【実施例】
【0063】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例、製造例中に記されている%はいずれも質量%である。
【0064】
製造例1:N−[2−ヒドロキシ−3−[3’−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]アルギニン(シリル化アルギニン)の製造
容量2リットルのビーカーにアルギニン100g(0.575モル)を入れ、水600mLを加えて攪拌し、17%塩酸水溶液を加えてpHを9.0に調整した。この溶液を50℃に加温し、攪拌しながら溶液中に3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン[信越化学工業社製KBE−402(商品名)]146g(0.575モル、アルギニンと等モル数)を約2時間かけて滴下し、滴下後50℃で14時間攪拌を続けた。その後、17%塩酸水溶液を加えてpHを6.0に調整し、固形分濃度が24.6%のN−[2−ヒドロキシ−3−(3’−ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]アルギニン(シリル化アルギニン)の水溶液を816g得た。反応前後でのアミノ態窒素量の変化量から求めた反応率は82%であり、これを元に計算した生成物のシリル化アルギニンのモル数は0.448であった。
【0065】
また、反応前後の溶液を下記条件で液体クロマトグラフィー(以下「HPLC」と記す)分析を行ったところ、反応後には、原料のアルギニンの分子量174付近のピークはほぼ消失し、シリル化アルギニンの分子量である366付近に新たなピークが検出されシリル化アルギニンが製造されていることが確認できた。
【0066】
[液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析条件]
分離カラム:TSKgel G3000PWxL(直径7.8mm×長さ300mm)
溶離液 :0.1%トリフルオロ酢酸水溶液/アセトニトリル=55/45
流速 :0.3mL/min
検出器 :RI(示差屈折率)検出器およびUV(紫外線)検出器210nm
標準試料:グルタチオン(Mw307)、ブラジキニン(Mw1,060)、インシュリンB鎖(Mw3,496)、アプロチニン(Mw6,500)
【0067】
製造例2〜5
アルギニンを表1に示す他のアミノ酸に変え、反応条件を表1に示すように変えた以外は製造例1と同様にして、アミノ酸とシランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン:信越化学工業社製KBE−402])との反応を行った。反応後、表1に示すpHに調整して反応溶液(水溶液)を得た。この反応溶液の収量および固形分濃度、並びに、反応前後でのアミノ態窒素量の変化量から求めた反応率(製造例4のみ、分子量115付近のピークの減少率から求めた反応率)、これを元に計算した生成物のシリル化アミノ酸のモル数を表2に示す。
【0068】
又、反応前後の溶液を製造例1と同じ条件でHPLC分析を行ったところ、製造例2〜5のいずれでも、反応後には、原料のアミノ酸のピークはほぼ消失し、表2の「HPLCピーク」の欄に示す位置の付近に新たなピークが検出された。この結果より、表2の「反応生成物」の欄に示すシリル化アミノ酸が製造できていることが確認できた。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
実施例1:N−[2−ヒドロキシ−3−[3’−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]アルギニン/ジメチルジエトキシシラン/オクチルトリエトキシシラン共重合体[1:15:15(モル比)]の製造
容量1リットルのガラス製円形反応容器に、製造例1で得られたシリル化アルギニン溶液100g(シリル化アルギニンとして0.055モル)に水を加えて固形分濃度を20質量%に調整し、17%塩酸水溶液を添加してpHを1.3に調整した。この溶液を60℃に加温して攪拌しながら、溶液中にジメチルジエトキシシラン[信越化学工業社製KBE−22(商品名)]122.1g(0.825モル)およびオクチルトリエトキシシラン[信越化学工業社製KBE−3083(商品名)]227.7g(0.625モル)の混合液を1時間かけて滴下し、滴下終了後60℃で14時間攪拌を続けた。次に、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液のpHを6.0に調整し、液温を40℃にして4時間攪拌を続けて縮重合させた。
【0072】
次いで、この溶液にトリメチルクロロシラン[信越化学工業社製KA−31(商品名)]10g(0.092モル)を15分かけて滴下して混合し、25%水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.0に調整し、80℃で1時間攪拌を続けた。その後、この溶液を減圧下濃縮して、生じたアルコールを除去し、水を加えて濃度を調整して固形分濃度75%のシリル化アルギニン/シラン化合物共重合体の水溶液を186g得た。
