X線源としてCu−Kα線を用いて該吸着材を測定したときに、9チタン酸塩に由来する2θ=8〜10°のメーンピーク(A1)と、結晶性シリコチタネートの2θ=10〜13°のメーンピーク(B1)の高さ比(A1/B1)で、5〜40%であることを特徴とする請求項5記載の吸着剤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明に係る吸着剤は重金属イオンを吸着するものである。本発明の吸着剤で吸着する重金属イオンとしては、例えば、Pb、Cu、Zn、Cd、Hg、Co、Ni、Fe、Mn、Ag等の1種又は2種以上が挙げられ、これらのうち、Pb、Cu、Zn、Cd及びHgから選ばれる1種又は2種であることが特に好ましい。
【0011】
本発明に係る吸着剤に含有させる結晶性シリコチタネートは、一般式;A
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(式中、AはNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示す。式中、nは0〜8を示す。)で表される。
【0012】
なお、一般式;A
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(式中、AはNa及びKのアルカリ金属を示す。式中、nは0〜8を示す。)で表される結晶性シリコチタネート(以下、単に「結晶性シリコチタネート」と呼ぶことがある)において、更に詳細な組成については定かではないが、式中のAがNa及びKを含む場合は、一般式;Na
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O及びK
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oを含むか、或いは(Na
xK
(1-x))
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(式中、xは0超1未満)であると本発明者らは推測している。
【0013】
本発明に係る吸着剤に含有させる結晶性シリコチタネートは、該結晶性シリコチタネートを線源としてCu−Kα線を用いてX線回折分析を行い、2θ=10°以上13°以下の回折ピーク(メーンピーク(B1))の半値幅からシェラーの式より求められる結晶子径が150オングストローム以上、好ましくは160〜250オングストローム、特に好ましくは180〜230オングストロームであることが一つの特徴である。
【0014】
本発明に係る吸着剤は、前記特徴を有することに加えて、該結晶性シリコチタネートを線源としてCu−Kα線を用いてX線回折測定したときに、結晶性シリコチタネートの2θ=10°以上13°以下の格子面(100面)の回折ピーク(メーンピーク(B1))の半値幅が、0.3〜0.7°、好ましくは0.3〜0.55°であることも一つの特徴である。
【0015】
非特許文献2においては、チタン源として四塩化チタンを用い、ケイ酸源及び四塩化チタンは、Ti/Siが0.32となる量で混合溶液に添加して得られる結晶子径が80〜130オングストロームである結晶性シリコチタネートが開示されている。
本発明者らは、重金属イオンの吸着能には、吸着剤に含有させる結晶性シリコチタネートの2θ=10°以上13°以下の回折ピーク(メーンピーク(B1))から求められる結晶子径が関係し、結晶子径を非特許文献に比べて大きい特定の範囲とすることで非特許文献2に比べて、重金属イオンの吸着能が向上した吸着剤になることを見出した。
【0016】
また、本発明に係る吸着剤において、含有させる結晶性シリコチタネートは、カリウムの含有量がK
2O換算で、A
2Oにする重量比(K
2O/A
2O)で0超50質量%以下、好ましくは5質量%以上40質量%以下であることが、重金属イオンの吸着能をより一層向上させる観点から好ましい。
【0017】
本発明に係る吸着剤は、前記結晶性シリコチタネートを単独で用いてもよいが、一般式;A'
4Ti
9O
20・mH
2O(式中、A'はNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示す。式中、mは0以上の数を表す。)で表される9チタン酸塩と併用して用いることが出来る。本発明において、前記結晶性シリコチタネートと9チタン酸塩を併用して用いると、例えば、Hgの重金属イオンの吸着性能を飛躍的に向上させることができる。
【0018】
なお、A'
4Ti
9O
20・mH
2O(式中、A'はNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示す。式中、mは0以上の数を表す。)で表される9チタン酸塩((以下、単に「9チタン酸塩」と呼ぶことがある)において、更に詳細な組成については定かではないが、式中のAがNa及びKを含む場合は、一般式;Na
4Ti
9O
20・mH
2O及びK
4Ti
9O
20・mH
2Oを含むか、或いは(Na
xK
(1-x))
4Ti
9O
20・mH
2O(式中、xは0超1未満)であると本発明者らは推測している。
【0019】
本発明に係る吸着剤において、前記9チタン酸塩の含有量は、X線源としてCu−Kα線を用いて該吸着剤を測定したときに、9チタン酸塩に由来する2θ=8〜10°のメーンピーク(A1)と、結晶性シリコチタネートの2θ=10〜13°のメーンピーク(B1)の高さ比(A1/B1)で、5〜40%、好ましくは5〜30%の範囲であることが、特にHg等の重金属イオンの吸着性能を向上させることができる観点から好ましい。
