【解決手段】糸監視装置は、光学式の糸太さ検出部と、補正部と、を備える。糸太さ検出部は、走行する糸の糸太さを検出する。補正部は、糸太さ検出部が検出した糸太さの増大量に基づいて、所定の周期で当該糸太さを補正する第1補正と、糸太さ検出部が検出した糸太さの低減量に基づいて、第1補正と異なる周期で当該糸太さを補正する第2補正と、を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糸の巻取中では、糸が走行することで風が発生して糸監視装置の温度が下がったり、糸が走行することで摩擦熱が発生して糸監視装置の温度が上がったりする。投光素子及び受光素子は、このような温度変化の影響を受けて、特性(投光する光量及び出力する電流等)が変化する。この点、特許文献1及び2では、糸の走行中の温度変化を考慮して、受光素子の出力信号等を補正する処理が開示されている。しかし、特許文献1及び2では、この補正を行うタイミングについて詳細には記載されていない。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、糸の走行中の温度変化を考慮して糸の太さを補正する処理を適切なタイミングで行う糸監視装置を提供することにある。
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸監視装置が提供される。即ち、この糸監視装置は、光学式の糸太さ検出部と、補正部と、を備える。前記糸太さ検出部は、走行する糸の糸太さを検出する。前記補正部は、前記糸太さ検出部が検出した糸太さの増大量に基づいて、所定の周期で当該糸太さを補正する第1補正と、前記糸太さ検出部が検出した糸太さの低減量に基づいて、前記第1補正と異なる周期で当該糸太さを補正する第2補正と、を行う。
【0008】
これにより、糸太さが増大する場合と低減する場合では糸太さの変化の挙動が異なるため、それらに応じた周期を設定することで、糸の走行中の温度変化を考慮した上で、糸太さの変化に応じた適切なタイミングで糸太さを補正することができる。
【0009】
前記の糸監視装置においては、前記補正部は、前記第1補正の周期を、前記第2補正の周期より短くすることが好ましい。
【0010】
これにより、糸太さが増大する場合は、糸太さが急激に変化することがあるため、周期を短くして頻繁に補正を行う必要がある。これに対し、糸太さが低減する場合は、糸太さは緩やかに変化する。しかし、温度変化の影響による場合も、糸太さ検出部の検出値(即ち検出される糸太さ)は緩やかに変化する。従って、糸太さが低減する場合は、糸太さが実際に低減しているのか、又は温度変化の影響によって糸太さが低減しているように見えるのかを見分けるために、周期を長くする必要がある。なお、糸太さが増大する場合は、基本的に実際の糸太さは急激に変化する一方で、上述のように温度変化の影響による糸太さ検出部の検出値は比較的緩やかに変化する。従って、糸太さが実際に増大しているか、又は温度変化の影響によって糸太さが増大しているように見えるかを容易に(短時間で)見分けることができる。以上より、糸太さの変化に応じた適切なタイミングで糸太さを補正することができる。
【0011】
前記の糸監視装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸監視装置は、糸が走行した長さである糸走行長さを検出する糸走行長さ検出部を備える。前記補正部は、前記糸走行長さ検出部が検出した糸走行長さに基づいて、糸が第1所定長さ走行する毎に前記第1補正を行い、糸が第2所定長さ走行する毎に前記第2補正を行う。
【0012】
これにより、糸走行長さに基づいて補正のタイミングが決定されるので、時間に基づいて補正のタイミングを決定する場合と比較して、糸太さを一層正確に補正することができる。
【0013】
前記の糸監視装置においては、前記補正部は、第1所定時間が経過する毎に前記第1補正を行い、第2所定時間が経過する毎に前記第2補正を行うことが好ましい。
【0014】
これにより、糸走行長さを検出することなく補正のタイミングを決定することができるので、処理を簡単にすることができる。
【0015】