【0073】
得られた共重合体を島津製作所社製のFT−IR[IR Prestige−21(商品名)]を用いてATR法で赤外線吸収スペクトル(IR)分析を行ったところ、
図1に示すように、1260cm
−1付近にSi−CH
3 に起因するピークが、1100〜1000cm
−1付近にSi−O−Siに起因するピークが検出され、さらに2960cm
−1付近にオクチルトリエトキシシラン由来のアルキル基に起因するピークが検出された。また、製造例1の項に示した条件でHPLC分析したところ、分子量366付近のシリル化アルギニンのピークはほとんど消失していた。これらのことから、この化合物はシリル化アルギニン/シラン化合物共重合体であることが確認できた。
【0074】
上記のようにして得られたシリル化アルギニン/ジメチルジエトキシシラン/オクチルトリエトキシシラン共重合体(75%)水溶液の20℃での粘度を、B型粘度計、ロータ3、回転数30回転で測定したところ、粘度は7500mPa・sであった。
【0075】
実施例2〜12
シリル化アミノ酸の種類や反応条件を表3〜6に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、シリル化アミノ酸とシラン化合物との反応を行い、表3〜6の生成物水溶液の欄に示す水溶液を同欄に示す収量、固形分濃度で得た。得られた水溶液について、実施例1と同様にして、赤外線吸収スペクトル(IR)分析を行ったところ、1260cm
−1付近にSi−CH
3 に起因するピークが、1100〜1000cm
−1付近にSi−O−Siに起因するピークが検出され、さらに、実施例5以外では、2960cm
−1付近にオクチルトリエトキシシラン由来のアルキル基に起因するピークが検出された。なお、実施例1、5および6で製造したシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体の赤外線吸収スペクトルを、それぞれ
図1、2および3に示す。
【0076】
又、製造例1の項に示した条件でHPLC分析したところ、原料のシリル化アミノ酸のピークはほとんど消失していた。これらのことから、生成された化合物は表3〜6の生成化合物の欄に示すシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体であることが確認できた。さらに、得られた共重合体の75%水溶液の20℃での粘度を、B型粘度計、ロータ3、回転数30回転で測定した。その結果を表3〜6の水溶液粘度の欄に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
参考例1:N−[2−ヒドロキシ−3−[3−ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]カゼイン加水分解物/ジメチルジエトキシシラン/オクチルトリエトキシシラン共重合体(シリル化カゼイン加水分解物/シラン化合物共重合体)[1:15:15(モル比)]
容量1リットルのガラス製円形反応容器に、総窒素量とアミノ態窒素量から求めたアミノ酸の平均重合度が6で、アミノ酸分析を元に計算した酸性アミノ酸数の平均値が1.7、中性アミノ酸数の平均値が3.5、塩基性アミノ酸数の平均値が0.8のカゼイン加水分解物の25%水溶液200g(アミノ態窒素値から得られたモル数として0.08モル)を入れ、25%水酸化ナトリウム溶液でpHを9.5に調整した。この溶液を50℃に加温し、攪拌しながら溶液中に3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン19.8g(0.08モル、カゼイン加水分解物のアミノ態窒素量に対し1.0当量)を約1時間かけて滴下し、滴下終了後、50℃で14時間攪拌を続けた。その後、17%塩酸水溶液を加えてpHを6.0に調整し、固形分濃度が22%のシリル化カゼイン加水分解物の水溶液を214g得た。反応前後でのアミノ態窒素量の変化量から求めた反応率は81%であり、これを元に計算したシリル化カゼイン加水分解物のモル数は0.04であった。
【0082】
次に、この溶液に17%塩酸水溶液を加えてpHを1.3に調整し、この溶液を60℃で攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン88.8g(0.6モル、シリル化カゼイン加水分解物に対して15当量)およびオクチルトリエトキシシラン165.6(0.6モル、シリル化カゼイン加水分解物に対して15当量)の混合物を約2時間かけて滴下し、滴下後50℃で14時間攪拌を続けた。次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液のpHを6.0に調整し、液温を40℃にして4時間攪拌を続けて縮重合させた。次に、この溶液にトリメチルクロロシラン6.5g(0.06モル)を15分間かけて滴下混合した。この間、同時に25%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが7〜8になるように保った。滴下終了後、さらに3時間攪拌を続けて反応を完結した。その後、この溶液を減圧下濃縮して、生じたアルコールを除去し、水を加えて濃度を調整して固形分濃度75%のシリル化カゼイン加水分解物/シラン化合物共重合体の水溶液を275g得た。