【0020】
また、本発明の吸着剤は、組成分析によって得られる前記結晶性シリコチタネートに対する前記9チタン酸塩のモル比(前者:後者)が、1:0.25〜0.45であることが好ましく、1:0.30〜0.40であることがより好ましく、1:0.35〜0.38であることが更に好ましい。
【0021】
<結晶性シリコチタネート:9チタン酸塩のモル比の求め方>
(a)吸着剤を、適当な容器(アルミリング等)に入れ、ダイスで挟みこんでからプレス機で10MPaの圧力をかけてペレット化することにより測定用試料を得る。この試料を蛍光X線装置(装置名:ZSX100e、管球:Rh(4kW)、雰囲気:真空、分析窓:Be(30μm)、測定モード:SQX分析(EZスキャン)、測定径:30mmφ、(株)リガク製)で全元素測定する。吸着剤中のSiO
2及びTiO
2の含有量(質量%)を、半定量分析法であるSQX法で計算することで算出する。
(b)求めたSiO
2及びTiO
2の含有量(質量%)をそれぞれの分子量で割り、吸着剤100g中のSiO
2及びTiO
2のモル数を得る。
(c)前記で求めた吸着剤中のSiO
2のモル数の3分の1を吸着剤中の前記結晶性シリコチタネート(Na
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O、(Na
xK
(1-x))
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O及びK
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oから選ばれる少なくとも1種)のモル数と仮定する。また、前記結晶性シリコチタネート1モル中のTi原子のモル数が4であることから、下記式(1)により吸着剤中の前記チタン酸塩のモル数を求める。
【数1】
(d)得られた結晶性シリコチタネートのモル数及びチタン酸塩のモル数から上記の比を得る。
【0022】
本発明の吸着剤は、例えばケイ酸源と、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物と、四塩化チタンと、水とを混合して、混合ゲルを得る第一工程と、第一工程により得られた混合ゲルを水熱反応させる第二工程とを有し、第一工程において、混合ゲルに含まれるTiとSiとのモル比がTi/Si=0.5以上3.0以下となるように、ケイ酸源及び四塩化チタンとを添加することにより製造することが出来る。
【0023】
前記の吸着剤の製造方法によれば、結晶性シリコチタネートのみを含有する吸着剤及び結晶性シリコチタネートと9チタン酸塩の両方を含有する吸着剤を製造することができる。
【0024】
以下、本発明の吸着剤の製造方法について説明する。
第一工程に係るケイ酸源としては、例えば、ケイ酸ソーダが挙げられる。また、ケイ酸アルカリ(すなわちケイ酸のアルカリ金属塩)をカチオン交換することにより得られる活性ケイ酸も挙げられる。
【0025】
活性ケイ酸は、ケイ酸アルカリ水溶液を例えばカチオン交換樹脂に接触させてカチオン交換して得られるものである。ケイ酸アルカリ水溶液の原料としては、通常水ガラス(水ガラス1号〜4号等)と呼ばれるケイ酸ナトリウム水溶液が好適に用いられる。このものは比較的安価であり、容易に手に入れることができる。また、Naイオンを嫌う半導体用途では、ケイ酸カリウム水溶液が原料としてふさわしい。固体状のメタケイ酸アルカリを水に溶かしてケイ酸アルカリ水溶液を調製する方法もある。メタケイ酸アルカリは晶析工程を経て製造されるので、不純物の少ないものがある。ケイ酸アルカリ水溶液は、必要に応じて水で希釈して使用する。
【0026】
活性ケイ酸を調製するときに使用するカチオン交換樹脂は、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に制限されない。ケイ酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂との接触工程では、例えばケイ酸アルカリ水溶液をシリカが濃度3質量%以上10質量%以下となるように水に希釈し、次いで、希釈したケイ酸アルカリ水溶液をH型強酸性又は弱酸性カチオン交換樹脂に接触させて脱アルカリする。更に必要に応じてOH型強塩基性アニオン交換樹脂に接触させて脱アニオンすることができる。この工程によって、活性ケイ酸水溶液が調製される。ケイ酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂との接触条件の詳細については、従来、様々な提案が既にあり、本発明ではそれら公知のいかなる接触条件も採用することができる。
【0027】
第一工程において用いられるナトリウム化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらのナトリウム化合物のうち、炭酸ナトリウムを用いると炭酸ガスが発生するため、そのようなガスの発生がない水酸ナトリウムを用いることが、中和反応を円滑に進める観点から好ましい。
【0028】
また、カリウム化合物としては、例えば、水酸化カリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらのカリウム化合物のうち、炭酸カリウムを用いると炭酸ガスが発生するため、そのようなガスの発生がない水酸化カリウムを用いることが、中和反応を円滑に進める観点から好ましい。
