1〜3のいずれか1項に記載の換気靴。
【請求項5】
(a)第1の通気部は、靴本体部内の空気を吸気するために、靴本体部内の後端部において装着者の足の踵より後方に形成され、
(b)第2の通気部は、靴本体部内に空気を排気するために、靴本体部内の前端部において装着者の足の指先より前方に形成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の換気靴。
【請求項6】
第2の通気部に隣接させて、空気を装着者の足の第5指側に案内する排気案内路が形成される請求項5に記載の換気靴。
【請求項7】
(a)アッパと、
(b)ソールとを有するとともに、
(c)アッパにおける履き口部から爪先部までの間の裏面に第1の通気路が、アッパにおける踵部の裏面に第2の通気路が、ソールの表面に第3の通気路が形成され、
(d)第1の通気路は、アッパの長手方向に延びる凹凸溝列から成り、第2通気路は、アッパの高さ方向に延びる凹凸溝列から成り、第3の通気路は、ソールの長手方向に延びる凹凸溝列から成ることを特徴とする換気靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、靴は、靴本体部内の通気性が悪いので、長時間装着していると足が蒸れ、装着者が不快感を覚えるだけでなく、水虫の原因にもなる。そこで、ソールにポンプ室を配設し、歩行する際に靴に加わる装着者の体重及び屈曲による荷重変動を利用してポンプ室を圧縮し、空気を指先に排出させ、靴本体部内の換気を行うようにした換気靴が提供されている。
【0003】
図2は従来の換気靴の縦断面図である。
図において、10は換気靴であり、該換気靴10はアッパ11及びソール12を備え、ソール12の後端部にヒール13が形成される。ソール12は、中敷15、中底16及び本底17を備え、中底16と本底17との間に空気室Spが形成される。
【0004】
また、換気靴10の靴本体部14内の後端部には、靴本体部14内の空気を空気室Sp内に吸気するための吸気部21が、前端部には、空気室Sp内の空気を靴本体部14内に排気するための排気部22が配設され、空気室Sp内にはポンプ装置23が配設される。
【0005】
ポンプ装置23は、吸気室R1、排気室R2、仕切壁25、26間に形成されたポンプ室R3、吸気室R1とポンプ室R3との間に配設された逆止弁28、逆止弁28と排気室R2とを連通するパイプ18等を備える。
【0006】
装着者が一方の足を踏み出すと、他方の足に全体重が加わり、続いて、踵が上がって爪先で立つ状態になると、ソール12が湾曲させられ、ポンプ室R3が圧縮されて圧力が高くなる。これにより、ポンプ室R3内の空気が、パイプ18内を通って排気室R2に送られ、排気部22を介して靴本体部14内に排気される。次に、装着者が、踏み出した一方の足を着地させ、他方の足を踏み出すと、換気靴10が地面から離れて扁平な状態に戻り、ポンプ室R3が圧縮されなくなり、圧力が低くなる。これにより、靴本体部14内の空気が、吸気部21を介して吸気室R1に吸気され、ポンプ室R3に送られる。
【0007】
このようにして、交互に足を踏み出して歩行すると、吸気部21から吸気室R1に吸気された空気が、排気部22から靴本体部14内に排気され、靴本体部14内の換気が行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−200327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の換気靴10においては、ポンプ室R3内の空気を靴本体部14内に排気するために、逆止弁28と排気室R2との間にパイプ18が配設されるので、空気室Spの高さ方向の寸法を大きくする必要があり、換気靴10が大型化してしまう。また、パイプ18、逆止弁28等に嵌合部分、接続部分等が多いので、完全に密封するのが困難であり、空気漏れが起こりやすい。さらに、空気室Sp内にパイプ18が延在させられるので、装着者が歩行するときに、ソール12が湾曲するのが妨げられてしまい、ポンプ室R3を十分に圧縮することができない。また、ポンプ室R3内の空気がパイプ18内を通って排気室R2に送られるので、パイプ18内の圧力損失が大きく、靴本体部14内に排気される空気の量が少なくなってしまう。その結果、靴本体部14内の換気を十分に行うことができない。
【0010】
