【実施例】
【0037】
実際に、グリーンサンドと有機物を使用して、グリーンサンドの還元反応の実験を行った。また、比較対照として、グラファイトや水素をそれぞれ還元剤に用いて、同様の実験を行った。
【0038】
なお、以下の実験では、
図2の回収装置10の冷却部22に相当する構成は設けないで、還元反応後に試料を冷却する。そのため、還元反応後の生成物の状態は、
図2の回収装置10のように冷却部22で冷却して回収する場合とは異なることがある。
【0039】
有機物として、抽出後のコーヒー粉、抽出後の茶殻、キャベツの芯を用意して、コーヒー粉及び茶殻は室温で乾燥して使用し、キャベツの芯はみじん切りして乾燥後に乳鉢で粉砕し2mm以下の大きさにして使用した。
【0040】
マグネシウムの原料としてグリーンサンドの粉を用いて、粉砕したグリーンサンドの粉0.5gと、それぞれの有機物(コーヒー粉等)1.0gを混合して、磁性ボート(70mm×15mm×15mm)の中心部に幅20mmで設置した。
長さ1mの磁性管を電気炉に設置し、電気炉の中心部に試料混合物が来るように、磁性ボートを置いた。磁性管の両端を、中心に開けた穴にステンレスパイプを通したシリコンゴムで閉じ、磁性管内に、不活性ガスとして窒素ガスを流した。窒素ガスの流量は50ml/分として、設定温度まで1時間で昇温し、設定温度で所定時間熱処理を行った。磁性管の出口側に繋いだビニール管を水の入ったトラップに通し、バブリングによる気体の流通を確認すると共に、逆流して空気が磁性管内の混合試料に触れないように設計した。
【0041】
グリーンサンド中に含まれる酸化物が金属まで還元されるのに必要な炭素の量(モル数)は、それぞれの分子量と含有量から計算すると、おおよそ以下の通りである。
FeO:0.035〜0.075mol
MgO:0.35〜0.47mol
SiO
2:0.76〜0.96mol
Al
2O
3:0.2〜0.38mol
以上を合計すると、グリーンサンド100gを全て金属に還元するのに必要な炭素モル数は1.35〜1.89モルとなる。
一方、コーヒーの生豆の成分は、100g中に炭水化物41g、脂肪0.5g、たんぱく質12.2%等を含有する(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BCより)ので、抽出後のコーヒー粉は、組成式として「CH
2O」でグリーンサンドの還元に寄与するとみなした。CH
2Oの1.35〜1.89モルの質量が40.5〜56.7gとなるため、グリーンサンドの質量の60%に相当するコーヒー粉を還元剤として混合すれば、炭素として十分な量であることがわかる。従って、上述のグリーンサンド0.5gとコーヒー粉1.0gの混合比の実験条件では、還元に十分な量の炭素及び水素がある。
【0042】
また、比較対照実験のグラファイトとしては、Newmet Koch A Division New metals and Chemicals Ltd.社製の高純度グラファイトパウダー(純度99.999%、<188μm)を使用した。グリーンサンドとグラファイトの質量比は、1:2、もしくは、2:1とした。グリーンサンド100gを全て金属に還元するのに必要なグラファイトは16.2〜22.7gであるので、2:1でも還元に十分な炭素があると考えられる。
原料とグリーンサンドとの混合比以外は、有機物と同様の実験条件とした。
【0043】
(X線光電子分光装置XPSによる評価)
X線光電子分光装置(VG社製220i-XL)を使用して、原料及び還元処理後の試料の評価を次の条件で行った。X線源をAl−Kα(hν=1486.6eV)として、グリーンサンド中に含まれているMg,Ca,Al,Si,Fe,C,Oについて、Mg1s(結合エネルギー領域1290〜1330eV、以下同様とする)、Ca2p(330〜370eV)、Al2p(70〜90eV)、Si2p(90〜120eV)、Fe2p(700〜740eV)、C1s(270〜300eV)、O1s(520〜550eV)の各スペクトルを測定した。
還元処理後の試料については、Mg1s,Si2pのスペクトル面積から求めたMg/Si比から、原料のグリーンサンドで測定したMg/Si比と比較した。Siはグリーンサンド中に多量含まれ、融点及び沸点が高いことから、還元処理後もグリーンサンド中に安定に存在すると仮定し、基準として用いた。