【0083】
参考例2:N−[2−ヒドロキシ−3−[3−ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]小麦タンパク加水分解物/ジメチルジエトキシシラン/オクチルトリエトキシシラン共重合体(シリル化小麦タンパク加水分解物/シラン化合物共重合体)[1:7:7(モル比)]
容量1リットルのガラス製円形反応容器に、総窒素量とアミノ態窒素量から求めたアミノ酸の平均重合度が7で、アミノ酸分析を元に計算した酸性アミノ酸数の平均値が2.7、中性アミノ酸数の平均値が3.9で、塩基性アミノ酸数の平均値が0.4の小麦タンパク加水分解物の25%水溶液200g(アミノ態窒素値から得られたモル数として0.07モル)を入れ、25%水酸化ナトリウム溶液でpHを9.5に調整した。この溶液を50℃に加温し、攪拌しながら3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン17.7g(0.07モル、小麦タンパク加水分解物のアミノ態窒素量に対し1.0当量)を約1時間かけて滴下し、滴下終了後、50℃で14時間攪拌を続けた。その後、17%塩酸水溶液を加えてpHを6.0に調整し、固形分濃度が22%のN−[2−ヒドロキシ−3−(3’−ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]小麦タンパク加水分解物の水溶液を234g得た。反応前後でのアミノ態窒素量の変化量から求めた反応率は85%であり、これを元に計算したシリル化小麦タンパク加水分解物のモル数は0.05であった。
【0084】
次に、前記溶液を25%水酸化ナトリウム水溶液でpHを10.5に調整し、この溶液を60℃で攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン51.8g(0.35モル、シリル化小麦タンパク加水分解物に対して7当量)およびオクチルトリエトキシシラン96.6g(0.35モル、シリル化小麦タンパク加水分解物に対して7当量)の混合物を約2時間かけて滴下し、滴下終了後、50℃で14時間攪拌を続けた。次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液のpHを6.0に調整し、液温を40℃にして4時間攪拌を続けて縮重合させた。次に、この溶液にトリメチルクロロシラン7.6g(0.07モル)を15分間かけて滴下混合した。この間、同時に25%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが7〜8になるように保った。滴下終了後、さらに3時間攪拌を続けて反応を完結した。その後、この溶液を減圧下濃縮して、生じたアルコールを除去し、水を加えて濃度を調整して固形分濃度75%のシリル化小麦タンパク加水分解物/シラン化合物共重合体の水溶液を214g得た。
【0085】
次に、試験例や化粧料としての実施例を示すが、試験例、実施例および比較例の処方を示す表では、各成分の配合量はいずれも質量部によるものであり、配合量が固形分量でないものについては、成分名の後ろに括弧書きで固形分濃度を示している。
【0086】
試験例1:毛髪への吸着性試験
表7の「配合重合体」の欄に示す重合体(実施例1〜13で製造したシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体等)を配合して表7の組成の毛髪処理剤を調製した。調整された毛髪処理剤で、損傷毛髪を処理して、処理後の毛髪の、処理剤の残存感、保湿感、櫛通り性を評価した。
【0087】
【表7】
【0088】
表中、*1は信越化学工業社製のKF96A−10cs(商品名)、*2は東邦化学工業社製のカチナールSTC−25W(商品名)、*3はSEPPIC社製のMONTANOV68(商品名)である。
【0089】
試験に先立ち、毛髪を2%のポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄して乾燥し、長さ17cmで重さ2gの損傷毛髪の毛束を作製した。この毛束の毛髪損傷度を一定にするため、6%過酸化水素水と2%アンモニア水を質量比1:1で混合したブリーチ剤に30℃で30分間浸漬し、水道水流水中で洗浄後、さらにイオン交換水で濯ぎ、ヘアドライヤーで乾燥した。このブリーチ処理を5回繰り返した後、下記の吸着性試験に供した。
【0090】
上記の方法で作製したそれぞれの損傷毛髪毛束に表7に記載の組成のそれぞれの毛髪処理剤を1g塗布して充分になじませた後、40℃の恒温槽に10分間放置し、次いで40℃のお湯でゆすぎ、室温で風乾させた。対照品には、表7の組成で、配合重合体の代わりに同量の水を加えた処理剤で処理した毛束を用い、毛髪の処理剤の残存感、保湿感、櫛通り性について下記の判定基準で10名のパネリストに評価させ、その総合点によって分類を行った。
