(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-131810(P2017-131810A)
(43)【公開日】2017年8月3日
(54)【発明の名称】非イオン型界面活性剤の処理方法及び金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 47/04 20060101AFI20170707BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20170707BHJP
B01J 39/18 20170101ALI20170707BHJP
B01J 41/05 20170101ALI20170707BHJP
B01J 41/12 20170101ALI20170707BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20170707BHJP
C11D 1/66 20060101ALN20170707BHJP
【FI】
B01J47/04
B01J39/04 110
B01J39/18
B01J41/04 110
B01J41/12
H01L21/304 647B
C11D1/66
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-12069(P2016-12069)
(22)【出願日】2016年1月26日
(11)【特許番号】特許第5959134号(P5959134)
(45)【特許公報発行日】2016年8月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】春日井 博之
(72)【発明者】
【氏名】織田 匡博
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 雅祥
【テーマコード(参考)】
4H003
5F157
【Fターム(参考)】
4H003AC01
4H003DA05
4H003DA12
5F157AC01
5F157BC05
5F157BD02
5F157BD52
5F157BE12
5F157BF22
5F157BF23
5F157BF32
5F157BF34
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】電子、半導体及び精密加工分野等での使用に要求される数ppbのレベルにまで含有金属イオン濃度を低減することができる非イオン型界面活性剤の処理方法及びそのような非イオン型界面活性剤を提供する。
【解決手段】金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して水を40.0質量%以上〜98.0質量%未満となるよう加えた水性希釈溶液を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供し、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下となるように処理した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して水を40.0質量%以上〜98.0質量%未満となるよう加えた水性希釈溶液を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供し、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下となるように処理することを特徴とする非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項2】
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して水を40.0質量%以上〜98.0質量%未満となるよう加えると共に、更に炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数2〜4のグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び乳酸エステルから選ばれる少なくとも一つを加えた水性希釈溶液を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供し、温度0〜60℃、空間速度0.1〜10.0で通液して、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下となるよう処理することを特徴とする非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項3】
強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂が、ともにゲル型のものである請求項1又は2記載の非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項4】
非イオン型界面活性剤に対するNa、K、Ca、Mg、Al、Mn、Fe、Cu、Ni、Cr及びZnの各金属イオン濃度が3ppb以下となるように処理する請求項1〜3のいずれか一つの項記載の非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項5】
非イオン型界面活性剤に対するNa、K、Ca、Mg、Al、Mn、Fe、Cu、Ni、Cr及びZnの各金属イオン濃度が1ppb以下となるように処理する請求項1〜3のいずれか一つの項記載の非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項6】
非イオン型界面活性剤が、グリフィン法によるHLB値が7〜18のものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載の非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つの項記載の処理方法で処理した非イオン型界面活性剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非イオン型界面活性剤の処理方法及び非イオン型界面活性剤に関する。電子、半導体及び精密加工分野等で使用する非イオン型界面活性剤には、それに含まれる金属イオン濃度をできるだけ低減したものであることが要求される。本発明はかかる要求に応える非イオン型界面活性剤の処理方法及び非イオン型界面活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、界面活性剤からそれに含まれる金属イオン濃度を低減する処理方法として、非イオン型界面活性剤についてはイオン交換樹脂と機能性フィルターとを組み合わせて用いる方法(例えば特許文献1参照)、またアニオン型界面活性剤については一般的な濃縮、晶析、抽出による方法の他に逆浸透膜や限外濾過膜による方法(例えば特許文献2参照)やイオン交換膜を用いた電気透析による方法(例えば特許文献3参照)等が提案されている。
【0003】
しかし、前記のような従来法では、非イオン型界面活性剤について要求される数ppbのレベルにまで金属イオン濃度を低減しようとすると、非常に煩雑な処理装置を組み立てる必要があるだけでなく、処理中にフィルターが目詰まりを起こしたり、またフィルターの選択や取付け不良等を起こし易く、実際のところ金属イオン濃度を各金属イオン毎で数ppbの単位にまで低減することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−213200号公報