【0029】
第一工程においてナトリウム化合物及びカリウム化合物を用いる場合は、ナトリウム化合物とカリウム化合物との合計モル数に対し、カリウム化合物のモル数の割合が0%超50%以下であることが好ましく、5%以上30%以下であることがより好ましい。
【0030】
ケイ酸源及び四塩化チタンの添加量は、混合ゲル中の四塩化チタン由来のTiとケイ酸源由来のSiとのモル比であるTi/Siが特定比となる量にする。例えば、非特許文献3においては、チタン源として四塩化チタンを用いているが、ケイ酸源及び四塩化チタンは、Ti/Si比が0.32となる量で混合溶液に添加されている。これに対し、本製造方法では、Ti/Si比が0.5以上3.0以下となるような量でケイ酸源及び四塩化チタンを添加する。本発明者らが検討した結果、混合ゲル中のTi/Si比を前記のモル比範囲に設定することで、結晶性シリコチタネートとして、結晶化度が高く、結晶子径及び半値幅が上記範囲のものが得られやすくなる。また、混合ゲル中のTi/Si比は、1.0以上3.0以下であることが好ましい。
【0031】
なお、結晶性シリコチタネートのみを含む吸着剤を得る場合は、Ti/Siのモル比は、1.2以上1.5以下であり、結晶性シリコチタネートと9チタン酸塩を含有する吸着剤を得る場合はTi/Siのモル比は1.8以上2.2以下であることが好ましい。
【0032】
また、混合ゲルに占めるSiO
2換算のケイ酸源濃度とTiO
2換算の四塩化チタン濃度の総量が2.0質量%以上40質量%以下であり、かつ混合ゲルに占めるA
2O/SiO
2のモル比=0.5以上3.0以下となるようにケイ酸源及び四塩化チタンを添加することが望ましい。ここで、AはNa及びKを示す。前記範囲内にケイ酸源および四塩化チタンの添加量を調整することで、目的とする結晶性シリコチタネートの収率を満足すべき程度に高めることができる。
【0033】
A
2Oのモル数は、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムのイオン数を酸化物換算で表したもの、換言すれば、ナトリウムやカリウム等のアルカリと四塩化チタンとの中和反応により使用されたナトリウムやカリウムの量を除いて求められるものである。
【0034】
なお、結晶性シリコチタネートのみを含む吸着剤を得る場合は、A
2O/SiO
2のモル比=0.5以上2.5以下、結晶性シリコチタネートと9チタン酸塩を含有する吸着剤を得る場合は、1.0以上1.8以下となるようにケイ酸源及び四塩化チタンを添加することが望ましい。
【0035】
第一工程において用いられる四塩化チタンは、工業的に入手可能なものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0036】
第一工程において、ケイ酸源、ナトリウム化合物、カリウム化合物、及び四塩化チタンは、それぞれ水溶液の形態で反応系に添加することができる。場合によっては固体の形態で添加することができる。更に第一工程では、得られた混合ゲルに対して、必要であれば純水を用いて該混合ゲルの濃度を調整することができる。
【0037】
第一工程において、ケイ酸源、ナトリウム化合物、カリウム化合物、及び四塩化チタンは、種々の添加順序で添加することができる。例えば(1)ケイ酸源、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物、並びに水を混合したものに、四塩化チタンを添加することにより混合ゲルを得ることができる(この添加順序のことを、以下、単に「(1)の実施」ということもある。)。この(1)の実施は、四塩化チタンから塩素の発生をおさえる点で好ましい。
【0038】
第一工程において別の添加順序として、(2)ケイ酸アルカリをカチオン交換することによって得られる活性ケイ酸(以下、単に「活性ケイ酸」ということもある。)水溶液と四塩化チタンと水とを混合したものに、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物を添加する、という態様を採用することができる。この添加順序を採用しても、(1)の実施形態と同様に混合ゲルを得ることができる(この添加順序のことを、以下、単に「(2)の実施」ということがある。)。四塩化チタンはその水溶液の形態又は固体の形態で添加することができる。同様に、ナトリウム化合物及びカリウム化合物も、その水溶液の形態又は固体の形態で添加することができる。
【0039】
(1)及び(2)の実施において、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物は、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度(A
2O濃度)がNa
2O換算で0.5質量%以上15.0質量%以下、特に0.7質量%以上13質量%以下となるように添加されることが好ましい。混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量及び混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算の濃度(以下「ナトリウム及ぶカリウムの合計濃度(第一工程でカリウム化合物を用いない場合、ナトリウム濃度」と言う)は、以下の式で計算される。