前記の糸監視装置においては、前記補正部は、糸の走行が開始してから当該糸が所定長さ走行するまで又は所定時間経過するまでの糸太さの平均に基づいた値を糸基準太さとして求め、当該糸基準太さからの増大量又は低減量に基づいて、前記第1補正又は前記第2補正を行うことが好ましい。
【0016】
これにより、糸の走行が開始してから所定時間は温度変化の影響が小さいと考えられるので、この間に取得した糸太さの平均(糸基準太さ)を基準とすることで、温度変化等の影響を正確に見積もることができる。従って、糸太さを一層正確に補正することができる。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、巻取部と、糸太さ検出部と、補正部と、を備える。前記巻取部は、糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記糸太さ検出部は、走行する糸の糸太さを検出する。前記補正部は、前記糸太さ検出部が検出した糸太さの増大量に基づいて、所定の周期で当該糸太さを補正する第1補正と、前記糸太さ検出部が検出した糸太さの低減量に基づいて、前記第1補正と異なる周期で当該糸太さを補正する第2補正と、を行う。
【0018】
これにより、糸太さが増大する場合と低減する場合では糸太さの変化の挙動が異なるため、それらに応じた周期を設定することで、糸太さの変化に応じた適切なタイミングで糸太さを補正することができる。
【0019】
前記の自動ワインダにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この自動ワインダは、糸が走行した長さである糸走行長さを検出する糸走行長さ検出部を備える。前記巻取部は、少なくとも一時的に巻取速度を変化させながら糸を巻き取る。前記補正部は、前記糸走行長さ検出部が検出した糸走行長さに基づいて、糸が第1所定長さ走行する毎に前記第1補正を行い、糸が第2所定長さ走行する毎に前記第2補正を行う。
【0020】
これにより、巻取速度を変化させながら糸を巻き取る自動ワインダであっても、糸走行長さに基づいて補正を行うことで、適切なタイミングで糸太さを補正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1に示すように、自動ワインダ(糸巻取機)1は、並べて配置された複数のワインダユニット(糸巻取ユニット)10と、その並べられた方向の一端に配置された機台制御部11と、を主として備えている。
【0024】
機台制御部11は、各ワインダユニット10に関する情報を表示可能な表示装置12、及び、オペレータが機台制御部11に対して各種の指示を入力するための指示入力部13等を備えている。自動ワインダ1のオペレータは、表示装置12に表示された各種の表示を確認するとともに、指示入力部13を適宜操作することにより、複数のワインダユニット10を機台制御部11において一括して管理することができる。
【0025】
図1及び
図2に示す各ワインダユニット10は、給糸ボビン20から糸を解舒して、巻取ボビン22に巻き返すように構成されている。なお、巻取ボビン22に糸21が巻き取られた状態のものをパッケージ23と呼ぶ。以下の説明において、「糸走行方向上流側」「糸走行方向下流側」というときは、糸21の走行方向で見たときの上流側及び下流側をそれぞれ意味するものとする。
【0026】
図2に示すように、ワインダユニット10は、本体フレーム24と、給糸部25と、巻取部26と、を主として備えている。
【0027】
本体フレーム24は、ワインダユニット10の側部に配置されている。当該ワインダユニット10が備える構成の大部分は、この本体フレーム24に直接的又は間接的に支持されている。
【0028】
給糸部25は、糸21を供給するための給糸ボビン20を略直立状態で保持することが可能に構成されている。巻取部26は、クレードル28と、巻取ドラム29と、を備えている。
【0029】
クレードル28は、巻取ボビン22を回転可能に支持する。また、クレードル28は、支持した巻取ボビン22の周面を巻取ドラム29の周面に接触させることができるように構成されている。巻取ドラム29は巻取ボビン22に対向して配置されており、図略の巻取ドラム駆動モータによって回転駆動されるように構成されている。また、巻取ドラム29の外周面には、巻取ボビン22に巻き取られる糸21をトラバース(綾振り)するための往復螺旋状の綾振溝(図略)が形成されている。
