特開2017-132025(P2017-132025A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人国立高等専門学校機構の特許一覧 ▶ 株式会社エイ・エム・シィの特許一覧 ▶ 株式会社ノトアロイの特許一覧

<>
  • 特開2017132025-切削工具 図000003
  • 特開2017132025-切削工具 図000004
  • 特開2017132025-切削工具 図000005
  • 特開2017132025-切削工具 図000006
  • 特開2017132025-切削工具 図000007
  • 特開2017132025-切削工具 図000008
  • 特開2017132025-切削工具 図000009
  • 特開2017132025-切削工具 図000010
  • 特開2017132025-切削工具 図000011
  • 特開2017132025-切削工具 図000012
  • 特開2017132025-切削工具 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-132025(P2017-132025A)
(43)【公開日】2017年8月3日
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20170707BHJP
【FI】
   B23C5/10 Z
   B23C5/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-16747(P2016-16747)
(22)【出願日】2016年1月30日
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(71)【出願人】
【識別番号】506020285
【氏名又は名称】株式会社エイ・エム・シィ
(71)【出願人】
【識別番号】505131382
【氏名又は名称】株式会社ノトアロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】山本 桂一郎
(72)【発明者】
【氏名】早川 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】酒谷 隆晴
(72)【発明者】
【氏名】若宮 寛明
(72)【発明者】
【氏名】林 憲一
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022KK01
3C022KK02
3C022KK21
(57)【要約】
【課題】 切削効率が高く、工具剛性が高く、且つ寿命が長い切削工具の提供。
【解決手段】 横断面が回転対称形の超硬合金製の工具本体Aを備え、工具本体Aの外面に外周軸線方向に走る4本以上の外刃2を備え、前記外刃2の回転方向にすくい面2bを有する切削工具であって、前記外刃2のすくい面2bは、0.015mm以上であって且つ前記工具本体Aの直径の15%以下の高さに設定されている切削工具。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が回転対称形の超硬合金製の工具本体を備え、
工具本体の外面に外周軸線方向に走る4本以上の外刃を備え、
前記外刃の回転方向にすくい面を有する切削工具であって、
前記外刃のすくい面は、0.015mm以上であって且つ前記工具本体の直径の15%以下の高さに設定されている切削工具。
【請求項2】
前記工具本体の軸方向後部に、軸方向前部より小径の逃げ部を備えることを特徴とする前記請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記外刃は、前記軸からの最短距離に比例した刃幅に設定されていることを特徴とする前記請求項1又は請求項2のいずれかに記載の切削工具。
【請求項4】
前記外刃に挟まれた領域を粗面とすることを特徴とする前記請求項1乃至請求項3に記載の切削工具。
【請求項5】
前記すくい面は、前記軸からの最長距離の位置において軸直交方向に切り立っていることを特長とする前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の切削工具。
【請求項6】
前記工具本体の先端に凹部を備えることを特徴とする前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の切削工具。
【請求項7】
前記工具本体は、先端部の軸方向断面が円弧状であり、
前記外刃の先端部に前記工具本体の先端部に沿う円弧状の底刃を備えることを特徴とする前記請求項1乃至請求項6に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超硬合金の直彫り加工を高効率に行える切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超硬合金の直彫りを行う切削工具は、工作機械のチャックに保持されて対象品に直接接触し精密に削る機能を果たす。
この様に、精密な切削が行われることによって、例えば、ベベルギヤなどの複雑な形状の製品であっても削り出すことが可能となる。
超硬合金に用いられる切削工具の母材となる超硬合金は、例えば、タングステンと炭化タングステンに、コバルトやニッケルなどの結合材とチタンやタンタルなどを適宜混合してプレスし、それを1450℃から1500℃で焼結処理を行うことにより製造される。
【0003】
超硬合金は、上記のように粉末金属を焼結して製造するため、超硬合金製の加工対象に対する切削は、溶解して製造する金属製の加工対象と比較して加工効率が低下することが否めない。
殊に、φ20mmを超える比較的大型の冷間鍛造用超硬合金金型の直彫り加工などについては、加工量が必然的に増大するため、高価な超硬合金製切削工具の消耗が激しく、工具費が嵩み高コストであることが実用化及び普及の阻害要因となっている。