【0091】
残存感の評価基準
3:対照品と比較して、高い残存感を有している
2:対照品と比較して、残存感を有している
1:対照品と変わらないもしくは劣る
保湿感の評価基準
3:対照品と比較して、明らかな保湿感の差を感じる
2:対照品と比較して、わずかに保湿感を感じる
1:対照品と変わらないもしくは劣る
櫛通り性の評価基準
3:対照品と比較して、櫛通り性が非常によく、引っかかり感がない
2:対照品と比較して、櫛通り性がよく、ほとんど引っかかり感がない
1:対照品と変わらないもしくは劣る
【0092】
各処理剤についてのパネリストの評価値を合計し、下記のように分類した。その結果を表8に示す。なお、以下の表では、試験の対象となる実施例1〜13で製造されたそれぞれのシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体を、「実施例xの共重合体」(xは、該当する実施例の番号)と、参考例1、2で製造されたそれぞれのシリル化ペプチド/シラン化合物共重合体を、「参考例xの共重合体」(xは、該当する実施例の番号)と記す。
評価結果の分類
◎:10人の総合点が24以上
○:10人の総合点が17〜23
△:10人の総合点が16以下
【0093】
【表8】
【0094】
表8に示したように、各実施例で製造したシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体は、従来のジメチルポリシロキサンやシリル化ペプチド/シラン化合物共重合組成物より、毛髪への吸着性がよく、毛髪に優れた保湿感や良好な櫛通り性を付与できることが明らかであった。
【0095】
試験例2:粉体分散性試験
実施例1〜13で製造されたシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体を用いて、表9に示す配合量の混合物を調製し、粉体が均一なスラリーとして得られるかどうかを試験した。
【0096】
【表9】
【0097】
試験では、表面処理された酸化チタン4.0gにシクロペンタシロキサン5.0gを加えて攪拌して、非常に粘度の高い半固形物を得、この中に実施例で得られたシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体1.0gを加えて攪拌し、低粘度の酸化チタンスラリーが得られるかどうかを確認し、下記の評価基準で評価した。その結果を表10に示す。
粉体分散性の評価基準
◎:低粘度でしかも均一なスラリーを形成する
○:低粘度のスラリーになるが、ややダマ(団子状のかたまり)が見られる
△:低粘度のスラリーになるが、ダマが多い
×:酸化チタンとシクロペンタシロキサンの混合時のままで、スラリーが得られない
【0098】
【表10】
【0099】
表10に示したように、実施例1〜13のシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体は、いずれも良好な粉体分散性を示した。
【0100】
試験例3:乳化試験
表11に示す共重合体を乳化剤として用いて、表11に示す配合で、エステル油、炭化水素類、植物油、油溶性紫外線吸収剤、シリコーン油から選んだ油性物質である(1)イソステアリン酸ヘキシルデシル、(2)流動パラフィン、(3)オリーブ油、(4)メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、(5)ジメチルポリシロキサン(5cs)の分散性を調べた。
【0101】
【表11】
【0102】
試験では、シリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体と精製水を混合し、室温下でホモミキサーで5000rpmで攪拌し、その中に油性物質を10分間かけて滴下し、滴下終了後さらに10分間攪拌を続けた。調製後の乳化物を目視で観察し、下記の基準で評価した。また、実施例で製造したシリル化アミノ酸シラン化合物共重合体に代えて、参考例1および2で製造したシリル化ペプチド/シラン化合物共重合体でも乳化試験を行い、比較品とした。それらの結果を表12に示す。
乳化物の評価基準
◎:粒子が細かく均一な乳化物である
○:やや粗い粒子が見られるがほぼ均一な乳化物である
△:調製直後は乳化物を形成しているが2週間以内に乳化系は壊れる
【0103】
【表12】
【0104】
表12に示したように、実施例1〜13のシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体は、試験したいずれの油性物質に対しも優れた乳化性を示した。
【0105】
実施例14および比較例1〜2