【0030】
巻取ボビン22の外周面を巻取ドラム29に接触させた状態で当該巻取ドラム29を回転駆動することにより、巻取ボビン22を従動回転させる。これにより、給糸ボビン20から解舒された糸21を、前記綾振溝によってトラバースしつつ巻取ボビン22に巻き取ることができる。なお、糸21をトラバースするための構成は、上記の巻取ドラム29に限らず、例えばこれに代えて、所定のトラバース幅で往復駆動されるトラバースガイドによって糸21をガイドするアーム式のトラバース装置により構成しても良い。アーム式のトラバース装置により構成する場合、巻取ボビン22を直接回転駆動することが好ましい。
【0031】
各ワインダユニット10は、ユニット制御部30を備えている。このユニット制御部30は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアと、前記ROM又はRAMに記憶された制御プログラム等のソフトウェアと、から構成されている。そして、前記ハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、ワインダユニット10の各構成を制御する。また、各ワインダユニット10のユニット制御部30は、前記機台制御部11と通信可能に構成されている。これにより、各ワインダユニット10の動作を、機台制御部11において集中的に管理することが可能となっている。
【0032】
また、ワインダユニット10は、給糸部25と巻取部26との間の糸走行経路中に、糸走行方向上流側から順に、解舒補助装置31と、テンション付与装置32と、糸継装置33と、糸監視装置6と、を配置した構成となっている。
【0033】
解舒補助装置31は、給糸ボビン20から解舒される糸21が遠心力によって振り回されて外側に膨らんだ部分(バルーン)に対して接触する規制部材35を有している。規制部材35をバルーンに接触させることにより、糸21が過度に振り回されることを抑制し、当該バルーンを一定の大きさに保つことで、給糸ボビン20からの糸21の解舒を一定のテンションで行うことができる。
【0034】
テンション付与装置32は、走行する糸21に所定のテンションを付与するものである。本実施形態のテンション付与装置32としては、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものが採用されている。テンション付与装置32は、噛み合わせた状態にある櫛歯の間を屈曲させながら糸21を通過させることにより、当該糸21に対して適切なテンションを付与する。なお、テンション付与装置32には、上記のようなゲート式のもの以外にも、例えばディスク式のものを採用することができる。
【0035】
糸継装置33は、給糸ボビン20と巻取ボビン22との間の糸21が、例えば後述の切断装置(カッタ)16により切断される等して分断状態となったときに、給糸ボビン20側の糸(下糸)と、巻取ボビン22側の糸(上糸)とを接合(糸継ぎ)するように構成されている。糸継装置33の構成は特に限定されないが、例えば圧縮空気により発生させた旋回気流によって糸端同士を撚り合わせる空気式のスプライサを採用することができ、あるいは、機械式のノッタ等を採用することもできる。上糸吸引パイプ44は、巻取ボビン22側の糸端を吸引しつつ捕捉して、糸継装置33に案内する。下糸吸引パイプ45は、給糸ボビン20側の糸端を吸引しつつ捕捉して、糸継装置33に案内する。
【0036】
糸監視装置6は、走行する糸21の状態(太さ、色糸・ポリプロピレン等の異物の混入等)を監視し、糸21に含まれる糸欠陥を検出する。糸監視装置6は、走行する糸21の糸走行速度を検出することができる。糸監視装置6には、当該糸監視装置6が糸欠陥を検出した場合に糸21を切断するためのカッタ16が内蔵されている。なお、糸監視装置6の詳細な構成については後述する。
【0037】
続いて、糸監視装置6で糸欠陥等が検出された場合の動作について、
図2を参照して簡単に説明する。
【0038】
糸監視装置6は、監視中の糸において糸欠陥等を検出した場合は、カッタ16を作動させて糸21を切断するとともに、前述のユニット制御部30に糸欠陥検出信号を送信する。切断された箇所より下流側の糸21は、パッケージ23にいったん巻き取られる。なお、このときパッケージ23に巻き取られる糸21には、糸監視装置6で検出された糸欠陥等の部分が含まれている。ユニット制御部30は、糸欠陥検出信号を受信した後に、巻取部26における糸21の巻取りを停止させる。