混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量(g)=(前記のAのモル数ー四塩化チタン由来の塩化物イオンのモル数)×0.5×Na
2O分子量
混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算の濃度(質量%)=混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量/{混合ゲル中の水分量+混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量}×100
【0040】
ケイ酸源の選択と混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度の調整を組み合わせることにより、Ti:Siのモル比が4:3の結晶性シリコチタネート以外の結晶性シリコチタネートの生成を抑制することができる。ケイ酸源としてケイ酸ソーダ又はケイ酸カリを用いた場合、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度をNa
2O換算で2.0質量%以上とすることで、Ti:Siのモル比が5:12の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となり、一方、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度をNa
2O換算で6.0質量%以下とすることで、Ti:Siのモル比が1:
1の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となる。また、ケイ酸源としてケイ酸アルカリをカチオン交換することにより得られる活性ケイ酸を用いた場合、Na
2O換算で1.0質量%以上とすることで、Ti:Siのモル比が5:12の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となり、一方、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度をNa
2O換算で6.0質量%以下とすることで、Ti:Siのモル比が1:1の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となる。
【0041】
なお、ケイ酸源としてケイ酸ナトリウムを用いた場合は、ケイ酸ナトリウム中のナトリウム成分は、同時に混合ゲル中のナトリウム源となる。したがって、ここで言う「混合ゲル中におけるナトリウムのNa
2O換算質量(g)」とは混合ゲル中のすべてのナトリウム成分の和として計数される。同様に、「混合ゲル中におけるカリウムのNa
2O換算質量(g)」も混合ゲル中のすべてのカリウム成分の和として計数される。
【0042】
(1)及び(2)の実施において、四塩化チタンの添加は、均一なゲルを得るため一定の時間をかけて、四塩化チタン水溶液として段階的又は連続的に行うことが望ましい。このため、四塩化チタンの添加にはペリスタポンプ等を好適に用いることができる。
【0043】
第一工程により得られた混合ゲルは、後述する第二工程である水熱反応を行う前に、0.1時間以上5時間以下の時間にわたり、10℃以上100℃以下で熟成を行うことが、均一な生成物を得る点で好ましい。熟成工程は、例えば静置状態で行ってもよく、あるいはラインミキサーなどを用いた撹拌状態で行ってもよい。
【0044】
本発明においては第一工程において得られた前記混合ゲルを、第二工程である水熱反応に付して結晶性シリコチタネートを得る。水熱反応としては、結晶性シリコチタネートが合成できる条件であれば、いかなる条件であってもよく制限されない。通常、オートクレーブ中で好ましくは120℃以上200℃以下、更に好ましくは140℃以上180℃以下の温度において、好ましくは6時間以上120時間以下、更に好ましくは12時間以上100時間以下の時間にわたって、加圧下に反応させる。反応時間は、合成装置のスケールに応じて選定できる。
【0045】
前記第二工程で得られた結晶性シリコチタネートを含有する含水物は乾燥させ、得られた乾燥物を必要により解砕又は粉砕して粉末状(粒状を含む)とすることができる。また、結晶性シリコチタネートを含有する含水物を複数の開孔が形成された開孔部材から押出成形して棒状成形体を得、得られた該棒状成形体を乾燥させて柱状にしてもよいし、乾燥させた該棒状成形体を球状に成形したり、解砕又は粉砕して粒子状としてもよい。
【0046】
開孔部材に形成された孔の形状としては、円形、三角形、多角形、環形等を挙げることができる。開孔の真円換算径は0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5mm以下がより好ましい。ここでいう真円換算径は、孔一つの面積を円面積とした場合の該面積から算出される円の直径である。押出成形後の乾燥温度は例えば例えば50℃以上200℃以下とすることができる。また乾燥時間は1時間以上120時間以下とすることができる。
【0047】
乾燥させた棒状成形体は、そのままでも吸着剤として用いることができるし、軽くほぐして用いてもよい。また乾燥後の棒状成形体は粉砕して用いてもよい。これら各種の方法で得られた結晶性シリコチタネートを含有する粉末状のものは、更に分級してから吸着剤として用いることが、重金属イオンの吸着効率を高める等の観点から好ましい。分級は、例えばJISZ8801−1に規定する公称目開きが1000μm以下、特に710μm以下の第1の篩を用いることが好ましい。