本発明は、従来の換気靴10の問題点を解決して、小型化することができ、靴本体部内の換気を十分に行うことができる換気靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の換気靴において、換気装置は、靴本体部内の所定の箇所に形成され、空気を吸気するための第1の通気部、靴本体内部の他の所定の箇所に形成され、空気を排気するための第2の通気部、及び第1の通気部において吸気された空気を第2の通気部に送るポンプ装置を備える。
【0012】
そして、ポンプ装置は、第1、第2の底板を重ねることによって形成された偏平な室から成るポンプ室、第1の通気部と隣接させて開閉自在に配設された第1の逆止弁、及び第2の通気部と隣接させて開閉自在に配設された第2の逆止弁を備える。
【発明の効果】
【0013】
換気靴を小型化することができるとともに、ポンプ室の容積を大きくすることができるので、靴本体内の換気を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における換気靴の縦断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態における換気靴の斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態におけるソールの平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態における中敷の平面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態における中敷の各開口の位置を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態における中底の平面図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態における下底の平面図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態における本底の平面図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態における吸気用逆止弁の平面図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態における吸気用逆止弁の断面図である。
【
図12】本発明の第1の実施の形態における排気用逆止弁の平面図である。
【
図13】本発明の第1の実施の形態における排気用逆止弁の断面図である。
【
図14】本発明の第1の実施の形態におけるシートの要部断面図である。
【
図18】本発明の第2の実施の形態における換気靴の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図において、30は換気靴、31は装着者の足の上部を覆うアッパ、32はソール、33はヒールである。ソール32は、足の裏面と当接する中敷35、該中敷35より下方において中敷35と重ねて配設された中底36、該中底36より下方において中底36と重ねて配設された第1の底板としての下底37、及び該下底37より下方において下底37と重ねて配設された第2の底板としての本底38を備える。換気靴30の靴本体部34は、アッパ31及びソール32によって包囲され、アッパ31と中敷35との間に形成される靴内部である。なお、前記中敷、中底36、下底37及び本底38は、ゴム、軟質合成樹脂等の弾性材料から成る。
【0016】
そして、換気靴30は、靴本体部34内で空気を循環させ、靴本体部34内の空気を靴本体部34外に排出し、靴本体部34外の空気を靴本体部34内に取り込んで靴本体部34内の換気を行うための換気装置を有する。
【0018】
該換気装置は、靴本体部34内の後端部に開口させて形成され、靴本体部34内の空気を吸気するための第1の通気部としての吸気部148、靴本体部34内の前端部に開口させて形成され、靴本体部34内に空気を排気するための第2の通気部としての排気部149、及び吸気部148において吸気した空気を排気部149に送るポンプ装置50を備える。
【0019】