【0039】
下糸吸引パイプ45は、給糸ボビン20から送り出される糸端を吸引捕捉して、糸継装置33に案内する。また、これと前後して、上糸吸引パイプ44は、パッケージ23に巻き取られた糸端を吸引捕捉して、糸継装置33に案内する。このとき、パッケージ23に巻き取られた糸欠陥等の部分は、上糸吸引パイプ44によって吸引されて引き出される。
【0040】
糸継装置33は、上糸吸引パイプ44と下糸吸引パイプ45によって案内された糸端同士の接合を行う。これにより、カッタ16によって切断された糸21が、糸欠陥等を含む部分が除去された後に、再び連続状態となる。
【0041】
糸継装置33における糸継ぎ動作が完了すると、ユニット制御部30は、巻取部26による糸21の巻取りを再開させる。以上の動作により、糸監視装置6によって検出された糸欠陥等を除去し、パッケージ23への糸21の巻取りを再開することができる。
【0042】
また、本実施形態では、ユニット制御部30は、リボン巻き(糸21が同一箇所に集まって重なるように巻かれてしまうこと)の発生を防止するために、ディスターブ制御(周期制御)を行う。具体的には、ユニット制御部30は、図略の巻取ドラム駆動モータを制御して巻取ドラム29の回転速度を周期的に変化させて、パッケージ23と巻取ドラム29とを滑らせることで、巻取速度を変化させる。従って、本実施形態では、糸21の糸走行速度は一定ではない。更に、パッケージ23と巻取ドラム29とが滑るため、巻取ドラム29の回転速度を用いた場合であっても、正確な糸走行速度を検出することができない。また、ディスターブ制御を行わない場合であっても、糸走行速度は一定ではない。例えばコーン形状のパッケージを形成する場合は、パッケージの大径側に糸を巻き付けているか、パッケージの小径側に糸を巻き付けているかで糸走行速度が顕著に変化するため、巻取ドラム29の回転速度だけに基づいて正確な糸走行速度を検出することは困難である。
【0043】
次に、
図3を参照して、糸監視装置6の詳細、特に電気的構成について説明する。
図3は、糸監視装置6の電気的構成を示すブロック図である。
【0044】
図3に示すように、糸監視装置6は、光学式のセンサユニット(糸太さ検出部)50と、糸監視制御部60と、を備える。
【0045】
センサユニット50は、糸21の状態を測定することができる。このセンサユニット50は、駆動回路51と、投光部52と、受光部53と、増幅器54と、ハイパスフィルタ55と、増幅回路56と、を備える。また、このセンサユニット50のハウジングには、前記カッタ16が取り付けられている。なお、本実施形態では、合計2組の投光部52及び受光部53が、糸走行経路上の異なる位置に1組ずつ配置されている。即ち、投光部52として、糸走行経路の上流側に配置される第1投光部と、下流側に配置される第2投光部とを備えている。また、受光部53として、糸走行経路の上流側に配置される第1受光部と、下流側に配置される第2受光部とを備えている。
【0046】
投光部52は、発光ダイオード(LED)で構成される発光素子を備える。投光部52は、駆動回路51から入力された駆動電圧に応じた光量で、糸21が走行する空間(
図3のスリット状の凹部)に対して光を照射する。駆動回路51が発生する駆動電圧は、糸監視制御部60から入力される電気信号に基づいて決定される。
【0047】
受光部53は、糸道を挟んで投光部52の反対側に配置されている。受光部53は、フォトダイオード等で構成される受光素子を備える。受光部53は、投光部52から糸21へ照射された光の透過光を受光して、受光量に応じた電気信号(出力電圧又は出力電流)を出力する。この電気信号は、検出領域70に存在する糸21の形状(断面形状)に応じて変化する。ここでいう透過光とは、投光部52から出射された光が糸21の存在によって一部遮断されながら受光部53に到達した光である。換言すれば、透過光は、糸21を通り過ぎた光である。検出領域70は、スリット状の凹部のうちの、投光部52からの光が当たる領域であって、受光部53の受光量に応じて糸21を検出可能な領域である。