【特許文献2】特開平5−317654号公報
【特許文献3】特開昭62−63555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電子、半導体及び精密加工分野等での使用に要求される数ppbのレベルにまで含有金属イオン濃度を低減することができる非イオン型界面活性剤の処理方法及びそのような非イオン型界面活性剤を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に水を特定割合となるよう加えた水性希釈溶液を、特定のカチオン交換樹脂と特定のアニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供して処理すると、金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下にまで低減することができることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して水を40.0質量%以上〜98.0質量%未満となるよう加えた水性希釈溶液を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供し、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下となるように処理することを特徴とする非イオン型界面活性剤の処理方法に係る。また本発明は、かかる処理方法によって得られる非イオン型界面活性剤に係る。
【0008】
先ず、本発明に係る非イオン型界面活性剤の処理方法(以下、単に本発明の処理方法という)について説明する。本発明の処理方法では、金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に水を特定割合で加えた水性希釈溶液をイオン交換法に供する。
【0009】
加える水の割合は、金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して40.0質量%以上〜98.0質量%未満となるようにする。加える水の量を金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して40.0質量%以上〜98.0質量%未満とすることにより、親水性の強い常温で固状の非イオン型界面活性剤であっても、それを均一な水性希釈溶液とすることができ、本発明を適用することができる。イオン交換法に供して処理した非イオン型界面活性剤を水を含まない状態で使用したい場合には、水を容易に留去することもできる。
【0010】
本発明の処理方法を適用するのに好適な非イオン型界面活性剤は、グリフィン法によるHLB値が7〜18のものである。グリフィン法によるHLB値は下記の数1により算出される値であり、その詳細については例えば、藤本武彦著「界面活性剤入門」、三洋化成工業株式会社発行、141〜145頁(2007年)に記載されている。
【0011】
【数1】
【0012】
前記の数1は通常、ポリオキシエチレン鎖以外のポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン型界面活性剤への適用はできないとされているが、本発明においては、ポリオキシエチレン鎖部分のみを親水基とし、これ以外のポリオキシアルキレン鎖は疎水基として計算するものとし、またオキシエチレン単位を含むポリオキシアルキレンランダム鎖やポリオキシアルキレンブロック鎖の場合には、オキシエチレン単位の合計を親水基として計算し、オキシエチレン単位以外のオキシアルキレン単位の合計を疎水基として計算するものとする。
【0013】
本発明の処理方法を適用するのに好適な非イオン型界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン2級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミドエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテルホルマリン縮合物、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エーテルエステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテルエステル、モノオール型ポリエーテル、ジオール型ポリエーテル、ポリオール型ポリエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアセチレン系エーテル及びプルロニック型ポリエーテルが挙げられる。
【0014】
本発明の処理方法では、前記のように水を加えると共に、更に炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数2〜4のグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び乳酸エステルから選ばれる少なくとも一つを適宜に加えることもできる。
【0015】
本発明の処理方法では、前記のような水性希釈溶液を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供する。強酸性カチオン交換樹脂としては、市販品を使用できるが、なかでもゲル型強酸性カチオン交換樹脂を使用するのが好ましい。かかるゲル型強酸性カチオン交換樹脂としては、いずれも商品名で、アンバーライトIR−124、アンバーライトIR−120B(共に米国ダウ・ケミカル社製)、オルライトDS−1(オルガノ社製)、デュオライトC20J、デュオライトC20LF、デュオライトC255LFH(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンSK−110、ダイヤイオンSK−1B(共に三菱化学社製)等のゲル型でスルホン酸型のものが挙げられる。また強アルカリ性アニオン交換樹脂としては、これも市販品を使用できるが、なかでもゲル型強アルカリ性アニオン交換樹脂を使用するのが好ましい。かかるゲル型強アルカリ性アニオン交換樹脂としては、いずれも商品名で、アンバーライトIRA−400J、アンバーライトIRA−410J、デュオライトA113LF、デュオライトA116(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、オルライトDS−2(オルガノ社製)、ダイヤイオンSA12A、ダイヤイオンSA20A(共に三菱化学社製)等のゲル型で4級アンモニウム塩型のものが挙げられる。
【0016】
イオン交換法に供する強酸性カチオン交換樹脂及び強アルカリ性アニオン交換樹脂について以上説明したが、本発明の処理方法では、前記のゲル型でスルホン酸型の強酸性カチオン交換樹脂やゲル型で4級アンモニウム塩型の強アルカリ性アニオン交換樹脂と組み合わせて用いる場合には、いずれも商品名で、デュオライトC−433LF(米国ダウ・ケミカル社製)等の弱酸性カチオン交換樹脂やアンバーライトIRA67(米国ダウ・ケミカル社製)、デュオライトA−375LF(米国ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンWA10(三菱化学社製)等の弱アルカリ性アニオン交換樹脂も使用することができる。またいずれも商品名で、デュオライトMB5113、デュオライトUP6000、デュオライトUP7000(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、アンバーライトEG−4A−HG、アンバーライトMB−1、アンバーライトMB−2、アンバージェットESP−2、アンバージェットESP−1(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンSMNUP、ダイヤイオンSMT100L(共に三菱化学社製)、オルライトDS−3(オルガノ社製)等、予め強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂とが混合された状態で市販されているものも使用できる。