【0044】
(グリーンサンドのXPSスペクトル)
グリーンサンドをXPS測定して得られたXPSスペクトルを、
図3に示す。また、0〜100eVの領域のスペクトルを
図4Aに示し、Al2p,Ca2p,Si2p,Fe2p,Mg1s,C1s、O1sの各スペクトルの測定結果を、
図4B〜
図5Hに示す。なお、
図4A〜
図5Hでは、横軸の結合エネルギーは測定値を補正せずに示している。
図4Cより、SiO
2のSi2pは、103〜104eVで3〜4eVチャージアップしていることがわかる。本実験では、Al,Si,Ca,Fe,Mgが金属酸化物状態であるので、以降は特に必要のある場合を除き、チャージアップによる結合エネルギーの補正と各元素の酸化状態には留意せず、主にSiとMgのスペクトルの面積から求めたMg/Si比の減少より、還元によるMg回収の可能性を考察した。また、グリーンサンド自体に含まれるMgとSiについてXPSで測定したスペクトルの面積からMg/Si比を求めると、12.8〜13.8であった。
【0045】
(グラファイトを還元剤に用いた還元反応)
比較対照のグラファイトの実験結果を、まとめて表1に示す。反応温度は、900℃,1000℃,1100℃,1200℃、混合比は1:2と2:1としている。なお、表1中、「Blank」は、上述したグリーンサンドのMg/Si比の測定値を示している。
【0046】
【表1】
【0047】
表1より、900℃〜1200℃で反応させると、グリーンサンド中のMgが処理温度の上昇に伴い徐々に減少しており、1200℃で3.3〜4.1と最小になった。この場合、グリーンサンドに含まれるMgからの回収率として考えると、69.0%〜75%の回収率となる。
また、グリーンサンドとグラファイトの質量比を1:2と2:1と変えたところ、1200℃では前者が3.3〜4.1であるのに対し、後者は5.4〜5.9となった。このことは、炭素源を少なくすると、Mgの回収率が下がることを意味する。
【0048】
表1のMg/Si比を温度に対してプロットして、
図6に示す。
図6より、グラファイトを炭素源としてグリーンサンドからMgの除去を行うと、900℃〜1200℃にかけてほぼ直線的にMg/Siが減少するが、1200℃でも、Mg/Si比は3.3までしか下がっていないことがわかる。これをMg回収率に換算すれば、ほぼ75%にまでしか達しないことがわかる。
【0049】
(水素を還元剤に用いた還元反応)
比較対照として、水素ガスを用いた還元反応を、1200℃で5時間行った。
還元反応後のMg/Si比は2.9となり、Mgの除去率は78%となった。
このことから、グラファイトを用いた場合は、水素ガスを用いた場合と比べてグリーンサンドからのMg回収効率が劣ることがわかる。
【0050】
(コーヒー殻を還元剤に用いた還元反応)
抽出後のコーヒー殻を還元剤に用いて、グリーンサンドを還元した実験結果を、表2と表3に示す。反応温度は、900℃,1000℃,1100℃,1200℃,1300℃、混合比は1:2としている。900℃〜1200℃をまとめて表2に示し、1300℃のみ測定箇所別に分けて表3に示す。
また、表2と表3のMg/Si比を温度に対してプロットして、
図7に示す。表3の1300℃については、内部を測定して得られたMg/Si比(2.1)のみを
図7にプロットしている。
【0051】
【表2】
【表3】
【0052】
表2及び
図7より、グリーンサンドと抽出後のコーヒー殻を反応させると、Mg/Si比は900℃で既に3.2〜3.9となり、回収率が64〜83%に達しており、グラファイトを還元剤として用いて1200℃で反応させた場合と同等或いはそれ以上のMg回収率が得られることがわかる。
Mgの沸点1095℃よりも低い900℃においてもMgの回収が生じているが、これは、900℃においても十分なMg金属の蒸気圧が得られるため、グリーンサンド中のMgOの還元反応が進み、Mg金属が生成すれば、Mg金属は蒸発してグリーンサンドから除去されていくことを示唆している。