前記吸気部148は、中敷35の後端部において、換気靴30の幅方向に形成された複数の、本実施の形態においては、3個の開口148a〜148c、並びに中底36の後端部において前記各開口148a〜148c及びポンプ装置50と連通させて形成された複数の、本実施の形態においては、3個の吸気路151a〜151cを備える。前記開口148a〜148c及び吸気路151a〜151cは、直下に配設された第1の逆止弁としての吸気用逆止弁166と連通させられ、吸気を行う。
【0020】
前記排気部149は、中敷35の前端部において、換気靴30の幅方向に形成された複数の、本実施の形態においては、4個の開口149a〜149d、中底36の前端部において幅方向に形成された複数の、本実施の形態においては、4個の排気路155a〜155d、及び下底37の前端部に形成された排気案内路156を備え、開口149a〜149d及び排気路155a〜155dは、直下に形成された排気案内路156及び第2の逆止弁としての排気用逆止弁171と連通させられ、排気を行う。
【0021】
図6に示されるように、中敷35の各開口149a〜149dのうちの、開口149aは足の第1指fg1と第2指fg2との間に、開口149bは第2指fg2と第3指fg3との間に、開口149cは第3指fg3と第4指fg4との間に、開口149dは第4指fg4と第5指(小指)fg5との間に形成され、各指の付け根の近傍に向けて空気を排気する。そして、
図8に示されるように、排気案内路156は、後述される第2の逆止弁収容室157の後方の縁部egに隣接させて形成された案内路191〜196を備え、空気は、まず、第5指fg5の位置に対応する案内路194に流れ、次に、第4指fg4、第3指fg3、第2指fg2及び第1指fg1の位置に対応する案内路195、196に向けて流れる。すなわち、空気は、最初に到達する第5指fg5に向けて多く排気される。
【0022】
ところで、長時間靴を装着すると、足が蒸れて、水虫が発症しやすくなり、水虫は、第5指fg5に近い側で発症しやすいことが知られている。本実施の形態においては、空気が、まず、第5指fg5に向けて多量に排気され、続いて、第1指fg1に向けて排気されるので、第5指fg5に近い側で水虫が発症するのを十分に抑制することができる。
【0023】
前記ポンプ装置50は、下底37と本底38との間に空間を形成することによって形成されるポンプ室161、下底37の後端部において吸気路151a〜151cと連通させて形成された第1の逆止弁収容室152、該第1の逆止弁収容室152に収容された吸気用逆止弁166、下底37の前端部において排気案内路156と連通させて形成された第2の逆止弁収容室157、及び該第2の逆止弁収容室157に収容された排気用逆止弁171を備える。
【0024】
前記ポンプ室161は、本底38の周囲に周縁部Egを残し、深さが数〔mm〕程度の十分に広い面積を有する凹部を形成し、本底38の上面に下底37を貼り付け、密着させることによって形成され、後端に第1の逆止弁収容室152と連通する連通口163を、前端に第2の逆止弁収容室157と連通する連通口164を備える。前記本底38には、上面が本底38の上面と同じ高さを有する凸部38a、38bが形成される。さらに、前記ポンプ室161において、連通口163と凸部38aとの間の領域161a、及びポンプ室161における凸部38a、38b間の領域161bには、発泡性ゴム等の弾性材料から成るクッション材としてのスペーサ38c、38dが本底38に貼着させて配設される。凸部38a、38b及びスペーサ38c、38dによって、換気靴30の長期使用による下底37の形状の経年変化が防止される。本実施の形態においては、スペーサ38c、38dが本底38に貼着させて配設されるようになっているが、下底37に貼着させることができる。
【0025】
なお、凹部の面積、深さ等を変えることによってポンプ室161の容積を大きくすることができる。その場合、靴本体部34内に排気したり、靴本体部34外から吸気したりすることができる空気の量を更に多くすることができる。
【0026】
前記吸気用逆止弁166は、
図10及び11に示されるように、薄く、扁平な箱形のケース201、該ケース201を覆うカバー202、及び弁体66を備える。ケース201には空気出口穴205が、カバー202には空気入口穴206が形成される。
【0027】
ケース201及びカバー202は、金属、合成樹脂等の強固な材料で形成される。また、弁体66は、薄板金属等の可撓性を有する材料で形成され、わずかな空気圧が加わることによって撓み、空気入口穴206を開閉する。前記吸気用逆止弁166において、空気入口穴206が吸気路151a〜151c(