【0017】
本発明の処理方法では、以上説明したように、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いるが、双方の混合比は、強酸性カチオン交換樹脂/強アルカリ性アニオン交換樹脂の容量比で、1/4〜4/1とするのが好ましく、1/3〜3/1とするのがより好ましい。
【0018】
またイオン交換処理する際の空間速度(SV)は0.01〜20.0とするのが好ましく、0.1〜10.0とするのがより好ましい。更にイオン交換処理する際の水性希釈溶液の温度は0〜60℃とするのが好ましく、10〜50℃とするのがより好ましい。
【0019】
本発明の処理方法において、イオン交換処理する際の具体的な方法としては、バッチ法やカラム法が挙げられるが、なかでもカラム法が好ましい。
【0020】
本発明の処理方法では、以上説明したイオン交換法により、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下、好ましくはNa、K、Ca、Mg、Mn、Fe、Al、Cu、Zn、Ni及びCrの金属イオン濃度をこれらの各金属イオン毎で3ppb以下、更に好ましくはこれらの各金属イオン毎で1ppb以下となるようにする。
【0021】
本発明の処理方法において、各金属イオンの濃度は誘導結合プラズマ質量分析法により測定して求めることができる。
【0022】
次に、本発明に係る非イオン型界面活性剤について説明する。本発明の非イオン型界面活性剤は、以上説明した本発明の処理方法によって得られるもので、前記したように金属イオン濃度を各金属イオン毎で低減したものである。
【0023】
本発明の処理方法によって処理し、金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤の水性希釈溶液は、使用目的により、濃縮、希釈、場合によっては乾燥して使用に供することができる。
【0024】
イオン交換法に供した非イオン型界面活性剤の水性希釈溶液からの水等の留去には、公知の方法を適用できる。これには例えば、減圧蒸留法、薄膜蒸留法、分子蒸留法等が挙げられる。
【0025】
本発明に係る非イオン型界面活性剤は、半導体製造プロセスの各工程で用いる洗浄液や表面処理液、ホトレジストプロセスの処理液、剥離液、現像液、洗浄液、コート剤、電池、コンデンサ及びキャパシター等の電解液や電極製造組成物、種々のコート剤、インクや塗料における顔料やカーボンブラックの分散剤、ナノテクノロジーにおけるカーボンナノチューブ、フラーレン及び金属ナノ粒子の分散剤、色素増感型太陽電池における酸化チタンの分散剤等、多くの分野において有用である。
【発明の効果】
【0026】
以上説明した本発明によると、電子、半導体及び精密加工分野等での使用に要求される数ppbのレベルにまで金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤を得ることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするために実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0028】
実施例1
金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−1)200gに1800gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。前記の試料及びカラム内の液温を10℃で一定に保温し、空間速度(SV)1.4で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0029】
実施例2
金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−2)100gに1900gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)50mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)100mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。前記の試料及びカラム内の液温を25℃で一定に保温し、空間速度(SV)0.4で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0030】
実施例3
金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−3)800gに1200gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)120mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)40mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を40℃で一定に保温し、空間速度(SV)2.5で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0031】
実施例4
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤(A−4)400gに1600gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。以下、試料及びカラム内の液温と、空間速度(SV)を表1に記載したように変更したこと以外は実施例1と同様にして、試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0032】
実施例5
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤(A−5)750gに1200gの水及び50gの2−プロパノールを加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)120mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)40mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を25℃で一定に保温し、空間速度(SV)1.5で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0033】
実施例6
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤(A−5)1000gに1000gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)120mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)40mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を20℃で一定に保温し、空間速度(SV)2.2で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0034】