【0004】
そもそも、切削理論は、加工対象よりも切削工具が2倍程度以上硬いという前提で成り立っている。
その様な前提の下、超硬合金製の加工対象を同じ超硬合金製切削工具で加工する場合は、切削条件が少しでも低下すれば、切削工具自体が加工対象によって加工されるという現象が生じる。
【0005】
その様な実情において、従来、例えば、下記特許文献に示す様に、高硬度材を高速で切削する用をなす種々のエンドミルが紹介され、なかには、超硬合金を母材とした上で、耐摩耗性や潤滑性の向上を目的としたコーティングが施されているものも存在する(例えば下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−113808号公報
【特許文献2】特開2015−085462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の工具は、切込量を高めるためにすくい面を大きくする傾向があり、工具剛性を低下させ、割れや欠けが生じる原因となっている。
また、前記の如くコーティングが施された超硬合金製の切削工具は、比較的高価であるにも関わらず、すくい面のコーティングの剥離が切削能率に大きな影響を与えるために、当該すくい面及び逃げ面のコーティングの剥離をもって、早期に工具の寿命が到来するという実態があった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、切削効率が高く、工具剛性が高く、且つ寿命が長い切削工具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明による切削工具は、横断面が回転対称形の超硬合金製の工具本体を備え、工具本体の外面に外周軸線方向に走る4本以上(好ましくは6本以上)の外刃を備え、前記外刃の回転方向にすくい面を有する切削工具であって、前記外刃のすくい面は、0.015mm以上であって且つ前記工具本体の直径の15%以下(好ましくは10%以下)の高さに設定されていることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するための作用効果をより高めるべく、本発明による切削工具は、上記構成に、前記外刃を、前記軸からの最短距離に比例した刃幅に設定し、前記すくい面は、前記軸からの最長距離の位置において軸直交方向に切り立たせ又は前記外刃に挟まれた領域を粗面とする構成を加えることができる。
また、本発明による切削工具は、先端部の軸方向断面を円弧状とし且つ前記外刃の先端部に前記工具本体の先端部に沿う円弧状の底刃を備える構成、前記工具本体の軸方向後部に軸方向前部より小径の逃げ部を備える構成又は前記工具本体の先端に凹部を備える構成を加えることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による切削工具によれば、本発明による切削工具は、横断面が回転対称形の超硬合金製の工具本体を備え、工具本体の外面に外周軸線方向に走る4本以上の外刃を備えているので、加工効率の向上と耐用期間の長期化(従来の数倍)を図ることができる。
また、前記外刃のすくい面は、0.015mm以上であって且つ前記工具本体の直径の15%以下(好ましくは10%以下)の高さに設定されているので、切削工具の剛性を高めることが出来る。
【0012】
更に、前記外刃を前記軸からの最短距離に比例した刃幅に設定することによって、前記外刃に、同回転量に対する周速の相違に応じた剛性を負荷することが出来、前記すくい面を、前記軸からの最長距離の位置において軸直交方向に切り立たせることによって、良好な切削効率を維持しつつすくい面の劣化を抑制することができる。
殊に、精密加工における超硬合金の前記外刃一条単位切削当たりの切削が、一般的なコーティング膜圧の0.015〜0.020mmで行われ、その際の前記外刃一条単位切削当たりの送り量が0.02mm程度である場合には、その効果は顕著である。
【0013】
加えて、本発明による切削工具における前記外刃に挟まれた領域を粗面とすれば、切削くずの付着を抑制することができる他、消耗した工具を電着により人口ダイヤモンドパウダーを接着させることで、電着砥石として再生することが出来る。
また、本発明による切削工具は、先端部の軸方向断面を円弧状とし且つ前記外刃の先端部に前記工具本体の先端部に沿う円弧状の底刃を備える構成、前記工具本体の軸方向後部に軸方向前部より小径の逃げ部を備える構成又は前記工具本体の先端に凹部を備える構成を採ることによって、切削工具の加工に寄与しない領域と加工対象との干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による切削工具の一例を示す要部斜視図である。
図2】本発明による切削工具の工具本体一例を示す写真である。
図3】本発明による切削工具の工具本体一例を示す写真である。
図4】本発明による切削工具の一例を示す(A)正面図、(B)側面図及び(C)A−A矢視断面図である。
図5】本発明による切削工具の一例を示す(A)正面図(90°回転)、(B)平面図及び(C)B−B矢視断面図である。
図6】本発明による切削工具の一例を示す図5の(A)C−C矢視断面図、(B)D−D矢視断面図、(C)E−E矢視断面図、(D)F−F矢視断面図及び(E)背面図である。
図7】本発明による切削工具の例を示す正面図である。
図8】本発明による切削工具の一例を示す(A)正面図及び(B)側面図である。
図9】本発明による切削工具の一例を示す(A)正面図及び(B)側面図である。
図10】本発明による切削工具での切削痕の一例を示す写真である。
図11】本発明による切削工具での切削痕の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による切削工具の実施の形態であるエンドミルを、図面に基づき詳細に説明する。