図1)と、空気出口穴205が連通口163(
図9)と連通させられる。
【0028】
排気用逆止弁171は、
図12及び13に示されるように、薄く、扁平な箱形のケース211、該ケース211を覆うカバー212、及び弁体71を備える。ケース211には空気出口穴215が、カバー212には空気入口穴216が形成される。前記排気用逆止弁171において、空気入口穴216が連通口164(
図9)と、空気出口穴215が排気案内路156と連通させられる。
【0029】
吸気用逆止弁166は、ポンプ室161内の圧力が靴本体部34内の圧力より低くなると開放され、靴本体部34内の空気が吸気部148からポンプ室161に吸引される。また、排気用逆止弁171は、ポンプ室161内の圧力が靴本体部34内の圧力より高くなると開放され、ポンプ室161の空気が排気部149から排気される。
【0030】
このように、本実施の形態においては、弁体66が、ケース201及びカバー202によって、弁体71が、ケース21及びカバー212によって支持されるので、吸気用逆止弁166及び排気用逆止弁171を、換気靴30に容易に取り付けることができるだけでなく、長期間にわたり、安定させて作動させることができる。
【0031】
そして、本実施の形態においては、
図1に示されるように、吸気用逆止弁166が踵Ar11より後方に配設され、排気用逆止弁171が指先Ar12より前方に配設されるので、歩行の際に吸気用逆止弁166及び排気用逆止弁171に荷重が加わって破損することはない。したがって、換気靴30の耐久性を向上させることができる。また、吸気用逆止弁166及び排気用逆止弁171が足に当たることがないので、装着者は違和感を感じることがない。
【0032】
なお、本実施の形態においては、靴本体部34内の後端部において吸気された空気が、前端部において排気されるようになっているが、吸気用逆止弁166と排気用逆止弁171の配置を逆にすることによって、靴本体部34内の前端部において吸気された空気を、後端部において排気することもできる。
【0033】
次に、靴本体部34内の通気構造について説明する。
【0034】
換気靴30においては、換気装置によって、靴本体部34外の空気が、靴本体部34内に吸引され、循環し、靴本体部34外に排出されるようになっている。ところが、換気靴30を装着したときに装着者の足がアッパ31の内周面及び中敷35の表面に隙間なく密着すると、靴本体部34内の通気性が悪くなる。その結果、靴本体部34外の空気を靴本体部34内に取り込んだり、靴本体部34内で空気を循環させたり、靴本体部34内の空気を靴本体部34外に十分に排出したりすることができなくなる。
【0035】
そこで、本実施の形態においては、アッパ31における履き口部31aから爪先部31bまでの間の裏面、踵部31c及び側部31dの裏面、及び中敷35の表面に、凹凸溝列を有するシート80が貼着され、第1〜第3の通気路41〜43が形成される。第1の通気路41はアッパ31の長手方向に、第2の通気路42はアッパ31の高さ方向に、第3の通気路43は中敷35の長手方向に形成される。
【0036】
これにより、靴本体部34内外が、第1〜第3の通気路41〜43を介して連通させられるので、靴本体部34内で空気を十分に循環させることができるとともに、靴本体部34内の空気を靴本体部34外に十分に排出したり、靴本体部34外の空気を靴本体部34内に十分に取り込んだりすることができる。
【0037】
本実施の形態において、凹凸溝列を有するシート80は、例えば、
図14に示されるように、皮革81に所定のピッチで段付き加工を施すことによって、凸部82及び凹部83から成るライニング本体84を形成し、該ライニング本体84の裏面側に合成樹脂reを塗布することにより形成される。なお、皮革81に代えて、布、合成樹脂、ゴム等の材料を使用することもできる。
【0038】
次に、換気靴30の動作について説明する。
【0039】
装着者が換気靴30を装着し、一方の足を踏み出すと、着地している他方の足に全体重が加わり、続いて、踵が上がって爪先で立つ状態になり、それに伴って、ソール32が湾曲させられ、ポンプ室161内において下底37と本底38とが近接させられ、ポンプ室161が圧縮されて圧力が高くなる。これにより、排気用逆止弁171が開放され、ポンプ室161内の空気は、排気案内路156に吐出され、開口149a〜149dから靴本体部34内に排気される。このとき、吸気用逆止弁166は閉鎖されている。