比較例1
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤(A−1)2000gをメタノール800gに溶解し、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのメタノールで十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を25℃に保温し、空間速度(SV)1.0で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0035】
比較例2
試料として金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−2)を用いた。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを均一に混合し、ガラスフィルターで混合樹脂を炉別して、恒量になるまで40℃で真空乾燥した後、500gの試料中でなじませ、24時間静置した。静置した混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填し、試料及びカラム内の液温を30℃で一定に保温し、空間速度(SV)0.1で試料2000gを水を加えることなくそのままカラムに通してイオン交換処理した。
【0036】
比較例3
金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−2)100gに1900gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを垂直にセットした内容量300mLカラムに充填し、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を25℃で一定に保温し、空間速度(SV)1.1で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0037】
比較例4
金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−1)200gに1800gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを用い、また強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを用いたが、双方を混合せずに、前者をカラム前段(上段)にセットし、また後者をカラム後段(下段)にセットして、その他は実施例1と同様に行ない、試料をイオン交換処理した。
【0038】
各例のイオン交換処理の処理条件等を表1にまとめて示し、また各例でイオン交換処理したものについてそれらの金属イオン濃度を表2にまとめて示した。但し、比較例5はイオン交換処理をしていない未処理の例である。尚、金属イオン濃度は各例でイオン交換処理したものを減圧加熱して水やメタノールを留去した非イオン型界面活性剤に対する濃度であり、かかる金属イオン濃度は誘導結合プラズマ質量分析装置としてAgilent 7700s(アジレント・テクノロジー社製の商品名)を用いた誘導結合プラズマ質量分析法によって測定した。データを省略するが、未処理の非イオン型界面活性剤(A−2)〜(A−5)はいずれも、未処理の非イオン型界面活性剤(A−1)と同様、各金属イオンを高濃度で含有していた。
【0039】
【表1】
【0040】
表1において、
A−1:ポリオキシエチレンステアリルエーテル(分子量:1150、HLB(グリフィン法):15.3
A−2:ポリオキシアルキレンオクチルエーテル(分子量:2318、HLB(グリフィン法):9.9
A−3:トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル(分子量:4248、HLB(グリフィン法):13.7
A−4:オルフィンE1010(日新化学工業社製の商品名、分子量:666、HLB(グリフィン法):13.3
A−5:オルフィンE1020(日新化学工業社製の商品名、分子量:1106、HLB(グリフィン法):15.9
水添加量:金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対する水の添加割合
【0041】
【表2】
【0042】
表1に対応する表2の結果からも、本発明の処理方法によると、金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下、各実施例の場合には1ppb以下にまで金属イオン濃度を低減することができる。
【手続補正書】
【提出日】2016年5月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非イオン型界面活性剤の処理方法及び金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤の製造方法に関する。電子、半導体及び精密加工分野等で使用する非イオン型界面活性剤には、それに含まれる金属イオン濃度をできるだけ低減したものであることが要求される。本発明はかかる要求に応える非イオン型界面活性剤の処理方法及び金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、界面活性剤からそれに含まれる金属イオン濃度を低減する処理方法として、非イオン型界面活性剤についてはイオン交換樹脂と機能性フィルターとを組み合わせて用いる方法(例えば特許文献1参照)、またアニオン型界面活性剤については一般的な濃縮、晶析、抽出による方法の他に逆浸透膜や限外濾過膜による方法(例えば特許文献2参照)やイオン交換膜を用いた電気透析による方法(例えば特許文献3参照)等が提案されている。
【0003】
しかし、前記のような従来法では、非イオン型界面活性剤について要求される数ppbのレベルにまで金属イオン濃度を低減しようとすると、非常に煩雑な処理装置を組み立てる必要があるだけでなく、処理中にフィルターが目詰まりを起こしたり、またフィルターの選択や取付け不良等を起こし易く、実際のところ金属イオン濃度を各金属イオン毎で数ppbの単位にまで低減することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−213200号公報
【特許文献2】特開平5−317654号公報
【特許文献3】特開昭62−63555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電子、半導体及び精密加工分野等での使用に要求される数ppbのレベルにまで含有金属イオン濃度を低減することができる非イオン型界面活性剤の処理方法及びそのようなレベルにまで金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤の製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に水を特定割合となるよう加えた水性希釈溶液を、特定のカチオン交換樹脂と特定のアニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供して処理すると、金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下にまで低減することができることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して水を40.0質量%以上〜98.0質量%未満となるよう加えた水性希釈溶液を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供し、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下となるように処理することを特徴とする非イオン型界面活性剤の処理方法に係る。また本発明は、金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤をかかる処理方法によって処理することを特徴とする金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤の製造方法に係る。