1100℃での反応の結果を見ると、Mg/Si比は1.9〜2.7と最も小さな値を示し、この温度で最も効率良くMgの回収が可能であると考えられる。この結果は、1100℃という反応温度がMgの蒸発温度と近いため、グリーンサンド中のMgOが還元されてMg金属が生成次第、効率良くグリーンサンドからのMgの除去が起こる結果と推測される。
【0053】
1300℃でグリーンサンドとコーヒー殻を反応させると、白い繊維状物質が生成しており、かつ、磁性ボートの壁面に白い物質が付着していることが観察された。磁性ボートの内側に付いた白い物質は、極めて固く剥がし取ることができなかった。磁性ボートの内壁についた白い物質は、グリーンサンドの還元により生成したMgと推測される。
そこで、1300℃で反応させた場合については、白い繊維状物質と、反応後の混合物の表層及び内部の3つの箇所で採取した試料をXPSで測定を行った。
白い繊維状物質をXPSで測定した結果、MgだけでなくSiも観測され、Mg/Si比は5.2であった。XPS測定中、この繊維状物質は赤い発光を示し、Mgシリケートの生成が推測された。
混合物の表層はうっすらと白い部分で覆われており、Mg/Si比は6.9と大きな値を示し、この部分にMgが多く含まれていることが分かった。これに対し、混合物の内部はMgが除去されていてMg/Si比は2.1と小さな値を示した。
以上を纏めると、1300℃に反応温度を上昇させると、Mgの沸点より温度が高いため、グリーンサンド中のMgOの還元、Mgの蒸発とともに、MgOとSiO
2の反応によるシリケート物質の合成、昇華による結晶化が同時に生じていると考えられる。
本実験条件では、反応温度まで1時間という短時間で昇温させているため、Mgの蒸発温度1095℃付近でMgの蒸発が短時間で終了し、すぐに更に高温になるためシリケートの合成反応が急速に進むことが考えられる。
上述した実験結果から、1300℃でもMgの回収は可能であるが、シリケートが生じる可能性があることがわかる。
シリケートが合成されると、その分マグネシウムの回収量が減ることになる。従って、マグネシウムの回収率を高くする観点から、反応温度は1200℃以下がより好ましいと考えられる。
【0054】
(茶殻を還元剤に用いた還元反応)
抽出後の茶殻を還元剤に用いて、グリーンサンドを還元した実験結果を、まとめて表4に示す。反応温度は、900℃,1000℃,1100℃,1200℃、混合比は1:2としている。また、表4のMg/Si比を温度に対してプロットして、
図8に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
表4及び
図8より、茶殻を炭素源にしてグリーンサンドの還元反応を行うと、900℃ではMg/Si比が僅かに減少するだけであるが、1000℃以上ではMg/Si比はその値は急激に減少し3以下となり、Mg回収率としては76〜78%に達することがわかる。1100℃ではMg/Si比は最小1.5となり、Mg回収率は88〜89%と優れた結果を示した。1100℃で最も優れた結果を示す事実は、Mgの蒸発温度が1095℃であり、この温度に近い反応温度で還元反応を行ったことに起因すると推論される。
茶殻を用いると、1000℃の反応でSiO
2が還元されSiが観測された。表4の「*1000」と記載した試料におけるSi2pスペクトルを、
図9に示す。
図9より、結合エネルギーが102〜103eVのSiO
2の他に99.5eVにSiのピークが観測されている。グリーンサンド中のSiはSiO
2となっていることから、1000℃で茶殻によりSiO
2がSiに還元されていることが分かった。コーヒー殻、茶殻、キャベツの芯の3種類の植物由来の有機物を用いた実験の中で、茶殻を用いて1000℃の反応温度の時のみSiO
2の還元によるSiが観測された。グリーンサンドの還元反応では、炭素源が充分存在すると、MgOの還元によりMgがグリーンサンドから除去されると、残りのSiO
2等の酸化物の還元反応も次々に生じると考えられる。この茶殻を用いたグリーンサンドの還元反応の実験から、グリーンサンド中のSiO
2の還元反応は1000℃で可能であることが分かった。
【0057】
(キャベツの芯を還元剤に用いた還元反応)