図1乃至図6に示す例は、横断面が回転対称形(この例では球状)の工具本体Aと、切削装置の回転チャックに装着されるシャンクBを備える超硬合金製の切削工具である。
【0016】
この例の工具本体Aは、工具本体Aの幹となるボディー1と、当該ボディー1の表面に凸設された外刃2を備える。
この例の前記ボディー1は、全体として球状であり、軸方向後方に前記シャンクBの先端が一体的に連続する。
この例の前記ボディー1は、全長にわたって横断面が円形状であり且つ軸方向先端部を含む前部及びその後方に連続する後部の軸方向断面が略対称的な円弧状となるように成形された結果、前記軸方向後部は、軸方向前部より小径の後方逃げ部1cとして機能する。
【0017】
本発明による切削工具は、前記工具本体Aの全面にわたって略均一に0.015mmから0.025mmのコーティング層(図示省略)を備える構成としてもよい。
コーティング層は、例えば、TiN(窒化チタン)、TiAlN(窒化アルミニウムチタン)、CrN(窒化クロム)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、TiCN(炭窒化チタン)、TiSiN(窒化チタンシリコン)、DIA(ダイヤモンドコーティング)などの薄膜を、真空蒸着などで形成したものが挙げられる。
この様な薄膜を前記工具本体Aの表面につけることで、前記工具本体Aの加工対象との接触部の硬度、耐久力、切削速度、寿命、切れ味、面精度をより高い水準で維持することができる。
【0018】
前記外刃2は、前記工具本体Aの外面に、前記ボディー1の表面及び軸線に沿って等間隔(等角度間隔)に6本配置されている。
前記外刃2の先端部は、前記ボディー1の先端部に沿い軸方向前方に向かって円弧状を呈する底刃2aとなり、当該工具本体Aの先端は、前記底刃2aが除かれて陥没した先端逃げ部1bが形成される。
この例の外刃2は、各外刃2の全長にわたって0.1mmの均等な高さを有し、回転方向に面するすくい面2b、回転の遠心方向に面する逃げ面2c及び半回転方向に面する送り面2dをもって、台形状の断面が与えられている。
尚、前記外刃2の高さは、前記工具本体Aの直径の10%以下の高さに設定することが望ましい。
【0019】
前記外刃2は、前記軸からの最長距離にある0.015mmから0.025mm領域において軸直交方向に切り立った前記すくい面2bを備えると共に、当該すくい面2bの内縁から前記ボディー1の表面に向って同じ傾きの対向傾斜面又は湾曲した対向傾斜面を備える。
また、前記外刃2は、逃げ角が20度以下の前記逃げ面2cを備えると共に、当該逃げ面2cの後縁から前記ボディー1の表面に向って反回転方向へ同じ傾きで傾斜する前記送り面2d又は湾曲した送り面2dとして備える。
【0020】
前記外刃2は、前記軸からの最短距離に比例した刃幅を有する。
即ち、当該切削工具の軸から軸直交方向への距離が遠いほど広い刃幅を有し、それに合わせて、前記すくい面2b、逃げ面2c及び送り面2dの幅を広く取り、当該切削工具の軸から軸直交方向への距離が近いほど狭い刃幅を有し、それに合わせて、前記すくい面2b、逃げ面2c及び送り面2dの幅を狭くする。
前記外刃2の刃高(ボディー1の表面からすくい面2bの最高位までの高さ)も、それらの面と同様に、前記軸からの最短距離に比例した刃高とすることができ、最も刃高が低い前記工具本体Aの先端から前記外刃2及び前記ボディー1を切欠してなる平坦部(例えば図7(A)参照)又は凹部(例えば図7(B),(C)参照)を設けることもできる。
【0021】
この例は、前記外刃2,2に挟まれた凹部領域(この例では前記ボディー1の表面)1aを備える。
前記凹部領域1aは、例えば、平坦(図2参照)に仕上げることもできる他、不均一な切削や摩擦が施されたような粗面(図3参照)に仕上げることができる。
この様な粗面加工を施すことによって、切削くずの付着が抑制される他、当該切削工具の前記外刃2が磨耗した後に球状の前記ボディー1が残ることを利用して、当該凹部領域1aの粗面に対して電着等の手段でダイヤモンドパウダーを付着させ、電着砥石として利用することも出来る。
【0022】
上記例の変形例として、円周状の底刃を設けない構成(図8参照)や、後方逃げ部を設けない構成(図8及び図9参照)を採ることができる。
その際、ボディー形状の選択によっては、円筒状などの回転体ボディーを採用し且つ比較的刃高の低い外刃を採用することによって、磨耗後に残るボディーを、前記電着砥石等のベースとして利用することができる。
【0023】
前記工具本体Aが球状であって、当該工具本体Aの表面に略均一な高さの非螺旋形状の外刃2を備え、先端部に切り屑を排出するための先端逃げ部1bを備える図2に示す切削工具を使用して実際に切削を行った例を図10及び図11に示す。
図10は切削後に生じる溝の状態を、当該溝の長手方向に向けて立体的に撮影した写真である。
加工箇所の表面を仔細に見ると、この例によれば、加工時において、工具の回転に沿ったツールマーク(加工痕)が生成される切削状態となっていることがわかる。
【0024】
図11は、連続して溝加工を行った超硬合金ブロックの一部を工学的に撮影したものである。
加工は、写真上位から順に進めていったが、この様に超硬合金に対し比較的広範囲にわたる連続加工を行った際にも、上下溝の切削状態に変化が観られないことから、当該切削工具の切削状態が高い水準で安定していることがわかる。
【符号の説明】
【0025】
A 工具本体,B シャンク,
1 ボディー,1a 凹部領域,1b先端逃げ部,1c 後方逃げ部,
2 外刃,2a 底刃,2b すくい面,2c 逃げ面,2d 送り面,
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11