【0048】
受光部53が出力する電気信号は、増幅器54で増幅されるとともに、反転処理が行われる。これにより、受光部53の受光量が大きいほど(即ち、糸21が細くなるほど)増幅器54が出力する電気信号が小さくなるように変換される。増幅器54が出力する電気信号は、ハイパスフィルタ55で所定の高周波数の信号が抽出され、再び増幅回路56で増幅される。センサユニット50は、以上のようにして糸21の太さを検出する。センサユニット50は、糸太さの検出結果を示す電気信号を糸監視制御部60へ出力する。
【0049】
糸監視制御部60は、糸走行長さ検出部61と、補正部62と、を備える。糸走行長さ検出部61は、一方の受光部53から出力される電気信号が、他方の受光部53から出力される電気信号に対してどの程度遅れているかを糸21の太さムラ等から求めることで、検出領域70を走行した糸21の長さ(糸走行長さ)を検出する。補正部62は、温度変化による投光部52及び受光部53の特性の変化等を考慮して、糸太さを補正する(詳細は後述)。なお、センサユニット50及び糸監視制御部60は、自動ワインダ1毎に設けられており、自動ワインダ1毎に糸太さの補正が行われる。
【0050】
上述したカッタ16は、センサユニット50のハウジングに形成された検出領域70の近傍に配置されている。また、カッタ16は、例えばソレノイドにより駆動される図示しない切断刃を備えている。カッタ16は糸監視制御部60に電気的に接続されており、糸監視制御部60が出力する切断信号に基づいて、糸21を切断できる。
【0051】
次に、
図4から
図7を参照して、糸監視装置6の補正部62が行う補正について説明する。
図4は、糸走行長さと電気信号の電圧(糸太さ)の関係を示すグラフである。
図5は、糸走行長さと、糸太さと、補正量と、の関係を示すグラフである。
【0052】
図4のグラフは、横軸が糸走行長さであり、縦軸がセンサユニット50から糸監視制御部60に入力される電気信号の電圧(即ち糸太さ)である。以下、時系列に沿ってこのグラフを説明する。糸走行長さが左端の時点では、糸21の巻取りを開始する前であり、検出領域70に糸21は存在しない。従って、糸走行長さが左端の時点の電圧は糸21の有無によらず出力される電圧(
図5の初期調整値)に該当する。
【0053】
その後、上糸吸引パイプ44及び下糸吸引パイプ45が、糸端を糸継装置33に案内することで、糸21が検出領域70に導入される。
図4のグラフでは、糸21が検出領域70に導入された後は、糸21によって光が遮られるため、電気信号の電圧が高くなる。なお、この段階では糸21は走行していないため、糸太さは変化しないので、電気信号の電圧は一定である。
【0054】
その後、糸継装置33が糸継ぎを行った後に、糸21の走行が開始する。
図4のグラフでは、糸21の走行の開始後は、糸21の太さムラ等によって電気信号の電圧が変化している。
【0055】
補正部62は、糸21の走行が開始してから当該糸21が所定長さ(本実施形態では25m)走行するまでの糸太さ(電気信号の電圧)の平均から、上記の初期調整値を減算した値である「糸基準太さ」を求める(
図5を参照)。なお、糸基準太さは、糸21の走行が開始してから所定時間経過するまでの糸太さの平均から求めても良い。なお、糸基準太さを求める際の所定長さ及び所定時間は常に一定であっても良いし、巻取条件(糸21の種類、巻取速度等)に応じた値を用いても良い。
【0056】
補正部62は、糸基準太さを求めた後に、糸平均太さを求める(算出する)。糸平均太さとは、過去の所定長さ又は所定時間における糸21の糸太さの平均(移動平均)である。糸平均太さは、糸基準太さと異なり、調整値を含んだ値である。本実施形態では、糸基準太さと同じである過去の25mの糸太さの平均を糸平均太さとする。なお、糸基準太さを算出するときの所定長さ又は所定時間は、糸平均太さを算出するときの所定長さ又は所定時間と同じであることが好ましいが、異なっていても良い。従って、糸平均太さの算出の開始時(
図4のL0)においては、(糸基準太さ+初期調整値)と糸平均太さは等しい。また、本実施形態では、補正部62は、糸21が5m走行する毎に、糸平均太さを更新する。
【0057】