キャベツの芯を還元剤に用いて、グリーンサンドを還元した実験結果を、まとめて表5に示す。反応温度は、900℃,1000℃,1100℃,1200℃、混合比は1:2としている。また、表5のMg/Si比を温度に対してプロットして、
図10に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
表5及び
図10より、キャベツの芯を用いてグリーンサンドの還元反応を行うと、900℃で既にMg/Si比は1.1〜2.3と小さな値となることがわかる。即ち、900℃・5時間で、十分なMg回収が可能という結果が得られた。1000℃で2.2〜4.2となり、1100℃で最小値1.1を取り、1200℃で3.5となった。1100℃で最小値を取ることは、この温度がMgの蒸発温度の1095℃と近いことに起因すると考えられる。これは前述したコーヒー殻、茶殻を還元剤に用いた場合と同様であり、反応温度として1100℃以下が最適という推論に至った。
【0060】
特に、反応温度を1200℃とした場合には、反応後、混合物の表層に白い部分が観測された。そこで、この白い部分をXPSで観測したところ、Si2pの面積400に対してMg1sの面積7513であり、多量のMgが検出された。これは、グリーンサンドからキャベツの芯との反応により還元され、Mgが抽出された証左と考えられる。なお、Mgの部分のみを測定できず、グリーンサンドも同時に観測されたため、Siが含まれた測定値となっている。
【0061】
植物由来の有機物のコーヒー殻、茶殻、キャベツの芯を用いてグリーンサンドの還元を行い、XPSで測定されるMg/Siの変化を、まとめて
図11に示す。なお、
図11中、◎はグリーンサンドのMg/Si比を示し、比較としてグラファイトを用いた結果を加えている。ここでは、処理時間については5時間を標準としたが、この図では処理時間1時間、10時間の結果も含んでいる。
グラファイトの場合と比べ、植物由来の有機物を還元剤としてグリーンサンドの還元を行うと低温で充分なMg回収が可能という結果が得られた。1100℃でMg回収の効率が最も良くなった。これは、前述したように、Mgの蒸発温度が1095℃であることと関係があると考えられる。
使用した3種類の植物由来の有機物の中でも、特に、キャベツの芯では、900℃から十分なMg回収が可能という結果が得られた。キャベツの芯、茶殻で1000℃のMg/Si比が900℃の値より上昇し、1100℃の最小値となる現象が見られた。
出発物質の未処理グリーンサンドのMg/Si比に対する還元処理後におけるMg/Si比の減少分を回収できるはずのMgの割合として、Mg回収率と表すことができる。
図11におけるMg/Si比の処理温度による値の変化から、この定義に従うMg回収率を求めて、
図12に示す。
図12より、上述した植物由来の有機物を用いたときに、900℃でもMg回収率が得られることがわかる。
【0062】
(低温でのマグネシウムの回収)
上述したように、キャベツの芯を還元剤として使用した場合に、900℃から十分なMg回収が可能であるという結果が得られたので、さらに低温での加熱でマグネシウムの回収が可能であるか調べた。
反応温度を300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃として、混合比は1:2としている。
実験結果を、表5に示した900℃〜1200℃の結果も併せて、まとめて表6に示す。また、表6のMg/Si比を温度に対してプロットして、
図13に示す。
【0063】
【表6】
【0064】
さらに、
図13におけるMg/Si比の処理温度による値の変化から、この定義に従うMg回収率を求めて、
図14に示す。また、
図12に示した、グラファイトを還元剤とした場合のMg回収率の結果も、併せて
図14に示す。
図14より、グラファイトでは900℃で回収率が20%程度と低いのに対し、キャベツの芯を用いると300℃においても回収率が50%以上の高い値が得られた。マグネシウムがグリーンサンドから除去されるためには、グリーンサンド中のMgOをMgに還元する必要がある。Mgがグリーンサンドから除去される事実は、MgOからMgへの還元が進んだことを意味する。
図14のキャベツの芯の結果の温度と回収率を、表7にまとめて示す。
【0065】
【表7】
【0066】