【0008】
先ず、本発明に係る非イオン型界面活性剤の処理方法(以下、単に本発明の処理方法という)について説明する。本発明の処理方法では、金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に水を特定割合で加えた水性希釈溶液をイオン交換法に供する。
【0009】
加える水の割合は、金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して40.0質量%以上〜98.0質量%未満となるようにする。加える水の量を金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して40.0質量%以上〜98.0質量%未満とすることにより、親水性の強い常温で固状の非イオン型界面活性剤であっても、それを均一な水性希釈溶液とすることができ、本発明を適用することができる。イオン交換法に供して処理した非イオン型界面活性剤を水を含まない状態で使用したい場合には、水を容易に留去することもできる。
【0010】
本発明の処理方法を適用するのに好適な非イオン型界面活性剤は、グリフィン法によるHLB値が7〜18のものである。グリフィン法によるHLB値は下記の数1により算出される値であり、その詳細については例えば、藤本武彦著「界面活性剤入門」、三洋化成工業株式会社発行、141〜145頁(2007年)に記載されている。
【0011】
【数1】
【0012】
前記の数1は通常、ポリオキシエチレン鎖以外のポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン型界面活性剤への適用はできないとされているが、本発明においては、ポリオキシエチレン鎖部分のみを親水基とし、これ以外のポリオキシアルキレン鎖は疎水基として計算するものとし、またオキシエチレン単位を含むポリオキシアルキレンランダム鎖やポリオキシアルキレンブロック鎖の場合には、オキシエチレン単位の合計を親水基として計算し、オキシエチレン単位以外のオキシアルキレン単位の合計を疎水基として計算するものとする。
【0013】
本発明の処理方法を適用するのに好適な非イオン型界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン2級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミドエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテルホルマリン縮合物、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エーテルエステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテルエステル、モノオール型ポリエーテル、ジオール型ポリエーテル、ポリオール型ポリエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアセチレン系エーテル及びプルロニック型ポリエーテルが挙げられる。
【0014】
本発明の処理方法では、前記のように水を加えると共に、更に炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数2〜4のグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び乳酸エステルから選ばれる少なくとも一つを適宜に加えることもできる。
【0015】
本発明の処理方法では、前記のような水性希釈溶液を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供する。強酸性カチオン交換樹脂としては、市販品を使用できるが、なかでもゲル型強酸性カチオン交換樹脂を使用するのが好ましい。かかるゲル型強酸性カチオン交換樹脂としては、いずれも商品名で、アンバーライトIR−124、アンバーライトIR−120B(共に米国ダウ・ケミカル社製)、オルライトDS−1(オルガノ社製)、デュオライトC20J、デュオライトC20LF、デュオライトC255LFH(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンSK−110、ダイヤイオンSK−1B(共に三菱化学社製)等のゲル型でスルホン酸型のものが挙げられる。また強アルカリ性アニオン交換樹脂としては、これも市販品を使用できるが、なかでもゲル型強アルカリ性アニオン交換樹脂を使用するのが好ましい。かかるゲル型強アルカリ性アニオン交換樹脂としては、いずれも商品名で、アンバーライトIRA−400J、アンバーライトIRA−410J、デュオライトA113LF、デュオライトA116(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、オルライトDS−2(オルガノ社製)、ダイヤイオンSA12A、ダイヤイオンSA20A(共に三菱化学社製)等のゲル型で4級アンモニウム塩型のものが挙げられる。
【0016】
イオン交換法に供する強酸性カチオン交換樹脂及び強アルカリ性アニオン交換樹脂について以上説明したが、本発明の処理方法では、前記のゲル型でスルホン酸型の強酸性カチオン交換樹脂やゲル型で4級アンモニウム塩型の強アルカリ性アニオン交換樹脂と組み合わせて用いる場合には、いずれも商品名で、デュオライトC−433LF(米国ダウ・ケミカル社製)等の弱酸性カチオン交換樹脂やアンバーライトIRA67(米国ダウ・ケミカル社製)、デュオライトA−375LF(米国ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンWA10(三菱化学社製)等の弱アルカリ性アニオン交換樹脂も使用することができる。またいずれも商品名で、デュオライトMB5113、デュオライトUP6000、デュオライトUP7000(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、アンバーライトEG−4A−HG、アンバーライトMB−1、アンバーライトMB−2、アンバージェットESP−2、アンバージェットESP−1(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンSMNUP、ダイヤイオンSMT100L(共に三菱化学社製)、オルライトDS−3(オルガノ社製)等、予め強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂とが混合された状態で市販されているものも使用できる。
【0017】
本発明の処理方法では、以上説明したように、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いるが、双方の混合比は、強酸性カチオン交換樹脂/強アルカリ性アニオン交換樹脂の容量比で、1/4〜4/1とするのが好ましく、1/3〜3/1とするのがより好ましい。
【0018】