【0048】
上記製造方法によれば、反応条件を適宜選択するだけで、結晶性シリコチタネートのみだけでなく、結晶性シリコチタネートと9チタン酸塩を含有する吸着剤を一気に製造できると言う工業的な利点も有する。
なお、本発明に係る結晶性シリコチタネートと9チタン酸塩を含有する吸着剤の場合は、上記した製法でX線回折的に単相の結晶性シリコチタネートを製造し、別途、市販若しくは公知の製造方法で製造した9チタン酸塩を、後で混合処理してもよいことは言うまでもない。
【0049】
本発明に係る結晶性シリコチタネートを含有することを特徴とする吸着剤は、必要に応じて常法に従い成形加工し、それによって得られた成形体を重金属イオンの吸着剤として用いてもよい。
【0050】
前記の成形加工としては、例えば結晶性シリコチタネートを含有する粉末状の吸着剤を顆粒状に成型するための造粒加工や結晶性シリコチタネートを含有する粉末状の吸着剤をスラリー化して塩化カルシウム等の硬化剤を含む液中に滴下して結晶性シリコチタネートを含有する粉末状の吸着剤をカプセル化する方法、樹脂芯材の表面に結晶性シリコチタネートを含有する粉末状の吸着剤を添着被覆処理する方法、天然繊維または合成繊維で形成されたシート状基材の表面及び/又は内部に結晶性シリコチタネートを含有する粉末状の吸着剤を付着させて固定化してシート状にする方法などを挙げることができる。造粒加工の方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば攪拌混合造粒、転動造粒、押し出し造粒、破砕造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒(スプレードライ)、圧縮造粒等を挙げることができる。造粒の過程において必要に応じバインダーや溶媒を添加、混合してもよい。バインダーとしては、公知のもの、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、デンプン、コーンスターチ、糖蜜、乳糖、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸、ポリアクリル酸、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。溶媒としては水性溶媒や有機溶媒等各種のものを用いることができる。
【0051】
また、結晶性シリコチタネートを含有する含水状態のものを造粒加工した顆粒状のものは、吸着剤を充填してなる吸着容器及び吸着塔を有する水処理システムの吸着剤として好適に使用することが出来る。
【0052】
この場合、結晶性シリコチタネートを含有する含水状態のものを造粒加工して得られる顆粒状のものの形状や大きさは、吸着容器や充填塔に充填して、重金属イオンを含む処理水を通水するのに適応するようにその形状及び大きさを適宜調整することが好ましい。
【0053】
また、結晶性シリコチタネートを含有する含水状態のものを造粒加工した顆粒状のものは、更に磁性粒子を含有させることにより、重金属イオンを含む水から磁気分離で回収可能な吸着剤として使用することが出来る。磁性粒子としては、例えば鉄、ニッケル、コバルト等の金属またはこれらを主成分とする磁性合金の粉末、四三酸化鉄、三二酸化鉄、コバルト添加酸化鉄、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の金属酸化物系磁性体の粉末が挙げられる。
【0054】
結晶性シリコチタネートを含有する含水状態のものを造粒加工した顆粒状のものに磁性粒子を含有させる方法としては、例えば、前述した造粒加工操作を磁性粒子を含有させた状態で行えばよい。
【0055】
また、本発明に係る吸着剤は、活性炭と併用して水道水の重金属イオン吸着剤として用いることもできる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
以下に、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断らない限り「%」は「質量%」を表す。実施例及び比較例で使用した評価装置及び使用材料は以下のとおりである。
【0058】
<評価装置>
・X線回折:Bruker社 D8 AdvanceSを用いた。線源としてCu−Kαを用いた。測定条件は、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度0.1°/secとした。
・ICP−AES:Varian社720−ESを用いた。
【0059】
<使用材料>
・ケイ酸カリウム:日本化学工業株式会社製(SiO
2:26.5%、K
2O:13.5%、H
2O:60.00%、SiO
2/K
2O=3.09)。
・ケイ酸ナトリウム:日本化学工業株式会社製(SiO
2:28.96%、Na
2O:9.37%、H
2O:61.67%、SiO
2/Na
2O=3.1)。
・シリカゾル:日本化学工業株式会社製(SiO
2:30%、粒子径15オングストローム)
・苛性カリ:固体試薬 水酸化カリウム(KOH:85%)
・苛性ソーダ水溶液;工業用25%水酸化ナトリウム(NaOH:25%、H
2O:75%)
・四塩化チタン水溶液:株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ社製36.48%水溶液・二酸化チタン:石原産業ST−01