また、補正部62は、糸平均太さの算出の開始後に、糸太さの補正を開始する。以下、補正部62が行う補正について、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6及び
図7は、糸の走行中の温度変化等を考慮して糸太さを補正する処理を示すフローチャートである。
【0058】
補正部62は、初めに、糸走行長さ検出部61が検出した糸走行長さを取得する(S101)。次に、補正部62は、取得した糸走行長さが第1所定長さ(5m)の整数倍になるまで待機する(S102)。第1所定長さとは、検出した糸太さが増大した場合(温度変化によって電気信号の電圧が増大した場合を含む)の糸太さの補正(以下、第1補正)を行うための周期である。換言すると、補正部62は糸21が第1所定長さ走行する毎に、第1補正を行うか否かを判断する。なお、第1補正の周期は糸走行長さに限られず、所定時間(第1所定時間)毎に行っても良い。
【0059】
補正部62は、糸走行長さが第1所定長さの整数倍(5,10,15等)になると、上述したように糸平均太さを求め、当該糸平均太さが1周期前(即ち5m前)の糸平均太さより大きいか否かを判断する(S103)。なお、1周期前の糸平均太さが存在しない又は0の場合(糸21の走行が開始した直後等)、今回求めた糸平均太さを記憶して、処理を終了する。
【0060】
補正部62は、今回求めた糸平均太さが1周期前の糸平均太さより大きい場合、第1補正実行フラグをONにして(S104)、次の処理へ移行する。なお、補正部62は、今回求めた糸平均太さが1周期前の糸平均太さ以下である場合、第1補正フラグをONにせずに次の処理へ移行する。
【0061】
次に、補正部62は、取得した糸走行長さが第2所定長さ(35m)に到達しているか否かを判断する(S105)。第2所定長さとは、糸太さが低減した場合(温度変化によって電気信号の電圧が低減した場合を含む)の糸太さの補正(以下、第2補正)を行うための周期である。換言すると、補正部62は糸21が第2所定長さ走行する毎に、第2補正を行うか否かを判断する。なお、第2補正の周期は糸走行長さに限られず、所定時間(第2所定時間)毎に行っても良い。
【0062】
補正部62は、糸走行長さが第2所定長さに到達していた(超えていた)場合、今回求めた糸平均太さが1周期前(即ち35m前)の糸平均太さより小さいか否かを判断する(S106)。補正部62は、今回求めた糸平均太さが1周期前の糸平均太さより小さい場合、第2補正実行フラグをONにして(S107)、次の処理へ移行する。なお、補正部62は、今回求めた糸平均太さが1周期前の糸平均太さより大きい場合、第2補正フラグをONにせずに次の処理へ移行する。
【0063】
次に、補正部62は、S106の判断を行った場合は、糸走行長さの値をクリアする(S108)。これにより、糸走行長さが再び0からカウントされる。
【0064】
次に、補正部62は、第1補正実行フラグ又は第2補正実行フラグがONになったか否かを判断する(
図7のS109)。補正部62は、何れの補正実行フラグもONになっていない場合、処理を終了する。補正部62は、何れかの補正実行フラグがONになっていた場合、糸21の走行開始時に求めた糸基準太さを取得する(S110)。
【0065】
次に、補正部62は、新たな補正量を算出する(S111)。具体的には、
図5に示すように、今回求めた糸平均太さから糸基準太さを減算することで、補正調整値を算出する。この演算について説明すると、糸基準太さは、温度変化の影響等が少ない状況で求められているため、糸太さを略正確に示している。従って、糸平均太さから糸基準太さを減算することで、現在の温度変化の影響又は糸21の繊維量の変化等を考慮した調整値(補正調整値)を算出することができる。また、温度変化の影響又は糸21の繊維量の変化等による電圧の変動量(補正量)は、この補正調整値から初期調整値を減算することで得られる。なお、
図5に示す例では、補正量は正であるが、状況によっては負になることもある。
【0066】
上記の演算後、補正部62は、補正量の絶対値が所定の閾値より大きいか否かを判断する(S112)。補正部62は、補正量の絶対値が所定の閾値より大きい場合、温度変化の影響による検出値の変化量が大きくなり、ゲインへの影響が大きくなり過ぎると判断して、カッタ16を動作させて糸21を切断する(S113)。
【0067】