表13に示す組成のヘアコンディショナーを調製し、処理後の毛髪の艶、櫛通り性、保湿感を評価した。実施例14では、実施例1で製造したシリル化アルギニン/シラン化合物共重合体(N−[2−ヒドロキシ−3−[3’−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]アルギニン/ジメチルジエトキシシラン/オクチルトリエトキシシラン共重合体[1:15:15(モル比)])を用い、比較例1ではシリル化アルギニン/シラン化合物共重合体に代えて、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を用い、比較例2ではシリル化ペプチド/シラン化合物共重合体である参考例1で製造したシリル化カゼイン加水分解物/シラン化合物共重合体を用いている。
【0106】
【表13】
【0107】
表13中、*6は信越化学工業社製のKF−6016(商品名)、*7はSEPPIC社製のSIMULGEL EG(商品名)、*8は成和化成社製のPromois SILK−1000(商品名)、*9は成和化成社製のSeisept−H(商品名)である。
【0108】
上記ヘアトリートメント剤による処理に先立ち、処理用の毛髪として、洗浄、ブリーチ処理を行なった毛髪を作製した。すなわち、長さ13cmで重さ1.7gの毛束を3本用意し、あらかじめ2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾させた。つぎに、6%過酸化水素水と2%アンモニア水を1:1に調製したブリーチ剤に30分間浸漬した後、水道水流水中でゆすぎ、1mol/Lクエン酸と0.2mol/Lリン酸水素二ナトリウムの緩衝液(pH3)に5分間浸漬し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾させた。この操作を5回繰り返し行い試験に供した。
【0109】
ブリーチ処理した毛束に約40℃の温水を含ませた後、実施例14および比較例1〜2のヘアトリートメント剤3gをそれぞれの毛束に均一に塗布して毛髪になじませた後、ラップフィルム上で40℃の恒温槽に10分間放置し、お湯でゆすぎ、室温で風乾させた。このように処理した後の毛髪の艶、櫛通り性、保湿感について10人のパネリストに官能評価させた。評価は、最も良いものを[2点]とし、2番目に良いものを[1点]とし、悪いものを[0点]とし、その平均値を評価値とした。その結果を表14に10人の平均値で示す。
【0110】
【表14】
【0111】
表14に示したように、実施例14のシリル化アルギニン/シラン化化合物共重合体を含有するヘアトリートメント剤で処理した毛髪は、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を含有する比較例1のヘアトリートメント剤や、参考例1で製造したシリル化カゼイン加水分解物/シラン化合物共重合組成物を含有する比較例2のヘアトリートメント剤で処理した毛髪に比べて、毛髪の艶、櫛通り性、保湿感のいずれの官能評価項目においても評価値が高かった。実施例14のヘアトリートメント剤の評価値が参考例1で製造したシリル化カゼイン加水分解物−シラン化合物共重合組成物を含有する比較例2のヘアトリートメント剤の評価値より高かったのは、実施例14のシリル化アルギニン/シラン化合物共重合体がアルギニン基を有し、比較例2のシリル化カゼイン加水分解物/シラン化合物共重合体のカゼイン加水分解物部より毛髪に吸着しやすかったのではないかと推測している。
【0112】
実施例15および比較例3〜4
表15に示す組成のヘアクリームを調製し、頭髪に使用後の毛髪の艶、櫛通り性、保湿感を評価した。実施例15では、実施例2で製造したシリル化アルギニン/シラン化合物共重合体(N−[2−ヒドロキシ−3−[3’−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]アルギニン/ジメチルジエトキシシラン/オクチルトリエトキシシラン共重合体[1:40:40(モル比)])を用い、比較例3では、シリル化アルギニン/シラン化合物共重合体に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を用い、比較例4では、シリル化ペプチド/シラン化合物共重である参考例2で製造したシリル化小麦タンパク加水分解物/シラン化合物共重体を用いている。
【0113】
【表15】
【0114】
表15中、*9は既出であり、*10は東レ・ダウコーニング社製のSH3749(商品名)である。
【0115】
上記ヘアクリームによる毛髪の処理は下記のように行った。すなわち、長さ15cmで重さ約1gの毛束を3本用意し、それらの毛束を2%のポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水の流水中ですすいだ後、ドライヤー(冷風)を用いて乾燥した。その乾燥したそれぞれの毛束に、上記実施例15、比較例3および4のヘアクリームを各々0.5gよく伸ばしながら塗布し、ヘアドライヤーで乾燥した。処理後の毛髪の艶、うるおい、櫛通り性について10人のパネリストに、実施例14と同じ評価基準で評価させた。その結果を表16に示すが、評価値はいずれも平均値である。
【0116】