【0040】
次に、踏み出した一方の足を着地させ、他方の足を踏み出すと、他方の足の換気靴30が地面から離れてソール32が偏平な状態に戻り、ポンプ室161内において下底37と本底38とが離間させられ、ポンプ室161が圧縮されなくなり、圧力が低くなる。これにより、吸気用逆止弁166は開放され、靴本体部34内の空気が、
図1の矢印方向に開口148a〜148cから吸気され、ポンプ室161に送られる。これに伴い、靴本体部34外の空気が靴本体部34内に吸引される。このとき、排気用逆止弁171は閉鎖されている。
【0041】
このようにして、装着者が交互に足を踏み出して歩行すると、吸気部148からポンプ室161に吸気された空気が、排気部149から靴本体部34内に排気され、靴本体部34内の換気が連続して行われる。
【0042】
本実施の形態においては、靴本体部34外の空気が、アッパ31の上縁から靴本体部34内に吸引され、アッパ31の上縁から靴本体部34外に排出されるので、靴本体部34外の空気を取り込むために、換気靴30のアッパ31、ソール32等に空気の取込み用の穴、空気の排出用の穴等を形成する必要がない。したがって、靴本体部34内の換気に伴って靴本体部34内に雨水等が進入することがない。
【0043】
また、前記ポンプ室161を、硬度が高い本底38に凹部を形成することによって形成すると、凹部の深さを十分に維持することができる。その場合、中敷35、中底36、下底37及び本底38が偏平な状態に復元されたときに、ポンプ室161の容積を十分に大きくすることができるので、吸気部148において十分な量の空気を吸気することができる。
【0044】
そして、前記凸部38a、38bが換気靴30の幅方向に延在させて形成されるので、装着者が歩行するときに中敷35、中底36、下底37及び本底38の湾曲が凸部38a、38bによって阻止されることがない。したがって、ポンプ室161の容積を十分に変化させることができる。
【0045】
さらに、ポンプ室161内に、スペーサ38c、38dが配設されるので、歩行に伴ってソール32が湾曲させられ、ポンプ室161内において下底37と本底38とが近接させられた後、ソール32が偏平な状態に戻ったときに、ポンプ室161内において下底37と本底38とを迅速に復元させ、離間させることができる。したがって、靴本体部34内の換気を確実に行うことができる。
【0046】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0047】
図18は本発明の第2の実施の形態における換気靴の縦断面図である。
【0048】
図において、130は換気靴、131は足を覆うアッパ、132はソール、133はヒールである。ソール132は、足の裏面と当接する中敷135、該中敷135の下方に積層された本底138等を備える。また、134は、アッパ131と中敷135との間に形成される空間から成る靴本体部である。
【0049】
本実施の形態においては、アッパ131における履き口部131aから爪先部131bまでの間の裏面、踵部131c及び側部131dの裏面、及び中敷135の表面に、凹凸溝列を有するシート80を貼着することによって、第1〜第3の通気路141〜143が形成される。第1の通気路141はアッパ131の長手方向に、第2の通気路142はアッパ131の高さ方向に、第3の通気路143は中敷135の長手方向に形成される。
【0050】
したがって、装着者の足がアッパ131の内周面及び中敷135の表面に密着しても、靴本体部134内と靴本体部134外とが第1、第2の通気路141、142の溝を介して連通させられ、中敷135の後端部と前端部とが通気路143の溝を介して連通させられるので、靴本体部134内で空気を十分に循環させることができるとともに、靴本体部134内の空気を靴本体部134外に十分に排出したり、靴本体部134外の空気を靴本体部134内に十分に取り込んだりすることができる。その結果、靴本体部134内の換気を十分に行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
30、130 換気靴
31、131 アッパ
34、134 靴本体部
37 下底
38 本底
50 ポンプ装置
148 吸気部
149 排気部
161 ポンプ室
166 吸気用逆止弁
171 排気用逆止弁