またイオン交換処理する際の空間速度(SV)は0.01〜20.0とするのが好ましく、0.1〜10.0とするのがより好ましい。更にイオン交換処理する際の水性希釈溶液の温度は0〜60℃とするのが好ましく、10〜50℃とするのがより好ましい。
【0019】
本発明の処理方法において、イオン交換処理する際の具体的な方法としては、バッチ法やカラム法が挙げられるが、なかでもカラム法が好ましい。
【0020】
本発明の処理方法では、以上説明したイオン交換法により、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下、好ましくはNa、K、Ca、Mg、Mn、Fe、Al、Cu、Zn、Ni及びCrの金属イオン濃度をこれらの各金属イオン毎で3ppb以下、更に好ましくはこれらの各金属イオン毎で1ppb以下となるようにする。
【0021】
本発明の処理方法において、各金属イオンの濃度は誘導結合プラズマ質量分析法により測定して求めることができる。
【0022】
次に、本発明に係る金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤の製造方法について説明する。本発明に係る金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤の製造方法は、金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤を以上説明した本発明の処理方法によって処理することを特徴とするもので、前記したように金属イオン濃度を各金属イオン毎で低減した非イオン型界面活性剤の製造方法である。
【0023】
本発明の処理方法によって処理し、金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤の水性希釈溶液は、使用目的により、濃縮、希釈、場合によっては乾燥して使用に供することができる。
【0024】
イオン交換法に供した非イオン型界面活性剤の水性希釈溶液からの水等の留去には、公知の方法を適用できる。これには例えば、減圧蒸留法、薄膜蒸留法、分子蒸留法等が挙げられる。
【0025】
本発明の処理方法によって処理し、金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤は、半導体製造プロセスの各工程で用いる洗浄液や表面処理液、ホトレジストプロセスの処理液、剥離液、現像液、洗浄液、コート剤、電池、コンデンサ及びキャパシター等の電解液や電極製造組成物、種々のコート剤、インクや塗料における顔料やカーボンブラックの分散剤、ナノテクノロジーにおけるカーボンナノチューブ、フラーレン及び金属ナノ粒子の分散剤、色素増感型太陽電池における酸化チタンの分散剤等、多くの分野において有用である。
【発明の効果】
【0026】
以上説明した本発明によると、電子、半導体及び精密加工分野等での使用に要求される数ppbのレベルにまで金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤を得ることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするために実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0028】
実施例1
金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−1)200gに1800gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。前記の試料及びカラム内の液温を10℃で一定に保温し、空間速度(SV)1.4で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0029】
実施例2
金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−2)100gに1900gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)50mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)100mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。前記の試料及びカラム内の液温を25℃で一定に保温し、空間速度(SV)0.4で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0030】
実施例3
金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−3)800gに1200gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)120mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)40mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を40℃で一定に保温し、空間速度(SV)2.5で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0031】
実施例4
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤(A−4)400gに1600gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。以下、試料及びカラム内の液温と、空間速度(SV)を表1に記載したように変更したこと以外は実施例1と同様にして、試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0032】
実施例5
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤(A−5)750gに1200gの水及び50gの2−プロパノールを加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)120mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)40mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を25℃で一定に保温し、空間速度(SV)1.5で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0033】
実施例6
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤(A−5)1000gに1000gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)120mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)40mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を20℃で一定に保温し、空間速度(SV)2.2で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0034】
比較例1