図14を見ると、Mg回収率は、以下の2通りから構成されると考えられる。
(1)300℃から800℃までの緩やかな回収率増加
(2)900℃以上の高い回収率
【0067】
また、以下に挙げる結果が得られた。
・300℃から800℃で反応させたキャベツの芯は、炭素化合物(活性炭の可能性あり)となっていた。XPSで解析した結果、炭素化合物上にMgが吸着していることが分かった。
・300℃から800℃でグリーンサンドを反応させた後に、油状の生成物が炉心管の出口側の内面に付着していた。
【0068】
Mgの蒸気圧は800℃以下ではかなり低いことが想定される。従って、上記(1)の傾向は、昇温中にキャベツの芯から蒸発した炭化水素がグリーンサンドのMgOをMgに還元すると共に反応して油状物質に変化し、蒸発したMg蒸気が500℃以上で変化した炭素化合物(活性炭等)に吸着することが示唆される。
これに対して、(2)の傾向は、この炭化水素によるMgOの還元と共に、900℃以上で高いMg蒸気圧が得られると推測されることから、以下の両方が生じると考えられる。
・800℃以下で起こる、有機物から生じる炭化水素によるグリーンサンド中のMgOの還元と、有機物から変化した炭素化合物(活性炭等)に吸着したMgの蒸発
・900℃以上で生じる炭素化合物(活性炭等)自体によるグリーンサンド中のMgOの還元と、生成するMgの蒸発
【0069】
ここで、グリーンサンドとキャベツ芯を、500℃、600℃、700℃、800℃でそれぞれ反応させた試料の、反応後に得られた炭素化合物をXPSで解析した。解析して得られたMg1sのピーク付近のXPSスペクトルを、
図15A〜
図15Dに示す。500℃の試料のスペクトルを
図15Aに示し、600℃の試料のスペクトルを
図15Bに示し、700℃の試料のスペクトルを
図15Cに示し、800℃の試料のスペクトルを
図15Dに示す。
【0070】
図15A〜
図15Dより、いずれの試料もMgが検出され、グリーンサンドから除去されたMgが炭素化合物に吸着していることが分かる。
【0071】
(他のMg含有鉱物からのMg回収)
次に、グリーンサンド以外の他のMgを含む鉱物からのMg回収の可能性を調べた。
Mgを含む鉱物として、蛇紋岩とタルクを用意した。蛇紋岩とタルクは、いずれもSiO
2とMgOを含む鉱物である。蛇紋岩は、鉱物標本を試料として、粉々に破砕粉砕した粒子と切断機を用いて得られる粉末の混合試料を作成し使用した。タルクは、パナソニックポリテクノロジー社製の「タイヤパウダー」を使用した。この「タイヤパウダー」は、成分としてタルクの他に酸化チタン、ミネラルオイル、グンジョウを含んでいる。
有機物としてキャベツ芯とコーヒー殻を使用して、Mg含有鉱物(蛇紋岩、タルク)と有機物(キャベツ芯、コーヒー殻)を、それぞれ0.2gと0.4g混合して、800℃で反応させた。蛇紋岩の結果を表8に示し、タルクの結果を表9に示す。
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
表8及び表9より、蛇紋岩及びタルクのいずれの鉱物中のMgOも、キャベツの芯、コーヒー殻により800℃でMgに還元されて除去されていることがわかる。
以上の事実から、本発明の回収方法によるMgOの還元とMgの回収は一般性があり、他の鉱物中に含まれるMgOからのMgの回収にも、本発明を適用できることが示された。
【0075】
なお、グリーンサンドを使用した場合と同様に、反応後に得られた炭素化合物をXPSで解析したところ、Mg1sスペクトルが観測された。
従って、グリーンサンドを使用した場合と同様に、生成したMgの一部が炭素化合物(活性炭等)上に吸着していることが分かった。即ち、蛇紋岩やタルク等、他の鉱物を原料に使用した場合でも、Mg金属を効率よく短時間で単離するには、900℃以上というMgの蒸発が活発である温度での処理が必要と考えられる。
【0076】
上述した各実験では、マグネシウムを含む原料と有機物を、1:2や2:1等、特定の比率で混合していた。
本発明では、原料と有機物を混合する際の混合比は、特定の比率に限定されるものではない。そして、有機物は、原料のマグネシウムの全てを還元するのに必要な量以上有ればよく、量の上限無く使用することができる。