一方、補正部62は、補正量の絶対値が所定の閾値以下である場合、算出した補正量に基づいて糸太さを補正する(S114)。従って、第1補正実行フラグがONの場合は第1補正が行われる。例えば
図5の糸走行長さが0mから35m(1回目のカウント)においては、5m前と比較して糸平均太さが徐々に増加しているため、第1所定長さ毎に(5m毎に)補正量が補正されている。また、第2補正実行フラグがONの場合は第2補正が行われる。例えば
図5の糸走行長さが35m(2回目及び3回目のカウント)においては、35m前と比較して糸平均太さが減少しているため、補正量が補正されている。なお、第1補正実行フラグと第2補正実行フラグの両方がONの場合は、予め定めた何れかの補正が行われる。
【0068】
このように、本実施形態では、検出した糸太さの増大量が所定以上の場合(第1補正を行う場合)と、検出した糸太さの低減量が所定以上の場合(第2補正を行う場合)と、で補正の要否を行う周期を異ならせている。これは、以下の理由による。即ち、糸太さが増大する場合とは、糸21を生成する段階で当該糸21に風綿が絡んだ状況等が考えられ、この状況においては糸太さは急激に太くなる。一方、温度変化の影響により糸太さが太くなる場合、センサユニット50の検出値(即ち検出される糸太さ)は緩やかに変化する。従って、糸太さが実際に増大しているか、又は温度変化の影響により糸太さが増大しているように見えるかを短時間で見分けることができる。従って、糸太さが増大しているか否かは頻繁に(周期を短くして)判断することができる。一方で、糸太さが減少する場合とは、糸21を生成する段階で糸21に含まれる繊維が少しずつ除去される状況等が考えられ、この状況においては、糸太さは徐々に細くなる。一方、温度変化の影響により糸太さが低減する場合も、センサユニット50の検出値(即ち検出される糸太さ)は緩やかに変化する。従って、糸太さが低減する場合は、糸太さが実際に低減しているのか、又は温度変化の影響によって糸太さが低減しているように見えるのかを見分けるために、周期を長くする必要がある。以上を考慮して、本実施形態では、第1補正の周期を、第2補正の周期よりも短くしている。
【0069】
なお、
図4に示すように補正の開始後に糸分断(糸切れ又はカッタによる糸切断)が発生した場合、初期調整値が補正される。また、糸21の走行開始から糸基準長さの算出分の長さ(本実施形態では25m)が走行することで、糸平均長さを算出することができる。従って、このタイミングで、再び糸太さの補正が再開される。
【0070】
以上に説明したように、本実施形態の糸監視装置6は、光学式のセンサユニット50と、補正部62と、を備える。センサユニット50は、走行する糸21の糸太さを検出する。補正部62は、センサユニット50が検出した糸太さの増大量に基づいて、(補正が必要な場合は)所定の周期で当該糸太さを補正する第1補正と、センサユニット50が検出した糸太さの低減量に基づいて、(補正が必要な場合は)第1補正と異なる周期で当該糸太さを補正する第2補正と、を行う。
【0071】
これにより、糸太さが増大する場合と低減する場合では糸太さの変化の挙動が異なるため、それらに応じた周期を設定することで、糸の走行中の温度変化を考慮した上で、糸太さの変化に応じた適切なタイミングで糸太さを補正することができる。
【0072】
また、本実施形態の糸監視装置6は、糸21が走行した長さである糸走行長さを検出する糸走行長さ検出部61を備える。補正部62は、糸走行長さ検出部61が検出した糸走行長さに基づいて、糸21が第1所定長さ走行する毎に第1補正を行い、糸21が第2所定長さ走行する毎に第2補正を行う。
【0073】
これにより、糸走行長さに基づいて補正のタイミングが決定されるので、時間に基づいて補正のタイミングを決定する場合と比較して、糸太さを一層正確に補正することができる。
【0074】
また、本実施形態の糸監視装置6において、補正部62は、糸21の走行が開始してから当該糸21が所定長さ走行するまでの糸太さの平均に基づいた値を糸基準太さとして求め、当該糸基準太さからの増大量又は低減量に基づいて、第1補正又は第2補正を行う。
【0075】
これにより、糸21の走行が開始してから所定時間は温度変化の影響が小さいと考えられるので、この間に取得した糸太さの平均(糸基準太さ)を基準とすることで、温度変化等の影響を正確に見積もることができる。従って、糸太さを一層正確に補正することができる。