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤(A−1)2000gをメタノール800gに溶解し、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのメタノールで十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を25℃に保温し、空間速度(SV)1.0で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0035】
比較例2
試料として金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−2)を用いた。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを均一に混合し、ガラスフィルターで混合樹脂を炉別して、恒量になるまで40℃で真空乾燥した後、500gの試料中でなじませ、24時間静置した。静置した混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填し、試料及びカラム内の液温を30℃で一定に保温し、空間速度(SV)0.1で試料2000gを水を加えることなくそのままカラムに通してイオン交換処理した。
【0036】
比較例3
金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−2)100gに1900gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを垂直にセットした内容量300mLカラムに充填し、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を25℃で一定に保温し、空間速度(SV)1.1で試料をカラムに通してイオン交換処理した。
【0037】
比較例4
金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A−1)200gに1800gの水を加えて混合し、水性希釈溶液として、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR−120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを用い、また強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA−400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを用いたが、双方を混合せずに、前者をカラム前段(上段)にセットし、また後者をカラム後段(下段)にセットして、その他は実施例1と同様に行ない、試料をイオン交換処理した。
【0038】
各例のイオン交換処理の処理条件等を表1にまとめて示し、また各例でイオン交換処理したものについてそれらの金属イオン濃度を表2にまとめて示した。但し、比較例5はイオン交換処理をしていない未処理の例である。尚、金属イオン濃度は各例でイオン交換処理したものを減圧加熱して水やメタノールを留去した非イオン型界面活性剤に対する濃度であり、かかる金属イオン濃度は誘導結合プラズマ質量分析装置としてAgilent 7700s(アジレント・テクノロジー社製の商品名)を用いた誘導結合プラズマ質量分析法によって測定した。データを省略するが、未処理の非イオン型界面活性剤(A−2)〜(A−5)はいずれも、未処理の非イオン型界面活性剤(A−1)と同様、各金属イオンを高濃度で含有していた。
【0039】
【表1】
【0040】
表1において、
A−1:ポリオキシエチレンステアリルエーテル(分子量:1150、HLB(グリフィン法):15.3
A−2:ポリオキシアルキレンオクチルエーテル(分子量:2318、HLB(グリフィン法):9.9
A−3:トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル(分子量:4248、HLB(グリフィン法):13.7
A−4:オルフィンE1010(日新化学工業社製の商品名、分子量:666、HLB(グリフィン法):13.3
A−5:オルフィンE1020(日新化学工業社製の商品名、分子量:1106、HLB(グリフィン法):15.9
水添加量:金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対する水の添加割合
【0041】
【表2】
【0042】
表1に対応する表2の結果からも、本発明の処理方法によると、金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下、各実施例の場合には1ppb以下にまで金属イオン濃度を低減することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して水を40.0質量%以上〜98.0質量%未満となるよう加えた水性希釈溶液を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供し、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下となるように処理することを特徴とする非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項2】
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対して水を40.0質量%以上〜98.0質量%未満となるよう加えると共に、更に炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数2〜4のグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び乳酸エステルから選ばれる少なくとも一つを加えた水性希釈溶液を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供し、温度0〜60℃、空間速度0.1〜10.0で通液して、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下となるよう処理することを特徴とする非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項3】
強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂が、ともにゲル型のものである請求項1又は2記載の非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項4】
非イオン型界面活性剤に対するNa、K、Ca、Mg、Al、Mn、Fe、Cu、Ni、Cr及びZnの各金属イオン濃度が3ppb以下となるように処理する請求項1〜3のいずれか一つの項記載の非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項5】
非イオン型界面活性剤に対するNa、K、Ca、Mg、Al、Mn、Fe、Cu、Ni、Cr及びZnの各金属イオン濃度が1ppb以下となるように処理する請求項1〜3のいずれか一つの項記載の非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項6】
非イオン型界面活性剤が、グリフィン法によるHLB値が7〜18のものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載の非イオン型界面活性剤の処理方法。
【請求項7】
金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤を請求項1〜6のいずれか一つの項記載の処理方法で処理することを特徴とする金属イオン濃度を低減した非イオン型界面活性剤の製造方法。