【0060】
〔実施例1〜2及び参考例1〕
<結晶性シリコチタネートの合成>
(1)第一工程
ケイ酸ソーダ、25%苛性ソーダ、85%苛性カリ及び純水を用い表1に示す量で混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、表1に示す量の四塩化チタン水溶液をペリスタポンプで0.5時間にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温(25℃)で静置熟成した。
【0061】
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて表1の温度まで昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に反応を行った。反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートを得た。
【0062】
得られた結晶性シリコチタネートのX線回折構造から判断される組成を以下の表2に示す。また、結晶性シリコチタネートをICPにより元素分析を行いNa量とK量をそれぞれNa
2O換算とK
2O換算で表し、その結果を表2に併記した。また、実施例1〜2及び参考例1で得られた結晶性シリコチタネートのX線回折チャートを
図1に示す。
また、実施例1〜2及び参考例1で得られた結晶性シリコチタネート試料について半値幅、結晶子径を下記のようにして求め、その結果を表3に示す。
半値幅は、線源としてCu−Kα線を用いてX線回折測定を行い、2θ=10°〜13°のメーンピーク(B1)の格子面(100面)における値を求めた。
また、結晶子径は、前記の回折ピークの半値幅を求めた値に基づいて、シェラーの式から求めた。
【0063】
〔比較例1〕
表1に示す添加量でシリカゾルにNaOH水溶液を加えて撹拌した後、四塩化チタン水溶液を加えて、25℃で40分撹拌して混合ゲルを調製した。次いで得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて表1の温度まで昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に170℃で48時間反応を行った。反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートを得た。得られた結晶性シリコチタネートのX線回折チャートを
図2に示す。また、X線回折構造から判断される組成を以下の表2に示す。また、実施例1〜2と同様にして半値幅と結晶子径を測定し、その結果を表3に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
注)表中の「−」は未測定を示す。
【0066】
【表3】
【0067】
{実施例3}
(1)第一工程
3号ケイ酸ソーダ90g、苛性ソーダ水溶液667、49g及び純水84.38gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液443.90gをペリスタポンプで1時間20分にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温で静置熟成した。このとき混合ゲル中のTiとSiとのモル比はTi:Si=2:1であった。また、混合ゲル中のSiO
2の濃度は2%、TiO
2の濃度は5.3%、Na
2O換算したナトリウム濃度は
3.22%であった。
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて170℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に24時間反応を行った。反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して吸着材を得た。得られた吸着材のX線回折構造から判断される組成を以下の表4に示す。また、得られた吸着材のX線回折チャートを
図3に示す。
X線回折チャートにおいて、2θ=10〜13°の範囲に、結晶性シリコチタネートのメーンピーク(B1)(Na
4Ti
4Si
3O
16・6H
2Oに由来する)が検出されるとともに、2θ=8〜10°に9チタン酸塩であるチタン酸ナトリウムのメーンピーク(A1)(Na
4Ti
9O
20・5〜7H
2Oに由来)が検出された。
結晶性シリコチタネートのメーンピークの高さに対してチタン酸ナトリウムのメーンピークの高さの比を求めた。また、上述した方法で結晶性シリコチタネートとチタン酸ナトリウムとのモル比を求めた。また、実施例1〜2と同様にNa量、K量、半値幅及び結晶子径を求めた。
【0068】
【表4】
【0069】
<重金属イオンの吸着試験>
得られた塊状の吸着剤を乳鉢粉砕および100μmのフルイによる分級によりフルイ下の粉末とした。この顆粒状の吸着剤を、100mlの容器に0.1g取り、重金属イオンを溶解した試験溶液100mlを投入し、室温(25℃)で1時間撹拌後、5Cのろ紙でろ過し、ろ液中の重金属イオン濃度をICP発光分析装置で定量した。その結果を下記表6に示す。なお、重金属イオンを溶解した各試験溶液は下記表5のものを使用した。
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】