【表16】
【0117】
表16に示したように、実施例2のシリル化アルギニン/シラン化合物共重合体を含有するヘアクリームで処理した毛髪は、比較例3や比較例4のヘアクリームで処理した毛髪に比べて、毛髪の艶、櫛通り性、保湿感のいずれの評価項目において評価値が高かった。この結果から明らかなように、シリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体は、毛髪によく吸着し、毛髪に艶、良好な櫛通り性、保湿感を付与する作用に優れていることが明らかであった。
【0118】
実施例16および比較例5および6
表17に示す組成の乳液を調製し、肌へのなじみやすさ、塗布後の肌のなめらかさ、しっとり感およびべたつきの少なさを評価した。実施例16では、実施例11で製造したシリル化アルギニン/シリル化プロリン/シラン化合物共重合体(N−[2−ヒドロキシ−3−[3’−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]アルギニン/N−[2−ヒドロキシ−3−[3’−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]プロリン/ジメチルジエトキシシラン/オクチルトリエトキシシラン共重合体[1:1:30:30(モル比)])を用い、比較例5では、シリル化アルギニン/シリル化プロリン/シラン化合物共重合体に代えて、ジメチルポリシロキサンを用い、比較例6では、シリル化ペプチド/シラン化合物共重合体である参考例1で製造したシリル化カゼイン加水分解物/シラン化合物共重合体を用いている。
【0119】
【表17】
【0120】
表17中、*1、*5、*9は既出で、*11はグッドリッチ社のCARBOPOL
980(商品名)である。
【0121】
上記実施例16および比較例5〜6の乳液を肌に塗布している時の肌へのなじみのよさ、塗布後の肌のなめらかさ、しっとり感およびべたつき少なさを10名のパネリストに実施例14と同じ評価基準で評価させた。その結果を表18に10人の平均値で示す。
【0122】
【表18】
【0123】
表18に示す結果から明らかなように、シリル化アルギニン/シリル化プロリン/シラン化合物共重合体を含有する実施例16の乳液は、ジメチルポリシロキサンを含有する比較例4の乳液に対してはもちろん、シリル化加水分解カゼイン/シラン化合物共重合体を配合する比較例6の乳液に比べても、いずれの評価項目においても評価値が高かった。
【0124】
実施例17および比較例7〜8
表19に示す組成の3種類のマッサージクリームを調製し、塗布時のぬり広げやすさ、および塗布後の肌のしっとり感、べたつきの少なさについて評価した。実施例17では、実施例12で製造したシリル化アルギニン/シリル化グリシン/シリル化プロリン/シラン化合物共重合体(N−[2−ヒドロキシ−3−[3−ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]アルギニン/N−[2−ヒドロキシ−3−[3−ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]グリシン/N−[2−ヒドロキシ−3−[3−ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]プロリン/ジメチルジエトキシシラン/オクチルトリエトキシシラン共重合体[1:1:1:45:45(モル比)])を用い、比較例7では、シリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を用い、比較例8では参考例2で製造したシリル化小麦タンパク質加水分解物/シラン化合物共重合体を用いている。
【0125】
【表19】
【0126】
表19中、*3および*9は既出で、*12はSEPPIC社製のMONTANOV202(商品名)、*13は成和化成社製のPromois WU−32R(商品名)である。
【0127】
上記実施例17および比較例7〜8のマッサージクリームについて、手に塗布している時の肌へのなじみ、塗布後の肌のなめらかさ、しっとり感、べたつきの少なさについて10のパネリストに、下記の評価基準で評価させた。その結果を表20に10人の平均値で示す。
評価基準
強く感じる :3点
感じる :2点
ほとんど感じない:1点
全く感じない :0点
【0128】
【表20】
【0129】
表20に示したように、実施例17のマッサージクリームは、ポリエーテル変性シリコーンを含有する比較例7のマッサージクリームはもちろん、シリル化ペプチド/シラン化合物共重合組成物を含有する比較例8のマッサージクリームに比べても、肌へのなじみ、塗布後の肌のなめらかさ、しっとり感およびべたつきの少なさのいずれの評価項目においても評価値が高かった。この結果から、シリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体は、肌へのなじみが良く、肌になめらかさやべたつきのないしっとり感を与える効果に優れていることが明らかであった。