【0076】
また、本実施形態では、巻取部26は、ディスターブ制御を行うため、少なくとも一時的に巻取速度を変化させながら糸21を巻き取る。補正部62は、糸走行長さ検出部61が検出した糸走行長さに基づいて、糸21が第1所定長さ走行する毎に第1補正を行い、糸21が第2所定長さ走行する毎に第2補正を行う。
【0077】
これにより、巻取速度を変化させながら糸21を巻き取る自動ワインダであっても、糸走行長さに基づいて補正を行うことで、適切なタイミングで糸太さを補正することができる。
【0078】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0079】
上記の実施形態では、糸監視装置6が増幅回路56によって電圧を反転させているため、糸監視制御部60に入力される電気信号の電圧が大きいほど糸太さが太いが、電圧を反転させない構成であっても良い。この場合、糸監視制御部60に入力される電気信号の電圧が小さくなった場合(即ち糸太さが増大した場合)の補正が第1補正に該当する。
【0080】
上記の実施形態において、糸監視装置6は、カッタ16を内蔵した構成になっている。しかしながらそれに限らず、カッタを糸監視装置6の外部に配置して、当該カッタをユニット制御部30により制御するように構成しても良い。この場合、糸監視制御部60が糸切断信号をユニット制御部30に出力し、ユニット制御部30は、この糸切断信号に基づいてカッタを駆動させることになる。また、糸監視装置6は、カッタ16によって、糸欠陥を検出した場合に糸21を切断し、糸欠陥を除去できる構成としたが、本発明の糸監視装置は、カッタ16によって糸21を切断せずに糸21の状態を監視のみする装置であっても良い。
【0081】
上記の実施形態では、糸監視装置6が糸太さ検出部と糸走行長さ検出部を含んでいるが、糸太さ検出部と糸走行長さ検出部のそれぞれを別の装置で実現しても良い。糸監視装置6が糸走行長さ検出部を含まず、糸監視装置6とは別の装置で糸走行長さ(糸21の走行速度)を検出する場合、糸監視装置6は1組の投光部及び受光部を備えている構成であっても良い。
【0082】
糸監視装置6は、合計2組の投光部及び受光部が糸走行経路上の異なる位置に1組ずつ配置される構成に限定されない。前述のように、投光部及び受光部を1組だけ備えていても良い。また、投光部及び受光部を1組だけ備える場合であっても複数組備える場合であっても、1組において配置される投光部の数、及び受光部の数は1つずつに限定されない。例えば、1つの組において、1つ又は複数の投光部と、1つ又は複数の受光部とを備えていても良い。具体的には、上流側に配置される第1の組においては1つの投光部と3つの受光部とを備え、下流側に配置される第2の組においては2つの投光部と2つの受光部とを備えていても良い。
【0083】
上記の実施形態では、糸基準太さを求めるための所定長さを25mとし、第1補正の周期を5mとし、第2補正の周期を35mとしたが、これらの値は任意であり、適宜変更できる(例えば、上記の2倍又は3倍であっても良い)。また、上記の実施形態では、糸基準太さを求めるための所定長さ及び第2補正の周期が、第1補正の周期の整数倍となっているが、整数倍でなくても良い。
【0084】
上記のフローチャートで説明した処理は一例であり、本発明を逸脱しない範囲で、フローの追加、変更、順番の変更、及び、削除等を行うことができる。
【0085】
上記の実施形態では、第1補正の周期が第2補正の周期よりも短いが、巻取条件等によっては、第1補正の周期が第2補正の周期より長くても良い。
【0086】
上記の実施形態において、糸基準太さ、糸平均太さ、初期調整値、補正調整値、及び補正量等の値を導入して演算を行ったが、この演算は一例であり、適宜変更できる。例えば、上記の実施形態の糸基準太さに初期調整値を足した値を「糸基準太さ」と考えて演算を行っても良い。
【0087】
糸監視制御部60が行う処理(例えば補正部62が行う補正)の少なくとも一部をユニット制御部30又は機台制御部11が行っても良い。
【0088】
本発明の構成は、自動ワインダに限らず、例えば巻き返し機、紡績機(空気紡績機、オープンエンド紡績機)等の他の糸巻取機にも適用できる。